(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508984
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】フランジ付き巻芯
(51)【国際特許分類】
B65H 75/22 20060101AFI20190422BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
B65H75/22
B65H75/14
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-47119(P2015-47119)
(22)【出願日】2015年3月10日
(65)【公開番号】特開2016-166077(P2016-166077A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2017年11月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598077233
【氏名又は名称】月産業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(72)【発明者】
【氏名】宮川 茂和
(72)【発明者】
【氏名】安部 厚利
(72)【発明者】
【氏名】後藤 吉広
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第04976475(US,A)
【文献】
特開2014−058395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 75/00−75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状コアと、コアの両端部にそれぞれ着脱自在に取り付けられる一対のリング状フランジとを備え、前記コアの前記端部を前記フランジの孔部に嵌合し、この状態で前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させる操作を行うことにより、両者を連結可能とし、連結状態にある前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させる操作を行うことにより、両者を解除可能としたフランジ付き巻芯であって、
前記フランジの前記孔部の内周面には、内側端縁に沿って係合凸部が形成され、前記コアの前記端部の外周面には、外周端縁に沿って前記コアの前記端部を前記フランジの前記孔部に嵌合する際に前記係合凸部を導入する導入凹部が前記係合凸部に対応して形成され、さらに、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させるのに伴って前記係合凸部が移動可能に挿入される係合凹溝が形成されており、
前記係合凸部の外側壁面の軸方向に面する壁面と前記係合凹溝の内側壁面の軸方向に面する壁面のいずれか一方には凸状係合部が、他方には係合凹部が、それぞれ形成されており、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させるのに伴って前記係合凸部を前記係合凹溝に挿入させたときに、前記凸状係合部と前記係合凹部がスナップ係合するスナップ係合機構が備えられていることを特徴とするフランジ付き巻芯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ、フィルム、線状体等の巻き取りや送り出しに使用されるフランジ付き巻芯に関する。
【背景技術】
【0002】
テープ、フィルム、線状体等の被巻回物の巻き取りや送り出しに、円筒状のコアの両端部にフランジを取り付けたフランジ付き巻芯が使用されている。フランジ付き巻芯として、被巻回物を巻き付けていない状態における保管や搬送を容易にするために、フランジを円筒状コアの両端部に着脱自在に取り付け可能に構成されたフランジ付き巻芯がある。
【0003】
このようなフランジ付き巻芯として、コアと、コアの両端部にそれぞれ着脱自在に取り付けられる一対のリング状フランジとを備えてなり、コアの両端部には、フランジの内周縁部と嵌め合わせられるように外周部分が切り欠かれた接続端部が設けられ、コアの接続端部およびフランジの内周縁部の互いに径方向に向かい合う面のうち、いずれか一方よりなる第1の面に、係合凸部が周方向に間隔をおいて複数形成されているとともに、他方よりなる第2の面に、フランジの内周縁部がコアの接続端部に嵌め合わせられる際に各係合凸部を導入するための凹所と、一端が凹所に通じるように周方向に延び、かつコアおよびフランジを所定方向に相対回動させるのに伴って各係合凸部が挿入される係合凹溝とが形成され、コアの接続端部およびフランジの内周縁部が嵌め合わせられた状態でコアおよびフランジを所定方向に相対回動させる操作を行うことにより両者を連結し、反対方向に相対回動させる操作を行うことにより両者の連結を解除できるようにしたフランジ付き巻芯が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−58395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフランジ付き巻芯では、コアの両端部へフランジを取り付ける際のコアとフランジとの連結にあっては、コアの接続端部およびフランジの内周縁部が嵌め合わせられた状態でコアおよびフランジを予め定められた所定の一方向(連結方向)にのみ相対回動させることにより両者が連結され、逆方向では連結できない。また、コアの両端部からフランジを取り外す際のコアとフランジとの連結の解除にあっては、連結とは逆方向(解除方向)にのみ相対回動させることにより両者の連結が解除され、連結方向への相対回動では解除できない構成となっている。
【0006】
このため、コアの両端部へのフランジの取り付けおよび取り外し作業では、作業者はコアおよびフランジの相対回動方向を常に意識して作業を行わなければならないので作業性が悪く、また、作業中の手が同じ動きを繰り返す偏った動きとなるため、大量のコアとフランジの取り付け、あるいは取り外しを連続して行う場合、作業者に疲労が溜まるといった問題がある。
【0007】
本発明の目的は、コアの両端部へのフランジの取り付けおよび取り外し作業を容易に行えるようにし、作業者の疲労の軽減が図れるようにしたフランジ付き巻芯を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、円筒状コアと、コアの両端部にそれぞれ着脱自在に取り付けられる一対のリング状フランジとを備え、前記コアの前記端部を前記フランジの孔部に嵌合し、この状態で前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させる操作を行うことにより、両者を連結可能とし、連結状態にある前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させる操作を行うことにより、両者を解除可能としたフランジ付き巻芯であって、前記フランジの前記孔部の内周面には、内側端縁に沿って係合凸部が形成され、前記コアの前記端部の外周面には、外周端縁に沿って前記コアの前記端部を前記フランジの前記孔部に嵌合する際に前記係合凸部を導入する導入凹部が前記係合凸部に対応して形成され、さらに、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させるのに伴って前記係合凸部が移動可能に挿入される係合凹溝が形成されており、前記係合凸部の外側壁面
の軸方向に面する壁面と前記係合凹溝の内側壁面
の軸方向に面する壁面のいずれか一方には凸状係合部が、他方には係合凹部が、それぞれ形成されており、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させるのに伴って前記係合凸部を前記係合凹溝に挿入させたときに、前記凸状係合部と前記係合凹部がスナップ係合するスナップ係合機構が備えられていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、前記コアの両端部への前記フランジの取り付け作業に際しては、前記コアの前記端部の外周面に形成された前記導入凹部を前記フランジの前記孔部の内周面に形成された前記係合凸部に対応させた状態で、前記コアの前記端部を前記フランジの前記孔部に挿入することにより、前記コアの前記導入凹部へ前記フランジの前記係合凸部が導入されて、前記コアの前記端部が前記フランジの前記孔部に嵌合し、この状態で、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させ、前記係合凸部を前記係合凹溝に挿入させることにより前記係合凸部と前記係合凹溝とが連結し、前記コアの両端部へ前記フランジが取り付けられる。
また、前記コアの両端部からの前記フランジの取り外し作業に際しては、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させ、前記係合凸部を前記係合凹溝から離脱させて前記導入凹部に位置させることにより前記係合凸部と前記係合凹溝との連結が解除され、この状態で前記コアの両端部から前記フランジを引き抜くことにより前記コアの両端部から前記フランジが取り外せる。
そして、前記係合凸部の外側壁面
の軸方向に面する壁面と前記係合凹溝の内側壁面
の軸方向に面する壁面のいずれか一方には凸状係合部が、他方には係合凹部が、それぞれ形成されており、前記コアおよび前記フランジを任意の方向に相対回動させるのに伴って前記係合凸部を前記係合凹溝に挿入させたときに、前記凸状係合部と前記係合凹部がスナップ係合するスナップ係合機構が備えられているので、前記コアおよび前記フランジを相対回動させ、前記係合凸部を前記係合凹溝に挿入させたときに、前記係合凸部と前記係合凹溝に備えられているスナップ係合機構を構成する前記凸状係合部と前記係合凹部がスナップ係合し、前記係合凸部と前記係合凹溝との連結状態における前記コアおよび前記フランジの更なる相対回動の抵抗となり、前記コアと前記フランジの取り付け状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るフランジ付き巻芯によれば、コアの端部をフランジの孔部に嵌合し、この状態でコアおよびフランジを任意の方向に相対回動させる操作を行うことにより両者を連結することができる。そして、連結状態にあるコアおよびフランジを任意の方向に相対回動させる操作を行うことにより、両者の連結を解除することができることから、コアの両端部へのフランジの取り付けおよび取り外し作業では、作業者はコアおよびフランジの相対回動方向を全く意識せずに作業を行うことができるので作業性が良く、また、作業中の手の同じ動きが偏らないので、作業者の疲労の軽減を図ることができる。更には、構成が簡単なので、製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るフランジ付き巻芯の実施の形態の一例を示す分解斜視図である。
【
図2】
図1に示すフランジ付き巻芯のフランジを示す一部拡大平面図である。
【
図4】
図1に示すフランジ付き巻芯のコアを示す拡大平面図である。
【
図6】(イ)、(ロ)、(ハ)はフランジとコアの連結動作を示す展開説明図である
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るフランジ付き巻芯の実施の形態の一例を、図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至
図6は本発明に係るフランジ付き巻芯の実施の形態の一例を示すものであり、
図1は本例のフランジ付き巻芯を示す分解斜視図、
図2は
図1に示すフランジ付き巻芯のフランジを示す一部拡大平面図、
図3は
図2のA−A線断面図、
図4は
図1に示すフランジ付き巻芯のコアを示す拡大平面図、
図5は
図4の一部省略正面図、
図6(イ)、(ロ)、(ハ)はフランジとコアの連結動作を示す展開説明図である。
【0019】
本例のフランジ付き巻芯は、円筒状のコア1と、コア1の両端部にそれぞれ着脱自在に取り付けられる一対のリング状フランジ2とからなる。
フランジ2の孔部3は、フランジ2の外面側へ突出するように設けた短筒部4により形成され、孔部3の内径、即ち短筒部4の内径はコア1の端部外径と概ね同径となっており、コア1の端部外周に嵌合・離脱可能となっている。孔部3となる短筒部4の内周面(フランジ2の内周面)には、フランジ2の内面側端縁に沿って、周方向に任意の長さの係合凸部5が形成されている。
【0020】
係合凸部5にあっては、フランジ2の内面側端縁から軸方向への幅長L1は短筒部4の軸長L2より短く、本例では短筒部4の軸長L2の概ね1/2となっている。また、短筒部4の内周面から突出する係合凸部5の突出長L3は、コア1の肉厚長L4未満であり、強度の面からコア1の肉厚長L4の概ね1/2であることが好ましい。このように構成される係合凸部5にあっては、周方向に所定の間隔を空けて複数形成されていることが好ましい。本例では
図2に示すように、2個の係合凸部5が対向するように形成されている。
【0021】
また、コア1の両側の端部の外周面には、外周端縁に沿ってコア1の端部をフランジ2の孔部3に嵌合する際に、係合凸部5を導入する導入凹部6が係合凸部5に対応して形成されている。導入凹部6にあっては、コア1の端部から軸方向への幅長L5は、短筒部4の軸長L2と同じ或いはそれ以上の長さとなっている。本例では、導入凹部6の幅長L5は、短筒部4の軸長L2と同じ長さとなっている。また、導入凹部6の深さ長L7は、係合凸部5の突出長L3と概ね同じ長さとなっている。導入凹部6の深さ長L7と係合凸部5の突出長L3の誤差は、±1.5%以内であることが好ましい。
【0022】
さらに、コア1の両側の端部の外周面における非導入凹部面7には、導入凹部6の深さ長L7と同じ深さ長で且つ係合凸部5の幅長L1と概ね同じ長さの幅長L6を有し、係合凸部5を移動可能に挿入する係合凹溝8が、導入凹部6の軸方向の段面9に沿って周方向に、左右に存在する導入凹部6と連通するように設けられている。
【0023】
また、係合凸部5と係合凹溝8には、いずれか一方に凸状係合部10が、他方に係合凹部11が、それぞれ形成されており、コア1およびフランジ2を相対回動させて係合凸部5を係合凹溝8に挿入したときに、凸状係合部10と係合凹部11がスナップ係合するスナップ係合機構12が備えられている。
本例では、凸状係合部10が係合凸部5の外側壁面13に形成され、係合凹部11が係合凹溝8の内側壁面14に形成されている。凸状係合部10が係合凹溝8の内側壁面14に形成され、係合凹部11が係合凸部5の外側壁面13に形成されていてもよいが、本例の方が好ましい。
なお、図中15はフランジ2の外面側に設けられた補強用リブである。
【0024】
このように構成したフランジ付き巻芯によれば、コア1の両端部へのフランジ2の取り付けおよび取り外しは、次のように行われる。
コア1の両端部へのフランジ2の取り付けにあっては、コア1の端部の外周面に形成された導入凹部6をフランジ2の孔部3の内周面に形成された係合凸部5に対応させた状態で(
図6(イ))、コア1の端部をフランジ2の孔部3に挿入する。これにより、コア1の導入凹部6へフランジ2の係合凸部5が導入されて、コア1の端部がフランジ2の孔部3に嵌合する。コア1の端部のフランジ2の孔部3への挿入は、係合凸部5の内側壁面16がコア1の導入凹部6の軸方向の段面9に当接するまで挿入する(
図6(ロ))。
この状態から、コア1およびフランジ2を任意の方向に相対回動させ、係合凸部5を係合凹溝8に挿入させることにより係合凸部5と係合凹溝8とが連結し、コア1の両端部へフランジ2が取り付けられる(
図6(ハ))。
【0025】
本例では、孔部3となる短筒部4の内周面周方向に2個の係合凸部5が対向するように形成されており、導入凹部6及び係合凹溝8は、係合凸部5に対応して周方向に同数形成されているので、係合凸部5と係合凹溝8とは周方向の2箇所で連結し、コア1とフランジ2の安定した取り付け状態が得られる。
【0026】
また、本例では、係合凸部5の外側壁面13に形成された凸状係合部10と、係合凹溝8の内側壁面14に形成された係合凹部11とで構成されるスナップ係合機構12が備えられているので、係合凸部5を係合凹溝8に挿入させたときに、スナップ係合機構を構成する凸状係合部10と係合凹部11がスナップ係合するので、係合凸部5と係合凹溝8との連結状態におけるコア1およびフランジ2の更なる相対回動の抵抗となり、コア1とフランジ2の取り付け状態が維持される。
【0027】
コア1の両端部からのフランジ2の取り外しにあっては、コア1およびフランジ2を任意の方向に相対回動させ、係合凸部5を係合凹溝8から離脱させて導入凹部6に位置させる。これにより係合凸部5と係合凹溝8との連結が解除され、この状態でコア1の両端部からフランジ2を引き抜くことによりコア1の両端部からフランジ2が取り外せる。
【符号の説明】
【0028】
1 コア
2 フランジ
3 孔部
4 短筒部
5 係合凸部
6 導入凹部
7 非導入凹部面
8 係合凹溝
9 段面
10 凸状係合部
11 係合凹部
12 スナップ係合機構
13 外側壁面
14 内側壁面
15 補強用リブ
16 内側壁面