(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、設備や躯体の老朽化を理由として、建築物の解体が行われる。
建築物を解体する方法としては、以下のような方法がある。
例えば、地表面から既存建物に沿ってマストを設置し、このマストにタワークレーンを取り付けて、このタワークレーンにより解体材を荷下ろしする方法がある。この場合、マストを既存建物の構造体に仮固定しておき、建物の解体に伴って、リフトダウンさせる(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、地表面から既存建物に沿ってタワークレーンを用いた場合では、地表面から最上階まで大型のマストを構築する必要があるため、解体工事が大掛かりとなって、施工費用が増大する、という問題があった。
【0004】
この問題を解決するため、例えば、既存建物の最上階の既存床の上にクレーンを設置して、このクレーンの設置された一部の既存床を既存柱に沿ってリフトダウンしながら、このクレーンで既存建物を解体する解体方法が提案されている。
この解体方法では、クレーンの設置された既存床をリフトダウンする場合、既存柱に反力部材を取り付けて、この反力部材に反力をとって、クレーンの設置された既存床を吊り下ろす。この解体方法によれば、大型のマストが不要となり、施工費用を削減できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、以上の解体方法では、既存柱を解体する際に、この反力部材を一旦吊り上げて、解体対象である既存柱から離れた位置に仮置きする必要があった。そのため、工程が長期化する、という問題があった。
【0007】
本発明は、短工期で既存構造物を解体できる解体システムおよび解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の解体システム(例えば、後述の解体システム2)は、既存構造物を解体する解体システムであって、既存構造物の所定のフロア(例えば、後述の屋上階)における既存床(例えば、後述の既存床14)の一部を含むクレーン設置床(例えば、後述のクレーン設置床20)と、当該クレーン設置床を支持する既存柱(例えば、後述の既存柱11)である支持柱(例えば、後述の支持柱11A)と、前記クレーン設置床上に設置されたクレーン(例えば、後述のクレーン30)と、前記クレーン設置床を前記支持柱に沿って下降させる昇降装置(例えば、後述の昇降装置40)と、を備え、当該昇降装置は、前記支持柱の上端に取り付けられた反力部材(例えば、後述の反力部材41)と、当該反力部材に取り付けられた吊り材(例えば、後述の吊り材42)と、前記クレーン設置床に設けられて前記支持柱に係止可能な係止装置(例えば、後述の係止装置43)と、当該係止装置に設けられて前記吊り材を引っ張る昇降ジャッキ(例えば、後述の昇降ジャッキ44)と、を備え、前記反力部材は、互いに略平行に設けられた一対の反力梁(例えば、後述の反力梁60)と、当該一対の反力梁同士を連結する連結梁(例えば、後述の連結梁61)と、前記反力梁に沿って移動可能でかつ前記支持柱の上面および側面に当接可能な一対のスライド梁(例えば、後述のスライド梁62)と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、既存構造物の所定のフロアにおける既存床の一部を含んでクレーン設置床とし、このクレーン設置床を支持する既存柱を支持柱として、クレーン設置床上にクレーンを設置する。次に、クレーンを用いて、所定のフロアのうちクレーン設置床および支持柱を除いた部分を解体する。次に、クレーン設置床を支持柱に沿って下降させて、その後、支持柱の上部を撤去する。これらの工程を繰り返すことで、既存構造物の既存床や既存柱を利用しながらクレーンをリフトダウンして、既存構造物を解体する。
【0010】
ここで、昇降装置を、反力部材、吊り材、係止装置および昇降ジャッキを含んで構成し、この反力部材を、反力梁、連結梁およびスライド梁を含んで構成した。そして、支持柱の上部を解体する際に、クレーンで昇降装置の反力部材を吊り上げて、この反力部材のスライド梁を外側に移動して支持柱の上面および側面から引き離し、この状態で、反力部材を吊り下ろして係止装置の上に載置する。
したがって、反力部材を解体対象である支持柱の直下に仮置きできるので、従来のように、支持柱から離れた位置に仮置きする必要がなく、短工期で解体できる。
【0011】
請求項2に記載の解体システムは、前記一対のスライド梁は、それぞれ、鉛直方向に延びる円筒形状のパイプ(例えば、後述のパイプ661)を備え、各スライド梁のパイプ同士を上下に重ねた状態で、連結ピン(例えば、後述の連結ピン53)を挿入可能であることを特徴とする。
【0012】
この発明では、一対のスライド梁のそれぞれに、鉛直方向に延びる円筒形状のパイプを設けて、各スライド梁のパイプ同士を上下に重ねた状態で、連結ピンを挿入可能とした。
よって、支持柱の上端に取り付けた反力部材からクレーン設置床を吊下げ支持しても、連結ピンによりスライド梁同士を連結したので、スライド梁同士の間隔を保持しつつ、スライド梁の転倒を防止して、支持柱から安定して反力をとることができる。
【0013】
請求項3に記載の解体システムは、前記反力部材は、反力部材吊下げ治具(例えば、後述の反力部材吊下げ治具45)を介して、前記クレーンで吊下げ支持可能であり、当該反力部材吊下げ治具は、前記クレーンで吊下げ支持される吊下げ治具本体(例えば、後述の吊下げ治具本体51)と、当該吊下げ治具本体と前記反力部材とを連結する所定長さの吊りワイヤ(例えば、後述の吊りワイヤ52)と、前記吊下げ治具本体から吊下げ支持された連結ピン(例えば、後述の連結ピン53)と、を備え、当該連結ピンは、前記スライド梁のパイプに挿通されることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、反力部材吊下げ治具に連結ピンを吊下げ支持したので、反力部材吊下げ治具をクレーンで吊り上げるだけで、スライド梁のパイプから連結ピンが抜かれて、スライド梁が移動可能となる。よって、スライド梁の移動作業が容易となる。
【0015】
請求項4に記載の解体方法は、上述の解体システムを用いて既存構造物を解体する解体方法であって、既存構造物の所定のフロアにおける既存床の一部を含んでクレーン設置床とし、当該クレーン設置床を支持する既存柱を支持柱として、前記クレーン設置床上にクレーンを設置する第1工程(例えば、後述のステップS1)と、前記昇降装置を取り付ける第2工程(例えば、後述のステップS2)と、前記クレーンを用いて、前記所定のフロアのうち前記クレーン設置床および前記支持柱を除いた部分を解体する第3工程(例えば、後述のステップS3)と、前記昇降装置の昇降ジャッキを駆動して、前記クレーン設置床を前記支持柱に沿って下降させる第4工程(例えば、後述のステップS4、S5)と、前記クレーンで前記昇降装置の反力部材を吊り上げて、当該反力部材のスライド梁を移動して前記支持柱の上面および側面から引き離し、この状態で、当該反力部材を吊り下ろして前記係止装置の上に載置する第5工程(例えば、後述のステップS6、S11〜S13)と、前記支持柱の上部を撤去する第6工程(例えば、後述のステップS6、S14)と、前記クレーンで前記反力部材を吊り上げて、前記スライド梁を移動して前記支持柱の上面および側面に当接させる第7工程(例えば、後述のステップS6、S15〜S17)と、前記第3工程から第7工程までを繰り返す第8工程(例えば、後述のステップS7、S8、S9)と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、支持柱の上部を解体する際、反力部材を吊り下ろして係止装置の上に載置する。よって、反力部材を解体対象である支持柱の直下に仮置きできるので、従来のように、支持柱から離れた位置に仮置きする必要がなく、短工期で解体できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る解体システムが適用された既存建物の平面図である。
【
図2】前記実施形態に係る既存建物の縦断面図である。
【
図3】前記実施形態に係る解体システムの拡大平面図である。
【
図4】前記実施形態に係る解体システムの拡大縦断面図である。
【
図5】前記実施形態に係る解体システムの昇降装置の側面図である。
【
図6】前記実施形態に係る解体システムの昇降装置の平面図である。
【
図9】前記実施形態に係る解体システムのスライド梁の側面図である。
【
図10】前記実施形態に係る解体システムの反力部材吊下げ治具の平面図である。
【
図11】前記実施形態に係る反力部材吊下げ治具の側面図である。
【
図12】前記実施形態に係る解体システムのかんぬき装置の側面図および正面図である。
【
図13】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順のフローチャートである。
【
図14】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順の説明図(その1)である。
【
図15】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順の説明図(その2)である。
【
図16】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順の説明図(その3)である。
【
図17】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順の説明図(その4)である。
【
図18】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順の説明図(その5)である。
【
図19】前記実施形態に係る解体システムにより既存建物を解体する手順の説明図(その6)である。
【
図20】前記実施形態に係る解体システムの反力部材を下方に移設する手順のフローチャートである。
【
図21】前記実施形態に係る解体システムの反力部材を下方に移設する手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および
図2に示す既存建物1は、n(nは自然数)階の建物であり、平面視で正方形状である。以下、この既存建物1の一側面に沿った方向をX方向とし、このX方向に略直交する方向をY方向とする。
【0019】
既存建物1は、ラーメン構造で、複数の鉄骨造の既存柱11と、複数の鉄骨造の既存梁12と、複数の鉄骨造の既存小梁13と、鉄筋コンクリート造の既存床14と、を備える。
この既存建物1を、以下の解体システム2を用いて解体する。
【0020】
図3および
図4に示す解体システム2は、既存建物1の屋上階の既存床14の一部を含むクレーン設置床20と、このクレーン設置床20を支持する既存柱11である支持柱11Aと、クレーン設置床20上に設置されたクレーン30と、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿って下降させる昇降装置40と、既存建物1の周囲に架設された外部足場50(
図1、
図2参照)と、を備える。
【0021】
クレーン設置床20は、既存建物1の屋上階中央部の2スパン×2スパンの大きさの部分である。
具体的には、クレーン設置床20は、2スパン×2スパンの大きさの既存床14Aと、この既存床14Aを支持する既存梁12Aと、この既存梁12Aから延びて既存床14Aを支持する既存小梁13Aと、を備える。
【0022】
支持柱11Aは、既存柱11の一部の柱であり、クレーン設置床20を支持する。具体的には、支持柱11Aは、クレーン設置床20の四隅に位置している。
【0023】
クレーン30は、基部31と、この基部31に旋回可能に支持されたクレーン本体32と、このクレーン本体32に起伏可能に支持されたジブ33と、このジブ33の先端に吊り下げ支持されたフック34と、クレーン本体32に設けられてフック34を昇降させる巻上装置35と、を備える(
図1参照)。
このクレーン30の作業半径(
図1中実線Pで示す)には、既存建物1の全体が収まっている。
【0024】
クレーン設置床20の上には、H形鋼である一対の大引材21が載置され、これら一対の大引材21同士の間には、一対の大引材21に略直交して一対の根太材22が載置されている。
具体的には、一対の大引材21は、X方向に沿って互いに略平行に延びており、支持柱11A同士を連結する既存梁12A同士の間に架設されている。
【0025】
一対の根太材22は、Y方向に沿って互いに略平行に延びており、一対の大引材21同士の間に架設されている。これら一対の根太材22は、一対の大引材21に沿ってX方向に走行可能である。
クレーン30の基部31は、これら一対の根太材22の上に設置されており、このクレーン30の基部31は、根太材22に沿ってY方向に走行可能である。
【0026】
このように、クレーン30の基部31が根太材22に沿ってY方向に移動可能であり、かつ、一対の根太材22が一対の大引材21に沿ってX方向に走行可能であるので、クレーン30は、クレーン設置床20上でX方向およびY方向に移動可能となっている。
【0027】
図5〜
図8に示す昇降装置40は、
図4にも示すように、支持柱11Aの上端に取り付けられた反力部材41と、この反力部材41に取り付けられた吊り材42と、クレーン設置床20に設けられて支持柱11Aに係止可能な係止装置43と、係止装置43に設けられて吊り材42を引っ張る昇降ジャッキ44と、を備える。
【0028】
反力部材41は、互いに略平行に設けられた一対の反力梁60と、これら一対の反力梁60の両端同士を連結する連結梁61と、反力梁60に沿って移動可能でかつ支持柱11Aの上面および側面に当接可能な一対のスライド梁62と、を備える。
反力梁60は、一対の溝形鋼601を背中合わせに配置して、プレート602で連結したものである。この反力梁60の長さ方向力中央には、吊り材42が定着される定着ヘッド603が設けられている。また、反力梁60と連結梁61とは、矩形枠状に連結されている。
【0029】
図9に示すスライド梁62は、一対の反力梁60に跨がって設けられた長尺状のスライド梁本体63と、このスライド梁本体63の下面に設けられた芯出しガイド64と、スライド梁本体63の長さ方向両端の上面に設けられた一対の係合部65と、スライド梁本体63の長さ方向両端から突出して設けられた一対のパイプブラケット66と、を備える。
【0030】
芯出しガイド64は、支持柱11Aの側面に当接する当接部641と、この当接部641を支持するガイド本体642と、を備える。
【0031】
スライド梁本体63は、H形鋼であり、このスライド梁本体63の下フランジには、長さ方向に沿って延びる長孔631が形成されている。芯出しガイド64のガイド本体642は、この長孔631にボルトで固定されている。これにより、支持柱11Aの大きさに合わせて、芯出しガイド64の位置を、長孔631の長さの範囲内で調整可能となっている。
【0032】
このスライド梁本体63は、支持柱11Aの上に載置され、スライド梁本体63の下フランジが支持柱11Aの上面に当接する。
【0033】
係合部65は、スライド梁本体63の上フランジの上面に取り付けられている。この係合部65とスライド梁本体63の上フランジとの間には、隙間が形成されており、この隙間に、スライド梁62の外側の溝形鋼601の下フランジが挟み込まれている。これにより、スライド梁62は、反力梁60の外側の溝形鋼601に沿ってスライド可能となっている。
【0034】
パイプブラケット66は、鉛直方向に延びる円筒形状のパイプ661と、このパイプ661をスライド梁本体63から支持する支持片662と、を備える。
一対のスライド梁62同士では、パイプ661の高さ位置が異なっており、これにより、一対のスライド梁62が吊り材42を挟んで所定間隔離れた状態で、パイプ661同士が上下に重ねて配置されるようになっている。
【0035】
以上の反力部材41は、反力部材吊下げ治具45を介して、クレーン30により吊り下げ可能となっている。
【0036】
図10、
図11に示す反力部材吊下げ治具45は、矩形枠状の吊下げ治具本体51と、吊下げ治具本体51の四隅と反力部材41の四隅とを連結する所定長さの吊りワイヤ52と、吊下げ治具本体51から吊下げ支持された連結ピン53と、を備える。
連結ピン53は、スライド梁62のパイプ661に挿通されており、これにより一対のスライド梁62は、互いの間隔を保持している。
【0037】
図3および
図4に戻って、クレーン設置床20の既存床14Aの支持柱11Aの周囲(パネルゾーン)には、貫通孔23が形成されている。
係止装置43は、クレーン設置床20の貫通孔23に設けられており、支持柱11Aを囲む矩形枠状である。
この係止装置43は、
図5に示すように、支持柱11Aに取り合う既存梁12Aの下側に配置されたかんぬき梁70と、支持柱11Aに取り合う既存梁12Aの上側に配置された載荷梁80と、これらかんぬき梁70と載荷梁80とを連結する8つの連結部材90と、を備える。
【0038】
かんぬき梁70は、
図7に示すように、矩形枠状のかんぬき梁本体71と、かんぬき梁本体71の四隅に設けられて内側に向かってかんぬき721を突没させるかんぬき装置72と、かんぬき梁本体71の上面の2箇所に設けられて内側に向かってガイド部732を突没させる振れ止めガイド73と、を備える。
【0039】
図12に示すかんぬき装置72は、かんぬき721を突出させて支持柱11Aの梁継手部15に係止させるものである。
このかんぬき装置72は、かんぬき梁本体71に収納可能に設けられたかんぬき721と、このかんぬき721を突没させる油圧ジャッキ722と、を備える。
油圧ジャッキ722の基端側は、ピン723により水平方向を回転軸として回転可能にかんぬき梁本体71に支持されている。これにより、かんぬき721の上下方向および水平方向のある程度の揺れに追従可能となっている。
【0040】
振れ止めガイド73は、
図7に示すように、かんぬき梁本体71の互いに対向する位置に設けられ、ガイド部732を、支持柱11Aの対角線上に位置する2つの出隅部に当接させて、係止装置43の支持柱11Aに沿った昇降を案内するものである。
この振れ止めガイド73は、かんぬき梁本体71に固定されたガイド本体731と、このガイド本体731に摺動可能に設けられたガイド部732と、ガイド本体731とガイド部732との間に介装された裏込めブロック733と、を備える。
振れ止めガイド73では、裏込めブロック733の厚みを変化させることにより、支持柱11Aの大きさに合わせて、ガイド部732の突出寸法を調整可能である。
【0041】
載荷梁80は、
図8に示すように、矩形枠状である。既存梁12Aの上面には、山形鋼81が溶接固定されており、この山形鋼81は、載荷梁80の入隅部分に係止している。
【0042】
連結部材90は、かんぬき梁70のかんぬき梁本体71の下面に設けられた定着板91と、載荷梁80の上面に設けられた定着板92と、所定の張力が導入されて定着板91と定着板92とを連結するPC鋼線93と、を備える。
【0043】
以上の昇降装置40によれば、昇降ジャッキ44を駆動して、吊り材42を所定の力で引っ張ることにより、クレーン設置床20を支持柱11Aから吊り下げ支持した状態で、この支持柱11Aに沿って昇降できる。
【0044】
また、外部足場50は、地表面から複数段積層された枠組足場であり、既存建物1を囲んで架設されている。
【0045】
以下、既存建物1を解体する手順について、
図13のフローチャートを参照しながら具体的に説明する。
ステップS1では、
図14に示すように、クレーン30を屋上階に設置する。
まず、既存建物1の周囲に外部足場50を架設する。次に、既存建物1の屋上階の既存のペントハウス3を解体し、屋上階の既存床14の上に、大引材21および根太材22を載置して、この根太材22の上にクレーン30を設置する。
【0046】
ステップS2では、
図15に示すように、昇降装置40を屋上階に取り付ける。
図12にも示すように、支持柱11Aとなる既存柱11の周囲の既存床14に貫通孔23を形成し、この貫通孔23に、係止装置43、昇降ジャッキ44を取り付ける。
また、支持柱11Aとなる既存柱11の直上に、所定高さの仮設柱46を設置し、この仮設柱46の上に反力部材41を取り付けて、この反力部材41と昇降ジャッキ44とを吊り材42で連結する。
【0047】
ステップS3では、
図16に示すように、クレーン設置床20および支持柱11Aを除いて、既存建物1を屋上階から2層分を解体する。
屋上階に解体重機47を揚重して、この解体重機47で解体しながら、解体材をクレーン30で荷下ろしする。このとき、n階の支持柱11Aから突出する梁継手部15を残しておく。また、解体工事の進捗に応じて、外部足場50を適宜解体する。
【0048】
ステップS4では、クレーン設置床20を支持柱11Aで支持する。
支持柱11Aに取り合うクレーン設置床20の既存梁12Aを切断して、クレーン設置床20と支持柱11Aとの縁を切る。これにより、クレーン設置床20は、昇降装置40を介して、支持柱11Aから吊り下げ支持される。
【0049】
ステップS5では、
図17に示すように、クレーン設置床20をリフトダウンする。昇降装置40の昇降ジャッキ44を駆動して、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿って下降させる。このとき、振れ止めガイド73が支持柱11Aの側面に沿って下降することにより、クレーン設置床20の支持柱11Aに対する位置ずれを防止する。
そして、支持柱11Aのn階の梁継手部15に係止装置43のかんぬき721を係止させる。これにより、クレーン設置床20は、支持柱11Aのn階床レベルに支持される。
【0050】
ステップS6では、
図18に示すように、反力部材41を1層分だけ下方に移設する。
反力部材41をクレーン30で吊り上げて取り外して、次に、仮設柱46および支持柱11Aの上部を切断して撤去し、その後、反力部材41を残った支持柱11Aの上に取り付ける。
このステップS6の動作は、後に詳述する。
【0051】
ステップS7では、
図19に示すように、支持柱11Aを除いて、既存建物1を1層分解体する。
解体重機47で解体しながら、解体材をクレーン30で荷下ろしする。このとき、(n−1)階の支持柱11Aから突出する梁継手部15を残しておく。また、解体工事の進捗に応じて、外部足場50を適宜解体する。
【0052】
ステップS8では、
図19に示すように、クレーン設置床20を支持柱11Aで支持する。
昇降ジャッキ44を駆動して、クレーン設置床20を支持柱11Aに沿ってわずかに上昇させて、クレーン設置床20を支持柱11Aから吊り下げ支持する。この状態で、係止装置43のかんぬき721を引っ込めておく。
【0053】
ステップS9では、ステップS5からステップS8を繰り返す。
【0054】
以下、ステップS6の動作について、
図20のフローチャートを参照して説明する。
ステップS11では、クレーン30により、反力部材吊下げ治具45を吊り上げる。具体的には、クレーン30により吊下げ治具本体51を吊り上げる。すると、
図21に示すように、反力部材吊下げ治具45の連結ピン53が、スライド梁62のパイプ661から抜けて、一対のスライド梁62が移動可能となる。また、吊りワイヤ52を介して反力部材41が吊下げ支持される。
【0055】
ステップS12では、
図21中黒矢印で示すように、一対のスライド梁62を外側に向かって移動させる。具体的には、反力部材41の反力梁60の両端に滑車604を取り付けて、レバーブロック(登録商標)などを用いて、一対のスライド梁62を外側に向かって引っ張る。これにより、芯出しガイド64の当接部641が支持柱11Aの側面から離れるとともに、スライド梁62の下面が支持柱11Aの上面から離れる。
ステップS13では、
図21中白抜き矢印で示すように、クレーン30により、反力部材41を直下に下ろして係止装置43の載荷梁80の上に載置する。このとき、支持柱11Aが反力部材41の内側に挿通される。
【0056】
ステップS14では、仮設柱46を撤去するとともに、支持柱11Aの上部を切断して撤去する。
ステップS15では、クレーン30により、反力部材吊下げ治具45を吊り上げて、反力部材41を支持柱11Aの直上に位置させる。
ステップS16では、一対のスライド梁62を内側に向かって移動させて、スライド梁62のパイプ661同士を重ねて配置する。これにより、芯出しガイド64の当接部641が支持柱11Aの側面に当接するとともに、スライド梁62の下面が支持柱11Aの上面に当接する。
【0057】
ステップS17では、クレーン30により、反力部材吊下げ治具45を吊り下ろして、反力部材41上に載置する。このとき、反力部材吊下げ治具45の連結ピン53を、スライド梁62のパイプ661に挿通させる。これにより、反力部材41が残った支持柱11Aの上に取り付けられる。
【0058】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)反力部材41を解体対象である支持柱11Aの直下に仮置きできるので、従来のように、解体対象である支持柱から離れた位置に仮置きする必要がなく、短工期で既存構造物を解体できる。
【0059】
(2)支持柱11Aの上端に反力部材41を取り付けて、この反力部材41からクレーン設置床20を吊下げ支持しても、連結ピン53によりスライド梁62同士を連結したので、スライド梁62同士の間隔を保持しつつ、スライド梁62の転倒を防止して、支持柱11Aから安定して反力をとることができる。
【0060】
(3)反力部材吊下げ治具45をクレーンで吊り上げるだけで、スライド梁62のパイプ661から連結ピン53が抜かれて、スライド梁62が移動可能となる。よって、スライド梁62の移動作業が容易となる。
【0061】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、クレーン設置床20の上に大引材21および根太材22を介して、直接、クレーン30の基部31を設置したが、これに限らず、クレーン設置床20の上に小型のマストを設置し、この小型のマストの頂部にクレーン30の基部31を設置してもよい。
【0062】
また、本実施形態では、ステップS3において、既存建物1を屋上階から2層分を解体し、ステップS4で、クレーン設置床20を支持柱11Aで支持したが、これに限らない。例えば、ステップS3で、既存建物1を屋上階から1層分を解体し、ステップS4で、クレーン設置床20を支持柱11Aで支持し、さらに既存建物1を1層分解体してもよい。あるいは、ステップS3で、クレーン設置床20を支持柱11Aで支持し、ステップS4で、既存建物1を屋上階から2層分を解体してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…既存建物(既存構造物)、2…解体システム、3…ペントハウス
11…既存柱、11A…支持柱
12、12A…既存梁、13、13A…既存小梁
14、14A…既存床、15…梁継手部
20…クレーン設置床、21…大引材、22…根太材、23…貫通孔
30…クレーン、31…基部、32…クレーン本体
33…ジブ、34…フック、35…巻上装置
40…昇降装置、41…反力部材、42…吊り材、43…係止装置、
44…昇降ジャッキ、45…反力部材吊下げ治具、46…仮設柱、47…解体重機
50…外部足場、51…治具本体、52…吊りワイヤ、53…連結ピン
60…反力梁、61…連結梁
62…スライド梁、63…スライド梁本体
64…ガイド、65…係合部、66…パイプブラケット
70…かんぬき梁、71…梁本体、72…かんぬき装置、73…振れ止めガイド
80…載荷梁、81…山形鋼
90…連結部材、91…定着板、92…定着板、93…PC鋼線
601…溝形鋼、602…プレート、603…定着ヘッド、604…滑車
631…長孔、641…当接部、642…ガイド本体
661…パイプ、662…支持片
721…かんぬき、722…油圧ジャッキ、723…ピン
731…ガイド本体、732…ガイド部、733…裏込めブロック
P…クレーンの作業半径