【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
図1は、本発明の実施例に係るヘッドホン1全体を示す斜視図であり、
図2は、ヘッドホン1のイヤカップ2Aを示す分解斜視図であり、
図3は、ヘッドホン1のヘッドバンド3の支持部材32を示す斜視図及び上面図であり、
図4は、ヘッドホン1の各部の位置関係を示す斜視図であり、
図5は、ヘッドホン1が頭部Hに装着された際のイヤカップ2A、2Bを示す模式図であり、
図6は、イヤカップ2Aを示す側面図である。本実施形態では、装着者の頭部Hの前方側を単に「前方側」と呼ぶとともに頭部Hの後方側を単に「後方側」と呼び、頭部Hの前方側から後方側に向かう方向を単に「前後方向」と呼ぶ。
【0020】
ヘッドホン1は、左右一対のイヤカップ2A、2Bと、一対のイヤカップ2A、2Bを連結するヘッドバンド3と、一対のイヤカップ2A、2B間に亘って設けられるコード部4と、回動部材5と、を備え、イヤカップ2A、2Bの近傍におけるヘッドバンド3の延在方向が上下方向に沿うように装着者によって装着される。
【0021】
左耳用のイヤカップ2Aと右耳用のイヤカップ2Bとは、左右略対称な形状を有するとともに略同一の構成を有しており、本実施形態では左耳用のイヤカップ2Aについて説明する。イヤカップ2Aは、
図2に示すように、クッション21と、図示しないスピーカユニットと、スピーカユニットを収容するハウジング22と、備える。また、左耳用のイヤカップ2Aには、スピーカユニットに信号を送信するコード部6が接続され、この信号がコード部4を介して右耳用のイヤカップ2Bのスピーカユニットに送信される。
【0022】
クッション21は、スポンジ等のクッション部材が合成皮革等の被覆部材で覆われて円環状に形成され、ハウジング22の装着者側に取り付けられる。クッション21のうち装着者に当接する面(
図2における左奥の面)が音放射面S1となる。
【0023】
ハウジング22は、ハウジング本体221と、ハウジング本体221に装着者側から固定される図示しない内側蓋部と、ハウジング本体221に装着者の反対側から固定される外側蓋部222と、外側蓋部222を覆うカバー部223と、を備える。
【0024】
ハウジング本体221は、例えば樹脂によって全体が一体に形成され、装着者の耳や側頭部と略平行になる円盤状の外面部221aと、外面部221aの外周に沿って装着者側に立設された内側立設壁221bと、外面部221aから装着者の反対側に立設された外側立設壁221cと、外側蓋部222を固定するための固定部221dと、外側立設壁221cの内側において外面部221aから装着者の反対側に立設された連結用立設部221eと、を有する。
【0025】
外側立設壁221cは、ヘッドバンド3の延在方向に対向する側壁と前後方向に対向する側壁との計4つの側壁を有し、側面視、上下に長い長方形状に形成され、連結用立設部221eを囲むように設けられる。
【0026】
連結用立設部221eは、外面部221aの略中央部に形成され、その左右に回動部材5を収容する凹部221fを有する。
【0027】
外側蓋部222は、例えば樹脂によって板状に形成され、固定部221dに固定するためのビス7が挿通される挿通孔222aと、連結用立設部221eの凹部221fとの間に回動部材5を挟み込む挟持部222bと、を有する。
【0028】
カバー部223は、例えば樹脂によって板状に形成され、その表面に適宜な意匠が形成されるとともに接着剤や両面テープ等によって外側蓋部222を覆うように固定される。
【0029】
イヤカップ2Aのスピーカユニットは、外面部221aと内側立設壁221bとによって囲まれた空間において、装着者側(クッション21側)を前方側として音を放射するように収容される。
【0030】
ヘッドバンド3は、頭部に装着される装着部31と、一対のイヤカップ2A、2Bを支持する支持部材32と、装着部31と支持部材32とを連結する連結部33と、を備える。
【0031】
装着部31は、装着者の頭部から離隔して装着される装着部本体311と、頭部に当接する当接バンド部312と、を備える。
【0032】
装着部本体311は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属部材によって正面視円弧状に形成されるとともに前後に対向する前方側部材311Aと後方側部材311Bとを有し、装着者の頭部の大きさに合わせて撓み変形可能に構成されている。撓み変形した装着部本体311の復元力によって、イヤカップ2A、2Bが側頭部に圧力を加えるようになっている。
【0033】
当接バンド部312は、例えば平らなゴム部材が人工皮革等の表面部材の内側に挿通されて構成されるとともに、ゴム部材が連結部33に固定されることで、頭部の大きさに合わせて表面部材がヘッドバンド本体に近づくようにゴム部材が弾性変形することができる。また、表面部材の内側には左右のイヤカップ2A、2Bのスピーカユニットを接続するコード部4が挿通される。
【0034】
支持部材32は、例えばアルミニウムやステンレス等の板状の金属部材を打ち抜き加工及び曲げ加工することによって形成され、
図1〜3に示すように、装着部本体311の前方側部材311Aの延長線上に延びる前方側上端部321Aと、後方側部材311Bの延長線上に延びる後方側上端部321Bと、前方側上端部321Aと後方側上端部321Bとの間に延びる分岐部322と、分岐部322から二股に延びる前頭部側枝部323及び後頭部側枝部324と、連結部33に固定される固定部320と、を備える。
【0035】
前頭部側枝部323は、前方側上端部321Aの延長線上、即ち、装着部本体311の前方側部材311Aの延長線上においてヘッドバンドの延在方向に沿って延びるとともに、
図3(A)に示すように、装着者の反対側に向かって凸に湾曲している。
【0036】
後頭部側枝部324は、分岐部322に連続して後方側に延びる第1面部324Aと、第1面部324Aに連続してヘッドバンドの延在方向に沿って先端部324aに向かって延びる第2面部324Bと、を有する。第1面部324Aは、後方側上端部321Bよりも後方側に延びるととともに、支持部材32の上方視図である
図3(B)に示すように、後方側に向かうにしたがって先端部324a側にある第1面部324Aの一部分が装着者に近づくとともに先端部324aの反対側にある第1面部324Aの他の部分が装着者から離れるようなねじれを有している。即ち、支持部材32を上方視した際に、第1面部324Aは、分岐部322近傍においては端面32Aのみが見え、後方側に延びるにしたがって裏面32B(装着者側の面)が徐々に見えるようになっていく。即ち、後頭部側枝部324は、装着者又は装着者の頭部Hから離れる方向に張り出したねじれの形状を有する。一方、第2面部324Bは、
図3(A)に示すように、後方側上端部321Bに対して全体が傾斜し、先端部324aに向かうにしたがって装着者に近づくように延びるとともに、装着者の反対側に向かってわずかに凸に湾曲している。
【0037】
以上のような前頭部側枝部323と後頭部側枝部324との関係の詳細について説明する。まず、後頭部側枝部324の先端部324aは、
図3(B)に示すように、前頭部側枝部323の先端部323aよりも装着者側に位置し、一対のイヤカップ2A、2Bが後方側において前方側よりも間隔が狭くなるように支持されるようになっている。また、前頭部側枝部323は、
図3(A)に示すように、後頭部側枝部324の第2面部324Bよりも大きな曲率を有して湾曲している(即ち、大きく湾曲している)。さらに、第2面部324Bが後方側上端部321Bよりも後方側に位置しており、前頭部側枝部323と後頭部側枝部324との中間部が、前後方向における装着部31の中央部(前方側部材311Aと後方側部材311Bとの中間部)よりも後方側に配置され、装着部31に対してイヤカップ2A、2Bが後方側に支持されるようになっている。また、前頭部側枝部323と後頭部側枝部324とは、
図6に示すように、ヘッドバンド3から離れるにしたがって前方側に向かうように、装着部本体311及び上端部321A、321Bに対して傾斜し、互いに略平行に延びている。後頭部側枝部324の先端部324aは、前頭部側枝部323の先端部323aよりもヘッドバンド3から離れた位置に配置される。尚、曲率が大きいとは、曲率半径が小さいことを意味する。また、各枝部における曲率半径は、枝部が延在方向に延びるにしたがって変化してもよく、変化する場合には曲率半径の平均値を比較すればよい。
【0038】
回動部材5は、例えば樹脂によって全体が一体に形成され、
図2に示すように、支持部材32の枝部323、324の先端部323a、324aを係止する係止溝51を有する。
【0039】
次に、支持部材32によるイヤカップ2Aの支持方法及び支持構造について説明する。まず、2つの回動部材5の係止溝51によって枝部323、324の先端部323a、324aをそれぞれ係止する。これらの回動部材5を凹部221fに収容し、外側蓋部222をハウジング本体221に固定することで、凹部221fと挟持部222bとによって回動部材5が回動可能に挟持される。即ち、先端部323a、324aの対向方向を回動軸A1として、イヤカップ2Aが支持部材32に対して回動可能に支持される。尚、各枝部323、324によるイヤカップ2Aの支持位置は、先端部323a、324aに限定されず、先端部323a、324aから多少離れた端部であってもよい。
【0040】
次に、ヘッドホン1の各部の位置関係及び寸法について説明する。
【0041】
まず、装着者がヘッドホン1を装着する前の状態では、イヤカップ2A、2Bは、ヘッドバンド3によって互いに交差する方向に向けられている(即ち、音放射方向が互いに交差する方向に向けられている)。この一対のイヤカップ2A、2Bの間隔、即ち、音放射面S1間の間隔は、
図4に示すように、後方側の間隔L1が前方側の間隔L2よりも狭くなっている。ヘッドホン1を頭部Hに装着した様子を上方視した模式図である
図5に示すように、音放射面S1の延長面は角度θ1を成して交差する。この角度θ1は、頭部Hの形状に応じた角度(例えば、10°以上30°以下)に設定される。尚、角度θ1は、非装着時において略一定に保たれる。また、角度θ1が装着時と非装着時とで略一定に保たれるように、イヤカップ2A、2Bがヘッドバンド3によって支持されるものとするが、角度θ1が装着者の頭部Hの形状に応じて装着時と被装着時とで変化する構成であってもよい。
【0042】
また、イヤカップ2Aの回動軸A1は、
図6に示すように、前後方向からヘッドバンド3の延在方向に傾斜するとともに、後方側に向かうにしたがってヘッドバンド3から離れるように後下がりに延びる。頭部Hは、前方且つ上方から後方且つ下方に向かうにしたがって幅が狭くなる形状を有しており、回動軸A1の傾斜角度θ2は、このような頭部Hの傾斜に沿った角度(例えば、5°以上25°以下)に設定されており、音放射面S1のうち回動軸A1に沿った部分は、側頭部への密着性が維持されるようになっている。
【0043】
上記の構成により、一対のイヤカップ2A、2Bの後方側の間隔L1が前方側の間隔L2よりも狭くなっていることで、音放射面S1を装着者の頭部の形状に合わせるようにヘッドホン1を装着することができる。このように音放射面S1を頭部の形状に合わせるためにイヤカップ2A、2Bを傾斜させればよく、簡単な構成とすることができる。さらに、耳周辺の側頭部の形状は比較的個人差が小さいため、このようにイヤカップ2A、2Bを傾斜させる構成によって個人差に対応することができ、密着性を向上させて遮音性を向上させることができる。
【0044】
また、イヤカップの回動軸A1が後下がりに傾斜していることで、密着性を維持しつつイヤカップ2A、2Bを回動させることができる。イヤカップ2A、2Bが回動可能に設けられることにより、頭部Hの形状や大きさの個人差に対応しやすくすることができる。
【0045】
また、前頭部側枝部323が後頭部側枝部324の第2面部324Bよりも大きな曲率を有することで、前方側に加える圧力を相対的に高くすることができ、音放射面S1が傾斜することによって前頭部側枝部によって加える圧力が低下してしまうことを抑制し、イヤカップ2A、2B全体の密着性を向上させることができる。このとき、第1面部324Aがねじれを有していることで、第2面部324Bの曲率を小さくすることができる。
【0046】
また、装着部31に対してイヤカップ2A、2Bが後方側に支持されることで、装着部31を頭部Hの前後方向における中央部に合わせて装着した際に、頭部の中央部よりも後方に位置する耳にイヤカップ2A、2Bを合わせやすくすることができる。
【0047】
また、支持部材32が板状の金属部材によって形成されていることで、曲げ加工によって、前頭部側枝部323や後頭部側枝部324のように湾曲やねじれを有した複雑な形状を容易に形成することができる。
【0048】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0049】
例えば、前記実施例では、音放射面S1の交差する角度θ1が10°以上30°以下となるものとしたが、この角度θ1は、後方側の間隔L1が前方側の間隔L2よりも狭くなるように、頭部Hの形状や大きさに合わせて適宜な値に設定されていればよい。
【0050】
また、前記実施例では、イヤカップ2A、2Bの回動軸A1の傾斜角度θ2が5°以上25°以下であるものとしたが、この傾斜角度θ2は頭部Hの形状や大きさに合わせて適宜な値に設定されていればよく、25°よりも大きくてもよいし、5°より小さくてもよいし、傾斜していなくてもよい。また、例えば装着部本体311の弾性によってイヤカップ2A、2Bを装着者の頭部に充分に密着させることができれば、イヤカップ2A、2Bは回動不能に構成されていてもよい。
【0051】
また、前記実施例では、左耳用のイヤカップ2Aと右耳用のイヤカップ2Bとが、左右略対称な形状を有するとともに略同一の構成を有するものとしたが、左右非対称な形状を有していてもよいし、異なる構成を有していてもよい。
【0052】
また、前記実施例では、後頭部側枝部324の先端部324aが前頭部側枝部323の先端部323aよりも装着者側に配されることによって音放射面S1が傾斜するものとしたが、イヤカップが後方側ほど厚くなるように形成されることで音放射面S1が傾斜する構成であってもよい。また、支持部材によるイヤカップの支持構造は、任意の形態であってよく、例えば、支持部材が1つの枝部を有するとともにイヤカップの一部がこの枝部を挟み込むように接続されてもよい。
【0053】
また、前記実施例では、前頭部側枝部323が後頭部側枝部324の第2面部324Bよりも大きな曲率を有するとともに、第1面部324Aがねじれを有するものとしたが、例えば2つの枝部323、324の厚さを適宜に設定することによって前方側と後方側とで側頭部に加える圧力が同程度とされていれば、2つの枝部の曲率は同程度とされていてもよいし、湾曲していなくてもよいし、第1面部がねじれを有していなくてもよい。
【0054】
また、前記実施例では、装着部31と支持部材32とが金属部材によって別体で形成されるものとしたが、支持部材が複雑な形状を有していない場合には、例えば樹脂等の適宜な材質で構成されていればよく、装着部と支持部材とが一体に形成されていてもよい。
【0055】
また、前記実施例では、装着部31に対してイヤカップ2A、2Bが後方側に支持されるものとしたが、装着部が耳の上方に位置するように装着されたり、装着部が上下方向に対して傾斜して装着されたりする構成であれば、装着部に対するイヤカップの前後方向位置は任意に設定されていればよい。
【0056】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。