特許第6509165号(P6509165)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6509165安定化階段関数オプシンタンパク質及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509165
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】安定化階段関数オプシンタンパク質及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/027 20060101AFI20190422BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20190422BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20190422BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   A01K67/027ZNA
   C12N15/09 Z
   C12Q1/02
   G01N33/15 Z
【請求項の数】13
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2016-171769(P2016-171769)
(22)【出願日】2016年9月2日
(62)【分割の表示】特願2013-537879(P2013-537879)の分割
【原出願日】2011年11月4日
(65)【公開番号】特開2017-46691(P2017-46691A)
(43)【公開日】2017年3月9日
【審査請求日】2016年9月30日
(31)【優先権主張番号】61/410,711
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/410,704
(32)【優先日】2010年11月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/511,905
(32)【優先日】2011年7月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ダイスロス,カール
(72)【発明者】
【氏名】イザハール,オフェル
(72)【発明者】
【氏名】フエノ,リーフ
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−217866(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/056970(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/131837(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/119782(WO,A1)
【文献】 LIN, J.Y.,EXP. PHYSIOL.,2010年 7月 9日,Vol.96, No.1,pp.19-25
【文献】 WANG, H. et al.,J. BIOL. CHEM.,2009年 2月27日,Vol.284, No.9,pp.5685-5696
【文献】 LIN JY et al.,Biophys. J.,2009年 3月 4日,Vol.96, No.5,pp.1803-1814
【文献】 KIANIANMOMENI A et al.,Plant Physiol.,2009年 9月,Vol.151, No.1,pp.347-366,Epub. 2009.7.29
【文献】 BERNDT ANDRE et al,BI-STABLE NEURAL STATE SWITCHES,NATURE NEUROSCIENCE,2009年,Vol. 12, No. 2,p. 229-234
【文献】 WANG H et al,PNAS,2007年 5月 8日,Vol. 104, No. 19,p. 8143-8148
【文献】 SIMMONS M A et al,NEUROSCIENCE,2008年,Vol. 156,p. 987-994
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/027
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行動障害に対する試験化学物質の影響を評価するためのシステムであって、
a)前頭前皮質のニューロンに、配列番号1〜4のいずれか一に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸配列C128とD156の両方に相当するアミノ酸残基にアミノ酸置換を含む光活性化陽イオンチャネルタンパク質を発現する非ヒト哺乳動物、ここで、前記タンパク質のC128がセリンに置換され、D156がアラニンに置換されており、前記タンパク質が、光によりニューロンに脱分極電流を誘導することができ、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化、及び、第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し、前記ニューロン中の前記脱分極電流が少なくとも10分間維持されるものであり、
b)前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質を活性化することによって、前記前頭前皮質ニューロンを刺激するための光送達システムであって、前記前頭前皮質ニューロンの前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質の活性化により、前記非ヒト哺乳動物における社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動の変化が誘導される、光送達システム、
c)前記非ヒト哺乳動物に試験化学物質を送達するための薬剤送達装置、および
d)前記の行動障害の症状をモニタリングして、行動障害に対する試験化学物質の影響を評価するためのモニタリングシステム
を含む、システム。
【請求項2】
前記非ヒト哺乳動物がマウスである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記非ヒト哺乳動物がラットである、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記モニタリングシステムが、哺乳動物における社会的行動、コミュニケーション、及び条件行動の一又は複数に対する試験化学物質の影響を評価するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記社会的行動が、社会的グルーミング、住居者−侵入者攻撃性、隔離により誘導される闘争、性行動、親行動、社会的認識、及び聴覚コミュニケーションからなる群から選択される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質が、配列番号1〜4のいずれか一に示すアミノ酸配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質が、配列番号1に示す配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ニューロンが、内側前頭前皮質の下辺縁又は前辺縁小領域中にある、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前頭前皮質の興奮性ニューロン又は抑制性ニューロンの脱分極を抑制する化学物質を同定するためのシステムであって、
a)配列番号1〜4のいずれか一に示すアミノ酸配列に少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸配列C128とD156の両方に相当するアミノ酸残基にアミノ酸置換を含む光活性化陽イオンチャネルタンパク質を前頭前皮質のニューロンの細胞膜上に発現する、前頭前皮質の一組のニューロン、ここで、前記タンパク質のC128がセリンに置換され、D156がアラニンに置換されており、前記タンパク質が、光によりニューロンに脱分極電流を誘導することができ、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化、及び、第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し、前記ニューロン中の前記脱分極電流が少なくとも10分間維持され、ニューロン中の前記アミノ酸配列で示されるタンパク質の活性化が、哺乳動物における社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動の変化を誘導するものであり、
b)前記一組のニューロンに試験化合物を提供する、薬剤送達装置、
c)前記ニューロンに光を送達して、前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質を活性化するための、光送達システム、および、
d)前記ニューロンの活動に対する前記試験化合物の影響を評価するための、モニタリング装置
を含む、システム。
【請求項10】
前記モニタリングシステムが、前記一組のニューロンに提供された薬剤に応答した前記一組のニューロンの活動を評価するためのモニタリング装置をさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記光送達システムが、光活性化パルスを含む、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質が、配列番号1〜4のいずれか一に示すアミノ酸配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含む、請求項に記載のシステム。
【請求項13】
前記光活性化陽イオンチャネルタンパク質が、配列番号1に示す配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含、請求項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連文献の相互参照
本願は、それぞれの開示全体を参照により本明細書に援用する2010年11月5日付で提出された米国仮特許出願第61/410,704号、2010年11月5日付で提出された米国仮特許出願第61/410,711号、及び2011年7月26日付で提出された米国仮特許出願第61/511,905号に優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本願は、原形質膜上に安定化階段関数オプシン(stabilized step function opsin:SSFO)タンパク質を発現する非ヒト動物細胞を含む組成物並びに非ヒト動物において前頭前皮質の超小型回路にあるニューロンを選択的に脱分極して1又は複数の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動に影響を与えるためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
光遺伝学は、生組織の標的細胞において、更には自由に行動している哺乳動物及びその他の動物内において、機能している無傷の生物学的システムとペースを合わせるのに必要な時間的精度(ミリ秒のタイムスケール)で特定のイベントを制御するために用いられる、遺伝学的方法と光学的方法の組合せである。光遺伝学の特徴は、特定の標的化メカニズムを用いて細胞型による区別を維持しつつ神経細胞膜電位の時間的に正確な操作を可能にする、標的神経細胞の原形質膜への速い光活性化チャネルタンパク質の導入である。神経系の機能を調べるために用いることができる微生物オプシンの中に、光に応答して脱分極を促進するために用いられるチャネルロドプシン(ChR2、ChR1、VChR1、及びSFO)がある。わずか数年で、光遺伝学分野では、インビボで神経回路等の生物学的組織の機能に特定の細胞型がどのように寄与するかについての基礎的な科学的理解が進んだ。更に、臨床の側でも、光遺伝学を用いた研究によりパーキンソン病並びに他の神経障害及び精神障害に関する洞察が得られた。
【0004】
しかし、これらの進歩にも関わらず、また、自閉症及び統合失調症で観察されるような複雑な行動表現型に関連する遺伝的要因に関する情報が急速に明らかになっている(非特許文献1及び2)にも関わらず、ほとんどの精神障害の神経生理学的基質はほとんど理解されていない。新たな注目すべき原則の1つは、一見関連しない非常に幅広い遺伝的異常から同じクラスの精神的表現型(例えば社会的行動機能障害;非特許文献3)が生じ得ることである。この驚くべきパターンから、共通する病態生理学的原則の下で多様な遺伝的要素を統合し得る単純化回路レベルでの洞察を特定する必要が示された。
【0005】
そのような回路レベルでの仮説の1つは、皮質細胞の興奮と抑制の割合(細胞E/Iバランス)の上昇が自閉症の社会的及び認知的障害を生じさせ得るというものである(非特許文献4及び5)。この仮説は、多くの自閉症関連遺伝子がイオンチャネル及びシナプスタンパク質の機能獲得型の表現型に関連付けられるという観察(非特許文献6)及び約30%の自閉症患者が臨床的に明確なてんかんも示すという観察(非特許文献7)を含む病態生理学的証拠の多様な流れを統合する可能性を有する。しかし、(疾患症状に関連するとされる)そのような不均衡が、慢性的(例えば発症中)に作用するのか、急性のタイムスケールで作用するのかは明らかになっていなかった。更に、この仮説は、直接試験できなかったこともあり、決して広く受け入れられていない。薬理学的及び電気的なインターベンションは、臨床的環境においてであれ、社会的又は認知的作業中の自由行動している最中の実験哺乳動物においてであれ、抑制性細胞よりも新皮質興奮性細胞の活性を(受容体調節と根本的に異なる様式で)選択的に選ぶ必要な特異性が欠如している。これはおそらく、自閉症及び統合失調症の社会的及び認知的障害が臨床で従来の精神薬理学治療にほとんど応答性でないことが証明されているといった課題に関係する。
【0006】
更に、現行の光遺伝学的方法はこの目的に不適切であり、チャネルロドプシンを用いて興奮性又は抑制性細胞で選択的に同期スパイク(coordinated spike)を発生させることには適しているが、新皮質錐体細胞のスパースコーディング及び非同期発火パターンにあまり適していない。更に、光ファイバー等の機器が連続的に存在することが、(例えば文脈条件付けにおいて)社会的行動及び認知手段に典型的な空間的に複雑な速い運動を伴うより長期間の行動試験の課題である。その代わり、双安定性階段関数オプシン(SFO)遺伝子産物を用いてある集団を別の集団より選択的に興奮させることにより、標的集団は同期されたスパイクで駆動されずにスパース且つ非同期的であり得る天然の入力に感作されるだけなので、これらの課題に部分的に取り組むことができる。SFOの使用は更に、SFOに特徴的な数桁大きい光感受性が、理論的に、脳に刺入(penetrate)しない光送達を可能にし得、光オフ後の双安定性SFOの持続的作用が機器フリーな行動試験を可能にし得るので、機器の課題に取り組む可能性を有する。しかし、公知のSFO(C128A、S、T、及びD156A)は複雑な行動試験に必要な長時間(many minutes)にわたって単一の光フラッシュ後に一定の光電流を生み出すのに十分なほど安定でない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Cichonet al., The American Journal of Psychiatry 166(5):540 (2009)
【非特許文献2】O'Donovan et al., Human Genetics 126(1): 3 (2009)
【非特許文献3】Folstein & Rosen-Sheidley, Nature Reviews 2(12):943 (2001)
【非特許文献4】Rubenstein, Current Opinion in Neurology 23(2): 118
【非特許文献5】Rubenstein & Merzenich, Genes, Brain, and Behavior 2(5):255 (2003)
【非特許文献6】Bourgeron, Current Opinion in Neurobiology 19 (2), 231 (2009)
【非特許文献7】Gillberg & Billstedt, Acta Psychiatrica Scandinavica, 102(5):321 (2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、自由行動マウスにおいてインビトロ及びインビボの両方で前頭前皮質中でE/Iバランス仮説を直接試験できるようにする光遺伝学的ツールが必要とされている。そのような光活性化タンパク質は、認知的及び社会的機能障害について関連する条件行動及び生得的行動の両方で前頭前皮質細胞E/Iバランスの双方向的調節の影響を研究することを可能にし得、また、それによる回路生理機能及び量的情報伝達への影響の探索を可能にし得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、原形質膜上に安定化階段関数オプシンタンパク質を発現する細胞を含む動物細胞、非ヒト動物、脳スライス、及びそれらを用いて前頭前皮質の超小型回路にあるニューロンを選択的に脱分極する方法を提供する。
【0010】
したがって、本発明は、動物の前頭前皮質のニューロン中で発現させた第1の光活性化陽イオンチャネルタンパク質を含む非ヒト動物であって、タンパク質が、光によりニューロンでの脱分極電流を誘導することができ、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様活性化及び第2の波長の光のパルスに応答した脱活性化を示し、ニューロンの脱分極電流が少なくとも約10分間維持され、前頭前皮質ニューロン中でのタンパク質の活性化により動物の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動の変化が誘導される、非ヒト動物に関する。
【0011】
いくつかの態様では、本発明は、前頭前皮質のニューロンを含む脳スライスであって、前頭前皮質のニューロン中で光活性化タンパク質が発現され、タンパク質が、光によりニューロン中の脱分極電流を誘導でき、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化及び第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し;ニューロン中の脱分極電流が少なくとも約10分間維持される、脳スライスに関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、非ヒト動物の前頭前皮質中の興奮性又は抑制性ニューロンの脱分極を抑制する化学物質を同定する方法であって、(a)動物の前頭前皮質のニューロンの細胞膜上で発現された第1の光活性化タンパク質陽イオンチャネルタンパク質を含む非ヒト動物の前頭前皮質中の興奮性又は抑制性ニューロンを脱分極するステップであって、タンパク質が、ニューロンに光が照射された時にニューロン中の脱分極電流を仲介することができ、タンパク質が、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化及び第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し;ニューロン中の脱分極電流が少なくとも約10分間維持され;タンパク質が、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、ChR2、ChR1、VChR1、又はVChR2のアミノ酸配列を含み;前頭前皮質ニューロン中のタンパク質の活性化が、動物の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動の変化を誘導する、ステップ;(b)光活性化タンパク質を含む興奮性ニューロンの選択的脱分極に応答した興奮性シナプス後電位(EPSP)又は抑制性シナプス後電流(IPSC)を測定するステップ;(c)興奮性又は抑制性ニューロンを化学物質と接触させるステップ;及び(d)興奮性シナプス後電位(EPSP)又は抑制性シナプス後電流(IPSC)を測定して、興奮性ニューロンを化学物質に接触させることでニューロンの脱分極が抑制されるかどうかを決定するステップを含む、方法に関する。
【0013】
別の態様では、本発明は、非ヒト動物において社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動を回復させる化学物質を同定する方法であって、(a)ニューロンの細胞膜上に発現させた光活性化タンパク質陽イオンチャネルタンパク質を含む非ヒト動物の前頭前皮質中の興奮性ニューロンを脱分極させるステップであって、タンパク質が、ニューロンに光が照射された時にニューロン中の脱分極電流を誘導でき、タンパク質が、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化及び第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し;ニューロン中の脱分極電流が少なくとも約10分間維持され;タンパク質が、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、ChR2、ChR1、VChR1、又はVChR2のアミノ酸配列を含み、興奮性ニューロンの脱分極が、非ヒト動物における1又は複数の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動を抑制する、ステップ;(c)非ヒト動物に化学物質を投与するステップ;及び(d)非ヒト動物への化学物質の投与が非ヒト動物における前記1又は複数の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動を回復させるかどうかを決定するステップを含む方法に関する。
【0014】
本開示は、本明細書に記載されるように、神経系障害(社会的機能障害に関連した障害等)の光学的制御に関する。本開示はこれらの文脈に必ずしも限定されないが、これら及び他の文脈を用いて例を説明することにより本開示の種々の態様が理解され得る。
【0015】
本開示の種々の実施形態は、神経回路の時間的、空間的、及び/又は細胞型による制御を測定可能な測定基準に関連付ける光遺伝学的システム又は方法に関する。例えば、種々の測定基準又は症状は、神経障害(例えば、社会的機能障害の種々の症状を示す神経障害)に関連し得る。光遺伝学的システムは、対象/患者内の神経回路を、その選択的制御のために、標的とする。光遺伝学的システムでは、神経障害に関連する測定基準又は症状について対象/患者をモニタリングする。このようにして、光遺伝学的システムは、神経回路、その機能、及び/又は神経障害についての詳細な情報を提供することができる。
【0016】
本明細書中に記載されている実施形態によれば、特定の実施形態は、障害の研究及び探索に関する。別の実施形態は、表現型及びエンドフェノタイプの同定及び/又は研究に関する。更に別の実施形態は、治療標的の同定に関する。
【0017】
本開示の態様は、速い時間的タイムスケールでの障害/疾患状態の人為的誘導に関する。これらの態様は、その他の点では健康な動物における疾患状態の研究を可能にする。これは、理解が不十分な疾患及び他の方法では生きた動物での正確なモデル化が困難な疾患に特に有用であり得る。例えば、疾患状態を示す利用可能な動物がないために疾患状態の試験及び/又は研究が困難なことがある。更に、特定の実施形態では、可逆的な疾患状態が可能であり、これは、試験のためのベースライン/対照ポイントの確立に並びに/又は疾患状態を示す時及び疾患状態を示さない時の同じ動物への治療の影響の試験に特に有用であり得る。種々の他の可能性が存在し、その一部を本明細書中で更に具体的に説明する。
【0018】
本開示の態様は、その他の点では健康な動物において疾患状態を研究するために人為的に誘導した障害/疾患状態を用いることに関する。これは、理解が不十分な及び他の方法では生きた動物での正確なモデル化が困難な疾患に特に有用であり得る。例えば、疾患状態を示す利用可能な動物がないために疾患状態の試験及び/又は研究が困難なことがある。更に、特定の実施形態では可逆的な疾患状態が可能であり、これは、試験のためのベースライン/対照ポイントの確立に並びに/又は疾患状態を示す時及び疾患状態を示さない時の同じ動物への治療の影響の試験に特に有用であり得る。
【0019】
本開示の特定の態様は、対象/患者の前頭前皮質中の標的神経回路中の興奮/抑制(E/I)バランスを改変する(例えば上昇又は低下させる)ことを含む方法に関する。例えば、E/Iバランスを、内因的電気活性に対する標的神経回路の応答性を残しつつ障害の症状が一時的に増強されるようなレベルに変化させる。E/Iバランス変化中に、対象/患者に刺激を与え、障害の症状をモニタリングする。対象は健康な試験動物又は障害のモデル動物であり得る。操作の結果、(その他の点では健康な動物において)疾患症状が一過的に再現されるか(神経障害のモデル動物において)症状が軽減される。より具体的な特定の実施形態では、症状のモニタリングは、障害の症状の緩和における刺激の有効性の評価も含む。種々のその他の可能性が存在し、その一部を本明細書中でより具体的に説明する。
【0020】
以下の説明及び添付の図面を考慮することで種々の実施形態の例をより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】十分に安定化されたSFOのキネティクス及び吸光特性を示す図である。(a)暗順応させた野生型ChR2、ChR2−C128S、ChR2−D156A、及びChR2−C128S/D156A(SSFO)の基準化された吸光スペクトル。(b〜d)450nmの光を30秒間照射した後に記録した吸収スペクトル。対応する吸収スペクトルから取った吸収差スペクトルを挿入図に示す。スペクトルは照射終了から記載の時間後に得た。二重変異体と対照的に、単一変異体では3分後に顕著な回復が見られた。(e)簡略化した光サイクルスキーム。C128/D156変異体では、P520からP480への遷移が遅くなるかブロックされて、470nm光で再活性化されない脱感作状態Des470が回避されると考えられる。(f〜h)3つの全変異体における、450nm光照射の前、最中、及び後に記載の波長で記録された単色光吸収変化を示す図であり、二重変異体の明確な安定性が際立っている。
図2-1】インビトロ及びインビボでの複数の細胞型における神経活性の安定な段階調節を示す図である。(a)ChR2(C128S/D156A)を発現する培養ニューロンで記録された活性化(左上)及び脱活性化(左下)スペクトル。灰色の水平バーは光パルスを示し、トレースの色は各光パルスで用いた光の波長を示す。ChR2(C128S/D156A)の活性化及び脱活性化の測定の要約スペクトル(右)を示す。(b)ChR2(C128S/D156A)(黒色;−t=29.3min)又はChR2(D156A)(灰色;−t=6.9min)を発現する細胞における光電流減衰の単一指数関数的あてはめ。(c)ChR2(C128S/D156A;「SSFO」)を発現する培養海馬ニューロンにおける光電流の代表的なホールセルパッチクランプ記録。バーは活性化及び脱活性化光パルスを示す。記録は、シナプス興奮性シナプス後電流(epsc)が入ってくる自然な状況で行った。(d)記載のパワー(左)の470nm光パルスに対する、SSFOを発現する培養ニューロンのホールセル光電流応答。パルス長は2s(灰色の水平バートレース)又は5s(黒色の水平バートレース)とした。点線は光パルスの終点を示す。活性化の時定数(T)を光パワーに対してlog−logプロットで示す(n=27記録(5細胞);中央)。光パワーに関わらず、細胞で指数曲線の一致値(Imaxの63%)まで光電流が達するための、各細胞に到達した入射フォトンの計算値は一定であった(右)。各点は、所定の光パワー(方法)での単一記録から得られたフォトン数を表す。
図2-2】(e)オプトロード記録形態。470nm及び561nmレーザーをファイバーカプラーを介して光ファイバーに接続した。タングステン電極を、光ファイバーに取り付け、ファイバー先端から400μm11m突出させ、脳の中へと進めた。(f)麻酔動物においてCaMKIIα−SSFOを用いた興奮性ニューロンの活性化は、注射部位内の神経活性を安定的に上昇させる。星印のついたトレース例を移動平均2sで計算した瞬間スパイク頻度ヒートマープの下にプロットする。各ヒートマップの線は表示した深さでの1回のスイープを表す(各部位で3スイープ)。470nm活性化パルス及び561nm脱活性化パルスをそれぞれ青色及び緑色のバーで示す。(g)PV::Cre/DIO−SSFOを用いたPV陽性介在ニューロンの活性化は、注射部位内の局所ネットワーク活性を抑制する。星印を付けたトレース例を瞬間スパイク頻度ヒートマップの下にプロットする。(h)CK−SSFO(四角)及びPV::Cre/DIO−SSFO(丸)動物における活性化前、活性化後、及び脱活性化後の刺激前と刺激後の活性化の有意な差を示すトレースの平均スパイク頻度(n=2マウス、>動物当たり5記録部位)。(i)SSFOの持続的活性を示す代表的な長さ10分間の記録。ニューロン1及びニューロン2として示される単離された単一ユニットの活性についての瞬間スパイク頻度ヒートマップを示す。図示されているユニットの波形を、対応するトレースの隣にプロットする。
図3-1】前頭前野E/Iバランスの上昇は行動障害を引き起こすが、低下は行動障害を引き起こさないことを示す図である。(a)mPFCに対照CaMKIIα−eYFP、CaMKIIα−SSFO、又はDIO−SSFOウイルスを注射され且つ光ファイバーコネクターを慢性的に植え込まれた野生型又はPV::Creトランスジェニックマウスに恐怖条件付け及び社会的探索試験を行った。(b)CaMKIIα−SSFO−eYFPウイルスを注射されたマウスから得られた共焦点画像は、前辺縁(PL)及び下辺縁(IL)皮質における発現を示している。(c)2s 470nm光パルスの90分後にc−fosを染色したPV::Cre/DIO−SSFO及びCaMKIIα−SSFOマウスの前頭前野スライスの代表的な画像;バー=25μm。グラフは、CaMKIIα−SSFO動物及びPV::Cre/DIO−SSFO動物のmPFC中の平均c−fos陽性細胞数を示す。(d)対照、CaMKIIα−SSFO、及びPV::Cre/DIO−SSFOマウスのホームケージにおける若い侵入者の社会的探索の要約データ。CaMKIIα−SSFOマウスは社会的探索の有意な減少を示した。(e)恐怖条件付けの前に2s 470nm光パルスを1回受けたマウスを、条件付け文脈又は条件付け聴覚手がかりに反応したフリージングについて翌日試験した;CaMKIIα−SSFOマウスでは、両方の条件付け刺激に対するフリージング反応が有意に損なわれいた。翌日、光学的刺激なしでマウスを再度条件付けし、24時間後にフリージングを評価した。光の非存在下では、全てのマウスが同様なフリージング行動を示した。(f)光活性化の前(試験1)及び後(試験)のCaMKIIα−SSFO(青色)及びCaMKIIα−EYFP(灰色)対照マウスでオープンフィールド探索は区別不能である。試験1(上)及び試験2(下)でのCaMKIIα−SSFO発現動物のトラック例を示す。(g)10分間の新規物体の探索は、CaMKIIα−SSFO発現マウス(黒色)及びCaMKIIα−EYFP発現マウス(灰色)で同様である。
図3-2】(h)PFC(上)又はV1(下)にCaMKIIα−SSFOを注射された野生型マウスの冠状切片の蛍光画像。(i)3チャンバー試験における社会的行動は、2s 470nm光パルス後に、PFC中にCaMKIIα−SSFOを発現するマウス(n=6)では損なわれているが、対照マウス(n=8)又はV1中にCaMKIIα−SSFOを発現するマウス(n=8)では損なわれていない。全ての棒グラフは平均値±s.e.m.を表す(p<0.05、**p<0.005、***p<0.0005)。(j)Cre依存性AAV5−EF1a−DIO−SSFO−EYFPウイルスを両側に注射されて抗パルブアルブミン抗体で染色されたPV::Creマウスから得られた40μm冠状脳スライスの高拡大共焦点画像。矢印は、膜結合EYFP標識により同定された二重標識PVニューロンを示す。矢頭は、検出可能なレベルのSSFO−EYFPを発現しなかったPV陽性ニューロンを示す
図3-3】(k)(j)に示した同じスライスの低倍率共焦点画像であり、mPFC中におけるDIO−SSFOウイルスの空間的に限定された発現を示している。(l)高拡大共焦点zスタックから計数した、全PV陽性細胞集団中及び全YFP陽性細胞集団中の二重標識細胞のパーセント(n=7スライス(4マウス);合計、617PV陽性細胞、191YFP陽性細胞、169二重標識細胞)。この数は、この系統中で約40%のPVニューロンがCreリコンビナーゼを発現し、ウイルスの形質導入効率が50%であることと一致する。PVの発現は全細胞で均一でないので、一部のPV陽性ニューロンが、検出されないレベルのPVを発現しているが、DIO−SSFO発現を活性化するのに十分なレベルのCreを含んでいる可能性がある。(m)CaMKIIα::SSFO−EYFPウイルスを片側に注射された動物(灰色;n=2マウス)及びCaMKIIα::EYFPウイルスを片側に注射された対照(薄い灰色;n=2マウス)の皮質及び皮質下領域中のc−fos免疫蛍光の定量化。同側(注射側)及び対側(非注射側)半球のデータを示す。エラーバーは平均値±s.e.m.を表す;p=0.044)。(n)2s 473nm光パルスを用いた活性化前及び活性化後の、mPFC中にCaMKIIa::EYFPを発現する対照マウスのオープンフィールド探索を示す代表的な2つのトレース。CaMKIIα::SSFO及びCaMKIIα::EYFP動物において、2s 473nm光パルス後に、歩行速度及びオープンフィールドの中央を探索する時間のいずれも変化しなかった(下;活性化前と比べて両方でp>0.1;対応のあるt検定)。このことはSSFO活性化が不安を惹起しないことを示している。
図4】錐体細胞中でのSSFO活性化によりネットワーク活性が増大し、主ニューロンを介した情報伝達が損なわれることを示す図である。(a)AAV5−CaMKIIα−SSFO−EYFPを注射されたマウスに由来する前頭前皮質スライス中の第2/3層のSSFO発現錐体ニューロンのホールセル記録。470nm光による活性化は、記録された細胞の脱分極を引き起こした。挿入図は、活性化前(1)、活性化後(2)、及び脱活性化後(3)の2s期間を拡大して比較している。(b)CaMKIIα::SSFO−EYFPを発現するスライスの非発現錐体ニューロン中のホールセル記録は、1s 470nm光パルス後のシナプス活性の増加(上)を示しており、これは興奮性シナプスブロッカーCNQX(10μM)及びAPV(25μM;下)により消失する。挿入図は、活性化前(1)、活性化後(2)、及び脱活性化後(3)の活性を拡大して比較している。(c)(DIO−SSFO−EYFPを発現する)PV::SSFOスライス中の代表的な錐体ニューロンの、スライス中のPV細胞中のベースライン及び5510活性化中(青色光パルスと黄色光パルスの間)の応答を示すサンプルトレース。挿入図は、活性化前(1)、活性化後(2)、及び脱活性化後(3)の3つの5s期間を比較している。(d)SSFOを用いた活性化後のPV細胞の活性。
図5-1】細胞E/Iバランスの上昇は細胞情報処理を損なわせるが細胞E/Iバランスの低下は細胞情報処理を損なわせないことを示す図である。(a)青色光活性化の前(上)及び後(下)における、同一の所定のsEPSCパターン導入に対する代表的CaMKIIα::SSFO−eYFP発現細胞の応答を示す代表的トレース。各トレースの静止膜電位を示す。(b)SSFO活性化後のより高いsEPSC頻度への応答の低下を示す、SSFOを発現する錐体ニューロンの入力−出力曲線(刺激前:黒色;刺激後:灰色;エラーバーはs.e.mを示す)。(c)1s 470nmパルス後の、SSFOを発現する6個の個々の錐体細胞における、伝達される相互(EPSC−スパイク)情報量の細胞毎の低下。平均MIを黒色で示す(平均値±s.e.m;p=0.0063、スチューデントのt検定;125msウィンドウ内で得られたスパイク頻度と導入sEPSC頻度の間の変異情報の低下)。(d)青色光活性化の前(上)及び後(下)における、DIO−SSFO−eYFPを発現するスライスの錐体ニューロンの、aと同一のsEPSC導入に対する応答を示す代表的トレース。各トレースの静止膜電位を示す。(e)PVニューロンにおけるSSFO活性化後のゲインの線形的減少を示す、PV::SSFOスライス中の錐体ニューロンの入力−出力曲線(刺激前:黒色;刺激後:青色;エラーバーはs.e.mを示す)。(f)スパイク抑制にも関わらず、PVニューロン中のDIO−SSFOの活性化を引き起こした1s 470nmパルス後に錐体細胞伝達情報が有意な減少を示さないことを示す細胞毎の要約データ。平均MIを黒色で示す。
図5-2】(g)相互情報量の計算に用いた時間ビン範囲全体にわたる、ベースライン対SSFO活性化条件での全細胞の平均相互情報量。これらの比較では、入力sEPSC頻度のビン幅を50Hzで一定に保持した。アスタリスクは、SSFO活性化条件における相互情報量の変化の有意性を示す。(h)CaMKIIα::SSFO又はPV::SSFOを発現するスライスの記録された細胞における相互情報量の平均変化(SSFO活性化−ベースライン)の比較。アスタリスクは、CaMKIIα::SSFO対PV::SSFOで相互情報量変化の大きさの差の有意性を示す。(i)(g)と同様であるが、入力sEPSC頻度ビンを変化させた。ここでは、時間ビンの幅を125msで一定に維持した。(j)(h)と同様であるが、入力sEPSC頻度ビンを変化させた。全ての棒グラフは平均値±s.e.mを表す(p<0.05;**p<0.01)。
図6-1】mPFC中の細胞E/Iバランス上昇が、自由行動している社会的障害マウスにおけるベースラインガンマリズム性(gamma rhythmicity)を駆動することを示す図である。(a)CaMKIIα::SSFO又はCaMKIIα::EYFPを注射された野生型マウスに、ウイルス注射時に小さな開頭部を通して非脳刺入性(non−brain penetrating)光ファイバーコネクターを植えた。(b)非脳刺入性光ファイバーコネクターを植えられたマウスのPL皮質中でのSSFO−eYFPのウイルス発現の代表的画像。(c)2s 470nm光パルスを用いた活性化の90分後の、対照(CaMKIIα::EYFP)マウス又はCaMKIIα::SSFOマウスのPFC中のc−fos陽性細胞数。(d)条件付けセッション直前に2s 470nm光パルスを受けた非脳刺入性植込みマウスにおいて評価したフリージング行動。条件付けセッション直後(直後)、24時間後(試験1)、及び光を送達しなかった2回目の恐怖条件付けの24時間後(試験2)のフリージングを測定した。(e)光活性化なし(試験1)又は2s 470nm光パルス後(試験2)の社会的探索を測定した。(f)マウスのM2及びPFCを覚醒行動中に記録するための、植え込み可能な慢性多点オプトロード(chronic multisite optrode:CMO)。矢頭は、ワイヤー終端部を示し、矢印は光ファイバーコネクターの切断端を示す。(g)電気分解破壊により、CaMKIIα::SSFOを発現するマウス中の記録を取った部位に目印を付ける。(h)CMO記録を行ったマウス3頭における、470nm光を用いた活性化の前(灰色、左、垂直バー)及び後(青色、右、垂直バー)の社会的探索(左)及び新規物体探索(右)(n=3マウス)。(i)活性化/脱活性化プロトコール中に同時に記録された2つのチャネルのマルチユニット活性。青色光及び黄色光を図示されているように送達した。有意なマルチユニット調節のあるチャネル(下)をスペクトル分析に選択した。(j)発現領域の外側のチャネル(灰色、左の垂直バー;n=3マウスの4チャネル)と比較した、発現領域内のチャネルのMUA頻度の平均増加(青色の垂直バー;n=3マウス中の4チャネル)。
図6-2】(k)非調節チャネルのLFPウェーブレットスペクトログラム。ベースライン、活性化期間、及び脱活性化期間のトレース例を示す。示されている3つの期間の平均ウェーブレットスペクトル(n=1マウスでの5試行)及び3つの周波数範囲のパワー変化の集団データ(挿入図;n=3マウス)を示す。(l)調節チャネルで得られたLFPウェーブレットスペクトログラム。ベースライン、活性化期間、及び脱活性化期間のトレース例を示す。示されている3つの期間の平均ウェーブレットスペクトル(n=1マウスでの5試行)及び集団データ(挿入図;n=3マウス)を示す。これはPFC錐体ニューロンにおけるSSFO活性化後のガンマリズム性の特異的増加を示している。全ての棒グラフは平均値±s.e.mを表す。(k)、(l)中のパワースペクトルは、5試行の平均であり、影の部分は全記録の標準偏差を示す(p<0.05;**p<0.005)。
図7】新規オープンフィールド行動試験における歩行行動を示す図である。(a)1s 473nm光を用いた活性化前(濃い灰色バー;2.5分)及び活性化後(薄い灰色バー;2.5分)の、mPFC中にCaMKIIα::SSFOを発現するマウスのオープンフィールド行動。トラック長、中央での時間%、及び周辺部での時間%を示す(n=3マウス)。2回目の2.5分の期間後に黄色光パルスを与えてSSFOを脱活性化した。(b)ウイルス発現mPFC領域中に配置された電極に起因すると決定されたチャネルからの、活性化前(黒色)、活性化後(濃い灰色)、及び脱活性化後(薄い灰色)に測定された平均パワースペクトル(n=3マウス、影の部分は全マウスのs.e.mを表す)。(c)SSFOの光活性化なし(灰色)及び活性化あり(薄い灰色)の試行における社会的行動試験中にiのチャネルから測定された平均パワースペクトル。(d)新規物体探索実験の(b)と同様の図である(n=3マウス、影の部分は全マウスのs.e.mを表す)。非調節チャネルは光活性化後にパワースペクトルの有意な変化を示さなかったことに留意されたい。
図8】高光密度下でのガンマ周波数のパワー増大を示す図である。(a)0mVで記録されたIPSC及び−60mVで記録されたEPSCの対応するスペクトルを用いた電位固定実験。(b)図示されている光パワー密度で560nm光の20sパルス中にmPFC錐体ニューロンで記録された、図示されている周波数ビン内でのシナプス活性のパワー変化。細胞を−60mV若しくは0mVに電位固定した時又は電流固定(CC)モードにおける、ベースライン(光前)期間と光オン期間とのパワーの差を示す。最も強力なガンマ調節が最も高い光パワー密度で見られ、0mV及びCC記録で最も強い。(c)(b)の3つの記録形態における3つの光パワーでの相対的ガンマパワー。
図9】PFC興奮性又は抑制性細胞の抑制を示す図である。(a)CaMKIlα::eNpHR3.0を両側に注射された野生型マウス、EF1α::D10−eNpHR3.0を両側に注射されたPV::Creマウス、及びCaMKIlα−EYFPを両側に注射された対照マウスをホームケージ中での社会的探索(a;全ての条件でn=6)及び3チャンバー社会性試験(b;それぞれn=3、5、及び6)について試験した。ホームケージ中での社会的行動は、これらの条件下で影響を受けず(a;対照と比べて両方のNpHR3.0群でp>0.5;対応のないt検定)、3つの群全てが3チャンバー社会性試験において同様な社会的選好を示し(b;対照と比べて両方のNpHR3.0群でp>0.5;対応のないt検定)、ソーシャルチャンバーを有意に選好した(b;p<0.05、対応のあるt検定)。発現の浸透性のため、これらの実験におけるPV細胞の抑制は大多数の抑制性ニューロン(更にはPVニューロン)の活性を変化させないと予想される。
図10】行動している哺乳動物における組合せ的光遺伝学、すなわち上昇E/Iバランスの社会的行動のレスキューを示す図である。(a)SSFO及びC1V1−E122T/E162T(C1V1)の作用スペクトル。垂直の線が実験に用いた刺激波長を示す。(b)実験デザイン及びパルスパターン;光制御なしをベースライン行動に用いた;2s 470nm光をSSFOの活性化に用いた(光パルス中のみC1V1を一過性に活性化);10Hz 470nmを用いてSSFO及びC1V1を共活性化した;10Hz 590nmはC1V1だけを活性化した。(c)CaMKIIα::SSFOを発現するマウスはベースラインで有意な社会的選好を示したが、2s 470nm活性化後又は10Hz 470nm活性化中に社会的機能障害を示した。(d)CaMKIIα::SSFO及び(DIO)PV::C1V1の両方を発現するマウスは、2s 470nmパルス後に社会的行動の障害を示したが、10Hz 470nm光刺激中に社会的行動の回復を示した。10Hz 590nmパルスを用いたC1V1だけの活性化は社会的行動を損なわせなかった。
図11】mPFC細胞E/Iバランスの組合せ光学的制御、すなわち制御実験を示す図である。図は、CaMKIIα::YFPマウスを用いる4つの異なる実験で用いた光刺激プロトコールを示す。4つの実験全てで、光刺激は、これらの対照マウスが新たな同種のマウスがいるチャンバー中で過ごす時間の有意な選好に影響を与えなかった(n=8)。
図12】本発明の種々の10の実施形態に一致する、疾患モデルを試験するためのフロー図である。
図13】本開示の実施形態に一致する、種々の神経系障害の治療を評価するためのモデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示は種々の改変及び変更された形態に適応するが、その具体例を図面中の例を用いて示し、詳細に説明する。しかし、記載されている特定の実施形態に本開示を限定することは意図されないと理解される。逆に、特許請求の範囲に定義される態様を含む本開示の範囲内に含まれる全ての改変例、均等物、及び変更例が包含されることが意図される。
【0023】
詳細な説明
本発明は、とりわけ、原形質膜上に安定化階段関数オプシンタンパク質を発現している細胞を含む動物細胞、非ヒト動物、及び脳スライス並びに安定化階段関数オプシンタンパク質を用いて前頭前皮質の同じ超小型回路中にある興奮性又は抑制性ニューロンを選択的に脱分極する方法を提供する。階段関数オプシン、すなわちSFOは、青色光に曝されることでニューロン中により長時間の安定な興奮性状態を誘導でき、且つその後、緑色光又は黄色光に曝して逆転させることができる、ChR2光活性化陽イオンチャネルタンパク質である。SFOは、標的集団の興奮性の双安定変化を実現するために開発され、より安定な状態調節のために野生型(wt)ChR2より最大4桁大きいタイムスケールで作動する(SFO:最大10〜100秒)。これらのオプシン遺伝子は、個々の活動電位を制御するように設計された従来のチャネルロドプシンを補完する新たな種類の光遺伝学的制御を提供するが、そのタイムスケールは依然として、長時間(many minutes)にわたりより長く複雑な哺乳動物の行動を評価するのに適していなかった。
【0024】
本発明者らは、その後の研究で、光サイクル及び開状態の期間を更に延長するためにC128プロトンネットワークパートナーD156を変異させ、初期のSFOのコンセプトを更に発展させた。この「安定化階段関数オプシン」(SSFO)タンパク質は、皮質E/Iの上昇を実験的に操作可能にする固有の生理化学的特性を有し皮質スライス中のガンマオシレーションのモニタリングを可能にする安定化階段関数オプシン(SSFO)として知られるこの新たなツールは、継続的な光活性化及び外部光ファイバーの取り付けなしに、更に如何なる光学的機器も脳に刺入せずに、長時間(many minutes)にわたる時間的に正確且つ複雑な行動実験に十分な期間にわたる安定な回路調節を可能にする。更に、フォトンインテグレーション(SSFOを発現するニューロンに極度の光感受性を付与する特性)現象により、これらのタンパク質を原形質膜上に発現する細胞は、低いμW/mm範囲の光パワー密度であり得る光パルスで、光源から脳組織中へ少なくとも3mmの深さで活性化することができる。これらの独特な光感受性階段関数オプシンタンパク質は、例えば非ヒト動物の前頭前皮質中にあるような、興奮性又は抑制性神経回路のいずれかで発現され得、次いで、特定の波長の光に応答して脱分極され得、そのようにして皮質E/Iバランスの実験的操作を可能にする。更に、本明細書に開示されている安定化階段関数オプシンタンパク質を発現する皮質の興奮性又は抑制性ニューロンを含む非ヒト動物から得られた脳スライスは、神経回路内にある興奮性又は抑制性ニューロンのいずれかの脱分極を選択的に抑制できる化学物質の探索に用いることができる。これらの皮質ニューロンは、統合失調症及び/又は自閉症スペクトラム等の神経障害に関連する社会的及び認知的行動障害の原因であり得るかこれに関連し得る。
【0025】
一般的技術
本発明の実施には、特に断りのない限り、当業者に周知の分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術を用いる。そのような技術は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, second edition (Sambrook et al., 1989)及びMolecular Cloning: A Laboratory Manual, third edition (Sambrook and Russel, 2001)(本明細書中では一緒に"Sambrook"と呼ぶ);Current Protocols in Molecular Biology (F.M. Ausubel et al., eds., 1987、2001年までの補遺を含む);PCR: The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al., eds., 1994);Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York;Harlow and Lane (1999) Using Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(本明細書中では一緒に"Harlow and Lane"と呼ぶ)、Beaucage et al. eds., Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry, John Wiley & Sons, Inc., New York, 2000)、Handbook of Experimental Immunology, 4th edition (D. M. Weir & C. C. Blackwell, eds., Blackwell Science Inc., 1987);及びGene Transfer Vectors for Mammalian Cells (J. M. Miller & M. P. Calos, eds., 1987))等の文献に十分に説明されている。
【0026】
定義
特に断りのない限り、本発明において単数形は複数の参照を含む。
【0027】
「動物」は、任意の一般的な研究室モデル生物等の脊椎動物又は哺乳動物であり得る。哺乳動物には、限定されるものではないが、ヒト及び非ヒト霊長類、家畜、競技動物、ペット、マウス、ラット、及びその他の齧歯類が含まれる。
【0028】
本発明において、「アミノ酸置換」又は「変異」とは、所定のアミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸成分が、そのアミノ酸配列によってコードされるタンパク質の細胞内での活性又は発現レベルが変化するように別のアミノ酸で変化又は置換されていることを意味する。
【0029】
本明細書中で与えられる全ての最大値の限定は、それより小さい全ての数値的限定を、そのようなより小さい数値的限定が本明細書中に明示されているのと同じように含むことが意図される。本明細書中で与えられる全ての最小値の限定は、全てのより大きな数値的限定を、そのようなより大きい数値的限定が本明細書中に明示されているのと同じように含む。本明細書中で与えられる全ての数値範囲は、そのようなより広い数値範囲内に含まれるそれより狭い全ての数値範囲を、そのようなより狭い数値範囲が全て本明細書中に明示されている場合と同じように含む。
【0030】
SSFOタンパク質及びそれを発現する細胞
以前に記載したSFOは、ChR2−C128の変異によって導入される、より遅いチャネル脱活性化キネティクスを利用しており、これは、チャネルロドプシン−2(ChR2)とバクテリオロドプシン(BR)との間の相同性に基づいて選択されたものであり、その中の同様な変異は光サイクルを中程度遅らせる。T90(ChR2−C128のBRホモログ)はBRのD115に水素結合しており、これら2つのアミノ酸は協調して働いてオールトランス型コンホメーションのレチナール発色団を安定化すると考えられ、ChR2−D156はBR D115のホモログである。C128及びD156が推定上の共有される水素結合だけでChR2の閉鎖を調節している場合、これら2残基の組合せ変異がいずれかの変異単独よりも有意に大きな影響をチャネルのキネティクスに与えるとは予測されない。しかし、予想と異なり、ChR2−C128S/D156A二重変異体を発現するニューロンは、いずれかの単一変異体のみを発現する細胞よりもはるかに安定な持続的光電流を生じた。
【0031】
いくつかの態様では、本発明は、置換又は変異されたアミノ酸配列を含むタンパク質を含み、変異タンパク質は、前駆体SFOタンパク質の特徴的な光活性化可能な性質を維持しているが、いくつかの特定の点において変化した特性も有し得る。例えば、本明細書に記載の変異体光活性化SFOタンパク質は、動物細胞内又は動物細胞原形質膜上の両方における上昇した発現レベル;第1の波長の光に応答した上昇した持続的光電流レベル;第2の波長の光に曝された時の、より速いがより不完全な脱活性化;及び/又は特色の組合せを示し得、これにより、SFOタンパク質は、動物細胞中での低い脱感作、速い脱活性化、及び/又は強力な発現という特性を有する。
【0032】
アミノ酸の置換又は変異を含む光活性化SFOタンパク質には、1又は複数のアミノ酸残基がアミノ酸置換されているが光に応答する能力及び原形質膜の分極状態を制御する能力を維持しているものが含まれる。例えば、アミノ酸の置換又は変異を含む光活性化タンパク質は、1又は複数のアミノ酸を配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4に相当するアミノ酸配列に置換することで作製することができる。いくつかの実施形態では、本発明は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、又は配列番号4のアミノ酸配列と比べて変更されたアミノ酸配列を含むタンパク質を含み、ここで、変更された光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、特徴的な光活性化性質並びに/又は配列番号1、配列番号2、配列番号3、若しくは配列番号4に示されるアミノ酸配列のタンパク質の原形質膜を横切るイオン流を調節する能力を保持しているが、いくつかの特定の点で異なる特性を有し得る。
【0033】
天然タンパク質配列中のアミノ酸置換は、保存的であってもよく、非保存的であってもよく、そのような置換されたアミノ酸残基は、遺伝暗号によってコードされるものであってもよく、そうでなくてもよい。標準的な20アミノ酸の「アルファベット」は、それらの側鎖の化学的性質に基づいて化学的ファミリーに分けられる。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族基を有する側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が化学的に類似した側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである(すなわち、塩基性側鎖を有するアミノ酸を塩基性側鎖を有する別のアミノ酸で置換)。「非保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が化学的に異なる側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである(すなわち、塩基性側鎖を有するアミノ酸を芳香族側鎖を有するアミノ酸で置換)。アミノ酸置換は、保存的であっても非保存的であってもよい。更に、アミノ酸置換は、SFOレチナール結合ポケット中、SFO細胞内ループドメインの1若しくは複数中、及び/又はレチナール結合ポケット若しくは細胞内ループドメインの両方の中に位置し得る。
【0034】
したがって、本発明は、タンパク質のレチナール結合ポケット中の重要な位置に特定のアミノ酸置換を有し得る光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質に関する。光感受性ポリペプチドのレチナール結合ポケットに関する情報については、その開示全体を参照により本明細書に援用するGreenhalgh et al., J. Biol. Chem., 268, 20305-20311 (1993)を参照されたい。いくつかの実施形態では、SFOタンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基C128に変異を有し得る。いくつかの実施形態では、SFOタンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基D156に変異を有し得る。別の実施形態では、SFOタンパク質は、配列番号1のアミノ酸残基C128及びD156の両方に変異を有し得る(SSFO)。いくつかの実施形態では、本開示の変異体安定化階段関数オプシンタンパク質のそれぞれは、動物細胞の膜を光に応答して脱分極させるために用いるための特定の特性及び性質を有し得る。
【0035】
したがって、一態様では、細胞に光が照射された時に細胞中で脱分極電流を仲介できる細胞原形質膜上で発現させた光活性化SSFOタンパク質が提供され、タンパク質は、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化及び第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し;細胞中の脱分極電流は最大約5、約10、約15、又は約20分間維持される。いくつかの実施形態では、タンパク質は、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基でアミノ酸置換を有する、ChR2、ChR1、VChR1、又はVChR2のアミノ酸配列を含む(例えば、複数の種のチャネルロドプシン陽イオンチャネル間でChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基の保存を図解している、参照により本明細書に援用する国際特許出願公開第2009/131837号の図1Bを参照されたい;その全体を参照により本明細書に援用するKianianmomeni et al., Plant Physiol., 2009, 151:347-356も参照されたい)。別の実施形態では、光活性化SSFOタンパク質は、シグナルペプチド配列を含まない配列番号1に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の実施形態では、光活性化SSFOタンパク質は、配列番号1に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の実施形態では、光活性化SSFOタンパク質は、配列番号2に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の実施形態では、光活性化SSFOタンパク質は、配列番号3に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み得る。別の実施形態では、光活性化SSFOタンパク質は、配列番号4に示す配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%同一のアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、SSFOタンパク質中のシグナルペプチド配列が、欠失されているか、異なるタンパク質のシグナルペプチド配列で置換されている。いくつかの実施形態では、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基における置換は保存的アミノ酸置換である。別の実施形態では、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基における置換は非保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、ChR2のアミノ酸配列のC128に相当するアミノ酸残基における置換はセリンへの置換である。別の実施形態では、ChR2のアミノ酸配列のD156に相当するアミノ酸残基における置換は非酸性アミノ酸への置換である。別の実施形態では、ChR2のアミノ酸配列のD156に相当するアミノ酸残基における置換はアラニンへの置換である。いくつかの実施形態では、タンパク質はC末端蛍光タンパク質を更に含んでよい。いくつかの具体的実施形態では、C末端蛍光タンパク質が、黄色蛍光タンパク質(EYFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、又は赤色蛍光タンパク質(RFP)で強化されていてよい。いくつかの実施形態では、第2の光活性化タンパク質は、細胞に光が照射された時に細胞中で過分極電流を仲介することができる。いくつかの実施形態では、第2の光活性化タンパク質は、それぞれの開示の全体を参照により本明細書に援用する国際出願第PCT/US2011/028893号並びに米国仮特許出願第61/410,736号及び同第61/410,744号に記載されているNpHR、eNpHR2.0、eNpHR3.0、eNpHR3.1、GtR3、又はC1V1キメラタンパク質であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、C1V1キメラタンパク質は、細胞膜上に発現した光活性化タンパク質を含み、タンパク質は、ボルボックス(Volvox carteri)のVChR1及びコナミドリムシ(Chlamydomonas reinhardti)のChR1に由来するキメラタンパク質であり、タンパク質は、ChR1の第1及び第2の膜貫通ヘリックスで置換された第1及び第2の膜貫通ヘリックスを少なくとも有するVChR1のアミノ酸配列を含み;光に応答性であり;且つ細胞に光が照射された時に細胞中の脱分極電流を仲介することができる。いくつかの実施形態では、タンパク質は、キメラ光応答性タンパク質の第2及び第3の膜貫通ヘリックスの間に位置する細胞内ループドメイン内に置換を更に含み、細胞内ループドメインの少なくとも一部がChR1の対応する部分で置換されている。別の実施形態では、C1V1キメラタンパク質の細胞内ループドメイン部分は、ChR1のアミノ酸残基A145に延びるChR1の対応する部分で置換されている。別の実施形態では、C1V1キメラタンパク質は、キメラ光応答性タンパク質の第3の膜貫通ヘリックス内に置換を更に含み、第3の膜貫通ヘリックスの少なくとも一部がChR1の対応する配列で置換されている。別の実施形態では、C1V1キメラタンパク質の細胞内ループドメインは、ChR1のアミノ酸残基W163まで延びるChR1の対応する部分で置換されている。
【0037】
本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質のいくつかの実施形態では、第1の波長の光は青色光であり得る。別の実施形態では、前記第1の波長の光は約445nmであり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は緑色光又は黄色光であり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は約590nmであり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は、約390〜400nm(両端含む)及びこの範囲内の全ての数であり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1ミリ秒(ms)、約2ms、約3ms、約4ms、約5ms、約6ms、約7ms、約8ms、約9ms、約10ms、約15ms、約20ms、約25ms、約30ms、約35ms、約40ms、約45ms、約50ms、約60ms、約70ms、約80ms、約90ms、約100ms、約200ms、約300ms、約400ms、約500ms、約600ms、約700ms、約800ms、約900ms、約1秒、約1.25秒、約1.5秒、又は約2秒(両端及びこれらの数値間の任意の時間を含む)のいずれかの期間であり得る光パルスによって活性化され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、光パワー密度が約1μWmm−2、約2μWmm−2、約3μWmm−2、約4μWmm−2、約5μWmm−2、約6μWmm−2、約7μWmm−2、約8μWmm−2、約9μWmm−2、約10μWmm−2、約11μWmm−2、約12μWmm−2、約13μWmm−2、約14μWmm−2、約15μWmm−2、約16μWmm−2、約17μWmm−2、約18μWmm−2、約19μWmm−2、又は約20μWmm−2(両端及びこれらの数値間の任意の値を含む)のいずれかであり得る光パルスによって活性化され得る。別の実施形態では、光活性化タンパク質は、光パワー密度が約1mWmm−2、約2mWmm−2、約3mWmm−2、約4mWmm−2、約5mWmm−2、約6mWmm−2、約7mWmm−2、約8mWmm−2、約9mWmm−2、約10mWmm−2、約11mWmm−2、約12mWmm−2、約13mWmm−2、約14mWmm−2、約15mWmm−2、約16mWmm−2、約17mWmm−2、約18mWmm−2、約19mWmm−2、約20mWmm−2、約21mWmm−2、約22mWmm−2、約23mWmm−2、約24mWmm−2、又は約25mWmm−2(両端及びこれらの数値間の任意の値を含む)のいずれかであり得る光パルスによって活性化され得る。
【0038】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は持続性の光電流を約20分間維持することができる。別の実施形態では、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は持続性の光電流を約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 27、28、29、又は30分(両端及びこれらの数値間の任意の時間を含む)のいずれかにわたり維持することができる。別の実施形態では、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質のいずれかの光サイクル進行は、前記第1の波長の光の単一パルスがタンパク質に照射された後に完全にブロックされる。
【0039】
本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質のいくつかの態様では、細胞は動物細胞であり得る。いくつかの実施形態では、動物細胞は、神経細胞、心臓細胞、又は幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、動物細胞は神経細胞であり得る。別の実施形態では、動物細胞は、脱分極された時に社会的行動に影響を与えるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は、脱分極された時に生得的な社会的行動及び/又は条件行動を変化させるニューロンである。別の実施形態では、動物細胞は、脱分極された時に自閉症及び/又は統合失調症における社会的及び認知的障害を生じさせるニューロンを含む。別の実施形態では、神経細胞は非ヒト動物の前頭前皮質中に位置する興奮性ニューロンであり得る。別の実施形態では、興奮性ニューロンは錐体ニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、神経細胞は非ヒト動物の前頭前皮質中に位置する抑制性ニューロンであり得る。更に別の実施形態では、抑制性ニューロンはパルブアルブミンニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、抑制性及び興奮性ニューロンは生きた非ヒト動物中であり得る。
【0040】
光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質のいくつかの態様では、細胞は非ヒト動物から得た生きた脳スライス中のニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、脳スライスは冠状脳スライスである。いくつかの実施形態では、脳スライスは非ヒト動物の前頭前皮質から得られたものである。別の実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に社会的行動に影響を与えるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に生得的な社会的行動及び/又は条件行動を変化させるニューロンを含む。別の実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に自閉症及び/又は統合失調症における社会的及び認知的障害を生じさせるニューロンを含む。
【0041】
いくつかの態様では、本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質は、哺乳動物細胞の原形質膜への輸送を強化する1又は複数のアミノ酸配列モチーフの付加により改変されていてよい。光活性化オプシンタンパク質は、進化的により単純な生物に由来するので、哺乳動物細胞で発現又は許容されないことがあり、あるいは哺乳動物細胞中で高レベルで発現された時に細胞内局在が損なわれていることがある。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質を、シグナルペプチド、小胞体(ER)搬出シグナル、膜輸送シグナル、及びN末端ゴルジ搬出シグナルからなる群から選択される1又は複数のアミノ酸配列モチーフに融合させてよい。哺乳動物細胞の原形質膜への光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質の輸送を強化する1又は複数のアミノ酸配列モチーフは、光活性化タンパク質のN末端、C末端、又はN及びC末端の両方に融合させることができる。必要に応じて、光活性化タンパク質及び1又は複数のアミノ酸配列モチーフはリンカーによって分離されていてもよい。いくつかの実施形態では、安定化階段関数オプシンタンパク質は、細胞原形質膜へのタンパク質の輸送を強化する輸送シグナル(ts)の付加によって改変されている。いくつかの実施形態では、輸送シグナルは、ヒトの内向き整流性カリウムチャネルKir2.1のアミノ酸配列に由来する。いくつかの実施形態では、輸送シグナルはアミノ酸配列KSRITSEGEYIPLDQIDINVを含む。別の実施形態では、光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、(例えば、原形質膜への輸送を強化する)シグナルペプチドの付加により改変されている。シグナルペプチドはコアアミノ酸配列のC末端に融合してもよく、コアアミノ酸配列のN末端に融合してもよい。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドはリンカーによってコアアミノ酸配列に連結している。リンカーは、長さ5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、400、又は500アミノ酸のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、シグナルペプチドはアミノ酸配列MDYGGALSAVGRELLFVTNPVVVNGSVLVPEDQCYCAGWIESRGTNGを含む。別の実施形態では、光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は小胞体(ER)搬出シグナルの付加によって改変されている。ER搬出シグナルは、コアアミノ酸配列のC末端に融合していてもよく、コアアミノ酸配列のN末端に融合していてもよい。いくつかの実施形態では、ER搬出シグナルはリンカーによってコアアミノ酸配列に連結している。リンカーは、長さ5、10、20、30、40、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、400、又は500アミノ酸のいずれかを含み得る。いくつかの実施形態では、ER搬出シグナルはアミノ酸配列FXYENE(Xは任意のアミノ酸であってよい)を含む。いくつかの実施形態では、ER搬出シグナルはアミノ酸配列VXXSL(Xは任意のアミノ酸であってよい)を含む。いくつかの実施形態では、ER搬出シグナルはアミノ酸配列FCYENEVを含む。
【0042】
動物細胞、非ヒト動物、及び脳スライス
本明細書に開示されている光活性化キメラタンパク質を含む細胞を提供する。いくつかの実施形態では、細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態では、動物細胞は配列番号1に相当するタンパク質を含む。別の実施形態では、動物細胞は、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む。一実施形態では、動物細胞は神経細胞であり得る。いくつかの実施形態では、動物細胞は非ヒト動物の前頭前皮質から得られたものである。別の実施形態では、動物細胞は、脱分極されたときに社会的行動に影響を与えるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は、脱分極された時に生得的な社会的行動及び/又は条件行動を変化させるニューロンである。別の実施形態では、動物細胞は、脱分極された時に自閉症及び/又は統合失調症における社会的及び認知的障害を生じさせるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は非ヒト動物の前頭前皮質に位置する興奮性ニューロンであり得る。別の実施形態では、興奮性ニューロンは錐体ニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、神経細胞は非ヒト動物の前頭前皮質に位置する抑制性ニューロンであり得る。更に別の実施形態では、抑制性ニューロンはパルブアルブミンニューロンであり得る。
【0043】
本発明は更に、本明細書に開示のタンパク質を含む非ヒト動物に関する。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は配列番号1に相当するタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、動物は本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は前記安定化階段関数オプシンタンパク質を遺伝子導入により発現している。別の実施形態では、本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、安定化階段関数オプシンタンパク質を運ぶベクター、限定されるものではないが例えばアデノウイルスベクター等、でウイルス的にトランスフェクトされている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、前記安定化階段関数オプシンタンパク質が光による活性化で脱分極された時に行動の変化を示す。別の実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、前記安定化階段関数オプシンタンパク質が光を用いた活性化により脱分極された時に生得的及び後天的な社会的行動の変化を示す。別の実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、前記安定化階段関数オプシンタンパク質が光を用いた活性化により脱分極された時に条件行動の変化を示す。
【0044】
本発明は、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む非ヒト動物から得られる生きた脳スライスに関する。いくつかの実施形態では、脳スライスは、本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質を遺伝子導入により発現する非ヒト動物から得られたものである。別の実施形態では、脳スライスは、前記安定化階段関数オプシンタンパク質を運ぶベクター、限定されるものではないがアデノウイルスベクター等、でウイルス的にトランスフェクトされた非ヒト動物から得られたものである。いくつかの実施形態では、脳スライスは冠状脳スライスである。いくつかの実施形態では、脳スライスは非ヒト動物の前頭前皮質から得られたものである。別の実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に社会的行動に影響を与えるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に生得的な社会的行動及び/又は条件行動を変化させるニューロンを含む。別の実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に自閉症及び/又は統合失調症における社会的及び認知的障害を生じさせるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、脳スライスの厚さは約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、又は約500μm(両端及びこれらの数値の間の任意の厚さを含む)のいずれかである。
【0045】
ポリヌクレオチド、プロモーター、及びベクター
本明細書は、階段関数オプシンタンパク質の少なくとも1つの活性を有する安定化階段関数オプシンタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。本開示は、少なくとも約10、例えば、少なくとも約15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、又は1000ヌクレオチドの領域にわたって配列番号2の核酸に少なくとも約70%、例えば、少なくとも約71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%;89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の、又は完全な(100%)配列同一性を有する核酸配列を含む、単離、合成、又は組換えポリヌクレオチドを提供する。
【0046】
本開示は特に、安定化階段関数オプシンタンパク質及び/又はその変異体バリアントをコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドを提供する。例えば、本開示は、配列番号1のアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。本開示は更に、配列番号2のアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。本開示は更に、配列番号3のアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。本開示は更に、配列番号4のアミノ酸配列に少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチド分子を提供する。
【0047】
本開示は更に、前述の核酸を含む発現カセット及び/又はベクターを提供する。好ましくは、本開示の安定化階段関数オプシンタンパク質をコードする核酸はプロモーターに作動可能に連結している。プロモーターは当該技術分野で周知である。宿主細胞中で機能するあらゆるプロモーターを、本開示のSSFO及び/又はその任意のバリアントの発現に用いることができる。特定の動物細胞中でSSFOタンパク質又はそのバリアントの発現を駆動するのに有用な開始調節領域又はプロモーターは多数あり、当業者に知られている。これらの核酸を駆動することができる実質的に全てのプロモーターが使用され得る。
【0048】
特に、興奮性神経細胞中で本明細書に記載のタンパク質等のSSFOタンパク質の組換え発現が望まれる場合、ヒトカルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIα(CaMKIIα)プロモーターが使用され得る。別の実施形態では、SSFOタンパク質の発現を抑制性ニューロンに標的化するために、Cre誘導組換えAAVベクターと組み合わせた伸長因子1a(EF−1a)プロモーターがパルブアルブミン−Creトランスジェニックマウスと共に用いられ得る。
【0049】
また、安定化階段関数オプシンタンパク質又はその任意のバリアントをコードする本開示のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。本発明に従って投与され得るベクターには更に、ベクターのポリヌクレオチドから転写された時に標的動物細胞の原形質膜上に光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質を蓄積させるRNA(例えばmRNA)をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが含まれる。使用され得るベクターとしては、限定されるものではないが、レンチウイルス、HSV、アデノウイルス、及びアンデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターが含まれる。レンチウイルスには、限定されるものではないが、HIV−1、HIV−2、SIV、FIV、及びEIAVが含まれる。レンチウイルスは、その他のウイルス、限定されるものではないが例えばVSV、狂犬病、Mo−MLV、バキュロウイルス、エボラ等、のエンベロープタンパク質でシュードタイプ化されていてよい。そのようなベクターは当該技術分野の標準的方法に従って調製され得る。
【0050】
いくつかの実施形態では、ベクターは組換えAAVベクターである。AAVベクターは、それらが感染する細胞のゲノム中に安定且つ部位特異的に組み込まれることができる比較的小サイズのDNAウイルスである。これらは、細胞の成長、形態、又は分化に対する影響を何ら誘導せずに幅広い細胞に感染することができ、ヒトの病態には関与しないと考えられる。AAVゲノムはクローニング、シークエンシング、及び特徴解析がなされている。これは約4700塩基を含み、各末端に約145塩基の逆方向末端反復(ITR)領域を含み、これがウイルスの複製起源として働く。ゲノムの残りは、キャプシド化機能を有する2つの必須領域、すなわちウイルス複製及びウイルス遺伝子の発現に関わるrep遺伝子を含むゲノムの左手側と、ウイルスのキャプシドタンパク質をコードするcap遺伝子を含むゲノムの右手側とに分けられる。
【0051】
AAVベクターは当該技術分野の標準的方法で調製され得る。任意の血清型のアデノ随伴ウイルスが好適である(例えば、その開示全体を参照により本明細書に援用する"Parvoviruses and Human Disease" J. R. Pattison, ed. (1988)のBlacklow, pp. 165-174;Rose, Comprehensive Virology 3:1, 1974; P. Tattersall "The Evolution of Parvovirus Taxonomy" in Parvoviruses (JR Kerr, SF Cotmore. ME Bloom, RM Linden, CR Parrish, Eds.) p5-14, Hudder Arnold, London, UK (2006);及びDE Bowles, JE Rabinowitz, RJ Samulski "The Genus Dependovirus" (JR Kerr, SF Cotmore. ME Bloom, RM Linden, CR Parrish, Eds.) p15-23, Hudder Arnold, London, UK (2006)参照)。ベクターの精製方法は、例えば、その開示全体を参照により本明細書に援用する米国特許第6566118号、同第6989264号、及び同第6995006号並びに「Methods for Generating High Titer Helper-free Preparation of Recombinant AAV Vectors」という発明の名称の国際公開第1999/011764号に見つけることができる。ハイブリッドベクターの調製は、例えばその開示全体を参照により本明細書に援用する国際出願第PCT/US2005/027091号に記載されている。インビトロ及びインビボで遺伝子を導入するためのAAVに由来するベクターの使用が説明されている(例えば、その全体を参照により本明細書に援用する国際公開第91/18088号及び同第93/09239号;米国特許第4,797,368号、同第6,596,535号、及び同第5,139,941号;及び欧州特許第0488528号参照)。これらの刊行物は、rep及び/又はcap遺伝子を欠失させて目的の遺伝子で置換した種々のAAV由来コンストラクト並びにインビトロで(培養細胞中に)又はインビボで(直接生物に)目的の遺伝子を導入するためのこれらのコンストラクトの使用を記載している。本発明に係る複製欠損組換えAAVは、2個のAAV逆方向末端反復(ITR)領域が隣接する目的の核酸配列を含むプラスミドとAAVキャプシド形成遺伝子(rep及びcap遺伝子)を有するプラスミドとを、ヒトヘルパーウイルス(例えばアデノウイルス)に感染したセルラインにコトランスフェクトすることで作製することができる。その後、作製されたAAV組換え体は標準的な技術を用いて精製される。
【0052】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で用いるためのベクターはキャプシド形成してウイルス粒子になっている(例えば、限定されるものではないが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAV13、AAV14、AAV15、及びAAV16を含むAAVウイルス粒子)。したがって、本発明は、本明細書に記載のベクターのいずれかを含む組換えウイルス粒子(組換えポリヌクレオチドを含むので組換え体)を含む。そのような粒子の作製方法は当該技術分野で公知であり、米国特許第6,596,535号に記載されている。
【0053】
本明細書に記載の動物細胞では、1又は複数のベクターが神経細胞、心臓細胞、又は幹細胞に投与され得ると理解される。2種以上のベクターを用いる場合、それらは動物細胞に同時又は異なる時間に投与され得ると理解される。
【0054】
本発明の方法
本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質を超小型回路中にある興奮性又は抑制性ニューロン中で発現させることによりこれらのニューロンを脱分極する方法を提供する。いくつかの態様では、光でタンパク質を活性化することによる本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質の使用方法を提供する。本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質は興奮性ニューロン又は抑制性ニューロン中で発現させることができる。別の実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質の使用方法は、生きた非ヒト動物中又は非ヒト動物から得た生きた脳スライス中であり得る。別の態様では、非ヒト動物の前頭前皮質中の興奮性ニューロンの脱分極を抑制する化学物質を同定する方法を提供する。別の態様では、非ヒト動物における生得的な社会的行動及び/又はコミュニケーションを回復させる化学物質を同定する方法を提供する。
【0055】
SSFOタンパク質の使用方法
第1の波長の光でタンパク質を活性化することを含む、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質の使用方法を提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、青色光であり得る第1の波長の光で活性化され得る。別の実施形態では、前記第1の波長の光は約445nmであり得る。
【0056】
本明細書に開示の組成物の使用方法の別の態様では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質は第2の波長の光で脱活性化され得る。いくつかの実施形態では、前記第2の波長の光は緑色光又は黄色光であり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は約590nmであり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は約390〜400nm(両端及びこの範囲内の全ての数値を含む)であり得る。
【0057】
本明細書中に提供される方法のいくつかの態様では、安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1ミリ秒(ms)、約2ms、約3ms、約4ms、約5ms、約6ms、約7ms、約8ms、約9ms、約10ms、約15ms、約20ms、約25ms、約30ms、約35ms、約40ms、約45ms、約50ms、約60ms、約70ms、約80ms、約90ms、約100ms、約200ms、約300ms、約400ms、約500ms、約600ms、約700ms、約800ms、約900ms、約1秒、約1.25秒、約1.5秒、又は約2秒(両端及びこれらの数値間の任意の時間を含む)のいずれかの期間であり得る光パルスによって活性化され得る。本明細書に提供される方法のいくつかの実施形態では、安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1μWmm−2、約2μWmm−2、約3μWmm−2、約4μWmm−2、約5μWmm−2、約6μWmm−2、約7μWmm−2、約8μWmm−2、約9μWmm−2、約10μWmm−2、約11μWmm−2、約12μWmm−2、約13μWmm−2、約14μWmm−2、約15μWmm−2、約16μWmm−2、約17μWmm−2、約18μWmm−2、約19μWmm−2、又は約20μWmm−2(両端及びこれらの数値間の任意の値を含む)のいずれかの光パワー密度であり得る光パルスによって活性化され得る。別の実施形態では、光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1mWmm−2、約2mWmm−2、約3mWmm−2、約4mWmm−2、約5mWmm−2、約6mWmm−2、約7mWmm−2、約8mWmm−2、約9mWmm−2、約10mWmm−2、約11mWmm−2、約12mWmm−2、約13mWmm−2、約14mWmm−2、約15mWmm−2、約16mWmm−2、約17mWmm−2、約18mWmm−2、約19mWmm−2、約20mWmm−2、約21mWmm−2、約22mWmm−2、約23mWmm−2、約24mWmm−2、又は約25mWmm−2(両端及びこれらの数値間の任意の値を含む)のいずれかの光パワー密度であり得る光パルスによって活性化され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、持続性光電流を約10分以上維持することができる。別の実施形態では、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、持続性電流を約10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26 27、28、29、又は30分間(両端及びこれらの数値間の任意の時間を含む)のいずれかにわたり維持することができる。別の実施形態では、本明細書中に提供される方法は、本明細書に記載の光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質に第1の波長の光の単一パルスが照射された後にこのタンパク質のいずれかの光サイクル進行を完全にブロックすることを含む。
【0059】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、動物細胞は神経細胞、心臓細胞、又は幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、動物細胞は神経細胞であり得る。別の実施形態では、神経細胞は非ヒト動物の前頭前皮質中に位置する興奮性ニューロンであり得る。別の実施形態では、興奮性ニューロンは錐体ニューロンであり得る。別の実施形態では、動物細胞は、脱分極された時に社会的行動に影響を与えるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は、脱分極された時に生得的な社会的行動及び/又は条件行動を変化させるニューロンである。別の実施形態では、動物細胞は、脱分極された時に自閉症及び/又は統合失調症における社会的及び認知的障害を生じさせるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は非ヒト動物の前頭前皮質中に位置する抑制性ニューロンであり得る。更に別の実施形態では、抑制性ニューロンはパルブアルブミンニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、抑制性及び興奮性ニューロンは生きた非ヒト動物中であり得る。別の実施形態では、抑制性及び興奮性ニューロンは、非ヒト動物から得られた脳スライス中であり得る。
【0060】
前頭前皮質中の興奮性又は抑制性ニューロンの脱分極を抑制する化学物質の同定方法
非ヒト動物の前頭前皮質中の興奮性又は抑制性ニューロンの脱分極を抑制する化学物質を同定する方法であって、(a)細胞に光が照射された時に細胞中の脱分極電流を仲介できる細胞膜上で発現させた光活性化タンパク質陽イオンチャネルを含む非ヒト動物の前頭前皮質中又は非ヒト動物から得られた生組織スライス中にある興奮性又は抑制性ニューロンを脱分極するステップであって、タンパク質が、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化及び第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し;細胞中の脱分極電流が最大約20分間維持され;タンパク質が、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、ChR2、ChR1、VChR1、又はVChR2のアミノ酸配列を含む、ステップ;(b)光活性化タンパク質を含む興奮性又は抑制性ニューロンの選択的脱分極に応答した興奮性シナプス後電位(EPSP)又は抑制性シナプス後電流(IPSC)を測定するステップ;(c)興奮性ニューロンを化学物質と接触させるステップ;及び(d)興奮性シナプス後電位(EPSP)又は抑制性シナプス後電流(IPSC)を測定して、興奮性ニューロンを化学物質と接触させることがニューロンの脱分極を抑制するかどうかを決定するステップ、を含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、タンパク質は、青色光であり得る第1の波長の光で活性化され得る。別の実施形態では、前記第1の波長の光は約445nmであり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は緑色光又は黄色光であり得る。別の実施形態では、前記第2の波長の光は約590nmであり得る。更に別の実施形態では、前記第2の波長の光は約390〜400nm(両端及びこの範囲内の全ての数値を含む)であり得る。いくつかの実施形態では、化学物質は、化学物質のコンビナトリアルライブラリーのメンバーであり得る。
【0061】
本明細書中に提供される方法のいくつかの態様では、光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1ミリ秒(ms)、約2ms、約3ms、約4ms、約5ms、約6ms、約7ms、約8ms、約9ms、約10ms、約15ms、約20ms、約25ms、約30ms、約35ms、約40ms、約45ms、約50ms、約60ms、約70ms、約80ms、約90ms、約100ms、約200ms、約300ms、約400ms、約500ms、約600ms、約700ms、約800ms、約900ms、約1秒、約1.25秒、約1.5秒、又は約2秒(両端及びこれらの数値間の全ての時間を含む)のいずれかの期間であり得る光パルスによって活性化され得る。本明細書中に提供される方法のいくつかの実施形態では、光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1μWmm−2、約2μWmm−2、約3μWmm−2、約4μWmm−2、約5μWmm−2、約6μWmm−2、約7μWmm−2、約8μWmm−2、約9μWmm−2、約10μWmm−2、約11μWmm−2、約12μWmm−2、約13μWmm−2、約14μWmm−2、約15μWmm−2、約16μWmm−2、約17μWmm−2、約18μWmm−2、約19μWmm−2、又は約20μWmm−2(両端及びこれらの数値間の任意の値を含む)のいずれかの光パワー密度であり得る光パルスによって活性化され得る。別の実施形態では、光活性化安定化階段関数オプシンタンパク質は、約1mWmm−2、約2mWmm−2、約3mWmm−2、約4mWmm−2、約5mWmm−2、約6mWmm−2、約7mWmm−2、約8mWmm−2、約9mWmm−2、約10mWmm−2、約11mWmm−2、約12mWmm−2、約13mWmm−2、約14mWmm−2、約15mWmm−2、約16mWmm−2、約17mWmm−2、約18mWmm−2、約19mWmm−2、約20mWmm−2、約21mWmm−2、約22mWmm−2、約23mWmm−2、約mWmm−2、又は約25mWmm−2(両端及びこれらの数値間の任意の値を含む)のいずれかの光パワー密度であり得る光パルスによって活性化され得る。
【0062】
本明細書に記載の方法のいくつかの態様では、動物細胞は神経細胞、心臓細胞、又は幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、動物細胞は神経細胞であり得る。別の実施形態では、神経細胞は、非ヒト動物の前頭前皮質中に位置する興奮性ニューロンであり得る。別の実施形態では、興奮性ニューロンは錐体ニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、神経細胞は、非ヒト動物の前頭前皮質中に位置する抑制性ニューロンであり得る。更に別の実施形態では、抑制性ニューロンはパルブアルブミンニューロンであり得る。いくつかの実施形態では、抑制性及び興奮性ニューロンは生きた非ヒト動物中にあり得る。別の実施形態では、抑制性及び興奮性ニューロンは、非ヒト動物から得られた脳スライス中にあり得る。別の実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に社会的行動に影響を与えるニューロンを含む。いくつかの実施形態では、神経細胞は、脱分極された時に生得的な社会的行動及び/又は条件行動を変化させるニューロンである。
【0063】
別の実施形態では、脳スライスは、脱分極された時に自閉症及び/又は統合失調症における社会的及び認知的障害を生じさせるニューロンを含む。
【0064】
非ヒト動物における生得的な社会的行動及び/又はコミュニケーションを回復させる化学物質の同定方法
非ヒト動物における1又は複数の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動を回復させる化学物質の同定方法であって、(a)細胞に光が照射された時に細胞中の脱分極電流を仲介できる細胞膜上で発現させた光活性化タンパク質陽イオンチャネルを含む非ヒト動物の前頭前皮質中の興奮性ニューロンを脱分極させるステップであって、タンパク質が、第1の波長の光の単一パルスに応答した急速な階段様の活性化及び第2の波長の光パルスに応答した脱活性化を示し;細胞中の脱分極電流が最大約20分間維持され;タンパク質が、ChR2のアミノ酸配列のC128及びD156に相当するアミノ酸残基にアミノ酸置換を有する、ChR2、ChR1、VChR1、又はVChR2のアミノ酸配列を含み、興奮性ニューロンの脱分極が、非ヒト動物における1又は複数の1又は複数の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動を抑制する、ステップ;(b)非ヒト動物に化学物質を投与するステップ;及び(c)非ヒト動物への化学物質の投与が非ヒト動物における前記1又は複数の社会的行動、コミュニケーション、及び/又は条件行動を回復させるかどうかを決定するステップ、を含む方法を提供する。いくつかの態様では、社会的行動は生得的な社会的行動であり、以下からなる群から選択される:社会的グルーミング、住居者−侵入者攻撃性、隔離により誘導される闘争行動、性行為、親行動、社会的認識、及び聴覚コミュニケーション。マウス及び他の実験動物の生得的社会的行動試験に関する情報は、その開示全体を参照により本明細書に援用するCrawley, Social Behavior Tests for Mice, Laboratory of Behavioral Neuroscience, National Institute of Mental Health, (Bethesda, MD; 2007)に記載されている。別の実施形態では、行動は条件行動、例えば限定されるものではないが条件付けされた恐怖反応である。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、ステップ(b)から(c)の最中、如何なる機器によっても束縛されない。いくつかの実施形態では、機器は、光ファイバーケーブルに接続された光源である。別の実施形態では、非ヒト動物は、前記第1の波長の光の単一パルスに応答して安定化階段関数オプシンタンパク質が活性化された直後に機器から離される。いくつかの実施形態では、動物細胞は生物組織の表面に位置する。いくつかの実施形態では、組織は神経組織又は脳組織である。いくつかの実施形態では、化学物質は、化学物質コンビナトリアルライブラリーのメンバーであり得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書中で提供される方法の非ヒト動物は、配列番号1に相当するタンパク質を含む。別の実施形態では、動物は、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、前記安定化階段関数オプシンタンパク質を遺伝子導入により発現している。別の実施形態では、本明細書に記載の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、安定化階段関数オプシンタンパク質を有するベクターでウイルス的にトランスフェクトされている。そのようなベクターとしてはアデノウイルスベクター又はアンデノ随伴ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、光を用いた活性化によって前記安定化階段関数オプシンタンパク質が脱分極された時に行動の変化を示す。別の実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質を含む動物は、光を用いた活性化によって前記安定化階段関数オプシンタンパク質が脱分極された時に、生得的及び後天的な社会的行動の変化を示す。別の実施形態では、本明細書に開示の安定化階段関数オプシンタンパク質動物を含む動物は、光を用いた活性化によって前記安定化階段関数オプシンタンパク質が脱分極された時に、条件行動の変化を示す。
【0066】
例示的実施形態
本開示は、神経系障害の光学的制御に有用であると考えられる。本発明の具体的な応用は、神経回路の時間的、空間的、及び/又は細胞型による制御を測定可能な測定基準に関連付ける光遺伝学的システム又は方法に関する。本明細書に開示する例示的な実施形態の多くの態様はこの分野のこれまでの進展に関係し且つ大いにその上に構築されているので、その開示全体を参照により本明細書に援用するYizhar et ah, Nature, 2011, 477(7363):171-8に記載されているものを含む実施の詳細及び改変例を導き得る基礎及び根底にある教示の確固とした理解のために、以下にそのような進展を要約する。以下の説明はこのような流れで提供するものであり、参照文献中の教示を参照により本明細書に援用する。本発明はそのような応用例に必ずしも限定されないが、この文脈を用いて種々の例を説明することで本発明の種々の態様が理解され得る。
【0067】
本開示の種々の実施形態は、神経回路の時間的制御を測定可能な測定基準に関連付ける光遺伝学的システム又は方法に関する。例えば、種々の測定基準又は症状は、社会的機能障害の種々の症状を示す神経障害に関連し得る。光遺伝学的システムは、その選択的制御のために対象/患者内の神経回路を標的とする。光遺伝学的システムでは、神経障害に関連する測定基準又は症状について対象/患者をモニタリングする。このようにして、光遺伝学的システムは、神経回路、その機能、及び/又は神経障害についての詳細な情報を提供することができる。
【0068】
図12は、本開示の種々の実施形態に一致する、疾患モデルを試験するためのフロー図を示す図である。102で、1又は複数の疾患モデルが特定又は選択される。疾患モデルは、1又は複数の中枢神経系(CNS)障害のためのものであり得る。モデルには、患者の種々の障害、疾患、又は一般的特徴(例えば、気分、記憶、歩行運動、又は社会的行動)さえも含まれ得る。104で、1又は複数のCNS標的を特定する。本発明において、CNS標的には、評価、試験等の疾患モデルに関連することの一部として与えられる刺激の特性が含まれる。標的の非限定的な例は、空間的標的、細胞型標的、時間的標的、及びこれらの組合せであり得る。
【0069】
次いで、標的の特性106〜118を用いて、光遺伝学的ツールキット120から特定のオプシンを選択することができる。光遺伝学的ツールキット120は、特性106〜118の1又は複数に合わせて調整することができる種々の異なるオプシンを含む。オプシンの種々の非限定的な例が本明細書中に記載されている。選択されたオプシン122は、CNS標的及び/又は刺激特性に最も近くマッチするオプシンであり得る。例えば、所望の標的は、より長期間にわたる脳の一部内における興奮/抑制(E/I)バランスの改変であり得る。本明細書に記載されるように、オプシンC1V1(本明細書中でより詳細に説明)及びそのバリアントが選択され得る。その後、選択されたオプシンを標的CNS部位/細胞型で発現させる124。次いで、疾患モジュールを、例えば発現させたオプシンの光学的刺激を介して、試験する126。
【0070】
本開示の実施形態は、新皮質超小型回路内の細胞興奮/抑制(E/I)バランスの制御に関する。そのようなE/Iバランス制御は、興奮の増加に関連する社会的及び認知的障害(例えば、自閉症及び統合失調症)のモデル化及び/又は治療に特に有用であり得る。
【0071】
本開示の実施形態は、特異的な空間的及び時間的制御を用いて細胞E/Iバランスの上昇を誘導する機構を提供するためのオプシンの使用に関する。これには、1又は複数の重度の精神神経疾患に関連する興奮性ニューロン中での光感受性オプシンの発現が含まれ得る。
【0072】
種々の実施形態が、自由に行動している哺乳動物におけるE/Iバランスを制御するツール及び方法に関し、これは、根底にある回路生理学的機構の探索に特に有用であり得る。本開示の特定の態様は、選択的空間的制御を用いて抑制性ニューロンの興奮性と比べて興奮性ニューロンの興奮性を増加させることに関する。これは、内因性の刺激への興奮性ニューロンの感受性を高めることで自然の発火パターンを保存するのに特に有用であり得る。いくつかの実施形態では、この興奮は可逆的である。
【0073】
特定の実施形態は、光学的に制御可能なイオンチャネルの使用に関する。イオンチャネルは、ニューロン中で発現された時に、内因的刺激へのニューロンの感受性を増大させて、増大した感受性をより長期間維持するように設計されている。本開示の実施形態は、単一の光フラッシュ後に長時間(many minutes)わたって一定の光電流を生成するのに十分な安定性を有するSSFO(安定化階段関数オプシン)及び複雑な行動試験のためのその使用に関する。特定の実施態様では、増大した感受性が光学的刺激を加えた後に長時間(many minutes)維持され得る。
【0074】
種々の実施形態は、自由に行動しているマウスにおける特定の社会的相互作用及び認知行動の障害を、標的化したE/Iバランス上昇によって誘導することができるという発見に関連する治療、モデル化、及び他の態様に関する。
【0075】
別の実施形態は、局所回路活性への大きな影響にも関わらず、同じ興奮性効果を抑制性ニューロンに選択的に与えた時にそのような行動的影響が見られないという発見に関連する治療、モデル化、及び他の態様に関する。
【0076】
本開示の更に別の実施形態は、行動的に影響するE/Iバランスインターベンションの回路レベルでの主な影響が、超小型回路の情報伝達の量的減少と同時の、自閉症及び統合失調症のベースラインで見られるガンマ波の増強に類似したベースラインガンマ帯(およそ40〜60Hz)反復性シナプス興奮の特異的増強であるという発見に関連する治療、モデル化、及び他の態様に関する。
【0077】
本開示の実施形態は、皮質スライスにおいてE/Iを上昇させてガンマオシレーションをモニタリングするためのオプシンの使用に関する。特定の実施形態は、1)用量反応試験を可能にする強い作用強度と、2)E/Iバランスを階段様に変化させることを可能にする低い脱感作と、3)同じ標本内の異なる集団を別々に操作することを可能にするレッドシフトした興奮とを備えた、皮質スライスにおけるE/Iの上昇及びガンマオシレーションのモニタリングに特に有用であり得るC1V1(本明細書中により詳細に記載)及びそのバリアントの使用に関する。
【0078】
本開示の実施形態は、上昇(又は低下)した細胞E/Iバランスの制御に関する。これは、自閉症、統合失調症等の神経障害における薬物療法に不応答性の社会的及び認知的障害に関連する研究、試験、及び治療に特に有用であり得る。特定の態様は、関係する神経回路の機能に関して、E/I異常の即時的影響と比べた回路の発達及び成熟への長期間の影響を研究及び識別することに関する。別の態様は、種々の疾患モデル及び患者(ヒト等)で観察される認知障害の中心的要素としての上昇した細胞E/Iバランスの確認に関する。特定の実施形態は、哺乳動物脳(例えば前頭前皮質)中で細胞E/Iバランス上昇仮説及び特定された回路生理学的発現を試験するのに十分な時間的調節(timing)及び特異性を提供する。
【0079】
特定の態様は、時間的に正確で複雑な行動実験に十分な期間安定な回路調節を提供するのに特に有用であり得る二重変異体SSFO(本明細書中により詳細に記載)の使用に関する。例えば、調節及び行動実験回路調節は、継続的光活性化なし、外部光ファイバー取付けなし、且つ/又は光学的機器の脳への刺入なし(例えば、完全に脳の外部にある光送達装置を用いる)で数分間に及び得る。特定の実施態様では、低光強度(例えば、低いgm/mm)での細胞の活性化を容易化できるフォトンインテグレーションの性質を利用する。この活性化は、脳組織中への光の比較的深い透過(例えば、光源から3mm以上)で起こり得る。興奮性ニューロン中でのSSFO活性化(抑制性ニューロン中ではない)を用いて、社会的及び認知的機能の重度且つ可逆的な障害を作り出すことができる。特定の実施態様では、この障害は、運動異常又は恐怖/不安行動の変化を(あったとしても)ほとんど伴わずに作り出すことができる。
【0080】
本開示の実施形態は更に、回路特性の変化をインビトロで探索するためのSSFOの使用に関する。例えば、E/Iバランスを上昇させて錐体ニューロンの伝達機能を測定するためにSSFOを用いることができる。実験結果は、そのような上昇が、E/Iバランスの低下の結果とは対照的に、低い興奮性シナプス後電流(EPSC)頻度で錐体ニューロンの伝達機能を飽和させ、皮質回路内の情報伝達を損なわせることを示唆している。
【0081】
これら及び他の態様は、例えばE/Iバランスの上昇に関連する自閉症のような薬物療法に不応答性の障害及び脳が過興奮性になっていて情報処理能力が損なわれていると考えられる状況における症候及び治療の課題への取組みに特に有用であり得る。
【0082】
実験的実施形態と一致して、C1V1−E162Tを発現する(本明細書中により詳細に記載)及び発現しない錐体細胞(PYR細胞)の間で、光によって誘発される活性を比較した。C1V1−E162Tを発現するPYR細胞は2msの561nm光パルスに応答してスパイク生成し、一方、同じ刺激パラダイムは、同じスライス内の非発現細胞において興奮性シナプス後電位(EPSP)を確かに惹起した。
【0083】
本開示の特定の実施形態は、1つの神経集団を他の神経集団よりも選択的に興奮させるためのSSFO遺伝子産物の使用に関する。この標的集団の選択は、SSFOが標的集団への内因的興奮入力を無効にしないように設計され得る。そのようにすることで、標的集団は、オプシンによって直接生じた同期スパイクによって駆動されず、むしろ、標的集団は、スパース且つ非同期であり得る自然の入力への感度上昇を示す。
【0084】
本開示の実施形態は、種々の機器に関する問題に取り組むためのSFOの使用に関する。例えば、光感受性の有意な増加(例えば数桁大きい)は、代替的な光送達機構の利用及び機器フリーな行動試験を容易にし得る。
【0085】
本開示の特定の実施形態の態様は、光依存性チャネルの特定の部分の同定及び改変に関する。これらの改変は、チャネルの主要部分の特定を含む。チャネルは、チャネルの三次構造の高解像度イメージングを用いて特定することができる。あるいは、同様なチャネルの構造に関する知識を用いることができる。特定の実験的実施態様及び方法論を以下に詳細に説明する。本開示は、如何なる1つの実施態様にも限定されず、本明細書中の教示に一致する種々の位置における複数の様々な分子的改変の実施が可能である。
【0086】
本開示の具体的態様は、インタクトな哺乳動物脳内の特定の細胞型において光パルス列をミリ秒のタイムスケールの膜電位変化に変換することを可能にする、神経科学に適応させた微生物オプシン遺伝子に関する(例えば、チャネルロドプシン(ChR2)、ボルボックスチャネルロドプシン(VChR1)、及びハロロドプシン(NpHR))。ChR2は、単細胞緑藻コナミドリムシに由来するロドプシンである。本発明において、「ロドプシン」という用語は、少なくとも2つのビルディングブロック、すなわちオプシンタンパク質及び共有結合した補因子(通常レチナール(レチンアルデヒド))を含むタンパク質である。ロドプシンChR2は、クラミドモナスゲノム中のクラミオプシン−4(Chlamyopsin−4:Cop4)と最初命名された、オプシンチャネルオプシン−2(Chop2)に由来する。1つの脱分極性チャネルロドプシン(ChR2)の時間的特性として、正確に時間が調節された活動電位列の生成を可能にする、活性化及び脱活性化の速いキネティクスが含まれる。長いタイムスケールでの活性化が求められる応用例向けに、チャネルロドプシンの通常は速いオフキネティクスを遅くすることができることが見出された。例えば、チャネルロドプシンの特定の実施態様では、脱分極が望まれる実質的に全期間にわたって1mW/mmの光が加えられるが、これを望まれるよりも短くすることができる。
【0087】
本明細書中の記載の多くはChR2に関する。特に断りのない限り、開示は複数の同様なバリアントを含む。例としては、限定されるものではないが、Chop2、ChR2−310、Chop2−310、及びボルボックスチャネルロドプシン(VChR1)が含まれる。VChR1の更なる詳細については、全体を参照により本明細書に援用する"Red-shifted optogenetic excitation: a tool for fast neural control derived from Volvox carteri," Nat Neurosci., June 2008, 1 1(6):631-3. Epub 2008 Apr. 23を参照することができる。別の実施態様では、他のオプシン分子に同様な改変が施され得る。例えば、ChR2又はVChR1バリアントに改変/変異がなされ得る。更に、改変バリアントは、光活性化イオンポンプと組み合わせて使用することができる。
【0088】
本開示の実施形態は、天然配列の比較的マイナーなアミノ酸バリアントを含む。例えば、バリアントは天然配列のタンパク質配列に対して約75%を超える相同性を有する。別のバリアントでは、相同性は約80%超である。更に別のバリアントは、約85%超、90%超、更には約93%〜約95%又は約98%という高い相同性を有する。この文脈における相同性とは、配列類似性又は同一性を意味し、同一性が好ましい。この相同性は配列分析において公知の標準的技術を用いて決定することができる。本開示の実施形態の組成物は、本明細書に提供されるタンパク質及び核酸配列を含み、これには、提供される配列に約50%超相同、提供される配列に約55%超相同、提供される配列に約60%超相同、提供される配列に約65%超相同、提供される配列に約70%超相同、提供される配列に約75%超相同、提供される配列に約80%超相同、提供される配列に約85%超相同、提供される配列に約90%超相同、又は提供される配列に約95%超相同なバリアントが含まれる。
【0089】
本発明では、一般的に標的細胞の刺激が細胞特性の改変の記述に用いられる。例えば、標的細胞の刺激により、標的細胞の脱分極又は分極につながり得る細胞膜の特性変化が生じ得る。具体例では、標的細胞はニューロンであり、刺激は、ニューロンによるインパルス(活動電位)の生成を容易化又は阻害することによりインパルスの伝達に影響を与える。
【0090】
光応答性オプシンの更なる詳細については、全体を参照により本明細書に援用するDeisseroth et alに付与された「Optically-Based Stimulation of Target Cells and Modifications Thereto」という発明の名称の国際公開第2010/056970号を参照することができる。
【0091】
本開示の実施形態は、標的集団の興奮性の双安定変化の実施に関する。これには、必ずしも限定されないが、二重変異体ChR2−C128S/D156Aが含まれる。この二重変異体ChR2−C128S/D156Aは培養海馬ニューロン中で良く許容されることが見出され、必須なSFOの特性である青色光の短時間単一パルスによる急速な階段様の活性化及び緑色光又は黄色光による脱活性化を維持していた。特に、ChR2−C128S/D156Aの活性化スペクトルは445nmにピークがある。第2の脱活性化ピークは390〜400nmに見られ、590nmの脱活性化ピークより速いがより不完全な脱活性化であった。ChR2−C128S/D156A発現細胞中のピーク光電流は強力であり、ChR2−D156Aに匹敵することが見出された(それぞれ、231.08±31.19 s.e.m;n=9細胞及び320.96±78.26 s.e.m;n=7細胞)。別の実施形態はVChR1中の同様な変異に関する。例えば、VChR1中の変異をC123S/D151Aで与え、ChR2と似た遅いキネティクスのレッドシフトした光電流を得ることができる。
【0092】
トランスフェクト及びパッチクランプされた個々のニューロンを、次いで、470nm光の100msパルスで活性化し、非常に長時間にわたる記録の間の電流減衰が細胞のランダウンに起因しないようにするために、異なるインターバルで長時間の590nm光パルスを用いて各細胞を脱活性化し、各時点で残留SFO電流の大きさを決定した。驚くべきことに、ChR2−C128S/D156A発現ニューロンは、いずれかの単一変異体のみを発現する細胞よりも安定な持続性の光電流を生じた。時間に対してI脱活性化/I活性化の割合に単一指数関数減数曲線を当てはめた結果、ChR2−C128S/D156Aの自然減衰時定数は29.3分であることが明らかとなり、これはC128及びD156の変異が相乗的に作用してChR2の開状態の減衰を遅らせていることを示している。
【0093】
複雑な哺乳動物行動への予期される応用に必要な改善と一致し、二重変異体SFO電流のかなりの部分が、単一光活性化パルスの最大20分後でも存在していた。これらの驚くほど遅い減衰キネティクスに基づき、二重変異体遺伝子をSSFO(安定化階段関数オプシン)遺伝子と呼ぶ。SSFOは活性タンパク質の略記としても用いる。両方の残基がChR2チャネル閉鎖(ゲート開閉)に関与しているようであり、両方の変異が、チャネルの開状態の立体構造を安定化するようである。
【0094】
理論により限定されるものではないが、本開示の態様は、SSFOが光サイクル進行中で完全にブロックされ得、したがって光サイクルエンジニアリングで可能な最大限の安定性を示し得るという発見に関する。例えば、ChR2−C128X及びChR2−D156Aと対照的に、SSFOの光サイクルは、この変異体では到達しない後ろの方の光サイクルステージで光サイクルを分離させると考えられる追加的な不活性脱プロトン化副産物に接近せず、その結果、SSFOはインビボでの繰り返し使用の信頼性が元の単一変異よりも更に高くなっていると考えられる。
【0095】
本開示の実施形態は、光に対するSSFOの感受性に関する。例えば、遅い減衰定数のチャネルロドプシンはフォトンインテグレーターとして効果的に作用する。これは、光遺伝学的回路調節のための、より感度が高く且つより侵襲性が低く、更に光パルス長の調節により標的神経細胞集団への作用の設定が容易であるアプローチに特に有用であり得る。(8μW/mmという)非常に低い光強度でも、SSFO発現ニューロンから数百ピコアンペアのホールセル光電流を得ることができ、これは照射の全期間中、470nm光に応答して単一指数関数的キネティクスで増加するということが見出された。別の態様は、log−logスケールで活性化光パワーに線形的に相関する活性化時定数の使用に関し、これは、べき法則的関係を示し、SSFOが期間中の総光子曝露量を唯一の光電流決定要素とする純粋なインテグレーターであることを示唆している。例えば、光電流が所定の最大下活性に達するまで(Tまでの時間)に必要な膜面積当たりのフォトン数は活性化の光パワーに関係なく一定であると考えられる。
【0096】
本開示の例示的実施形態は、ChR2配列を全く含まず、個々では十分発現しない2つのオプシン遺伝子に由来し、本明細書中でC1V1と呼ばれる、ハイブリッドChR1/VChR1キメラの使用に関する。本開示の実施形態は更に、Ki2.1チャネルに由来する膜輸送シグナルの付加によるVChR1の膜標的化の向上に関する。VChR1−EYFPを発現する培養ニューロンの共焦点画像は、ChR2と比べて大量の細胞内タンパク質を示した。したがって、Ki2.1チャネルに由来する膜輸送シグナルを用いてVChR1の膜標的化が改善された。このVChR1−ts−EYFPの膜標的化は、VChR1−EYFPよりわずかに向上していたが、VChR1ts−EYFPを発現する培養海馬ニューロンから記録された平均光電流はVChR1−EYFPよりわずかに大きいだけであった。
【0097】
そこで、本開示の実施形態は、ヘリックスを他のChRの対応するヘリックスと交換することによって改変したVChR1に関する。例えば、ヘリックス1及び2をChR1の相同なセグメントで置換した2つのキメラで大きな改善が見出された。スプライス部位が、ヘリックス2と3の間の細胞内ループ中(ChR1の残基Ala145)であっても、ヘリックス3内(ChR1の残基Trp163)でっても、得られたキメラはどちらも強力に発現し且つ同様に向上された光電流及びスペクトル特性を示すことが見出された。この結果は、ChR1は発現が弱く、ほとんどの哺乳動物宿主細胞の膜中に十分に組み込まれないため、予想外であった。得られたハイブリッドChR1IVChR1キメラを本明細書中ではC1V1と呼ぶ。
【0098】
本開示の態様は、培養海馬ニューロン中におけるC1V1の発現に関する。実験的試験により、以下により詳細に記載する複数の驚くべき有用な結果が示された。C1V1−EYFPは、VChR1−EYFPと比べて驚くほど向上した平均蛍光を示す。C1V1を発現するニューロン中のホールセル光電流はVChR1−EYFP及びVChR1−ts−EYFPよりはるかに大きく、イオン選択性はChR2及びVChR1と同様であった。C1V1とYFPの間にKir2.1輸送シグナルを付加すると、更に41%光電流が更に向上した(C1V1−ts−EYFPの平均光電流は非常に大きく、野生型(WT)VChR1のほぼ10倍であった)。平均蛍光レベルは、測定された光電流に密接にマッチしており(平均蛍光は、VChR1−EYFP、VChR1−ts−EYFP、C1V1−EYFP、及びC1V1−ts−EYFPでそれぞれ9.3±1、19.6±3.4、19.8±2.8、及び36.3±3.8)、このことは、光電流の大きさの増大が主に、哺乳動物ニューロン中におけるこれらのチャネルの発現向上によるものであることを示唆している。総細胞体蛍光(積分したピクセル密度として測定)は、種々のコンストラクト(VChR1、VChR1−ts−EYFP、C1V1、C1V1−ts−EYFP)全てで、個々の記録/画像化された細胞の光電流サイズと線形相関していた。これは、C1V1の光電流増大がニューロン中での関数的発現変化によるものであることを示唆している(理論により限定されない)。
【0099】
本開示の種々の実施形態は、速い減衰定数のオプシンに関する。この特性は、例えば本来のコンダクタンスへの干渉を最小限に抑えるため、光パルス当たり1回のスパイクを誘発するため、及び/又は光パルス列中のプラトー電位を最小化するための、スパイク発生の正確な制御を提供するのに特に有用であり得る。実験結果から、C1V1−ts−EYFPで記録された光惹起光電流は、VChR1と同様な時定数で減衰することが示唆される。したがって、本開示の態様は、光サイクルのキネティクスの改善、不活性化の低減、及び/又は可能な更にレッドシフトした吸収のための発色団領域中における改変に関する。
【0100】
一実施形態は、対応するChETA変異E162Tに関し、この実験は、加速された光サイクルを示唆している(例えば、ほぼ3倍)。全体を参照により本明細書に援用するGunaydin, et ah, Ultrafast optogenetic control, Nat Neurosci, 2010を参照することができる。驚くべきことに、この変異は、ChR2又は他の微生物ドロプシン中の同様な変異はレッドシフトを生じさるのに対し、作用スペクトルを530nmへと浅色シフトさせることが示された。別の実施形態は、グルタミン酸122のスレオニンへの変異に関する(C1V1−E122T)。実験的試験から、ChR2の不活性化46%と比べてC1V1−E122Tは26%しか不活性化されないことが示され、更に、スペクトルは546nmへと更にレッドシフトしていた。
【0101】
本開示の別の実施形態は、変異E122T及びE162Tの両方を含むC1V1の二重変異体に関する。実験的試験から、E122T変異体よりも電流の不活性化が更に低く、E162Tよりも光サイクルが速いことが示された。このことは、個々の変異体の複数の有用な特性が二重変異体中で一緒に保存されていることを示唆している。
【0102】
本開示の実施形態は、ニューロン中での種々の光応答性オプシンの発現を含む。C1V1−ts−EYFP及び本明細書に開示の種々の点変異の組合せをコードするレンチウイルスベクターを作製し、ニューロン中でのC1V1オプシン遺伝子の実験的試験を行った。次いで、オプシンを培養海馬ニューロン中で発現させ、同一の刺激条件下(2msパルス、542nm光、5.5mW/mm)でホールセル光電流を記録した。C1V1、C1V1−E162T、及びC1V1−E122T/E162Tを発現する細胞中の光電流は全て強力であり、ChR2−H134Rの光電流より大きい傾向があった。C1V1−E122T/E162Tを発現する細胞及びChR2−H134Rを発現する細胞からの積分した細胞体YFP蛍光及び光電流の比較も実験に含めた。驚くべきことに、C1V1−E122T/E162T細胞は、同じ蛍光レベルでChR2−H134R細胞より強力な光電流を示した。このことは、C1V1がChR2−H134Rよりも高い単位コンダクタンスを有し得ることを示唆している。試験結果は、C1V1−E122TのキネティクスがC1V1−E122T/E162Tより遅く、C1V1−E122Tを発現する細胞が二重変異体を発現する細胞より赤色光(630nm)に強力に応答することを示唆している。これは、赤色光に応答した光遺伝学的スパイク発火の生成に特に有用であり得る。
【0103】
本開示の種々の実施形態では、同じ超小型回路内にある抑制性及び/又は興奮性ニューロンが種々のオプシンの導入により標的化される。培養海馬ニューロン中でCaMKIIαプロモーター下でC1V1−E122T/E162T及びChR2−H134Rを別個に発現させて実験的試験を行った。C1V1−E122T/E162Tを発現する細胞は2msの緑色光パルス(560nm)に応答してスパイクを発生したが、青紫色光パルス(405nm)には応答しなかった。一方、ChR2−H134Rを発現する細胞は、2msの405nm光パルスに応答してスパイク生成したが、2msの561nm光パルスには応答しなかった。
【0104】
本開示の種々の実施形態は、生きた脳スライス内の2つの神経細胞集団の独立した活性化に関する。PV::CreマウスのmPFC中のCaMKIIa−C1V1−E122T/E162Tts−eYFP及びEF1a−DIO−ChR2−H134R−EYFPで実験的試験を行った。非発現PYR細胞では、405nm光パルスがPV細胞の直接活性化による強力且つ早い抑制性シナプス後電流を引き起こし、一方、561nm光パルスは、局所抑制性ニューロンのC1V1発現錐体細胞の駆動により生じる予想された長い潜時の多シナプス性IPSCのみを引き起こした。
【0105】
本開示の別の実施形態では、独立した細胞要素の興奮をインビボで行うことができる。オプトロード記録を用いて実験的試験を行った。錐体ニューロンのスパイク発生へのPV細胞活性の抑制効果を調べるために、種々のパルス間インターバルで5Hzの青紫色光パルス(PV細胞中のChR2を活性化するため)の後に5Hzの緑色光パルス(興奮性錐体ニューロン中のC1V1を活性化するため)を行う実験プロトコールを用いた。試験結果は、青紫色及び緑色の光パルスを100ms離した時、緑色光パルスへの応答が青紫色パルスの影響を受けないことを示唆している。しかし、青紫色パルスと緑色パルスの間の遅れを減らしていくにつれ、光パルスを同時に与えた時に効果的/完全に消失するまで、緑色光に誘導されるイベントがより容易に抑制されていった。
【0106】
本明細書中に記載されているように、本開示の種々の実施形態は、神経回路の時間的、空間的、及び/又は細胞型による制御を測定可能な測定基準に関係付ける光遺伝学的システム又は方法に関する。本明細書に記載の別の実施形態によれば、特定の実施形態は障害の研究及び探索に関する。そのような実施形態に一致する例示的な実施形態及び実験結果の非網羅的な一覧は、その開示全体を参照により本明細書に援用するYizhar et al., Nature, 2011, 477(7363):171-8に記載されている。その中の参照文献リストは、本開示の1又は複数の実施形態に関連し得る種々の分野に関する一般的情報を得る助けとなり得、更に、以下の1又は複数の参照文献が適用され得る1又は複数のそのような実施形態の応用に関する具体的情報も提供し得る。したがって、これらの参照文献のそれぞれを全体を参照により本明細書に援用する。
【0107】
上記及び図中に示した種々の実施形態は、一緒に及び/又は他の様式で実施されてもよい。図面/図中に示した項目の1又は複数は、特定の応用例に従って有用なように、それよりも分割又は統合された様式で実施することもでき、特定の場合に削除及び/又は作働不能にしてもよい。本明細書の記載に鑑みて、当業者には、本開示の精神及び範囲から逸脱せずに多くの変更を加えることができることが理解されよう。
【0108】
本開示は、本明細書に記載されているように、社会的機能障害に関連する障害等の神経系障害の制御に関するので、有用であると考えられる。本発明の具体的応用例は、神経回路の時間的、空間的、及び/又は細胞型特異的制御を測定可能な測定基準に関連付ける光遺伝学的システム又は方法に関する。本明細書に開示する例示的な実施形態の多くの態様はこの分野のこれまでの進展に関係し且つ大いにその上に構築されているので、添付の付属文書に見られるものを含む実施の詳細及び改良を導き得る基盤及び根底にある教示の確固とした理解のために、以下にそのようなこれまでの進展を要約する。そのような流れで以下に説明を提供し、参照文献中の教示を参照により本明細書に援用する。本発明はそのような応用例に必ずしも限定されないが、この文脈を用いて種々の例を説明することで本発明の種々の態様が理解され得る。
【0109】
図13は、種々の神経系障害に対する刺激及び/又は見込み治療を評価するためのモデルを示す図である。ベースライン観察220を、対象/患者の行動及び/又は細胞応答202から取る。標的細胞集団を選択し、光応答性分子を発現するように改変する。特定の実施態様では、本明細書中により詳細に記載しているように、対象の脳の前頭前皮質中のE/Iバランスの制御が得られるように標的細胞集団を選択する。次いで、改変された標的細胞集団を光に曝すことによって標的細胞集団内の興奮/抑制(E/I)バランスを変更(例えば上昇又は低下)することができる204。光は、光応答性分子の吸収特性に基づいて所定の範囲内で提供され得る。対象の行動及び/又は細胞応答の観察220を再度取る。これらの観察は、無刺激又は無治療下で対象がどのように行動するかの参照ポイントを提供する。
【0110】
見込み治療を評価するために、対象への刺激及び/又は見込み治療を選択する206。刺激及び治療の非限定的な例としては、薬理学的刺激/薬物208、行動的刺激210、及び/又は電気的刺激212が含まれる。次いで、治療に応答した対象の行動及び/又は治療に応答した標的細胞集団の行動を観察することにより、刺激/治療を評価することができる214。観察に基づき、追加的な刺激若しくは治療が必要であるか又は追加的及び/若しくは異なる治療を試験したいかについての決定がなされ得る216。観察220を収集した後、種々の治療から得られた観察220を、互いに並びにベースライン観察及びE/I上昇後の行動の観察と比較することができる218。観察220の比較を用いて種々の見込み治療の有効性を評価することができる。
【0111】
特定のより具体的な実施形態では、E/Iバランスの上昇は、ベースライン観察中の行動と比べて社会的及び認知的障害を招く。E/Iバランスの意図的及び制御された上昇により、そうしなければモデル化している疾患の症状を示さないマウス等の哺乳動物被験対象における見込み治療の試験が可能になる。
【0112】
本開示の態様は、神経疾患の症状への種々の刺激の影響を評価することに関する。本開示中で記載されているように、対象の脳の前頭前皮質中のE/Iバランスの改変は、自閉症及び統合失調症等の種々の神経障害の症状と似た症状を生じる。本開示の特定の態様では、E/Iバランスを生じさせるとして特定された神経回路を、薬理学的、電気的、磁気的、外科的、及び光遺伝学的方法を含む1又は複数の技術を用いて操作する。現れる症状の操作の影響をモニタリングする。
【0113】
特定のより具体的な態様では、錐体ニューロン及びパルブアルブミン発現抑制性介在ニューロンの操作を用いて、疾患状態をモデル化し、公知の疾患の新規な治療を特定する。例えば、前頭前皮質中のE/Iバランスを上昇(又は低下)させた後、見込み治療を対象に与える。観察される症状又は神経回路(又はその両方)への治療の影響がモニタリングされ得る。症状及び/又は神経回路のモニタリングから得られた情報を用いて、観察された症状を生じさせる神経回路のより深い理解を得ることができる。情報は、見込み治療の有効性の決定にも用いられ得る。見込み治療の有効性又はその欠如に基づいて、変更を加えて、試験する新たな見込み治療とすることができる。
【0114】
本開示の特定の実施形態では、例えば統合失調症又は自閉症等の神経疾患の症状を示す対象に刺激を与える。刺激は、例えば、薬理学的、電気的、磁気的、外科的、光遺伝学的、又は行動的刺激であり得る。
【0115】
本開示の種々の実施形態によれば、神経回路の制御は抑制又は興奮を含み得、これはそれぞれ、同期された発火、及び/又は外部回路入力への改変された感受性を含み得る。例えば、抑制は、イオンポンプ(例えば、NpHR及びNpHRバリアント)等の光応答性オプシンの使用により達成することができる。そのようなイオンポンプは、ニューロンの膜電位をその閾値電圧から離れるように動かして活動電位を抑止又は阻害する。別の例では、イオンチャネル(例えば、ChR2及びChR2バリアント)等の光応答性オプシンを用いて興奮を達成することができる。そのようなイオンチャネルは、膜電位を閾値電圧に向かわせ及び/又はを超えさせることにより、活動電位を興奮又は促進することができる。種々の実施形態によれば、光応答性オプシンを用いて、ニューロンの静止電位を(一時的に)シフトさせて、外部回路入力へのその感受性を上昇又は低下させることができる。これらの種々のオプションを組み合わせて用いることもできる。
【実施例】
【0116】
実施例1:安定化階段関数オプシンの創出及び特徴解析
野生型(wt)ChR2(SFO、すなわち階段関数オプシン遺伝子産物;−r−off=2.5〜102秒)より最大4桁大きいタイムスケールで作動する長いタイムスケール(事実上双安定性)の光遺伝学的ツールが最初に開発された。ChR2のC128位におけるこれらの変異は、脱活性化の時定数で測定される光感受性を上昇させた。その後の研究で、光サイクル及び開状態の継続期間を延長するためのC128プロトンネットワークパートナーD156の変異により、初期のSFOのコンセプトを更に発展させた(図1A)。しかし、どちらのクラスの変異も、哺乳動物行動のタイムスケールで十分な安定性を生じさせず、どちらも最初の5〜10分の間にかなりの減衰を示し、SFO発現ニューロンの延長照射は、場合によって、後期光サイクル中間体の副反応における光サイクル副産物の蓄積及び発色団の脱プロトン化によりチャネルロドプシンの不活性化を生じさせることがあった。そこで、組み合わせた変異体が開状態の十分な安定化を示す可能性があるという仮説を立て、C128及びD156を変異させることにより、哺乳動物の系における組合せ的光遺伝学に適した安定性を有する青色光活性化SFOの作製を試みた。SFOは青色光で活性化されるが、実際、黄色光で脱活性化され得るので、この付加的特性を維持することができれば、そのような安定なSFOは、組合せ制御を更に向上させ得るスペクトル域における側方抑制も送達するであろう。
【0117】
材料及び方法
部位特異的変異誘発(Quikchange II XL;ストラタジーン社製)を用いてpLentiCaMKIIα−ChR2−EYFP−WPREベクターに点変異を導入することによりChR2(D156A)及びSSFOを作製した。膜輸送シグナルはKir2.1チャネルに由来する。コード配列及びスプライスバリアントをシークエンシングすることで変異を確認した。AAVを介した遺伝子送達のために、改変pAAV2−MCSベクター中にCaMKIIαプロモーターと共にオプシン−EYFP融合物をサブクローニングした。不適合性(incompatible)lox部位セット(loxP及びlox2722)の間に逆向きにオプシン−EYFPカセットをクローニングし、伸長因子1a(EF−1α)プロモーター制御下に二重flox化(double−floxed)逆方向オープンリーディングフレーム(D10)を作製することにより、Cre依存的オプシン発現を達成した。全コンストラクトがDeisseroth Lab(www.optogenetics.org)から入手可能である。
【0118】
ピキア・パストリス細胞(株1168H、インビトロジェン社から購入)中でChRを異種発現させるために、アミノ酸1〜315(アクセッション番号AF461397参照)をコードするヒトコドン最適化合成ChR断片をpPICZベクター(インビトロジェン)中にEcoRI及びNotI制限酵素部位でクローニングした。ベクター上にコードされるC末端ポリヒスチジンタグを12His配列に改変した。部位特異的変異誘発(QuickChangeキット、ストラタジーン社製)によりChRの変異体を作製した。形質転換、細胞培養、及びタンパク質精製を行った。タンパク質発現を24時間誘導した後、細胞を収集し、高圧ホモジナイザー(アバスチン社(Avastin)製)を用いて穏やかに溶解した。膜画分を回収し、ホモジナイズし、1%(w/v)ドデシルマルトシドに可溶化した。Ni−NTA樹脂(キアゲン社製)にChRタンパク質を結合させ、200mMイミダゾールでカラムを洗浄した後、500mMイミダゾールでChRを溶出させた。タンパク質を含む画分をプールし、脱塩し(Float−a−lyzer、ロス社(Roth)製)、480nmの光学濃度が1になるまで濃縮した(Amicon Ultra、ミリポア社製)。Cary 50 Bio分光光度計(バリアン社((Varian Inc.)製)を用いてスペクトルを記録した。
【0119】
結果
ChR2変異体C128S、D156A、及び二重変異体128S/156Aを作製し、ピキア・パストリスから精製し、交絡的であり得る細胞特性の非存在下で本来の開状態安定性を最初に測定した。吸収スペクトルは、短時間の光送達に応答して予想通りの急速な変化を示し、これは単一変異体C128S(図1B、F)及びD156A(図1C、G)では3分以内に大幅に回復したが、これらの単一変異体とは対照的に、二重変異体C128S/D156Aは活性化状態の顕著に完全な安定性を示し、30分後でも暗状態への回復が本質的に検出されなかった(図1D、H)。これらの吸収スペクトルの特徴的な2つのピークは、伝導状態及び脱プロトン化種(P390;図1B、C)の形成に起因し得、バリアント間でいくらかの興味深い差がある。第1に、C128Sと比べて二重変異体で、暗状態と比べて伝導状態のレッドシフト低減が見られ(図1A、D)、これに関連して、二重変異体で、レッドシフトした光による不活性化という重要な特性がどれだけ効果的であるのかという疑問を生じさせる。潜在的利点として、C128Sと比べて二重変異体で伝導状態と比べた非伝導(P390)状態の寄与の減少が見られ(図1B、D)、これは、非伝導性チャネルの蓄積低減を予想させ、伝導状態を使い果たし得る光サイクルの後期ステップ(例えば、P520−P480脱感作状態(Des480);図1E)がほとんど完全にブロックされ得る(図1E)ことを示唆する、有用な特性である。二重変異体C128S/D156Aの固有な安定性は、35分間にわたって記録した全3変異体の連続的単色光吸収測定でも示されている(図1H)。
【0120】
実施例2:ニューロン中及びインビボにおける活性化の検証
したがって、二重変異体は、哺乳動物行動のタイムスケールで、顕著に明白なほぼ最適な安定性を有するようであるが、レッドシフト光脱活性化という重要な能力が減弱している可能性がある。これらの問題は全て、ニューロン中及びインビボでの検証を必要とする。
【0121】
材料及び方法
海馬ニューロン及び皮質ニューロンにおけるホールセルパッチクランプ電気生理学
PO Sprague−Dawleyラットから海馬一次培養を単離し、マトリゲル(インビトロジェン社製)コートされたガラス製カバースリップ上にプレーティングし、FUDRで治療してグリアの過剰成長を抑えた。HEPES緩衝生理食塩水/CaPOミックスを用いて培養ニューロン中でエンドトキシンフリーのプラスミドDNAをトランスフェクトした。3〜5MΩ硝子ピペット中で標準的な内部溶液(130mM グルコン酸カリウム、10mM KCl、10mM HEPES、10mM EGTA、2mM MgCl;KOHでpH7.3に調整)を用いて、蛍光タンパク質発現によって特定される個々のニューロンからの電気生理学的記録をタイロード培地(150mM NaCl、 4mM KCl、2mM MgCl、2mM MgCl、10mM D−グルコース、10mM HEPES;NaOHでpH7.35に調整)中で得た。皮質スライスの生理機能を調べるために、予めウイルスを注射した8〜9週齢の野生型C57BL/6J又はPV::Creマウスからの300μm急性冠状スライスを、ビブラトーム(ライカ社製)を用いて、氷冷スクロースカッティング溶液(11mM D−グルコース、234mM スクロース、2.5mM KCl、1.25mM NaHPO、10mM MgSO、0.5mM CaCl、26mM NaHCO3)中に得た。酸素化人工脳脊髄液(ACSF;124mM NaCl、3mM KCl、1.3mM MgCl、2.4mM CaCl、1.25mM NaHPO、26mM NaHCO、10mM D−グルコース)中で32℃にて1時間スライスのリカバリーを行った。一定のACSF灌流下で、図示されている前頭前皮質層から蛍光タンパク質発現を特定した後、個々のニューロンパッチを得た。広い波長のキセノンランプ光源(サッター・インスツルメンツ社(Sutter Instruments)製、DG−4)からのフィルターを通した光を顕微鏡(ライカ社製、DM−LFSA)の蛍光ポートに接続した。バンドパスフィルター(セムロック社(Semrock)製)はバンド幅が20nmであり、追加のニュートラルデンシティーフィルター(ソーラボ社(ThorLabs)製)で、全スペクトルで光パワー出力が等しくなるように調整した。SSFOを発現する細胞又は組織を扱っている間、周囲の光による活性化を防ぐために光曝露が最小限になるように注意した。各実験の前に、590nm光の20sパルスを印加し、全てのSSFOチャネルを暗状態に変換して光電流のランダウンを予防した。SSFOの活性化及び脱活性化のスペクトルを取得するために、電位固定モードで培養ニューロンを記録した。活性化スペクトルの記録では、種々の波長の1sパルスを印加した後、10sの590nmパルスを印加した。脱活性化スペクトルは、最初に1sの470nmパルスを印加してSSFOを活性化した後、種々の波長の10sパルスを印加することで取得した。正味の活性化又は脱活性化は、それぞれ最初のパルス又は2回目のパルスの後の光電流変化を、その細胞のピーク波長で誘導された最大の光電流変化で割ることにより、算出した。脱活性化スペクトルにおける負の値は、例えば10sの470nmパルスがチャネルを脱活性化せずに光電流をわずかに上昇させたトレースから生じたものである。これは、Sutter DG−4を用いたこれらの記録で用いた比較的幅広い(20nm)バンドパスフィルターによるものであり得る。中間の波長(470nmと520nmの間)は、同じ理由で、チャネル集団に複合的影響を有すると予想される。
【0122】
露出100ms、ゲイン30でRetiga Exi CCDカメラ(Qイメージング社(Qimaging,Inc.)製)を用いて同じ顕微鏡上で培養細胞画像を取得した。照射パワー密度は、標準的EYFPフィルターセットを用いて500nmで12mWmm−2であった。ImageJソフトウェアを用いて、細胞体及び近位神経突起を含む領域をマーキングし、各細胞について平均蛍光ではなくその領域の総積算ピクセル強度を計算することにより、蛍光を定量化した。これは、光電流が面積当たりの平均チャネル発現量ではなく膜結合チャネルの総数に関連すると考えられるからである。各光パワーで顕微鏡対物レンズを通るフォトン束を計算し、次いで、記録された細胞の直径に基づき且つ細胞の形状を球状に近似させて、細胞表面を横切るフォトン束が得られるように割ることにより、SSFO積分特性を得るためのフォトン束の計算を行った。
【0123】
ウイルス遺伝子トランスフェクション
レンチウイルス仲介及びAAV仲介遺伝子送達の両方を、マウスにおけるオプシンの異種発現に用いた。図示されているオプシンは、皮質興奮性ニューロンを標的化するヒトカルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIアルファ(CaMKIIα)プロモーター又はCre誘導カセットと組み合わせた伸長因子1a(EF−1a)のいずれかで駆動され、後ろにウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)が続く。Cre誘導組換えAAVベクターは、ノースカロライナ大学のベクターコア社(Vector Core;米国ノースカロライナ州チャペルヒル)によって作製され、パルブアルブミン陽性介在ニューロンを標的化するためのパルブアルブミン::Creトランスジェニックマウスと組み合せて使用された。簡潔に述べると、不適合性lox部位セット(loxP及びlox2722)の間に逆向きにSSFO−eYFPを挿入した。ノースカロライナ大学のウイルスベクターコアによって、AAVコンストラクトは改変pAAV2−MCS中にサブクローニングされ、AAV5コートタンパク質で血清型に従って分けられ、パッケージングされた。AAVベクターの最終ウイルス濃度は11012ゲノムコピー(gc)/mLとした。レンチウイルスコンストラクトを報告されているように作製した。全てのコンストラクトがDeisseroth Lab(www.optogenetics.org)で入手可能である。スタンフォード大学に認証されたプロトコール下で定位的ウイルス注射を行った。イソフルラン麻酔下の若い(4〜6週)マウスを定位枠(Kopf Instruments社製)中に配置し、頭蓋骨の目印であるブレグマ及びラムダを同じ高さにした。皮質組織の損傷が最小限になるように開頭術を行った。10μLのシリンジ及び35gのベベル針(ワード・プレシジョン・インスツルメンツ社(Word Precision Instruments)製)を用いて大脳辺縁系下前頭前皮質(IL;ブレグマから、1.8mm前側、0.35mm外側、−2.85mm腹側)を標的とした。ウイルスは0.111L/minの速度で注入した。行動研究のためにウイルスを注射された対象に更に、記載されているように標的皮質領域に局所送達するための大脳に刺入するファイバーが取り付けられた又は取り付けられていない光送達を容易にするための慢性光ファイバー接続デバイスを植え込んだ(ドリック・レンズ社(Doric Lenses)製、カナダ)。同じ前側・外側座標から深さ−2.5mmに刺入ファイバーを定位的に挿入し、接着性装着セメント(C&B MetaBond)を用いて固定した後、頭蓋骨を接着剤で閉じた(Vetbond、3M社製)。手術回復後に動物に鎮痛剤を投与した。
【0124】
結果
野生型ChR2、C128変異体、及びD156変異体同様、二重変異体ChR2−C128S/D156Aが培養海馬ニューロン中で十分に発現し、青色光の短時間単回パルスによる急速な階段様の活性化及び緑色光又は黄色光による脱活性化という重要なSFO特性を保存していることが見出された。実際、二重変異体の開状態吸光度ではレッドシフトが低減していたが、それでも、レッドシフトした光(この場合、黄色光、最適には590nm)で完全な脱活性化を達成することができ、これは潜在的組合せ制御のために必須である。脱活性化は390nm光でも可能であり、P390種がかなり存在するため黄色光よりも速かったが、この波長における暗状態の残留吸収のためやはり不完全であった(図1A)。更に、390nm光による脱活性化後の470nmでの再活性化は590nm脱活性化後より効果が低く、このことは、レッドシフト光脱活性化後には到達しない脱プロトン化/脱感作異性体でのトラップによるUV光での光化学的不活性化の可能性を示しており(図1Eに図解)、このことも、スペクトル分離を高め得る黄色光脱活性化の使用を支持している。
【0125】
ChR2−C128S/D156Aを発現する細胞中のピーク光電流はChR2−D156Aに匹敵した(それぞれ、231.08±31.19;n=9細胞及び320.96±78.26;n=7細胞、p=0.26、対応のないt検定)。分光データと一致して、ChR2−C128S/D156Aを発現するニューロンは、いずれかの単一変異体のみを発現する細胞よりもはるかに安定な持続性の光電流を生じた(図2B)。単一指数関数的減衰曲線を時間に対する脱活性化/活性化に当てはめた結果、見かけの自然減衰時定数がChR2−C128S/D156A(r=0.9139)で29.3分であり、並べて比較したところ、これはD156A(6.9分、r=0.8357;図2B)の4.2倍の長さであった。実際、分光測定によりこのタイムスケールで暗状態への復帰が本質的にないことが明らかになったことから、残りの減衰の原因は、一部、タンパク質ターンオーバー等の細胞により決まる特性であり得る。複雑な哺乳動物行動への予期される応用のために必要な改善と一致して、図2Cは、非同期シナプス活性が入る状況での青色光活性化及び黄色光脱活性化の両方の典型的な長時間ホールセル記録を示している。これらの驚くべき延長された時間的特性に基づき二重変異遺伝子をSSFO(安定化階段関数オプシン)遺伝子と呼び、簡単のためにタンパク質の略記としてもSSFOを用いる。
【0126】
そのような遅い減衰定数を有するチャネルロドプシンは、Τoffで測られる有効な光感度(すなわち、細胞により吸収されたフォトン当たりの光電流振幅)を有するフォトンインテグレーターとして形質導入細胞が作用することを可能にし得る。したがって、SSFOは、より感度が高く、より侵襲性が低い光遺伝学的回路調節へのアプローチであって、しかも時間的に正確に作用を開始及び停止させることができ、標的神経細胞集団への影響を光パルス長の調節により容易に調整可能なアプローチを可能にし得る。実際、(8μWmm−2という)非常に低い光強度で、SSFO発現ニューロンから数百ピコアンペアのホールセル光電流を得ることができることが見出された(図2D)。光電流は照射の全期間中470nm光に応答して単一指数関数的キネティクスで増加し(図2D、左)、活性化の時定数は、チャネル本来のミリ秒スケールに達するまでlog−logスケールで活性化光パワーに線形的に依存した。このことは、期間中の総フォトン曝露量を唯一の細胞光電流決定要素とする純粋なインテグレーターの状態をSSFOが達成することを示唆している(図2D、中央、n=27記録(5細胞))。しかし、このことはまた、実験を開始する前にオプシン発現組織を完全な暗黒化に維持しなければならないことを意味している(哺乳動物インビボ実験では自明であるが、インビトロでの作業にはより注意が必要である)。記録された細胞についてImaxの規定の割合に光電流が達するのに必要な(1つの神経細胞体に送達され、時間で積分された)フォトンの総数でデータを表した時、この特徴的フォトン数は、活性化光パワーに関係なく一定であった(図2D、右;9.1×108±1.6×10フォトン;n=5細胞からの27記録)。このことも、SSFOの純粋なフォトンインテグレーター特性を実証している。
【0127】
この新規な光遺伝学的ツールをインビボで検証するために、実験系として皮質の興奮及び抑制の制御を用いて、SSFOが哺乳動物生体内で安定な細胞型特異的調節を実現する能力を調べた。読取りとして、内側前頭前皮質(mPFC)の前辺縁(PL)及び下辺縁(IL)小領域(図2E)中にSSFOを発現する麻酔したマウスにおけるオプトロード記録を行った。第1に、興奮を調節するために、興奮性ニューロン特異的CaMKIIaプロモーターの制御下で錐体ニューロン中においてSSFO−eYFPを発現させた。第2に、抑制を調節するために、二重flox化逆向きオープンリーディングフレーム(DIO)ウイルスを用いて、PV::Creトランスジェニックマウス中のSSFO−eYFPを発現させた(これらのマウス中、SSFOはGABA作動性Cre陽性パルブアルブミンニューロン中でのみ発現した)。光学的調節をマップにするために、進行的な2つのレーザーオプトロード(図2E)及び青/緑色活性化/脱活性化レーザープロトコール(図2F〜G)を用いて、内側前頭前皮質(mPFC)中にAAV5−CaMKIIa::SSFO−EYFPを注射したマウスの更に進めたより腹側の部位で記録を行った。これらのマウスのmPFC中のマルチユニット活性は、473nm光の1sパルス(95mWmm−2、電極チップでの10mWmm−2に相当)に応答して、形質転換領域でのみ有意且つ安定に上昇した。この活性上昇は、2sの561nm光パルス(112mWmm−2図2F)で効果的に終了した。マルチユニットスパイク頻度(Hz)の有意な上昇はmPFCに限定され(図2)、青色光刺激後に記録部位のいずれにおいてもスパイク頻度の有意な減少は観察されなかった。mPFC記録部位において、平均マルチユニットスパイク頻度は予想された通りに光で調節され(mPFCの背側の部位では調節されない)、活性の有意な調節を示したトレース中、活性化前、活性化後、及び脱活性化後のスパイク頻度はそれぞれ2.60±0.39Hz、33.82±4.83Hz、及び5.04±1.23Hzであった(図2H;n=マウス2頭の46記録;活性化後、p=3e−8;脱活性化後、p=0.048;どちらも活性化前ベースラインとの比較;対応のあるスチューデントt検定)。
【0128】
逆に、mPFC中にAAV5−EF1a−DIO−::SSFO−eYFPを注射されたPV::Creマウスでは、同じ470nm光の1sパルス後にマルチユニット活性が低下し、2sの561nmパルス後にベースラインレベルに戻った(図2G)。これらのマウス中、マルチユニットスパイク頻度の低下はやはりmPFCに非常に限定されており(n=全背腹軸に沿った54記録部位中の5つ)、青色光刺激後に記録部位のいずれにおいてもスパイク頻度の有意な上昇は観察されなかった。活性の有意な調節を示したトレース中、活性化前、活性化後、及び脱活性化後の平均マルチユニットスパイク頻度はそれぞれ14.82±1.26Hz、3.66±0.58Hz、及び9.69±1.77Hzであった(図2H;活性化後、p=0.002;脱活性化後、p=0.088;どちらも活性化前ベースラインと比較;対応のあるスチューデントt検定)。ここでも予想されたSSFO光電流の高い安定性にふさわしく、短時間のパルス後に生体内での発火率の調節が長時間(many minutes)安定に持続されることが見出された(図2I)。
【0129】
実施例3:自由行動マウスの行動及び回路ダイナミクスへのSSFOの影響
行動に関連するタイムスケールで前頭前野の興奮性を双方向的に調節することにSSFOを用いることができるということが証明されたので、SSFOを用いて、自由行動を行っているマウスの行動及び回路ダイナミクスへの細胞E/Iバランス上昇の影響を調べた(図3)。SSFOを、興奮性ニューロン特異的CaMKIIαプロモーターを用いて前頭前皮質興奮性ニューロン中又はPV::Creトランスジェニックマウスと組み合せて二重flox化逆向きオープンリーディングフレーム(DIO)ウイルスを用いて抑制性パルブアルブミン(PV)発現ニューロン中(図3J〜L)のいずれかで発現させた。前述したようにmPFCにウイルスを注射し、次いで、光送達のために頭蓋骨を貫通してmPFCのすぐ背側に突き出した慢性光ファイバーを植え込んだ(図3A、B)。
【0130】
材料及び方法
相互情報量の計算
sEPSCスパイク頻度情報へのSSFOの影響を調べるために、mPFC第V層の視覚的に同定された錐体細胞のホールセルパッチ記録を行った。電流固定を用いて、シミュレートEPSC波形列で単一錐体細胞を刺激した。個々のsEPSCイベントは、ピーク電流の大きさを200pAとし、時定数2msで減衰させた。各実験は、ランダウンを最小限に抑えるために5秒離した長さ各10秒の10スイープに分割し、各スイープを500msのセグメントに分けた。各500msセグメント中のsEPSCの総数を0〜250の均一な分布からランダムに選択した。次いで、セグメント全体にわたる均一な分布から500msセグメント内のsEPSCの時間をランダムに選択し、同期されていないニューロン集団からの興奮入力をシミュレートした。実験では、これらの刺激パラメーターは錐体ニューロンを0〜30Hzの発火率で確かに駆動した。ベースラインと印された条件では、590nm光の10秒パルスを送達して、sEPSCプロトコールを行う前にオプシンを完全に不活性化した。オプシンを活性化した条件では、470nm光の1秒パルスをsEPSCプロトコールの前に行った。
【0131】
変化させたE/Iバランスが情報処理に与える正味の影響を理解するために、各ニューロンの入力sEPSC頻度と出力スパイク頻度の間の相互情報量を計算し、IO曲線の形状及び反応変動性において関連のある変化を捉えた。第1に、時間、sEPSC頻度、及びスパイク頻度でビン化し、ジョイントヒストグラムを作成することにより、sEPSC頻度及びスパイク頻度の同時分布を推定した。相互情報量の結果は幅広いビン化パラメーターにわたって一貫していたが、時間ビン幅を125msとし、sEPSC頻度を0〜500Hzの等しく間を空けた10個のビンに分けた。時間ビン幅において意味のある最小のビン幅を用いてスパイク頻度をビン化した(例えば、125msの時間ビンに対して8Hzのビン幅)。このジョイントヒストグラムから、反応エントロピーとノイズエントロピーの差を等しくすることで相互情報量を計算した。反応エントロピーは、ニューロンの出力スパイク頻度の不確実性の総量を数量化する。ノイズエントロピーは、入力頻度が与えられた時に出力スパイク頻度に残る不確実性を数量化する。入力刺激について神経応答が伝達できる最大の情報量が、刺激セットのエントロピーである。等しく間を空けた10個の入力sEPSC頻度ビン及びこれらのビンにおける入力頻度の均一分布で、入力頻度のエントロピーはlog(10)=3.322ビットである。アンダーサンプリングされた確率分布から計算される相互情報量は上側にバイアスされ得る。したがって、相互情報量、反応エントロピー、及びノイズエントロピーの全報告値は、アンダーサンプリングによるバイアスについて補正した。この補正は、全データのより小さい部分(2分の1〜8分の1)から値を計算し、無限データの限界に外挿することによりなされる。125msの時間窓を用いて、補正因子は常に0.07ビット未満であった。
【0132】
更に、同様な入力sEPSC頻度を用いて時間ビンの出力スパイク頻度を平均することで、各ニューロンについて入力−出力伝達関数を推定した。入力−出力関数の形状は、ベースライン及びオプシン活性化条件を別々に処理し、各ニューロンのダイナックレンジ及び飽和点を計算することで数量化した。ダイナミックレンジは、全入力sEPSC頻度範囲における最大と最小のスパイク発生率の差として定義した。飽和点は、その条件内でその最大出力スパイク頻度の90%ニューロンを駆動した最小入力sEPSC頻度として定義した。飽和点の低下は、ゲイン又はダイナミックレンジの倍数的低下によるものではありえず、より高い入力sEPSC頻度で入力−出力関数がより平坦になることを示している。
【0133】
行動試験
行動実験を受ける全動物を12時間の逆転明暗サイクルに馴化させた。行動試験の前に、実験を開始する前に少なくとも1時間、実験を行う部屋に動物を馴化させた。
【0134】
恐怖条件付け装置は、ショック・ジェネレーターに接続された格子床及びスクランブラーを有する正方形の条件付けケージ(18×18×30cm)からなり、音響チャンバー(米国ペンシルベニア州のコウルバーン・インスツルメンツ社(Coulburn instruments)製)に囲まれている。訓練及び/又は試験中に光を送達できるように装置を改変した。恐怖条件付けを導入するために、マウスをケージに120秒間入れた後、純音(2.9kHz)を20秒間鳴らし、その後、フットショック(0.5mA)を2秒与えた。その後、この手順を繰り返し、マウスをホームケージに戻す前に、第2のショックを与えた後更に30秒間、直後のフリージング反応をモニタリングした。主な恐怖反応行動であるフリージング(完全な静止)の連続行動測定により、24時間後に恐怖条件付けを評価した。文脈的恐怖条件付けを調べるために、マウスを最初の条件付けケージに入れ、5分間フリージングを測定した。聴覚を手がかりとする恐怖条件付けを調べるために、マウスを異なる状況に置いた(床が滑らかなピラミッド型のケージ)。新しい環境の影響に対する対照として、この新しいケージ中で2.5分間フリージングを測定し、その後、2.9kHzの音を2.5分間鳴らし、その間、条件付けされたフリージングを測定した。473nmレーザーに接続された特別仕様のパッチコードを介して光を送達することにより、光ファイバーコネクターを介した光刺激を与えた。光パルスは、ファイバー先端のパワー98mWmm−2で2秒間送達した。文脈条件付け試験及び手がかり条件付け試験の結果をスチューデントt検定で分析した。
【0135】
ホームケージ中での社会的相互作用を分析した。簡潔に述べると、ホームケージ中の1頭のマウスを、ケージの上部がない状態で1分間自由に歩き回らせた。新たな若い(3〜4週齢)雄の侵入者を居住雄対象の反対側のコーナーに入れ、2分間自由に歩き回らせた。居住マウスが侵入者を能動的に探索した時間として社会的相互作用をスコア化し、2頭のマウスの物理的相互作用を視覚的に定量化した。刺激の試行は、図示されているように、慢性的に植え込まれた非侵襲的な頭蓋骨ファイバー接続デバイス又は慢性的に植え込まれた光ファイバーケーブルに接続された光ファイバーケーブル(ドリック・レンズ社製)を介して送達される473nm光の2秒パルスを与えることにより行った。実験及び1分間の馴化期間の前にファイバーを分離した。
【0136】
3チャンバー社会性試験を行った。3チャンバー装置の中央の部屋に被験マウスを入れ、横の2つの部屋への扉を閉めたまま、10分間馴化させた。10分間の馴化期間の最初と最後に光パルスを印加した。馴化期間の最後に新たな同種の雄マウスを「ソーシャル」チャンバー内のワイヤーメッシュカップ(Galaxy Pencil/Utility cup、スペクトル・ダイバーシファイド・デザイン社(Spectrum Diversified Designs)製)の中に入れた。残りの(非ソーシャル)チャンバーには同じ空のカップを置いた。チャンバーのバイアスを避けるために各試験でソーシャルチャンバー及び非ソーシャルチャンバーの指定はランダムに選択した。試験間に、チャンバーを20%エタノールでクリーンにし、次の試験を開始する前に完全に乾燥させた。自動追跡ソフトウェアViewer II(ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社(BiObserve)製)を用いて、非ソーシャル、中央、及びソーシャルチャンバーで費やした時間を定量化した。ベースラインで社会的探索の選好(preference)を示さなかったマウスは分析から除外した。
【0137】
社会的行動試験に用いたのと同じ3チャンバー装置中で、全体的に同じ方法を用いて、新規物体探索実験を行った。両側のチャンバーへの扉を閉じた中央チャンバーにマウスを入れた。光パルスを10分間の馴化期間中送達し、その後、扉を開いてマウスが装置全体を探索できるようにした。ワイヤーメッシュカップの代わりに、両端のチャンバーのいずれかに新規物体をランダムに置いた。各マウスについて、マウスが能動的に物体を探索した時間として10分間にわたる新規物体の探索をスコア化した。使用した物体は、ほぼ同じ大きさのプラスチックボール、キューブ、又は陶器の小像のいずれかであった。匂いのトレースを防ぐために試験間に物体を完全にクリーンにした。
【0138】
オープンフィールドチャンバー(50×50cm)を、中央フィールド(中央、23×23cm)及び外側フィールド(周辺部)に分けた。個々のマウスをフィールドの周辺部に配置し、動物の進路をビデオカメラで記録した。Viewer2ソフトウェア(ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社製)を用いて、移動した総距離を分析した。各マウスのオープンフィールド試験は、2つの2.5分のセグメントに分けられた5分のセッションからなり、2つのセグメントの間に2sの473nm光パルスを送達した。トラック長、速度、及び中央にいた時間の%を各マウスについてスコア化し、各条件について全マウスの平均を出した。
【0139】
高架十字迷路はプラスチック製であり、中央のプラットフォーム(5×5×5cm)31から十字架状に90度に延びる壁のない2つの薄い灰色の道(open arm;30×5cm)及び壁のある2つの黒色の道(closed arm;30×5×30cm)からなる。迷路は床から30cm上に置いた。各マウスについて、マウスがホームケージにいる時に2sの473nm光パルスを送達した。5分後、光ファイバーコネクターを外し、迷路の中央にマウスを個々に置き、15分間試験した。ビデオ追跡ソフトウェア(Viewerll、ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社製)を用いてマウスの位置を追跡した。示されている全測定はマウスの体全体に対するものである。
【0140】
覚醒マウスにおける長期電気生理学的記録
ウイルス形質導入組織内及び形質導入領域の外部の両方の部位で同時に記録するために、光送達と組み合せて覚醒動物を記録できるように新規な慢性多点オプトロード(chronic multisite optrode:CMO)を設計した。4つの25μmタングステンワイヤーのアレイを用い(カリフォルニア州グローバービーチのカリフォルニア・ファイン・ワイヤー社(California Fine Wire Company)製)、一緒に巻いて、約500gm刻みでカットし、これらの4ワイヤーバンドルを、200μmのコア光ファイバーケーブルがそこから延びる直径2.5mmの金属フェルールからなる植え込み可能な光ファイバー光ガイド(implantable fiberoptic lightguide:IFL;カナダ、ケベックのドリック・レンズ社製)に接続した。4ワイヤーバンドルを、光ファイバーケーブルが挿入された直径250gmのガイドチューブ中に戻し入れた。ゴールドピンを用いてワイヤーをMill−Mixコネクターに連結し、これにステンレス鋼アース線も連結した。ウイルス感染(上記参照)後に、ファイバー先端が頭蓋骨をちょうど貫通するが脳組織中には延びないように、デバイスを定位的に植え込んだ。アース線は、小脳の上の小さな開頭部から挿入した。実験を始める前にマウスを2週間回復させた。
【0141】
行動中の神経活動を記録するために、マウスを最初に、ヘッドステージ及び光ファイバーケーブルの取り付けに数日間慣れさせた。毎日1〜2時間ヘッドステージを付けてマウスにホームケージを探索させた。 手術の2〜4週間後に記録を行った。シグナルは、ヘッドステージで多重化され、電気整流子(プラスチックス・ワン社製)を通る3ワイヤーケーブルへ送られ、デマルチプレックスボード(トライアングル・バイオシステムズ社(Triangle BioSystems,Inc.)製)を用いて多重分離され、ニューラリンクス社(Neuralynx)製Digital Cheetahを用いてデジタル化された。光ファイバー及び電気整流子は(例えばオープンフィールド試験におけるように)マウスが広い領域を自由に探索できるように、重りの付いたアーム(weighted arm;ハーバード・アパラタス社製)に吊した。この構成はまた、(社会的相互作用試験中に)記録マウス及び若い侵入者の両方が余分なワイヤー又は光ファイバーに接近するのを防止し、機器へのダメージを最小限に抑えた。ビデオはニューラリンクス社製Cheetahソフトウェアを用いて記録され、Viewer II(ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社製)を用いてオフラインで分析されて、オープンフィールドの行動が定量化された。社会的相互作用及び新規物体探索は、他の行動実験同様、手作業でスコア化した。LFPを1〜500Hzでフィルタリングし、周波数6.5kHzでサンプリングした。マルチユニット活性を32kHzで記録し、全チャネル上で閾値40μVで個々のイベントを収集した。
【0142】
LFP記録のウェーブレットパワースペクトログラムを、記録中2秒ごとにパワースペクトルをサンプリングすることにより前述のように分析した。パワーは2Hzと120Hzの間でビン幅を2Hzとして計算した。全マウスにおいて、2分間のベースライン記録、続いてファイバー先端での照射量56mWmm−2で1sの473nmパルスというプロトコールを用いて、SSFO活性化の影響を記録した。青色パルスの後、活性を2分間記録し、その後、同様な強度で波長594nmの光パルスで30s脱活性化した。その後、活性を更に2分間記録した。各マウスについて、このプロトコールを少なくとも4回繰り返し、3つの期間(活性化前、活性化後、及び脱活性化後)のそれぞれについて4反復分のパワースペクトルを平均化した。
【0143】
前述したようにホームケージパラダイムを用いて電極植え込みマウスを用いた社会的行動実験を行った。各試験に新しい若いマウスを用いて、光なしと光ありの試行は少なくとも24時間離した。試験は、ベースライン記録2分間、次いで1s活性化光パルス後の記録1分間からなり、その後、若い侵入者を入れた。社会的行動を2分間スコア化し、その後、若いマウスを除き、30sの594nm光パルスでSSFOを脱活性化した。記録は全期間で取得し、上記ホームケージ記録で記載したのと同じように分析した。2分間の社会的相互作用期間のパワースペクトルを、光なし及び光ありの実験の両方で全マウスの平均を出した。これらのマウスにおける新規物体実験は、新たな若いマウスを無生物物体に置き換えて同じ方法で行った。
【0144】
データ分析
対応のある又はない両側t検定を適宜用いて統計的有意性を計算した。Matlab Statistics toolbox又はマイクロソフト エクセルを用いてデータを分析した。
【0145】
免疫組織化学
行動分析を受けた動物にケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、氷冷PBS、次いで4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液(4%PFA)で経心的に灌流した。単離した脳を4%PFA中で4℃にて一晩、後固定(post−fix)し、その後、30%スクロースを含むPBSからなる無菌抗凍結剤中に定着するまで(4℃で2〜3日)浸した。凍結ミクロトーム(ライカ社製)を用いて40μm冠状スライスを回収し、PBSで洗浄し、0.3%トリトンX100(PBST)中で透過処理し、PBSに溶解した3%正常ロバ血清中で室温にて1時間ブロッキングした。灌流の90分前に1sの473nm光刺激を受けた動物で、ウサギ抗c−fos(カルビオケム社製)を用いてc−fosの核局在を決定した。マウス抗パルブアルブミン(シグマアルドリッチ社製)及び蛍光タンパク質の共局在を利用して、パルブアルブミンの標的化を確認した。染色したスライスをライカ社製SP5共焦点顕微鏡上で可視化した。種々の解剖学的小領域における平均蛍光を計算するために、ImageJを用いて組織画像を分析した。個々の小領域画像を固定閾値レベルで二値化した。閾値を超える平均蛍光を計算し、マウス間で領域毎に平均化した。c−fosの計数は、領域を特定するための標準的な目印を用いて行い、計数前にブラインド化した。計数は、スライス全体積のzスタック上で行った。データは同じ日及び同じ物理的条件下でc−fosの誘導を行った実験における実験条件間でのみ比較し、組織の調製、染色、及びイメージングは標準的な条件下で行った。
【0146】
結果
最初に、神経細胞集団中でのSSFO誘導活性の影響を細胞レベルで評価するために、2sパルスの470nm光刺激から90分後の最初期遺伝子産物c−fosの発現をインビボで調べた(図3C)。ウイルス的に形質導入して光学的に刺激した半球において、(図3B中で区切られている)前辺縁/下辺縁亜領域全体のc−fos陽性ニューロンの数を定量化した。CaMKIIα−YFPウイルスを注射された動物(対照)では、335±107個のmPFC細胞がベースラインで検出可能なc−fosを発現していた。それに比べ、PVニューロン中にSSFOを発現するマウス(PV::SSFOマウス)はmPFC中で対照より有意に少ないc−fos発現細胞を示した(81±7細胞、n=5マウス;p<0.005、両側t検定)。驚くべきことに、これらの細胞の大部分が実際YFP陽性であった(全c−fos陽性集団の61±8%;図3C)。このことは、これらの活性細胞のほとんどさえ、実際はウイルス的に送達されたSSFOにより直接活性化されたPV陽性ニューロンであることを示している。一方、興奮性細胞中にSSFOを発現するマウス(CaMKIIα::SSFOマウス)は、ウイルス的に形質導入された半球(1455±305細胞;n=3マウス;p<0.05、両側t検定;図2C)及び対側半球(617±97細胞;n=3マウス;p<0.05)の両方でc−fos陽性核の有意な増加を示したが、脳の他の領域へと超えてはおらず(図3M)、これは活性化が主に局所及び対側半球に伝播したことを示している。これらの発見は、覚醒マウスにおけるSSFOの予想された標的化、有効性、及び方向性を実証している。
【0147】
行動試験を受ける3群の動物(図3D〜G)CaMKIIα::SSFOマウス、PV::SSFOマウス、及び対照マウス(AAV5−CaMKIIα−eYFPウイルスを注射された又はウイルスを注射されていない)。手術の2〜4週間後、条件付け学習及び非条件付け社会的行動並びに新規物体の探索及び歩行運動機能を試験した(図3D〜G)。全ての動物に、植え込んだ光ファイバーコネクターを介して470nm光の単一1sパルスを与え、その後、行動チャンバーに入れる1分前に光ファイバーケーブルを取り外し、SSFOの安定性を利用した。
【0148】
細胞E/Iバランスが上昇したマウスで選択的に、社会的行動及び条件付けの両方で著しい欠損が観察された(図3D〜G)。最初に、実験動物のホームケージに入れられた同姓の若いマウスの非条件付け社会的探索を調べた49。新たなマウスの探索は、対照と比べて、1sの470nm光パルス後にE/I上昇群(CaMKIIα::SSFO)で事実上消失しており(n=8CaMKIIα::SSFOマウス及びn=6対照;p<0.0005、対応のないt検定)、一方、PV::SSFOマウスはこの行動に何ら影響を示さなかった(図3D及び2;n=6PV::SSFOマウス;p>0.1;対応のないt検定)。次いで、同じマウスを、1sの470nm光パルス送達後すぐに行われた条件付けプロトコールに供した。24時間後、E/Iバランス変更下でマウスが学習して条件付け刺激及び非条件付け刺激をどの程度関連付けるているかを評価するために、条件付けされた音及び文脈への反応を評価した。上昇E/I(CaMKIIα::SSFO)動物は条件付けされた反応を示さなかった(対照と比べて、文脈:p<0.0005又は音:p<0.05;両側t検定)。更に、欠損は完全に可逆的であり、SSFO活性化なしで24時間後に同じ動物を再度条件付けすることができ、翌日試験した時に対照群と識別できない恐怖条件付けを示した(図3E;p>0.1、手がかり及び文脈;対応のないt検定)。一方、E/Iバランスを低下させたPV::SSFO群は、社会的行動の場合と同様に、音及び文脈のどちらへの反応でも、対照と比べてフリージング行動の有意な損傷を示さなかった(図3E;それぞれp=0.09及びp=0.56;両側t検定)。同じマウスでオープンフィールド行動は正常であった(n=8CaMKIIα::SSFOマウス及びn=6CaMKIIα::YFPマウス;図3F及び図3N)ため、E/Iバランス上昇に関連する行動的障害は運動機能の変化によるものではなかった。
【0149】
実施例4:細胞E/I上昇は情報処理の量的低下を招くが、細胞E/I低下は量的低下を招かない
次いで、前頭前野E/Iバランス変化による行動障害の神経生理学的基盤を調べた。自閉症では、消耗性てんかんの同時罹患率が30%であるという知見から、過剰興奮が関係することが示唆され、自閉症及び統合失調症の両方における基本的な行動障害の一部の原因に皮質の興奮又は抑制の変化があることが提唱されている。
【0150】
材料及び方法
事前にウイルスを注射した8〜9週齢野生型C57BL/6J又はPV::Creマウスから単離した300pmの急性冠状スライスを、ビブラトーム(ライカ社製)を用いて、氷冷スクロースカッティング溶液(11mM D−グルコース、234mM スクロース、2.5mM KCl、1.25mM NaHPO、10mM MgSO、0.5mM CaCl、26mM NaHCO)中に得た。スライスを酸素化人工脳脊髄液(ACSF;124mM NaCl、3mM KCl、1.3mM MgCl、2.4mM CaCl、1.25mM NaHPO、26mM NaHCO、10mM D−グルコース)中で32℃で1時間リカバリーした。一定のACSF灌流下で図示されている前頭前野皮質層から蛍光タンパク質発現を特定した後、個々のニューロンパッチを得た。広波長キセノンランプ光源(サッター・インスツルメンツ社製DG−4)からのフィルタリングされた光を顕微鏡(ライカ社製DM−LFSA)の蛍光ポートに接続した。各実験の前に、590nm光の20sパルスを印加してSSFOチャネルを全て暗状態に変換して光電流のランダウンを予防した。露出100ms、ゲイン30でRetiga Exi CCDカメラ(Qイメージング社製)を用いて、同じ顕微鏡上で培養細胞画像を取得した。照射パワー密度は標準的なEYFPフィルターセットを用いて500nmで12mWmm−2であった。ImageJソフトウェアを用いて、平均蛍光ではなく、細胞体及び近位神経突起を含む領域をマーキングし、各細胞についてその領域の総積分ピクセル強度を計算することにより、蛍光の定量化を行った。これは、光電流が面積当たりの平均チャネル発現量ではなく膜結合チャネルの総数に関連すると考えられるからである。各光パワーで顕微鏡対物レンズを通るフォトン束を計算し、個々のパッチされた細胞の静電容量に基づいて、細胞表面を横切るフォトン束が得られるように割ることにより、SSFO積分特性を得るためのフォトン束の計算を行った。
【0151】
生きた物実験では、前述したように表記のウイルスコンストラクトを予め形質導入した野生型成獣C57/BL6雄マウスの前頭前皮質において光学的刺激及び電気的記録を同時に行った。簡潔に述べると、開頭術の前に動物にイソフルランで深い麻酔をかけた。マウスの位置を定位的に調整し、前頭前皮質の背側の頭蓋骨(1.8mm前側、0.35mm外側を中心)を外科的に除いた後、N.A.0.2、コア直径200μmの光ファイバーケーブル(ソーラボ社製)の平滑末端の下約400μmに先端を接続したMO0.005インチ細胞外タングステン電極(A−Mシステムズ社製)(「オプトロード」)を、ウイルス的に形質導入された脳領域に定位的に挿入した。記録されたシグナルを、300Hz〜20kHzのバンドパスフィルターに通して10000倍にAC増幅し(A−Mシステムズ社製モデル1800)、デジタル化し(モレキュラーデバイス社製Digidata 1322A)、Clampexソフトウェア(モレキュラーデバイス社製)を用いて記録した。フィールドシグナルの記録及び473nm(OEMレーザーシステムズ社製)及び561nm(クリスタルレーザー社(CrystalLaser)製)(オプトロードに接続された10mWの固体レーザーダイオード源)の制御の両方にClampexソフトウェアを用いた。電気生理学的記録は、イソフルラン麻酔を1%の一定レベルに下げた後、Cg/PL境界(1.8mm前側、0.35mm外側、−2.0mm腹側)で開始した。オプトロードを腹側に0.1mmずつ下げた。閾値をベースラインノイズ(25〜40μV)より高く設定してマトラボ(Matlab)(マスワークス社(Math Works)製)で特注のアルゴリズムを用いてイベントを単離した。2sの非加重移動平均(200msステップ)から、Matlabでヒートマップイメージを作成した。移動平均値は外部操作開始(スイープの開始、光パルスの開始)時にリセットされた。
【0152】
結果
行動障害を起こす前頭前野超小型回路内のE/Iバランス変化の回路生理学的発現を調べるために、CaMKIIα::SSFOから前頭前皮質の急性スライスを調製した。コリン作動性アゴニストの20μMカルバコールで誘発した継続的非同期シナプス活性の存在下でホールセル記録を行った52〜54。SSFO活性化のみではスパイク発生は観察されなかった。単一青色光パルスによる回路全体のSSFO活性化は、記録されたSSFO発現ニューロンを9.8±1.4mV脱分極させる効果を有しており(n=7細胞;図4A)、これは一部、入ってくるシナプス活性の増大を引き起こすことによるものであり(図4A、挿入図)、どちらの効果も黄色光で消失した。発現細胞及び非発現細胞両方におけるSSFOへの応答のスペクトル分析から、この活性増加が20Hzより上にピークを有する幅広いスペクトル範囲を示すことが明らかになった(図4A〜B)。一方、PV細胞中にSSFOを発現するスライス中の錐体細胞は、低周波数でシナプス活性の大幅な低下及びパワーの低下を示し(図4C)、これはSSFOによる活性化後のPV細胞の活性増加と一致していた(図4D)。
【0153】
総合すると、これらのデータ及び図3のc−fosデータから、mPFC中の細胞E:Iバランスを上昇又は低下させるインターベンションは新皮質ニューロン活性に強く影響を与えることが明らかとなったが、mPFC中の細胞E:Iバランスの上昇だけが行動障害を誘導したので、mPFC中における情報処理がそれぞれの場合にどれだけ変化するかをより深く理解するための試みを行うことにした。前頭前野超小型回路の情報伝達へのE/Iバランス変化の影響を調べるために、オプシン発現錐体ニューロンを形態及び蛍光により特定し、CaMKIIα::SSFOマウスの急性スライスにおけるホールセル記録を行った。時間をかけて幅広いシミュレートEPSC頻度にまたがるように設計されたsEPSC列でホールセルパッチクランプ中のニューロンを刺激し(図5A)(SSFO発現細胞)、実際、青色光活性化は低いsEPSC頻度で興奮性を増加させたが、より高いsEPSC頻度において入力−出力(IO)曲線が飽和し(図5b)、その結果、入力EPSC頻度と生じるスパイク頻度との間の相互情報量が有意に減少した(−0.40±0.09ビット;p=0.011、対応のあるスチューデントt検定;図5C)。このことは、細胞E/Iバランスの上昇により新皮質主細胞における情報処理が量的に損なわれることが実証している。次に、新皮質主細胞における情報処理に対する細胞E/Iバランス低下の影響を調べるために、PV::SSFOマウスの急性スライス及びsEPSC列で刺激された非発現錐体細胞を先ほどと同じように記録した(図5D)。PV細胞中のSSFOの活性化は、シナプス抑制から予測されたように、記録された錐体細胞におけるIO曲線のゲインをかなり低下させた(図5E)が、このケースでは飽和せずにIO曲線の全体的形状が保存されており、驚くべきことに、錐体細胞中の入力sEPSD頻度と生じるスパイク頻度との間の相互情報量に有意な影響を与えなかった(図5F)。
【0154】
PV::SSFO活性化の方がスパイク頻度に(どちらかと言えば)大きな影響があった(図5B、E)にも関わらず、主mPFC細胞の情報処理量の減少は、相互情報量を計算するために用いた幅広い時間ビン幅(図5G〜H)及び入力頻度ビン幅(図5I〜J)の両方で、PV::SSFOマウスと比べてCaMKIIα::SSFOマウスの光活性化後で有意に大きかった(4.8倍、p=0.0144、対応のないt検定)。総合すると、これらの行動及び情報データは、自然な直感的想像では抑制が情報処理にとってより破壊的であろうと考えがちであるが、実際には、mPFC回路及び行動パフォーマンスに有害なのはE/Iバランスの上昇であり、これは、自閉症等の障害が興奮性上昇表現型に臨床的に関連付けられることと一致する。今回実証された細胞E/Iバランスに誘導される社会的機能障害が、自閉症及び統合失調症等の重度のヒト精神神経疾患状態で見られる回路処理及び社会的機能障害に関連する場合、これらのヒト疾患状態の特徴的電気生理学的マーカーもこのモデル動物中に見出されるであろうという重要な予測がなされる。自閉症及び統合失調症両方の一般的な臨床的電気生理学的マーカーは、上昇したベースライン(誘起なし)ガンマパワー(30〜80Hz)であるから、特異的に細胞E/Iバランスを上昇させた覚醒自由行動マウスにおいてこの一致する臨床マーカーを測定することにより、この生理学的マーカー仮説を試験した。
【0155】
必要な感度でこの可能性を試験するためにmPFC中に多点記録電極を更に挿入する必要があった。光送達のための刺入光ファイバーと組み合わせたそのようなデバイスの更なる存在は、小さなマウスmPFC回路にとって非常に破壊的過ぎるか空間的に侵襲的過ぎる可能性があるが、この実験を可能にする2つの重要な特徴を有する戦略を開発して実施した。第1に、慢性植込み用記録デバイスを設計し、記録電極に慣れた動物において記録ができるようにした。第2に、SSFOのフォトンインテグレーション特性を利用して、光学機器がないだけでなく、どの時点でも(IL及びPLのような深い構造でも)如何なる光学機器も脳自体に刺入しない行動試験を可能にした。深い皮質構造中のSSFO発現細胞を実際に調節できることを検証するために、CaMKIIα::SSFO又はCaMKIIα::EYFPウイルスを注射し、皮質表面に入ることなく(図6B)頭蓋骨だけを通過して延びる光ファイバーコネクターを植え込んだ(図6A)。これらの動物におけるc−fos分析により、この侵襲性が最小限である形態におけるE/Iバランス上昇の方向性を検証した(n=3CaMKIIα::SSFOマウス及びn=4CaMKIIα::EYFP対照マウス;p=0.034、両側t検定;図6C)。条件付け中の細胞E/Iバランス上昇は、フットショックに対するフリージング反応への影響を示さなかった(嫌悪非条件付け刺激のインタクトな知覚を示している;図6D)が、文脈条件付け(p<0.005;対応のない不等分散のt検定)及び聴覚条件付け(p<0.005;対応のない不等分散のt検定)に対する顕著且つ完全に可逆的な影響を示した(図6D)。重要なことに、社会的行動も、試験前に非侵襲的光刺激を受けたマウスにおいて損なわれ(p<0.005;対応のないt検定;図6E)、SSFOの非常に高い光感度によりもたらされる機会が実証された。
【0156】
これらのマウスからの直接的な電気生理学的読取り値を得るために、照射組織内の種々の深さの神経活性が同時にサンプリングされるように、光ファイバーコネクターがガイドチューブを通ってファイバーの先端から0.5mm刻みの長さで切断された4つの25μmタングステンワイヤーに接続されている、新規な慢性多点オプトロード(CMO)を設計した(図6F)。実験の最後に、電気分解的損傷を用いて電極位置に印を付け(図6G)、個々の記録を取った解剖学的位置が特定できるようにした。どの光ファイバーも組織中に刺入されていなかった。CaMKIIα::SSFOウイルスを注射され、深さサンプリングオプトロードを植え込まれた3頭のマウスにおいて、社会的行動がベースラインで正常であり、1sの470nmパルス後に損なわれることが初めて確認された(図6H;p=0.044、対応のあるスチューデントt検定)。しかし、本発明者らの以前の知見と一致し、同じ動物は新規物体の探索に対する光の影響を示さなかった(図6H;p=0.82、対応のあるスチューデントt検定)。更に、不安減少の傾向が明らかであった(中央にいる時間の増加率;図7A)が、慣れたホームケージにおける歩行行動(図示せず)及び新規オープンフィールドにおける歩行行動は1sの活性化パルス後に有意に変化していなかった(図7A)。CMO植込み状況における行動表現型を検証するためのこれらの実験中、全てのチャネルで同時に活性を記録し、SSFO活性化により生じた変化を分析した。
【0157】
2分間の活性化前ベースライン、1sの470nm光パルス、2分間の連続記録、及びSSFOを完全に脱活性化する590nm光の30sパルスからなるプロトコールを用いて、動物のホームケージにおける記録を最初に分析した。このプロトコールを各マウスで4回繰り返し、単位活性のトレースを全試行で平均化した(図6I)。SSFO発現領域内のチャネルからのマルチユニット記録では、調節されたチャネルで、青色光パルスに応答したスパイク発生の有意な増加が観察された(図6I〜J;77±18%;非調節チャネルの−3.4±4.4%と比較;n=記録された3マウスの4調節チャネル及び4非調節チャネル;p=0.02;両側t検定))。
【0158】
調節チャネルの局所フィールド電位(LFP)記録における顕著な変化も観察された。ウェーブレットスペクトル解析を用いて、各チャネルのLFP活性の時間解像スペクトログラム(図6K〜L;左)を作製し、活性化前ベースライン期間と活性化後期間との間の平均変化を定量化した。非調節チャネルでは、LFPへの活性化パルスの明白な影響はなく(図6K、左)ベースライン期間と比べて活性化後及び脱活性化後期間の全周波数においてパワーが平均的に少しだけ低下していた。(図6K、右)。一方、ウイルス的に形質導入された領域内に位置する調節されたチャネルはSSFOでの活性化後にガンマ帯活性の顕著な増加を示し(図6L)、これは明確に活性化期間に時間的に限定されており、590nm脱活性化パルスにより終了した(図6L、右)。ガンマ帯活性の上昇はガンマ活性上昇を示した同じチャネル内のより低い周波数パワーの低下と関連していた(図6L、右;挿入図)。これらの動物でなされた行動実験中に行われた記録の同様な分析は、オープンフィールド実験(図7B)、社会的探索試験(図7C)、及び新規物体探索試験(図7D)の行動試験中に1sの470nm光パルスを送達した実験において一致したガンマ帯活性の上昇を示した。総合すると、これらのデータは、社会的障害を有する自由行動哺乳動物において、自閉症及び統合失調症で見られる生理学的バイオマーカー(ベースラインガンマ帯活性の上昇)が、選択的細胞E/Iバランス上昇と共に保存されていることを示している。
【0159】
最後に、インビボでE/Iバランス上昇により誘導されるガンマを誘導及び発現した新皮質回路(図6)がそれ自体で、他の脳領域の非存在下で、この生理的現象を生じさせることができるかどうかを調べた。急性スライスはインビボ標本よりも急激なオシレーションパターンに不応性であるが、この低下した標本でさえ、中程度のCaMKII::SSFO活性化(図4A〜B)条件下での電流固定膜電位における20〜80Hz帯のパワー上昇及び利用可能な最も強力なチャネルロドプシン(CaMKII::C1V1−E162T)を用いた電流固定膜電位における30〜80Hzガンマの上昇が見られた。
【0160】
高い光パワー密度(12mWmm−2)では、ガンマ周波数で最大のパワー増大(30〜80Hz;図8B)が観察された。それより低い光パワー(4.3mWmm−2及び0.6mWmm−2)では、単調に低下したガンマパワー及びより低い周波数で比較的増大したパワーが観察された(シータ、8〜12Hz及びベータ、15〜25Hz;図8B〜C)。電位固定条件下で、0mVで記録されたIPSC及び−60mVで記録されたEPSCの両方の対応するスペクトルを分離した(図8A)。総合すると、これらの結果は、前頭前皮質において内因的に発生したガンマオシレーションという生理学的バイオマーカーと安定的E/Iバランス上昇との間の単調な関係と一致している。
【0161】
ここに提示したデータは、mPFC中のE/I比上昇の結果としての社会的行動の特異的損傷を示している。原則的に、E/I比の上昇は、抑制性細胞を抑制することでも達成され得る。但し、この機能喪失型のアプローチは、抑制性細胞の高く安定なベースライン活性パターンがあるというありそうにないイベントにおいてのみ効果を示すことが予測される。実際、ホームケージ又は3チャンバー社会的探索パラダイムに、AAV5−EF1α−DIO−eNpHR3.0−EYFPウイルスをPV::Creマウスの両半球のmPFCに注射して(PV::eNpHR3.0マウスの作出)、両側に光ファイバーコネクターを植え込んだ場合、予想され得たように、これらの条件下でeNpHR3.0の活性化に関連した行動障害は見られなかった(図9)。しかし、細胞E/I比上昇仮説の核心となる、より重要な疑問は、抑制の増大が、興奮性細胞のSSFO活性化により生じたE/Iバランス上昇に関連する行動障害をレスキューする方向で作用し得るという予測である(図3)。
【0162】
C1V1は、ボルボックスのVChR1陽イオンチャネル及びコナミドリムシのChR1陽イオンチャネルに由来するキメラ光感受性タンパク質である。C1V1及びそのバリアントは、高い有効性(high potency)での皮質E/I上昇の実験的操作及び皮質スライスにおけるガンマオシレーションのモニタリング(これにより用量反応試験が可能になる)、低い脱感作(E/Iバランスの階段様変化の誘導を可能にする)、並びにレッドシフトした興奮(同じ神経回路内の異なる集団を別々に駆動することを可能にする)を可能にする。本例では、最も信頼できる用量反応を可能にする最も有効性の高いC1V1バリアントを選択した。上記の予測を試験するために、自由行動マウス用の組合せ的光遺伝学的実験を設計し、スペクトルを最大限離して、SSFOで錐体細胞を駆動し且つC1V1−E122T/E162Tを用いてPV細胞を共活性化する(又はしない)ように、C1V1及びSSFOの固有なスペクトル特性及び時間的特性を強化した。PV::CreマウスのmPFCに、AAV5−CaMKIIα−SSFO及びAAV5−EFlα−DIO−C1V1−E122T/E162Tの組合せを注射し、錐体ニューロン中でSSFOを、PV細胞中でC1V1を発現させた(ここではSSFO/C1V1マウスと呼ぶ;n=7)。第2のマウス群には、CaMKIIα−SSFOウイルスだけを注射し(CaMKIIα::SSFO、n=9)、対照マウスにはCaMKIIα−EYFPを注射した(n=10)。2〜4週間後、C1V1−E122T/E162T(590nm光で駆動)及びSSFO(470nmピークで強力な電流が得られるように駆動;図10A)を分離するスペクトル時間的戦略を用いて、4つの異なる照射パラダイム下でマウスの3チャンバー社会性試験を行った。最初の特徴解析は光送達なしで行い、ベースラインの社会的選好(social preference)を得た(図10B)。この試験では、全マウスが、ソーシャルチャンバーへの有意な選好を示した(図10B図11;CaMKIIα−SSFOマウス、p=0.002;SSFO/C1V1マウス、p=0.0003;CaMKIIα−EYFPマウス、p=0.032)。
【0163】
次に、同じパラダイムのマウスを、SSFO/C1V1マウス中のPV細胞中のC1V1−E122T/E162Tだけを活性化するように590nmのパルスレーザー光を送達しながら、新たな若いマウスと試験した(図10B)。この試験でも、先のPV::SSFO実験と一致して、全マウスが新たな若いマウスへの正常な選好を示した((図10C及び図11;CaMKIIα−SSFOマウス、p=0.008;SSFO/C1V1マウス、p=0.005;CaMKIIα−EYFPマウスp=0.014)。3番目の試験では、試験前の馴化期間中に2sの470nm光パルスでSSFOを活性化した(図10B)。この試験では、CaMKIIα::SSFO群及びSSFO/C1V1群はどちらもソーシャルチャンバーへの選好を示さなかった(図10C〜D;それぞれp=0.21及びp=0.87)。これはCaMKIIα::SSFOマウスにおける本発明者らの先の観察(図3I)と一致する深刻な社会的行動障害である。ここでスペクトル時間的分離の重要性に注目されたい。SSFOを最大限駆動するための470nm光を使用すると確実にC1V1−E122T/E162Tも駆動されるが、対照的なC1V1−E122T/E162T一時性及びSSFOの安定性により、2sの470nm光パルス後に行われる行動試験はSSFO活性の存在下のみになる。最後に、行動試験期間全体で470nm光パルスを10Hzで送達することにより興奮性細胞中のSSFOの活性化に抑制性細胞中のC1V1−E122T/E162Tの更なる活性化を加え、細胞E/Iバランスを補償することによる行動障害のレスキューを試みた(図10A〜B)。これらの照射条件下、CaMKIIα::SSFOマウス(活性化されるC1V1−E122T/E162Tなし。純粋な細胞E/Iバランス上昇を経験)は、ソーシャルチャンバーへの有意な選好のない重度な社会的行動障害を示した(図10C;p=0.59)が、対照的に、SSFO/C1V1マウスでは、この補償的な抑制性ニューロンの活性増大により、ソーシャルチャンバーへの選好が回復した(図10D;p=0.005)。予想された通り、対照CaMKIIα−EYFPマウスは、2s 470nm及び10Hz 470nm刺激パラダイムの両方でソーシャルチャンバーへの有意な選好を示した(図11)。
【0164】
考察
複数の証拠から、自閉症及び統合失調症における薬物療法に不応答性の社会性障害及び情報処理障害の病因論において細胞興奮−抑制(E/I)バランス上昇の関与が示唆されてきた。しかし、1)個々の細胞型選択的制御ができず、2)関係する神経回路の働きに関して回路の発達及び成熟へのそのような制御の長期的影響とE/I異常の即時的影響とを切り離すことができなかったため、この仮説を正式に試験するのは困難であった。皮質超小型回路内の興奮及び抑制の密な相互作用及び薬理学的複雑さが、種々の疾患モデル及びヒト患者において観察される行動障害の主な要素としての細胞E/Iバランス上昇の確認を阻んでいた。今回、2つの新規な光遺伝学的ツールを用いることで、細胞E/Iバランス上昇仮説の直接的裏付けが得られ、生じる社会的機能障害の回路生理学的発現が同定された。
【0165】
上昇E/I状態をより完全に理解するために、その根底にある回路生理学的発現をインビトロ及びインビボの両方で探索した。これは細胞E/Iバランス上昇が開始させ得る幅広い回路現象を考えると複雑であることは間違いない。細胞E/Iバランス上昇は、皮質回路内の情報伝達が量的に損なわれるように主ニューロンの伝達機能を変化させることが見出された。これとは顕著に対照的に、E/Iバランスの低下(主細胞スパイク頻度への劇的影響にも関わらず社会的機能には影響しなかった)は、情報伝達を損なわず、主ニューロンにおいて伝達関数の全体的形状を保存していた。また、社会的機能障害に関連付けられる疾患状態の臨床マーカー(ベースラインガンマパワーの上昇)と、上昇細胞E/I状態における自由行動中の電気生理学的発見との間の一致が特定された。覚醒行動マウスにおいて記録及び光学的調節を組み合わせるために新規な慢性多点オプトロード(CMO)デバイスを用いて、上昇した細胞E/Iバランスにより生じる又は上昇した細胞E/Iバランスを直接経験する領域内で現れる強力且つ安定なガンマオシレーションに上昇E/I状態が関連することを見出した。これらのマウスにおいて、上昇E/I−ガンマ状態下で、歩行行動又は無生物物体探索における大きな変化は観察されなかったが、社会的行動の特異的障害が観察された。
【0166】
一次視覚皮質中のPFC以外の場所でのE/I比上昇は社会的行動を損なわせなかったことから、社会的行動へのE/Iバランス上昇の影響はPFCに特異的であることが示された。したがって、PFCネットワークは、その広範な皮質下結合性と共に、E/Iバランスのわずかな変化状態において精神関連症状を特に誘発し易いと考えられ、この考えは、精神疾患に関連するPFC抑制性マーカーの変化及び自閉症個体で観察されるPFCリズム性の変化が観察されることにより裏付けられる。PV陽性ニューロンが抑制された条件下での行動障害は観察されなかった。特に、PV陽性ニューロンを完全に抑制する能力は、発現の浸透度(DIO::SSFOはPV陽性細胞の約25%で発現)と影響が標的細胞のベースライン活性レベルに依存するという事実とにより限定される。
【0167】
最後に、上昇したE/Iバランスにより生じる障害を回復させようと試み、興奮性ニューロン(SSFOを用いて)及び抑制性PVニューロン(C1V1バリアントを用いて)の両方を独立して調節するために、広範囲に遺伝子操作した新規な赤色光活性化チャネルロドプシンのファミリー(まとめてC1V1バリアントと呼ぶ)を用いた。2つの光遺伝学的ツールの活性を一緒にスペクトル時間的に分離する新規な形態を用いて、細胞E/Iバランスを上昇させたマウスにおいて、細胞抑制を増大させると社会的行動障害が改善されることを見出した。
【0168】
実施例は発明の純粋な例であることが意図され、したがって如何なる点でも発明を限定するものと見なされるべきではない。実施例でも前述の本発明の態様及び実施形態を記載及び詳細に説明した。前述の実施例及び詳細な説明は、限定のためではなく、例示のために提供するものである。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許出願、及び特許を、それぞれの個々の刊行物、特許出願、又は特許が具体的に個々に参照により援用されると記載したのと同じように、参照により本明細書に援用する。特に、本発明に関連して使用され得る組成物及び方法を記載及び開示する目的で、本明細書中に引用した全刊行物を明示的に参照により本明細書に援用する。前述の発明は、理解し易いように図解及び例を用いていくらか詳細に記載されているが、当業者には、本発明の教示を考慮して、特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなくある程度の変更及び改変を発明に加えることができることは明らかである。
【0169】
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図1
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]