特許第6509102号(P6509102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509102
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】硝子体手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
   A61F9/007 130H
   A61F9/007 130F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-244732(P2015-244732)
(22)【出願日】2015年12月16日
(65)【公開番号】特開2017-108860(P2017-108860A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2018年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】515349733
【氏名又は名称】株式会社日本未来医療研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】福井 準一
(72)【発明者】
【氏名】武蔵 国弘
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05047008(US,A)
【文献】 米国特許第04530356(US,A)
【文献】 特開2006−014905(JP,A)
【文献】 米国特許第03945375(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部の外周面に開口部を有する中空の外筒と、前記外筒内に配置された切断部材とを備え、前記開口部から前記外筒内に取り込まれた硝子体を前記切断部材により切断する硝子体手術器具であって、
前記外筒は、前記開口部の先端部に連接されて、先端側が先方に向けて滑らかに膨出する剥離部を有し、
前記開口部の開口面は、前記外筒の軸線に対して傾斜しており、
前記剥離部は、前記開口部の先方に配置されるすくい面を有する硝子体手術器具。
【請求項2】
前記すくい面は、前記外筒の軸線と直交する平面状に形成されている請求項に記載の硝子体手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硝子体手術器具に関し、より詳しくは、眼球内の硝子体を切除する機能を有する硝子体手術器具に関する。
【背景技術】
【0002】
硝子体を切除する器具として、例えば、特許文献1に開示された硝子体カッターが知られている。この硝子体カッターは、外筒部および内筒部の先端部にそれぞれ開口部が形成されており、内筒部を外筒部に対して回転させることにより、外筒部内に吸引した硝子体を切除するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−185427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、硝子体の手術においては、硝子体の切除と共に、網膜前面の増殖膜の剥離が必要になる場合がある。増殖膜の剥離には、従来から鉤針などが用いられているが、上記のような硝子体カッターと持ち替えて眼内に挿入する必要があるため、作業性が悪いという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、硝子体手術を安全に効率良く行うことができる硝子体手術器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る硝子体手術器具は、
先端部の外周面に開口部を有する中空の外筒と、前記外筒内に配置された切断部材とを備え、前記開口部から前記外筒内に取り込まれた硝子体を前記切断部材により切断する硝子体手術器具であって、
前記外筒は、前記開口部の先端部に連接されて、先端側が先方に向けて滑らかに膨出する剥離部を有し、
前記開口部の開口面は、前記外筒の軸線に対して傾斜しており、
前記剥離部は、前記開口部の先方に配置されるすくい面を有する。
【0007】
この硝子体手術器具において、前記開口部の開口面は、前記外筒の軸線に対して傾斜していることが好ましく、前記剥離部は、前記開口部の先方に配置されるすくい面を有することが好ましい。前記すくい面は、前記外筒の軸線と直交する平面状に形成されていることが好ましい。
【0008】
前記剥離部は、半球状に形成されていることが好ましい。
【0009】
前記切断部材は、前記外筒内に回転自在に設けられた螺旋状の部材であり、外縁に沿って形成されたエッジ部が前記開口部から露出して硝子体を切断するように構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、硝子体手術を安全に効率良く行うことができる硝子体手術器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る硝子体手術器具の斜視図である。
図2図1に示す硝子体手術器具の断面図である。
図3図2の要部拡大断面図である。
図4図2の要部端面図である。
図5図2の他の要部拡大断面図である。
図6図1に示す硝子体手術器具の使用方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る硝子体手術器具の斜視図である。図1に示すように、硝子体手術器具1は、直線状に延びる中空の外筒10と、外筒10の基端部に固定された本体20とを備えており、外筒10の内部には、後述する切断部材が設けられている。本体20は、軸方向の中央に括れ状に形成された把持部21を有しており、施術者が指先で把持部21を把持して作業を行うことができる。本体20の基端側には吸引部22が設けられており、施術時には吸引部22を真空ポンプ等の真空吸引源(図示せず)に接続して使用する。
【0013】
図2は、図1に示す硝子体手術器具の断面図である。また、図3は、図2に示す外筒10の先端部を拡大して示す断面図であり、図4は、外筒10の先端部の端面図である。図2および図3に示すように、外筒10の先端部外周面には、開口部11が形成されている。開口部11の開口面は、外筒10の軸線Lに対して傾斜しており、開口部11の先端部11aは、外筒10の先端を閉塞する剥離部12に連接されている。図3および図4に示すように、剥離部12は、外筒10の外径と略同径の半球状であり、先方に向けて膨出するように形成されている。剥離部12において、開口部11との連接部11aから開口部11の先方に突出する部分には、すくい面12aが形成されている。
【0014】
切断部材30は、軸体31の外周面に螺旋状に設けられており、硝子体を切断するためのエッジ部30aが外縁に形成されている。エッジ部30aは、先端側が開口部11から露出しており、切断部材30の回転により硝子体を切断する。切断部材30は、挿入される外筒10と略同じ軸方向長さを有しており、開口部11から外筒10内に取り込まれた硝子体を基端側に向けて搬送する搬送部材としても機能する。なお、切断部材30の先端とすくい面12aとの間には、増殖膜などの膜剥離に障害とならないように隙間が形成されている。
【0015】
図2に示すように、本体20は、切断部材30により搬送された硝子体を収容する収容室24と、収容室24の基端側に配置された回転室25とを備えている。収容室24と回転室25とは隔壁28により隔離されている。外筒10内で切断部材30を支持する軸体31は、基端側が収容室24を経て回転室25まで延びており、軸受27により回転自在に支持されている。回転室25には、軸体31に固定された羽根車26が配置されており、吸引部22および導入部23を介して外部と連通する。外筒10および軸体31の材料は特に限定されないが、撓みを生じ難い高剛性材料であることが好ましく、例えば、ジルコニア等のファインセラミックスや、タングステンカーバイド等の超硬合金、ステンレス等の金属材料を挙げることができる。
【0016】
吸引部22は、本体20の内部に配置されたチューブ状の吸引流路40の一端側に接続されている。吸引流路40の他端側は、収容室24に臨む外筒10の基端側近傍まで延びている。吸引流路40は、回転室25と多数の通気孔42を介して連通しており、吸引部22から真空吸引することにより、導入部23から外気が導入されて回転室25に気流が発生し、羽根車26が軸体31と共に回転する。
【0017】
図5は、図2に示す外筒10の基端部を拡大して示す断面図である。図2および図5に示すように、吸引流路40の先端には多数の通気孔41が形成されており、吸引部22から真空吸引することにより収容室24が負圧になり、外筒10の開口部11から硝子体などが吸引される。通気孔41は、気体は通過する一方で収容室24に搬送された硝子体は通過できないような大きさであることが好ましく、例えば通気膜などを使用することもできる。なお、本体20の把持部21には外部と連通する補助導入部21aが形成されており、施術時には補助導入部21aを指などで塞いで使用する。
【0018】
上記の構成を備える硝子体手術器具1は、吸引部22に接続した真空源を作動させることにより、外筒10の開口部11に吸引力が作用すると共に、切断部材30が回転する。したがって、外筒10の先端部を硝子体に押し当てることにより、硝子体が開口部11から外筒10の内部に引き込まれ、この状態で切断部材30が回転することにより硝子体が分断される。分断された硝子体は、開口部11から外筒10の内部に取り込まれ、切断部材30によって基端側に向けて搬送されて、収容室24に収容される。本実施形態の切断部材30は、エッジ部30aが外縁に沿って全体に形成されており、硝子体が外筒10の内部を搬送される間も外筒10の内周面とエッジ部30aとの隙間で硝子体を分断することができるので、硝子体を細分化して確実に搬送することができる。但し、エッジ部30aは、切断部材30が開口部11から露出する部分のみに形成することも可能である。
【0019】
本実施形態の切断部材30は、螺旋のピッチを一定にしているが、開口部11における硝子体の切断を容易にするため、先端側を挟ピッチにしてもよい。また、外筒10内の硝子体の搬送を容易にするために、切断部材30の基端側を広ピッチにすることも可能である。外筒10内での硝子体の詰まりを確実に防止するため、切断部材30は無軸であってもよく、軸体31を切断部材30の基端部に接続した構成にすることもできる。
【0020】
また、本実施形態の切断部材30は、開口部11から露出するエッジ部30aが開口部11の開口面から外部に突出しており、これによって硝子体を確実に切断できるように構成しているが、切断対象となる硝子体は、開口部11からの吸引によって外筒10内に引き込まれるため、開口部30aから露出するエッジ部30aが開口部11の開口面から突出しない構成であってもよい。
【0021】
本実施形態の硝子体手術器具1は、外筒10が、開口部11の先端部11aに連接されて、先端部が先方に向けて滑らかに膨出する剥離部12を備えているので、上述した硝子体の切除と共に、剥離部12を利用した膜剥離を行うことができる。すなわち、図6(a)に模式的に示すように、下地膜100の表面に付着した被剥離膜101の縁部に剥離部12の先端を係合させて、剥離部12の膨出面を下地膜100に押し当てながら外筒10を矢示方向に回動させることにより、図6(b)に示すように、被剥離膜101の縁部がすくい面12aに掬い取られて、被剥離膜101が下地膜から剥離される。
【0022】
このように、本実施形態の硝子体手術器具1は、硝子体の切除、および、網膜に付着した増殖膜の剥離の双方を行うことができるので、手術中に器具を持ち替えて眼内に抜き差しする必要がなく、作業を効率良く行うことができる。また、剥離部12は先端側が先方に向けて滑らかに膨出するように形成されているので、外筒10を網膜に押し当てて回動させる際に、網膜を損傷させることなく増殖膜をスムーズに剥離させることができ、手術を安全に行うことができる。剥離部12の膨出形状は、本実施形態では半球状としているが、滑らかに膨出する形状であれば特に限定されるものではなく、例えば、半楕円球状、半円板状、半楕円板状、砲弾状などを例示することができる。
【0023】
また、本実施形態のように、開口面が外筒10の軸線Lに対して傾斜する開口部11の先端部11aに連接するように剥離部12を設けることで、開口部11の軸線L方向の先方に、増殖膜を掬い取るためのすくい面12aを容易に形成することができる。このようなすくい面12aは、例えば、半球状の蓋部を有する外筒10に対して、この蓋部を切り残すように外筒10の外周面の一部を切り欠くことにより形成することができる。すくい面12aの形状は湾曲状であってもよいが、図3に示すように、外筒10の軸線Lと直交する平面状であることが好ましく、増殖膜の剥離を容易に行うことができる。
【0024】
また、切断部材30の構成や配置は本実施形態のものに限定されず、例えば、ギロチン式や回転式など従来公知の他の切断部材を使用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 硝子体手術器具
10 外筒
11 開口部
11a 先端部
12 剥離部
12a すくい面
20 本体
21 把持部
30 切断部材
30a エッジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6