(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。
【0021】
〔自脱型コンバインの全体構成〕
図1には、自脱型コンバインを示している。このコンバインは、クローラ式の走行装置1と、走行装置1によって支持される機体フレーム2と、を備えている。機体フレーム2の前部には、植立穀稈を刈り取る昇降可能な刈取部3が備えられている。機体フレーム2の後部には、刈取穀稈を脱穀する脱穀装置4と穀粒を貯留するグレンタンク5とが、左右方向に並べて配置されている。機体フレーム2の前部であってグレンタンク5の前方には、運転者が搭乗するキャビン6が備えられている。
【0022】
脱穀装置4の左側部には、刈取穀稈を脱穀装置4に搬送するフィードチェーン7が備えられている。脱穀装置4の後方には、脱穀装置4からの排藁を切断する排藁カッタ8が備えられている。グレンタンク5には、グレンタンク5内の穀粒を排出するアンローダ9が備えられている。
【0023】
〔脱穀装置〕
図2及び
図3に示すように、脱穀装置4の上部には、穀稈脱穀用の扱胴11が設けられている。扱胴11は、前後向きの回転軸心Y1周りで回転可能に構成されている。扱胴11は、回転軸心Y1周りで一体回転可能な前後向きの扱胴軸11aを有している。扱胴軸11aの前端部には、回転動力が入力される入力プーリ25が設けられている。入力プーリ25には、エンジンからの動力がベルト26を介して伝達される。扱胴11は、開閉可能な扱胴カバー22によって上方から覆われている。
【0024】
扱胴11の下方には、脱穀処理で得られた処理物(脱穀処理物)を漏下させる受網が設けられている。扱胴11の後方には、塵埃を外部に排出する排塵ファン12、排藁を排藁カッタ8に搬送する排藁チェーン13が設けられている。
【0025】
脱穀装置4の下部には、揺動選別用の揺動選別装置14、風選別用の唐箕15が設けられている。唐箕15の後方には、前方から順に、一番回収部16及び二番回収部17が設けられている。
【0026】
一番回収部16には、一番物の穀粒を右方向に搬送する一番横スクリュ18が設けられている。一番横スクリュ18には、一番物の穀粒をグレンタンク5に揚穀搬送する一番揚穀装置19が連動連結されている。
【0027】
二番回収部17には、二番物の穀粒を右方向に搬送する二番横スクリュ20が設けられている。二番横スクリュ20には、二番物の穀粒を揺動選別装置14に還元搬送する二番還元装置21が連動連結されている。
【0028】
このような構成により、刈取穀稈が扱胴11によって脱穀処理され、脱穀処理物が前記受網から漏下する。そして、前記受網から漏下した脱穀処理物に対して、揺動選別装置14による揺動選別、唐箕15による風選別が施される。これにより、比重が大きい単粒化穀粒は、前方の一番回収部16に一番物として回収され、一番横スクリュ18及び一番揚穀装置19によってグレンタンク5に搬送される。一方、比重が小さい枝梗付き穀粒は、後方の二番回収部17に二番物として回収され、二番横スクリュ20及び二番還元装置21によって揺動選別装置14に搬送される。
【0029】
扱胴カバー22は、前後向きの揺動軸心Y2周りで揺動可能に構成されている。扱胴カバー22は、揺動軸心Y2周りで上方に揺動するようにダンパ28によって付勢されている。脱穀装置4の前壁4A及び後壁の夫々には、ロックハンドル23が備えられている。
【0030】
ロックハンドル23は、扱胴カバー22の揺動を阻止する状態と許容する状態とに切替可能に構成されている。ロックハンドル23は、前後向きの揺動軸心Y3周りで揺動可能に構成されている。ロックハンドル23の先端部には、ロックピン24に係合可能な係合部23aが形成されている。
【0031】
ロックハンドル23の係合部23aをロックピン24に係合させることにより、扱胴カバー22の揺動が阻止される。これにより、扱胴カバー22を閉じた状態で固定することができる。また、ロックハンドル23の係合部23aとロックピン24との係合を解除することにより、扱胴カバー22の揺動が許容される。これにより、扱胴カバー22を揺動軸心Y2周りで上方に揺動させて、扱胴カバー22が開くことができる。
【0032】
〔レール機構〕
図2から
図5に示すように、レール機構30は、フィードチェーン7と上下に対向する位置でフィードチェーン7と刈取穀稈を挟持する。レール機構30は、後部側が左右向きの揺動軸心X1周りで揺動可能に脱穀装置4の左側部に支持されている。レール機構30は、スプリング40(本発明に係る「レール付勢部材」に相当)によって左右向きの揺動軸心X1周りで上方に揺動するように付勢されている。レール機構30は、位置保持機構50によってフィードチェーン7と上下に対向する位置に位置保持される。レール機構30は、レール31と、レールフレーム32と、を有している。
【0033】
レールフレーム32の後端部は、ボス部32aを介して左右向きの揺動軸27に揺動可能に支持されている。レールフレーム32は、複数のスプリング33を介して、レール31を弾性的に支持している。レールフレーム32には、複数のパイプ34がレールフレーム32の長手方向に所定の間隔をあけて上下向きに取り付けられている。レール31には、パイプ34に挿入される複数のロッド35が、レール31の長手方向に所定の間隔をあけて上下向きに取り付けられている。ロッド35には、スプリング33が外嵌されている。パイプ34には、スプリング33の上端部を受ける上スプリング受け37が固定されている。ロッド35には、スプリング33の下端部を受ける下スプリング受け38が固定されている。
【0034】
スプリング40は、脱穀装置4とレール機構30とに亘って設けられている。スプリング40のうち脱穀装置4側の端部は、ステー41にロッド42を介して位置調節可能に連結されている。ステー41は、脱穀装置4側の上部フレーム4Bに固定されている。スプリング40のうちレール機構30側の端部は、レールフレーム32の連結ピン32bに連結されている。
【0035】
〔位置保持機構〕
図6から
図8に示すように、位置保持機構50は、脱穀装置4側に設けられるレール係合部51と、レール機構30側に設けられる被係合部52と、を有している。位置保持機構50は、レール係合部51が被係合部52と係合されることにより、レール機構30をフィードチェーン7と上下に対向する位置に位置保持する。
【0036】
〔レール係合部〕
レール係合部51は、ロックレバー53(本発明に係る「アーム部材」に相当)に備えられている。レール係合部51は、被係合部52側に開口する断面略C字形状の部材によって構成されている。レール係合部51には、略鉛直な鉛直部51aと、略水平な上下一対の上水平部51b及び下水平部51cと、が備えられている。
【0037】
〔ロックレバー〕
ロックレバー53には、上下方向に延びるレバー軸部54が備えられている。ロックレバー53は、レバー軸部54を介して支持プレート56のボス部56aに上下向きの揺動軸心Z1(本発明に係る「アーム軸心」に相当)周りで揺動可能に支持されていると共に、電動式のモータM(本発明に係る「アクチュエータ」に相当)によって揺動駆動されるように構成されている。レバー軸部54の上端部には、ハンドル部55が固定され、レバー軸部54の下端部には、レール係合部51が固定されている。レバー軸部54には、その外周方向に突出するように、アーム部53aが固定されている。
【0038】
モータMは、脱穀装置4の前壁4Aに取り付けられている。モータMは、リンク機構66を介してロックレバー53を揺動駆動するように構成されている。
【0039】
〔リンク機構〕
リンク機構66には、第一ケーブルワイヤ67と、第二ケーブルワイヤ68と、揺動アーム69と、が備えられている。第一ケーブルワイヤ67のうちロックレバー53側の端部は、揺動アーム69の一端部に連結されている。第二ケーブルワイヤ68のうちモータM側の端部は、揺動アーム69の他端部に連結されている。第二ケーブルワイヤ68のうちロックレバー53側の端部は、ロックレバー53側のアーム部53aに連結されている。揺動アーム69は、ステー48に左右向きの揺動軸心X2周りで揺動可能に支持されている。ステー48は、脱穀装置4側の上部フレーム4Bに固定されている。
【0040】
〔支持プレート〕
支持プレート56は、ステー49に上下位置調節可能にボルト固定されている。ステー49は、脱穀装置4側の上部フレーム4Bに固定されている。支持プレート56には、上下方向に延びる丸棒56bが固定されている。丸棒56bとレール係合部51側のピン51dとに亘って、バネ62が介設されている。
【0041】
〔被係合部〕
被係合部52には、上水平部51b及び下水平部51cと係合可能な回転ローラ52Aが備えられている。回転ローラ52Aの直径は、上水平部51bと下水平部51cとの間隔よりも若干小さく、多少のガタを許容するように設定されている。回転ローラ52Aは、左右向きの回転軸心X3(本発明に係る「ローラ軸心」に相当)周りで回転可能に構成されている。回転ローラ52Aは、回転軸52aに回転可能に外嵌されて、ボルト61等によって抜け止めされていると共に、回転軸52aを介して支持部材29に支持されている。回転ローラ52Aは、金属製の部材で構成されている。なお、回転ローラ52Aは、樹脂製の部材で構成されていてもよい。
【0042】
〔支持部材〕
支持部材29は、レールフレーム32の前端部から上方に延びるように設けられている。支持部材29には、左右一対の支持脚29aが備えられている。左右一対の支持脚29aは、レールフレーム32を左右両側から挟み込む状態で、レールフレーム32に固定されている。左右一対の支持脚29aの上端部は、連結部29bを介して連結されている。左側の支持脚29aのうち機体横内側の側面(右側面)に、回転軸52aが設けられている。
【0043】
〔揺動軸心の位置〕
揺動軸心Z1は、回転ローラ52Aに対して機体横内側(右側)の近傍かつ回転軸心X3よりも後側の近傍に設定されている。具体的には、揺動軸心Z1は、脱穀装置4の左側部(支持プレート56)とレールフレーム32との間に位置し、かつ、上水平部51bと下水平部51cの前後範囲内のうち後側寄りに位置するように設定されている。
【0044】
〔水平部と回転ローラとの係合及びその解除に係る動作態様〕
図8に示すように、レール係合部51が回転ローラ52Aと係合されることにより、レール機構30がフィードチェーン7と上下に対向する位置に位置保持される。レール係合部51が回転ローラ52Aと係合されている状態では、バネ62が係合(ロック)保持力として作用している。つまり、バネ62がロックレバー53を平面視において揺動軸心Z1周りで反時計回りに揺動させる揺動力として作用している。レール係合部51がバネ62によって回転ローラ52Aと係合する側に付勢されているので、レール係合部51が回転ローラ52Aから外れない。
【0045】
ここで、レール機構30が位置保持機構50によって位置保持された状態では、レール係合部51の上水平部51bに対して、回転ローラ52Aが下方から係合し、かつ、レール係合部51の下水平部51cに対して、回転ローラ52Aが上方から係合している。レール係合部51の上水平部51bに対して、回転ローラ52Aが下方から係合することにより、レール機構30の上方側への揺動(レール機構30の上方側への退避)を阻止することができる。レール係合部51の下水平部51cに対して、回転ローラ52Aが上方から係合することにより、レール機構30の下方側への揺動(例えば、走行時の機体の振動による下方へのガタ等)を阻止することができる。
【0046】
そして、モータMがスイッチ(図示省略)によって駆動操作されると、モータMの駆動力がリンク機構66を介してロックレバー53に伝達される。これにより、
図9及び
図10に示すように、ロックレバー53が平面視において揺動軸心Z1周りで時計周りに揺動されると、レール係合部51が回転ローラ52Aとの係合が解除される側に移動されて、上水平部51b及び下水平部51cと回転ローラ52Aとの係合が解除される。
【0047】
ここで、
図9に示すように、上水平部51b及び下水平部51cと回転ローラ52Aとが係合解除し始めたときは、上水平部51b及び下水平部51cは、回転ローラ52Aに対して前側に移動する。つまり、係合解除し始めにおいて、上水平部51bと下水平部51cの移動方向と回転ローラ52Aの回転方向とが略一致することになり、回転ローラ52Aの回転によって、上水平部51bや下水平部51cと回転ローラ52Aとの係合がスムーズに解除される。その後、上水平部51b及び下水平部51cが徐々に機体横内側(右側)に移動して、
図10に示す状態となる。
【0048】
また、ロックレバー53をバネ62の死点を越えて揺動させることにより、バネ62が係合(ロック)解除力として作用する。つまり、バネ62がロックレバー53を平面視において揺動軸心Z1周りで時計回りに揺動させる揺動力として作用する。こうして、レール係合部51と回転ローラ52Aとの係合が解除されると、レール機構30がスプリング40の付勢力によって揺動軸心Z1周りで上方に揺動し、フィードチェーン7と上下に対向する位置から上方側に退避する。
【0049】
なお、レール係合部51と回転ローラ52Aとの係合を解除するためのロックレバー53の揺動操作は、手動で行ってもよい。ただし、レール係合部51と回転ローラ52Aとを係合させるためのロックレバー53の揺動操作は、手動で行う必要がある。
【0050】
〔レールカバー〕
図1及び
図2に示すように、レール機構30の左側部は、レールカバー97によって覆われている。レールカバー97は、前カバー98と後カバー99とが別体に構成されている。前カバー98は、レールフレーム32に支持されている。後カバー99は、脱穀装置4の左側部に支持されている。
【0051】
レールカバー97を前カバー98と後カバー99とに分割する分割線Dは、揺動軸心X1よりも後方に設定されている。分割線Dは、前上がりの傾斜状に形成されている。分割線Dは、前カバー98がレール機構30と一体に上方に揺動しても、前カバー98の後端が後カバー99の前端に当たらないように形成されている(
図4参照)。
【0052】
ここで、後カバー99の下側で脱穀装置4の左側部を覆うカバー100の前端は、前上がりの傾斜状に形成されている。そして、分割線Dは、カバー100前端の傾斜線Sと略同じ線上に配置され、かつ、傾斜線Sと傾斜角度が略同じに設定されている。これにより、前カバー98の後端及び後カバー99の前端とカバー100の前端との連続性を確保して、デザイン性を向上させている。
【0053】
〔第二実施形態〕
次に、第二実施形態について、
図11から
図18を用いて説明する。なお、第一実施形態と同一符号の部材は、第一実施形態と略同一構造であるため、詳細な説明を省略する。
【0054】
〔レール機構〕
図11及び
図12に示すように、レール機構30は、ダンパ140(本発明に係る「レール付勢部材」に相当)によって左右向きの揺動軸心X1周りで上方に揺動するように付勢されている。レール機構30の揺動は、ガイド機構90によってガイドされる。
【0055】
ダンパ140は、ガススプリング式のショックアブソーバで構成されている。ダンパ140は、シリンダ141と、シリンダ141に対して出退可能なロッド142と、を有している。ダンパ140のうちロッド142側の端部は、左右向きの連結ピン147を介して脱穀装置4の左側部に揺動可能に連結されている。ダンパ140のうちシリンダ141側の端部は、左右向きの連結ピン146を介して支持部145に揺動可能に連結されている。支持部145は、前後フレーム144の後端部に設けられている。前後フレーム144は、一対の縦フレーム143の上端部同士に亘って設けられている。一対の縦フレーム143は、レールフレーム32の上面に前後方向に所定の間隔をあけて立設されている。
【0056】
〔位置保持機構〕
図13から
図15に示すように、位置保持機構150は、脱穀装置4側に設けられるレール係合部151と、レール機構30側に設けられる被係合部152と、を有している。位置保持機構150は、レール係合部151が被係合部152と係合されることにより、レール機構30をフィードチェーン7と上下に対向する位置に位置保持する。
【0057】
〔レール係合部〕
レール係合部151は、ロックレバー153(本発明に係る「アーム部材」に相当)に備えられている。レール係合部151は、被係合部152側に開口する断面略C字形状の部材によって構成されている。レール係合部151には、略鉛直な鉛直部151aと、略水平な上下一対の上水平部151b及び下水平部151cと、が備えられている。
【0058】
ロックレバー153は、レバー本体部154と、ハンドル部155と、を有している。ハンドル部155は、レバー本体部154に固定的に連結されている。ハンドル部155は、機体外方側(左方側)に突出しないように、レバー本体部154に対して機体内方側(右方側)に折れ曲がる姿勢で連結されている。レバー本体部154の下面側には、第一プレート57及び第二プレート58を介して、レール係合部151が固定されている。レバー本体部154は、脱穀装置4側の支持プレート156に、上下向きの揺動軸心Z1周りで揺動可能に支持されている。ロックレバー153は、バネ162によって揺動軸心Z1周りで揺動するように付勢されている。バネ162の一端部は、レバー本体部154に連結されている。バネ162の他端部は、支持プレート156に連結されている。
【0059】
支持プレート156には、レバー本体部154を揺動可能に支持するためのボス部156aが形成されている。支持プレート156のボス部156aにレバー本体部154の揺動軸154aが挿通された状態で、レバー本体部154が支持プレート156にナット59によって抜け止め固定されている。支持プレート156には、上下方向に長い長孔156bが形成されている。支持プレート156は、長孔156bに挿通されるボルト60によって脱穀装置4の左側部に固定されている。支持プレート156の左側面には、受具156cが設けられている。受具156cは、レールフレーム32側の軸部32bを受けている。
【0060】
〔被係合部〕
被係合部152には、上水平部151b及び下水平部151cと係合可能な回転ローラ152Aが備えられている。回転ローラ152Aは、レールフレーム32の前端部に設けられている。回転ローラ152Aは、前後向きの回転軸152aに回転可能に外嵌されている。回転軸152aに回転ローラ152Aが回転可能に外嵌された状態で、回転ローラ152Aが回転軸152aにナット61によって抜け止め固定されている。回転ローラ152Aは、レール係合部151のうち上水平部151bに対して下方から係合可能であり、かつ、レール係合部151のうち下水平部151cに対して上方から係合可能に構成されている。回転ローラ152Aは、金属製の部材で構成されている。なお、回転ローラ152Aは、樹脂製の部材で構成されていてもよい。
【0061】
〔位置保持作用〕
レール係合部151が回転ローラ152Aと係合されることにより、レール機構30がフィードチェーン7と上下に対向する位置に位置保持される。レール係合部151が回転ローラ152Aと係合されている状態では、バネ162が係合(ロック)保持力として作用している。つまり、バネ162がロックレバー153を平面視において揺動軸心Z1周りで反時計回りに揺動させる揺動力として作用している。レール係合部151がバネ162によって回転ローラ152Aと係合する側に付勢されているので、レール係合部151が回転ローラ152Aから外れない。
【0062】
ここで、レール機構30が位置保持機構150によって位置保持された状態では、レール係合部151の上水平部151bに対して、回転ローラ152Aが下方から係合し、かつ、レール係合部151の下水平部151cに対して、回転ローラ152Aが上方から係合している。レール係合部151の上水平部151bに対して、回転ローラ152Aが下方から係合することにより、レール機構30の上方側への揺動(レール機構30の上方側への退避)を阻止することができる。レール係合部151の下水平部151cに対して、回転ローラ152Aが上方から係合することにより、レール機構30の下方側への揺動(例えば、走行時の機体の振動による下方へのガタ等)を阻止することができる。
【0063】
そして、ロックレバー153を平面視において揺動軸心Z1周りで時計回りに揺動させることにより、レール係合部151が回転ローラ152Aとの係合が解除される側に移動する。このとき、ロックレバー153をバネ162の死点を越えて揺動させることにより、バネ162が係合(ロック)解除力として作用する。つまり、バネ162がロックレバー153を平面視において揺動軸心Z1周りで時計回りに揺動させる揺動力として作用する。こうして、レール係合部151と回転ローラ152Aとの係合が解除されると、レール機構30がダンパ140の付勢力によって揺動軸心X1周りで上方に揺動し、フィードチェーン7と上下に対向する位置から上方側に退避する。
【0064】
なお、レール係合部151と回転ローラ152Aとの係合を解除するためのロックレバー153の揺動操作は、手動で行ってもよいし、詳しくは後述するリンク機構70及び切替機構80で行ってもよい。ただし、レール係合部151と回転ローラ152Aとを係合させるためのロックレバー153の揺動操作は、手動で行う必要がある。なお、入力プーリ25、リンク機構70及び切替機構80を合わせたものは、本発明に係る「アクチュエータ」に相当する。
【0065】
〔リンク機構〕
図15から
図17に示すように、リンク機構70は、入力プーリ25とレール係合部151とを連係可能に構成されている。リンク機構70は、切替機構80によって、入力プーリ25とレール係合部151とを連係させる連係状態と入力プーリ25とレール係合部151とを連係させない非連係状態とに切り替えられる。リンク機構70は、入力プーリ25とレール係合部151とを連係させることにより、入力プーリ25の回転動力を回転ローラ152Aとの係合が解除される側への移動力としてレール係合部151に伝達する。入力プーリ25には、リンク機構70と係合可能なリンク係合部25aが設けられている。リンク機構70は、第一リンクアーム71と、第二リンクアーム72と、を有している。
【0066】
〔第一リンクアーム〕
第一リンクアーム71の一端部は、脱穀装置4の前壁4Aに前後向きの揺動軸心Y4周りで揺動可能に支持されている。第一リンクアーム71の他端部には、第二リンクアーム72の一端部が前後向きの連結軸73を介して揺動可能に連結されている。第一リンクアーム71には、リンク機構70を非連係状態に切り替わるように付勢するバネ74が連結されている。つまり、第一リンクアーム71は、バネ74によって正面視において揺動軸心Y4周りで反時計回りに揺動するように付勢されている。連結軸73には、ワイヤー75の一端部が連結されている。ワイヤー75の他端部は、ロックレバー153(レバー本体部154)に連結されている。
【0067】
〔第二リンクアーム〕
第二リンクアーム72の他端部には、第一回転ローラ76及び第二回転ローラ77が設けられている。第二リンクアーム72の他端部には、切替機構80(回転ローラ83)と係合可能な係合部72aが形成されている。第一回転ローラ76は、リンク係合部25aと係合可能に構成されている。第一回転ローラ76は、前後向きの回転軸心Y5周りで回転可能に構成されている。第一回転ローラ76は、第二リンクアーム72の他端部のうち前面側に設けられている。
【0068】
第二回転ローラ77は、脱穀装置4の前壁4Aのガイド4aと係合可能に構成されている。第二回転ローラ77は、前後向きの回転軸心Y6周りで回転可能に構成されている。第二回転ローラ77は、第二リンクアーム72の他端部のうち後面側に設けられている。
【0069】
〔リンク係合部〕
リンク係合部25aは、第二リンクアーム72の第一回転ローラ76と係合可能に構成されている。リンク係合部25aは、入力プーリ25の後面で後方側に突出するように設けられている。リンク係合部25aは、正面視において略矩形状に形成されている。具体的には、リンク係合部25aは、正面視において入力プーリ25の径方向外周側に向けて末広がり形状に形成されている。また、リンク係合部25aの角部分は、面取り加工されている。リンク係合部25aは、入力プーリ25の外周縁よりも径方向外方側に突出していない。つまり、リンク係合部25aの外周縁と入力プーリ25の外周縁とが、略一致している。
【0070】
〔切替機構〕
切替機構80は、第二リンクアーム72を第一リンクアーム71に対して正面視において連結軸73周りで時計回りに揺動するように操作する。切替機構80は、モータ81と、モータアーム82と、回転ローラ83と、を有している。
【0071】
モータ81は、モータスイッチによって駆動操作される。モータ81は、前後向きのモータ軸81aを有している。モータ軸81aには、モータアーム82が一体回転可能に連結されている。モータアーム82は、モータ81によって揺動される。モータアーム82の先端部には、第二リンクアーム72と係合可能な回転ローラ83が設けられている。
【0072】
回転ローラ83は、前後向きの回転軸心Y7周りで回転可能に構成されている。回転ローラ83は、ブラケット84を介して支持軸85の先端部に固定されている。モータアーム82の先端部には、支持軸85をその軸方向に移動可能に支持する一対の支持部86が設けられている。支持軸85は、一対の支持部86にバネ87を介して弾性的に支持されている。
【0073】
〔ガイド機構〕
図18に示すように、ガイド機構90は、レール機構30の揺動をガイドする。ガイド機構90は、ローラ式で構成されている。ガイド機構90は、一対のガイドローラ91を有している。脱穀装置4の左側部には、ガイドローラ91が転動可能なプレート92が取り付けられている。ガイドローラ91は、レールフレーム32の長手方向向きのローラ軸91aに回転可能に支持されている。ローラ軸91aは、ステー93に支持されている。ステー93は、レールフレーム32を上下に挟む一対のブラケット94に、ボルト95によって固定されている。レール機構30が揺動する際、ガイドローラ91がプレート92上を転動することにより、レール機構30がガイド機構90によって案内されるため、レール機構30の揺動姿勢が安定する。つまり、レール機構30が揺動する際に、レール機構30が機体内側に傾き難い。したがって、レールフレーム32のボス部32aでガタが生じて、レール機構30の前端部における左右方向のブレが大きくなると、レール機構30の前端部が脱穀装置4やロックレバー153と干渉する恐れがあるが、レール機構30が機体内側に傾き難いので、このようなことがない。
【0074】
〔リンク機構及び切替機構の作動態様〕
図17に示すように、モータ81が前記モータスイッチによって駆動操作されると、モータアーム82が正面視においてモータ軸81a周りで時計回りに揺動し、回転ローラ83が第二リンクアーム72を側方から押し作用する。そうすると、第二リンクアーム72が正面視において連結軸73周りで時計回りに揺動し、第一回転ローラ76が入力プーリ25のうちリンク係合部25aによる回転軌跡L内に進入する。そして、第一回転ローラ76が回転軌跡L内に進入した状態で、入力プーリ25が回転(正面視において回転軸心Y1周りで時計回りに回転)すると、リンク係合部25aが第一回転ローラ76に係合する。リンク係合部25aが第一回転ローラ76に係合している状態において、第一回転ローラ76の回転軸心Y5は、回転軌跡L内に位置している。こうして、リンク機構70が連係状態に切り替わる。
【0075】
そして、リンク係合部25aが第一回転ローラ76に係合した状態で、入力プーリ25が回転すると、第一リンクアーム71がバネ74の付勢力に抗して正面視において揺動軸心Y4周りで時計回りに揺動する。そうすると、ロックレバー153がワイヤー75を介して第一リンクアーム71に引っ張られる形態で、ロックレバー153が平面視において揺動軸心Z1周りで時計回りに揺動する。そうすると、レール係合部151と回転ローラ152Aとの係合が解除される。これにより、レール機構30がダンパ140の付勢力によって揺動軸心X1周りで上方に揺動し、フィードチェーン7と上下に対向する位置から上方側に退避する。
【0076】
その後、リンク係合部25aが第一回転ローラ76に係合した状態で、入力プーリ25が所定の角度回転すると、リンク係合部25aが第一回転ローラ76から外れる。詳述すると、リンク係合部25aが第一回転ローラ76に係合した状態で、入力プーリ25が所定の角度回転すると、第二回転ローラ77が脱穀装置4の前壁4Aのガイド4aに係合する。この状態で、入力プーリ25が回転すると、第二リンクアーム72が第一リンクアーム71に対して相対揺動しつつ、第二回転ローラ77がガイド4aによって脱穀装置4の前壁4Aの立上り部4bまでガイドされて、第一回転ローラ76がリンク係合部25aから外れる。そして、第一リンクアーム71及び第二リンクアーム72は、バネ74の付勢力によって元の位置(非連係状態の位置)まで揺動する。こうして、リンク機構70が非連係状態に切り替わる。係合部72aが回転ローラ83と係合することにより、リンク機構70が非連係状態に保持される。なお、切替機構80(モータアーム82)は、リンク機構70の非連係状態への切替えを阻害しないように、元の位置まで揺動するように構成されている。
【0077】
〔別実施形態〕
(1)上記第一実施形態では、本発明に係る「アクチュエータ」が電動式のモータMによって構成されているが、油圧式のモータによって構成されていてもよいし、あるいは、上記第二実施形態のような、入力プーリ25、リンク機構70及び切替機構80によって構成されていてもよい。
【0078】
(2)上記第一及び第二実施形態では、被係合部52(152)に、回転ローラ52A(152A)が備えられ、レール係合部51(151)が被係合部52(152)側に開口する断面略C字形状の部材で構成されているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、
図19や
図20に示すように、レール係合部251(351)に、回転ローラ251A(351A)が備えられ、被係合部252(352)が回転ローラ251A(351A)側に開口する断面略C字形状の部材で構成されていてもよい。
【0079】
(3)上記第一及び第二実施形態において、レール係合部51(151)は、上水平部51b(151b)と下水平部51c(151c)とを有しているが、下水平部51c(151c)を有していなくてもよい。
【0080】
(4)上記第二実施形態において、リンク機構70は、第一リンクアーム71と、第二リンクアーム72と、を有し、第二リンクアーム72が切替機構80によって第一リンクアーム71に対して揺動するように操作されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、ワイヤー75を巻取り可能な巻取りプーリを、前後向きの回転軸心周りに回転可能に設けて、入力プーリ25と巻取りプーリとの間に、ベルトテンション式クラッチを構成してもよい。この場合、巻取りプーリと入力プーリ25とに亘る動力伝達用のベルトが、テンション機構によって動力を伝達する伝達状態と動力を遮断する遮断状態とに切り替えられる。なお、ベルト、巻取りプーリ及びワイヤー75が「リンク機構」に相当し、テンション機構が「切替機構」に相当する。このような構成により、ベルトがテンション機構によって伝達状態に切り替えられると、入力プーリ25の動力がベルトを介して巻取りプーリに伝達される。そして、ワイヤー75が巻取りプーリによって巻き取られることにより、レール係合部151が回転ローラ152Aから外れる。
【0081】
(5)上記第二実施形態において、リンク係合部25aは、正面視において略矩形状に形成されているが、
図21に示すように、リンク係合部125aの外周縁は、正面視において略円弧形状に形成されていてもよい。この場合、リンク係合部125aの外周縁が滑らかな形状であるので、第一回転ローラ76を設けることなく、第二リンクアーム72の他端部にリンク係合部125aと係合可能な部分を構成することもできる。
【0082】
(6)上記第二実施形態において、リンク係合部25aは、入力プーリ25の後面で後方側に突出するように設けられているが、
図22に示すように、リンク係合部225aは、入力プーリ25の後面側の部分が入力プーリ25の中心側に切り欠かれて形成されていてもよい。
【0083】
(7)上記第二実施形態において、リンク係合部25aは、入力プーリ25の外周縁よりも径方向外方側に突出していない(リンク係合部25aの外周縁と入力プーリ25の外周縁とが、略一致している)が、リンク係合部25aは、入力プーリ25の外周縁よりも径方向外方側に突出していてもよいし、入力プーリ25の外周縁よりも径方向内方側に引退していてもよい。
【0084】
(8)上記第二実施形態において、ロックレバー153は、ハンドル部155がレバー本体部154に固定的に連結されて構成されているが、
図23に示すように、ロックレバー253(本発明に係る「アーム部材」に相当)は、ハンドル部255がレバー本体部254に対して折畳可能に構成されていてもよい。
【0085】
図23に示すように、レバー本体部254の前端部には、ハンドル部255を支持する一対の支持部254aが設けられている。ハンドル部255は、一対の支持部254aに水平方向向きの連結軸63を介して揺動可能に支持されている。ハンドル部255を連結軸63周りで揺動させることにより、ハンドル部255を略水平な使用姿勢から略垂直な非使用姿勢に折り畳むことができる。ハンドル部255は、使用姿勢において、連結軸63周りでレバー本体部254及びピン254bに当接している。ハンドル部255は、使用姿勢において、バネ65によって上方から押さえられて姿勢保持されている。ハンドル部255は、連結軸63周りでバネ65の付勢力に抗して折り畳まれて、収納姿勢へと切り替わる。ハンドル部255は、収納姿勢において、バネ65の付勢力によって位置保持される。
【0086】
また、
図24に示すように、ロックレバー353(本発明に係る「アーム部材」に相当)は、ハンドル部355をレバー本体部354に対して着脱可能に構成されていてもよい。
図24に示すように、レバー本体部354は、バネ362によって揺動軸心Z1周りで揺動するように付勢されている。レバー本体部354の下面には、ハンドル部355を差込可能な差込部354Aが設けられている。差込部354Aは、レール機構30が位置保持機構150によって位置保持された状態(レール係合部151が回転ローラ152Aと係合している状態)で、その軸心が前後方向となる姿勢でレバー本体部354の下面に取り付けられている。
【0087】
このような構成により、ハンドル部355を差込部354Aに対して前方から差し込むことで、ハンドル部355をレバー本体部354に取り付けることができると共に、ハンドル部355を差込部354Aから前方に引き抜くことにより、ハンドル部355をレバー本体部354から取り外すことができる。したがって、ハンドル部355を使用しない場合に、ハンドル部355をレバー本体部354から取り外すことにより、ハンドル部355が邪魔にならない。
【0088】
(9)上記第二実施形態において、ガイド機構90は、ローラ式で構成されているが、
図25に示すように、ガイド機構190は、揺動式で構成されていてもよい。
【0089】
図25に示すように、レールフレーム32と脱穀装置4の左側部とが、ガイドリンク96によって連係されている。ガイドリンク96の一端部は、脱穀装置4の左側部側のブラケット96aに前後向きの揺動軸心Y8周りで揺動可能に連結されている。ガイドリンク96の他端部は、レールフレーム32側のブラケット96bに前後向きの揺動軸心Y9周りで揺動可能に連結されている。これにより、レール機構30が揺動する際、レール機構30の揺動軌跡がガイドリンク96によって一定に規定され、レール機構30の揺動姿勢が安定する。つまり、レール機構30が揺動する際に、レール機構30が機体内側に傾き難い。
【0090】
また、ガイド機構290は、
図26及び
図27に示すように構成されていてもよい。
図26及び
図27に示すように、ガイド機構290は、ピン291と、ガイド292と、を有している。
【0091】
ピン291は、レールフレーム32に対して右下方(機体内方側の下方)に位置する状態で、ブラケット293を介してレールフレーム32に支持されている。ピン291は、レールフレーム32の長手方向に沿う姿勢でブラケット293に取り付けられている。
【0092】
ガイド292は、断面形状が略U字形状の棒状部材で構成されている。ガイド292は、前方に開口する状態で上下方向に延びる姿勢(やや前方に傾倒する姿勢)で、脱穀装置4の左側部に取り付けられている。ガイド292には、ピン291の先端部が入り込むように機体左右方向に間隔をあけた状態で、左右一対の壁部292aが形成されている。ガイド292の上端部には、上プレート294が固定されている。上プレート294は、ブラケット295にボルト固定されている。ブラケット295は、前後向きの上部フレーム4Bに固定されている。ガイド292の下端部には、下プレート296が固定されている。下プレート296は、上唇板4Cにボルト固定されている。
【0093】
このような構成により、レール機構30の揺動範囲の全域において、ピン291の先端部が左右一対の壁部292aの間に入り込んだ状態で、レール機構30が上下方向に揺動する。したがって、レール機構30が揺動する際に、ピン291の先端部と左右一対の壁部292aとが接触してレール機構30が機体左右方向に傾き難い。
【0094】
ここで、レールフレーム32の下面には、ブラケット297を介してピン298が右方(機体内方)に突出する状態で設けられている。ピン298がブラケット295に対して下方から当接することにより、レール機構30の上方側への揺動が制限される。つまり、ピン298とブラケット295とで、レール機構30の上方への揺動を制限する揺動制限機構が構成されている。
【0095】
なお、本別実施形態では、ピン291がレール機構30に設けられ、ガイド292が脱穀装置4に設けられているが、ピン291が脱穀装置4に設けられ、ガイド292がレール機構30に設けられていてもよい。
【0096】
(10)上記第一及び第二実施形態において、レールカバー97は、前カバー98と後カバー99とが別体に構成されているが、前カバー98と後カバー99とが一体に構成されていてもよい。