特許第6509085号(P6509085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509085
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】日焼け止め化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/37 20060101AFI20190422BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190422BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20190422BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20190422BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20190422BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20190422BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   A61K8/37
   A61K8/35
   A61K8/86
   A61K8/60
   A61K8/81
   A61K8/73
   A61Q17/04
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-185093(P2015-185093)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-57180(P2017-57180A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年2月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 真樹
(72)【発明者】
【氏名】久加 亜由美
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0110841(US,A1)
【文献】 特開2010−155839(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0152931(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/37
A61K 8/35
A61K 8/60
A61K 8/73
A61K 8/81
A61K 8/86
A61Q 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有する、日焼け止め化粧料であって、前記成分Dの含有量が0.1〜2質量%であり、前記成分Eの含有量が0.05〜0.3質量%である、日焼け止め化粧料
成分A:紫外線吸収剤
成分B:非イオン性界面活性剤
成分C:アルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分D:単糖
成分E:結晶セルロース
【請求項2】
前記成分Dが、グルコース、フルクトース、リボース、キシロースおよびマンノースからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の日焼け止め化粧料。
【請求項3】
さらに、下記成分Fを含有する、請求項1又は2に記載の日焼け止め化粧料。
成分F:上記成分C以外の陰イオン性増粘剤
【請求項4】
さらに、下記成分Gを含有する、請求項1〜3の何れか一項に記載の日焼け止め化粧料。
成分G:酸性多糖増粘剤および非イオン性多糖増粘剤の群から選ばれる少なくとも1種
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、日焼け止め化粧料には、種々の紫外線吸収剤が配合されている。また、日焼け止め化粧料の多くは、使用感の観点から、乳化剤型とされている。しかしながら、紫外線吸収剤は乳化され難く、安定な乳化剤型とするためには多量の乳化剤(非イオン性界面活性剤)が必要となり、べたつきなどの使用感の観点で問題となることがある。個人差はあるものの、特に男性は、極めてべたつきの少ない日焼け止め化粧料を求める傾向がある。そこで、べたつきを抑え、みずみずしい使用感とする旨を課題とする日焼け止め化粧料が種々提案されている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−255669号公報
【特許文献2】特開2008−162930号公報
【特許文献3】特開2011−195478号公報
【特許文献4】特開2011−219424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
べたつき感を低減するために、乳化剤の配合量を低減させることも考えられるが、単に乳化剤自体の配合量を減らすと優れた安定性が得られないといった問題がある。そのため、前記特許文献のように、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」や「キサンタンガム」などの増粘剤を用いた日焼け止め化粧料が提案されている。しかし、これらの試みでは、乳化剤(非イオン性界面活性剤)のべたつき感を低減させることはできるものの、紫外線吸収剤自体のべたつき感を抑制するまでに至っておらず、さらなる改良が求められるところである。
【0005】
本発明の課題は、製剤の保存安定性および塗布時の延展性に優れつつも、べたつき感をほとんど感じさせることなく、みずみずしくコクのある使用感の日焼け止め化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記成分A、成分B、成分C、成分Dおよび成分Eを含有することを特徴とする日焼け止め化粧料に関する。
成分A:紫外線吸収剤
成分B:非イオン性界面活性剤
成分C:アルキル変性カルボキシビニルポリマー
成分D:単糖
成分E:結晶セルロース
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、製剤の保存安定性および塗布時の延展性に優れつつも、べたつき感をほとんど感じさせることなく、みずみずしくコクのある使用感の日焼け止め化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前記課題解決について検討したところ、紫外線吸収剤を含む乳化剤型の日焼け止め化粧料において、意外にも、単糖および結晶セルロースを用いることで、乳化剤(非イオン性界面活性剤)のべたつき感を低減することができるのみならず、紫外線吸収剤自体のべたつき感をも低減することができるとともに、製剤の保存安定性にも優れることを見出した。
【0009】
単糖および結晶セルロースを用いることでこのような効果が得られるメカニズムは定かではないが、結晶セルロースが紫外線吸収剤を吸油し、さらに単糖がそれら成分を肌上でコーティングすることで、べたつき感を低減するものと推定される。
【0010】
本発明者らは、かかる知見に基づき、鋭意研究を重ねて本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の日焼け止め化粧料は、成分A:紫外線吸収剤、成分B:非イオン性界面活性剤、成分C:アルキル変性カルボキシビニルポリマー、成分D:単糖、および成分E:結晶セルロースを必須成分として含有する。本発明の日焼け止め化粧料は、成分A、成分B、成分C、成分D、および成分E以外の成分を含んでいてもよい。
【0012】
用いられる成分Aは、紫外線吸収剤である。紫外線吸収剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸メチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸オクチル、サリチル酸ブチルフェニル、サリチル酸ホモメンチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、メトキシケイ皮酸エトキシエチル、ジメトキシケイ皮酸モノエチルヘキサン酸グリセリル、ヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、オクチルトリアゾン、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコン−15、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、オキシベンゾン−3、2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]−1,3,5−トリアジン、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、ベンゾトリアゾール、ベンジリデンカンファー、トリメトキシケイヒ酸メチルビス(トリメチルシロキシ)シリルイソペンチル、およびフェニルベンズイミダゾールスルホン酸などが挙げられる。上記成分Aは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0013】
上記成分Aの中でも、紫外線防止効果(紫外線防御指数:Sun Protection Factor(SPF))を十分に発揮させる観点から、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、およびt−ブチルメトキシジベンゾイルメタンからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0014】
成分Aは、UV−A領域(320〜400nmの波長領域)、UV−B領域(280〜320nmの吸収波長)、UV−C領域(100〜280nmの吸収波長)のいずれに吸収能を有するものであってもよく、特に限定されない。
【0015】
上記成分Aは市販品を用いることができる。パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルの市販品としては、例えば、商品名:ユビナール MC 80(BASF社製)などが挙げられる。t−ブチルメトキシジベンゾイルメタンの市販品としては、例えば、商品名:パルソール1789(DSMニュートリションジャパン社製)などが挙げられる。
【0016】
成分Aの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、紫外線防止効果を十分に発揮させる観点から、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは1〜10質量%である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Aが含まれる場合、成分Aの含有量は、その合計量を意味する。
【0017】
用いられる成分Bは、非イオン性界面活性剤である。非イオン性界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、アルキルグルコシド、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリンなどが挙げられる。
【0018】
より具体的には、例えば、アルキル(C8〜16)グルコシド、セトステアリルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドなどのアルキルグルコシド;モノカプリル酸グリセリル、モノカプリン酸グリセリル、モノラウリン酸グリセリル、モノミリスチン酸グリセリル、モノパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノイソステアリン酸グリセリル、モノベヘン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル、モノエルカ酸グリセリル、セスキオレイン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、ジアラキン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;モノカプリル酸ジグリセリル、モノカプリル酸デカグリセリル、モノカプリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリ(4〜10)グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、セスキオレイン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ポリ(2〜10)グリセリル、ジステアリン酸ポリ(6〜10)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリステアリン酸ポリ(10)グリセリルなどの上記したグリセリン脂肪酸エステルの重合度2〜10のポリグリセリン脂肪酸エステル;モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル、モノオレイン酸ポリオキシエチレングリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物;モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、モノオレイン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル;モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、ヤシ油脂肪酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルの酸化エチレン縮合物;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシプロピレンイソセチルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどが例示される。上記成分Bは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0019】
上記成分BのHLBは、特に限定されるものではないが、製剤の保存安定性の観点から、10〜20であることが好ましく、12〜18であることがより好ましい。
【0020】
成分Bの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、製剤の保存安定性を付与する観点から、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、エマルジョンを小さくし、みずみずしい使用感とする観点から、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Bが含まれる場合、成分Bの含有量は、その合計量を意味する。
【0021】
用いられる成分Cは、アルキル変性カルボキシビニルポリマーである。アルキル変性カルボキシビニルポリマーとは、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、又は(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10−30))クロスポリマーとも称される化合物である。本発明において、上記成分Cを用いることにより、優れた製剤の保存安定性を付与することが可能となる。
【0022】
上記成分Cは市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、商品名:Carbopol ETD2020 polymer、商品名:Carbopol 1342 polymer、商品名:PEMULEN TR−1、商品名:PEMULEN TR−2(何れもLubrizol Advanced Materials社製)などが挙げられる。
【0023】
成分Cの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、製剤の保存安定性を付与する観点から、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、皮膜感を抑えて使用感を高める観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Cが含まれる場合、成分Cの含有量は、その合計量を意味する。
【0024】
用いられる成分Dは、単糖である。単糖としては、特に限定されるものではないが、例えば、グルコース、フルクトース、リボース、キシロース、マンノースなどが挙げられる。上記成分Dは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。本発明において、上記成分Dを用いることにより、べたつきを抑えて、コクのある使用感を付与することが可能となる。
【0025】
上記成分Dの中でも、べたつきの低減効果に優れる観点およびコクのある使用感に優れる観点から、グルコース、およびフルクトースからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0026】
上記成分Dは市販品を用いることができる。グルコースの市販品としては、例えば、商品名:日本薬局方ブドウ糖NG−TDA(サンエイ糖化社製)などが挙げられる。フルクトースの市販品としては、例えば、商品名:D(−)−Fructose(和光純薬工業社製)などが挙げられる。
【0027】
成分Dの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、べたつきを抑える観点およびコクのある使用感を付与する観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、延展性の観点から、好ましくは4質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Dが含まれる場合、成分Dの含有量は、その合計量を意味する。
【0028】
用いられる成分Eは、結晶セルロースである。本発明において、上記成分Eを用いることにより、べたつきを更に抑えることが可能となる。上記成分Eの形状は、所望の効果が付与されるのであれば、球状、板状、不定形の何れの形態であっても特に限定されるものではないが、球状の結晶セルロースを用いることが好ましい。また、上記成分Eの平均粒子径は、所望の効果が付与されるのであれば特に限定されるものではないが、平均粒子径が5〜500μmの結晶セルロースを用いることが好ましい。上記成分Eは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0029】
上記成分Eは市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、商品名:セオラスPH−101,102,301,302,F20JP、商品名:セオラスUF−702,711、商品名:セオラスKG−802,1000、商品名:セルフィアCP−102,203,305(何れも旭化成ケミカルズ社製)などが挙げられる。
【0030】
成分Eの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、べたつきを抑える観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、延展性の観点から、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Eが含まれる場合、成分Eの含有量は、その合計量を意味する。
【0031】
本発明の日焼け止め化粧料は、さらに、任意成分F:成分C以外の陰イオン性増粘剤を含有することが好ましい。本発明において、上記成分Fをさらに含有することで、格段に優れた製剤の保存安定性を発揮させることが可能となる。
【0032】
用いられる成分Fとしては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸アルキルコポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)クロスポリマー、(アクリレーツ/メタクリル酸ベヘネス−25)コポリマー、(アクリレーツ/ネオデカン酸ビニル)クロスポリマーなどが挙げられる。上記成分Fは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。上記成分Fの中でも、格段に優れた製剤の保存安定性を発揮させる観点から、カルボキシビニルポリマー、および(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0033】
上記成分Fは市販品を用いることができる。カルボキシビニルポリマーの市販品としては、例えば、商品名:カーボポール980(Lubrizol Advanced Materials社製)、商品名:カーボポール Ultrez 10(BF Goodrich社製)、商品名:AQUPEC HV−805EG−300(住友精化社製)などが挙げられる。(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマーの市販品としては、例えば、商品名:アキュリン22(Rohm and Haas社製)などが挙げられる。
【0034】
成分Fの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、製剤の保存安定性を更に高める観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、延展時のヨレを抑制する観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Fが含まれる場合、成分Fの含有量は、その合計量を意味する。
【0035】
本発明の日焼け止め化粧料は、さらに、任意成分G:酸性多糖増粘剤および非イオン性多糖増粘剤の群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。成分Gをさらに含有することで、本発明の日焼け止め化粧料に曳糸性が付与され、塗布時の延び拡がりが更に良好になり、コクのある使用感を格段に高めることができる。また、上記成分Gは、製剤の保存安定性にも寄与する。上記成分Gは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0036】
用いられる酸性多糖増粘剤としては、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、寒天、カラヤガム、ガッティガム、アラビアガムなどが挙げられる。上記酸性多糖増粘剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。上記酸性多糖増粘剤の中でも、曳糸性に優れる観点から、キサンタンガムを用いることが好ましい。
【0037】
用いられる非イオン性多糖増粘剤としては、例えば、デキストラン、プルラン、アラビノガラクタン、グァーガム、ヒドロキシプロピルグァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、スクレロチウムガム、コンニャクマンナン、タマリンド種子ガムなどが挙げられる。上記非イオン性多糖増粘剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。上記非イオン性多糖増粘剤の中でも、曳糸性に優れる観点から、グァーガム、およびヒドロキシプロピルグァーガムからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0038】
上記成分Gは市販品を用いることができる。キサンタンガムの市販品としては、例えば、商品名:エコーガムT(DSP五協フード&ケミカル社製)などが挙げられる。グァーガムの市販品としては、例えば、商品名:イナゲル グアーガムCS(伊那食品工業社製)、商品名:MEYPRO−GUAR(三晶社製)などが挙げられる。ヒドロキシプロピルグァーガムの市販品としては、例えば、商品名:JAGUAR HP−8(三晶社製))などが挙げられる。
【0039】
成分Gの含有量は、本発明の日焼け止め化粧料100質量%中、延展性を高める観点、コクのある使用感を高める観点、および製剤の保存安定性を高める観点から、好ましくは0.001質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、ヌルつきの発生を抑制する観点から、好ましくは0.2質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。日焼け止め化粧料中に2種以上の成分Gが含まれる場合、成分Gの含有量は、その合計量を意味する。
【0040】
本発明の日焼け止め化粧料は、その他の任意成分として、本分野において一般的に用いられる添加剤などを含有してもよく、例えば、防腐剤、香料、金属封鎖剤、着色剤などを含有してもよい。
【0041】
本発明の日焼け止め化粧料における成分Dと成分Eの質量含有比(成分D:成分E)は、特に限定されるものではないが、べたつき感をほとんど感じさせることなく、みずみずしくコクのある使用感を発揮させる観点から、1:2〜25:1であることが好ましく、1:1〜20:1であることがより好ましい。
【0042】
本発明の日焼け止め化粧料の25℃における粘度は、特に限定されるものではないが、製剤の保存安定性の観点から、好ましくは0.1〜15.0Pa・sである。本明細書において、粘度はB型粘度計(東機産業社製、商品名:VISCOMETER TV−25)により測定されたものを指す。
【0043】
本発明の日焼け止め化粧料の調製方法は、特に限定されるものではなく、各原料を公知の混合装置で混合することにより調製することができる。より具体的には、ホモミキサーなどを用い、攪拌することにより製造することができる。
【実施例】
【0044】
以下に、本発明を実施例等に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
調製例
表1、2に記載した組成に従い、実施例1〜11および比較例1〜8の日焼け止め化粧料を常法に準じて調製し、下記評価に供した。
【0046】
(試験例1:製剤の保存安定性の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料100gを、200g容の透明ガラス容器(透明マヨネーズ瓶)に夫々充填し、40℃の恒温槽に4週間保管後の系の状態を目視観察して下記評価基準に従い目視評価した。結果を表1、2に示す。
<保存安定性の評価基準>
◎(かなり良好):製造直後と全く変化が認められない
○(良好):製造直後と大きな変化はないが、ごく僅かに離漿が認められる
△(不十分):明らかな離漿や分離が認められる
×(不良):分離している
【0047】
(試験例2:塗布時の評価)
各実施例および各比較例で得られた試料1gを、左右何れか一方の前腕内側部に塗布後、残る一方の手の平で延び拡げてもらい、その時の「延展性(延び拡がり)」、「延展時の感触」、並びに「みずみずしさ」について下記評価基準に従い官能評価した。
尚、評価は、官能評価パネル10名で行った。結果を表1、2に示す。
<延展性(延び拡がり)の評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、均一に延び拡がると回答
○(良好):10名中6〜8名が、均一に延び拡がると回答
△(不十分):10名中3〜5名が、均一に延び拡がると回答
×(不良):10名中2名以下が、均一に延び拡がると回答
<延展時の感触の評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、コクのある感触が得られると回答
○(良好):10名中6〜8名が、コクのある感触が得られると回答
△(不十分):10名中3〜5名が、コクのある感触が得られると回答
×(不良):10名中2名以下が、コクのある感触が得られると回答
<みずみずしさの評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、みずみずしさが感じられると回答
○(良好):10名中6〜8名が、みずみずしさが感じられると回答
△(不十分):10名中3〜5名が、みずみずしさが感じられると回答
×(不良):10名中2名以下が、みずみずしさが感じられると回答
【0048】
(試験例3:塗布後の評価)
試験例2の評価10分後の塗布部の「べたつき感」について下記評価基準に従い官能評価した。結果を表1、2に示す。
尚、評価は、上記同官能評価パネル10名で行った。
<べたつき感の評価基準>
◎(かなり良好):10名中9名以上が、べたつきが感じられないと回答
○(良好):10名中6〜8名が、べたつきが感じられないと回答
△(不十分):10名中3〜5名が、べたつきが感じられないと回答
×(不良):10名中2名以下が、べたつきが感じられないと回答
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例、比較例における各原料の詳細は次の通りである。なお、表1、2に記載の量は商品の量ではなく、各成分の量(有効成分の量)である。
【0052】
(成分A)
パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル(BASF社製、商品名:ユビナール MC 80)
t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン(DSMニュートリションジャパン社製、商品名:パルソール1789)
(成分B)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(50E.O.)(日本エマルジョン社製、商品名:EMALEX HC−50、HLB:13)
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(100E.O.)(日本エマルジョン社製、商品名:EMALEX HC−100、HLB:15)
モノステアリン酸ポリグリセリル−10(日本サーファクタント工業社製、商品名:DECAGLYN 1−SV、HLB:12)
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)(花王社製、商品名:レオドールTW-S120V、HLB:14.9)
(成分C)
アルキル変性カルボキシビニルポリマー(Lubrizol Advanced Materials社製、商品名:PEMULEN TR−1)
(成分D)
グルコース(サンエイ糖化社製、商品名:日本薬局方ブトウ糖NG−TDA)
フルクトース(和光純薬工業社製、商品名:D(−)−Fructose)
(成分E)
結晶セルロース(旭化成ケミカルズ社製、商品名:セオラスPH−F20JP)
(成分F)
カルボキシビニルポリマー(Lubrizol Advanced Materials社製、商品名:カーボポール980)
(アクリレーツ/メタクリル酸ステアレス−20)コポリマー(Rohm and Haas社製、商品名:アキュリン22)
(成分G)
キサンタンガム(DSP五協フード&ケミカル社製、商品名:エコーガムT)
ヒドロキシプロピルグァーガム(三晶社製、商品名:JAGUAR HP−8)
(その他の任意成分)
水酸化カリウム(東亞合成社製、商品名:フレーク苛性カリ)
メチルフェニルポリシロキサン(信越化学工業社製、商品名:KF−56A)
【0053】
各実施例および比較例5〜8より、成分Dと成分Eの両方を含むと、べたつきを抑え、みずみずしい使用感を得られることがわかる。実施例1、3より、成分Fをさらに含むことで、製剤の保存安定性を高くできることがわかる。実施例1、2より、成分Gをさらに含むことで、塗布時の延び拡がりが更に良好になり、コクのある使用感を格段に高くできることがわかる。実施例6、10、11においては、多量の紫外線吸収剤を含有しているが、各種評価が極めて良好である。従って、これらの態様によれば、強い紫外線に対する日焼け止め化粧料としても、紫外線吸収剤に起因するべたつきを含む各種べたつきが少なく、好適な使用感の日焼け止め化粧料を提供することができる。
【0054】
以下、処方例を示す。なお、%はすべて質量%を表す。
【0055】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の日焼け止め化粧料は、製剤の保存安定性および塗布時の延展性に優れつつも、べたつき感をほとんど感じさせることなく、みずみずしくコクのある使用感を有することから、紫外線防止化粧料(UVケア剤)として好適に使用することができる。