(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記穀粒タンクに供給される穀粒の少なくとも一部を一時的に貯留する収量測定容器が備えられており、前記計測部は前記収量測定容器での穀粒の貯留状況から収量を計測する請求項5に記載のコンバイン。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によるコンバインの具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて、本発明によるコンバインで採用されている、刈り始め及び刈り終わりでの単位収量を修正する基本原理を説明する。
ここで想定されるコンバインは、圃場を走行しながら麦や稲の穀稈を刈取り、脱穀部で得られた穀粒を搬送機構によって搬送して穀粒タンクに蓄積する。その際、このコンバインでは、刈取り走行の間に穀粒タンクに搬送される穀粒の量、つまり搬送収量が計測部により計測される。さらに、計測された搬送収量は、圃場を細分化して得られた微小区画に割り当てられ、微小区画当たりの収量である微小区画収量が算定される。この微小区画収量を用いて、圃場の収量分布を表す収量分布データが生成される。生成された収量分布データはモニタやプリンタを通じて収量分布の視覚化に利用される。
【0013】
しかしながら、コンバインによる刈取り作業では、穀稈に対する刈り始めと刈り終わりとにおける単位収量の計測には、上述したような不都合が生じ、この単位収量を割り当てられた微小区画収量は不正確なものとなる。これを解消するために、以下に図を用いて述べられるような、制御上の修正が行われる。
【0014】
まず、刈取り作業を行うため、コンバインは走行を開始するとともに刈取部を下降させる。刈取部の降下検出や穀稈の検出などにより刈り始めが検知されると、刈取り作業チェック信号が出力される。ここでは、刈り始めの刈取り作業チェック信号として第1チェック信号が出力される。刈取り作業が開始されると、刈取部によって刈り取られた穀稈が脱穀され、穀粒が穀粒タンクに搬送される。穀粒タンクに搬送される穀粒の少なくとも一部が、収量として計測される。なお、穀稈が刈り取られ、穀粒として計測されるまでは、所定の処理時間(遅れ時間)が必要となるが、
図1では、図面及びその説明を簡単にするため、当該遅れ時間を無視している。もちろん、実際の処理では、刈取部で刈り取られた穀稈が穀粒としてその収量が計測されるまでの遅れ時間が考慮される。
【0015】
そのような遅れ時間が無視されている
図1の説明では、刈り始め時に、つまり第1チェック信号が出力された時点で、最初(1回目)の収量の計測(単位収量計測)が開始される。厳密に言えば、1回目の収量計測に供される穀粒には、第1チェック信号が出力された時点で刈り取られた穀稈の穀粒が含まれる。収量の計測では、穀粒タンクに搬送される穀粒を時間当たりの量、ないしは所定容量に達するまでの必要時間を計測し、その計測結果に基づいてコンバインの走行距離当たりの収量が単位収量として求められる。一回目の単位収量計測では、刈取部による穀稈の実際の刈り取りタイミングと、第1チェック信号の出力に基づく刈り始めのタイミングとは微妙に異なる。例えば、第1チェック信号の出力時にはまだ穀稈が実際に刈り取られていないこと(空刈り)が生じる。このようなタイミングのずれに起因して、1回目の単位収量計測では、時間当たりの収量が実際より低く計測されるか、あるいは所定容量に達するまでの必要時間が実際より長く計測され、単位収量は低めに計測されてしまう。したがって、1回目の単位収量計測で得られた単位収量は修正する必要がある。
【0016】
2回目以降の単位収量計測では、その計測開始時において、穀稈の刈り取り処理は1回目から継続しているので、正確な単位収量が計測される。このため、
図1の例では、1回目の単位収量計測で得られた単位収量は破棄され、2回目以降の単位収量計測で得られた単位収量、例えば2回目の単位収量計測で得られた単位収量で置き換えられる。
【0017】
また、直線的な条で植立されている穀稈の終わりに達すると、刈取部が上昇させられ、刈取り作業が一旦終了する。この刈り終わりが、刈取部の上昇検出や穀稈の未検出などにより検知されると、刈取り作業チェック信号が出力される。ここでは、刈り終わりの刈取り作業チェック信号として第2チェック信号が出力される。刈り終わりは、突然生じるので、その時に行われている単位収量計測は中断することになる。
図1では、そのような単位収量計測の中断がn回目の単位計測で生じている。ここでも厳密に言えば、第2チェック信号が出力された時点で刈り取られた穀稈の穀粒を含む収量の計測がn回目の収量計測である。n回目の単位計測は中断されたため、その単位収量は実際より低いものになるか、あるいは計測不能として、ゼロとなってしまう。したがって、この刈り終わり時の単位収量計測、ここではn回目の単位収量計測で得られた単位収量も修正する必要がある。このため、
図1の例では、n回目の単位収量計測で得られた単位収量は破棄され、n回目以前の単位収量計測で得られた単位収量、例えばn−1回目の単位収量計測で得られた単位収量で置き換えられる。
【0018】
このようにして得られた各単位収量は、圃場を所定の面積で分割することで得られた微小区画に割り当てられ、微小区画収量として記録され、圃場における収量分布などの表示に用いられる。なお、走行距離単位の収量である単位収量(正確には刈取り幅×単位走行距離当たりの収量)と微小区画収量とは、実際には1:1の関係ではなく、いくつかの単位収量を積算して1つの微小区画収量となるのが一般的である。さらに、単位収量が穀粒タンクに搬送されてくる穀粒の一部を計測して求めている場合には、本来の単位収量を求めるにはこの部分的な単位収量に係数をかける必要がある。しかしながら、ここでは説明を簡単にするため、その関係を1:1としている。
【0019】
次に、図面を用いて、本発明によるコンバインの具体的な実施形態の1つを説明する。
図2は、コンバインの一例である普通型コンバインの側面図であり、
図3は平面図である。このコンバインは、溝形材や角パイプ材などの複数の鋼材を連結した機体フレーム10を備えている。機体フレーム10の下部には左右一対のクローラ式の走行装置11を装備している。機体フレーム10における右前部は、エンジン15が搭載され、その上部にキャビン構成の運転部13が形成されている。運転部13には、操縦レバー17やモニタ18などが配置されている。機体フレーム10の前部には、刈取部12が昇降自在に装備されており、機体フレーム10の後部には、刈取部12から供給された刈取穀稈を全稈投入して脱穀する脱穀部14と、脱穀部14から搬送機構7によって供給される穀粒を貯留する穀粒タンク2と、穀粒タンク2に貯留された穀粒を外部へ排出するアンローダ16とが装備されている。
【0020】
刈取部12は、機体横向きの第1横軸心X1周りに上下昇降可能に構成されており、旋回時などの非収穫作業時には刈取部12は上昇状態となり、収穫作業時には圃場面に近接した下降状態となる。刈取部12には、植立穀稈を梳き分ける左右一対のデバイダ120と、回転駆動されることにより植立穀稈を後方へ掻き込む掻込リール121と、掻込リール121によって掻き込まれた植立穀稈を刈る刈刃装置122と、刈刃装置122によって刈られた刈取穀稈を後方へ送るオーガドラム123と、オーガドラム123から送られた刈取穀稈を脱穀部14の前端部へ搬送するフィーダ124とが備えられている。
【0021】
脱穀部14は、フィーダ124から供給を受けた刈取穀稈を、回転駆動される扱胴14aによって脱穀処理するように構成されている。穀粒タンク2は、機体フレーム10上の右後部に配置されており、脱穀部14の右横隣側で、運転部13の後方側に位置している。脱穀部14から穀粒タンク2に穀粒を搬送するコンベヤ群からなる搬送機構7が脱穀部14と穀粒タンク2との間に配置されている。搬送機構7の最終段はスクリューコンベヤ71として構成され、穀粒タンク2の内部に突入している。
【0022】
図4と
図5とに示されているように搬送機構7は、横送りコンベヤ74、揚送コンベヤ75、スクリューコンベヤ71、羽根車73から構成されている。脱穀部14の底部に左右向きに装備された横送りコンベヤ74は、その搬送終端部においてバケット式の揚送コンベヤ75に接続されている。揚送コンベヤ75は、駆動スプロケット751と従動スプロケット752とにわたって巻き掛けられた無端回動チェーン753の外周側に複数のバケット754が一定間隔で取り付けられているバケットコンベヤである。搬送機構7には、非図示のベルト伝動装置を介してエンジン動力が伝達される。駆動スプロケット751などの搬送機構7の回転動力系の回転数は、回転検出センサによって検出される。したがって、例えば、ベルト伝動装置のスリップなどの不測の要因で、駆動スプロケット751の回転数が急激に低下した場合に生じる穀粒搬送状態悪化は、当該回転検出センサの信号を評価することで、検知することができる。同様に、駆動スプロケット751の回転数が正常に回復したことも、同様の回転検出センサの信号を評価することで、検知することができる。
【0023】
揚送コンベヤ75はその搬送終端部においてスクリューコンベヤ71に接続されている。スクリューコンベヤ71は、断面形状八角形(その他の多角形または円形でもよい)のハウジング72で包囲されており、スクリューコンベヤ71の終端部にはスクリューコンベヤ71と一体回転する一対の羽根車73が配置されている。
【0024】
図4に示すように、この実施形態では、穀粒タンク2の内部に、搬送機構7で搬送されてきた穀粒の収量を測定する収量測定装置3の収量測定容器30と、搬送機構7で搬送されてきた穀粒の食味を測定する食味測定装置4の食味測定容器40が配置されている。収量測定装置3は、収量測定容器30内で所定量の穀粒が貯留される時間に基づいて、時間当たりの収量を測定する。同様に、食味測定装置4は、食味測定容器40に一時的に貯留された穀粒に対する分光測定を通じて、水分やタンパクなどの穀粒成分を測定する。
【0025】
図4と
図5と
図6と
図7に示されているように、収量測定容器30と食味測定容器40とは、穀粒タンク2の内部で、穀粒タンク2の前壁2aの上部に横並びで取り付けられている。収量測定容器30は筒状容器である。収量測定容器30の上端には穀粒を受け入れる第1受け入れ口(収量受け入れ口)31が形成されている。収量測定容器30の下端には受け入れた穀粒を放出する第1放出口(収量放出口)32が形成されている。第1受け入れ口31と第1放出口32との間に、第1受け入れ口31を通じて受け入れた穀粒を一時的に貯留するとともに、所定量の穀粒が貯留した後に当該貯留穀粒を第1放出口32を通じて放出する第1シャッタ33が設けられている。収量測定容器30と同様に、食味測定容器40も筒状容器である。食味測定容器40の上端には穀粒を受け入れる第2受け入れ口41が形成されている。食味測定容器40の下端には受け入れた穀粒を放出する第2放出口42が形成されている。第2受け入れ口41と第2放出口42との間に、第2受け入れ口41を通じて受け入れた穀粒を一時的に貯留するとともに、所定量の穀粒が貯留した後に第2放出口42を通じて当該貯留穀粒を放出する第2シャッタ43が設けられている。
【0026】
穀粒タンク2の前壁2aの最上部に設けられているスクリューコンベヤ71のハウジング72には、搬送機構7の穀粒排出口となる第1開口部721と第2開口部722とが穀粒搬送方向に沿って並設されている。第1開口部721と第2開口部722とは、ハウジング72の横断面方向においてハウジング72のほぼ下半分を占める大きさを有する。第1開口部721の下方に第1受け入れ口31が位置するように収量測定容器30が配置されている。また、第2開口部722の下方に第2受け入れ口41が位置するように食味測定容器40が配置されている。スクリューコンベヤ71は、第1開口部721の上方まで延びており、スクリューコンベヤ71で運ばれてきた穀粒の半分以上が第1開口部721を通じて放出される。
【0027】
スクリューコンベヤ71で搬送されてきた穀粒を受ける羽根車73は、穀粒の供給管路となっているハウジング72の長手方向、つまりスクリューコンベヤ71の軸心方向に延びた回転軸731と、この回転軸731から径方向で放射状に延びた複数の羽根体732とを有する。第2開口部722には、多孔部材として金網723が張られている。羽根体732によって押し出された穀粒は金網723を通り抜け、その一部は第2受け入れ口41を通じて食味測定容器40に供給される。穀粒選別作用をもたらす程度の孔サイズを有する金網723により、食味測定容器40に供給される穀粒に穀稈の枝梗などが混じることが抑制される。
【0028】
図6に示すように、収量測定容器30の穀粒シャッタである第1シャッタ33は、穀粒の通過を遮断する閉鎖姿勢と穀粒の通過を許す開放姿勢との間でアクチュエータ34によって揺動可能である。第1開口部721から落下してくる穀粒は第1受け入れ口31を通じて収量測定容器30に入る。第1シャッタ33が閉鎖姿勢である間、この穀稈は閉鎖姿勢の第1シャッタ33上に貯留される。貯留された穀粒が所定量になれば近接センサ35によって検出される。その際、第1シャッタ33が閉鎖姿勢に揺動してから、近接センサ35によって穀粒の所定量の貯留が検出されるまでの時間が計測される。これにより時間当たり搬送されてきた穀粒の所定分量の収量が得られるので、この計測時間と車速とから単位走行当たりの収量を算定することができる。このような算定処理を繰り返し、積算することで、コンバインの走行軌跡に対応する収量が算定される。
【0029】
図7に示すように、食味測定容器40の穀粒シャッタである第2シャッタ43も、穀粒の通過を遮断する閉鎖姿勢と穀粒の通過を許す開放姿勢との間でアクチュエータ44によって揺動可能である。なお、この実施形態では、第1シャッタ33及び第2シャッタ43のアクチュエータ34,44は電動モータで構成されている。第2開口部722から落下してくる穀粒が第2受け入れ口41を通じて食味測定容器40に入る。第2シャッタ43が閉鎖姿勢である間、この穀粒は閉鎖姿勢の第2シャッタ43上に貯留される。貯留された穀粒が所定高さに達したことが近接センサ45によって検出されると、穀粒の食味が測定される。この実施形態では、食味測定装置4を構成する食味測定ユニット4Aは、食味測定容器40の内部に突き出した送受光ヘッドを備えており、穀粒を透過して戻ってくる光のスペクトルを計測する分光測定方式を採用している。食味測定ユニット4Aは、穀粒水分値やタンパク値の測定が可能である。食味測定ユニット4Aは、穀粒成分である水分やタンパクに関する測定値、さらにはそれらの成分比から求められる食味演算値などのうちの少なくとも1つを含む食味値を出力する。食味測定が完了すると、第2シャッタ43が開放姿勢に揺動し、貯留された穀粒が排出される。続いて、第2シャッタ43が閉鎖姿勢に揺動し、次に貯留される穀粒の食味測定が始まる。このような処理を繰り返すことで、コンバインの走行軌跡に対応する食味値が算定される。
【0030】
このコンバインにおける、圃場の微小区画当たり(単位走行当たり)の収量算定と食味算定に関する制御系を説明するための機能ブロック図が、
図8に示されている。この制御系を構成する電子制御ユニットとして、走行制御ECU51、作業装置ECU52、分布データ生成部66が、互いに車載LANやその他のデータ通信線を介してデータ交換可能に備えられている。
【0031】
走行制御ECU51は、車両走行に関する種々の制御情報を取り扱うECUであり、例えば、車載LANを通じて、機器状態検出センサ群9から取得した、車速、走行距離、走行軌跡(走行位置)、エンジン回転数、燃費などの検出信号に基づいて走行制御情報を生成する機能を備えている。これ以外に、走行制御ECU51は、このコンバインに搭載されている、衛星航法自車位置計測ユニットの一例であるGPSユニット90から自車位置を取得し、この自車位置から走行軌跡を算定する機能を備えている。作業装置ECU52は、刈取部12や脱穀部14などの作業装置を制御するECUであり、作業装置を構成する各種機器の操作状態や稼働状態を示す検出信号を取得するため、機器状態検出センサ群9と接続されている。機器状態検出センサ群9には、刈取部12の収穫作業開始時における下降状態、及び収穫作業終了時における上昇状態を検出する刈取部昇降センサが含まれている。
【0032】
この実施形態では、計測部340は、収量測定容器30を用いて穀粒タンク2に搬送される穀粒の量を収量として計測する収量計測機能と、食味測定容器40を用いて穀粒タンク2に搬送される穀粒の食味(水分とタンパク成分)を計測する食味計測機能とを備えている。計測部340は、収量計測機能として第1シャッタ33を開閉させる第1シャッタ制御部61と時間算定部62と備えており、食味計測機能として第2シャッタ43を開閉させる第2シャッタ制御部64と食味測定ユニット4Aとを備えている。時間算定部62は、収量測定容器30に所定量の穀粒が貯留されるまでの時間である貯留時間を計測する。
【0033】
計測部340の各種機能部から処理データを受け取って穀粒の収量と食味を評価する収穫評価ユニット6には、収量算定部63、食味算定部65、分布データ生成部66、収穫情報記録部67が備えられている。収量算定部63は、時間算定部62からの貯留時間と当該貯留時の車速とから、計測部340で計測された収量を、単位走行当たりの収量である単位収量の形式に変換する。さらに、収量算定部63は、
図1を用いて説明された、穀稈の刈り始め及び刈り終わりにおける単位収量を修正する機能を有する。この機能を実現するため、収量算定部63には、収量割り当て算定部631と、刈取りチェック部632と、単位収量修正部633とが含まれている。単位収量修正部633は、刈取りチェック部632からのチェック信号の出力に応答して、刈り始め及び刈り終わりにおける単位収量を修正する。
【0034】
収量割り当て算定部631は、圃場の微小区画に単位収量を割り当てることで微小区画当たりの収量である微小区画収量を算定する。収量割り当て算定部631は、刈取り点から収量計測点までの穀粒搬送時間である遅れ時間を補正する遅れ補正機能と、穀稈刈取り位置(刈刃位置)とGPSユニット90のアンテナ位置である自車位置計測点との位置ずれを補正する位置ずれ補正機能とを有する。遅れ補正機能は予め実験的に求められた数値(遅れ時間)を用いる。
【0035】
図3において、座標位置(Xc,Yc)として示されている穀稈刈取り位置と、座標位置(X0,Y0)として示されている自車位置計測点(GPSアンテナ位置)との、圃場面上での距離は、圃場面(地球表面)が楕円体面であることを考慮すると、圃場面が平面として求められた距離に対して補正する必要がある。この実施形態による位置ずれ補正機能は、自車位置計測点の位置情報(緯度・経度情報)及びコンバインの設計寸法に基づくコンバインの刈取り点(刈刃位置)と自車位置計測点との位置関係だけでなく、上述した補正を考慮するアルゴリズムにより構築されている。このアルゴリズムを以下に説明する。
【0036】
地球上における点P1と点P2との距離Lは、ヒュベニの公式を用いると、
L
2 = ( M × △Y )
2 + ( N × cos AY × △X)
2
M:子午線曲率半径
N:卯酉線曲率半径
△Y:二点間の緯度差
△X:二点間の経度差
AY:二点間の緯度平均
で表される。
そして、ヒュベニの公式に基づいて、経線方向に沿った単位距離変位(1m)によって生じる緯度差△Y(=LAT_1M)、及び、緯線方向に沿った単位距離変位(1m)によって生じる経度差△X(=LON_1M)を求める。経線方向に沿った変位では経度差が生じず、緯線方向に沿った変位では緯度差が生じないことから、
LAT_1M = 1 / M ・・・(1)
LON_1M = 1 / (cos AY × N ) ・・・(2)
ここで、地球の形状として、世界測地系で使用するGRS80楕円体を採用すると、
長半径(赤道半径:m) = 6,378,137.000
短半径(極半径:m) = 6,335,439.327
M = 6,335,439.327 / ( 1 - 0.00669438 × sin
2 AY )
3/2 ・・・(3)
N = 6,378,137.000 / ( 1 - 0.00669438 × sin
2 AY )
1/2 ・・・(4)
である。
地球の大きさと比較して圃場における二点(自車位置計測点及び穀稈刈取り位置)が非常に近接していることに鑑みて、二点間の緯度平均AYを当該地点(自車位置計測点)の緯度値(LAT_A)と近似すると、上記(1)乃至(4)より、
LAT_1M = ( 1 - 0.00669438 × sin
2LAT_A )
3/2 / 6,335,439.327
LON_1M = ( 1 - 0.00669438 × sin
2LAT_A )
1/2 / ( cos LAT_A × 6,378,137.000 )
となって、LAT_1M及びLON_1Mの値が算出される。
次に、
図3に示すように、求めたい穀稈刈取り位置(Xc,Yc)が、自車位置計測点(X0,Y0)に対して機体直前方にA(m)離れた位置にあるとし、かつ、車体の進行方向が、北を基準としてとしてθ(rad)傾いているとすると、
Xc = X0 + LON_1M × A × cosθ
Yc = Y0 + LAT_1M × A × sinθ
となる。
このようなアルゴリズムによって、自車位置計測点(X0,Y0)は、正確な刈取り点の座標位置(Xc,Yc)に補正される。
【0037】
刈取りチェック部632は、収穫作業開始時における刈取部12の下降状態の検出信号を機器状態検出センサ群9から受け取って、刈り始めタイミングを示す第1チェック信号を出力する。さらに、刈取りチェック部632は、収穫作業終了時における刈取部12の上昇状態の検出信号を機器状態検出センサ群9から受け取って、刈り終わりタイミングを示す第2チェック信号を出力する。
【0038】
単位収量修正部633は、
図1を用いて説明されたような手法を採用している。この実施形態では、単位収量修正部633は、刈取りチェック部632が第1チェック信号を出力した直後に刈り取られた穀稈に基づく単位収量である刈り始め単位収量を、当該刈り始め単位収量の次に求められる単位収量で置き換える。つまり、刈り始め単位収量は、刈り始め単位収量の次に求められる単位収量と同じ値に修正される。さらに、単位収量修正部633は、刈取りチェック部632が第2チェック信号を出力した時に計測されている単位収量を刈り終わり単位収量と見なしてその計測を中断し、刈り終わり単位収量は、当該刈り終わり単位収量の前に計測された単位収量を流用する。つまり、刈り終わり単位収量は、当該刈り終わり単位収量の前に計測された単位収量と同じ値に修正される。
【0039】
食味算定部65は、食味測定ユニット4Aからの測定値から微小区画当たりの食味値(微小区画食味値)を算定する。
【0040】
分布データ生成部66は、微小区画収量から圃場の収量分布を表す収量分布データを生成する収量分布データ生成部661と、微小区画食味値から圃場の食味分布を表す食味分布データを生成する食味分布データ生成部662とを備えている。その際、各微小区画収量及び各微小区画食味値には、圃場を細分化して得られた各微小区画を同定するためのIDが付与される。さらに、収量分布データと食味分布データとは収穫分布データとして統合されて、収穫情報記録部67によって一旦メモリに記録される。記録された収穫分布データは、適時に読み出されて、運転部13のモニタ18に表示される。また、収穫分布データは通信回線を通じて遠隔地の管理センタ100に伝送される。
【0041】
ここで、収量測定装置3による収量測定の原理を説明する。
刈取り作業が始まっていない初期状態では、第1シャッタ33は開放姿勢となっている。刈取り作業が始まって、穀粒が穀粒タンク2に放出されるタイミングとなると、第1シャッタ33が閉鎖姿勢に切り替わって、収量測定容器30において穀粒の貯留が始まる。同時に時間算定部62による時間計測(計数信号の生成)がスタートする。収量測定容器30における穀粒貯留量が所定量に達すると、近接センサ35が作動し、適量検知信号が生じる。
【0042】
この適量検知信号の発生をトリガーとして、時間算定部62による時間計測がストップするとともに、第1シャッタ33が開放姿勢に切り替わる。時間算定部62による時間計測値(貯留時間)は、所定量の穀粒が収量測定容器30に貯留するまでの時間である。ここで、所定量をq、貯留時間をtとすれば、q/tで単位時間当たりの収量が得られる。さらに、貯留されている穀粒が収穫されている際の車速をvとすれば、q/(t*v)で単位走行距離当たりの収量(単位収量)が得られる。また、刈取部12の刈幅(収穫幅)をwとすれば、q/(t*v*w)で単位走行面積当たりの収量が得られるが、ここでは、この単位走行距離当たりの収量を単位収量と称する。これは、一般に単位走行距離当たりの収量は刈幅(収穫幅)で正規化されているからである。また、微小区画の一辺の幅も刈幅(収穫幅)の整数倍に規定されている。したがって、刈取り作業走行に沿って連続的に得られる単位走行収量を積算することで、微小区画収量が得られる。なお、升目状の微小区画の一辺が刈幅(収穫幅)で、他辺が単位走行距離であれば、微小区画収量は単位走行収量と一致する。
【0043】
第1シャッタ33と同様に、刈取り作業が始まっていない初期状態では、第2シャッタ43は開放姿勢となっている。刈取り作業が始まって、穀粒が穀粒タンク2に放出されるタイミングとなると、第2シャッタ43が閉鎖姿勢に切り替わって、食味測定容器40への穀粒の貯留が始まる。同時に時間算定部62による時間計測がスタートする。食味測定容器40での穀粒貯留量が所定量に達すると、近接センサ45が作動し、適量検知信号が生じる。
【0044】
この適量検知信号の発生をトリガーとして、食味測定ユニット4Aによる食味測定が開始される。穀粒に照射した光ビームの波長解析を通じて水分の値やタンパクの値を測定する。食味測定のために必要な測定時間は数秒から数十秒程度である。食味測定が終了すると、第2シャッタ43が開放姿勢に切り替えられ、食味測定容器40内の穀粒が食味測定容器40から穀粒タンク2の内部に放出される。食味測定容器40から穀粒が放出されると、食味算定部65からの指令に基づいて、第2シャッタ43が閉鎖姿勢に切り替わり、次の食味測定に移行する。
【0045】
微小区画の面積と上述した単位走行面積とが同一であれば、微小区画収量と単位収量とは同一となる。しかしながら、収量測定容器30の所定量(穀粒貯留量)は小さいので、収量分布データの基礎となる微小区画の面積は単位走行距離の面積より大きくなる場合が多い。その場合には、複数の連続して算定される単位収量を積算して微小区画収量を求めるとよい。上述した実施形態では、説明を簡単にするため、微小区画の面積と上述した単位走行面積とが同一であること、つまり微小区画収量と単位収量が同一であると見なして、説明している。
【0046】
次に、
図9のフローチャートを用いて、一条分の刈り始め及び刈り終わりでの単位収量の修正を含む、微小区画への収量割り当て処理の一例を説明する。
【0047】
刈取り作業の制御ルーチンがスタートすると、初期処理として、変数であるNに「0」が代入される(#02)。刈り始めを示す第1チェック信号が出力されているかどうかチェックされる(#04)。第1チェック信号が出力されていると、Nを1だけインクリメントし(#06)、上述した収量計測を開始する(#08)。さらにここで、刈り終わりを示す第2チェック信号が出力されるかどうかチェックされる(#10)。第2チェック信号が出力されていなければ、収量測定容器30に所定容積の穀粒が貯留したかどうかチェックされる(#12)。収量測定容器30に所定容積の穀粒がまだ貯留していないと(#12No分岐)、ステップ#10に戻る。収量測定容器30に所定容積の穀粒が貯留すると(#12Yes分岐)、収量計測を終了する(#14)。この収量計測で得られた貯留時間、コンバインの車速とから単位収量が今回の収量計測結果として算定される(#16)。得られた単位収量を割り当てるべき目標微小区間を自車位置情報とその補正演算とを参照して決定する(#18)。
【0048】
ここで、変数Nの値をチェックする(#20)。N=1なら(#20Yes分岐)、刈り始め時の収量計測結果なので、この単位収量を目標微小区間に割り当てることを保留して(#22)、次の収量計測(2回目の収量測定)を行うためにステップ#06にジャンプして、Nの値を「1」だけインクリメントする。2回目の収量測定が終了し、単位収量が算定され、その目標微小区画が決定すると、Nの値はインクリメントされているので、ステップ#20でNo分岐する。続いて、N=2かどうかチェックされ(#24)、N=2(2回目の収量測定)であれば(#24Yes分岐)、目標微小区間に単位収量を割り当てる(#26)。さらに、前回保留されていた微小区間にも当該単位収量を割り当て(#28)、次の収量計測を行うためにステップ#06にジャンプする。3回目以降の収量測定ならば、Nの値は3以上となっているので、ステップ#24でNo分岐し、目標微小区間に単位収量を割り当てる(#30)だけで、次の収量計測を行うためにステップ#06にジャンプする。
【0049】
なお、刈り終わりとなり、第2チェック信号が出力されると、ステップ#10のチェックでYes分岐して、その時点で実行されている収量計測は中止される(#40)。収量計測が中止されたので、収量計測結果である単位収量はゼロとなる。しかしながら、目標微小区間は決定され、この目標微小区間には、刈り終わり時の単位収量として、前回(第2チェック信号が出力される前)の単位収量が割り当てられ(#44)、このルーチンが終了する。
【0050】
〔別実施の形態〕
(1)上述したフローチャートで示した単位収量割り当て制御では、刈り始め時は、最初の単位収量を破棄して、2回目の単位収量で補完する修正がなされた。しかしながら、この修正に代えて、最初から複数回の単位収量を破棄して、その後の単位収量で各破棄された単位収量を補完する修正を採用してもよい。また補完に用いられる単位収量は、破棄された直後の1つの単位収量だけでなく、破棄された直後の複数の単位収量を平均した単位収量であってもよい。刈り終わり時においても、補完に用いられる単位収量は、中止された収量測定の直前に計測された単位収量だけでなく、それより前の複数の単位収量を平均した単位収量であってもよい。
(2)上述した実施形態では、分布データ生成部66は収量分布データだけでなく、食味分布データも取り扱っていたが、食味算定を行わないコンバインにおいては、もちろん分布データ生成部66は収量分布データだけを生成する。
(3)上述した実施形態では、分布データ生成部66は、コンバインに搭載されたECUの1つとして構築されていたが、少なくともその一部分は、コンバインから取り外し自在な携帯型パソコンなどのポータブル制御機器や運転者が携帯するスマートフォンなどの携帯通信端末にアプリケーションプログラムとして構築することも可能である。分布データ生成部66は、管理センタ100のコンピュータに構築することも可能である。
(4)上述した実施形態では、収量測定容器30及び食味測定容器40は、穀粒タンク2の前壁2aに取り付けられていたが、それ以外の側壁に取り付けてもよい。
(5)上述した実施形態では、収量測定容器30及び食味測定容器40は、矩形断面を有する筒状体で構成されていたが、その他の断面を有する筒状体であってもよい。
(6)上記実施形態では、収量測定容器30と食味測定容器40とへの穀粒の供給経路は、それぞれ異なっていたが、収量測定容器30及び食味測定容器40への穀粒の供給を共通化すること可能である。これにより、穀粒供給構造を簡単化することができる。
(7)上記実施形態では、コンバインとして普通型コンバインが取り扱われたが、もちろん、その他の形式のコンバイン、例えば、自脱型コンバインにも本発明は適用可能である。