(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508876
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20190422BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20190422BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20190422BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/81
A61Q19/00
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-33699(P2014-33699)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2015-157782(P2015-157782A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】丹後 弘隆
(72)【発明者】
【氏名】杉田 多喜男
【審査官】
松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/147861(WO,A1)
【文献】
特開昭62−298526(JP,A)
【文献】
特開2007−269712(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/039974(WO,A1)
【文献】
特開2014−196277(JP,A)
【文献】
Fresh & Light Moisturizing Cream(Database accession no. 1717563),DATABASE GNPD [ONLINE],MINTEL,2012年 2月
【文献】
Active Deep Wrinkles Smoothing Care(Database accession no.2251915)),DATABASE GNPD[ONLINE],MINTEL,2013.11[検索日 2018.04.25],2013年11月
【文献】
Anti-Aging Oxygenating System(Database accession no.1850030)),DATABASE GNPD[ONLINE],MINTEL,2012.06[検索日 2018.04.25],2012年 6月
【文献】
Elixir Royal(Database accession no.2270441)),DATABASE GNPD[ONLINE],MINTEL,2013.10[検索日 2018.04.25],2013年10月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/34
A61K 8/37
A61K 8/81
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)〜(D):
(A)イソプロピルメチルフェノール、
(B)2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットから選択される1種又は2種のエステル油、
(C)(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーと、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合体
(D)水
を含有する皮膚外用剤であって、成分(A)イソプロピルメチルフェノールが成分(B)のエステル油に溶解している、皮膚外用剤。
【請求項2】
成分(B)が2−エチルヘキサン酸セチル、及びテトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットを必須成分とする請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
アクネ用である、請求項1又は請求項2に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソプロピルメチルフェノールと、特定のエステル油と、アクリル酸系水溶性高分子を含有してなる皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
イソプロピルメチルフェノールは、広範な殺菌力と高い安全性を有し、抗菌剤として洗浄料のみならず皮膚外用剤にも広く使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−241012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでイソプロピルメチルフェノールを高い抗菌作用を保ちながら、安定に皮膚外用剤に配合することは、困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、イソプロピルメチルフェノールを、特定のエステル油に溶解し、アクリル酸系水溶性高分子の構造中に分散させることにより、安定な皮膚外用剤を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
(1)
下記の成分(A)〜(D):
(A)イソプロピルメチルフェノール、
(B)2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、イソステアリン酸ヘキシルデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチルから選択される1種又は2種以上のエステル油、
(C)アクリル酸系水溶性高分子
(D)水
を含有する皮膚外用剤。
【0007】
(2)
成分(B)が、2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットから選択される1種又は2種を必須成分とする(1)に記載の皮膚外用剤。
【0008】
(3)
成分(B)が2−エチルヘキサン酸セチル、及びテトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットを必須成分とする(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
【0009】
(4)
アクネ用である、(1)から(3)の一に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明は皮膚外用剤において、イソプロピルメチルフェノールを、特定のエステル油に溶解し、アクリル酸系水溶性高分子の構造中に分散させることにより、イソプロピルメチルフェノールを安定に配合することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0012】
本発明の皮膚外用剤は、
(A)イソプロピルメチルフェノール、
(B)2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、イソステアリン酸ヘキシルデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチルから選択される1種又は2種以上のエステル油、
(C)アクリル酸系水溶性高分子
(D)水
を必須成分として含有する。
【0013】
本発明の皮膚外用剤に配合する成分(A)、イソプロピルメチルフェノール(別名:3−メチル−4‘−イソプロピルフェノール)は、通常の化粧品、医薬品、医薬部外品などの皮膚外用剤に配合し得る化合物であれば特に種類を選ばない。イソプロピルメチルフェノールの皮膚外用剤への配合量は、洗い流さない皮膚外用剤としては皮膚外用剤全量に対し0.001〜0.1質量%を配合する。0.001質量%未満の配合では、抗菌効果を発揮できない場合がある。0.1質量%を超えて配合すると、皮膚刺激の原因となる場合がある。また、洗い流す皮膚外用剤に配合する場合は皮膚外用剤全量に対し、0.001〜1質量配合することができる。0.001質量%未満の配合では、抗菌効果を発揮できない場合がある。1質量%を超えて配合すると、皮膚刺激の原因となる場合がある。
【0014】
本発明の皮膚外用剤に配合する成分(B)2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、イソステアリン酸ヘキシルデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチルから選択される1種又は2種以上のエステル油は、通常の通常の化粧品、医薬品、医薬部外品などの皮膚外用剤に配合し得る化合物であれば特に種類を選ばない。
【0015】
ニキビ用の皮膚外用剤に配合する場合には、アクネ菌に対し資化性を示さない2−エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスチルから選択される1種又は2種以上のエステル油を用いることが好ましい。
【0016】
また皮膚外用剤の安全性の面から、2−エチルヘキサン酸セチル、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットから選択される1種又は2種を必須成分とすることが好ましい。さらにべたつか無い使用感の点から2−エチルヘキサン酸セチル、及びテトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリトリットを併用することが好ましい。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、成分(B)のエステル油を用いて、成分(A)イソプロピルメチルフェノールを溶解して用いる。成分(A)が外水相に存在すると、樹脂製の容器を用いた場合、樹脂面に成分(A)が吸着されてしまい、抗菌効果が発揮されない場合がある。アルミ製、ガラス製の容器ではかかる問題は発生しないが、チューブが使いにくい、重いなど使用しやすさの点で問題がある場合がある。
【0018】
成分(B)のエステル油は、皮膚外用剤に全量に対し、1〜50質量%、好ましくは1〜30質量%配合する。1質量%未満の配合では成分(A)を安定に溶解することが困難な場合がある。
【0019】
本発明の皮膚外用剤には成分(B)に示したエステル油以外のエステル油脂、炭化水素油脂、シリコーン油脂は、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤に配合する成分(C)アクリル酸系水溶性高分子は、アクリル基構造を有しているもので、皮膚外用剤として使用可能であればよく、特に限定されない。例えば、ポリアクリル酸及びその塩、カルボマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合体、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリロイルジメチルタウリン塩共重合体、アクリル酸塩・アクリロイルジメチルタウリン共重合体、アクリル酸アミド・アクリル酸−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合体、アクリロイルジメチルタウリン塩・ビニルピロリドン共重合体などが挙げられ、1種を単独で、若しくは2種以上を併用して用いる。
【0021】
これらのなかでも、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマー、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合体から選択される1種又は2種が好ましく用いられ、更に好ましくは(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーと、アクリルアミド・アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩共重合体を併用して用いることが好ましい。
【0022】
これらのアクリル酸系水溶性高分子は、水中でミセル構造を形成し、ミセル内部に油相を安定に取り込むことが可能である。そのため、乳化剤としての界面活性剤を配合しない、若しくは配合量を減量しても、安定な皮膚外用剤が得られるため、安全性に優れる。
【0023】
成分(C)の配合量は、併用する成分の量によって異なるが、皮膚外用剤全量に対し、0.05〜3質量%配合することができる。0.05質量%未満の配合では、安定なミセルを形成できない場合がある。3質量%を超えて配合すると、べたつきや、突っ張り感の点から使用感上問題となる場合がある。
【0024】
本発明の皮膚外用剤は、イソプロピルメチルフェノールが抗菌作用を発揮することから、フケ用、若しくはアクネ用皮膚外用剤として最適であり、特にアクネ用として有効である。
【0025】
本発明の皮膚外用剤においては、エタノール、フェノキシエタノールから選択される1種又は2種を配合しないことが好ましい。エタノール、フェノキシエタノールはイソプロピルメチルフェノールの良溶媒であり、油相中に存在するイソプロピルメチルフェノールがエタノール若しくはフェノキシエタノールに移行し、樹脂容器に吸着する場合があるためである。
【0026】
本発明の皮膚外用剤は、メイク落としや、顔用洗浄料、全身用洗浄料、シャンプー、リンス、トリートメントといった洗い流し用の皮膚外用剤として用いることができ、さらには、流動性の有るローション剤、流動性を有さないゲル剤、固形剤の剤型を有する洗い流さないタイプの皮膚外用剤としても用いることができる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤は、必須成分である(A)〜(D)のほか必要に応じて、通常皮膚外用剤に配合される、水性成分、油性成分、色素、乳化剤、紫外線吸収剤、増粘剤、薬剤、香料、樹脂、防菌防黴剤、アルコール類等を適宜配合することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0029】
[安定性試験]
実施例及び比較例は、所定の容器に充填し、40℃の恒温槽で6ヶ月間保管後、イソプロピルメチルフェノールの定量を行った。定量値が配合量の90質量%以上を○、80質量%以上90質量%未満を△、80質量%未満を×として、安定性を評価した。
[容器1]
最内相に色素を含む低密度ポリエチレンフィルム、中間層がアルミフィルム、最外層がオレフィン系フィルムである3層チューブ
[容器2]
エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体けん化物、積層容器
[容器3]
無軸延伸ポリプロピレン容器
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】