特許第6508980号(P6508980)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508980
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】手摺用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
   E04F11/18
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-41395(P2015-41395)
(22)【出願日】2015年3月3日
(65)【公開番号】特開2016-160681(P2016-160681A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】飛川 哲生
(72)【発明者】
【氏名】柊 温子
【審査官】 村田 泰利
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−314020(JP,A)
【文献】 特開2003−278344(JP,A)
【文献】 特開2007−126883(JP,A)
【文献】 特許第4889409(JP,B2)
【文献】 特開2012−229548(JP,A)
【文献】 中国実用新案第2795336(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺を壁面に支持してなる手摺用ブラケットであって、
上記壁面に固定ねじによって固定される板状の固定部と、
上記固定部に取付ねじによって取り付けられる取付部と、この取付部の下部から斜め上方に延びて先端部で上記手摺を下方から支持するアーム部とを有するブラケット本体と、を備え、
上記固定部は、上記固定ねじが挿通する貫通孔が穿設され、かつ、上記取付ねじが螺合するねじ孔が形成され、
上記固定部と上記取付部には、互いに嵌合及び係合可能な位置決め部が設けられ
上記取付部は、上記アーム部と略同じ幅に形成されると共に、係止突部を有する取付部本体と、上記取付部本体の中央部の両側方に延在する一対の取付片とを具備し、上記両取付片に上記取付ねじが挿通する挿通孔が穿設され、
上記取付片は、上記取付部本体における上記アーム部の基端部の上部を含む両側方に延在され、上記挿通孔は、上記アーム部の基端部の上部より上方の部位に穿設され、
上記位置決め部は、上記固定部の上部に形成される位置決め用の係止孔と、上記取付部の上部裏面に突設されて上記係止孔に嵌合可能な位置決め用の係止突部とを具備する、
ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記固定部は、上記固定ねじが挿通する貫通孔が、上記固定ねじの操作工具が上記アーム部との干渉を回避すべく固定部の表面に形成された傾斜面部に対して略垂直状に穿設され、かつ、上記取付ねじが螺合するねじ孔が形成され、
上記傾斜面部は、上記固定部の上部両側及び少なくとも下部の一側に設けられ、手摺の長手方向に関して、上記固定部の外側端に向かって板厚が薄くなるように傾斜してなる、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項3】
請求項1に記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記位置決め部は、上記取付部の下端部に設けられて上記固定部の下端面に係合可能な位置決め片を更に具備してなる、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記固定部と上記取付部とを覆う合成樹脂製のカバー材を更に備え、
上記カバー材は、上記アーム部を跨いで上記アーム部の基端側の頂部及び両側部に弾接する下向きの開口部と、上記固定部の下部両側端に設けられた係止凹部に係合可能な複数の係合突部とが形成され、各上記係合突部は、複数の凸条を列設してなる、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【請求項5】
請求項に記載の手摺用ブラケットにおいて、
上記カバー材は、上記開口部を有する上部側カバー部と、この上部側カバー部の下端に延在して上記固定部の外側端を覆う下部側カバー部とからなり、上記下部側カバー部は薄肉に形成され、上記上部側カバー部は上記下部側カバー部に対して肉厚に形成されており、上記複数の凸条は、下部側カバー部に形成されている、ことを特徴とする手摺用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は手摺用ブラケットに関するもので、更に詳細には、壁面に固定される固定部と、この固定部に着脱可能に取り付けられるブラケット本体とを備える手摺用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、手摺用ブラケットを着脱可能として、模様替えの際の壁紙貼り替えや、引っ越し等の際に、通路を広く取れるようしている。
【0003】
そのため、従来の手摺用ブラケットは、脆弱な石膏ボードからなる壁面にねじ止めするため、壁面とのねじ着脱を繰り返さないように壁面に固定されるベース部材を壁面に残し、ベース部材上にブラケット本体を着脱するような構成をとっている。また、この種の手摺用ブラケットにおいては、ベース部材の壁面固定用ねじや、ベース部材とブラケット本体の固定ねじを外部から被覆するためのカバー材を設けるのが外観上好ましい。
【0004】
上記構成をとる手摺用ブラケットとして、壁面に固定されるベースに、先細り状のベース側嵌合部と、ベース固定ねじ受け座及びブラケット本体固定ねじ孔を設け、ブラケット本体に、上記ベース側嵌合部と嵌合するブラケット側嵌合部と、ブラケット固定ねじ受け座及びベース固定ねじ挿通孔を設けて、上記ベース側嵌合部とブラケット側嵌合部とを嵌合した状態で、ブラケット本体固定ねじによりブラケット本体とベースを一体に組み付けて、ベース固定ねじによって壁面に固定する構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載のものにおいては、ブラケット本体の下部側に露呈するベース固定ねじとブラケット本体固定ねじを外部から被覆するために、ブラケット本体の下部側にカバーを被着している。
【0005】
また、別の手摺用ブラケットとして、壁面に固定されるベース部材の頂部に、位置決め用V字状溝を設け、ブラケット本体の取付座の上部に突設される載置突部の下面に、上記位置決め用V字状溝と嵌合可能なV字状突起を形成し、上記取付座の表面に膨隆する手摺取付用アームの連結部の側面に、上記固定ねじの挿入案内用凹溝を形成する構造のものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載のものにおいては、ブラケット本体の下部側に露呈するベース部材用固定ねじとブラケット本体をベース部材に固定する固定ねじを外部から被覆するために、ブラケット本体の下部側にカバーを被着している。
【0006】
更に、別の手摺用ブラケットとして、壁面に固定される固定部の固定プレートに突設形成される受け部に、ブラケット本体に設けられた取付部を被せ、取付部の対向する側面に形成された孔に挿入されるビスを受け部の側壁部に形成されたねじ孔に横方向からねじ込んで固定部とブラケット本体を固定する構造のものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、上記受け部または上記固定プレートに、取付部から斜め上方に延びるアーム部の傾斜部の上端部を引掛ける引掛け部が形成されている。また、特許文献3に記載のものにおいては、上記固定部と取付部を覆う側面視略台形状のカバーの頂面にアーム部を通す開口部が設けられ、開口部の対向する縁部には、底面側に向けて延在する爪部が形成されており、上記爪部はアーム部と取付部との間に設けられた段差部に係合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−314020号公報(特許請求の範囲、図1図2
【特許文献2】特許第4889409号公報(特許請求の範囲、図2図4図6
【特許文献3】特開2012−229548号公報(特許請求の範囲、図1図2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のこの種の手摺用ブラケットにおいては、壁面に固定されるベース,ベース部材,固定プレート等の固定部に対するブラケット本体の取付が一箇所の嵌合であるため、固定部にブラケット本体を固定する際、固定部に対するブラケット本体の位置決めが面倒な上、固定部とブラケット本体の取付状態が不安定となり、固定ねじによる固定が面倒である懸念があった。
【0009】
また、この種の手摺用ブラケットにおいては、固定部は、脆弱な石膏ボードからなる壁面にねじ止めによって固定される関係上、手摺にかかる力を分散させるために、ある程度の面積が必要であるが、外観上、アーム部から側方へ張り出す部分の面積はなるべく小さい方が好ましい。しかし、固定部の固定ねじは、比較的寸法の長いねじが使用され、電動ドライバーのような操作工具を用いて壁面にねじ止めされるため、操作工具がアーム部に干渉しない範囲で固定部の面積を設定する必要がある。
【0010】
また、カバー材を取り付ける場合は、固定部及びブラケット本体への取り付け、取り外しが容易かつ確実であって、取付状態において振動や衝撃等によって不用意に脱落しないようにする必要がある。
【0011】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、手摺用ブラケットを構成する着脱可能な固定部とブラケット本体の取付(固定)を容易かつ確実(強固)にすると共に、壁面への施工を容易にする手摺用ブラケットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明の手摺用ブラケットは、手摺を壁面に支持してなる手摺用ブラケットであって、 上記壁面に固定ねじによって固定される板状の固定部と、上記固定部に取付ねじによって取り付けられる取付部と、この取付部の下部から斜め上方に延びて先端部で上記手摺を下方から支持するアーム部とを有するブラケット本体と、を備え、 上記固定部は、上記固定ねじが挿通する貫通孔が穿設され、かつ、上記取付ねじが螺合するねじ孔が形成され、 上記固定部と上記取付部には、互いに嵌合及び係合可能な位置決め部が設けられ、 上記取付部は、上記アーム部と略同じ幅に形成されると共に、係止突部を有する取付部本体と、上記取付部本体の中央部の両側方に延在する一対の取付片とを具備し、上記両取付片に上記取付ねじが挿通する挿通孔が穿設され、 上記取付片は、上記取付部本体における上記アーム部の基端部の上部を含む両側方に延在され、上記挿通孔は、上記アーム部の基端部の上部より上方の部位に穿設され、 上記位置決め部は、上記固定部の上部に形成される位置決め用の係止孔と、上記取付部の上部裏面に突設されて上記係止孔に嵌合可能な位置決め用の係止突部とを具備する、ことを特徴とする(請求項1)。
【0013】
このように構成することにより、固定部とブラケット本体の取付部に設けられた互いに嵌合及び係合可能な位置決め部によって、固定部に対してブラケット本体を位置決めした状態で、取付ねじによって固定部とブラケット本体とを固定することができる。また、固定部とブラケット本体とを固定した状態で、固定部の表面に形成された傾斜面部に対して略垂直状に穿設され貫通孔を挿通する固定ねじを操作工具によって壁面にねじ込むことによって固定部を壁面に固定することができる。この際、操作工具はブラケット本体に設けられたアーム部に干渉することなく固定ねじを壁面にねじ込むことができる。
【0014】
この発明において、上記固定部は、上記固定ねじが挿通する貫通孔が、上記固定ねじの操作工具が上記アーム部との干渉を回避すべく固定部の表面に形成された傾斜面部に対して略垂直状に穿設され、かつ、上記取付ねじが螺合するねじ孔が形成され、上記傾斜面部は、上記固定部の上部両側及び少なくとも下部の一側に設けられ、手摺の長手方向に関して、上記固定部の外側端に向かって板厚が薄くなるように傾斜してなるのが好ましい(請求項2)。
【0015】
また、このように構成することにより、固定部の上部両側及び少なくとも下部の一側に設けられた傾斜面部に穿設された貫通孔を挿通する固定ねじによって固定部の上部2箇所と少なくとも下部の1箇所を固定することができる。また、取付部の中央部の両側に延在する一対の取付片に穿設された挿通孔を挿通する2本の取付ねじを固定部に設けられたねじ孔に螺合して固定部とブラケット本体とを取付(固定)することができ、取付ねじとねじ孔の螺合を解除して、固定部からブラケット本体を取り外すことができる。この場合、取付片を、取付部本体におけるアーム部の基端部の上部を含む両側方に延在し、挿通孔を、アーム部の基端部の上部より上方の部位に穿設することにより、アーム部が邪魔にならずに取付ねじによって固定部とブラケット本体の取付・取り外しを行うことができる。
【0016】
また、この発明において、上記位置決め部は、上記取付部の下端部に設けられて上記固定部の下端面に係合可能な位置決め片を更に具備しているのが好ましい(請求項)。
【0017】
このように構成することにより、ブラケット本体の取付部に突設された係止突部を、固定部の上部に設けられた係止孔に嵌合し、取付部に設けられた位置決め片を、固定部の下端面に係合させて、固定部に対してブラケット本体を位置決めすることができるので、固定部に対してブラケット本体を容易かつ確実に位置決めすることができる。
【0018】
また、この発明において、上記固定部と上記取付部とを覆う合成樹脂製のカバー材を更に備え、上記カバー材は、上記アーム部を跨いで上記アーム部の基端側の頂部及び両側部に弾接する下向きの開口部と、上記固定部の下部両側端に設けられた係止凹部に係合可能な複数の係合突部とが形成され、各上記係合突部は、複数の凸条を列設してなるのが好ましい(請求項)。
【0019】
このように構成することにより、カバー材を、取付部の下部から斜め上方に延びるアーム部の基端側の頂部及び両側部に弾接し、カバー材に設けられた複数の凸条を列設してなる係合突部を、固定部の下部両側端に設けられた係止凹部に係合して、固定部と取付部とを覆うことができる。また、係止突部を複数の凸条を列設した構造とすることにより、合成樹脂製の材料で射出成形によって形成されるカバー材の表面に表れる歪みを抑制することができる。
【0020】
また、この発明において、上記カバー材は、上記開口部を有する上部側カバー部と、この上部側カバー部の下端に延在して上記固定部の外側端を覆う下部側カバー部とからなり、上記下部側カバー部は薄肉に形成され、上記上部側カバー部は上記下部側カバー部に対して肉厚に形成されており、上記複数の凸条は、下部側カバー部に形成されているのが好ましい(請求項)。
【0021】
このように構成することにより、開口部を有する上部側カバー部を、上部側カバー部の下端に延在して固定部の外側端を覆う薄肉に形成された下部側カバー部に対して肉厚に形成することで、開口部の弾性効果を高めることができ、カバー材の被着を強固にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明の手摺用ブラケットは、上記のように構成されているので、以下のような効果が得られる。
【0023】
(1)請求項に記載の発明によれば、固定部に対してブラケット本体を位置決めした状態で、取付ねじによって固定部とブラケット本体とを固定することができる。したがって、手摺用ブラケットを構成する着脱可能な固定部とブラケット本体の取付(固定)を容易かつ確実(強固)にすると共に、壁面への施工を容易にすることができる。この場合、取付片を、取付部本体におけるアーム部の基端部の上部を含む両側方に延在し、挿通孔を、アーム部の基端部の上部より上方の部位に穿設することにより、アーム部が邪魔にならずに取付ねじによって固定部とブラケット本体の取付・取り外しを行うことができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、固定部の表面に形成された傾斜面部に対して略垂直状に穿設され貫通孔を挿通する固定ねじをアーム部に干渉することなく操作工具によって壁面にねじ込むことによって固定部を壁面に固定することができる。
【0024】
(2)請求項に記載の発明によれば、固定部に対してブラケット本体を容易かつ確実に位置決めすることができるので、上記(1)に加えて、更に固定部とブラケット本体の取付(固定)を容易かつ確実(強固)にすると共に、壁面への施工を容易にすることができる。
【0025】
(3)請求項4,5に記載の発明によれば、上記(1),(2)に加えて、更にカバー材の固定部及びブラケット本体への取り付け、取り外しを容易かつ確実にすることができ、取付状態においてカバー材が振動や衝撃等によって不用意に脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】この発明に係る手摺用ブラケットの第1実施形態の使用状態を示す正面図である。
図2】一部を断面で示す側面図である。
図3図1のI−I線に沿う一部断面図である。
図4】この発明における固定部の固定状態を示す断面図である。
図5】使用状態の一部を断面で示す斜視図である。
図6】この発明におけるブラケット本体を壁面に取り付ける状態を示す斜視図である。
図7】固定部からブラケット本体を取り外した状態を示す斜視図である。
図8】この発明における固定部、ブラケット本体、カバー材を示す正面分解斜視図である。
図9】この発明における固定部、ブラケット本体、カバー材を示す背面分解斜視図である。
図10】この発明に係る手摺用ブラケットの第2実施形態の使用状態を示す斜視図である。
図11】この発明に係る手摺用ブラケットの第2実施形態の使用状態の一部を断面で示す斜視図である。
図12】この発明に係る手摺用ブラケットの第2実施形態の一部を断面で示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る手摺用ブラケットを適用して、石膏ボード1bに裏面に木製下地材1cを接合してなる壁部1の壁面1aに手摺2を取り付ける場合について説明する。
【0028】
この発明に係る手摺用ブラケットは、壁部1の壁面1aに固定ねじ7によって固定される固定部10と、固定部10に取付ねじ8によって取り付けられる取付部21と、取付部21の下部から斜め上方に延びて先端部で手摺2を下方から支持するアーム部22とを有するブラケット本体20と、固定部10及びブラケット本体20に対して装着され、固定部10とブラケット本体20の固定部を外部から被覆するカバー材30とで主に構成されている。
【0029】
固定部10は、四角形の金属製板材にて形成されており、図2ないし図9に示すように、上部の中央部に、後述する位置決め部を構成する位置決め用の係止孔11が形成され、上部両側及び下部両側に固定ねじ7が挿通する貫通孔12が設けられ、中央部の左右両側に、取付ねじ8が螺合するねじ孔14が形成されている。また、固定部10の下部両側端には、後述するカバー材30に設けられた係合突部32が係合可能な係止凹部15が設けられている。
【0030】
上記貫通孔12は、固定ねじ7の操作工具(例えば、電動ドライバー)がアーム部22との干渉を回避すべく固定部10の表面に形成された傾斜面部13に対して略垂直状に穿設されている。この場合、傾斜面部13は、固定部10の上部両側及び下部両側の角部に設けられ、手摺2の長手方向に関して、固定部10の外側端に向かって板厚が薄くなるように傾斜されている。このように形成される傾斜面部13に対して貫通孔12が略垂直状に穿設されている。
【0031】
これにより、貫通孔12を挿通する固定ねじ7を操作工具によって壁面1aにねじ込む際、操作工具はブラケット本体20に設けられたアーム部22に干渉することなく容易に固定ねじ7を壁面1aにねじ込むことができる。
【0032】
このようにして、固定部10の上部両側の貫通孔12と下部両側の一方の貫通孔12を貫通する固定ねじ7によって固定部10を壁面1aに固定することができる。壁面1aにねじ込まれる固定ねじ7は、図4に示すように、外方から壁面1aの垂直面に近接する斜め内方にねじ込まれるので、固定部10を強固に固定することができる。
【0033】
なお、本実施形態では、傾斜面部13は、固定部10の上部両側及び下部両側の角部の4箇所に設けられているが、固定ねじ7は、固定部10の上部両側の貫通孔12と下部の一方側の貫通孔12を貫通して壁面1aにねじ込めばよいので、傾斜面部13と貫通孔12は、固定部10の上部両側と少なくとも下部の一側に設けられていればよい。
【0034】
ブラケット本体20は、例えば、アルミニウム合金製ダイカストにて形成されている。ブラケット本体20は、取付部21の下部から斜め上方に延びるアーム部22と略同じ幅に形成されると共に、上部裏面側に係止突部23を突設し、下端部に、固定部10の下端面に係合可能な位置決め片24を有する取付部本体25と、取付部本体25の中央部の両側方に延在する一対の取付片26とを具備し、両取付片26に取付ねじ8が挿通する挿通孔27が穿設されている。
【0035】
なお、上記固定部10の上部に形成される位置決め用の係止孔11と、取付部21の上部裏面側に突設されて係止孔11に嵌合可能な係止突部23と、固定部10の下端面に係合可能な位置決め片24とで位置決め部が構成されている。また、取付部本体25と一対の取付片26とを有する取付部21は、固定部10の上下4箇所に設けられた貫通孔12を回避するように略十字状に形成されて、材料の削減が図られている。
【0036】
この場合、取付片26は、取付部本体25におけるアーム部22の基端部22aの上部を含む両側方に延在され、挿通孔27は、アーム部22の基端部22aの上部(頂部22b)より上方の部位に穿設されている。
【0037】
このように、取付片26を、取付部本体25におけるアーム部22の基端部22aの上部(頂部22b)を含む両側方に延在させ、アーム部22の基端部22aの上部より上方の部位に挿通孔27を穿設することにより、アーム部22が邪魔にならずに取付ねじ8によって固定部10とブラケット本体20の取付・取り外しを行うことができる。
【0038】
なお、取付部本体25における取付片26の下部両側には、凹部28が設けられている(図9参照)。このように、取付部本体25における取付片26の下部両側に凹部28を設けることにより、固定部10の下部に設けられた貫通孔12に挿通されて壁面1aに固定される固定ねじ7の頭部の一部を凹部28内に収容することができる。これにより、固定部10の横幅を狭くすることができるので、材料の削減が図れる。
【0039】
また、図5図8及び図9に示すように、アーム部22の先端部には、この先端部から両側に向かって取付部21に対して平行に延びる手摺支持部29が設けられている。手摺支持部29の長手方向の両端側には2個の手摺固定ねじ孔6が設けられており、手摺固定ねじ孔6にねじ込まれる手摺固定ねじ9によって手摺2が支持されるようになっている。この場合、手摺支持部29はアーム部22の先端部から両側に向かって延びているので、手摺2のジョイント部にも使用することができる。すなわち、手摺支持部29に隣接する手摺2を支持・固定して、2本の手摺2を接続することができる。
【0040】
手摺2は、図2図3図5図9に示すように、例えばアルミニウム合金製押出形材にて形成される下方が開口した断面略中空矩形状の手摺基材3と、この手摺基材3の外周を被覆する合成樹脂製の被覆部材4とで構成されている。この手摺2とブラケット本体20とを固定するには、ブラケット本体20の手摺支持部29を手摺基材3の端部に挿入し、手摺固定ねじ9を手摺支持部29に設けられた手摺固定ねじ孔6に螺合し、手摺固定ねじ9の先端部を手摺基材3の下面に押圧して固定した後、手摺基材3に被覆部材4を被着する。
【0041】
カバー材30は、合成樹脂(例えば、ABS樹脂)製部材にて形成されている。カバー材30は、図8及び図9に示すように、アーム部22を跨いでアーム部22の基端側の頂部22b及び両側部22cに弾接する下向きの開口部31と、固定部10の下部両側端に設けられた係止凹部15に係合可能な複数の凸条32aを列設してなる係合突部32とが形成されている。
【0042】
また、カバー材30は、上記開口部31を有する上部側カバー部33と、この上部側カバー部33の下端に延在して固定部10の外側端を覆う、係合突部32を有する下部側カバー部34とからなり、下部側カバー部34は薄肉に形成され、上部側カバー部33は下部側カバー部34に対して肉厚に形成されている。なお、カバー材30の下部側カバー部34における係合突部32が設けられた辺部と直交する辺部には、固定部10の辺部に係合する2つの係止爪部35が設けられている(図9参照)。
【0043】
上記のように係合突部32を下部側カバー部34に設けると共に、複数の凸条32aを列設した構造とすることにより、合成樹脂製の材料で射出成形によって形成されるカバー材30の表面に表れる歪みを抑制することができる。したがって、カバー材30の表面を例えばメタリック調に着色するようにした場合においても、カバー材30の表面に着色むらが生じることがなく、外観の美観を高めることができる。
【0044】
また、開口部31を有する上部側カバー部33を、薄肉に形成された下部側カバー部34に対して肉厚に形成することにより、開口部31の弾性効果を高めることができ、カバー材の被着を強固にすることができる。また、下部側カバー部34を薄肉に形成することにより、全体の肉厚を同一にするものに比べてカバー材30の材料の削減が図れる。
【0045】
図10図12は、この発明に係る手摺用ブラケットの第2実施形態を示す斜視図である。第2実施形態の手摺用ブラケットは、ブラケット本体20Aのアーム部22の先端にアーム部22と同じ幅の手摺支持部29Aが設けられ、手摺支持部29Aの頂面29aに手摺固定ねじ孔6を設けた点で上記第1実施形態と相違している。
【0046】
第2実施形態において、手摺用ブラケットに手摺2を取り付けるには、ブラケット本体20Aの手摺支持部29Aを手摺基材3の下方より挿入し、手摺基材3を貫通する手摺固定ねじ9を手摺支持部29Aに設けられた手摺固定ねじ孔6に螺合して固定した後、手摺基材3に被覆部材4を被着すればよい。
【0047】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して、説明は省略する。
【0048】
第2実施形態の手摺用ブラケットによれば、ブラケット本体20Aの手摺支持部29Aがアーム部22と同じ幅に形成されているので、手摺支持部29Aに手摺2の長手方向の端部を手摺用ブラケットから突出させずに支持・固定することができる。したがって、廊下や階段のコーナー部(特に、入隅部)において、固定部10とブラケット本体20Aの取付(固定)を容易かつ強固にすることができると共に、ブラケット本体20Aを固定部10から容易に取り外すことができる。
【0049】
上記のように構成される手摺用ブラケットを壁面1aに取り付けるには、まず、固定部10に形成された係止孔11と、取付部21に設けられた係止突部23と、位置決め片24とからなる位置決め部によって取付部21と固定部10を位置決めする。すなわち、ブラケット本体20,20Aの取付部21に突設された係止突部23を固定部10に設けられた係止孔11に嵌合すると共に、取付部21の下端部に設けられた位置決め片24を固定部10の下端面に係合して、取付部21と固定部10を位置決めする。この状態で、図6に示すように、取付ねじ8によってブラケット本体20の取付部21を固定部10に取り付ける。
【0050】
次に、固定部10が取り付けられたブラケット本体20,20Aの手摺支持部29,29Aを手摺基材3の端部に挿入し、手摺2の長手方向に移動させて所定の位置で、手摺基材3を貫通する手摺固定ねじ9を手摺支持部29に設けられた手摺固定ねじ孔6に螺合して固定した後、手摺基材3に被覆部材4を被着して手摺2の取付作業が完了する。
【0051】
このようにして、手摺2を取り付けた状態で、固定部10の上部両側と下部の一側に形成された傾斜面部13に設けられた貫通孔12を貫通する固定ねじ7を、操作工具(例えば電動ドライバー)によって壁面1aにねじ込んで、固定部10を壁面1aに固定する。壁面1aにねじ込まれる固定ねじ7は、図4に示すように、外方から壁面1aの垂直面に近接する斜め内方にねじ込まれるので、固定部10を強固に固定することができる。
【0052】
手摺用ブラケットを介して手摺2を取り付けた後、カバー材30の開口部31を、取付部21の下部から斜め上方に延びるアーム部22の基端側の頂部22b及び両側部22cに弾接し、カバー材30に設けられた複数の凸条32aを列設してなる係合突部32を、固定部10の下部両側端に設けられた係止凹部15に係合して、カバー材30を固定部10と取付部21に被着する。
【0053】
壁面1aから手摺2を取り外す場合は、まず、ブラケット本体20,20Aの取付部21と固定部10に被着されているカバー材30を取り外す。この状態で、取付ねじ8を緩めて、固定部10から手摺2を支持しているブラケット本体20,20Aを取り外せばよい。
【0054】
上記のように構成される実施形態の手摺用ブラケットによれば、ブラケット本体20,20Aの取付部21の上部裏面側に突設された係止突部23を、固定部10の上部に設けられた係止孔11に嵌合し、取付部21の下端部に設けられた位置決め片24を、固定部10の下端面に係合させるので、ブラケット本体20,20Aと固定部10の位置決めを容易かつ確実にすることができる。また、固定部10に対してブラケット本体20,20Aを取り付けた状態で、取付ねじ8によって固定部10とブラケット本体20とを固定することで、ブラケット本体20,20Aと固定部10との取付(固定)を容易にすることができる。
【0055】
また、固定部10とブラケット本体20,20Aとを固定した状態で、固定部10の表面に形成された傾斜面部13に対して略垂直状に穿設され貫通孔12を挿通する固定ねじ7を操作工具(例えば、電動ドライバー)によって壁面1aにねじ込むことによって固定部10を壁面1aに固定する際、操作工具はブラケット本体20,20Aに設けられたアーム部22に干渉することなく固定ねじ7を壁面1aにねじ込むことができる。
【0056】
また、固定部10の上部両側及び少なくとも下部の一側に設けられた傾斜面部13に対して略垂直状に穿設された貫通孔12を挿通する固定ねじ7によって固定部10の上部2箇所と少なくとも下部の1箇所を固定することにより、壁面1aへの固定を強固にすることができる。
【0057】
また、取付部21の中央部の両側に延在する一対の取付片26におけるアーム部22の基端部22aの上部(頂部22b)より上方の部位に穿設された挿通孔27を挿通する2本の取付ねじ8を固定部10に設けられたねじ孔14に螺合して固定部10とブラケット本体20,20Aとを取付(固定)することができ、取付ねじ8とねじ孔14の螺合を解除して、固定部10からブラケット本体20,20Aを取り外すことができる。したがって、ブラケット本体20,20Aと固定部10との取付(固定)及び取り外しを、アーム部22が邪魔になることなく容易に行うことができる。
【0058】
また、カバー材30を、取付部21の下部から斜め上方に延びるアーム部22の基端側の頂部22b及び両側部22cに弾接する開口部31を有する上部側カバー部33と、上部側カバー部33の下端に延在し、固定部10の下部両側端に設けられた係止凹部15に係合可能な複数の凸条32aを列設してなる係合突部32を有する下部側カバー部34とで形成し、上部側カバー部33を、薄肉に形成された下部側カバー部34に対して肉厚に形成することで、開口部31の弾性効果を高めることができ、カバー材30の被着を強固にすることができ、例えば、振動や衝撃等によって不用意にカバー材30が脱落するのを防止することができる。また、係合突部32を複数の凸条32aを列設した構造とすることにより、合成樹脂製の材料で射出成形によって形成されるカバー材30の表面に表れる歪みを抑制することができるので、カバー材30の美観を高めることができる。
【0059】
上記実施形態では、この発明に係る手摺用ブラケットを、石膏ボード1bに裏面に木製下地材1cを接合してなる脆弱の壁部1の壁面1aに手摺2を取り付ける場合に適用したが、この発明に係る手摺用ブラケットは、強度を有する壁部の壁面においても同様に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1a 壁面
2 手摺
7 固定ねじ
8 取付ねじ
10 固定部
11 係止孔
12 貫通孔
13 傾斜面部
14 ねじ孔
15 係止凹部
20,20A ブラケット本体
21 取付部
22 アーム部
22a 基端部
22b 頂部
22c 側部
23 係止突部
24 位置決め片
25 取付部本体
26 取付片
27 挿通孔
30 カバー材
31 開口部
32 係合突部
32a 凸条
33 上部側カバー部
34 下部側カバー部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12