特許第6509074号(P6509074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509074
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】電気掃除機用ホース
(51)【国際特許分類】
   A47L 9/24 20060101AFI20190422BHJP
   F16L 11/115 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   A47L9/24 A
   F16L11/115
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-160782(P2015-160782)
(22)【出願日】2015年8月18日
(65)【公開番号】特開2017-38666(P2017-38666A)
(43)【公開日】2017年2月23日
【審査請求日】2018年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108498
【氏名又は名称】タイガースポリマー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹中 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】増田 貴文
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−066079(JP,U)
【文献】 特開2004−069031(JP,A)
【文献】 特開2011−135952(JP,A)
【文献】 特表2002−540370(JP,A)
【文献】 実開昭59−083278(JP,U)
【文献】 特開2009−142551(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0951886(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47L 9/24
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸波型状のホース壁を有する電気掃除機用ホースであって、
ホース壁がホース内側に凹入する部分に沿って、リブがホース内側に突出するように一体成形されており、
ホース壁がホース外側に向かって突出形成された部分の内側に存在する、ホース壁の凹凸襞に沿った空間を、前記リブは実質的に覆っておらず、
ホース中心軸を含む断面で見て、ホースの中心軸と直交する方向に対しリブが傾いて設けられており、かつ、
ホース壁の凹凸波型はらせん状に設けられており、ホース壁がホース外側に突出する部分に沿って、ホース壁の内周面にらせん状補強体が設けられており、らせん状補強体に挟まれたホース壁の部分において、リブは、当該ホース壁部分の中央から、ホース内の気流の下流側にオフセットした位置に設けられている、
電気掃除機用ホース。
【請求項2】
ホース壁を構成する材料よりも硬質な材料によって構成されたらせん状補強体が、ホース壁がホース外側に突出する部分に沿って設けられている請求項1に記載の電気掃除機用ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可撓性に優れた合成樹脂製の可撓性ホース、特に電気掃除機に使用される電気掃除機用ホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気掃除機本体と手元操作部との間に接続される電気掃除機用ホース(いわゆるクリーナホース)としては、ホースの可撓性や耐つぶれ性、意匠性や耐久性などの種々の特性を考慮したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、硬鋼線製の補強体を有し、ホース壁が凹凸波型状に形成されたクリーナホースが開示されている。このホースは、硬鋼線製の補強体がホースを収縮させる方向にあらかじめねじられて成形されており、軽量で優れた伸縮性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−40528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホース壁が凹凸波型状に形成されたクリーナホースにおいては、電気掃除機の使用時に、ホースからピーという高い周波数の騒音が生ずることがある。この騒音が生ずる原因や条件は定かではないが、電気掃除機の高出力化や小型化が進むと共に、クリーナホース内を流れる気流の流速が高くなって、このピー音が発生しやすくなってきた。また、クリーナホースのホース壁が凹凸波型状に形成されていていると、このピー音が発生しやすくなる傾向がある。
【0006】
本発明の目的は、伸縮性に富む一方で、ピー音が発生しにくい電気掃除機用ホースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、鋭意検討の結果、ホース壁が凹入する部分の内周面に、ホース内側に向かってリブを突出させると、ピー音が発生しにくくなることを知見し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、凹凸波型状のホース壁を有する電気掃除機用ホースであって、ホース壁がホース内側に凹入する部分に沿って、リブがホース内側に突出するように一体成形されており、ホース壁がホース外側に向かって突出形成された部分の内側に存在する、ホース壁の凹凸襞に沿った空間を、前記リブは実質的に覆っておらず、ホース中心軸を含む断面で見て、ホースの中心軸と直交する方向に対しリブが傾いて設けられており、かつ、ホース壁の凹凸波型はらせん状に設けられており、ホース壁がホース外側に突出する部分に沿って、ホース壁の内周面にらせん状補強体が設けられており、らせん状補強体に挟まれたホース壁の部分において、リブは、当該ホース壁部分の中央から、ホース内の気流の下流側にオフセットした位置に設けられている、電気掃除機用ホースである(第1発明)。
【0009】
また、第1発明においては、ホース壁を構成する材料よりも硬質な材料によって構成されたらせん状補強体が、ホース壁がホース外側に突出する部分に沿って設けられていることが好ましい(第発明)。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気掃除機用ホース(第1発明)によれば、凹凸波型状のホース壁によりホースが伸縮性に優れる。一方で、リブがホース内側に突出するように設けられているために、いわゆるピー音が発生しにくくなる。
【0011】
さらに発明のホースは、効率的に製造できて、ピー音の発生抑制効果も高い。また、発明のホースは、ホースがつぶれにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態の電気掃除機用ホースの一部断面図である。
図2】第1実施形態の電気掃除機用ホースが製造される過程を示す模式図である。
図3】電気掃除機用ホースのピー音発生試験の概要を示す模式図である。
図4】第1実施形態の電気掃除機用ホース内の空気流れを示す模式図である。
図5】従来の電気掃除機用ホース内の空気流れを示す模式図である。
図6】第2実施形態の電気掃除機用ホースのホース壁の断面図である。
図7】リブの断面形状の他の例を示す断面図である。
図8】第3実施形態の電気掃除機用ホースのホース壁の断面図である。
図9】電気掃除機の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照しながら、家庭用電気掃除機を例として、本発明の電気掃除機用ホースの実施形態について説明する。発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0014】
図9は電気掃除機の全体の外観を示し、電気掃除機用ホース1は、掃除機本体99に設けられた吸気口に接続管(口元部材)95を介して電気掃除機用ホース1の一端で接続され、電気掃除機用ホース1の他端は手元操作部98に接続され、手元操作部98に連続して延長管97、続いて床用ノズル96が接続されて電気掃除機が構成されている。
【0015】
電気掃除機用ホース1は、複数本の導電線を備えていてもよい。導電線によって、手元操作部98に設けられたスイッチの入力信号を掃除機本体99に伝達したり、床用ノズル96に内蔵されたブラシ駆動用モータに電力を供給したりできる。可能であれば、信号伝達用の導電線と電力供給用の導電線を共用しても良い。なお、後述するように、導電線は必須ではない。
【0016】
図1に、第1実施形態の電気掃除機用ホース1の構造を示す。図1では、上側半分を断面図で、下側半分を外観で示している。電気掃除機用ホース1は、可撓性を有する合成樹脂によって略円筒状に形成された可撓性のホース壁2と、らせん状補強体3,3を有する。
【0017】
ホース壁2は凹凸波型状に形成されている。本実施形態では、らせん状の凹凸波型状に形成されている。螺旋の条数は、1条であってもよいし、必要に応じて、2条もしくはそれ以上の条数であってもよい。なお、ホース壁の凹凸波型は、リングが連設されたような形態であってもよい。本実施形態では、2条のらせん状に、ホースの凹凸波型形状が形成されている。
【0018】
ホース壁2を構成する合成樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂などの比較的軟質な合成樹脂材料が使用できる。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)などが例示される。軟質塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、や熱可塑性エラストマ(TPE)、ウレタン樹脂、ゴムなどをホース壁の樹脂として使用することもできる。ホース壁2を構成する樹脂材料として好ましい硬度は、50〜80(JIS ショアA)程度である。本実施形態では、軟質塩化ビニル樹脂によってホース壁が構成されている。なお、ホース壁を構成する合成樹脂は、必要に応じて所定の色に着色される。
【0019】
らせん状補強体3,3は、らせん状に捲回形成されて、ホース壁2の内周面に一体化されている。凹凸波型状のホース壁において、ホース壁がホース外側に突出する部分に沿って、らせん状補強体を一体化することが好ましい。らせん状補強体3を硬鋼線などの金属で構成し、らせん状補強体を複数本設けて導電線を兼ねてもよい。あるいは、らせん状補強体3を硬質樹脂により構成してもよい。らせん状補強体は、ホース壁を構成する材料よりも硬質な材料によって構成されればよく、らせん状補強体により、ホースの円筒状形状が良好に維持される。本実施形態においては、硬鋼線に硬質塩化ビニル樹脂を被覆してらせん状補強体3、3を構成し、2本のらせん状補強体3,3をホース壁の内周面に溶着している。
【0020】
ホース壁2の内周面には、凹凸波型に沿うように、リブ4が一体成形されている。リブ4はホース壁2と同じ樹脂により形成されている。リブ4は、ホース壁がホース内側に凹入する部分に沿って、ホース壁からホース内側に向かって、ホース中心軸に向かう方向に突き出すように設けられている。すなわち、ホース壁2がホース内側に入り込んだ部分の内周面から、リブ4が突出形成されている。
【0021】
本実施形態においては、リブ4はらせん状である。また、図1に示すように、ホースの中心軸lを含む断面で見て、リブ4の断面形状は、矩形状断面となっており、リブ4は板状もしくは棒状である。矩形状断面のリブ4が設けられる方向、すなわち、リブ4の矩形状断面の辺の方向は、ホース中心軸lと直交する方向mに対し、傾いている。すなわち、リブ4は、ホースの上流側もしくは下流側のいずれかに傾いて設けられている。なお、ホース壁2が外側に向かって突出形成された部分には、ホースの内側に、ホース壁の凹凸の襞に沿った空間が存在しているが、リブ4は、この空間を実質的に覆うものではなく、この空間とホース中央部の空間との間には、仕切り壁のようなものは存在していない。
【0022】
さらに、らせん状補強体3,3の間のホース壁において、リブ4は、中央からずれた位置すなわち中央からオフセットした位置に設けられている。すなわち、隣接するらせん状補強体3,3の間において、当該部分のホース壁の左右に位置するらせん状補強体3,3と、リブ4の間のホース壁の長さL1,L2が、異なっており、一方(L2)が他方(L1)よりも長くなっている。このような構成にすることにより、ホース壁2から突出形成したリブ4が、ホース中心軸lと直交する方向mに対し、自然に傾くように形成される。本実施形態では、ホース中心軸lと直交する方向mとリブ4の延在方向がなす角度αが約15度となるように、らせん状補強体に挟まれたホース壁の中央から、リブ4がやや左側にオフセットした位置に設けられている。
【0023】
上記電気掃除機用ホース1は、公知のホース製造方法により製造できる。すなわち、図2に模式的に示すように、いわゆるホースのスパイラル成形法を応用し、ホース成形軸上でらせん状に捲回形成されていくらせん状補強体3、3にまたがるように、所定の断面形状で押し出された合成樹脂製条帯T2をらせん状に巻きつけ、合成樹脂製条帯T2の両側縁部を互いに溶着させながらホース壁2(リブ4)となして、らせん状補強体3、3と溶着一体化させることにより、第1実施形態の電気掃除機用ホース1が製造できる。
【0024】
上記第1実施形態の電気掃除機用ホース1の作用及び効果について説明する。
まず、電気掃除機用ホース1は、凹凸波型状のホース壁を有し、伸縮性に富んでいる。
【0025】
また、上記第1実施形態の電気掃除機用ホース1は、ホース壁がホース内側に凹入する部分に沿って、リブがホース内側に突出するように一体成形されているため、ピー音が発生しにくい。
【0026】
発明者らが検討したところによれば、従来の凹凸波型状のホース壁を有するホースは、ホースが屈曲した状態でホース内を流れる気流の流速が高まると、ピーという高い周波数の騒音(いわゆるピー音)が発生しやすい傾向にある。また、このピー音は、ホースが小さな曲げRで屈曲した状態で発生しやすくなる場合がある。この騒音は耳障りであり、電気掃除機の通常の使用条件においては、ピー音が発生しないことが求められる。
【0027】
ピー音抑制効果を例証する。
ホースの呼び径dが35mmで、リブの突出高さが1.5mmである、第1実施形態の電気掃除機用ホース1を製造し実施例1のホースとした。一方、リブ4を備えない点を除いて他は実施例1のホースと同様の構成のホースを製造し、比較例1のホースとした。これらホースに対し、図3に示すように、外径D=120mmの円となるように、ホースの一部を1周丸めて屈曲配置し、その状態で、ホースを通流させていく空気の流量Qを高めていき、ピー音の発生の有無を比較した。この試験では、ピー音が全く発生しないか、ピー音が発生するとしてもより流量が多くなったときにピー音が発生するほうが、ピー音の発生抑制効果に優れたホースであるといえる。
【0028】
比較例1の試験では、ホースに求められる定格の流量Q0の0.85倍の流量でピー音が発生してしまった。一方、実施例1の電気掃除機用ホース1においては、定格流量Q0まででは、ピー音の発生が見られず、定格流量Q0の1.5倍でもピー音の発生が見られなかった。さらに、試験機の最大流量である、定格流量の1.85倍で試験してもピー音の発生が見られなかった。すなわち、実施例1の電気掃除機用ホースでは、ピー音が発生しにくい。
【0029】
リブ4を設けることによってピー音の発生が抑制されるメカニズムの詳細は不明であるが、発明者らは、以下のような原理で、ピー音の発生が抑制されるのではないかと推測している。
【0030】
ピー音の発生は、ホースの曲げと気流の流速に関係している。そこで、発明者らは、ピー音の発生という現象は、ホース内周が凹凸波型になっているために、その波型部分に気流が出入りし、その出入りが下流に行くにしたがって増幅されて激しくなり、特定の流速以上になると激しく共鳴するに至って、ピー音が発生するのではないかと推測している。特に曲げRが小さくなるようにされると、ホース内の気流が、曲げRの外側に位置するホース壁の凹凸波型に吹き付けるようになって、この現象が発生しやすくなるのではないかと推測している。
【0031】
比較例1のような、従来の凹凸波型のホース壁を備える電気掃除機用ホースにおいては、図5に示すように、ホース内の気流が、凹凸波型状のホース壁に沿うように、波型の間の空間に入り込むように蛇行して流れ、この流れが、凹凸波型のピッチと同期して周期的に現れるために、特定の流速になると、激しい共鳴現象になるのではないかと推測する。
【0032】
一方、上記実施例1のホースのように、リブ4がホース内側に突出するように一体成形されていると、図4に示すように、リブ4の働きにより、ホース内の流れがホース壁から引きはがされてホース軸と略平行な直線状に流れるようになり、ホース内の流れの蛇行の程度が小さくなっているのではないかと推測する。このように、リブ4を設けることで、ホース内流れの周期的な蛇行が発生しにくくなって、激しい共鳴現象(ピー音の発生)には至らないのではないかと推測する。
【0033】
ホース壁付近の流れを変えて、ピー音の発生を抑制するという観点からは、通常の電気掃除機用ホースにおいては、リブ4の高さが0.5mm〜2.5mm程度とされることが好ましい。また、ホース壁の凹凸波型の深さとの関係では、リブ4の高さが、ホース壁の凹凸波型の深さの1/4〜3/4程度となるようにされることが好ましい。また、ホース壁が内側に入り込んだ部分の径すなわち最小径との関係では、リブ4の高さが、ホース壁の最小径の1/30〜1/5程度となるようにされることが好ましい。
【0034】
発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施できる。
【0035】
図6には、第2実施形態の電気掃除機用ホース5のホース壁部分の断面図を示す。本実施形態においては、ホース壁52やらせん状補強体53の構成は、第1実施形態と同様である。本実施形態の電気掃除機用ホース5では、リブ54の突出形態が異なっており、リブ54は、ホース中心軸lを含む断面で見て、ホース中心軸lと直交する方向mとほぼ平行に突出形成されている。また、らせん状補強体53,53に挟まれたホース壁の部分において、リブ54は、当該ホース壁部分の中央位置に設けられている。
【0036】
第2実施形態の電気掃除機用ホース5であっても、ピー音の発生抑制効果が認められる。上記した実施例1に対し、リブの突出方向と配置を変更した第2実施形態の電気掃除機用ホース5を製造し実施例2のホースとした。実施例2の電気掃除機用ホース5において同様のピー音発生試験を行ったところ、定格流量Q0まででは、ピー音の発生が見られず、定格流量Q0の1.5倍でもピー音の発生が見られなかった。さらに、流量を高めたところ、定格流量の1.75倍でピー音が発生した。
【0037】
実施例1と実施例2の試験結果を比べると、ホース壁内側に突出形成されるリブは、ホースの中心軸と直交する方向に対しリブが傾いて設けられている方が、ピー音発生抑制の観点から好ましい。あるいは、ホース壁内側に突出形成されるリブは、らせん状補強体に挟まれたホース壁の部分において、らせん状補強体の間のホース壁部分の中央からオフセットした位置に設けられている方が、ピー音発生抑制の観点から好ましい。
【0038】
また、実施例1のように、らせん状補強体の間のホース壁部分の中央からオフセットした位置に、リブを設けると、ホースを成形する際に、リブが自然に傾いて形成されるので、そのようなホースの製造がたやすく、ホース品質管理の観点からも有利であって、好ましい。
【0039】
ホース壁から突出形成されるリブの形態は、上記実施形態のように矩形状であってもよいが、図7に示すような、他の形態であってもよい。
リブの断面形状が、図7(a)に示すリブ4aのような、先端が鋭角の三角形状であってもよい。あるいは、リブの断面形状が、図7(b)に示すリブ4bのような、先端にRがけされた形状であってもよい。あるいは、リブの断面形状が、図7(c)に示すリブ4cのような、リブの先端の角部が鋭角とされた形状であってもよい。
【0040】
これらリブの中でも、上記したピー音抑制効果がより発揮されやすいように、リブの断面形状は、図7(a)や図7(c)に示したリブ4a、4cのように、リブの先端の角部が90度もしくは鋭角とされることが好ましい。リブ先端の角部の角度が90度もしくは鋭角とされることにより、ホース内の気流がこの角部ではがれて、直線状に流れやすくなり、ピー音抑制効果が高まると推測される。
【0041】
また、図7(b)に示したリブのように、リブの先端部にRがかけられる場合には、リブ4bの厚み(図の左右方向のリブの幅)を、リブの長さ(図の上下方向のリブの長さ)と比べて、厚みが長さと同程度であるか、もしくは、厚みが長さよりも小さくなるようにすることが好ましく、そのようにすると、ホース内の気流が、リブの先端部ではがれて、直線状に流れやすくなり、ピー音抑制効果がより高められると推測される。
【0042】
図8には、第3実施形態の電気掃除機用ホース6のホース壁部分の断面図を示す。本実施形態においては、ホース壁62とリブ64の構成は、第2実施形態とほぼ同様である。本実施形態の電気掃除機用ホース6は、らせん状補強体を備えない。本実施形態のホース6は、略S字状断面を有する樹脂製条帯をらせん状に捲回して、条帯の両側縁部同士を重ねあわせるように接着一体化してホース壁とすることにより製造できる。らせん状補強体を備えなくとも、電気掃除機用ホースの形態が保てる限りにおいて、らせん状補強体は必須ではない。本実施形態の電気掃除機用ホース6においても、同様に、ピー音抑制効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の電気掃除機用ホースは、家庭用電気掃除機や、産業用の電気掃除機に使用でき、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0044】
1 電気掃除機用ホース
2 ホース壁
3 らせん状補強体
4 リブ
T2 合成樹脂製条帯
5、6 電気掃除機用ホース
52,62 ホース壁
53 らせん状補強体
54、64,4a,4b,4c リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9