特許第6508991号(P6508991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6508991-振動制御構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508991
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】振動制御構造
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
   E04H9/02 331B
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-51744(P2015-51744)
(22)【出願日】2015年3月16日
(65)【公開番号】特開2016-169578(P2016-169578A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2017年12月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】松原 由典
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃平
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔汰
(72)【発明者】
【氏名】田中 健嗣
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−155899(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤又は該地盤上の構造物に設置され、前記構造物に設けられるエレベータの制御に用いられる振動を検出するエレベータ用振動センサと、
前記地盤又は前記構造物に設置され、該地盤又は該構造物の振動を検出する振動低減装置用振動センサと、
前記地盤又は前記構造物に設置され、前記構造物の振動を低減する振動低減装置と、
前記振動低減装置用振動センサで検出された振動、及び前記エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて前記振動低減装置を作動し、前記構造物の振動を低減させる振動低減装置用制御ユニットと、
を備える振動制御構造。
【請求項2】
地盤又は該地盤上の構造物に設置され、前記構造物に設けられるエレベータの制御に用いられる振動を検出するエレベータ用振動センサと、
前記地盤又は前記構造物に設置され、該地盤又は該構造物の振動を検出する振動低減装置用振動センサと、
前記地盤又は前記構造物に設置され、前記構造物の振動を低減する振動低減装置と、
前記エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて前記エレベータを制御するエレベータ用制御ユニットと、
前記振動低減装置用振動センサで検出された振動、及び前記エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて前記振動低減装置を制御する振動低減装置用制御ユニットと、
を備え、
前記振動低減装置用制御ユニットは、前記エレベータ用制御ユニットに接続され、該エレベータ用制御ユニットを介して前記エレベータ用振動センサで検出された振動を取得する、
振動制御構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動制御構造に関する。
【背景技術】
【0002】
リアルタイム地震情報に基づいて、可変減衰ダンパの減衰量やエレベータの動作を制御する制御システムが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−045885号公報
【特許文献2】特開2010−083629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、地震等の振動に基づいて構造物の振動を制御する振動低減装置としては、ロックダンパやAMD(Active Mass Damper)が知られている。これらの振動低減装置は、加速度センサ等の振動センサと共に構造物等に設置される。
しかしながら、振動センサの設置には、コストがかかる。
【0005】
本発明は、上記の事実を考慮し、振動センサの設置コストを削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様に係る振動制御構造は、地盤又は該地盤上の構造物に設置され、前記構造物に設けられるエレベータの制御に用いられる振動を検出するエレベータ用振動センサと、前記地盤又は前記構造物に設置され、前記エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて前記構造物の振動を低減する振動低減装置と、を備える。
【0007】
第1態様に係る振動制御構造によれば、地盤又は地盤上の構造物には、エレベータ用振動センサが設置される。このエレベータ用振動センサは、構造物に設けられたエレベータの制御に用いられる振動を検出する。また、構造物には、振動低減装置が設置される。この振動低減装置は、エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて構造物の振動を制御する。つまり、本発明では、エレベータの制御に用いられるエレベータ用振動センサが振動低減装置用の振動センサとして兼用される。したがって、振動センサの設置コストを削減することができる。
【0008】
第2態様に係る振動制御構造は、第1態様に係る振動制御構造において、前記地盤又は前記構造物に設置され、該構造物の振動を検出する振動低減装置用振動センサを備え、前記振動低減装置は、前記エレベータ用振動センサ及び前記振動低減装置用振動センサで検出された振動に基づいて前記構造物の振動を制御する。
【0009】
第2態様に係る振動制御構造によれば、地盤又は構造物には、振動低減装置用振動センサが設置される。振動低減装置用振動センサは、地盤又は構造物の振動を検出する。この振動低減装置用振動センサ及びエレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて、振動低減装置が構造物の振動を低減する。
【0010】
これにより、例えば、振動低減装置用振動センサ及びエレベータ用振動センサの何れか一方が故障したとしても、振動低減装置用振動センサ及びエレベータ用振動センサの何れか他方で検出された振動に基づいて、振動低減装置が構造物の振動を低減することができる。つまり、本発明では、エレベータ用振動センサを振動低減装置用の振動センサとして兼用することにより、振動センサの設置コストを削減しつつ、振動低減装置用振動センサの二重化(冗長化)を図ることができる。
【0011】
第3態様に係る振動制御構造は、第2態様に係る振動制御構造において、前記エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて前記エレベータを制御するエレベータ用制御ユニットと、前記振動低減装置用振動センサで検出された振動、及び前記エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて前記振動低減装置を制御する振動低減装置用制御ユニットと、を備え、前記振動低減装置用制御ユニットは、前記エレベータ用制御ユニットに接続され、該エレベータ用制御ユニットを介して前記エレベータ用振動センサで検出された振動を取得する。
【0012】
第3態様に係る振動制御構造によれば、エレベータ用制御ユニット及び振動低減装置用制御ユニットを備えている。エレベータ用制御ユニットは、エレベータ用振動センサで検出された振動に基づいてエレベータを制御する。一方、振動低減装置用制御ユニットは、振動低減装置用振動センサで検出された振動、及びエレベータ用振動センサで検出された振動に基づいて振動低減装置を制御する。この振動低減装置用制御ユニットは、エレベータ用制御ユニットに接続され、当該エレベータ用制御ユニットを介してエレベータ用振動センサで検出された振動を取得する。つまり、振動低減装置用制御ユニットは、エレベータ用振動センサに直接接続されず、エレベータ用制御ユニットを介してエレベータ用振動センサに接続される。
【0013】
このように振動低減装置用制御ユニットをエレベータ用制御ユニットに接続することにより、振動低減装置用制御ユニットをエレベータ用振動センサに直接接続する場合と比較して、例えば、振動低減装置用制御ユニットとエレベータ用振動センサとの間の配線等が容易となる。
【0014】
また、振動低減装置用制御ユニットをエレベータ用振動センサに直接接続する場合は、振動低減装置用制御ユニット及びエレベータ用制御ユニットの各々に、エレベータ用振動センサで検出された振動を情報処理する回路等が必要になる可能性がある。
【0015】
これに対して本発明では、振動低減装置用制御ユニットをエレベータ用制御ユニットに接続することにより、振動低減装置用制御ユニットは、振動低減装置用制御ユニットから当該振動低減装置用制御ユニットで情報処理されたエレベータ用振動センサの振動情報を取得することができる。したがって、振動低減装置用制御ユニットに上記回路等を設ける必要がないため、コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明に係る振動制御構造によれば、振動センサの設置コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る振動制御構造が適用された構造物を示す立面図である。
図2図2は、エレベータ用振動センサ及びロックダンパ用振動センサの設置位置の変形例を示す図1に対応する立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態に係る振動制御構造について説明する。
【0019】
図1には、本実施形態に係る振動制御構造10が適用された構造物12が示されている。構造物12は、既存構造物を免震改修(免震レトロフィット)した免震構造物とされており、免震改修に伴って本実施形態に係る振動制御構造10が適用されている。
【0020】
具体的には、構造物12は、既存部分(既存構造物)として、基礎14、上部構造体16、エレベータ30、エレベータ用振動センサ36及びエレベータ用制御ユニット38を備えている。この構造物12には、免震改修に伴って、基礎14と上部構造体16との間に免震層22が形成されると共に当該免震層22に免震支承40及びロックダンパ50が設置されている。さらに、構造物12には、ロックダンパ50の設置に伴って、ロックダンパ用振動センサ52及びロックダンパ用制御ユニット54が設置されている。以下、構造物12を構成する上記の各構成要素について具体的に説明する。
【0021】
先ず、構造物12の既存部分(既存構造物)について説明する。既存部分を構成する基礎14は、地盤G上に構築されている。この基礎14は、基礎スラブ14Aと、基礎スラブ14Aの外周部から立ち上げられた擁壁14Bとを備えている。基礎スラブ14A上には、複数層からなる上部構造体16が構築されている。
【0022】
上部構造体16には、既存のエレベータ30が設置されている。具体的には、上部構造体16の内部には、複数層に亘って上下方向に延びるエレベータシャフト18が形成されている。また、エレベータシャフト18の頂部には、機械室20が設けられている。なお、機械室20は必要に応じて設ければ良く、例えば、マシンルームレスエレベータの場合には機械室20は存在しない。
【0023】
エレベータ30は、エレベータシャフト18内に設置されるカゴ32と、カゴ32と釣り合う図示しないカウンタウェイトと、カゴ32とカウンタウェイトとを繋ぐ図示しないワイヤロープと、機械室20に設置され、ワイヤロープを巻き上げ又は巻き出すことによりカゴ32をエレベータシャフト18に沿って昇降させる巻上機等の昇降機34とを有している。なお、エレベータは、上記のようなロープ式に限らず、油圧式やリニアモーター式等であっても良い。
【0024】
エレベータ用振動センサ36は、地盤G又は構造物12の振動を検出する検出器であり、例えば、加速度センサ、速度センサ又は変位センサとされる。本実施形態におけるエレベータ用振動センサ36は、構造物12の直下の地盤Gに設置されると共に、当該地盤Gの振動に伴う加速度を検出する加速度センサとされている。このエレベータ用振動センサ36は、配線等を介してエレベータ用制御ユニット38と電気的に接続されており、検出した地盤Gの加速度(振動)をエレベータ用制御ユニット38に出力するようになっている。
【0025】
エレベータ用制御ユニット38は、各種の電気回路等やメモリが実装された制御盤を有し、エレベータ30の全体の動作を制御する制御装置とされる。このエレベータ用制御ユニット38は、上部構造体16の所定階に設けられた図示しない防災センターに設置されている。なお、エレベータ用制御ユニット38は、例えば、中央管理室や、前述した機械室20に設けられても良い。
【0026】
エレベータ用制御ユニット38は、地震時にエレベータ用振動センサ36で検出された地盤Gの加速度が所定値以上の場合に、エレベータ30を通常運転状態から非常運転状態に切り替える。ここで、通常運転状態では、エレベータ用制御ユニット38は、利用者の操作に応じて昇降機34を作動し、カゴ32をエレベータシャフト18に沿って昇降させる。一方、非常運転状態では、エレベータ用制御ユニット38は、昇降機34を作動し、カゴ32を最寄階に停止させた後、扉を開放させる。
【0027】
次に、免震改修に伴って構造物12に設置された免震支承40、ロックダンパ50、ロックダンパ用振動センサ52、及びロックダンパ用制御ユニット54について説明する。基礎スラブ14Aと上部構造体16との間には、免震改修に伴って免震層22が形成されている。この免震層22には、複数の免震支承40と、ロックダンパ50とが設置されている。
【0028】
複数の免震支承40は、積層ゴムとされており、基礎スラブ14A上に水平二方向に間隔を空けて配列されている。これらの免震支承40によって、基礎スラブ14Aに対して上部構造体16が水平方向に相対変位可能に支持されている。なお、免震支承40は、積層ゴム支承に限らず、滑り支承や転がり支承であっても良い。また、免震層22には、積層ゴム支承、滑り支承及び転がり支承が適宜組み合わされて設置されても良い。
【0029】
振動低減装置のとしてのロックダンパ50は、オイルダンパ50A及びロック機構50Bを有している。オイルダンパ50Aは、一端側(例えばシリンダ側)が基礎スラブ14Aから立ち上げられた下側連結部24に連結されると共に、他端側(例えばピストン側)が上部構造体16の下面から下方へ突出する上側連結部26に連結されている。このオイルダンパ50Aは、基礎14と上部構造体16との水平方向の相対変位に伴って作動し、減衰力を発生することにより、構造物12の振動が低減される。
【0030】
ロック機構50Bは、オイルダンパ50Aの作動を制限することにより、免震支承40の作動を制限して風(強風)による上部構造体16の揺れを抑制するものである。このロック機構50Bには、例えば、オイルダンパ50A内の作動油の移動を制限する電磁弁や、オイルダンパ50Aのシリンダとピストンとの相対移動を物理的に制限するソレノイド等の電磁ロックが用いられる。
【0031】
ロック機構50Bは、オイルダンパ50Aの作動を制限するロック状態と、当該制限を解除し、オイルダンパ50Aの作動を許容するアンロック状態とに切り替え可能とされている。このロック機構50Bは、後述するロックダンパ用制御ユニット54が配線等を介して電気的に接続されている。なお、ロック機構50Bは、初期状態でロック状態とされる。
【0032】
振動低減装置用振動センサとしてのロックダンパ用振動センサ52は、エレベータ用振動センサ36と同様に、地盤G又は構造物12の振動を検出する検出器であり、例えば、加速度センサ、速度センサ又は変位センサとされる。本実施形態におけるロックダンパ用振動センサ52は、構造物12の直下の地盤Gに設置されると共に、当該地盤Gの振動に伴う加速度を検出する加速度センサとされている。このロックダンパ用振動センサ52は、配線等を介してロックダンパ用制御ユニット54と電気的に接続されており、検出した地盤Gの加速度(振動)をロックダンパ用制御ユニット54に出力するようになっている。
【0033】
振動低減装置用制御ユニットとしてのロックダンパ用制御ユニット54は、各種の電気回路等やメモリが実装された制御盤を有し、ロックダンパ50の全体の動作を制御する制御装置とされる。このロックダンパ用制御ユニット54は、エレベータ用制御ユニット38と同様に、防災センターに設置されている。なお、制御ユニット54は、例えば、中央管理室や機械室20に設置されても良い。
【0034】
また、ロックダンパ用制御ユニット54は、配線等を介してエレベータ用制御ユニット38と電気的に接続されている。これにより、ロックダンパ用制御ユニット54は、エレベータ用振動センサ36で検出された地盤Gの加速度をエレベータ用制御ユニット38から取得可能になっている。このロックダンパ用制御ユニット54は、地震時にロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36で検出された地盤Gの加速度に基づいて、ロック機構50Bをロック状態からアンロック状態に切り替える。つまり、本実施形態では、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36の2つの振動センサによって、ロックダンパ50(ロック機構50B)用の振動センサが二重化(冗長化)されている。なお、ロックダンパ用制御ユニット54の制御方法については、本実施形態の作用と共に後述する。
【0035】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0036】
先ず、エレベータ30の動作を制御するエレベータ用制御ユニット38の制御方法について説明する。なお、エレベータ30の初期状態は、通常運転状態とされる。この通常運転状態において地震が発生すると、エレベータ用振動センサ36が地盤Gの加速度を検出すると共に、検出した地盤Gの加速度をエレベータ用制御ユニット38に出力する。
【0037】
次に、エレベータ用制御ユニット38は、エレベータ用振動センサ36から入力された地盤Gの加速度が予め設定された所定値(閾値)未満の場合は、そのまま通常運転状態を継続する。一方、エレベータ用振動センサ36から入力された地盤Gの加速度が所定値以上の場合は、エレベータ用制御ユニット38は、エレベータ30を通常運転状態から非常運転状態へ切り替える。この非常運転状態では、エレベータ用制御ユニット38は、例えば、図示しない昇降機34を作動してエレベータ30のカゴ32を最寄階に停止させると共に、カゴ32の扉を開放させる。なお、非常運転状態におけるエレベータ用制御ユニット38の制御内容は、上記のものに限らず、適宜変更可能である。
【0038】
次に、ロックダンパ50のロック機構50Bの動作を制御するロックダンパ用制御ユニット54の制御方法について説明する。なお、ロック機構50Bの初期状態は、ロック状態とされる。このロック状態において地震が発生すると、ロックダンパ用振動センサ52が地盤Gの加速度を検出すると共に、検出した地盤Gの加速度をロックダンパ用制御ユニット54へ出力する。この際、前述したエレベータ用振動センサ36が地盤Gの加速度を検出すると共に、検出した地盤Gの加速度はエレベータ用制御ユニット38を介してロックダンパ用制御ユニット54に出力する。
【0039】
次に、ロックダンパ用制御ユニット54は、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36から入力された地盤Gの加速度の何れもが、予め設定された所定値(閾値)未満の場合は、ロック機構50Bを作動せず、そのままロック状態を継続する。
【0040】
このようにロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36によって所定値以上の加速度が検出されるまでは、すなわち、所定規模の地震が発生するまでは、ロック機構50Bがロック状態となり、当該ロック機構50Bによってオイルダンパ50Aの作動が制限される。これにより、免震支承40の作動が制限される結果、風による上部構造体16の揺れが抑制される。したがって、上部構造体16の居住性が向上する。
【0041】
一方、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36から入力された地盤Gの加速度の少なくとも一方が所定値以上の場合は、ロックダンパ用制御ユニット54は、ロック機構50Bを作動し、当該ロック機構50Bをロック状態からアンロック状態に切り替える。これにより、オイルダンパ50Aが作動して減衰力を発生すると共に、免震支承40が作動して上部構造体16が基礎14に対して水平方向に変位する。この結果、上部構造体16に発生する地震力が低減される。したがって、上部構造体16の耐震性能が向上する。
【0042】
なお、ロックダンパ用振動センサ52用の所定値とエレベータ用振動センサ36用の所定値とは、同じ値でも良いし、異なった値でも良い。
【0043】
また、前述したように、ロックダンパ用制御ユニット54は、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36で検出された地盤Gの加速度に基づいてロック機構50Bの動作を制御する。これにより、例えば、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36のうち、一方が故障したとしても他方で検出された振動に基づいて、ロックダンパ用制御ユニット54がロック機構50Bの動作を制御することができる。
【0044】
このように本実施形態では、エレベータ用振動センサ36をロックダンパ50(ロック機構50B)用の振動センサとして兼用することにより、振動センサの設置コストを削減しつつ、ロックダンパ50用の振動センサの二重化を図ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、ロックダンパ用制御ユニット54は、エレベータ用制御ユニット38を介してエレベータ用振動センサ36に接続される。これにより、ロックダンパ用制御ユニット54をエレベータ用振動センサ36に直接接続する場合と比較して、ロックダンパ用制御ユニット54とエレベータ用振動センサ36との間の配線等が容易となる。
【0046】
また、ロックダンパ用制御ユニット54をエレベータ用振動センサ36に直接接続する場合は、ロックダンパ用制御ユニット54及びエレベータ用制御ユニット38の各々に、エレベータ用振動センサ36で検出された振動を情報処理する回路等が必要になる可能性がある。
【0047】
これに対して本実施形態では、ロックダンパ用制御ユニット54をエレベータ用制御ユニット38に接続することにより、ロックダンパ用制御ユニット54は、エレベータ用制御ユニット38から当該エレベータ用制御ユニット38で情報処理されたエレベータ用振動センサ36の加速度を取得することができる。したがって、エレベータ用制御ユニット38に上記回路等を設ける必要がないため、コストを削減することができる。
【0048】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0049】
上記実施形態では、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36で検出された地盤Gの加速度に基づいて、ロックダンパ用制御ユニット54がロック機構50Bの動作を制御する例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。ロックダンパ用制御ユニット54は、例えば、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36で検出された加速度の平均値に基づいて、ロック機構50Bの動作を制御しても良い。この場合、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36で検出される地盤Gの加速度の信頼性を高めることができる。
【0050】
また、上記実施形態では、構造物12にロックダンパ用振動センサ52が設置された例を示したが、ロックダンパ用振動センサ52は省略可能である。この場合、ロックダンパ用制御ユニット54は、エレベータ用振動センサ36で検出された地盤Gの加速度に基づいて、ロック機構50Bの動作を制御する。このようにエレベータ用振動センサ36をロックダンパ50用の振動センサとして兼用することにより、構造物12に設置する振動センサの設置コストをさらに削減することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、ロックダンパ用制御ユニット54をエレベータ用制御ユニット38に接続した例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、エレベータ用制御ユニット38を介さずに、ロックダンパ用制御ユニット54をエレベータ用振動センサ36に直接接続しても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、エレベータ用振動センサ36及びロックダンパ用振動センサ52を地盤Gに設置した例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。例えば、図2に示される例では、エレベータ用振動センサ36は、エレベータシャフト18の下部にあるエレベータピットに設けられている。このエレベータ用振動センサ36は、図示しない免震支承上に配置されている。一方、ロックダンパ用振動センサ52は、免震支承40上に設置されている。
【0053】
また、例えば、ロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36は、構造物12を構成する基礎14や上部構造体16に設置しても良い。さらに、エレベータ用振動センサ36とロックダンパ用振動センサ52とは、別々の場所に設置しても良い。具体的には、一例として、エレベータ用振動センサ36を地盤Gに設置し、ロックダンパ用振動センサ52を上部構造体16に設置しても良い。
【0054】
また、上記実施形態では、ロックダンパ用制御ユニット54がロックダンパ用振動センサ52及びエレベータ用振動センサ36の2つの振動センサで検出された地盤Gの加速度に基づいてロック機構50Bを制御した例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。ロックダンパ用制御ユニット54は、3つ以上の振動センサで検出された地盤G又は構造物12の振動に基づいてロック機構50Bの動作を制御するように構成されても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、ロックダンパ50のダンパとしてオイルダンパ50Aを用いた例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。ロックダンパ50には、オイルダンパ50Aに替えて、例えば、粘弾性ダンパやエアダンパ、摩擦ダンパ及び鋼材ダンパ等の種々のダンパを用いることができる。
【0056】
また、上記実施形態では、振動低減装置として、ロックダンパ50を用いた例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。振動低減装置としては、例えば、免震支承と、免震支承の作動を制限するロック機構とを有するロック機構付き免震支承とされても良い。この場合、例えば、免震支承としての積層ゴム支承に設けられ、当該積層ゴム支承のせん断変形(作動)を直接的に制限するロック機構を用いても良いし、免震層22に設置され、基礎(下部構造体)と上部構造体16との相対変位を制限することで積層ゴム支承のせん断変形を間接的に制限するロックピン等のロック機構を用いても良い。
【0057】
また、振動低減装置としては、例えば、AMD(Active Mass Damper)等のアクティブ制振装置やセミアクティブ制振装置を用いても良い。これらのアクティブ制振装置等は、例えば、バネマスの振動系を構成する制振装置と、マスに外力を付与し、当該マスを振動させるアクチュエータとを有して構成される。この場合、振動低減装置用制御ユニットは、例えば、エレベータ用振動センサ36で検出された振動に基づいて、アクチュエータを制御し、マスに付与する外力を増減することで、構造物の振動を低減する(打ち消す)制振力をマスに発生させる。
【0058】
また、上記実施形態では、免震改修に伴って構造物12に振動制御構造10を適用した例を示したが、上記実施形態はこれに限らない。上記実施形態は、例えば、エレベータを備える新築の構造物に対して適用しても良い。
【0059】
また、上記実施形態に係る振動制御構造10は、エレベータが設置される塔状構造物等の種々の構造物にも適宜適用可能である。
【0060】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 振動制御構造
12 構造物
30 エレベータ
36 エレベータ用振動センサ
38 エレベータ用制御ユニット
50 ロックダンパ(振動低減装置)
50A オイルダンパ
50B ロック機構
52 ロックダンパ用振動センサ(振動低減装置用振動センサ)
54 ロックダンパ用制御ユニット(振動低減装置用制御ユニット)
G 地盤
図1
図2