(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509060
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/76 20060101AFI20190422BHJP
A01D 34/81 20060101ALI20190422BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20190422BHJP
A01D 34/78 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
A01D34/76 E
A01D34/81
A01D34/64 B
A01D34/78 Z
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-139890(P2015-139890)
(22)【出願日】2015年7月13日
(65)【公開番号】特開2017-18054(P2017-18054A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】小池 和生
【審査官】
中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−265685(JP,A)
【文献】
特開2013−063055(JP,A)
【文献】
特開2012−187026(JP,A)
【文献】
特開2013−063092(JP,A)
【文献】
特開2003−289709(JP,A)
【文献】
特開2014−124979(JP,A)
【文献】
米国特許第08191343(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/42 − 34/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機構を介して対地高さ変更可能に車体に取り付けられた、地面との間で内部空間を作り出すモーアデッキと、
前記モーアデッキの天壁を貫通して上方に延びている複数の横並び配置された回転軸と、
前記モーアデッキの内部空間で前記回転軸に連結された刈刃と、
平面視で前記刈刃の回転軌跡の外側で前記モーアデッキに装着された電気モータと、
前記電気モータから上方に延びている前記電気モータの出力軸と、
前記出力軸から前記回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方に位置する動力伝達機構と、
前記電気モータに電力を供給する電力供給ユニットと、を備え、
前記モーアデッキは、前記天壁の外周縁から下方に延びた側壁を備え、前記側壁の前記天壁より対地高さが低い位置から外側に延びた装着台が設けられ、
前記装着台に被装着面が形成され、
前記電気モータの下方端部に前記モーアデッキに対する装着面が形成され、
前記装着台に、前記刈刃の回転に伴って発生する吸引風の流れが前記電気モータの周辺を通って前記モーアデッキ内へ入り込むように案内する開口が形成されている草刈機。
【請求項2】
前記装着台には水平な被装着面が形成されており、前記電気モータの装着面が前記被装着面に熱伝導可能に接触している請求項1記載の草刈機。
【請求項3】
前記電力供給ユニットを構成するインバータ部が前記側壁または前記装着台に装着されている請求項1または2記載の草刈機。
【請求項4】
前記インバータ部の装着面が、前記側壁に形成された上下方向に延びた被装着面に熱伝導可能に接触した状態で固定される請求項3記載の草刈機。
【請求項5】
前記電力供給ユニットを構成するバッテリが前記車体に設けられ、前記インバータ部と前記バッテリとを接続する電力ケーブルのコネクタユニットが前記装着台に取り付けられている請求項3または4記載の草刈機。
【請求項6】
前記刈刃の回転で生み出される吸い込み空気が流れる側壁周辺に前記装着台が配置されている請求項1から5のいずれか一項記載の草刈機。
【請求項7】
前記側壁の後方領域は、平面視で、隣接する刈刃の回転軌跡に沿うように形成された複数の円弧部と当該円弧部に挟まれた直線部とによって境界付けられた空間であり、前記電気モータは前記空間に配置されている請求項1から6のいずれか一項記載の草刈機。
【請求項8】
前記電気モータはウオータジャケットを備えており、前記ウオータジャケットに冷却水を供給する電動冷却ポンプが車体に設けられている請求項1から7のいずれか一項記載の草刈機。
【請求項9】
前記インバータ部には、冷却水路が形成されており、前記冷却水路に冷却水を供給する電動冷却ポンプが車体に設けられている請求項3または4記載の草刈機。
【請求項10】
前記動力伝達機構は、前記複数の回転軸の上端にそれぞれ設けられた被駆動プーリと、前記電気モータの出力軸の上端に設けられた駆動プーリと、前記被駆動プーリと前記駆動プーリとに掛け回されているベルトからなるベルト伝動機構である請求項1から9のいずれか一項記載の草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
昇降機構を介して対地高さ変更可能に車体に取り付けられた、地面との間で内部空間を作り出すモーアデッキと、前記モーアデッキの内部空間内に配置された回転軸周りで回転する刈刃と、前記刈刃に回転動力を供給する電気モータとを備えた草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1による車両は、モーアデッキと、モーアデッキに横並びで支持され垂直方向
に延びる回転軸と、この回転軸の下端に固定された刈刃とを備えている。モーアデッキの上壁面で、2つの回転軸の間に電気モータが載置されている。出力軸は、電気モータの両側から各回転軸に向かって水平に延びている。出力軸と回転軸とはベベルギヤで連結されており、電気モータの駆動により、刈刃が回転する。このような構成を、昇降機構を介して対地高さ変更可能に車体に取り付けられたモーアデッキを備えたモーアに採用した場合、電気モータ及びベベルギヤがモーアデッキの天壁から突き出しているので、車体との干渉によりモーアデッキの対地高さを十分に確保することが困難である。無理にモーアデッキの対地高さを確保するため、車体の高さを高くすれば、車体の重心が高くなるという不都合が生じる。
【0003】
特許文献2によるローントラクタ(芝刈機)は、3つの並設された刈刃を配置しているモーアデッキを備えている。中央の刈刃を下端に取り付けている中央回転軸の上端は、電気モータの出力軸に連結されている。左側の刈刃を取り付けている左回転軸及び右側の刈刃を取り付けている右回転軸はそれぞれ、中央回転軸からベルト伝動を介して動力を受けている。電気モータはモーアデッキにおける最も高い位置に配置されている。電気モータに電力を供給するコントローラは、モーアデッキの天壁上で中央回転軸と左回転軸と右回転軸とで囲まれた領域に配置され、地上高さは、電気モータよりは低い。このローントラクタにおいても、中央回転軸の上端に電気モータが配置されているので、電気モータと車体との干渉によりモーアデッキの対地高さを十分に確保することが困難である。
【0004】
特許文献3による電動芝刈機は、3つの並設された刈刃を配置しているモーアデッキを備えている。全ての刈刃の回転軸の上端に電気モータが配置されており、各電気モータへの給電は、車体に搭載されたインバータとバッテリとからなる給電システムによって行われる。この電動芝刈機においても電気モータと車体との干渉によりモーアデッキの対地高さを十分に確保することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8042322号明細書
【特許文献2】米国特許第8191343号明細書
【特許文献3】米国特許第8572939号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来のモーアデッキでは、刈刃の回転軸の上方に、ギヤ機構や電気モータなどの高さのある刈刃駆動機器が配置されているので、モーアデッキの昇降ストロースを十分に確保することが困難であった。このことから、モーアデッキに支持された刈刃の回転軸と車体下部との間に十分なスペースが確保される草刈機が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に基づく草刈機は、昇降機構を介して対地高さ変更可能に車体に取り付けられた、地面との間で内部空間を作り出すモーアデッキと、前記モーアデッキの天壁を貫通して上方に延びている複数の横並び配置された回転軸と、前記モーアデッキの内部空間で前記回転軸に連結された刈刃と、平面視で前記刈刃の回転軌跡の外側で前記モーアデッキに装着された電気モータと、前記電気モータから上方に延びている前記電気モータの出力軸と、前記出力軸から前記回転軸に動力を伝達するために前記モーアデッキの天壁の上方
に位置する動力伝達機構と、前記電気モータに電力を供給する電力供給ユニットと
、を備え、前記モーアデッキは、前記天壁の外周縁から下方に延びた側壁を備え、前記側壁の前記天壁より対地高さが低い位置から外側に延びた装着台が設けられ、前記装着台に被装着面が形成され、前記電気モータの下方端部に前記モーアデッキに対する装着面が形成され、前記装着台に、前記刈刃の回転に伴って発生する吸引風の流れが前記電気モータの周辺を通って前記モーアデッキ内へ入り込むように案内する開口が形成されている。
【0008】
この構成では、電気モータが装着されるモーアデッキ部分は複数の刈刃の回転軌跡の外側となるので、その地上高さを刈刃の存在を考慮せずに下げることができる。これにより、電気モータと車体との間に十分な高さ
を確保することができ、結果的に、モーアデッキの対地高さを十分に確保することが可能となる。その際、電気モータの出力軸から各刈刃の回転軸への動力伝達は、モーアデッキの天壁の上方
に位置する動力伝達機構で行うことになるので、高さの低い動力伝達機構を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明による草刈機に搭載されているモーアユニットの基本構造を模式的に示す斜視図である。
【
図2】刈刃の回転軌跡に対する電気モータとの位置関係を模式的に示す平面図である。
【
図3】草刈機の実施形態の1つであるミッドマウント型乗用電動草刈機の側面図である。
【
図7】草刈機の電気系統及び動力系統を説明する説明図である。
【
図8】モーアユニットの別実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による草刈機の具体的な実施形態を説明する前に、
図1と
図2を用いて、この草刈機に搭載されているモーアユニット3の基本構造を説明する。
図1はモーアユニット3を模式的に示している斜視図である。
図2は、刈刃20の回転軌跡に対する電気モータ4との位置関係を模式的に示す平面図である。モーアユニット3のモーアデッキ30は
図1では図示されていない昇降機構によって車体10から吊り下げられている。
【0011】
モーアユニット3を構成するモーアデッキ30は、車体10に吊り下げられた状態において、地面に対して開口している内部空間を作り出す。この内部空間に複数の刈刃20が収容されている。各刈刃20は、モーアデッキ30の天壁31を貫通して上方に、好ましくは垂直方向に延びている回転軸21の下端に固定されている。
図1の例では、モーアデッキ30は左側の刈刃20と中央の刈刃20と右側の刈刃20とが車体横断方向に横並びしている3枚刈刃タイプである。その際、中央の刈刃20が左側の刈刃20及び右側の刈刃20より車体前進方向に突き出している。その結果、中央の回転軸21が左側の回転軸21及び右側の回転軸21より車体前進方向に突き出している。これにより、モーアデッキ30の内部空間において、平面視で3枚の刈刃20の回転軌跡の外側、特に車体後方側にデッドスペースが作り出される。このデッドスペースは、
図2で示されているように、平面視で中央の刈刃20の回転軌跡の後方で左側の刈刃20の回転軌跡の右側で右側の刈刃20の回転軌跡の左側に位置している。このデッドスペースにモーアデッキ30の壁体をくい込ませることで、モーアデッキ30の中央後部に有用空間USが形成される。この有用空間USに電気モータ4が配置される。電気モータ4は、その出力軸41が上方、好ましくは垂直方向を向く姿勢で配置されている。その際、電気モータ4の出力軸41はモータハウジング40の上面から上方に突き出している。この出力軸41から各回転軸21への動力伝達は、モーアデッキ30の天壁31の上方を延びる動力伝達機構7によって行われる。モータハウジング40の下面はモータ装着面401として形成されている。電気モータ4は、モーアデッキ30に設けられた装着台34に固定される。その際、装着台34に形成された第1被装着面341にモータ装着面401が熱伝導可能に接触する。これにより、刈刃20による刈草搬送風によって冷却されるモーアデッキ30が、電気モータ4のヒートシンクとして機能する。特に、モーアデッキ30の内部空間の後部は刈刃20による搬送風流量が大きく、その側壁部分の冷却効果が高いので、当該側壁部分と装着台34とが熱伝導可能に接続されていると好都合である。
【0012】
天壁31の上方に位置する動力伝達機構7が、モーアデッキ30の十分な昇降ストロークを確保するためには、その高さができるだけ低い方が好ましい。このため、好ましくは動力伝達機構7としてベルト伝動機構が採用される。
【0013】
電気モータ4に電力を供給する電力供給ユニット5の構成要素の1つであるインバータ部50も有用空間USに配置されている。
図1の例では、有用空間USを作り出しているモーアデッキ30の側壁部分に形成された第2被装着面342にインバータ部50のインバータ装着面501が熱伝導可能に接触するように、インバータ部50は固定されている。したがって、モーアデッキ30は、インバータ部50のヒートシンクとしても機能する。インバータ部50は、側壁部分ではなく、一段下の天壁部分(有用空間USの底面)に装着してもよい。インバータ部50は、一方では電気モータ4と接続され、他方では電力供給ユニット5の構成要素の1つであるバッテリ51と電力ケーブルを介して接続されている。
【0014】
電気モータ4及びインバータ部50に対する冷却効果を高めるために、装着台34の一部に開口301を設け、刈刃20の回転によって発生するモーアデッキ30内に吸い込まれる空気の流れが、電気モータ4及びインバータ部50の近くを流れるようにしてもよい。
【0015】
モータハウジング40にウオータジャケットが形成されている場合、インバータ部50をモータハウジング40のウオータジャケット近傍に装着してもよい。さらに、インバータ部50にも冷却水路を形成し、ウオータジャケットから冷却水の供給を受けるようにしてもよい。
【0016】
次に、図面を用いて、本発明による草刈機の具体的な実施形態の1つを説明する。
図3は、草刈機の一例であるミッドマウント型乗用電動草刈機の側面図である。
【0017】
この草刈機は、遊転自在なキャスタ型の左前車輪1aと右前車輪1bとからなる前車輪ユニット1、左後車輪2aと右後車輪2bとからなる駆動輪ユニット2、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2とによって支持される車体10、車体10の後部に配置されたバッテリ51、バッテリ51の前方に配置された運転座席11、運転座席11の後方から立設された転倒保護フレーム12、前車輪ユニット1と駆動輪ユニット2との間で車体10の下方空間に昇降機構13としての昇降リンク機構を介して昇降可能に車体10から吊り下げられたモーアユニット3を備えている。
【0018】
運転座席11の前方には運転者の足載せ場であるフロアプレートが設けられており、そこからブレーキペダル14が突き出している。運転座席11の両側には、車体横断方向の水平揺動軸回りに揺動する左操縦レバー15aと右操縦レバー15bとからなる操縦ユニット15が配置されている。さらに、運転座席11の周辺には、刈刃操作レバー(スイッチタイプでもよい)16、モーアユニット昇降ペダル(レバータイプでもよい)17が配置されている。
【0019】
モーアユニット3は、
図4、
図5、
図6に示すように、3枚刈刃(ブレード)のサイドディスチャージタイプであり、モーアデッキ30と、3枚の回転式の刈刃20が備えられている。モーアデッキ30は、天壁31とこの天壁31の外周縁から下方に、この実施形態では外周縁から垂直下方に延びた側壁32を備えている。側壁32は、天壁31の前側の外周縁から下方に延びた前側壁321と後側の外周縁から下方に延びた後側壁322からなる。側壁32の右端領域は欠如されており、刈草排出口を形成している。
【0020】
後側壁322は、平面視で、隣接する3枚の刈刃20の回転軌跡に沿うように、左右2つの円弧部3321とその円弧を直線的に接続する直線部3322とからなる形状を有する。後側壁322の後方領域である、2つの円弧部3321と直線部3322との間に作り出される空間は、有用空間USとして利用される。この実施形態では、有用空間USに、刈刃モータとして機能する縦置きの電気モータ4及びこの電気モータ4に電力を供給するインバータ部50が配置される。このため、有用空間USには、天壁31より、ほぼ電気モータ4の高さ分だけ低くなったサブデッキが装着台34として設けられている。
【0021】
装着台34は、後側壁322から外側に延びており、後側壁322の左側の円弧部3321と右側の円弧部3321とを連結するロッド状の支持枠343と、支持枠343と後側壁322の直線部3322とを接続するブリッジプレート344とからなる。さらに、プレート状の装着ブラケット345が支持枠343とブリッジプレート344とに接合されている。この装着ブラケット345には、互いに段差を持って水平に延びた第1被装着面341と第2被装着面342とが形成されている。電気モータ4は、円筒状のモータハウジング40とモータハウジング40から上方に、この実施形態では垂直上方に延びた出力軸41を備えている。モータハウジング40の下方端部にはモータ装着面401が形成されており、このモータ装着面401は、電気モータ4の装着台34への装着の際に、第1被装着面341と面接触する。インバータ部50も長方形状のハウジングの下面にインバータ装着面501を形成しており、インバータ部50の装着台34への装着の際に、このインバータ装着面501が第2被装着面342と面接触する。これにより、鋼板製の装着台34を含むモーアデッキ30全体が電気モータ4及びインバータ部50のヒートシンクとして機能する。
【0022】
電気モータ4のモータハウジング40にはウオータジャケットが形成されている。円筒状のモータハウジング40の周面から冷却水の流通口42が突き出ており、この流通口42は、連通ホース、給水ホース、排水ホースが接続される。ウオータジャケットへの冷却水の供給は、
図7で模式的に示すように、電動冷却ポンプ45によって行われる。さらに、モータハウジング40の周面に給電ボックス402が設けられており、給電ボックス402とインバータ部50との間は、ここでは図示されていない電力ケーブルで接続されている。また、車体10に搭載されたバッテリ51からインバータ部50への電力供給は、
図7で模式的に示すように、インバータ部50に設けられているコネクタユニット56と、このコネクタユニットに接続可能な電力ケーブル57を介して行われる。車体10に搭載されたECUと呼ばれるコントローラ6からインバータ部50への制御信号の伝達は、制御信号線58を介して行われる。コネクタユニット56は、この制御信号線58の接続にも用いられる。コネクタユニット56は、インバータ部50の後方に突き出した受け部材と、電力ケーブル57や制御信号線58の終端と接続している差込み部材とからなる。受け部材の接続部(ソケットまたはプラグ)は車体横断方向(車体幅方向)で外方を向いている。したがって、差込み部材は、車体10の横から車体横断方向に沿って受け部材の接続部に向かって接近させられ、その接続部(プラグまたはソケット)は最終的に受け部材の接続部に挿入される。これは、車体10の下方は、種々の機器が配置されており、スペースが少ないが、モーアデッキ30の後部と駆動輪ユニット(後輪)2との間にはわずかなスペースがあるので、このようなコネクタユニット56の配置により、コネクタユニット56の接続と離脱が容易となる。コネクタユニット56としては、クイックカップラーとして知られているワンタッチ操作型のコネクタが好ましい。
【0023】
各刈刃20は、天壁31を貫通している回転軸21に固定されている。左側の回転軸21にはシングルタイプの第1プーリ71が取り付けられ、右側の回転軸21にはシングルタイプの第2プーリ72が取り付けられ、中央の回転軸21にはトリプルタイプの第3プーリ73が取り付けられている。さらに、電気モータ4の出力軸41の上端にもシングルタイプの第4プーリ74が取り付けられている。第4プーリ74と第3プーリ73との間、第3プーリ73と第1プーリ71との間、第3プーリ73と第2プーリ72との間には、それぞれベルト75が掛け回されている。駆動プーリである第4プーリ74、被駆動プーリである第1プーリ71と第2プーリ72と第3プーリ73、及びベルト75によって、電気モータ4の動力を刈刃に伝達する動力伝達機構7がベルト伝動機構として構築されている。この動力伝達機構7は、モーアデッキ30の天壁31の上方に配置されているが、水平姿勢のプーリ伝動機構であるため、その天壁31の高さはギヤ伝動機構などに比べて低く抑えられている。
【0024】
3つの回転軸21は、ベアリングを用いて天壁31に回転可能に支持されている。また、帯板状の刈刃20の両端部に切断刃先20aが形成されており、さらに各切断刃先の背後側に形成された起風羽根20bが形成されている。草刈り作業時には、刈刃20が回転しながら草刈機が走行することで刈刃20によって切断処理された刈草は、刈刃20の起風羽根20bによって発生した搬送風により、モーアデッキ30内のバッフルプレートに案内されてモーアデッキ30の内部を通り抜けて、排出口からモーアデッキ30の横外側に放出される。
【0025】
刈刃20の起風羽根20bによって搬送風を作り出すために、モーアデッキ30の側壁32の下端と地面との隙間から空気が入り込む。このモーアデッキ30内に入り込む空気の流れを電気モータ4及びインバータ部50のための冷却として用いるために、後側壁322と支持枠343との間に作り出される開口301が重要である。刈刃20の回転に伴い、電気モータ4及びインバータ部50の周辺を通り、開口301を通り抜けて後側壁322の下端から空気が入り込んで、搬送風が作り出される。
【0026】
図3、
図4、
図5において、電気モータ4、インバータ部50、動力伝達機構7は露出しているが、実際には、それぞれ、ここでは図示されていないカバーによって覆われている。
【0027】
図7に示すように、左後車輪2aと右後車輪2bとをそれぞれ回転駆動する電気モータである左モータ81と右モータ82が装備されている。左モータ81と右モータ82はそれぞれ独立的に走行用インバータ部52を介して供給される電力量によってその回転速度が変化する。これにより、左後車輪2aと右後車輪2bの回転速度を相違させることができ、この左右後車輪速度差によって草刈機の方向転換が行われる。なお、この実施形態では、左モータ81と左後車輪2aとの間及び右モータ82と右後車輪2bとの間の動力伝達のために、それぞれ走行駆動機構53が設けられている。左モータ81と右モータ82とがインホイールモータである場合、走行駆動機構53を省略することが可能である。
【0028】
図7に示すように、走行のための左モータ81と右モータ82、刈刃モータである電気モータ4、電動冷却ポンプ45への給電制御は、ECUとも呼ばれるコントローラ6によって行われる。
【0029】
〔別実施の形態〕
(1)
図8には、モーアデッキ30、特に装着台34の構造に関する別実施形態が示されている。
図8では、装着台34は、モーアデッキ30の後部を構成するサブデッキとして形成されている。つまり、装着台34は、実質的に、後側壁322の左側の円弧部3321と右側の円弧部3321との間で後側壁322の直線部3322から後方水平に延びた装着プレート346と、後側壁322とからなる。装着プレート346には、モータハウジング40のモータ装着面401と密着する第1被装着面341が形成されている。この別実施形態では、インバータ部50のインバータ装着面501と密着する第2被装着面342は、後側壁322の直線部3322に設けられているので、インバータ部50は、後側壁322の壁面に装着されることになる。いずれにせよ、モータ装着面401と第1被装着面341及びインバータ装着面501と第2被装着面342は面接触しており、これにより、モーアデッキ30全体が電気モータ4及びインバータ部50のヒートシンクとして機能する。装着プレート346には開口301が設けられており、刈刃20の回転によって発生するモーアデッキ30内に吸い込まれる空気の流れが、電気モータ4及びインバータ部50の近くを流れるようにしている。
(2)上述した実施形態では、インバータ部50はモーアデッキ30に配置されていたが、これに代えて車体10に配置してもよい。
(3)上述した実施形態では、3枚の刈刃20が横並びしたモーアユニット3が採用されていたが、4枚以上の刈刃20または2枚の刈刃20が横並びしたモーアユニット3も本発明に含まれる。
(4)上述した実施形態では、草刈走行車両は、モーアユニット3を前車輪ユニット1と駆動輪(後輪)ユニット2との間に配置するミッドマウント型であったが、モーアユニット3を前車輪ユニット1の前方に配置するフロントモーア型であってもよい。
(5)上述した実施形態では、駆動輪ユニット2の左後車輪2aと右後車輪2bとが独立して駆動可能な、いわゆるゼロターン型車両であったが、左後車輪2aと右後車輪2bとが差動機構によって連結されている車両であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、刈刃を電気モータによって駆動する草刈機に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
10 :車体
13 :昇降機構
20 :刈刃
21 :回転軸
3 :モーアユニット
30 :モーアデッキ
301 :開口
31 :天壁
32 :側壁
321 :前側壁
322 :後側壁
3321:円弧部
3322:直線部
34 :装着台
341 :第1被装着面
342 :第2被装着面
343 :支持枠
344 :ブリッジプレート
345 :装着ブラケット
346 :装着プレート
4 :電気モータ
40 :モータハウジング
401 :モータ装着面
402 :給電ボックス
41 :出力軸
42 :流通口
45 :電動冷却ポンプ
5 :電力供給ユニット
50 :インバータ部
501 :インバータ装着面
51 :バッテリ
56 :コネクタユニット
6 :コントローラ
7 :動力伝達機構
71 :第1プーリ
72 :第2プーリ
73 :第3プーリ
74 :第4プーリ
75 :ベルト
US :有用空間