(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)実施形態の概要
検査装置1(
図4)は、段付貫通孔(内径の大きい大径穴部と、その底面に形成された内径の小さい貫通部で構成された、内部に段差のある貫通孔)を、内径の大きい大径穴部に関してはピンを挿入して、物理的接触により欠陥を検出し、内径の小さい貫通部に関しては、光の通過を確認することにより光学的に欠陥を検出する。
内径の小さい貫通部をピンの挿入により検査すると、ピン折れが発生しやすいが、検査装置1は、ピンによる検査は、ピン折れが発生しにくい内径の大きい大径穴部とし、内径の小さい貫通部は光学的方法により非接触で検査するため、検査中におけるピン折れによる不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0010】
(2)実施形態の詳細
図1の各図を用いて、段付穴を検査する方法について説明する。
段付貫通孔(段付穴)は、部品(ワーク)の表面から途中まで形成された大径穴部と、大径穴部の底面に形成され、大径穴よりも内径の小さい貫通部(貫通穴)から構成されている。
本実施の形態では、大径穴部は、大径穴部検査ユニットで検査し、貫通部は、貫通部検査ユニットで検査する。
【0011】
まず、
図1、
図2を用いて、大径穴部検査ユニット30について説明する。
図1(a)は、検査対象である部品10の一例を示している。上図は、上面図であり、下図は断面図である。
部品10は、一例として、矩形状の外形を有する板状の機械部品であって、厚さ方向に複数の貫通孔が形成されている。
【0012】
これらの貫通孔のうち、部品10の両端側に近い領域に形成された基準貫通孔11、12は、検査の際に部品10の位置決めを行うための穴である。
なお、本実施の形態では、基準貫通孔11、12を貫通孔にて形成したが、位置決めができればよいので、貫通していない穴であってもよい。
【0013】
部品10の中央の領域に形成された貫通孔13、14、15は、例えば、歯車の軸穴や、抜き加工の下穴など、部品10を用いた製品の製造に使用され、これら貫通孔13、14、15が形成された領域が検査対象領域16となっている。
なお、本実施の形態では、貫通孔13、14、15を丸穴とするが、角穴でもよい。
【0014】
貫通孔13は、内径が一定の単純な貫通孔となっており、貫通孔14、15は、内径が途中で変化する段付貫通孔となっている。
例えば、貫通孔14は、部品10の一方の端面から所定の深さまで形成された大径穴部141と、大径穴部141の底面に、大径穴部141より内径が小さく、大径穴部141と同心に形成された貫通部142から構成されている。
【0015】
同様に、貫通孔15も同様に大径穴部151と貫通部152から構成されている。
ここでは、一例として、大径穴部151の深さは、大径穴部141よりも深く形成されている。
以下では、大径穴部141、151が形成された側の端面を上端面、他方の側の端面を下端面と呼ぶことにし、他の部材の上下方向もこれに倣うものとする。
なお、以下の説明で用いる上下方向は、便宜的なものであり、後述する検査装置1では、部品10を立てた状態で(即ち、上下方向が水平方向となった状態で)検査する。
【0016】
図1(b)は、大径穴部141、151を検査するための検査治具31を説明するための図である。
検査治具31は、部品10と同様の大きさを有する板部材20と、その下端面(部品10に向かう側の面)に形成された複数の突起部から形成されている。
【0017】
突起部には、基準貫通孔11、12に、それぞれ対応する基準ピン21、22と、大径穴部141、151に、それぞれ対応する検査用のピン24、25がある。これらのピンは、板部材20の下端面に剣山(金属製の台に突起が林立しているもの)のように林立している。
このように、剣山状に形成された検査治具31を部品10に向かって差し込む設計とすることにより、複数個の大径穴部を同時に検査することができる。
また、検査治具31は、検査のみならず、残留切粉を落とす機能も有している。
【0018】
基準ピン21、22は、それぞれ、基準貫通孔11、12に対応する位置に立てられており、その外径は、すき間ばめにて基準貫通孔11、12に挿入されるように、所定のはめ合い公差にて形成されている。
基準ピン21、22は、ピン24、25よりも長く形成されており、その先端は、基準貫通孔11、12に案内されやすいようにテーパ形状に形成される。
【0019】
このため、検査治具31を部品10に向かって移動させると、まず、基準ピン21、22が基準貫通孔11、12に挿入されて部品10を検査位置に引き寄せる。
このようにして、基準ピン21、22を用いて、検査治具31に対する部品10の位置決め精度を高めることができる。
基準ピン21、22により部品10の位置決めがなされた後、
図1(c)に示したように、引き続いてピン24、25が、大径穴部141、151に挿入される。
ピン24、25もすき間ばめにて大径穴部141、151に挿入されるようになっている。
【0020】
本実施の形態では、大径穴部141、151の検査は、大径穴部141、151が形成されていることを確認するものであって、ピン24、25の長さは、検査を要する所定の深さまでの必要最低限とし、ピン24、25の出入りをし易くした。
ピン24、25と大径穴部141、151の断面方向、及び端面方向の接触状態を検出することにより、大径穴部141、151が適切に形成されているか否かを判別することができる。
なお、本実施の形態では、ピン24、25の形状を大径穴部141、151に合わせて円柱形状としたが、大径穴部141、151の内径より小さい寸法形状で大径穴部141、151に干渉しなければ、角柱形状などの任意の形状とすることができる。
【0021】
図2の各図は、大径穴部検査ユニットの構成を説明するための図である。
大径穴部検査ユニット30は、検査治具31を用いて大径穴部141、151の欠陥を検知するアセンブリである。
【0022】
図2(a)は、大径穴部検査ユニット30の構成を示した図である。
板部材20の上端面には、棒部材33の下端が当該上端面に対して軸方向が垂直上方となるように固定されている。
棒部材33の上端は、板部材32の下端面に固定されており、板部材20と板部材32は、端面が平行となるように棒部材33によって結合されている。
板部材32の下端面には、後述の板部材37との接触を検知する接触センサ34が設置されている。
【0023】
板部材37には、中央に棒部材33を摺動可能に挿通する貫通孔が形成されており、板部材20と板部材32の間で棒部材33に沿って上下動することができる。
板部材37と板部材20の間には、板部材37を板部材32の側に付勢するコイルばね35が棒部材33と同心に設置されている。
板部材37は、コイルばね35の弾性力によって接触センサ34に押圧されて静止し、これによって板部材32から一定距離の位置に保持される。
【0024】
板部材37の側面には、板部材37を上下動する上下動機構36が設置されており、板部材37を所定の高さに保持している。
これによって検査治具31が空中に保持され、その下側の領域に検査対象の部品10を設置する空間が確保される。
【0025】
大径穴部検査ユニット30は、以上のように構成されており、これを用いた部品10の検査は、次のようにして行われる。
まず、検査治具31の下側の空間に部品10を設置する。
この状態で、上下動機構36を駆動して検査治具31を下降させて検査治具31の各ピンを部品10の対応する穴に挿入する。
【0026】
部品10の穴に欠陥がない場合、まず、基準ピン21、22が基準貫通孔11、12に挿入されて部品10を位置決めし、その後、
図2(b)に示したように、ピン24、25が、それぞれ大径穴部141、151に挿入される。
上下動機構36は、ピン24、25が大径穴部141、151の検査に必要なだけ挿入されると停止するように、その可動範囲が設定されている。
【0027】
大径穴部141、151に欠陥がない場合、ピン24、25は、大径穴部141、151に接触しないため、検査治具31は、部品10から力を受けない。
そのため、板部材32は、板部材37に対して移動せず、接触センサ34は、板部材37の上端面に接触したままとなる。大径穴部検査ユニット30は、このように接触センサ34が板部材37から離れたことを検知しないことにより、欠陥がないことを検出する。
【0028】
一方、大径穴部141、151のうち、少なくとも一方に欠陥があり、大径穴部が形成されていなかったり、異物が詰まっていたり、内径が不十分であったりした場合、
図2(c)に示したように、欠陥箇所にピン24、25が接触し、検査治具31が板部材37に対して押し上げられる。
図の例では、大径穴部151が形成されていないため、部品10の上端面にピン25の下端が当接して検査治具31が上方に押し上げられる。
これによって接触センサ34が板部材37の上端面から離れ、これが接触センサ34の出力から検知されて、大径穴部141、151の少なくとも一方に欠陥があることが検出される。
【0029】
このように、大径穴部検査ユニット30は、部品に形成された穴部(大径穴部)に所定の突部を挿入して、穴部の欠陥を検出する第1の検出手段として機能している。
そして、大径穴部検査ユニット30は、複数の穴部の位置に対応した複数の突部を有しており、複数の穴部に複数の突部を同一動作で挿入して、個々の穴部の欠陥を検出している。
更に、大径穴部検査ユニット30は、位置決めピンとして機能する基準ピン21、22を有しており、部品に形成されている複数の基準穴に複数の位置決めピンを挿入して部品の位置決めを行っている。
【0030】
以上のように、大径穴部に関しては、ピン折れしにくい太くて短いピンを差し込むことができるため、大径穴部検査ユニット30では、ピンの挿入による検査を行う。
なお、検査治具31では、板部材37に対する検査治具31の変位を接触センサ34で検出したが、変位が検出できるものであればよく、近接センサ、通電センサ、変位計などを用いることができる。
【0031】
図3(a)は、貫通部検査ユニット40の構成を説明するための図である。
貫通部検査ユニット40は、部品10の一方の端面を撮影するカメラ6、他方の端面を照明する照明5、及び、カメラ6で撮影した画像を解析する図示しないコンピュータを用いて構成されている。
照明5で部品10の端面に光を照射した状態で、これに対向する端面をカメラ6で撮影すると、貫通孔13、貫通部142、152を通過する光が撮影される。
【0032】
図3(b)は、このようにして撮影した画像の一例を示している。
画像41には、各穴を通過した光が撮影されている。
コンピュータは、画像41において、貫通孔13、貫通部142、152に該当する領域43、44、45に写っている明るい領域53、54、55の面積を計算し、当該面積が所定の閾値以上なら、これら貫通部が正常に形成されており検査合格であると判断する。
【0033】
一方、明るい領域の面積が閾値未満なら、貫通孔13、貫通部142、152が空いていなかったり、切り粉が詰まっているなどしているため、検査不合格と判断する。
このように、貫通部検査ユニット40は、ピン折れの発生しやすい細い貫通部を光の通過(透過)によって検査する。
【0034】
なお、基準貫通孔11、12に対応する領域51、52も光が通過するため明るく写るが、コンピュータは、領域51、52の明るい領域の位置によって、画像41の位置補正を行い、これに基づいて領域43、44、45を設定する。
また、貫通部検査ユニット40において、照明5の代わりに発光素子を用い、カメラ6の代わりに受光素子を用いることもできる。
【0035】
貫通部検査ユニット40は、穴部の底面に形成された、穴部の内径よりも小さい内径の貫通部の欠陥を、当該貫通部を通過する光に基づいて検出する第2の検出手段として機能している。
そして、貫通部検査ユニット40は、複数の貫通部を通過する光を同時に撮影することにより、複数の穴部の底面に形成された複数の貫通部の欠陥を同時に検出している。
【0036】
図4は、部品10の検査装置を説明するための図である。
検査装置1は、搬送レール2、大径穴部検査ユニット30、貫通部検査ユニット40、及びコンピュータ7などから構成されている。
搬送レール2は、部品10を搬送する搬送経路が内部の長手方向に形成された部材であって、長手方向が水平面に対して所定の角度だけ傾斜して設置されている。
また、部品10の姿勢は、搬送経路によって規定されており、部品10は、貫通部の貫通方向が水平となる姿勢を維持したまま(即ち、部品10の端面を立てた状態で)、搬送レール2内の搬送経路を高い側から低い側に自重により降下する。
このように、搬送レール2の搬送経路は、部品の方向を維持したまま自重により降下させる傾斜した経路として機能している。
【0037】
搬送経路の途中には、搬送経路の底部に形成された貫通孔から位置決めピン3、4が搬送経路を遮る方向に挿入できるようになっており、搬送レール2の下部には、位置決めピン3、4を個別に搬送経路に挿入したり引き抜いたりする図示しないピン駆動装置が取り付けられている。
位置決めピン3は、搬送レール2の上流側に設けられており、位置決めピン4は、下流側に設けられている。
【0038】
位置決めピン3、4がピン駆動装置により挿入されると、搬送レール2を降下する部品10が位置決めピン3、4に当接して、位置決めピン3、4により規定される所定の検査位置(大径穴部検査ユニット30、及び貫通部検査ユニット40用の検査位置)に停止し、位置決めピン3、4がピン駆動装置により抜かれると、部品10は、搬送レール2を更に降下する。
このように、検査装置1の大径穴部検査ユニット30、及び貫通部検査ユニット40による検査手段は、降下する部品を所定の部材に当接させて停止させることにより当該部品を支持する。
【0039】
位置決めピン3によって規定される検査位置には、検査用の開口部であるくり抜き窓63が搬送レール2の両側面に形成されており、くり抜き窓63の外部には大径穴部検査ユニット30が設置されている。
大径穴部検査ユニット30は、検査治具31をくり抜き窓63から搬送レール2の内部に挿入できるようになっており、位置決めピン3によって搬送レール2の途中の検査位置に支持された部品10に対して検査治具31を挿入し、大径穴部141、151の検査を行う。
【0040】
また、位置決めピン4によって規定される検査位置にも、検査用の開口部であるくり抜き窓64が搬送レール2の両側面に形成されており、くり抜き窓64の一方の側には部品10を撮影するカメラ6が設置され、対向する側には部品10に光を照射する照明5が設置されている。
部品10の貫通孔の貫通方向と、照明5の光の照射方向、及びカメラ6の撮影方向は、何れも同じ直線上にあるため、照明5から照射された光は当該貫通孔を通過し、カメラ6によって撮影される。
このように、大径穴部検査ユニット30と貫通部検査ユニット40は、部品10の端面を立てた状態で検査するため、貫通部の貫通方向が重力とは異なる方向となるように部品を支持して検査している。
【0041】
コンピュータ7は、大径穴部検査ユニット30の検査動作と貫通部検査ユニット40の検査動作を制御すると共に、検査結果の判断を行う。
大径穴部検査ユニット30での検査に関しては、コンピュータ7は、位置決めピン3を挿入して搬送レール2を降下してくる部品10を大径穴部検査ユニット30の検査位置に停止させる。
【0042】
そして、コンピュータ7は、検査治具31を駆動して部品10に挿入し、接触センサ34からの信号を確認して、大径穴部141、151の欠陥の有無を判断する。
検査が終わると、コンピュータ7は、位置決めピン3を抜いて部品10を自重により降下させて貫通部検査ユニット40の方へ送出する。
【0043】
一方、貫通部検査ユニット40での検査に関しては、位置決めピン4を挿入して搬送レール2を降下してくる部品10を貫通部検査ユニット40の検査位置に停止させる。
そして、コンピュータ7は、照明5で照らされた部品10をカメラ6で撮影し、その画像41を解析して貫通孔13、貫通部142、152の欠陥の有無を判断する。
検査が終わると、コンピュータ7は、位置決めピン4を抜いて部品10を自重により降下させて送出する。
【0044】
コンピュータ7は、大径穴部検査ユニット30での検査と、貫通部検査ユニット40での検査の両方で欠陥を検出しなかった場合に部品10を合格品であると判断し、少なくとも何れか一方で欠陥が検出された場合に不合格品であると判断する。
図示しないが、搬送レール2の更に下端側には、合格品を搬送する合格品搬送路と不合格品を搬送する不合格品搬送路が形成されており、コンピュータ7は、経路切替装置を駆動して、合格品は、合格品搬送路に送出し、不合格品は不合格品搬送路に送出する。
【0045】
このように、検査装置1は、大径穴部検査ユニット30と貫通部検査ユニット40の検出結果に基づいて部品の合否を判定する判定手段と、合格品搬送路か不合格品搬送路を選択することにより判定結果を出力する出力手段を備えている。
そして、当該判定手段は、大径穴部検査ユニット30で欠陥が検出されず、かつ、貫通部検査ユニット40で欠陥が検出されなかった場合は、部品を合格と判定し、少なくとも一方で欠陥が検出された場合は、部品を不合格と判定している。
【0046】
図5は、コンピュータ7のハードウェア的な構成を示した図である。
コンピュータ7は、CPU(Central Processing Unit)71、ROM(Read Only Memory)72、RAM(Random Access Memory)73、インターフェース74、入力装置75、出力装置76、記憶装置77などがバスラインで接続して構成されている。
【0047】
CPU71は、記憶装置などに記憶されたプログラムに従って、各種の情報処理や制御を行う中央処理装置である。
本実施の形態では、搬送レール2に部品10を投入する投入装置の制御、ピン駆動装置の制御、検査治具31の動作制御、カメラ6からの画像データの取り込み、画像データの位置補正、貫通孔13〜15の合否判定、及び合格品と不合格品の仕分け制御などを行う。
【0048】
ROM72は、読み取り専用メモリであって、コンピュータ7が動作する際の基本的なプログラムやパラメータなどが記憶されている。
RAM73は、読み書きが可能なメモリであって、CPU71が動作する際のワーキングメモリを提供する。
より詳細には、CPU71は、カメラ6で撮影した画像データや貫通孔13、貫通部142、152の判定に用いる光が通過した部分の面積の基準値、即ち、基準面積をRAM73上に展開し、画像上の光が通過した部分の面積と基準面積を比較して欠陥の有無を判断する。
【0049】
記憶装置77は、ハードディスクやEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)などの記憶媒体を用いて構成されており、コンピュータ7を動作させる検査プログラム、検査に用いる基準面積データ、検査結果(図示しない)などを記憶している。
基準面積データは、部品10に形成されている各貫通孔13、貫通部142、152の位置とこれらの判断基準の基準面積を規定している。
CPU71は、検査プログラムを実行することにより、検査動作を行い、基準面積データを用いて欠陥の有無を判断する。
【0050】
インターフェース74は、コンピュータ7をピン駆動装置、大径穴部検査ユニット30、貫通部検査ユニット40、経路切替装置などと接続するインターフェースである。
コンピュータ7は、インターフェース74を介して通信することにより、位置決めピン3、4を個別に抜き差ししたり、検査治具31を駆動して接触センサ34からの信号を受信したり、カメラ6から画像データを受信したり、ピン駆動装置や経路切替装置を制御したりする。
【0051】
入力装置75は、例えば、キーボードやマウスなど、作業者が検査装置1を操作するための入力装置である。
出力装置76は、例えば、検査画面を表示するモニタ画面、警告音などを出力するスピーカ、検査結果を印刷するプリンタなど各種の情報を作業者に提供するための出力装置である。
【0052】
図6は、検査装置1が部品10の検査を行う手順を説明するためのフローチャートである。
以下の処理は、検査装置1のCPU71が検査プログラムに従って行うものである。
まず、CPU71は、ピン駆動装置を駆動して位置決めピン3、4を搬送レール2の経路に挿入する(ステップ5)。
【0053】
次に、CPU71は、投入装置を駆動して搬送レール2に部品10を投入する(ステップ10)。
部品10は、搬送レール2を降下し、位置決めピン3に当接して大径穴部検査ユニット30の検査位置に停止する。
次に、CPU71は、大径穴部検査ユニット30を駆動して検査治具31を部品10の大径穴部141、151に挿入し(ステップ15)、接触センサ34の検出値により欠陥の有無を判断する(ステップ20)。
【0054】
欠陥がない場合(ステップ20;N)、CPU71は、大径穴部検査ユニット30を駆動して、部品10の大径穴部141、151に挿入した検査治具31を解除する(ステップ23)。
その後、CPU71は、ピン駆動装置によって位置決めピン3を引き抜いて解除する(ステップ25)。
部品10は、搬送レール2を降下し、位置決めピン4に当接して貫通部検査ユニット40の検査位置に停止する。
【0055】
次に、CPU71は、カメラ6で部品10を撮影し(ステップ30)、その画像41に基づいて貫通孔13、貫通部142、152における欠陥の有無を判断する(ステップ35)。
この欠陥有無の判断は、画像41のズレ量補正と、通過光面積による欠陥判断とによる。
画像41のズレ量補正は、カメラ6で撮影した画像41における部品10の搬送経路方向のずれ量、及び、回転方向のずれ量に応じて、基準面積データの座標系を補正することをいう。ステップ20における欠陥の判断の際に、部品10は、検査治具31の基準ピン21、22が基準貫通孔11、12に挿入されることで基準となる検査位置(基準面積データの座標系の原点位置)となっているが、その後ステップ23で挿入した検査治具31を解除した際に部品10がズレる場合があるため、このズレ量を補正するものである。但し、部品10の形状等により、検査治具の解除によるズレを生じない場合には、ズレ量補正は不要である。
【0056】
ズレ量補正について説明すると、まず、CPU71は、基準面積データを参照して、撮影された画像41から、例えば、公知のパターンマッチング処理等により、基準貫通孔11、12を特定する。
このパターンマッチング処理は公知の技術であるため詳しい説明は省略するが、基準貫通孔11、12の形状、配置等の特徴に基づいて、基準面積データと撮影された画像データに示された対象から、基準貫通孔11、12を特定する処理をいう。
次に、CPU71は、特定した基準貫通孔11、12の画像41に規定された座標値と、基準面積データに基づいて取得した基準貫通孔11、12の座標値とを比較して、撮影された部品10の傾きを検出する。
具体的には、CPU71は、画像データに示される基準貫通孔11、12の座標値から算出される直線と、基準面積データに基づいて取得した基準貫通孔11、12の座標値から算出される直線とを比較して、画像データに示される部品10が、画像基準面積データに示される部品10に対してどの程度傾いているか、傾きを算出する。
そして、CPU71は、算出された傾きに応じて、基準面積データを回転させることにより、ズレ量補正を行う。
【0057】
すなわち、CPU71は、ズレ量補正後の画像41における、貫通孔が形成されている領域にて光の通過した部分の面積を各貫通孔毎に行い、計算した各面積と、それぞれ対応する基準面積データに記録されている基準面積に対応する所定の閾値以上であるか否かを判断する。そして、CPU71は貫通孔の面積が所定の閾値以上であれば正常と判断し、所定の閾値未満であれば貫通部が存在しなかったり切り粉が詰まっている等の原因が考えられるため正常でないと判断する。
【0058】
以上による欠陥有無の判断(ステップ35)において、欠陥がないと判断された場合(ステップ35;N)、コンピュータ7は、部品10を合格と判断し(ステップ40)、位置決めピン4を引き抜いて解除する(ステップ45)。
部品10は、搬送レール2を降下し、CPU71は、経路切替装置を駆動して降下してくる部品10を合格品の搬送路に誘導することにより合格品に対する処理を行う(ステップ50)。
【0059】
次に、CPU71は、未検査の部品10があるか否かを判断し(ステップ55)、未検査の部品10がある場合は(ステップ55;Y)、ステップ5に戻り、未検査の部品10がない場合は(ステップ55;N)、検査を終了する。
【0060】
一方、ステップ20で欠陥があると判断した場合(ステップ20;Y)、CPU71は、部品10を不合格と判断して(ステップ60)、大径穴部検査ユニット30を駆動して、部品10の大径穴部141、151に挿入した検査治具31を解除する(ステップ63)。
その後、CPU71は、位置決めピン3、4を解除する(ステップ65)。
部品10は、搬送レール2を降下し、CPU71は、経路切替装置を駆動して降下してくる部品10を不合格品の搬送路に誘導することにより不合格品に対する処理を行って(ステップ80)、ステップ55に移行する。
【0061】
また、ステップ35で欠陥があると判断された場合(ステップ35;Y)、CPU71は、部品10を不合格と判断して(ステップ70)、位置決めピン4を解除する(ステップ75)。
部品10は、搬送レール2を降下し、CPU71は、経路切替装置を駆動して降下してくる部品10を不合格品の搬送路に誘導することにより不合格品に対する処理を行って(ステップ80)、ステップ55に移行する。
以上の処理により、部品10が合格品と不合格品に仕分けされる。
【0062】
以上に説明した実施の形態により、次のような効果を得ることができる。
(1)大きい内径と小さい内径を有する段付穴(段付貫通孔)において、大きい内径の部分を突部の挿入により検査し、小さい内径の部分を光の通過により検査することにより、当該段付穴が適切に形成されていることを確認することができる。
(2)内径の小さい部分には、ピンを差し込まないため、ピン折れを防ぐことができ、これにより、次工程での異物による装置破損などの不具合を防止することができる。
(3)内径の小さい部分の貫通をピンの挿入により検査する場合、当該貫通を確認するセンサを備えないと、誤判断が発生しやすいが、検査装置1は、光の通過で検査できるため、このようなセンサを備える必要がない。
(4)検査用のピンとして太くて短いものを使用できるため、ピン折れの発生率を著しく低減することができる。