【文献】
採便容器-A(OCセンサーneo、OCセンサーμ用)他15品目包装形態変更のお知らせ,日本,栄研化学株式会社,2002年 2月
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように従来の移送用袋(特許文献1)と封入容器とを被験者に配布する場合には、配布用袋に、該移送用袋、封入容器、採取用具、および案内の少なくも四点を収容するための作業を要する。このように配布用袋に収容する物品の点数が比較的多いことから、該物品の収容不足や同じ物品の収容など、収容作業による不具合の発生が懸念される。こうした不具合を防ぐためには、収容作業を慎重に行ったり、収容後の確認作業を必要とすることから、作業効率が低く、作業者による負担も大きくなっていた。
【0007】
一方、上記従来の移送用袋(特許文献1)は、内部に封入した封入容器を視認不能とする不透明な紙製の袋が適用されており、移送中に、該封入容器内の検体(尿や便など)を外部から視認できないようにしている。そのため、上述したように健診機関から検査機関で封入容器を取り出すまでの間では、移送用袋の光学コードに基づいて確認作業を行う。そして、通常、健診機関から移送された後は、検査機関の検査装置(分析装置)の直前まで、封入容器を移送用袋から取り出さない。そのため、上述した移送用袋の光学コードと封入容器の光学コードとが正確に関係付けられていることが、必須となっている。
【0008】
ところが、移送用袋の光学コードと封入容器の光学コードとを関係付ける作業は、上述したように、被験者から持ち込まれた後に、移送用袋から一旦取り出して行わなければならないことから、作業者による作業が介在する。そのため、封入容器への光学コードの貼付間違いや、封入容器を移送用袋に戻す際の取り間違いを防ぐために、一度に多数の作業を実施できず、作業効率が低くなっている。さらに、作業者は、前記間違いを生じないように、細心の注意が必要であり、これも作業効率を低下する要因となっている。一方、こうした作業は、前記のように作業効率が低いだけでなく、作業者の行為によるものであることから、前記関係付けが確実に正しいとは言い難く、間違いの発生に対する不安を完全に払拭できるものでは無い。そして、もし仮に、移送用袋の光学コードと封入容器の光学コードとの関係が間違っていた場合には、正確な関係付けを回復するために、多大な労力を必要とすると共に、検査の信頼性の低下も懸念される。特に、健康診断では、多数の検体が集中することから、仮に間違いが生じた場合にその回復のために極めて大きな労力を要する。
【0009】
また、移送用袋の光学コードと封入容器の光学コードとを関係付ける作業では、移送用袋から、検尿を封入した封入容器を取り出し、その後に、該封入容器を移送用袋に戻すことが必要となる。そのため、作業中に、作業者が封入容器に触れる頻度が多くなる。こうして作業者が封入容器に触れることは、衛生上、好ましいものでなく、該封入容器との接触回数を可及的に低減することが求められる。
【0010】
尚、上述した問題点は、予め、移送用袋と封入容器との両者に夫々光学コードが貼付されていた場合にあっても、両方の光学コードが独立して存在することから、検査機関での検査までの過程で、両者の関係が正しいことを確認する必要がある。そして、この確認作業では、移送用袋から封入容器を取り出すことが必要であるため、上述した問題が同様に生じ得る。
【0011】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであって、被験者に封入容器等を配布するために要する作業の作業性を向上すると共に、採取された検体を正確かつ安定して管理することが可能な検体用配布袋を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、外表面に識別用の光学コードが付された、検体を封入する封入容器を、袋内部に収容して移送するためのものであって、矩形状シートからなる袋表材と袋裏材とから構成され、一側縁に、前記封入容器を挿入して封緘される開口部が形成されてなり、前記袋表材と袋裏材との少なくとも一方に、袋内部に収容した封入容器に付された光学コードを読み取り可能とする半透明性の読取窓部を備え、袋表材と袋裏材との該読取窓部を除く部位を、前記光学コードを読取不能とし、前記読取窓部が、袋内部に収容した封入容器の光学コードを臨む位置に設けられた検体移送用袋と、少なくとも封入容器を収容するものであって、前記検体移送用袋の、開口部を除く一側縁に、易切断線を介して連成され、該封入容器を入出するための取出口部を備えた収容袋とを備え、前記検体移送用袋と収容袋とが一体化されてなるものであることを特徴とする検体用配布袋である。
【0013】
かかる構成によれば、封入容器を収容袋に収容することによって、該封入容器と検体移送用袋とを該被験者に配布することができる。そして、検体移送用袋と収容袋とは、易切断線で切断することによって比較的容易に分離できる。これにより、検体を採取後には、該検体を封入した封入容器を、分離した検体移送用袋に封緘して、移送することができる。このように本構成では、配布のために封入容器等を収容する作業で、上述した従来で必要であった検体移送用袋の収容作業を必要としないことから、該収容作業に要する負担を軽減することができる。さらに、上述したように、収容する品が比較的多い場合には、該品が不足したり、同じ品を複数入れてしまう等の問題の発生が懸念されるものの、本構成によれば、収容点数が少なくなることから、こうした問題の発生を抑制できるという利点もある。
【0014】
また、かかる構成は、採取した検体を封入した封入容器を検体移送用袋に収容すれば、該収容した状態で、該封入容器に付された光学コードを読取窓部を介して読み取ることができるため、検体を採取してから検査するまでの間で該検体を正確かつ安定して管理することができる。これにより、本構成の検体移送用袋によれば、上述した従来構成のように移送途中で移送用袋と封入容器とを関係付ける作業を必要としないことから、該作業に要する多大な労力と時間とを削減することができる。これに伴って、前記作業で、検体を封入した封入容器に触れる頻度が増加するという問題を、本構成によれば解決でき、衛生上も優れている。また、本構成の検体移送用袋は、読取窓部が封入容器の光学コードを臨む位置に設けられていることから、該光学コードを読み取る作業を比較的容易に行うことができ、該作業の作業性に優れている。
【0015】
さらに、本構成の検体移送用袋は、読取窓部を除く部位が光学コードを読取不能であることから、当該部位では、袋内部に封入した封入容器を視認不能または視認困難である。加えて、読取窓部が半透明性であることから、袋内部に封入容器を封入した状態で、該封入容器内の検体を外部から視認し難くなっている。そのため、例えば、健康診断などで被験者自らが、検尿や検便を健診機関に持参する場合に、その移送中における該被験者に生ずる羞恥心を可及的に抑制することができる。ここで、読取窓部を除く部位は、不透明または透光性の低い所定色であることが好適である。
【0016】
尚、本構成の収容袋には、封入容器の他に、例えば、検体を採取するための用具や、検体の採取方法や移送方法などを記した案内などを収容可能である。さらに、収容袋は、前記案内が印刷されたものとすることもできる。また、本構成は、検尿や検便に限らず、採血した血液や細胞などに対しても適用できる。さらに、人間以外の動物の血液などにも適用できる。
【0017】
上述した本発明の検体用配布袋にあって、検体移送用袋の読取窓部は、袋内部に収容した封入容器の先端が該袋内部の下底部に達した状態で、該封入容器の光学コードを臨む位置に設けられている構成が提案される。
【0018】
かかる構成の検体移送用袋によれば、封入容器を、その先端が袋内部の下底部に達した状態とすることによって、該袋内部に収容した封入容器の光学コードを一層容易かつ安定して読み取ることができる。これにより、移送中に封入容器の光学コードを読み取る作業に要する手間を一層軽減でき、該作業性を向上できる。
【0019】
上述した本発明の検体用配布袋にあって、検体移送用袋の読取窓部は、袋表材に形成された第一窓部と袋裏材に形成された第二窓部とから構成され、該第一窓部と第二窓部とが、一側縁を介して連成されている構成が提案される。
【0020】
かかる構成の検体移送用袋によれば、袋内部に収容された封入容器の光学コードが、該封入容器の回動によって表側や裏側に位置した場合にも、読取窓部を介して該光学コードを容易に読み取ることが可能である。特に、読取窓部が一側縁を介して連成されていることによって、光学コードの位置を容易に確認でき、該光学コードの読取作業に要する手間を一層軽減できる。
【0021】
上述した本発明の検体用配布袋にあって、検体移送用袋は、細長い筒状の封入容器を収容するものであって、該検体移送用袋の読取窓部は、長手方向と略直交する横方向長さを、該封入容器の外周長と略同じとしたものである構成が提案される。
【0022】
かかる構成の検体移送用袋によれば、読取窓部を封入容器の外周面に倣わせることによって、該封入容器の光学コードの位置を容易かつ確実に確認でき、該光学コードを一層容易かつ安定して読み取ることができる。
【0023】
上述した本発明の検体用配布袋にあって、検体移送用袋は、細長い筒状の封入容器を収容するものであって、開口部の拡開幅が、封入容器の最大外径よりも大きく且つ該最大外径の3倍以下であると共に、袋内部の長さが、封入容器の容器長よりも大きく且つ該容器長の2倍以下である構成が提案される。
【0024】
かかる構成に検体移送用袋によれば、封入容器を収容した状態で、袋内部での該封入容器の移動を抑制できる。そのため、袋内部に収容した封入容器を、その光学コードが読取窓部を臨む位置で保持し易い。これにより、袋内部の封入容器の光学コードを読み取る際に、該光学コードを一層容易に読み取ることができ、該読取作業に要する手間を一層軽減できる。
【0025】
尚、本構成にあって、開口部の拡開幅は、封入容器の最大外径よりも大きく且つ該最大外径の2.5倍以下の寸法である構成が好適であり、さらには、該拡開幅が、封入容器の最大外径の1.25倍以上とする構成が好適である。また、袋内部の長さは、容器長の1.5倍以下である構成が好適であり、さらには、容器長の1.2倍以上である構成が好適である。こうした構成とすることによって、移送中に、袋内部での該封入容器の移動を一層抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の検体用配布袋は、上述したように、検体移送用袋と収容袋とを易切断線を介して一体化してなるものであるから、収容袋に封入容器を収容することによって、該封入容器と検体移送用袋とを被験者に配布できる。ここで、本構成では、収容袋に検体移送用袋を収容する必要が無いため、収容作業に要する負担を軽減できる。
また、収容袋と切断可能な検体移送用袋は、上述したように、封入容器に付した光学コードを臨む位置に半透明性の読取窓部を設け、該読取窓部を除く部位を不透明としたものであるから、封入容器を袋内部に収容した状態で該光学コードを容易かつ安定して読み取ることができる。そのため、封入容器を収容した移送中に、該封入容器の光学コードにより検体を正確かつ安定して管理できると共に、該管理に要する作業の作業性を、上述した従来構成に比して向上することができる。さらに、検体の移送中に、該検体を視認し難いことから、例えば、健康診断で検尿や検便を被験者が移送する場合に、該被験者に生ずる羞恥心を可及的に緩和することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明にかかる実施形態を添付図面に従って説明する。
図1は、本実施例の検体用配布袋1の正面図であり、
図2は、該検体用配布袋1の背面図である。この検体用配布袋1は、検体移送用袋11と収容袋2とを易切断線9を介して一体化してなるものである。ここで、本実施例の検体用配布袋1は、検尿に用いられるものであって、その検体移送用袋11と収容袋2とに、検尿を封入した封入容器51を収容する。
【0029】
上記の封入容器51は、
図3のように、細長い有底円筒状の容器本体52と、該容器本体52の開口部55を閉鎖する蓋体53とから構成されている。容器本体52は、透明な樹脂から成形されてなり、その下部が、先端56に向かって徐々に細くなっている。蓋体53は、容器本体52の開口部55に嵌入される嵌入部58と、該嵌入部58を嵌入した状態で該開口部55の端縁に着座する円盤状の閉鎖部59とから構成される。ここで、蓋体53は、樹脂から成形され、その嵌入部58が弾性変形可能であることから、開口部55に嵌入することによって該開口部55を密閉することができる。これにより、開口部55を蓋体53で閉鎖した状態で、容器本体52内からの液漏れを防止できる。
【0030】
こうした封入容器51には、その容器本体52の所定位置に、識別用の光学コード62が印刷された識別シール61が貼付される。尚、光学コード62はバーコードであり、詳細は後述する。
【0031】
次に、本発明にかかる検体用配布袋1について詳述する。
検体用配布袋1は、上述したように、検体移送用袋11と収容袋2とを一体化してなるものであり、
図1,2のように、検体移送用袋11の一側の長縁に、易切断線9を介して収容袋2が連成されてなる。この検体用配布袋1は、
図4のように、易切断線9で切断することにより、検体移送用袋11と収容袋2とに分離できる。
【0032】
上記の検体移送用袋11は、
図5のように、樹脂フィルムからなる長方形状シートの袋表材12と袋裏材13とから構成され、一側の短縁に開口部15が形成されてなる(
図8,10参照)。この開口部15から、
図8のように、上記の封入容器51を袋内部18に入れることができる。尚、この袋内部18の、該開口部15と対向する部位が、本発明にかかる下底部19である。
【0033】
袋表材12と袋裏材13とはそれぞれ、開口部15を構成する短縁を除く残りの三方の側縁部で相互に連成されている。そして、袋表材12には、
図5のように、開口部15を構成する短縁を介して延成された封緘部16を備えている。この封緘部16は、その背面に、所定の接着剤が塗布されており(図示せず)、前記短縁を折返線17として折り返し、袋裏材13に接着することによって、開口部15を封緘する(
図7参照)。尚、封緘部16の背面には、図示しない離型フィルムが貼付されており、該離型フィルムを剥がして接着剤を露出することによって、前記のように封緘を行う。
【0034】
袋表材12には、半透明性の第一窓部22が設けられ、袋裏材13には、該第一窓部22と対向するように半透明性の第二窓部23が設けられている。そして、第一窓部22と第二窓部23とが、検体移送用袋11の一側の長縁を介して連続するように形成されており、該第一窓部22と第二窓部23とにより読取窓部21が構成されている。尚、本実施例にあっては、第一窓部22と第二窓部23とを略同一の矩形状としている。
【0035】
袋表材12では、第一窓部22を除く部位により不透明な遮蔽部25が構成され、袋裏材13では、第二窓部23を除く部位により不透明な遮蔽部26が構成されている。ここで、遮蔽部25,26は、袋表材12および袋裏材13を夫々構成する樹脂フィルムに、所定色を印刷することにより形成されており、
図6,7のように袋内部18に上記の封入容器51を収容した状態で、該封入容器51を外部から視認不能とする。一方、上記した読取窓部21を構成する第一窓部22と第二窓部23とは、半透明な色(例えば、クリアイエローやクリアオレンジなど)を印刷することにより形成されており、封入容器51を外部から視認することが可能である。こうした読取窓部21では、袋内部に上記の封入容器51を収容した状態で、該封入容器51に貼付された識別シール61の光学コード62を、所定のコード読取装置により読み取ることが可能である。これに対し、遮蔽部25,26では、前記光学コード62を読取不能である。尚、読取窓部21の長手方向長さ(第一窓部22および第二窓部23の長手方向長さ)は、封入容器51に貼付された光学コード62の長手方向長さに比して、長く設定されている。
【0036】
袋表材12の遮蔽部25には、検尿用の袋である記載と、検尿した者の氏名などを記載する情報記載欄29とが印刷されている。さらに、袋表材12の遮蔽部25と袋裏材13の遮蔽部26には、様々な注視書きが記載されている。
【0037】
読取窓部21は、
図6,7のように、袋内部18に上記の封入容器51を収容した状態で、該封入容器51に貼付された光学コード62を臨む長手方向位置に、設けられている。詳述すれば、封入容器51を、その先端56から開口部15に挿入して(
図8参照)、該先端56が袋内部18の下底部19に達した状態で、該封入容器51の光学コード62を臨む長手方向位置に、読取窓部21が設けられている。これにより、袋内部18に収容した封入容器51を下底部19まで入れておくことで、読取窓部21を介して該封入容器51の光学コード62を容易に確認できる。
【0038】
さらに、読取窓部21は、その第一窓部22の横方向長さと第二窓部23の横方向長さとを合算した総長が、封入容器51の外周長と略同じとなるように、設定されている。すなわち、第一窓部22および第二窓部23の夫々の横方向長さは、封入容器51の外周長の約1/2である。そして、第一窓部22と第二窓部23との各横方向長さを合算した総長が、読取窓部21の横方向長さである。尚ここで、封入容器51の外周長は、光学コード62が貼付されている部位の外周長を示す。こうした横方向長さに設定することで、袋内部18に封入容器51を収容した状態で、読取窓部21を、該封入容器51の外周面に倣わせることによって、該読取窓部21を介して該封入容器51の外周面をほぼ視認可能となる。これにより、袋内部18に収容した封入容器51の光学コード62を容易に確認することができる。
【0039】
こうした検体移送用袋11は、上述したように、検尿用の封入容器51を収容して移送するためのものであるから、該封入容器51を収容する寸法形状に設定されている。すなわち、
図9のように、検体移送用袋11は、封入容器51を収容する袋内部18の長手方向長さHが、該封入容器51の容器長Lよりも長く且つ該容器長Lの2倍以下の範囲にある所定長さに設定されている。一方、
図10のように、開口部15の拡開幅Wは、封入容器51の最大外径Rよりも大きく且つ該最大外径Rの3倍以下の範囲にある所定幅となるように設定されている。ここで、開口部15の拡開幅Wとしては、封入容器51を挿入できるように該開口部15を拡開した状態で、最も開いている幅を示す。そして、封入容器51の最大外径Rは、封入容器51の最も大きい外径であることから、容器本体52の最大外径が相当する場合と、蓋体53の最大外径が相当する場合とがあり得る。本実施例では、蓋体53の最大外径が、容器本体52の最大外径よりも若干大きいことから、蓋体53の最大外径が、封入容器51の最大外径Rに相当する。こうした開口部15の拡開幅Wは、袋内部18の横方向長さの最大値により定まり、さらには袋表材12や袋裏材13の横方向長さにより定まる。
【0040】
具体的には、検体移送用袋11の袋内部18の長手方向長さHが、封入容器51の容器長Lの約1.6倍に設定され、開口部15の拡開幅Wが、封入容器51の最大外径Rの約2.5倍に設定されている。
【0041】
このように寸法形状が設定された検体移送用袋11によれば、封入容器51を挿入して収容すると(
図6,7参照)、袋内部18で、該封入容器51が移動し難く且つ回動し難い。そのため、封入容器51を、その先端56が袋内部18の下底部19に達するように収容することによって、該収容した状態を保持することができ、該封入容器51の光学コード62を、読取窓部21を臨む位置に保つことが可能である。これにより、封入容器51の光学コード62を読み取る際に、その作業を容易に行うことができる。
【0042】
また、検体移送用袋11には、その両側の長い側縁に、切り取りカット20,20が形成されている(
図5〜7参照)。ここで、切り取りカット20,20は、
図7のように、封緘部16を折返線17で折り返して袋裏材13に接着した状態で、該封緘部16と重ならない部位に形成されている。すなわち、折返線17から切り取りカット20,20までの長さ寸法が、封緘部16の長手方向寸法よりも長くなるように、該切り取りカット20,20の形成部位が設定されている。これにより、検体移送用袋11を封緘した後に、該切り取りカット20,20から容易に開封できるようにしている。
【0043】
一方、上記した収容袋2は、
図1,2のように、長方形状シートの袋表材32と袋裏材33とから構成され、検体移送用袋11の開口部15と同じ方向に開口する取出口部35を備えている(
図11参照)。収容袋2は、袋表材32と袋裏材33とが、取出口部35を除く三方の側縁で相互に連成されている。ここで、袋表材32と袋裏材33とは、検体移送用袋11と同じ樹脂フィルムからなる。また、袋表材32には、取出口部35を構成する側縁を介して延成された封緘部36を備えている。この封緘部36は、その背面に、剥離可能な接着剤が塗布されており(図示せず)、前記側縁を折返線37として折り返し、袋裏材33に接着することによって、取出口部35を封緘できる(
図12参照)。そして、封緘部36は、接着後に比較的容易に剥離することが可能である。尚、封緘部36の背面には、図示しない離型フィルムが貼付され、使用に際して、該離型フィルムを剥がすことにより該封緘部36を袋裏材33に剥離可能に接着できる。
【0044】
収容袋2は、
図12のように上記の封入容器51と折り畳み式の紙コップ69とを収容して、封緘部36により封緘できるように、そのサイズが設定されている。そして、収容袋2は、長手方向長さが、検体移送用袋11の長手方向長さと略同一となるように設定されると共に、横方向長さが、前記封入容器51と紙コップ69とを収容可能な内部容積を確保できる長さに設定されている。さらに、収容袋2の封緘部36は、その長手方向長さが、検体移送用袋11の封緘部16の長手方法長さと略同一としている。尚、ここで示す長手方向は、上述した実施例1と同様に、検体移送用袋11の長手方向であり、横方向は、検体移送用袋11の横方向である。
【0045】
さらに、本実施例にあって、収容袋2の袋表材32と袋裏材33とは、不透明であり、該袋表材32には、
図1のように、採尿における注意事項などが印刷された案内印刷部39が設けられている。
【0046】
尚、こうした収容袋2と上記の検体移送用袋11とは、一枚の樹脂フィルムから成形可能である。例えば、略矩形状の樹脂フィルムを、その略中央で折り返して表裏で重ね合わせ、該折り返し縁の両側縁を表裏で接着する。さらに、一方の側縁から、検体移送用袋11の横方向幅を置いて、該側縁と略平行に一直線状に表裏で接着する。同様に、他方の側縁から、収容袋2の横方向幅を置いて、該側縁と略平行に一直線状に表裏で接着する。そして、これら直線状の接着線の間に、易切断線9を形成する。
【0047】
次に、上述した検体用配布袋1を用いて健康診断で検尿を検査するまでの一連の流れについて説明する。この検体移送用袋11による検体の移送には、検体移送管理システム41が用いられる。
この検体移送管理システム41は、
図13のように、予め被験者の情報を記憶した検体用サーバ42を備えている。この検体用サーバ42としては、一般的なコンピュータシステムを適用でき、図示しない中央制御装置CPU、記憶装置RAM、記憶装置ROM、インターネット45を介してデータを送受信する送受信装置などを備えている。そして、記憶装置ROMには被験者の情報を記憶したデータベースや所定のプログラムなどが格納されている。検体用サーバ42は、各健診機関に設置されたコンピュータ43や検査機関に設置されたコンピュータ44と、インターネット45を介して接続されている。そして、これらコンピュータ43,44と検体用サーバ42とは、該コンピュータ43,44で所定のIDコードやパスワード等を入力することにより被験者の情報を適宜送受信することが可能であり、該検体用サーバ42のデータベースに蓄積された情報を、健診機関や検査機関で共有することができる。
【0048】
図14のように、健診機関では、健康診断を受診する各被験者の情報を検体用サーバ42から取得して、該各被験者の識別情報を示す光学コード(バーコード)62を夫々生成し、該光学コード62を印刷した夫々の識別シール61を得る。この識別シール61を封入容器51の容器本体52に貼付する(
図3参照)。こうして識別シール61を貼付した各封入容器51を、折り畳み式の紙コップ69と共に、
図11のように、検体用配布袋1の収容袋2に収容する。その後、
図12のように、収容袋2の封緘部36を折返線37として折り返して接着することにより、該収容袋2を封緘する。このように封入容器51と紙コップ69とを収容した検体用配布袋1を、各被験者に夫々送付する。
【0049】
尚、識別シール61には、光学コード62の他に、被験者の氏名なども印刷され、被験者が自分の氏名を確認できるようになっている。また、検体用配布袋1を構成する検体移送用袋11には、上述した読取窓部21が設けられると共に、該読取窓部21を除く部位(遮蔽部25,26)に、氏名や住所などの情報記載欄29や注意事項などが印刷されている(
図1,2,5参照)。ここで、情報記載欄29は、袋表材12の遮蔽部25に、読取窓部21と横方向で隣接する位置に印刷されている。読取窓部21は、上述したように、その横方向幅の総長が封入容器51の外径寸法と略同一となっていることから、封入容器51を検体移送用袋11に収容した状態であっても、情報記載欄29に氏名等を記入し易いという利点がある。
【0050】
上記の検体用配布袋1を受け取った被験者は、該検体用配布袋1の収容袋2から封入容器51と紙コップ69とを取り出し、該収容袋2の案内印刷部39に印刷された注意事項に従って、採尿する。そして、採取した尿を封入容器51内に封入する。一方、被験者は、検体用配布袋1の易切断線9を切断することにより(
図4参照)、該検体用配布袋1を検体移送用袋11と収容袋2とに分離する。こうして分離した検体移送用袋11に、採尿を封入した封入容器51を挿入して封緘する(
図6,7参照)。この際に、検体移送用袋11の開口部15から、封入容器51を、その先端56から検体移送用袋11の開口部15を介して袋内部18に入れ(
図8参照)、該先端56が該袋内部18の下底部19に達するまで挿入する。そして、この状態で、検体移送用袋11を封緘する。これにより、封入容器51に貼付された識別シール61が、検体移送用袋11の読取窓部21に臨む位置に配される。ここで、検体移送用袋11は、上述したように、その袋内部18の長さHや開口部15の拡開幅Wが封入容器51の寸法形状に応じて設定されていることから、収容した該封入容器51が袋内部18で動き難い。そのため、封入容器51は、袋内部18で、識別シール61が読取窓部21に臨む位置で保持され易い。
【0051】
さらに、検体移送用袋11は、読取窓部21を除く遮蔽部25,26によって、袋内部18の封入容器51を視認不能としていることから、該遮蔽部25,26では、該封入容器51に封入した検尿を外部から視認できない(
図6,7参照)。そして、読取窓部21は、半透明色であることから、封入容器51の識別シール61に記載した情報を視認できるものの、該封入容器51内の検尿を視認し難い。被験者が健診機関に持参する際にあって、該被験者に生ずる羞恥心を可及的に抑制することができる。
【0052】
尚、被験者は、採尿後に、使用済みの紙コップ69を収容袋2に入れて廃棄することができる。収容袋2は、該紙コップ69を収容後に封緘部36で封緘できる。そのため、使用済みの紙コップ69を廃棄することも、衛生的に行うことができる。
【0053】
被験者が、封入容器51を収容した検体移送用袋11を、所定の健診機関に持参すると、
図14のように、健診機関では、該検体移送用袋11内の封入容器51に貼付された光学コード62を、所定のコード読取装置によって読み取る。このコード読取装置は、健診機関に配された上記のコンピュータ43に接続されており、読み取った情報を該コンピュータ43に出力する。これにより、コンピュータ43で、被験者の情報を、検体用サーバ42から取得した被験者情報と照合し、該照合を確認すると、検尿の受け取り記憶する。こうした検尿の受け取り確認は、インターネット45を介して検体用サーバ42に送信される。
【0054】
ここで、コード読取装置による光学コード62の読み取り作業では、検体移送用袋11内に封入容器51を封緘した状態で、該封入容器51に貼付された光学コード62を読み取る(
図13参照)。封入容器51は、上述したように、検体移送用袋11の袋内部18で動き難いことから、光学コード62が読取窓部21に臨む位置に保持される。さらに、読取窓部21の横方向の総長(第一窓部22の横方向長さと第二窓部23の横方向長さとを合算した長さ)が、封入容器51の外周長と略同一としていることから、読取窓部21を介して封入容器51の外周方向全域をほとんど視認できる。こうしたことから、検体移送用袋11に封入容器51が収容された状態で、該封入容器51の光学コード62や氏名などを該読取窓部21を介して容易に確認することができる。そして、コード読取装置により光学コード62を読み取る際には、読取窓部21を封入容器51の外周面に倣わせることによって、該光学コード62を容易に読み取ることができる。これにより、封入容器51の光学コード62を読み取る作業に要する手間を軽減することができる。
【0055】
健診機関は、こうして被験者から受け取った検体移送用袋11を、所定の検査機関に移送する。検査機関では、検尿を分析する分析器の直前で、健診機関から移送された検体移送用袋11を開封して封入容器51を取り出す。そして、分析器で分析する際に、封入容器51に貼付された光学コード62を所定のコード読取装置により読み取って、該光学コード62により示された被験者の情報をコンピュータ44に入力する。コンピュータ44では、インターネット45を介して検体用サーバ42から被験者の情報を取得し、コード読取装置により読み取った情報と照合する。この後、分析器により、封入容器51に封入された検尿を分析すると、分析結果がコンピュータ44に入力されて、該分析結果と被験者の情報とが対応付けられて記憶される。そして、分析結果と被験者の情報とがインターネット45を介して検体用サーバ42に送信され、該検体用サーバ42のデータベースに記憶される。こうした検体用サーバ42に検尿の分析結果が記憶された後は、健診機関で、検体用サーバ42にインターネット45を介してアクセスすることによって、各被験者の分析結果を知得できる。
【0056】
このように本実施例の検体用配布袋1にあっては、検体移送用袋11と収容袋2とが一体となったものであるから、該収容袋2に封入容器51や紙コップ69を収容することで、検尿に必要な物品をまとめることができる。一方、従来、こうした検尿に必要な物品を被験者に送付する際には、所定の配布用袋(図示せず)に、移送用袋、封入容器、紙コップ、注意事項を記した案内の紙を収容する。すなわち、従来の場合には、移送用袋、封入容器、紙コップ、および案内の紙を、所定の配布用袋に収容して、一セットとしてまとめる作業が必要である。この従来の場合に比して、本実施例の場合には、収容する物品の点数が少なくなることから、必要な物品をまとめる作業に要する負担を軽減できる。さらに、従来の場合は、収容する物品の点数が多いことから、同じ物を複数入れてしまったり、入れ忘れたりする等の問題が生じ易いが、本実施例の場合は、収容する物品の点数が少ないことから、こうした問題の発生を抑制できる。
【0057】
さらに、検体用配布袋1から検体移送用袋11を切り離して検体(検尿)の移送に用いることにより、被験者が該検体を封入した封入容器51を封緘してから、検査機関での分析器の直前までの間で、該封入容器51を取り出すこと無く、該封入容器51内の検体を正確かつ安定して確認できる。すなわち、検体移送用袋11の読取窓部21を介して、封入容器51に貼付された光学コード(バーコード)62を読み取ることができるため、該光学コード62が示す被験者の識別情報を確認することによって、検体の移送を正確に管理することができる。これは、検体の管理を、封入容器51に付した光学コード62のみによって一元化できることに因る。このように封入容器51を分析の直前まで検体移送用袋11から取り出す必要が無いことから、移送途中で封入容器51に作業者が接触してしまうことを可及的に抑制できる。
また、検体移送用袋11は、上述したように、封入容器51の光学コード62を臨む位置に読取窓部21が設けられ、さらに袋内部18で封入容器51が動き難いことから、光学コード62を読み取る際に、所定のコード読取装置を用いて比較的容易に読み取り作業を行うことができる。さらに、読取窓部21の横方向長さが封入容器51の外周長と略同じとしていることによって、該封入容器51に付された光学コード62を確認し易く、これに伴ってコード読取装置による読取作業の手間を軽減できる。
また、検体移送用袋11は、読取窓部21を除く遮蔽部25,26が不透明性な所定色により構成されていることから、袋内部18に収容した封入容器51内の検体(検尿)を視認不能であると共に、読取窓部21が半透明性な所定色により構成されていることから、該検体を視認し難い。これにより、袋内部18に収容した封入容器51内の検体が外部から分かり難いことから、例えば、被験者が健診機関に持参する際に、該被験者に生ずる羞恥心を可及的に抑制できる。
【0058】
一方、上述した本実施例の検体移送管理システム41と比較するために、上述した従来の紙製の移送用袋を被験者に配布して、該移送用袋を用いて検体を移送する流れについて、
図15に従って説明する。
健診機関では、被験者の情報をコンピュータなどで独自に管理し、移送用袋に、被験者の情報を示す識別用の光学コードを貼付または印刷する。そして、検尿を封入する封入容器には、識別用の情報(光学コード)が貼付されない。これら移送用袋と封入容器とを、検尿の注意事項などが記載された案内、および折り畳み式の紙コップと一緒に、所定の配布用袋に入れて一纏めにする。そして、この封入容器等を収容した配布用袋を、健診機関から被験者に送付する。被験者は、配布用袋から、封入容器、移送用袋、案内、紙コップを取り出し、該案内の注意事項に従って採尿する。そして、採取した尿を封入容器内に封入して、該封入容器を移送用袋に収容し、健診機関に持参する。健診機関では、移送用袋に付された光学コードを所定のコード読取装置で読み取って、該光学コードが示す識別情報を、コンピュータで管理している被験者の情報と照合し、該識別情報と対応付けられた検査用の識別情報を示す新たな光学コードを生成する。そして、移送用袋から封入容器から取り出して、生成した新たな光学コードが印刷されたシールを、該封入容器に貼付し、該封入容器を再び移送用袋に収容する。これにより、移送用袋に付された光学コードが示す被験者の情報と、該移送用袋に収容された封入容器に付された光学コードが示す検査用の識別情報とが、対応付けられる。この後、封入容器が収容された移送用袋は、健診機関から検査機関へ移送される。検査機関では、分析器の直前で、移送用袋から封入容器を取り出して、該移送用袋に付された光学コードと該封入容器に付された光学コードとをコード読取装置で読み取る。検査機関では、検査対象である検体の情報をコンピュータなどで独自に管理し、前記コード読取装置で読み取った情報を記憶する。そして、封入容器に封入された検尿を分析し、この分析結果を、コード読取装置で読み取った検査用の識別情報と対応付けて、コンピュータに記憶される。尚、検査機関では、被験者の情報を有していないことから、検査用の識別情報に基づいて、移送用袋の光学コードが示す情報と、分析結果のデータとを独自に管理する。こうして分析結果を得ると、検査機関は、検査用の識別情報と分析結果のデータとを健診機関に送られる。健診機関では、分析結果を受けると、該分析結果を、検査用の識別情報を介して、被験者の情報と対応付けられ、記憶管理される。
【0059】
このように従来の移送用袋を用いて検体を移送する場合には、被験者が取得した検体を、健診機関では該移送用袋に付した光学コードにより管理し、検査機関では封入容器に付した光学コードにより管理する。そして、従来の移送用袋は、紙製であり、内部に収容した封入容器を視認不能であることから、健診機関では、検査機関に移送する前に、封入容器を取り出して、検査用の識別情報を示す光学コードを該封入容器に付さねばならない。ここで、封入容器を移送用袋から一旦取り出す作業では、封入容器への光学コードの貼付間違いや、該封入容器を移送用袋に戻す際の取り間違いなどを防ぐために、一度に多数の封入容器を対象とすることができず、作業効率が低い。さらに、作業者が細心の注意を払う必要があり、これも作業効率を低下する要因となっている。しかし、この作業には、作業者の行為が介在することから、前記間違いを確実に防止できると言い難い。こうした問題は、検体を管理するために、移送用袋から封入容器を取り出す作業を必要とすること、健診機関と検査機関とが別々に情報管理していることに因る。
【0060】
こうした従来に比して、上述した本発明にかかる検体用配布袋1(検体移送用袋11)および検体移送管理システム41では、封入容器51を一旦取り出す作業を必要とせず、該作業に要する負担を生じない。そして、この作業により生ずる検体の取り間違いという問題も無い。さらに、検体移送管理システム41では、検体を被験者の情報により一元化して管理することから、該被験者の情報や分析結果などを健診機関と検査機関とで共用できる。したがって、管理運営を安定して行うことができると共に、該管理運営に要するコストも削減できる。尚、検体移送管理システム41は、本発明にかかる検体移送用袋11の適用によって構成されるものであると言える一方、該検体移送用袋11は、検体移送管理システム41に用いられるものであるとも言える。
【0061】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。