特許第6508749号(P6508749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6508749
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】帯域幅可変バンドパスフィルタ
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/207 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
   H01P1/207 A
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-7918(P2018-7918)
(22)【出願日】2018年1月22日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】宮本 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】城山 典久
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 拓真
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/170120(WO,A1)
【文献】 特開2011−009806(JP,A)
【文献】 特開平02−113602(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/187139(WO,A1)
【文献】 特開2013−128210(JP,A)
【文献】 特開2014−049867(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0017272(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0288289(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅広面中央で上下に2分割された方形導波管によって挟持され、前記方形導波管の長手延長方向に並べられた複数の金属板と、
隣接する前記金属板の段間で、かつ、前記金属板の上部又は下部に配置された誘電体板と、
前記誘電体板と前記金属板との相対的位置関係を外部から変化させるための駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記誘電体板をフラップ運動させることで、前記誘電体板と前記金属板との相対角度を変化させる、
帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項2】
前記駆動部による前記誘電体板のフラップ運動は、メモリ及びプロセッサを備えるコンピュータによって制御され、
前記メモリは、前記相対角度と前記帯域幅可変バンドパスフィルタの通過帯域の帯域幅との対応関係を格納し、
前記プロセッサは、所望の帯域幅に対応する前記相対角度になるように、前記駆動部による前記誘電体板のフラップ運動を制御する、
請求項1に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項3】
幅広面中央で上下に2分割された方形導波管によって挟持され、前記方形導波管の長手延長方向に並べられた複数の金属板と、
隣接する前記金属板の段間で、かつ、前記金属板の上部又は下部に配置された誘電体板と、
前記誘電体板と前記金属板との相対的位置関係を外部から変化させるための駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記誘電体板を上下運動させることで、前記誘電体板と前記金属板との相対距離を変化させる、
帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項4】
前記駆動部による前記誘電体板の上下運動は、メモリ及びプロセッサを備えるコンピュータによって制御され、
前記メモリは、前記相対距離と前記帯域幅可変バンドパスフィルタの通過帯域の帯域幅との対応関係を格納し、
前記プロセッサは、所望の帯域幅に対応する前記相対距離になるように、前記駆動部による前記誘電体板の上下運動を制御する、
請求項3に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項5】
複数の前記金属板は、一端が前記方形導波管の内側壁に接続され、他端が開放端である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項6】
複数の前記金属板のうち隣接する前記金属板の一方は、前記一端が前記方形導波管の一方側の内側壁に接続され、隣接する前記金属板の他方は、前記一端が前記方形導波管の他方側の内側壁に接続される、
請求項5に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項7】
前記帯域幅可変バンドパスフィルタは、複数の前記金属板が1/4波長共振器として動作するインターディジタル型バンドパスフィルタである、
請求項6に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項8】
複数の前記金属板は、前記一端が前記方形導波管の同じ側の内側壁に接続される、
請求項5に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項9】
前記帯域幅可変バンドパスフィルタは、複数の前記金属板が1/4波長共振器として動作するコムライン型バンドパスフィルタである、
請求項8に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【請求項10】
前記駆動部は、ステッピングモーターである、
請求項1から9のいずれか1項に記載の帯域幅可変バンドパスフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通過帯域の帯域幅が可変である帯域幅可変バンドパスフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波やミリ波を用いて送受信を行う無線通信システムにおいては、所定の周波数帯域の信号のみを通過させ、不要な周波数成分を除去するためにバンドパスフィルタ(帯域通過フィルタ)が用いられる。例えば、特許文献1には、誘電体を用いて、通過帯域の中心周波数を変化(周波数シフト)させることができる高周波用のチューナブル帯域通過フィルタに関する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、空洞半同軸共振器を利用した導波管フィルタである。特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、幅広面中央で上下に2分割された方形導波管によって挟持され、所定の周波数で共振するよう設計された薄い金属板と、金属板の長手延長方向に沿うように金属板の上部又は下部に金属板全体に渡って配置された誘電体板と、誘電体板と金属板との相対位置関係を外部から変化させるための駆動部と、を備える。なお、誘電体板は、方形導波管の外部に突出した連結部にて駆動部と接続される。駆動部は、誘電体板の位置又は角度を変化させることにより、誘電体板と金属板との相対位置関係を変化させる。
【0004】
特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、誘電体板と金属板との相対位置関係を外部から変化させることにより、誘電率による波長短縮の効果を利用して、導波管の広面の長さを電気的に変化させ、周波数シフトを実現するものである。特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、このような単純な構造で通過帯域の中心周波数を任意かつ連続的に変化させることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5187766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、通過帯域の中心周波数を変化させることができるものであって、通過帯域の帯域幅を変化させるものではなかった。そのため、特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタにおいて、通過帯域の帯域幅を変化させるには、結合調整ネジを用いて、金属板の段間の結合量を調整する必要があった。しかし、結合調整ネジによる結合量の調整をコンピュータ制御するには、帯域通過フィルタの構造の複雑化が避けられなかった。さらに、金属板の段間の結合量を調整すると、通過帯域の中心周波数も変化してしまうため、中心周波数の変化分は誘電体で調整しなければならず、複雑な制御が必要であった。そのため、特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させることが困難であるという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、1枚の金属板に複数の空洞が空いており、空洞間の金属部分であるフィンラインの中心から、そのフィンラインに隣接するフィンラインの中心までを1/2波長としてTE01モードという共振モードで動作する導波管フィルタであった。そのため、特許文献1に開示されたチューナブル帯域通過フィルタは、構造的に小型化が難しいという問題があった。
【0008】
本開示の目的は、上述した課題のいずれかを解決する帯域幅可変バンドパスフィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様による帯域幅可変バンドパスフィルタは、
幅広面中央で上下に2分割された方形導波管によって挟持され、前記方形導波管の長手延長方向に並べられた複数の金属板と、
隣接する前記金属板の段間で、かつ、前記金属板の上部又は下部に配置された誘電体板と、
前記誘電体板と前記金属板との相対的位置関係を外部から変化させるための駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記誘電体板をフラップ運動させることで、前記誘電体板と前記金属板との相対角度を変化させる。
【0010】
他の態様による帯域幅可変バンドパスフィルタは、
幅広面中央で上下に2分割された方形導波管によって挟持され、前記方形導波管の長手延長方向に並べられた複数の金属板と、
隣接する前記金属板の段間で、かつ、前記金属板の上部又は下部に配置された誘電体板と、
前記誘電体板と前記金属板との相対的位置関係を外部から変化させるための駆動部と、を備え、
前記駆動部は、前記誘電体板を上下運動させることで、前記誘電体板と前記金属板との相対距離を変化させる。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させることができる帯域幅可変バンドパスフィルタを提供できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの一例を示す分解斜視図である。
図2図1に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Aから見た側面図である。
図3図1に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Bから見た上面図である。
図4】実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの他の例を示す上面図である。
図5図1に示した帯域幅可変バンドパスフィルタにおける誘電体板のフラップ運動の一例を示す側面図である。
図6図1に示した帯域幅可変バンドパスフィルタにおける通過特性の測定結果の一例を示すグラフである。
図7】実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの一例を示す分解斜視図である。
図8図7に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Cから見た側面図である。
図9図7に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Dから見た上面図である。
図10】実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの他の例を示す上面図である。
図11図7に示した帯域幅可変バンドパスフィルタにおける誘電体板の上下運動の一例を示す側面図である。
図12図7に示した帯域幅可変バンドパスフィルタにおける通過特性の測定結果の一例を示すグラフである。
図13】実施の形態1,2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタのコンピュータ制御に係る機能ブロックの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。なお、以下の記載及び図面は、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、以下の各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、以下で示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、これに限定されるものではない。
【0014】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの一例を示す分解斜視図である。図2は、図1に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Aから見た側面図である。図3は、図1に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Bから見た上面図である。なお、図2及び図3においては、方形導波管11,12を透過的に表している。
【0015】
図1図3に示されるように、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、方形導波管11,12と、金属板13−1〜13−3と、誘電体板14−1〜14−2と、駆動部15と、同軸コネクタ16−1〜16−2と、竿17と、を備えている。以下、金属板13−1〜13−3を特に区別することなく言及する場合には、単に「金属板13」と呼称することがある。同様に、誘電体板14−1〜14−2は、単に「誘電体板14」と呼称することがある。
【0016】
方形導波管11,12は、方形導波管が幅広面(H面。図1では垂直面)中央で上下に2分割されて形成されたものである。元の方形導波管の上半分が方形導波管11となり、元の方形導波管の下半分が方形導波管12となる。
【0017】
本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、3つの金属板13−1〜13−3を共振器として備えた3段構成のフィルタとなっている。ただし、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの段数は、3段に限定されず、2段以上であれば良い。
【0018】
金属板13−1〜13−3は、方形導波管11,12によって幅狭面(E面。図1では水平面)に平行に挟持され、所定の周波数で共振するように設計された、方形の薄い金属板である。金属板13−1〜13−3は、一端が方形導波管11又は12の内側壁に接続され、他端が開放端(つまり、他の部材と接していない)となる、半同軸型共振器である。また、金属板13−1〜13−3は、金属板13の側面同士が対向するように、方形導波管11,12の長手延長方向(x方向)に並べられている。また、初段の金属板13−1は、同軸コネクタ16−1に接続され、終段の金属板13−3は、同軸コネクタ16−2に接続されている。
【0019】
図1図3においては、金属板13−1〜13−3のうち隣接する2つの金属板13の一方は、一端が方形導波管11又は12の一方側の内側壁に接続され、隣接する2つの金属板13の他方は、一端が方形導波管11又は12の他方側の内側壁に接続されている。このタイプのフィルタは、インターディジタル型バンドパスフィルタと呼称される。
【0020】
ただし、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、インターディジタル型バンドパスフィルタに限定されない。本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、図4に示されるように、金属板13A−1〜13A−3の一端が、方形導波管11又は12の同じ側の内側壁に接続されても良い。このタイプのフィルタは、コムライン型バンドパスフィルタと呼称される。なお、図4は、図3に相当する上面図である。
【0021】
インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタにおいては、金属板13又は13Aは、方形導波管11,12の短手延長方向(y方向)の長さが1/4波長である1/4波長共振器として動作する。そのため、インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタは、導波管フィルタと比較して、小型化が容易であるという利点がある。
【0022】
なお、以下では、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタが、図1図3に示されるインターディジタル型バンドパスフィルタであるものとして説明を行う。
【0023】
同軸コネクタ16−1〜16−2は、金属板13−1〜13−3に電力を供給するためのコネクタである。
【0024】
誘電体板14−1〜14−2は、方形導波管11又は12の内側壁から内側の短手延長方向に離れた位置で、かつ、金属板13の段間の下側の位置に、方形導波管11,12の長手延長方向に並べられている。すなわち、金属板13−1,13−2の段間には誘電体板14−1が配置され、金属板13−2,13−3の段間には誘電体板14−2が配置されている。なお、誘電体板14−1〜14−2は、金属板13の段間の下側に配置されることには限定されず、金属板13の段間の上側に配置されても良い。
【0025】
竿17は、誘電体板14−1〜14−2をフラップ運動させるための竿状の棒であり、方形導波管11,12の長手延長方向に延びている。竿17は、方形導波管11,12の内部において、誘電体板14−1〜14−2の側面から貫通して、誘電体板14−1〜14−2に接続される。また、竿17は、一端が方形導波管11,12の外部(x方向プラス側)に突出し、駆動部15と接続される。
【0026】
駆動部15は、誘電体板14と金属板13との相対的位置関係を外部から変化させるためのものである。本実施の形態1においては、駆動部15は、誘電体板14−1〜14−2に竿17を軸としたフラップ運動を加える。駆動部15には、例えば、ステッピングモーターを用いることができる。
【0027】
誘電体板14−1〜14−2は、誘電率が1以上であり、金属板13−1〜13−3と共にバンドパスフィルタを構成する。誘電体板14−1〜14−2は、金属板13間の電磁界分布に影響を与える。
【0028】
本実施の形態1においては、駆動部15を用いて誘電体板14をフラップ運動させて、誘電体板14と金属板13との相対角度を変化させることによって、通過帯域の帯域幅を変化させる。
【0029】
図5は、本実施の形態1における誘電体板14−1〜14−2のフラップ運動の一例を示す図である。なお、図5の各図は、図2と同様に、図1に示される帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Aから見た側面図である。
【0030】
図5に示されるように、誘電体板14と金属板13との相対角度は、例えば、0°から180°まで変化させることができる。図5は、誘電体板14と金属板13との相対角度が、0°、45°、90°、135°、180°の時のそれぞれの状態を示している。
【0031】
以下、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの通過帯域の帯域幅の具体的な事例について説明する。ここでは、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタが、中心周波数が8GHzであり、図1図3に示されるインターディジタル型バンドパスフィルタであるものとする。
【0032】
図6は、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの通過特性の測定結果の一例を示すグラフである。図6においては、横軸は周波数[GHz]、縦軸はS21[dB]である。S21は、周波数に対する通過損失を示している。また、図6においては、図5に示されるように、誘電体板14と金属板13との相対角度を0°から180°まで変化させた時の、0°、45°、90°、135°、180°のそれぞれの状態での通過特性を示している。また、図6においては、誘電体板14−1〜14−2の比誘電率は10として計算している。
【0033】
図6に示されるように、相対角度が0°の時の通過帯域の帯域幅は、相対角度が90°の時の通過帯域の帯域幅の約1.46倍であることが分かる。また、相対角度0°と180°、及び、相対角度45°と135°は、方形導波管11,12の短手延長方向において、誘電体板14が竿17を中心に線対称の位置関係にある。相対角度が0°と180°の時、及び、相対角度が45°と135°の時は、互いに近い通過特性を示すことが分かる。また、通過帯域の帯域幅が変化しても、通過帯域の中心周波数は変化しないことが分かる。
【0034】
このように、駆動部15を用いて、誘電体板14をフラップ運動させることによって、インターディジタル型バンドパスフィルタの通過帯域の帯域幅を調整できることが分かる。図示していないが、コムライン型バンドパスフィルタも同様である。ただし、コムライン型バンドパスフィルタと比較すると、インターディジタル型バンドパスフィルタの方が、帯域幅が広帯域になる。
【0035】
上述したように本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタによれば、隣接する金属板13の段間で金属板13の上部又は下部に誘電体板14を配置し、駆動部15を用いて、誘電体板14をフラップ運動させて、誘電体板14と金属板13との相対角度を変化させることによって、通過帯域の帯域幅を変化させている。
【0036】
このように、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、駆動部15のみで、通過帯域の帯域幅を任意かつ連続的に変化させることができる。そのため、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させるためには、駆動部15を設けるという簡素な構造を採用すれば良く、特許文献1のように、結合調整ネジによる結合量の調整するための複雑な構造は必要としない。従って、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させることができるという効果が得られる。
【0037】
また、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタによれば、通過帯域の帯域幅が変化しても、通過帯域の中心周波数は変化しない。そのため、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、通過帯域の帯域幅を変化させた時に、通過帯域の中心周波数も調整するという複雑な制御は必要としない。このことも、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させることの実現に寄与する。
【0038】
また、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタによれば、インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタで実現される。インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタは、金属板13又は13Aが、方形導波管11,12の短手延長方向の長さが1/4波長である1/4波長共振器として動作する。
【0039】
そのため、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、特許文献1のような導波管フィルタと比較して、方形導波管11,12の長手延長方向のサイズを小さくすることができるため、小型化が容易であるという効果が得られる。
【0040】
また、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタによれば、インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタで実現されるため、電界結合と磁界結合とが足し合わせの関係となる。そのため、本実施の形態1に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、比較的大きな段間結合を得ることができ、広帯域バンドパスフィルタの設計に適しているという効果が得られる。
【0041】
<実施の形態2>
図7は、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの一例を示す分解斜視図である。図8は、図7に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Cから見た側面図である。図9は、図7に示した帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Dから見た上面図である。なお、図8及び図9においては、方形導波管21,22を透過的に表している。
【0042】
図7図9に示されるように、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、方形導波管21,22と、金属板23−1〜23−3と、誘電体板24−1〜24−2と、駆動部25と、同軸コネクタ26−1〜26−2と、竿27と、連結部材28と、を備えている。以下、金属板23−1〜23−3を特に区別することなく言及する場合には、単に「金属板23」と呼称することがある。同様に、誘電体板24−1〜24−2は、単に「誘電体板24」と呼称することがある。
【0043】
方形導波管21,22は、方形導波管が幅広面(H面。図7では垂直面)中央で上下に2分割されて形成されたものである。元の方形導波管の上半分が方形導波管21となり、元の方形導波管の下半分が方形導波管22となる。
【0044】
本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、3つの金属板23−1〜23−3を共振器として備えた3段構成のフィルタとなっている。ただし、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの段数は、3段に限定されず、2段以上であれば良い。
【0045】
金属板23−1〜23−3は、方形導波管21,22によって幅狭面(E面。図7では水平面)に平行に挟持され、所定の周波数で共振するように設計された、方形の薄い金属板である。金属板23−1〜23−3は、一端が方形導波管21又は22の内側壁に接続され、他端が開放端となる、半同軸型共振器である。また、金属板23−1〜23−3は、金属板23の側面同士が対向するように、方形導波管21,22の長手延長方向(x方向)に並べられている。また、初段の金属板23−1は、同軸コネクタ26−1に接続され、終段の金属板23−3は、同軸コネクタ26−2に接続されている。
【0046】
図7図9においては、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、インターディジタル型バンドパスフィルタとなっている。すなわち、金属板23−1〜23−3のうち隣接する2つの金属板23の一方は、一端が方形導波管21又は22の一方側の内側壁に接続され、隣接する2つの金属板23の他方は、一端が方形導波管21又は22の他方側の内側壁に接続されている。
【0047】
ただし、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、インターディジタル型バンドパスフィルタに限定されず、コムライン型バンドパスフィルタとしても良い。すなわち、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、図10に示されるように、金属板23A−1〜23A−3の一端が、方形導波管21又は22の同じ側の内側壁に接続されても良い。なお、図10は、図9に相当する上面図である。
【0048】
なお、以下では、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタが、図7図9に示されるインターディジタル型バンドパスフィルタであるものとして説明を行う。
【0049】
同軸コネクタ26−1〜26−2は、金属板23−1〜23−3に電力を供給するためのコネクタである。
【0050】
誘電体板24−1〜24−2は、方形導波管21又は22の内側壁から内側の短手延長方向に離れた位置で、かつ、金属板23の段間の下側の位置に、方形導波管21,22の長手延長方向に並べられている。すなわち、金属板23−1,23−2の段間には誘電体板24−1が配置され、金属板23−2,23−3の段間には誘電体板24−2が配置されている。なお、誘電体板24−1〜24−2は、金属板23の段間の下側に配置されることには限定されず、金属板23の段間の上側に配置されても良い。
【0051】
竿27は、誘電体板24−1〜24−2を上下運動させるための竿状の棒であり、上下方向(z方向)に延びている。竿27は、方形導波管21,22の内部において、誘電体板24−1〜24−2に接続される。図7図9においては、方形導波管11,12の長手延長方向に延びる棒状の連結部材28で誘電体板24−1〜24−2を連結し、この連結部材28に竿27が接続されている。ただし、竿27は、誘電体板24−1〜24−2の下面に直接接続されても良い。また、竿27は、一端が方形導波管21,22の外部(z方向マイナス側)に突出し、駆動部25と接続される。
【0052】
駆動部25は、誘電体板24と金属板23との相対的位置関係を外部から変化させるためのものである。本実施の形態2においては、駆動部25は、誘電体板24−1〜24−2に接続された竿27を介して、誘電体板24−1〜24−2に上下運動を加える。駆動部25には、例えば、ステッピングモーターを用いることができる。
【0053】
誘電体板24−1〜24−2は、誘電率が1以上であり、金属板23−1〜23−3と共にバンドパスフィルタを構成する。誘電体板24−1〜24−2は、金属板23間の電磁界分布に影響を与える。
【0054】
本実施の形態2においては、駆動部25を用いて誘電体板24を上下運動させて、誘電体板24と金属板23との相対距離を変化させることによって、通過帯域の帯域幅を変化させる。
【0055】
図11は、本実施の形態2における誘電体板24−1〜24−2の上下運動の一例を示す図である。なお、図11の各図は、図8と同様に、図7に示される帯域幅可変バンドパスフィルタを矢視Cから見た側面図である。
【0056】
図11に示されるように、誘電体板24と金属板23との相対距離は、例えば、0.35mmから1.85mmまで変化させることができる。図11は、誘電体板24と金属板23との相対距離が、0.35mm、0.85mm、1.85mmの時のそれぞれの状態を示している。
【0057】
以下、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの通過帯域の帯域幅の具体的な事例について説明する。ここでは、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタが、中心周波数が8GHzであり、図7図9に示されるインターディジタル型バンドパスフィルタであるものとする。
【0058】
図12は、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタの通過特性の測定結果の一例を示すグラフである。図12においては、横軸は周波数[GHz]、縦軸はS21[dB]である。また、図12においては、図11に示されるように、誘電体板24と金属板23との相対距離を0.35mmから1.85mmまで変化させた時の、0.35mm、0.85mm、1.85mmのそれぞれの状態での通過特性を示している。また、図12においては、誘電体板24−1〜24−2の比誘電率は10として計算している。
【0059】
図12に示されるように、相対距離が0.35mmの時の通過帯域の帯域幅は、相対距離が1.85mmの時の通過帯域の帯域幅の約1.33倍であることが分かる。
【0060】
このように、駆動部25を用いて、誘電体板24を上下運動させることによって、インターディジタル型バンドパスフィルタの通過帯域の帯域幅を調整できることが分かる。図示していないが、コムライン型バンドパスフィルタも同様である。ただし、コムライン型バンドパスフィルタと比較すると、インターディジタル型バンドパスフィルタの方が、帯域幅が広帯域になる。
【0061】
上述したように本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタによれば、隣接する金属板23の段間で金属板23の上部又は下部に誘電体板24を配置し、駆動部25を用いて、誘電体板24を上下運動させて、誘電体板24と金属板23との相対距離を変化させることによって、通過帯域の帯域幅を変化させている。
【0062】
このように、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、駆動部25のみで、通過帯域の帯域幅を任意かつ連続的に変化させることができる。そのため、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させるためには、駆動部25を設けるという簡素な構造を採用すれば良く、特許文献1のように、結合調整ネジによる結合量の調整するための複雑な構造は必要としない。従って、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させることができるという効果が得られる。
【0063】
また、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタによれば、インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタで実現される。インターディジタル型バンドパスフィルタ又はコムライン型バンドパスフィルタは、金属板23又は23Aが、方形導波管21,22の短手延長方向の長さが1/4波長である1/4波長共振器として動作する。
【0064】
そのため、本実施の形態2に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、特許文献1のような導波管フィルタと比較して、方形導波管21,22の長手延長方向のサイズを小さくすることができるため、小型化が容易であるという効果が得られる。
その他の効果は、実施の形態1と同様である。
【0065】
<実施の形態3>
上述したように、実施の形態1に係る駆動部15による誘電体板14のフラップ運動、及び、実施の形態2に係る駆動部25による誘電体板24の上下運動は、コンピュータ制御することが可能である。
【0066】
図13は、上記のコンピュータ制御に係る機能ブロックの一例を示すブロック図である。
図13に示されるように、コンピュータ90は、プロセッサの一例であるCPU(Central Processing Unit)91と、メモリの一例であるROM(Read Only Memory)92と、を備えている。
【0067】
実施の形態1の場合においては、ROM92は、帯域幅と相対角度(誘電体板14と金属板13との相対角度)との対応関係を示すデータを格納している。ROM92は、所望の帯域幅を示す周波数データ93が入力されると、所望の帯域幅に対応する相対角度を示すデータをCPU91に出力する。CPU91は、金属板13と誘電体板14との相対角度を、所望の帯域幅に対応する相対角度にするための制御信号を、駆動部15に出力する。駆動部15は、制御信号に応答して誘電体板14をフラップ運動させて、金属板13と誘電体板14との相対角度を変化させることによって、通過帯域の帯域幅を調整する。
【0068】
実施の形態2の場合においては、ROM92は、帯域幅と相対距離(誘電体板14と金属板13との相対距離)との対応関係を示すデータを格納している。ROM92は、所望の帯域幅を示す周波数データ93が入力されると、所望の帯域幅に対応する相対距離を示すデータをCPU91に出力する。CPU91は、金属板13と誘電体板14との相対距離を、所望の帯域幅に対応する相対距離にするための制御信号を、駆動部15に出力する。駆動部15は、制御信号に応答して誘電体板14を上下運動させて、金属板13と誘電体板14との相対距離を変化させることによって、通過帯域の帯域幅を調整する。
【0069】
なお、CPU91は、ROM92に記憶されたプログラムを読み出し、実行することで、上記の機能を実現しても良い。また、上記のプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータ90に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Compact Disc ROM)、CD−R(CD recordable)、CD−R/W(CD rewritable)、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータ90に供給されても良い。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバなどの有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータ90に供給できる。
【0070】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0071】
11,12 方形導波管
13−1〜13−3,13A−1〜13A−3 金属板
14−1〜14−2 誘電体板
15 駆動部
16−1〜16−2 同軸コネクタ
17 竿
21,22 方形導波管
23−2〜23−3,23A−1〜23A−3 金属板
24−1〜24−2 誘電体板
25 駆動部
26−1〜26−2 同軸コネクタ
27 竿
28 連結部材
90 コンピュータ
91 CPU
92 ROM
93 周波数データ
【要約】
【課題】バンドパスフィルタにおいて、コンピュータ制御で通過帯域の帯域幅を変化させることが困難である。
【解決手段】本開示に係る帯域幅可変バンドパスフィルタは、幅広面中央で上下に2分割された方形導波管11,12によって挟持され、方形導波管11,12の長手延長方向に並べられた複数の金属板13と、隣接する金属板13の段間で、かつ、金属板13の上部又は下部に配置された誘電体板14と、誘電体板14と金属板13との相対的位置関係を外部から変化させるための駆動部15と、を備える。駆動部15は、誘電体板14をフラップ運動させることで、誘電体板14と金属板13との相対角度を変化させる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13