(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508957
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】合成樹脂製チューブ
(51)【国際特許分類】
F16L 11/12 20060101AFI20190422BHJP
F16L 55/02 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
F16L11/12 Z
F16L55/02
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-14934(P2015-14934)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-138623(P2016-138623A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年8月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 友義
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−514547(JP,A)
【文献】
特開2010−036412(JP,A)
【文献】
特開平06−323711(JP,A)
【文献】
特開2013−095025(JP,A)
【文献】
特開2008−025623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 11/12
F16L 11/04−11/06
F16L 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するとともに内部に流体を通流可能な合成樹脂製チューブであって、
チューブ全体が、熱可塑性エラストマーを主体としアスカーC硬度で1〜30の硬度を有する樹脂組成物により構成され、
前記チューブの外周面が粘着性を有している合成樹脂製チューブ。
【請求項2】
可撓性を有するとともに内部に流体を通流可能な合成樹脂製チューブであって、
前記チューブの外周面の少なくとも一部が、粘着性を有する粘着部とされていて、
前記粘着部が、熱可塑性エラストマーを主体としアスカーC硬度で1〜30の硬度を有する第1の樹脂組成物により構成されており、
前記粘着部の内側には、第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物(ただし、フルオロポリマー又はシリコーンポリマーを含む樹脂組成物を除く)により構成される内層が積層されている、
合成樹脂製チューブ。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマーである請求項1もしくは請求項2に記載の合成樹脂製チューブ。
【請求項4】
前記粘着部がチューブの全長にわたって連続的に設けられた請求項3に記載の合成樹脂製チューブ。
【請求項5】
配管されたチューブと、チューブの近くに配置された周辺部材との間で、振動に伴って発生する騒音を防止する方法であって、
請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製チューブを配管し、当該チューブの粘着部を前記周辺部材に粘着させて、当該チューブを前記周辺部材に固定し、両者の間での騒音の発生を防止する方法。
【請求項6】
物品を加熱もしくは冷却する方法であって、
請求項1または請求項2に記載の合成樹脂製チューブを、前記物品の表面に沿って配置するとともに、前記チューブの粘着部を前記物品の表面に粘着させて、前記チューブを前記物品に固定し、
前記チューブ内に物品の温度よりも高温もしくは低温の流体を通流させて、物品を加熱もしくは冷却する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性に優れた合成樹脂製のチューブ、特にチューブ内部に流体を通流可能な可撓性の合成樹脂製チューブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チューブ内部に流体を通流可能な可撓性合成樹脂製チューブとしては、内部に水や油などの液体や、空気などの気体を通流できるよう中空円筒状に形成されたチューブ、いわゆるゴム製チューブや、熱可塑性エラストマー製チューブなどが知られている。これら合成樹脂製チューブは、材料の柔軟性によって可撓性が与えられている。そして、チューブ材料を適切に選択することにより、チューブに求められる種々の特性や要求、たとえば、耐屈曲性や耐キンク性、耐ガス透過性、耐湿性、耐薬品性などの特性に優れる合成樹脂製チューブが得られる。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱可塑性エラストマー組成物を押出成形したチューブに、熱可塑性エラストマー組成物により製造された補強部材が貼着された流体輸送用チューブが開示されており、当該流体輸送用チューブは、耐屈曲性に優れ、優れた耐ガス透過性、耐湿性などを併せ持つことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−195715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした従来の流体輸送用チューブを、液送用の配管などに使用すると、以下のような課題が生ずることが判明した。
【0006】
まず、こうした従来の流体輸送用チューブを配管した部位の周辺に各種機器や部材が存在する場合には(以下、配管されたチューブの近くに配置される機器や部材のことを「周辺部材」と記載する。)、周辺部材自体の振動や、チューブの振動により、チューブと周辺部材が接触と離脱を繰り返す騒音を発生することがある。このような騒音(ラトル音、振動接触騒音などと呼ばれる騒音)は耳障りである。また、このような接触・離脱に起因する騒音が発生すると、当該接触箇所でチューブもしくは周辺部材が損耗するおそれもある。
【0007】
また、容器や試料などの物品を加熱もしくは冷却する場合に、従来の流体輸送用チューブを当該物品の周囲に巻きつけた状態で固定し、チューブ内に高温もしくは低温の流体を通流させて、物品の加熱もしくは冷却することを、発明者は試みたが、従来の流体輸送用チューブでは、チューブを物品に沿うように固定するのが難しく、物品とチューブが十分に密着せず、加熱もしくは冷却の効率が低くなってしまうことが判明した。
【0008】
本発明の第1の課題は、チューブと周辺部材の間で、振動に伴って発生する騒音を防止することにある。また、本発明の第2の課題は、チューブを物品に固定しやすくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者は、鋭意検討の結果、特定の樹脂組成物によって、チューブの外周面の少なくとも一部に粘着性を有する粘着部を設けると、上記課題のうち少なくとも一つが解決されることを知見し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、可撓性を有するとともに内部に流体を通流可能な合成樹脂製チューブであって、チューブ全体が、熱可塑性エラストマーを主体としアスカーC硬度で1〜30の硬度を有する樹脂組成物により構成され
、前記チューブの外周面が粘着性を有している合成樹脂製チューブである(第1発明)。
また、本発明は、可撓性を有するとともに内部に流体を通流可能な合成樹脂製チューブであって前記チューブの外周面の少なくとも一部が、粘着性を有する粘着部とされていて、前記粘着部が、熱可塑性エラストマーを主体としアスカーC硬度で1〜30の硬度を有する第1の樹脂組成物により構成されており、前記粘着部の内側には、第1の樹脂組成物とは異なる第2の樹脂組成物(ただし、
フルオロポリマー又はシリコーンポリマーを含む樹脂組成物を除く)により構成される内層が積層されている、合成樹脂製チューブである(第2発明)。
【0011】
第1発明
もしくは第2発明においては、前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい(第
3発明)。さらに、第
3発明においては、前記粘着部がチューブの全長にわたって連続的に設けられることが好ましい(第
4発明)。さらに、第
4発明においては、チューブの全長にわたって、チューブが積層構造のチューブ壁を有し、チューブ壁の最外層の外周面全体が粘着部とされることが好ましい
。
【0012】
また、本発明は、配管されたチューブと、チューブの近くに配置された周辺部材との間で、振動に伴って発生する騒音を防止する方法であって、請求項1
もしくは請求項2に記載の合成樹脂製チューブを配管し、当該チューブの粘着部を前記周辺部材に粘着させて、当該チューブを前記周辺部材に固定し、両者の間での騒音の発生を防止する方法である(第5発明)。
また、本発明は、物品を加熱もしくは冷却する方法であって、請求項1
もしくは請求項2に記載の合成樹脂製チューブを、前記物品の表面に沿って配置するとともに、前記チューブの粘着部を前記物品の表面に粘着させて、前記チューブを前記物品に固定し、前記チューブ内に物品の温度よりも高温もしくは低温の流体を通流させて、物品を加熱もしくは冷却する方法である(第6発明)。
【発明の効果】
【0013】
第1発明ないし第4発明の合成樹脂製チューブによれば、チューブの外周面に設けられた粘着部が有する粘着性を利用して、チューブと他の物品を互いに粘着させることができる。チューブと他の物品が粘着すると、周辺部材とチューブの間で振動に伴って発生する騒音を防止できたり、チューブと他の物品との固定をたやすくしたりできる。
【0014】
また、第5発明の騒音防止方法によれば、配管されたチューブと、チューブの近くに配置された周辺部材との間で、振動に伴って発生する騒音を防止できる。また、第6発明の加熱方法もしくは冷却方法によれば、チューブを物品に沿って固定しやすくなり、物品を加熱もしくは冷却しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の合成樹脂製チューブを示す図である。
【
図2】合成樹脂チューブの他の実施形態例を示す図である。
【
図3】第1実施形態の合成樹脂製チューブを周辺部材の近くに配管した形態例を示す図である。
【
図4】第1実施形態の合成樹脂製チューブを他のチューブとまとめて配管した形態例を示す図である。
【
図5】第1実施形態の合成樹脂製チューブを容器に巻きつけて固定した形態例を示す図である。
【
図6】第1実施形態の合成樹脂製チューブを物品に巻きつけて固定した形態例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下図面を参照しながら、たとえば理化学機器の配管に用いられる可撓性の合成樹脂製チューブを例として、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。また、チューブの用途は特に限定されない。
【0017】
図1に、第1実施形態の合成樹脂製チューブ1の外観を示す。チューブ1は、熱可塑性エラストマーを主体とする樹脂組成物により、中空円筒状に形成されており、可撓性を有する。チューブ1は、内部に流体を通流可能である。チューブ1は、液体や気体を送る用途や、液体や気体の圧力を伝える用途に使用できる。
【0018】
チューブ1の外周面は、粘着性を有する粘着部11とされている。粘着部は、後述する他の実施形態のように、チューブ外周面の一部であってもよい。本実施形態のチューブ1においては、チューブの外周面全体が粘着部11となっている。
【0019】
粘着部11を構成する樹脂組成物について説明する。粘着部は、熱可塑性エラストマーを主体とする樹脂組成物により構成される。樹脂組成物中の熱可塑性エラストマー成分は、50重量%以上であることが好ましい。樹脂組成物中には、主体となる熱可塑性エラストマーのほかに、他の樹脂材料やゴム材料やエラストマー成分を含ませてもよく、補強材やタッキファイヤー、軟化剤などの各種添加物を含ませてもよい。樹脂組成物の主体となる熱可塑性エラストマーとしては、特にスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。また、樹脂組成物は、アスカーC硬度で1〜30の硬度を有する。樹脂組成物の硬度は、アスカーC硬度で5〜25の硬度を有することがより好ましい。ここで、アスカーC硬度とは、SRIS 0101(日本ゴム協会規格)及びJIS 6050に準拠して、スプリング式硬さ試験機アスカーC型を使用して測定した硬度である。
【0020】
粘着部を構成する樹脂組成物は粘着性を有する。この粘着性により、チューブ1の粘着部11の表面が他の物体に粘着する。スチレン系熱可塑性エラストマーを主体としたアスカーC硬度1〜30の樹脂組成物は、特に粘着性の発現が良好であり、粘着部の構成材料に適している。
【0021】
粘着部を構成可能な、粘着性を有しアスカーC硬度が1〜30の硬度を有する熱可塑性エラストマー組成物の一例としては、クラレプラスチックス株式会社製のアーネストン(登録商標)JS20Nが例示される。
【0022】
第1実施形態のチューブ1においては、チューブ全体が粘着部を構成する樹脂組成物により構成されている。また、チューブ1は、粘着性を有するスチレン系熱可塑性エラストマーを主体とする樹脂組成物により構成されている。このようなチューブ1は、樹脂組成物を半溶融状態で円筒状に押し出したのちに冷却する、押出し成形により製造することができる。
【0023】
チューブの具体的構成や粘着部の設け方は、変更可能である。
例えば、
図2(a)に示す第2実施形態の合成樹脂製チューブ2のように、チューブ2のチューブ壁を内層22と外層21の積層構造に構成し、外層21を上記粘着性の樹脂組成物によって構成して、チューブ2の外層21すなわち外周面全体が粘着部21aとなるように構成してもよい。この場合、内層22の材料は、他のエラストマー材料やゴム材料としてもよい。また、内層22には粘着性を与える必要はない。チューブ壁の積層構造は、3層以上であってもよく、その場合は、最外層を構成する樹脂組成物に粘着性を与えて、チューブの外周面全体を粘着部とすればよい。
【0024】
上記実施形態のチューブ1、2では、チューブの外周面全体が粘着部となっていたが、必ずしも外周面全体が粘着部とされる必要はなく、チューブ外周面には、少なくとも一部に粘着部が設けられていればよい。
例えば、
図2(b)に示す第3実施形態の合成樹脂製チューブ3のように、チューブ3の外周面に、チューブの長手方向に沿って、チューブ3の全長にわたって連続的に粘着部31,31を設けてもよい。このようなチューブ3も押出し成形を応用して製造できる。粘着部がチューブの全長にわたって連続的に設けられていると、チューブの長さ方向の任意の箇所で粘着性が得られるので、チューブの固定しやすさにおいて好ましい。
【0025】
あるいは、
図2(c)に示す第4実施形態の合成樹脂製チューブ4のように、粘着部41,41がチューブ4の外周面に断続的に設けられていてもよい。粘着部の間には、非粘着性の部分42,42が断続的に設けられている。チューブ4の全長にわたって、粘着部41,41と、非粘着部42,42とが交互に繰り返し設けられていることが好ましく、このようになっていると、チューブを任意の長さに切った際にも、チューブ外周面に粘着部41,41が点在するようにできる。
【0026】
また、
図2(d)に示す第5実施形態の合成樹脂製チューブ5のように、チューブ外周面にチューブ5の全長にわたって連続的にらせん状の粘着部51,51を設けてもよい。粘着部51,51の間には、非粘着性の部分52,52がらせん状に設けられている。粘着部がらせん状であると、粘着部の面積を少なくして粘着部の材料を節約しながらも、チューブ外周面を長さ方向に見ても周方向に見ても粘着部が断続的に配置されることになって、チューブを他の物体に固定しやすくなる。
【0027】
以下、粘着部が設けられた合成樹脂製チューブの作用効果、およびその活用方法について説明する。上記実施形態のチューブは、チューブ外周面に設けられた粘着部が有する粘着性により、他の物品の表面に粘着する。この粘着性を利用して、以下のような便利な使い方ができる。
【0028】
例えば、第1実施形態の合成樹脂製チューブ1によって、騒音の発生を防止できる。
図3は、第1実施形態の合成樹脂製チューブ1を、一連の管路を構成する管継手71,72に接続し配置した状態を示す。管継手71上流側から供給される液体が、チューブ1を通じて、管継手72の下流側へと送られる。チューブ1が配管される経路の近くには、周辺部材70が配置されている。周辺部材は、たとえば、計測装置であったり、原動機であったり、ポンプであったり、モーターであったり、フレームであったり、容器、ケースやカバーであったりする。
【0029】
チューブ1の外周面の粘着部を周辺部材70の表面に粘着させて、チューブ1を周辺部材70に固定すると、チューブ1と周辺部材70との間での騒音の発生を防止できる。従来のチューブにおいては、配管されたチューブと、チューブの近くに配置された周辺部材との間で、チューブと周辺部材とが干渉すると、両者が固定されていないため、振動によってチューブと周辺部材が接触・離脱を繰り返し、振動に伴って騒音(ビビリ音、ラトル音、振動接触音)が発生する。上記実施形態のチューブ1では、チューブ1の外周面に設けられた粘着部11が周辺部材70に粘着し、固定されるので、振動が与えられても、両者が接触・離脱を繰り返すことがなく、騒音の発生が防止される。
【0030】
振動に伴う騒音の発生をより確実に防止するためには、
図3中に区間Aと示したように、チューブ1を所定の長さにわたって、周辺部材70に粘着させて固定することが好ましい。区間Aは、好ましくはチューブ1の直径の3倍以上、特に好ましくはチューブ1の直径の7倍以上確保することが好ましい。
【0031】
図4には、他の使用形態の例を示す。本実施形態においては、第1実施形態のチューブ1と、従来のチューブ77,78を束ねて配管する使用例を示す。第1実施形態のチューブ1は、管継手71、72の間に配管されて、管継手71から管継手72への流体の通流を可能にしている。チューブ77は、管継手73、74の間に配管されて、管継手73から管継手74への流体の通流を可能にしている。チューブ78は、管継手75、76の間に配管されて、管継手75から管継手76への流体の通流を可能にしている。
【0032】
それぞれ配管されたチューブ1、77、78は、途中の部分(図中では区間Bとして示す)で、チューブ1の粘着部が有する粘着性を利用して束ねられている。すなわち、区間Bにおいて、チューブ77やチューブ78の外周面をチューブ1の外周面の粘着部に粘着させて、これらチューブを束ね、互いに固定している。これにより、固定部材や結束部材を節約もしくは省略しながら、チューブ同志を束ねて配置でき、チューブの配管がきれいにできる。また、チューブ同志が粘着して束ねられていると、チューブの束の変形がしにくくなるので、チューブの束の配管経路が定めやすく、チューブの管理がしやすくなる。
【0033】
また、この使用形態においても、チューブ同志が振動により接触・離脱して騒音を発生することを防止できる。
【0034】
また、この使用形態では、配管されたチューブ同志が束ねられた区間Bで、互いに密着して配置されるので、それぞれのチューブ内を通流する流体間での熱交換を行うこともできる。たとえば、チューブ77,78に高温の流体を流して、チューブ1を流れる流体を温めることもできる。
【0035】
図4のような使用形態においては、チューブがまとまりやすいよう、第1実施形態のチューブ1や、第2実施形態のチューブ2や、第5実施形態のチューブ5を使用することが特に好ましい。また、束ねるべきチューブ群の中に含まれる従来のチューブ(77,78)の数や割合が少ない方が、チューブ群をまとまりよく束ねることができる。特にすべてのチューブを上記実施形態の粘着部を有するチューブ(たとえば第1実施形態のチューブ1)とすることが好ましい。
【0036】
図5、
図6には、さらに他の使用形態を示す。
図5の使用形態では、上記実施形態のチューブ1が、容器8に巻きつけられて固定されており、チューブ1内部に高温の流体を流すことにより、容器8や容器8内の液体などを加熱できる。
図5、
図6ではこの流体の供給・排出を矢印で示している。逆に、チューブ1内部に低温の流体を流すことにより、容器8や容器8内の液体などを冷却することもできる。ここで、高温・低温とは、容器や容器内の液体などの温度に対して高温か低温かという意味である。
【0037】
容器8へのチューブ1の固定は、チューブ1が有する粘着部の粘着性を利用して行われ、チューブの固定がたやすくなる。また、チューブ1と容器とが粘着性を利用して固定されるので、両者が互いに密着し、加熱や冷却が効率的に行われうる。容器8の外周面に沿ってチューブ1を巻きつけるように配置すると、チューブが特に固定しやすくなる。容器8の内周面に沿うようにチューブをらせん状に粘着させて配置してもよい。また、容器が角筒状など、平面部と角部・コーナー部により構成されるような形状である場合には、チューブ1を容器の一つの平面上に蛇行するように配置して粘着させて固定するようにしてもよい。
【0038】
また、
図6に示すように、加熱・冷却したい物品が固体である場合には、物品81に、直接チューブ1を巻きつけて固定するようにしてもよい。チューブ1の可撓性を利用して、物品81の外周面にチューブ1を巻きつけ、チューブ1の粘着部が有する粘着性を利用して、チューブ1を物品81に固定する。そして、物品81の温度よりも高温もしくは低温の流体をチューブ1に通流させて、物品81を加熱もしくは冷却することができる。チューブ1を加熱や冷却用途に使用すると、容器のみならず、多様な形状の物品に直接チューブ1を密着配置した状態で固定でき、加熱や冷却が効率的である。
【0039】
上記の使用形態においては、チューブの固定等がしっかり行われることが好ましく、そのためには、チューブ1の粘着部の粘着性が高い方が好ましい。粘着部の粘着力は、たとえば、垂直方向に延在する平滑面に対し、チューブ1を略水平方向に延在するように密着配置して粘着させた際に、チューブが自重で落下することなく、密着させた位置にとどまる程度の粘着力を有することが好ましい。また、チューブに通流させる流体を充填した状態でも、自重でチューブが落下しない程度の粘着力を有することがより好ましい。また、略水平方向に延在する平滑面の上にチューブを密着配置して粘着させ、その後平滑面をひっくりかえして、平滑面の下にチューブが来るように平滑面を略水平にした場合でも、チューブが自重で落下することなく、密着させた位置にとどまる程度の粘着力を有することが特に好ましい。
【0040】
また、上記使用形態において、チューブの粘着部の粘着力が強すぎると、チューブの取り扱い性がかえって悪くなることがあるので、粘着力は、粘着したチューブの取り外しが、手作業で、チューブや相手部材(周辺部材や容器等の物品)を破損することなく行いうる程度の粘着力であることが好ましい。
【0041】
また、上記使用形態における、チューブの固定については、固定のための補助手段が使われてもよい。補助手段としては、チューブのガイドとなる溝や、カバー、クリップ、紐などが例示される。
【0042】
また、上記実施形態のチューブに対して、識別ラベルを簡単に取り付けることもできる。識別ラベルとしては、紙や、フィルムなどが使用できる。識別ラベルをチューブの粘着部に粘着させると、チューブに識別ラベルを固定できる。識別ラベルの固定を確実にするためには、識別ラベルをチューブの粘着部に巻きつけるように粘着させて固定することが好ましい。
【0043】
また、上記実施形態のチューブ1,2,3,4,5においては、いずれもチューブの形状が中空円筒状であるチューブであったが、チューブの具体的形状は変更可能である。特に加熱や冷却等に使用するためのチューブとする場合には、対象物品との接触がよくなるように、チューブの断面形状が楕円状、方形状、D字型形状などとすることも好ましい形態である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
上記実施形態の合成樹脂製チューブは、流体を通流する用途に使用でき、粘着部の粘着性を利用して周囲の物品に固定でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0045】
1 合成樹脂製チューブ
11 粘着部
2,3,4,5 合成樹脂製チューブ
21a,31,41,51 粘着部
21 外層
22 内層
42,52 非粘着部
70 周辺部材
71,72,73,74,75,76 管継手
77,78 チューブ
8 容器
81 物品