特許第6509071号(P6509071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509071
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】エンジニアリングツール
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/042 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
   G05B19/042
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-159468(P2015-159468)
(22)【出願日】2015年8月12日
(65)【公開番号】特開2017-37550(P2017-37550A)
(43)【公開日】2017年2月16日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】小柳 貴義
【審査官】 影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−184842(JP,A)
【文献】 特開平7−175502(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/107698(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンな通信プロトコルにより制御デバイスとの間で通信を行うエンジニアリングツールにおいて、
前記制御デバイスの負荷状況を通信により読取る負荷状況読取り部と、
前記負荷状況読取り部により読取られた前記制御デバイスの負荷状況から、負荷が既定レベル以上であるかを判定するレベル判定部と、
前記レベル判定部により前記制御デバイスの負荷が既定レベル以上であると判定された場合に、当該制御デバイスに対する通信プロトコルを前記オープンな通信プロトコルからクローズドな通信プロトコルに切替える通信切替え部と
を備えたことを特徴とするエンジニアリングツール。
【請求項2】
前記通信切替え部により前記制御デバイスに対する通信プロトコルが前記クローズドな通信プロトコルに切替えられた後、前記負荷状況読取り部により読取られた当該制御デバイスの負荷状況から、負荷が前記既定レベル未満である状態が一定時間維持されているかを判定する安定動作状態判定部を備え、
前記通信切替え部は、前記安定動作状態判定部により前記制御デバイスの負荷が前記既定レベル未満である状態が一定時間維持されていると判定された場合に、当該制御デバイスに対する通信プロトコルを前記オープンな通信プロトコルに戻す
ことを特徴とする請求項1記載のエンジニアリングツール。
【請求項3】
前記負荷状況読取り部は、前記制御デバイスのCPU使用状況から前記負荷状況を読取る
ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のエンジニアリングツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、制御デバイスに対する通信プロトコルを自動で切替えるエンジニアリングツールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ビル等の建物内の複数のフィールド制御機器の監視制御を行う監視システムが知られている(例えば特許文献1参照)。この監視システムでは、標準化されたオープンな通信プロトコルであるBACnet(Building Automation and Control networking protocol)(登録商標)を使用して、エンジニアリングツールと制御デバイスとの間で通信を行い、互いの機器の情報交換等を行っている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−153827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、標準化されたオープンな通信プロトコルは、多様なベンダーの機器との接続を目指すものであり、規格として冗長な仕様及び設計となっている。そのため、例えば、手順が多かったり、使用するデータ数が多くなったりすることがある。
一方、オープンな通信プロトコルに対して、各ベンダー独自のクローズドな通信プロトコルも存在する。このクローズドな通信プロトコルでは、自社都合で手順を最適化したり、データ数を削減したりすることが可能である。そのため、機器の処理内容及び手続きが削減され、処理負荷が低減される。また、このクローズドな通信プロトコルでは、標準規格の仕様以上の機能を実現するための手順及びデータも定義できるため、オープンな通信プロトコルよりも多機能及び高機能となる場合がある。
【0005】
ところで、従来の監視システムでは、予め定義された制御デバイス情報(プロパティ)を基にして、その制御デバイスに対する通信プロトコルを決定している。そのため、通信プロトコルを変更するためには、エンジニアリングツールで制御デバイス情報を変更し、通信が可能になったことを手動で確認する必要があった。よって、制御デバイスの負荷状況に応じて、最適な(低負荷な)通信プロトコルに変更することができないという課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、制御デバイスの負荷状況に応じて、当該制御デバイスに対する通信プロトコルを自動で切替えることができるエンジニアリングツールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエンジニアリングツールは、制御デバイスの負荷状況を通信により読取る負荷状況読取り部と、負荷状況読取り部により読取られた制御デバイスの負荷状況から、負荷が既定レベル以上であるかを判定するレベル判定部と、レベル判定部により制御デバイスの負荷が既定レベル以上であると判定された場合に、当該制御デバイスに対する通信プロトコルをオープンな通信プロトコルからクローズドな通信プロトコルに切替える通信切替え部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、制御デバイスの負荷状況に応じて、当該制御デバイスに対する通信プロトコルを自動で切替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る監視システムの構成例を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係る監視システムで使用される通信プロトコルの概念を示す図である。
図3】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリングツールと制御デバイスとの間の通信概念を示す図である。
図4】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリングツールの、通信プロトコルの自動切替え機能に関する構成例を示す図である。
図5】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリングツールによる通信プロトコルの自動切替え動作例を示すフローチャートである。
図6】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリングツールによる通信プロトコルの自動切替え動作例(通常時)を示す図である。
図7】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリングツールによる通信プロトコルの自動切替え動作例(高負荷検出時)を示す図である。
図8】この発明の実施の形態1に係るエンジニアリングツールによる通信プロトコルの自動切替え動作例(通信プロトコルの切替え時)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る監視システムの構成例を示す図である。
監視システムは、図1に示すように、エンジニアリングツール1、監視デバイス2及び複数の制御デバイス3を備えている。
【0011】
エンジニアリングツール1は、監視システムを構築するものである。このエンジニアリングツール1は、例えば、BACnet等の標準化されたオープンな通信プロトコル(通信規格Aとする)と、独自に使用されるプロプライエタリ(クローズド)な通信プロトコル(通信規格Bとする)とに対応し、これらの通信プロトコルにより制御デバイス3との間で通信を行う。通信規格Bは、例えば、同一ベンダー内の制御デバイス3間の通信で使用される通信規格である。このエンジニアリングツール1の、通信プロトコルの自動切替え機能に関する構成については後述する。
【0012】
監視デバイス2は、上述の通信プロトコルによって接続される複数の制御デバイス3の監視制御を行うものである。
制御デバイス3は、監視デバイス2による制御に従い、複数の下位のコントローラ(不図示)の監視制御を行うものである。なお、下位のコントローラには、フィールド制御機器(不図示)が接続されている。
【0013】
次に、監視システムで用いられる通信プロトコルの概念について、図2を参照しながら説明する。
BACnet等の通信規格Aは、標準化されたオープンな通信プロトコルであり、各ベンダーの制御デバイス3との相互接続性を実現するものである。監視システムにおいては、複数のベンダーの制御デバイス3が混在していることがあり、通常は、相互運用性を考慮して通信規格Aを使用して通信を行う。
【0014】
一方、通信規格Bは、各ベンダー独自のクローズドな通信プロトコルであり、フィールド制御機器のオブジェクト種別及び設定値等、通信規格Aよりも各種機能が拡張されている。
各ベンダーの制御デバイス3は、内部的に、通信規格Bがサポートするオブジェクト及びプロパティにより設計されていることがある。このような制御デバイス3が通信規格Aで通信を行う場合、通信仕様が冗長に定義されており、通信規格Bのオブジェクトに変換してから処理を行うことになる。そのため、直接、通信規格Bで処理するよりも制御デバイス3側の処理負荷(CPUの負荷)が高くなる。
【0015】
そこで、本発明の監視システムでは、エンジニアリングツール1が制御デバイス3の負荷状況を通信によって読取り、制御デバイス3の処理負荷が既定レベル以上(処理速度が既定速度以下)であることを検出した場合に、図3に示すように、より低負荷で処理可能な通信規格Bに切替えて通信処理を行う。
【0016】
次に、エンジニアリングツール1の、通信プロトコルの自動切替え機能に関する構成例について、図4を参照しながら説明する。
エンジニアリングツール1は、図4に示すように、負荷状況読取り部101、レベル判定部102、通信切替え部103及び安定動作状態判定部104を備えている。
【0017】
負荷状況読取り部101は、制御デバイス3の負荷状況を通信により読取るものである。この際、負荷状況読取り部101は、例えば制御デバイス3のCPU使用状況(PU値)を読取る。このPU値は制御デバイス3の処理負荷を示すプロパティであるため、このPU値から負荷状況を把握することが可能である。
【0018】
レベル判定部102は、負荷状況読取り部101により読取られた制御デバイス3の負荷状況から、負荷が既定レベル以上であるかを判定するものである。
【0019】
通信切替え部103は、レベル判定部102による判定結果に応じて、該当する制御デバイス3に対する通信プロトコルの切替えを行うものである。この際、通信切替え部103は、レベル判定部102により制御デバイス3の負荷が既定レベル以上であると判定された場合に、当該制御デバイス3に対する通信プロトコルを、通信規格Aから、より低負荷で処理可能な通信規格Bに切替える。その後、安定動作状態判定部104により上記制御デバイス3の負荷が上記既定レベル未満である状態が一定時間維持されていると判定された場合に、当該制御デバイス3に対する通信プロトコルを通信規格Aに戻す。
【0020】
安定動作状態判定部104は、通信切替え部103により制御デバイス3に対する通信プロトコルが通信規格Bに切替えられた後、負荷状況読取り部101により読取られた当該制御デバイス3の負荷状況から、負荷が上記既定レベル未満である状態が一定時間維持されているかを判定するものである。
【0021】
次に、上記のように構成されたエンジニアリングツール1による通信プロトコルの自動切替え動作例について説明する。なお以下では、4台の制御デバイス3(3−1〜3−4)を用いた場合を示す。
図6に示すように、エンジニアリングツール1は監視システムに接続して、各制御デバイス3との間で通信規格Aにより通信を行っている。
【0022】
そして、エンジニアリングツール1による通信プロトコルの自動切替え動作では、図5に示すように、まず、負荷状況読取り部101が、制御デバイス3の負荷状況を通信により読取る(ステップST1)。この際、負荷状況読取り部101は、例えば制御デバイス3のCPU使用状況(PU値)から負荷状況を読取る。
【0023】
次いで、レベル判定部102は、負荷状況読取り部101により読取られた制御デバイス3の負荷状況から、負荷が既定レベル以上であるかを判定する(ステップST2)。図7の例では、エンジニアリングツール1が、制御デバイス3のCPU使用状況から、制御デバイス3−1の処理負荷が高まっていること(処理速度が既定レベル以下となっていること)を検出した場合を示している。ここで、処理負荷が高くなり過ぎると、制御動作を規定の時間内に処理できないオーバーランが生じ、また、制御デバイス3全体の動作が不安定になるといった問題が生じ、監視システムとして正常に監視動作が行えなくなる。
【0024】
そこで、通信切替え部103は、レベル判定部102により制御デバイス3の負荷が既定レベル以上であると判定された場合に、当該制御デバイス3に対する通信プロトコルを、通信規格Aから、より低負荷で処理可能な通信規格Bに切替える(ステップST3)。図8の例では、エンジニアリングツール1は、制御デバイス3−1の処理負荷を低減して制御動作を正常に実行させるため、当該制御デバイス3−1に対する通信プロトコルを通信規格Aから通信規格Bに切替える。このように、処理負荷の高い制御デバイス3−1に対する通信プロトコルを、通信規格Aから通信規格Bに切替えることで、通信規格Aの場合と同等の通信処理をより低負荷で実施させることができ、また、制御動作を正常に実行させることができる(オーバーランはしない)。
【0025】
通信切替え部103により制御デバイス3に対する通信プロトコルが通信規格Bに切替えられた後、安定動作状態判定部104は、負荷状況読取り部101により読取られた当該制御デバイス3の負荷状況から、負荷が上記既定レベル未満である状態が一定時間維持されているかを判定する(ステップST4)。すなわち、当該制御デバイス3の負荷状況(PU値)が低負荷(通常動作時)レベルを維持しているかを判定することで、当該制御デバイス3が安定動作状態となったかを判定する。ここで、安定動作状態であると判定するための維持時間として、例えば60秒等に設定している。
【0026】
このステップST4において安定動作状態判定部104が上記制御デバイス3の負荷が上記既定レベル未満である状態が一定時間維持されていないと判定した場合には、シーケンスは再びステップST4に戻り待機状態となる。すなわち、安定動作状態判定部104は、維持時間内に負荷が一時的に上昇して高負荷となった場合には、維持時間のカウントをリセットする。この安定動作状態判定部104により、通信プロトコルの切替えが多発することを回避し、制御デバイス3の安定動作に影響を与えないようにする。
【0027】
一方、ステップST4において安定動作状態判定部104が上記制御デバイス3の負荷が上記既定レベル未満である状態が一定時間維持されていると判定した場合には、通信切替え部103は、当該制御デバイス3に対する通信プロトコルを通信規格Aに戻す(ステップST5)。図8の例では、制御デバイス3−1に対する通信プロトコルを通信規格Aに戻す。
【0028】
以上のように、この実施の形態1によれば、エンジニアリングツール1に、制御デバイス3の負荷状況を通信により読取る負荷状況読取り部101と、制御デバイス3の負荷状況から、負荷が既定レベル以上であるかを判定するレベル判定部102と、制御デバイス3の負荷が既定レベル以上であると判定された場合に、当該制御デバイス3に対する通信プロトコルを通信規格Aから通信規格Bに切替える通信切替え部103とを備えたので、制御デバイス3の負荷状況に応じて、当該制御デバイス3に対する通信プロトコルを自動で切替えることができる。
【0029】
また、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 エンジニアリングツール
2 監視デバイス
3 制御デバイス
101 負荷状況読取り部
102 レベル判定部
103 通信切替え部
104 安定動作状態判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8