(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508779
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】磁性体組成物を含むインダクタ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20190422BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20190422BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20190422BHJP
H01F 1/20 20060101ALI20190422BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 D
H01F41/02 D
H01F1/20
H01F27/255
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-230979(P2015-230979)
(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公開番号】特開2016-139788(P2016-139788A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年10月23日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0012618
(32)【優先日】2015年1月27日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ユン キュ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ミ ジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヘ ア
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ユン ユン
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ジェ ヨル
【審査官】
森 透
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−210820(JP,A)
【文献】
特開2014−60284(JP,A)
【文献】
特開2015−005581(JP,A)
【文献】
特開2001−196216(JP,A)
【文献】
特開2013−110171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 1/20
H01F 17/00
H01F 27/255
H01F 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結晶質の鉄系の物質を含む粗大粉末と、
結晶質の鉄系の物質を含む中間粉末と、
ニッケルを含む微細粉末と、を含み、
前記粗大粉末と前記中間粉末は65:35〜80:20の範囲の重量比を有し、且つ、前記微細粉末は前記粗大粉末及び前記中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加される、磁性体組成物。
【請求項2】
前記中間粉末の粒子サイズが前記粗大粉末より小さく、前記微細粉末より大きい、請求項1に記載の磁性体組成物。
【請求項3】
前記粗大粉末は、鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含み、且つ、25〜80μmの範囲の粒径を有する、請求項1または2に記載の磁性体組成物。
【請求項4】
前記中間粉末は2.5〜5μmの範囲の粒径を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁性体組成物。
【請求項5】
前記微細粉末は、結晶質または非結晶質のニッケルまたはニッケル合金を含み、且つ、60〜200nmの範囲の粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁性体組成物。
【請求項6】
前記ニッケル合金は、鉄、コバルト、モリブデン、アルミニウム、シリコン、クロム、すず、硼素、またはこれらの組み合わせの一つを含む、請求項5に記載の磁性体組成物。
【請求項7】
巻線形態を有するコイル部と、
請求項1の磁性体組成物を含み、且つ、前記コイル部の両端部のそれぞれを互いに対向する両端面に露出するように前記コイル部を埋め込むインダクタ本体と、
前記コイル部の前記両端部とそれぞれ接続されるように前記インダクタ本体の前記両端面に備えられる第1外部電極及び第2外部電極と、を含む、インダクタ。
【請求項8】
前記中間粉末の粒子サイズが前記粗大粉末より小さく、前記微細粉末より大きい、請求項7に記載のインダクタ。
【請求項9】
前記コイル部は銀または銅を含む、請求項7または8に記載のインダクタ。
【請求項10】
前記粗大粉末は、鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含み、且つ、25〜80μmの範囲の粒径を有する、請求項7から9のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項11】
前記中間粉末は2.5〜5μmの範囲の粒径を有する、請求項7から10のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項12】
前記微細粉末は、結晶質または非結晶質のニッケルまたはニッケル合金を含み、且つ、60〜200nmの範囲の粒径を有する、請求項7から11のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項13】
前記ニッケル合金は、鉄、コバルト、モリブデン、アルミニウム、シリコン、クロム、すず、硼素、またはこれらの組み合わせの一つを含む、請求項12に記載のインダクタ。
【請求項14】
前記インダクタ本体の前記両端面を連結する側面上に提供される覆い層をさらに含む、請求項7から13のいずれか一項に記載のインダクタ。
【請求項15】
前記覆い層は前記インダクタ本体と同一の物質を含む、請求項14に記載のインダクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ及びその製造方法に関するもので、より具体的には、インダクタンスが向上し、高周波数帯域で用いられることができるインダクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話(cellular phone)及び個人用コンピュータ(Personal Computer:PC)などの電子部品として用いられる多様なコイル(coil)部品の一つがインダクタ(inductor)である。インダクタは、磁束(magnetic flux)の変化に感応して誘導(inductive)起電力を発生させる。このような誘導起電力の大きさをインダクタのインダクタンス(inductance)と言い、インダクタンスはインダクタのコアの断面積、コイルの巻線数、及びコアの透磁率に比例して増加する。
【0003】
電子部品であるインダクタは、製造方法によって巻線型、積層型、または薄膜型に区別される。特に、パワー(power)インダクタは、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)などの電源端の平滑機能及び雑音(noise)を除去する役割を行う電子部品である。大電流が流れるパワーインダクタ、換言すると、電源用インダクタには主に巻線型が用いられる。巻線型パワーインダクタは、フェライト(ferrite)のドラム(drum)コアに銅(Cu)線を巻いた構造となり、高透磁率/低損失のフェライトコアを使用するため、小型であっても大きいインダクタンスを有するインダクタを製作することができる。
【0004】
また、高透磁率/低損失のフェライトコアは、銅線の巻線数を少なくしても同一のインダクタンスを得ることができるため、銅線の直流抵抗(Direct Current Resistance、DC resistance:Rdc)が小さくなり、バッテリー(battery)の消費電力を減らすのに寄与する。
【0005】
信号線(signal line)のフィルタ(filter)回路及びインピーダンス(impedance)マッチング(matching)回路などには積層型インダクタが主に用いられる。積層型インダクタは、フェライトシート(sheet)上にペースト(paste)状態の銀(Ag)などのような金属材料でコイルのパターン(pattern)を印刷し、これを複数の層に積層して製作される。1980年にTDKが世界で先駆的に製品化しており、携帯型ラジオ(portable radio)用の表面実装部品(Surface Mounted Device:SMD)として採用し始め、現在は、多様な電子機器に多く使用されている。積層型インダクタは、フェライトが立体的なコイルを全部覆う構造となっているため、フェライトによる磁気遮蔽(magnetic shielding)の効果により、磁気漏れ(magnetic leakage)が少なく、回路基板における高密度実装にも適する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、インダクタのインダクタンスを向上させ、高周波数帯域における使用を可能とする磁性体組成物を提供することにある。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、向上したインダクタンスを有し、高周波数帯域で用いることができるインダクタを提供することにある。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、向上したインダクタンスを有し、高周波数帯域で用いることができるインダクタの製造方法を提供することにある。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は以上で言及されている課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業者にとって明確に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、非結晶質の鉄系の物質を含む粗大粉末と、結晶質の鉄系の物質を含む中間粉末と、ニッケルを含む微細粉末と、を含むことができ、粗大粉末と中間粉末は65:35〜80:20の範囲の比を有し、且つ、微細粉末は粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加される磁性体組成物が提供される。
【0011】
粗大粉末は、鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含み、且つ、25〜80μmの範囲の粒径を有することができる。
【0012】
中間粉末は2.5〜5μmの範囲の粒径を有することができる。
【0013】
微細粉末は、結晶質または非結晶質のニッケルまたはニッケル合金を含み、且つ、60〜200nmの範囲の粒径を有することができる。ニッケル合金は、鉄、コバルト、モリブデン、アルミニウム、シリコン、クロム、すず、硼素、またはこれらの組み合わせの一つを含むことができる。
【0014】
また、本発明の他の側面によれば、巻線形態を有するコイル部と、上述の磁性体組成物を含み、且つ、コイル部の両端部のそれぞれを互いに対向する両端面に露出するようにコイル部を埋め込むインダクタ本体と、コイル部の両端部と接続されるようにインダクタ本体の両端面に備えられる第1外部電極及び第2外部電極と、を含むインダクタが提供される。
【0015】
コイル部は銀または銅を含むことができる。
【0016】
粗大粉末は、鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含み、且つ、25〜80μmの範囲の粒径を有することができる。
【0017】
中間粉末は2.5〜5μmの範囲の粒径を有することができる。
【0018】
微細粉末は、結晶質または非結晶質のニッケルまたはニッケル合金を含み、且つ、60〜200nmの範囲の粒径を有することができる。ニッケル合金は、鉄、コバルト、モリブデン、アルミニウム、シリコン、クロム、すず、硼素、またはこれらの組み合わせの一つを含むことができる。
【0019】
インダクタ本体の両端面を連結する側面上に提供される覆い層をさらに含むことができる。覆い層はインダクタ本体と同一の物質を含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
上述の通り、本発明の課題の解決手段によれば、ニッケルを含む微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加されることにより、インダクタのインダクタ本体の粉末充填率が向上することができる。これにより、インダクタのインダクタンスを高めるとともに、磁気共振周波数を100MHz以上の高周波数帯域に制御することができる磁性体組成物が提供されることができる。
【0021】
また、本発明の課題の解決手段によれば、インダクタ本体が、ニッケルを含む微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加された磁性体組成物を含むことにより、インダクタのインダクタ本体の粉末充填率が向上することができる。これにより、高いインダクタンスを有するとともに、100MHz以上の高周波数帯域に制御された磁気共振周波数を有するインダクタが提供されることができる。
【0022】
これに加え、本発明の課題の解決手段によれば、インダクタ本体が、ニッケルを含む微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加された磁性体組成物で形成されることにより、インダクタのインダクタ本体の粉末充填率が向上することができる。これにより、高いインダクタンスを有するとともに、100MHz以上の高周波数帯域に制御された磁気共振周波数を有するインダクタの製造方法が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例によるインダクタ及びその製造方法を説明するための概略的な立体図である。
【
図2】
図1のI−I'線に沿って切断した断面図である。
【
図3】本発明の実施例によるインダクタの一部の微細構造を説明するための写真である。
【
図4】本発明の実施例によるインダクタの一部の微細構造を説明するための写真である。
【
図5】本発明の実施例によるインダクタのインダクタンスに対する測定結果を示すグラフである。
【
図6】本発明の実施例によるインダクタのインダクタンス変化率に対する測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施例について説明する。しかし、本発明の実施例は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施例に限定されない。また、本発明の実施例は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0025】
図1は本発明の実施例によるインダクタ及びその製造方法を説明するための概略的な立体図であり、
図2は
図1のI−I'線に沿って切断した断面図である。
【0026】
図1及び
図2を参照すると、インダクタは、インダクタ本体130、インダクタ本体130の内部に備えられるコイル部140、インダクタ本体130の両末端にそれぞれ備えられる一対の外部電極122、124を含む。
【0027】
本発明の実施例によるインダクタは、積層型パワーインダクタを例に挙げて説明するが、これに限定されない。本発明の実施例によるコイル部140の構造を異ならせることにより、巻線型インダクタ、積層型インダクタ、薄膜型インダクタ、キャパシタ(capacitor)、サーミスタ(thermistor)などのような他の電子部品の機能を行うことができる。
【0028】
インダクタ本体130は磁性体組成物を含む。本発明の実施例による磁性体組成物は、非結晶質(noncrystalline)の鉄(Fe)系の物質を含む粗大(coarse)粉末、結晶質(crystalline)の鉄系の物質を含む中間(medium)粉末、及びニッケル(Ni)を含む微細(fine)粉末を含むことができる。粗大粉末と中間粉末は65:35〜80:20の範囲の比を有し、且つ、微細粉末は粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加されることができる。好ましくは、本発明の実施例による磁性体組成物は粗大粉末と中間粉末が70:30の比を有し、且つ、微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して5wt%添加されることができる。
【0029】
粗大粉末は、非結晶質の鉄−クロム−硫黄−炭素(Fe−Cr−S−C)系の物質を含むことができる。粗大粉末は、25〜80μmの範囲の粒径を有することができる。粗大粉末は、低周波数帯域において磁性体組成物の履歴(hysteresis)の損失を小さくし、且つ、高周波数帯域において磁性体組成物の渦電流(eddy current)の損失を最小化するために、25〜80μmの範囲の粒径を有し、且つ、絶縁性が高い非結晶質の鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含む粉末であることができる。
【0030】
中間粉末は、結晶質の鉄系の物質を含むことができる。中間粉末は2.5〜5μmの範囲の粒径を有することができる。中間粉末は、磁性体組成物の飽和電流(saturation current;Isat)を高めるために、高い飽和磁化(saturation magnetization;Ms)値を有し、且つ、2.5〜5μmの範囲の粒径を有する結晶質の鉄系の物質を含む粉末であることができる。
【0031】
微細粉末は、結晶質または非結晶質のニッケルまたはニッケル合金を含むことができる。微細粉末は、60〜200nmの範囲の粒径を有することができる。ニッケル合金は、鉄、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、すず(Sn)、硼素(B)、またはこれらの組み合わせの一つを含むことができる。微細粉末は、インダクタ本体130の粉末充填率及び飽和磁化値を高めるために、高い飽和磁化値を有し、且つ、60〜200nmの範囲の粒径を有する結晶質または非結晶質のニッケルまたはニッケル合金を含む粉末を用いることができる。
【0032】
本発明の実施例による磁性体組成物は、粒径が60〜200nmの範囲を有し、且つ、高い飽和磁化値を有するニッケルを含む微細粉末を含むため、インダクタ本体130の粉末充填率及び飽和磁化値が高くなることができる。これにより、インダクタのインダクタンスを高めることができる。また、ニッケルを含む微細粉末の添加量を制御することにより、インダクタの磁気共振周波数(Self−Resonant Frequency:SRF)が100MHz以上の高周波数帯域に制御されることができる。
【0033】
図示されていないが、インダクタ本体130とコイル部140の間には絶縁層が備えられることができる。絶縁層は、エポキシ(epoxy)、ポリイミド(PolyImide:PI)、ポリアミド(PolyAmide:PA)、またはこれらの組み合わせの少なくとも一つを含む物質で形成されることができる。または、絶縁層は、ガラス(glass)物質と低温焼成セラミック(ceramic)粉末を混合して形成されることができる。
【0034】
コイル部140は巻線形態を有することができる。また、コイル部140は銀または銅で形成されることができる。コイル部140の両端部は、インダクタ本体130の互いに対向する両端面に露出することができる。図示されていないが、積層された形態の回路パターンで構成されたコイル部140は、絶縁層または/及びインダクタ本体130を貫通する導電性ビア(via)を通じて電気的に連結されることができる。
【0035】
第1外部電極122及び第2外部電極124は、コイル部140の両端部とそれぞれ接続されるようにインダクタ本体130の両端面に備えられることができる。
【0036】
インダクタは、インダクタ本体130の両端面を連結する側面上に提供される覆い層110をさらに含むことができる。覆い層110は、インダクタ本体130と同一の物質で形成されることができる。これとは異なり、絶縁層がインダクタ本体130の両端面を連結する側面を覆うように形成されることができる。
【0037】
図3及び
図4は本発明の実施例によるインダクタの一部の微細構造を説明するための写真である。
【0038】
図3及び
図4を参照すると、
図3は25〜80μmの範囲の粒径を有する非結晶質の鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含む粗大粉末と2.5〜5μmの範囲の粒径を有する結晶質の鉄系の物質を含む中間粉末を70:30の比で混合して構成された混合物である磁性体組成物によって形成されたインダクタのインダクタ本体(
図2の130参照)の微細構造に対する写真である。また、
図4は25〜80μmの範囲の粒径を有する非結晶質の鉄−クロム−硫黄−炭素系の物質を含む粗大粉末と2.5〜5μmの範囲の粒径を有する結晶質の鉄系の物質を含む中間粉末を70:30の比で混合して構成された混合物に、ニッケルを含み、60〜200nmの範囲の粒径を有する微細粉末を、粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加した磁性体組成物によって形成されたインダクタのインダクタ本体の微細構造に対する写真である。
【0039】
図3及び
図4に示されているように、2元系磁性体組成物で形成されたインダクタ本体の微細構造である
図3に比べてニッケルが添加され、60〜200nmの範囲の粒径を有する3元系磁性体組成物で形成されたインダクタ本体の微細構造である
図4が高い粉末充填率を示すことが分かる。
【0040】
図5は本発明の実施例によるインダクタのインダクタンスに対する測定結果を示すグラフである。
【0041】
図5を参照すると、上述の
図3、及び
図4のように形成されたニッケルを含む微細粉末の含量が互いに異なるインダクタ本体(
図2の130参照)を含むインダクタのインダクタンスに対する測定結果が示されている。
図5のグラフに記載されたRefは、
図3の2元系磁性体組成物で形成されたインダクタ本体を含むインダクタのインダクタンスを示したものである。
【0042】
図5に示されているように、ニッケルを含む微細粉末の含量が5%まで増加するにつれて、インダクタのインダクタンスが増加することが分かる。これは、
図3及び
図4に示されているように、ニッケルを含む微細粉末が磁性体組成物に添加されることによりインダクタ本体の粉末充填率が高まることに起因してインダクタ本体の透磁率が増加するものと判断される。
【0043】
ニッケルを含む微細粉末の含量が5%以上に増加することにより、インダクタのインダクタンスが再び減少することが分かる。
【0044】
また、ニッケルを含む微細粉末が添加された磁性体組成物で形成されたインダクタ本体を含むインダクタの磁気共振周波数が100MHzに移動することも確認できた。これは、ニッケルを含む微細粉末が磁性体組成物に添加されることにより、インダクタ本体の粉末充填率が高まることに起因して共振周波数に影響を及ぼす寄生キャパシタンス(parasitic capacitance)が減少し、且つ、Q値が増加するものと判断される。
【0045】
図6は本発明の実施例によるインダクタのインダクタンス変化率に対する測定結果を示すグラフである。
【0046】
図6にはインダクタに印加される直流(Direct Current:DC)電流によるインダクタンスの容量変化率が示される。直流電流によるインダクタンスの容量変化は、印加される電流の大きさが増加するにつれて渦電流の損失が増加し、インダクタンスの容量減少につながるが、渦電流の損失はインダクタ本体を構成する粉末の最大サイズの二乗に比例して増加する。
図6のグラフに記載されたRefは、
図3の2元系磁性体組成物で形成されたインダクタ本体を含むインダクタのインダクタンスを示したものである。
【0047】
本発明の実施例による磁性体組成物で形成されたインダクタ本体を含むインダクタは、粗大粉末に比べて極めて小さい粒径を有するニッケルを含む微細粉末が用いられることにより、渦電流の損失が増加することに寄与しないのに対し、インダクタ本体の粉末充填率を高めることにより寄生キャパシタンスが減少し、且つ、Q値が増加することによって飽和電流が全般的に若干改善されることが分かる。
【0048】
本発明の実施例による磁性体組成物は、ニッケルを含む微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加されることにより、インダクタのインダクタ本体の粉末充填率が向上することができる。これにより、インダクタのインダクタンスを高めるとともに、磁気共振周波数を100MHz以上の高周波数帯域に制御することができる磁性体組成物が提供されることができる。
【0049】
また、本発明の実施例によるインダクタは、インダクタ本体が、ニッケルを含む微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加された磁性体組成物を含むことにより、インダクタのインダクタ本体の粉末充填率が向上することができる。これにより、高いインダクタンスを有するとともに、100MHz以上の高周波数帯域に制御された磁気共振周波数を有するインダクタが提供されることができる。
【0050】
これに加え、本発明の実施例による方法で製造されたインダクタは、インダクタ本体が、ニッケルを含む微細粉末が粗大粉末及び中間粉末の総重量に対して3〜7wt%の範囲で添加された磁性体組成物で形成されることにより、インダクタのインダクタ本体の粉末充填率が向上することができる。これにより、高いインダクタンスを有するとともに、100MHz以上の高周波数帯域に制御された磁気共振周波数を有するインダクタの製造方法が提供されることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有するものには明らかである。
【符号の説明】
【0052】
110 覆い層
122、124 外部電極
130 インダクタ本体
140 コイル部