【実施例】
【0116】
実施例1:安定化階段関数オプシンの創出及び特徴解析
野生型(wt)ChR2(SFO、すなわち階段関数オプシン遺伝子産物;−r−off=2.5〜102秒)より最大4桁大きいタイムスケールで作動する長いタイムスケール(事実上双安定性)の光遺伝学的ツールが最初に開発された。ChR2のC128位におけるこれらの変異は、脱活性化の時定数で測定される光感受性を上昇させた。その後の研究で、光サイクル及び開状態の継続期間を延長するためのC128プロトンネットワークパートナーD156の変異により、初期のSFOのコンセプトを更に発展させた(
図1A)。しかし、どちらのクラスの変異も、哺乳動物行動のタイムスケールで十分な安定性を生じさせず、どちらも最初の5〜10分の間にかなりの減衰を示し、SFO発現ニューロンの延長照射は、場合によって、後期光サイクル中間体の副反応における光サイクル副産物の蓄積及び発色団の脱プロトン化によりチャネルロドプシンの不活性化を生じさせることがあった。そこで、組み合わせた変異体が開状態の十分な安定化を示す可能性があるという仮説を立て、C128及びD156を変異させることにより、哺乳動物の系における組合せ的光遺伝学に適した安定性を有する青色光活性化SFOの作製を試みた。SFOは青色光で活性化されるが、実際、黄色光で脱活性化され得るので、この付加的特性を維持することができれば、そのような安定なSFOは、組合せ制御を更に向上させ得るスペクトル域における側方抑制も送達するであろう。
【0117】
材料及び方法
部位特異的変異誘発(Quikchange II XL;ストラタジーン社製)を用いてpLentiCaMKIIα−ChR2−EYFP−WPREベクターに点変異を導入することによりChR2(D156A)及びSSFOを作製した。膜輸送シグナルはKir2.1チャネルに由来する。コード配列及びスプライスバリアントをシークエンシングすることで変異を確認した。AAVを介した遺伝子送達のために、改変pAAV2−MCSベクター中にCaMKIIαプロモーターと共にオプシン−EYFP融合物をサブクローニングした。不適合性(incompatible)lox部位セット(loxP及びlox2722)の間に逆向きにオプシン−EYFPカセットをクローニングし、伸長因子1a(EF−1α)プロモーター制御下に二重flox化(double−floxed)逆方向オープンリーディングフレーム(D10)を作製することにより、Cre依存的オプシン発現を達成した。全コンストラクトがDeisseroth Lab(www.optogenetics.org)から入手可能である。
【0118】
ピキア・パストリス細胞(株1168H、インビトロジェン社から購入)中でChRを異種発現させるために、アミノ酸1〜315(アクセッション番号AF461397参照)をコードするヒトコドン最適化合成ChR断片をpPICZベクター(インビトロジェン)中にEcoRI及びNotI制限酵素部位でクローニングした。ベクター上にコードされるC末端ポリヒスチジンタグを12His配列に改変した。部位特異的変異誘発(QuickChangeキット、ストラタジーン社製)によりChRの変異体を作製した。形質転換、細胞培養、及びタンパク質精製を行った。タンパク質発現を24時間誘導した後、細胞を収集し、高圧ホモジナイザー(アバスチン社(Avastin)製)を用いて穏やかに溶解した。膜画分を回収し、ホモジナイズし、1%(w/v)ドデシルマルトシドに可溶化した。Ni−NTA樹脂(キアゲン社製)にChRタンパク質を結合させ、200mMイミダゾールでカラムを洗浄した後、500mMイミダゾールでChRを溶出させた。タンパク質を含む画分をプールし、脱塩し(Float−a−lyzer、ロス社(Roth)製)、480nmの光学濃度が1になるまで濃縮した(Amicon Ultra、ミリポア社製)。Cary 50 Bio分光光度計(バリアン社((Varian Inc.)製)を用いてスペクトルを記録した。
【0119】
結果
ChR2変異体C128S、D156A、及び二重変異体128S/156Aを作製し、ピキア・パストリスから精製し、交絡的であり得る細胞特性の非存在下で本来の開状態安定性を最初に測定した。吸収スペクトルは、短時間の光送達に応答して予想通りの急速な変化を示し、これは単一変異体C128S(
図1B、F)及びD156A(
図1C、G)では3分以内に大幅に回復したが、これらの単一変異体とは対照的に、二重変異体C128S/D156Aは活性化状態の顕著に完全な安定性を示し、30分後でも暗状態への回復が本質的に検出されなかった(
図1D、H)。これらの吸収スペクトルの特徴的な2つのピークは、伝導状態及び脱プロトン化種(P390;
図1B、C)の形成に起因し得、バリアント間でいくらかの興味深い差がある。第1に、C128Sと比べて二重変異体で、暗状態と比べて伝導状態のレッドシフト低減が見られ(
図1A、D)、これに関連して、二重変異体で、レッドシフトした光による不活性化という重要な特性がどれだけ効果的であるのかという疑問を生じさせる。潜在的利点として、C128Sと比べて二重変異体で伝導状態と比べた非伝導(P390)状態の寄与の減少が見られ(
図1B、D)、これは、非伝導性チャネルの蓄積低減を予想させ、伝導状態を使い果たし得る光サイクルの後期ステップ(例えば、P520−
*P480脱感作状態(Des480);
図1E)がほとんど完全にブロックされ得る(
図1E)ことを示唆する、有用な特性である。二重変異体C128S/D156Aの固有な安定性は、35分間にわたって記録した全3変異体の連続的単色光吸収測定でも示されている(
図1H)。
【0120】
実施例2:ニューロン中及びインビボにおける活性化の検証
したがって、二重変異体は、哺乳動物行動のタイムスケールで、顕著に明白なほぼ最適な安定性を有するようであるが、レッドシフト光脱活性化という重要な能力が減弱している可能性がある。これらの問題は全て、ニューロン中及びインビボでの検証を必要とする。
【0121】
材料及び方法
海馬ニューロン及び皮質ニューロンにおけるホールセルパッチクランプ電気生理学
PO Sprague−Dawleyラットから海馬一次培養を単離し、マトリゲル(インビトロジェン社製)コートされたガラス製カバースリップ上にプレーティングし、FUDRで治療してグリアの過剰成長を抑えた。HEPES緩衝生理食塩水/CaPO
4ミックスを用いて培養ニューロン中でエンドトキシンフリーのプラスミドDNAをトランスフェクトした。3〜5MΩ硝子ピペット中で標準的な内部溶液(130mM グルコン酸カリウム、10mM KCl、10mM HEPES、10mM EGTA、2mM MgCl
2;KOHでpH7.3に調整)を用いて、蛍光タンパク質発現によって特定される個々のニューロンからの電気生理学的記録をタイロード培地(150mM NaCl、 4mM KCl、2mM MgCl
2、2mM MgCl
2、10mM D−グルコース、10mM HEPES;NaOHでpH7.35に調整)中で得た。皮質スライスの生理機能を調べるために、予めウイルスを注射した8〜9週齢の野生型C57BL/6J又はPV::Creマウスからの300μm急性冠状スライスを、ビブラトーム(ライカ社製)を用いて、氷冷スクロースカッティング溶液(11mM D−グルコース、234mM スクロース、2.5mM KCl、1.25mM NaH
2PO
4、10mM MgSO
4、0.5mM CaCl
2、26mM NaHCO3)中に得た。酸素化人工脳脊髄液(ACSF;124mM NaCl、3mM KCl、1.3mM MgCl
2、2.4mM CaCl
2、1.25mM NaH
2PO
4、26mM NaHCO
3、10mM D−グルコース)中で32℃にて1時間スライスのリカバリーを行った。一定のACSF灌流下で、図示されている前頭前皮質層から蛍光タンパク質発現を特定した後、個々のニューロンパッチを得た。広い波長のキセノンランプ光源(サッター・インスツルメンツ社(Sutter Instruments)製、DG−4)からのフィルターを通した光を顕微鏡(ライカ社製、DM−LFSA)の蛍光ポートに接続した。バンドパスフィルター(セムロック社(Semrock)製)はバンド幅が20nmであり、追加のニュートラルデンシティーフィルター(ソーラボ社(ThorLabs)製)で、全スペクトルで光パワー出力が等しくなるように調整した。SSFOを発現する細胞又は組織を扱っている間、周囲の光による活性化を防ぐために光曝露が最小限になるように注意した。各実験の前に、590nm光の20sパルスを印加し、全てのSSFOチャネルを暗状態に変換して光電流のランダウンを予防した。SSFOの活性化及び脱活性化のスペクトルを取得するために、電位固定モードで培養ニューロンを記録した。活性化スペクトルの記録では、種々の波長の1sパルスを印加した後、10sの590nmパルスを印加した。脱活性化スペクトルは、最初に1sの470nmパルスを印加してSSFOを活性化した後、種々の波長の10sパルスを印加することで取得した。正味の活性化又は脱活性化は、それぞれ最初のパルス又は2回目のパルスの後の光電流変化を、その細胞のピーク波長で誘導された最大の光電流変化で割ることにより、算出した。脱活性化スペクトルにおける負の値は、例えば10sの470nmパルスがチャネルを脱活性化せずに光電流をわずかに上昇させたトレースから生じたものである。これは、Sutter DG−4を用いたこれらの記録で用いた比較的幅広い(20nm)バンドパスフィルターによるものであり得る。中間の波長(470nmと520nmの間)は、同じ理由で、チャネル集団に複合的影響を有すると予想される。
【0122】
露出100ms、ゲイン30でRetiga Exi CCDカメラ(Qイメージング社(Qimaging,Inc.)製)を用いて同じ顕微鏡上で培養細胞画像を取得した。照射パワー密度は、標準的EYFPフィルターセットを用いて500nmで12mWmm
−2であった。ImageJソフトウェアを用いて、細胞体及び近位神経突起を含む領域をマーキングし、各細胞について平均蛍光ではなくその領域の総積算ピクセル強度を計算することにより、蛍光を定量化した。これは、光電流が面積当たりの平均チャネル発現量ではなく膜結合チャネルの総数に関連すると考えられるからである。各光パワーで顕微鏡対物レンズを通るフォトン束を計算し、次いで、記録された細胞の直径に基づき且つ細胞の形状を球状に近似させて、細胞表面を横切るフォトン束が得られるように割ることにより、SSFO積分特性を得るためのフォトン束の計算を行った。
【0123】
ウイルス遺伝子トランスフェクション
レンチウイルス仲介及びAAV仲介遺伝子送達の両方を、マウスにおけるオプシンの異種発現に用いた。図示されているオプシンは、皮質興奮性ニューロンを標的化するヒトカルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIアルファ(CaMKIIα)プロモーター又はCre誘導カセットと組み合わせた伸長因子1a(EF−1a)のいずれかで駆動され、後ろにウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)が続く。Cre誘導組換えAAVベクターは、ノースカロライナ大学のベクターコア社(Vector Core;米国ノースカロライナ州チャペルヒル)によって作製され、パルブアルブミン陽性介在ニューロンを標的化するためのパルブアルブミン::Creトランスジェニックマウスと組み合せて使用された。簡潔に述べると、不適合性lox部位セット(loxP及びlox2722)の間に逆向きにSSFO−eYFPを挿入した。ノースカロライナ大学のウイルスベクターコアによって、AAVコンストラクトは改変pAAV2−MCS中にサブクローニングされ、AAV5コートタンパク質で血清型に従って分けられ、パッケージングされた。AAVベクターの最終ウイルス濃度は1
*10
12ゲノムコピー(gc)/mLとした。レンチウイルスコンストラクトを報告されているように作製した。全てのコンストラクトがDeisseroth Lab(www.optogenetics.org)で入手可能である。スタンフォード大学に認証されたプロトコール下で定位的ウイルス注射を行った。イソフルラン麻酔下の若い(4〜6週)マウスを定位枠(Kopf Instruments社製)中に配置し、頭蓋骨の目印であるブレグマ及びラムダを同じ高さにした。皮質組織の損傷が最小限になるように開頭術を行った。10μLのシリンジ及び35gのベベル針(ワード・プレシジョン・インスツルメンツ社(Word Precision Instruments)製)を用いて大脳辺縁系下前頭前皮質(IL;ブレグマから、1.8mm前側、0.35mm外側、−2.85mm腹側)を標的とした。ウイルスは0.111L/minの速度で注入した。行動研究のためにウイルスを注射された対象に更に、記載されているように標的皮質領域に局所送達するための大脳に刺入するファイバーが取り付けられた又は取り付けられていない光送達を容易にするための慢性光ファイバー接続デバイスを植え込んだ(ドリック・レンズ社(Doric Lenses)製、カナダ)。同じ前側・外側座標から深さ−2.5mmに刺入ファイバーを定位的に挿入し、接着性装着セメント(C&B MetaBond)を用いて固定した後、頭蓋骨を接着剤で閉じた(Vetbond、3M社製)。手術回復後に動物に鎮痛剤を投与した。
【0124】
結果
野生型ChR2、C128変異体、及びD156変異体同様、二重変異体ChR2−C128S/D156Aが培養海馬ニューロン中で十分に発現し、青色光の短時間単回パルスによる急速な階段様の活性化及び緑色光又は黄色光による脱活性化という重要なSFO特性を保存していることが見出された。実際、二重変異体の開状態吸光度ではレッドシフトが低減していたが、それでも、レッドシフトした光(この場合、黄色光、最適には590nm)で完全な脱活性化を達成することができ、これは潜在的組合せ制御のために必須である。脱活性化は390nm光でも可能であり、P390種がかなり存在するため黄色光よりも速かったが、この波長における暗状態の残留吸収のためやはり不完全であった(
図1A)。更に、390nm光による脱活性化後の470nmでの再活性化は590nm脱活性化後より効果が低く、このことは、レッドシフト光脱活性化後には到達しない脱プロトン化/脱感作異性体でのトラップによるUV光での光化学的不活性化の可能性を示しており(
図1Eに図解)、このことも、スペクトル分離を高め得る黄色光脱活性化の使用を支持している。
【0125】
ChR2−C128S/D156Aを発現する細胞中のピーク光電流はChR2−D156Aに匹敵した(それぞれ、231.08±31.19;n=9細胞及び320.96±78.26;n=7細胞、p=0.26、対応のないt検定)。分光データと一致して、ChR2−C128S/D156Aを発現するニューロンは、いずれかの単一変異体のみを発現する細胞よりもはるかに安定な持続性の光電流を生じた(
図2B)。単一指数関数的減衰曲線を時間に対する脱活性化/活性化に当てはめた結果、見かけの自然減衰時定数がChR2−C128S/D156A(r
2=0.9139)で29.3分であり、並べて比較したところ、これはD156A(6.9分、r
2=0.8357;
図2B)の4.2倍の長さであった。実際、分光測定によりこのタイムスケールで暗状態への復帰が本質的にないことが明らかになったことから、残りの減衰の原因は、一部、タンパク質ターンオーバー等の細胞により決まる特性であり得る。複雑な哺乳動物行動への予期される応用のために必要な改善と一致して、
図2Cは、非同期シナプス活性が入る状況での青色光活性化及び黄色光脱活性化の両方の典型的な長時間ホールセル記録を示している。これらの驚くべき延長された時間的特性に基づき二重変異遺伝子をSSFO(安定化階段関数オプシン)遺伝子と呼び、簡単のためにタンパク質の略記としてもSSFOを用いる。
【0126】
そのような遅い減衰定数を有するチャネルロドプシンは、Τ
offで測られる有効な光感度(すなわち、細胞により吸収されたフォトン当たりの光電流振幅)を有するフォトンインテグレーターとして形質導入細胞が作用することを可能にし得る。したがって、SSFOは、より感度が高く、より侵襲性が低い光遺伝学的回路調節へのアプローチであって、しかも時間的に正確に作用を開始及び停止させることができ、標的神経細胞集団への影響を光パルス長の調節により容易に調整可能なアプローチを可能にし得る。実際、(8μWmm
−2という)非常に低い光強度で、SSFO発現ニューロンから数百ピコアンペアのホールセル光電流を得ることができることが見出された(
図2D)。光電流は照射の全期間中470nm光に応答して単一指数関数的キネティクスで増加し(
図2D、左)、活性化の時定数は、チャネル本来のミリ秒スケールに達するまでlog−logスケールで活性化光パワーに線形的に依存した。このことは、期間中の総フォトン曝露量を唯一の細胞光電流決定要素とする純粋なインテグレーターの状態をSSFOが達成することを示唆している(
図2D、中央、n=27記録(5細胞))。しかし、このことはまた、実験を開始する前にオプシン発現組織を完全な暗黒化に維持しなければならないことを意味している(哺乳動物インビボ実験では自明であるが、インビトロでの作業にはより注意が必要である)。記録された細胞についてImaxの規定の割合に光電流が達するのに必要な(1つの神経細胞体に送達され、時間で積分された)フォトンの総数でデータを表した時、この特徴的フォトン数は、活性化光パワーに関係なく一定であった(
図2D、右;9.1×108±1.6×10
8フォトン;n=5細胞からの27記録)。このことも、SSFOの純粋なフォトンインテグレーター特性を実証している。
【0127】
この新規な光遺伝学的ツールをインビボで検証するために、実験系として皮質の興奮及び抑制の制御を用いて、SSFOが哺乳動物生体内で安定な細胞型特異的調節を実現する能力を調べた。読取りとして、内側前頭前皮質(mPFC)の前辺縁(PL)及び下辺縁(IL)小領域(
図2E)中にSSFOを発現する麻酔したマウスにおけるオプトロード記録を行った。第1に、興奮を調節するために、興奮性ニューロン特異的CaMKIIaプロモーターの制御下で錐体ニューロン中においてSSFO−eYFPを発現させた。第2に、抑制を調節するために、二重flox化逆向きオープンリーディングフレーム(DIO)ウイルスを用いて、PV::Creトランスジェニックマウス中のSSFO−eYFPを発現させた(これらのマウス中、SSFOはGABA作動性Cre陽性パルブアルブミンニューロン中でのみ発現した)。光学的調節をマップにするために、進行的な2つのレーザーオプトロード(
図2E)及び青/緑色活性化/脱活性化レーザープロトコール(
図2F〜G)を用いて、内側前頭前皮質(mPFC)中にAAV5−CaMKIIa::SSFO−EYFPを注射したマウスの更に進めたより腹側の部位で記録を行った。これらのマウスのmPFC中のマルチユニット活性は、473nm光の1sパルス(95mWmm
−2、電極チップでの10mWmm
−2に相当)に応答して、形質転換領域でのみ有意且つ安定に上昇した。この活性上昇は、2sの561nm光パルス(112mWmm
−2;
図2F)で効果的に終了した。マルチユニットスパイク頻度(Hz)の有意な上昇はmPFCに限定され(
図2)、青色光刺激後に記録部位のいずれにおいてもスパイク頻度の有意な減少は観察されなかった。mPFC記録部位において、平均マルチユニットスパイク頻度は予想された通りに光で調節され(mPFCの背側の部位では調節されない)、活性の有意な調節を示したトレース中、活性化前、活性化後、及び脱活性化後のスパイク頻度はそれぞれ2.60±0.39Hz、33.82±4.83Hz、及び5.04±1.23Hzであった(
図2H;n=マウス2頭の46記録;活性化後、p=3e−8;脱活性化後、p=0.048;どちらも活性化前ベースラインとの比較;対応のあるスチューデントt検定)。
【0128】
逆に、mPFC中にAAV5−EF1a−DIO−::SSFO−eYFPを注射されたPV::Creマウスでは、同じ470nm光の1sパルス後にマルチユニット活性が低下し、2sの561nmパルス後にベースラインレベルに戻った(
図2G)。これらのマウス中、マルチユニットスパイク頻度の低下はやはりmPFCに非常に限定されており(n=全背腹軸に沿った54記録部位中の5つ)、青色光刺激後に記録部位のいずれにおいてもスパイク頻度の有意な上昇は観察されなかった。活性の有意な調節を示したトレース中、活性化前、活性化後、及び脱活性化後の平均マルチユニットスパイク頻度はそれぞれ14.82±1.26Hz、3.66±0.58Hz、及び9.69±1.77Hzであった(
図2H;活性化後、p=0.002;脱活性化後、p=0.088;どちらも活性化前ベースラインと比較;対応のあるスチューデントt検定)。ここでも予想されたSSFO光電流の高い安定性にふさわしく、短時間のパルス後に生体内での発火率の調節が長時間(many minutes)安定に持続されることが見出された(
図2I)。
【0129】
実施例3:自由行動マウスの行動及び回路ダイナミクスへのSSFOの影響
行動に関連するタイムスケールで前頭前野の興奮性を双方向的に調節することにSSFOを用いることができるということが証明されたので、SSFOを用いて、自由行動を行っているマウスの行動及び回路ダイナミクスへの細胞E/Iバランス上昇の影響を調べた(
図3)。SSFOを、興奮性ニューロン特異的CaMKIIαプロモーターを用いて前頭前皮質興奮性ニューロン中又はPV::Creトランスジェニックマウスと組み合せて二重flox化逆向きオープンリーディングフレーム(DIO)ウイルスを用いて抑制性パルブアルブミン(PV)発現ニューロン中(
図3J〜L)のいずれかで発現させた。前述したようにmPFCにウイルスを注射し、次いで、光送達のために頭蓋骨を貫通してmPFCのすぐ背側に突き出した慢性光ファイバーを植え込んだ(
図3A、B)。
【0130】
材料及び方法
相互情報量の計算
sEPSCスパイク頻度情報へのSSFOの影響を調べるために、mPFC第V層の視覚的に同定された錐体細胞のホールセルパッチ記録を行った。電流固定を用いて、シミュレートEPSC波形列で単一錐体細胞を刺激した。個々のsEPSCイベントは、ピーク電流の大きさを200pAとし、時定数2msで減衰させた。各実験は、ランダウンを最小限に抑えるために5秒離した長さ各10秒の10スイープに分割し、各スイープを500msのセグメントに分けた。各500msセグメント中のsEPSCの総数を0〜250の均一な分布からランダムに選択した。次いで、セグメント全体にわたる均一な分布から500msセグメント内のsEPSCの時間をランダムに選択し、同期されていないニューロン集団からの興奮入力をシミュレートした。実験では、これらの刺激パラメーターは錐体ニューロンを0〜30Hzの発火率で確かに駆動した。ベースラインと印された条件では、590nm光の10秒パルスを送達して、sEPSCプロトコールを行う前にオプシンを完全に不活性化した。オプシンを活性化した条件では、470nm光の1秒パルスをsEPSCプロトコールの前に行った。
【0131】
変化させたE/Iバランスが情報処理に与える正味の影響を理解するために、各ニューロンの入力sEPSC頻度と出力スパイク頻度の間の相互情報量を計算し、IO曲線の形状及び反応変動性において関連のある変化を捉えた。第1に、時間、sEPSC頻度、及びスパイク頻度でビン化し、ジョイントヒストグラムを作成することにより、sEPSC頻度及びスパイク頻度の同時分布を推定した。相互情報量の結果は幅広いビン化パラメーターにわたって一貫していたが、時間ビン幅を125msとし、sEPSC頻度を0〜500Hzの等しく間を空けた10個のビンに分けた。時間ビン幅において意味のある最小のビン幅を用いてスパイク頻度をビン化した(例えば、125msの時間ビンに対して8Hzのビン幅)。このジョイントヒストグラムから、反応エントロピーとノイズエントロピーの差を等しくすることで相互情報量を計算した。反応エントロピーは、ニューロンの出力スパイク頻度の不確実性の総量を数量化する。ノイズエントロピーは、入力頻度が与えられた時に出力スパイク頻度に残る不確実性を数量化する。入力刺激について神経応答が伝達できる最大の情報量が、刺激セットのエントロピーである。等しく間を空けた10個の入力sEPSC頻度ビン及びこれらのビンにおける入力頻度の均一分布で、入力頻度のエントロピーはlog
2(10)=3.322ビットである。アンダーサンプリングされた確率分布から計算される相互情報量は上側にバイアスされ得る。したがって、相互情報量、反応エントロピー、及びノイズエントロピーの全報告値は、アンダーサンプリングによるバイアスについて補正した。この補正は、全データのより小さい部分(2分の1〜8分の1)から値を計算し、無限データの限界に外挿することによりなされる。125msの時間窓を用いて、補正因子は常に0.07ビット未満であった。
【0132】
更に、同様な入力sEPSC頻度を用いて時間ビンの出力スパイク頻度を平均することで、各ニューロンについて入力−出力伝達関数を推定した。入力−出力関数の形状は、ベースライン及びオプシン活性化条件を別々に処理し、各ニューロンのダイナックレンジ及び飽和点を計算することで数量化した。ダイナミックレンジは、全入力sEPSC頻度範囲における最大と最小のスパイク発生率の差として定義した。飽和点は、その条件内でその最大出力スパイク頻度の90%ニューロンを駆動した最小入力sEPSC頻度として定義した。飽和点の低下は、ゲイン又はダイナミックレンジの倍数的低下によるものではありえず、より高い入力sEPSC頻度で入力−出力関数がより平坦になることを示している。
【0133】
行動試験
行動実験を受ける全動物を12時間の逆転明暗サイクルに馴化させた。行動試験の前に、実験を開始する前に少なくとも1時間、実験を行う部屋に動物を馴化させた。
【0134】
恐怖条件付け装置は、ショック・ジェネレーターに接続された格子床及びスクランブラーを有する正方形の条件付けケージ(18×18×30cm)からなり、音響チャンバー(米国ペンシルベニア州のコウルバーン・インスツルメンツ社(Coulburn instruments)製)に囲まれている。訓練及び/又は試験中に光を送達できるように装置を改変した。恐怖条件付けを導入するために、マウスをケージに120秒間入れた後、純音(2.9kHz)を20秒間鳴らし、その後、フットショック(0.5mA)を2秒与えた。その後、この手順を繰り返し、マウスをホームケージに戻す前に、第2のショックを与えた後更に30秒間、直後のフリージング反応をモニタリングした。主な恐怖反応行動であるフリージング(完全な静止)の連続行動測定により、24時間後に恐怖条件付けを評価した。文脈的恐怖条件付けを調べるために、マウスを最初の条件付けケージに入れ、5分間フリージングを測定した。聴覚を手がかりとする恐怖条件付けを調べるために、マウスを異なる状況に置いた(床が滑らかなピラミッド型のケージ)。新しい環境の影響に対する対照として、この新しいケージ中で2.5分間フリージングを測定し、その後、2.9kHzの音を2.5分間鳴らし、その間、条件付けされたフリージングを測定した。473nmレーザーに接続された特別仕様のパッチコードを介して光を送達することにより、光ファイバーコネクターを介した光刺激を与えた。光パルスは、ファイバー先端のパワー98mWmm
−2で2秒間送達した。文脈条件付け試験及び手がかり条件付け試験の結果をスチューデントt検定で分析した。
【0135】
ホームケージ中での社会的相互作用を分析した。簡潔に述べると、ホームケージ中の1頭のマウスを、ケージの上部がない状態で1分間自由に歩き回らせた。新たな若い(3〜4週齢)雄の侵入者を居住雄対象の反対側のコーナーに入れ、2分間自由に歩き回らせた。居住マウスが侵入者を能動的に探索した時間として社会的相互作用をスコア化し、2頭のマウスの物理的相互作用を視覚的に定量化した。刺激の試行は、図示されているように、慢性的に植え込まれた非侵襲的な頭蓋骨ファイバー接続デバイス又は慢性的に植え込まれた光ファイバーケーブルに接続された光ファイバーケーブル(ドリック・レンズ社製)を介して送達される473nm光の2秒パルスを与えることにより行った。実験及び1分間の馴化期間の前にファイバーを分離した。
【0136】
3チャンバー社会性試験を行った。3チャンバー装置の中央の部屋に被験マウスを入れ、横の2つの部屋への扉を閉めたまま、10分間馴化させた。10分間の馴化期間の最初と最後に光パルスを印加した。馴化期間の最後に新たな同種の雄マウスを「ソーシャル」チャンバー内のワイヤーメッシュカップ(Galaxy Pencil/Utility cup、スペクトル・ダイバーシファイド・デザイン社(Spectrum Diversified Designs)製)の中に入れた。残りの(非ソーシャル)チャンバーには同じ空のカップを置いた。チャンバーのバイアスを避けるために各試験でソーシャルチャンバー及び非ソーシャルチャンバーの指定はランダムに選択した。試験間に、チャンバーを20%エタノールでクリーンにし、次の試験を開始する前に完全に乾燥させた。自動追跡ソフトウェアViewer II(ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社(BiObserve)製)を用いて、非ソーシャル、中央、及びソーシャルチャンバーで費やした時間を定量化した。ベースラインで社会的探索の選好(preference)を示さなかったマウスは分析から除外した。
【0137】
社会的行動試験に用いたのと同じ3チャンバー装置中で、全体的に同じ方法を用いて、新規物体探索実験を行った。両側のチャンバーへの扉を閉じた中央チャンバーにマウスを入れた。光パルスを10分間の馴化期間中送達し、その後、扉を開いてマウスが装置全体を探索できるようにした。ワイヤーメッシュカップの代わりに、両端のチャンバーのいずれかに新規物体をランダムに置いた。各マウスについて、マウスが能動的に物体を探索した時間として10分間にわたる新規物体の探索をスコア化した。使用した物体は、ほぼ同じ大きさのプラスチックボール、キューブ、又は陶器の小像のいずれかであった。匂いのトレースを防ぐために試験間に物体を完全にクリーンにした。
【0138】
オープンフィールドチャンバー(50×50cm)を、中央フィールド(中央、23×23cm)及び外側フィールド(周辺部)に分けた。個々のマウスをフィールドの周辺部に配置し、動物の進路をビデオカメラで記録した。Viewer2ソフトウェア(ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社製)を用いて、移動した総距離を分析した。各マウスのオープンフィールド試験は、2つの2.5分のセグメントに分けられた5分のセッションからなり、2つのセグメントの間に2sの473nm光パルスを送達した。トラック長、速度、及び中央にいた時間の%を各マウスについてスコア化し、各条件について全マウスの平均を出した。
【0139】
高架十字迷路はプラスチック製であり、中央のプラットフォーム(5×5×5cm)31から十字架状に90度に延びる壁のない2つの薄い灰色の道(open arm;30×5cm)及び壁のある2つの黒色の道(closed arm;30×5×30cm)からなる。迷路は床から30cm上に置いた。各マウスについて、マウスがホームケージにいる時に2sの473nm光パルスを送達した。5分後、光ファイバーコネクターを外し、迷路の中央にマウスを個々に置き、15分間試験した。ビデオ追跡ソフトウェア(Viewerll、ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社製)を用いてマウスの位置を追跡した。示されている全測定はマウスの体全体に対するものである。
【0140】
覚醒マウスにおける長期電気生理学的記録
ウイルス形質導入組織内及び形質導入領域の外部の両方の部位で同時に記録するために、光送達と組み合せて覚醒動物を記録できるように新規な慢性多点オプトロード(chronic multisite optrode:CMO)を設計した。4つの25μmタングステンワイヤーのアレイを用い(カリフォルニア州グローバービーチのカリフォルニア・ファイン・ワイヤー社(California Fine Wire Company)製)、一緒に巻いて、約500gm刻みでカットし、これらの4ワイヤーバンドルを、200μmのコア光ファイバーケーブルがそこから延びる直径2.5mmの金属フェルールからなる植え込み可能な光ファイバー光ガイド(implantable fiberoptic lightguide:IFL;カナダ、ケベックのドリック・レンズ社製)に接続した。4ワイヤーバンドルを、光ファイバーケーブルが挿入された直径250gmのガイドチューブ中に戻し入れた。ゴールドピンを用いてワイヤーをMill−Mixコネクターに連結し、これにステンレス鋼アース線も連結した。ウイルス感染(上記参照)後に、ファイバー先端が頭蓋骨をちょうど貫通するが脳組織中には延びないように、デバイスを定位的に植え込んだ。アース線は、小脳の上の小さな開頭部から挿入した。実験を始める前にマウスを2週間回復させた。
【0141】
行動中の神経活動を記録するために、マウスを最初に、ヘッドステージ及び光ファイバーケーブルの取り付けに数日間慣れさせた。毎日1〜2時間ヘッドステージを付けてマウスにホームケージを探索させた。 手術の2〜4週間後に記録を行った。シグナルは、ヘッドステージで多重化され、電気整流子(プラスチックス・ワン社製)を通る3ワイヤーケーブルへ送られ、デマルチプレックスボード(トライアングル・バイオシステムズ社(Triangle BioSystems,Inc.)製)を用いて多重分離され、ニューラリンクス社(Neuralynx)製Digital Cheetahを用いてデジタル化された。光ファイバー及び電気整流子は(例えばオープンフィールド試験におけるように)マウスが広い領域を自由に探索できるように、重りの付いたアーム(weighted arm;ハーバード・アパラタス社製)に吊した。この構成はまた、(社会的相互作用試験中に)記録マウス及び若い侵入者の両方が余分なワイヤー又は光ファイバーに接近するのを防止し、機器へのダメージを最小限に抑えた。ビデオはニューラリンクス社製Cheetahソフトウェアを用いて記録され、Viewer II(ニュージャージー州フォートリーのバイオブザーブ社製)を用いてオフラインで分析されて、オープンフィールドの行動が定量化された。社会的相互作用及び新規物体探索は、他の行動実験同様、手作業でスコア化した。LFPを1〜500Hzでフィルタリングし、周波数6.5kHzでサンプリングした。マルチユニット活性を32kHzで記録し、全チャネル上で閾値40μVで個々のイベントを収集した。
【0142】
LFP記録のウェーブレットパワースペクトログラムを、記録中2秒ごとにパワースペクトルをサンプリングすることにより前述のように分析した。パワーは2Hzと120Hzの間でビン幅を2Hzとして計算した。全マウスにおいて、2分間のベースライン記録、続いてファイバー先端での照射量56mWmm
−2で1sの473nmパルスというプロトコールを用いて、SSFO活性化の影響を記録した。青色パルスの後、活性を2分間記録し、その後、同様な強度で波長594nmの光パルスで30s脱活性化した。その後、活性を更に2分間記録した。各マウスについて、このプロトコールを少なくとも4回繰り返し、3つの期間(活性化前、活性化後、及び脱活性化後)のそれぞれについて4反復分のパワースペクトルを平均化した。
【0143】
前述したようにホームケージパラダイムを用いて電極植え込みマウスを用いた社会的行動実験を行った。各試験に新しい若いマウスを用いて、光なしと光ありの試行は少なくとも24時間離した。試験は、ベースライン記録2分間、次いで1s活性化光パルス後の記録1分間からなり、その後、若い侵入者を入れた。社会的行動を2分間スコア化し、その後、若いマウスを除き、30sの594nm光パルスでSSFOを脱活性化した。記録は全期間で取得し、上記ホームケージ記録で記載したのと同じように分析した。2分間の社会的相互作用期間のパワースペクトルを、光なし及び光ありの実験の両方で全マウスの平均を出した。これらのマウスにおける新規物体実験は、新たな若いマウスを無生物物体に置き換えて同じ方法で行った。
【0144】
データ分析
対応のある又はない両側t検定を適宜用いて統計的有意性を計算した。Matlab Statistics toolbox又はマイクロソフト エクセルを用いてデータを分析した。
【0145】
免疫組織化学
行動分析を受けた動物にケタミン/キシラジンで麻酔をかけ、氷冷PBS、次いで4%パラホルムアルデヒドのPBS溶液(4%PFA)で経心的に灌流した。単離した脳を4%PFA中で4℃にて一晩、後固定(post−fix)し、その後、30%スクロースを含むPBSからなる無菌抗凍結剤中に定着するまで(4℃で2〜3日)浸した。凍結ミクロトーム(ライカ社製)を用いて40μm冠状スライスを回収し、PBSで洗浄し、0.3%トリトンX100(PBST)中で透過処理し、PBSに溶解した3%正常ロバ血清中で室温にて1時間ブロッキングした。灌流の90分前に1sの473nm光刺激を受けた動物で、ウサギ抗c−fos(カルビオケム社製)を用いてc−fosの核局在を決定した。マウス抗パルブアルブミン(シグマアルドリッチ社製)及び蛍光タンパク質の共局在を利用して、パルブアルブミンの標的化を確認した。染色したスライスをライカ社製SP5共焦点顕微鏡上で可視化した。種々の解剖学的小領域における平均蛍光を計算するために、ImageJを用いて組織画像を分析した。個々の小領域画像を固定閾値レベルで二値化した。閾値を超える平均蛍光を計算し、マウス間で領域毎に平均化した。c−fosの計数は、領域を特定するための標準的な目印を用いて行い、計数前にブラインド化した。計数は、スライス全体積のzスタック上で行った。データは同じ日及び同じ物理的条件下でc−fosの誘導を行った実験における実験条件間でのみ比較し、組織の調製、染色、及びイメージングは標準的な条件下で行った。
【0146】
結果
最初に、神経細胞集団中でのSSFO誘導活性の影響を細胞レベルで評価するために、2sパルスの470nm光刺激から90分後の最初期遺伝子産物c−fosの発現をインビボで調べた(
図3C)。ウイルス的に形質導入して光学的に刺激した半球において、(
図3B中で区切られている)前辺縁/下辺縁亜領域全体のc−fos陽性ニューロンの数を定量化した。CaMKIIα−YFPウイルスを注射された動物(対照)では、335±107個のmPFC細胞がベースラインで検出可能なc−fosを発現していた。それに比べ、PVニューロン中にSSFOを発現するマウス(PV::SSFOマウス)はmPFC中で対照より有意に少ないc−fos発現細胞を示した(81±7細胞、n=5マウス;p<0.005、両側t検定)。驚くべきことに、これらの細胞の大部分が実際YFP陽性であった(全c−fos陽性集団の61±8%;
図3C)。このことは、これらの活性細胞のほとんどさえ、実際はウイルス的に送達されたSSFOにより直接活性化されたPV陽性ニューロンであることを示している。一方、興奮性細胞中にSSFOを発現するマウス(CaMKIIα::SSFOマウス)は、ウイルス的に形質導入された半球(1455±305細胞;n=3マウス;p<0.05、両側t検定;
図2C)及び対側半球(617±97細胞;n=3マウス;p<0.05)の両方でc−fos陽性核の有意な増加を示したが、脳の他の領域へと超えてはおらず(
図3M)、これは活性化が主に局所及び対側半球に伝播したことを示している。これらの発見は、覚醒マウスにおけるSSFOの予想された標的化、有効性、及び方向性を実証している。
【0147】
行動試験を受ける3群の動物(
図3D〜G)CaMKIIα::SSFOマウス、PV::SSFOマウス、及び対照マウス(AAV5−CaMKIIα−eYFPウイルスを注射された又はウイルスを注射されていない)。手術の2〜4週間後、条件付け学習及び非条件付け社会的行動並びに新規物体の探索及び歩行運動機能を試験した(
図3D〜G)。全ての動物に、植え込んだ光ファイバーコネクターを介して470nm光の単一1sパルスを与え、その後、行動チャンバーに入れる1分前に光ファイバーケーブルを取り外し、SSFOの安定性を利用した。
【0148】
細胞E/Iバランスが上昇したマウスで選択的に、社会的行動及び条件付けの両方で著しい欠損が観察された(
図3D〜G)。最初に、実験動物のホームケージに入れられた同姓の若いマウスの非条件付け社会的探索を調べた
49。新たなマウスの探索は、対照と比べて、1sの470nm光パルス後にE/I上昇群(CaMKIIα::SSFO)で事実上消失しており(n=8CaMKIIα::SSFOマウス及びn=6対照;p<0.0005、対応のないt検定)、一方、PV::SSFOマウスはこの行動に何ら影響を示さなかった(
図3D及び2;n=6PV::SSFOマウス;p>0.1;対応のないt検定)。次いで、同じマウスを、1sの470nm光パルス送達後すぐに行われた条件付けプロトコールに供した。24時間後、E/Iバランス変更下でマウスが学習して条件付け刺激及び非条件付け刺激をどの程度関連付けるているかを評価するために、条件付けされた音及び文脈への反応を評価した。上昇E/I(CaMKIIα::SSFO)動物は条件付けされた反応を示さなかった(対照と比べて、文脈:p<0.0005又は音:p<0.05;両側t検定)。更に、欠損は完全に可逆的であり、SSFO活性化なしで24時間後に同じ動物を再度条件付けすることができ、翌日試験した時に対照群と識別できない恐怖条件付けを示した(
図3E;p>0.1、手がかり及び文脈;対応のないt検定)。一方、E/Iバランスを低下させたPV::SSFO群は、社会的行動の場合と同様に、音及び文脈のどちらへの反応でも、対照と比べてフリージング行動の有意な損傷を示さなかった(
図3E;それぞれp=0.09及びp=0.56;両側t検定)。同じマウスでオープンフィールド行動は正常であった(n=8CaMKIIα::SSFOマウス及びn=6CaMKIIα::YFPマウス;
図3F及び
図3N)ため、E/Iバランス上昇に関連する行動的障害は運動機能の変化によるものではなかった。
【0149】
実施例4:細胞E/I上昇は情報処理の量的低下を招くが、細胞E/I低下は量的低下を招かない
次いで、前頭前野E/Iバランス変化による行動障害の神経生理学的基盤を調べた。自閉症では、消耗性てんかんの同時罹患率が30%であるという知見から、過剰興奮が関係することが示唆され、自閉症及び統合失調症の両方における基本的な行動障害の一部の原因に皮質の興奮又は抑制の変化があることが提唱されている。
【0150】
材料及び方法
事前にウイルスを注射した8〜9週齢野生型C57BL/6J又はPV::Creマウスから単離した300pmの急性冠状スライスを、ビブラトーム(ライカ社製)を用いて、氷冷スクロースカッティング溶液(11mM D−グルコース、234mM スクロース、2.5mM KCl、1.25mM NaH
2PO
4、10mM MgSO
4、0.5mM CaCl
2、26mM NaHCO
3)中に得た。スライスを酸素化人工脳脊髄液(ACSF;124mM NaCl、3mM KCl、1.3mM MgCl
2、2.4mM CaCl
2、1.25mM NaH
2PO
4、26mM NaHCO
3、10mM D−グルコース)中で32℃で1時間リカバリーした。一定のACSF灌流下で図示されている前頭前野皮質層から蛍光タンパク質発現を特定した後、個々のニューロンパッチを得た。広波長キセノンランプ光源(サッター・インスツルメンツ社製DG−4)からのフィルタリングされた光を顕微鏡(ライカ社製DM−LFSA)の蛍光ポートに接続した。各実験の前に、590nm光の20sパルスを印加してSSFOチャネルを全て暗状態に変換して光電流のランダウンを予防した。露出100ms、ゲイン30でRetiga Exi CCDカメラ(Qイメージング社製)を用いて、同じ顕微鏡上で培養細胞画像を取得した。照射パワー密度は標準的なEYFPフィルターセットを用いて500nmで12mWmm
−2であった。ImageJソフトウェアを用いて、平均蛍光ではなく、細胞体及び近位神経突起を含む領域をマーキングし、各細胞についてその領域の総積分ピクセル強度を計算することにより、蛍光の定量化を行った。これは、光電流が面積当たりの平均チャネル発現量ではなく膜結合チャネルの総数に関連すると考えられるからである。各光パワーで顕微鏡対物レンズを通るフォトン束を計算し、個々のパッチされた細胞の静電容量に基づいて、細胞表面を横切るフォトン束が得られるように割ることにより、SSFO積分特性を得るためのフォトン束の計算を行った。
【0151】
生きた
動物実験では、前述したように表記のウイルスコンストラクトを予め形質導入した野生型成獣C57/BL6雄マウスの前頭前皮質において光学的刺激及び電気的記録を同時に行った。簡潔に述べると、開頭術の前に動物にイソフルランで深い麻酔をかけた。マウスの位置を定位的に調整し、前頭前皮質の背側の頭蓋骨(1.8mm前側、0.35mm外側を中心)を外科的に除いた後、N.A.0.2、コア直径200μmの光ファイバーケーブル(ソーラボ社製)の平滑末端の下約400μmに先端を接続したMO0.005インチ細胞外タングステン電極(A−Mシステムズ社製)(「オプトロード」)を、ウイルス的に形質導入された脳領域に定位的に挿入した。記録されたシグナルを、300Hz〜20kHzのバンドパスフィルターに通して10000倍にAC増幅し(A−Mシステムズ社製モデル1800)、デジタル化し(モレキュラーデバイス社製Digidata 1322A)、Clampexソフトウェア(モレキュラーデバイス社製)を用いて記録した。フィールドシグナルの記録及び473nm(OEMレーザーシステムズ社製)及び561nm(クリスタルレーザー社(CrystalLaser)製)(オプトロードに接続された10mWの固体レーザーダイオード源)の制御の両方にClampexソフトウェアを用いた。電気生理学的記録は、イソフルラン麻酔を1%の一定レベルに下げた後、Cg/PL境界(1.8mm前側、0.35mm外側、−2.0mm腹側)で開始した。オプトロードを腹側に0.1mmずつ下げた。閾値をベースラインノイズ(25〜40μV)より高く設定してマトラボ(Matlab)(マスワークス社(Math Works)製)で特注のアルゴリズムを用いてイベントを単離した。2sの非加重移動平均(200msステップ)から、Matlabでヒートマップイメージを作成した。移動平均値は外部操作開始(スイープの開始、光パルスの開始)時にリセットされた。
【0152】
結果
行動障害を起こす前頭前野超小型回路内のE/Iバランス変化の回路生理学的発現を調べるために、CaMKIIα::SSFOから前頭前皮質の急性スライスを調製した。コリン作動性アゴニストの20μMカルバコールで誘発した継続的非同期シナプス活性の存在下でホールセル記録を行った52〜54。SSFO活性化のみではスパイク発生は観察されなかった。単一青色光パルスによる回路全体のSSFO活性化は、記録されたSSFO発現ニューロンを9.8±1.4mV脱分極させる効果を有しており(n=7細胞;
図4A)、これは一部、入ってくるシナプス活性の増大を引き起こすことによるものであり(
図4A、挿入図)、どちらの効果も黄色光で消失した。発現細胞及び非発現細胞両方におけるSSFOへの応答のスペクトル分析から、この活性増加が20Hzより上にピークを有する幅広いスペクトル範囲を示すことが明らかになった(
図4A〜B)。一方、PV細胞中にSSFOを発現するスライス中の錐体細胞は、低周波数でシナプス活性の大幅な低下及びパワーの低下を示し(
図4C)、これはSSFOによる活性化後のPV細胞の活性増加と一致していた(
図4D)。
【0153】
総合すると、これらのデータ及び
図3のc−fosデータから、mPFC中の細胞E:Iバランスを上昇又は低下させるインターベンションは新皮質ニューロン活性に強く影響を与えることが明らかとなったが、mPFC中の細胞E:Iバランスの上昇だけが行動障害を誘導したので、mPFC中における情報処理がそれぞれの場合にどれだけ変化するかをより深く理解するための試みを行うことにした。前頭前野超小型回路の情報伝達へのE/Iバランス変化の影響を調べるために、オプシン発現錐体ニューロンを形態及び蛍光により特定し、CaMKIIα::SSFOマウスの急性スライスにおけるホールセル記録を行った。時間をかけて幅広いシミュレートEPSC頻度にまたがるように設計されたsEPSC列でホールセルパッチクランプ中のニューロンを刺激し(
図5A)(SSFO発現細胞)、実際、青色光活性化は低いsEPSC頻度で興奮性を増加させたが、より高いsEPSC頻度において入力−出力(IO)曲線が飽和し(
図5b)、その結果、入力EPSC頻度と生じるスパイク頻度との間の相互情報量が有意に減少した(−0.40±0.09ビット;p=0.011、対応のあるスチューデントt検定;
図5C)。このことは、細胞E/Iバランスの上昇により新皮質主細胞における情報処理が量的に損なわれることが実証している。次に、新皮質主細胞における情報処理に対する細胞E/Iバランス低下の影響を調べるために、PV::SSFOマウスの急性スライス及びsEPSC列で刺激された非発現錐体細胞を先ほどと同じように記録した(
図5D)。PV細胞中のSSFOの活性化は、シナプス抑制から予測されたように、記録された錐体細胞におけるIO曲線のゲインをかなり低下させた(
図5E)が、このケースでは飽和せずにIO曲線の全体的形状が保存されており、驚くべきことに、錐体細胞中の入力sEPSD頻度と生じるスパイク頻度との間の相互情報量に有意な影響を与えなかった(
図5F)。
【0154】
PV::SSFO活性化の方がスパイク頻度に(どちらかと言えば)大きな影響があった(
図5B、E)にも関わらず、主mPFC細胞の情報処理量の減少は、相互情報量を計算するために用いた幅広い時間ビン幅(
図5G〜H)及び入力頻度ビン幅(
図5I〜J)の両方で、PV::SSFOマウスと比べてCaMKIIα::SSFOマウスの光活性化後で有意に大きかった(4.8倍、p=0.0144、対応のないt検定)。総合すると、これらの行動及び情報データは、自然な直感的想像では抑制が情報処理にとってより破壊的であろうと考えがちであるが、実際には、mPFC回路及び行動パフォーマンスに有害なのはE/Iバランスの上昇であり、これは、自閉症等の障害が興奮性上昇表現型に臨床的に関連付けられることと一致する。今回実証された細胞E/Iバランスに誘導される社会的機能障害が、自閉症及び統合失調症等の重度のヒト精神神経疾患状態で見られる回路処理及び社会的機能障害に関連する場合、これらのヒト疾患状態の特徴的電気生理学的マーカーもこのモデル動物中に見出されるであろうという重要な予測がなされる。自閉症及び統合失調症両方の一般的な臨床的電気生理学的マーカーは、上昇したベースライン(誘起なし)ガンマパワー(30〜80Hz)であるから、特異的に細胞E/Iバランスを上昇させた覚醒自由行動マウスにおいてこの一致する臨床マーカーを測定することにより、この生理学的マーカー仮説を試験した。
【0155】
必要な感度でこの可能性を試験するためにmPFC中に多点記録電極を更に挿入する必要があった。光送達のための刺入光ファイバーと組み合わせたそのようなデバイスの更なる存在は、小さなマウスmPFC回路にとって非常に破壊的過ぎるか空間的に侵襲的過ぎる可能性があるが、この実験を可能にする2つの重要な特徴を有する戦略を開発して実施した。第1に、慢性植込み用記録デバイスを設計し、記録電極に慣れた動物において記録ができるようにした。第2に、SSFOのフォトンインテグレーション特性を利用して、光学機器がないだけでなく、どの時点でも(IL及びPLのような深い構造でも)如何なる光学機器も脳自体に刺入しない行動試験を可能にした。深い皮質構造中のSSFO発現細胞を実際に調節できることを検証するために、CaMKIIα::SSFO又はCaMKIIα::EYFPウイルスを注射し、皮質表面に入ることなく(
図6B)頭蓋骨だけを通過して延びる光ファイバーコネクターを植え込んだ(
図6A)。これらの動物におけるc−fos分析により、この侵襲性が最小限である形態におけるE/Iバランス上昇の方向性を検証した(n=3CaMKIIα::SSFOマウス及びn=4CaMKIIα::EYFP対照マウス;p=0.034、両側t検定;
図6C)。条件付け中の細胞E/Iバランス上昇は、フットショックに対するフリージング反応への影響を示さなかった(嫌悪非条件付け刺激のインタクトな知覚を示している;
図6D)が、文脈条件付け(p<0.005;対応のない不等分散のt検定)及び聴覚条件付け(p<0.005;対応のない不等分散のt検定)に対する顕著且つ完全に可逆的な影響を示した(
図6D)。重要なことに、社会的行動も、試験前に非侵襲的光刺激を受けたマウスにおいて損なわれ(p<0.005;対応のないt検定;
図6E)、SSFOの非常に高い光感度によりもたらされる機会が実証された。
【0156】
これらのマウスからの直接的な電気生理学的読取り値を得るために、照射組織内の種々の深さの神経活性が同時にサンプリングされるように、光ファイバーコネクターがガイドチューブを通ってファイバーの先端から0.5mm刻みの長さで切断された4つの25μmタングステンワイヤーに接続されている、新規な慢性多点オプトロード(CMO)を設計した(
図6F)。実験の最後に、電気分解的損傷を用いて電極位置に印を付け(
図6G)、個々の記録を取った解剖学的位置が特定できるようにした。どの光ファイバーも組織中に刺入されていなかった。CaMKIIα::SSFOウイルスを注射され、深さサンプリングオプトロードを植え込まれた3頭のマウスにおいて、社会的行動がベースラインで正常であり、1sの470nmパルス後に損なわれることが初めて確認された(
図6H;p=0.044、対応のあるスチューデントt検定)。しかし、本発明者らの以前の知見と一致し、同じ動物は新規物体の探索に対する光の影響を示さなかった(
図6H;p=0.82、対応のあるスチューデントt検定)。更に、不安減少の傾向が明らかであった(中央にいる時間の増加率;
図7A)が、慣れたホームケージにおける歩行行動(図示せず)及び新規オープンフィールドにおける歩行行動は1sの活性化パルス後に有意に変化していなかった(
図7A)。CMO植込み状況における行動表現型を検証するためのこれらの実験中、全てのチャネルで同時に活性を記録し、SSFO活性化により生じた変化を分析した。
【0157】
2分間の活性化前ベースライン、1sの470nm光パルス、2分間の連続記録、及びSSFOを完全に脱活性化する590nm光の30sパルスからなるプロトコールを用いて、動物のホームケージにおける記録を最初に分析した。このプロトコールを各マウスで4回繰り返し、単位活性のトレースを全試行で平均化した(
図6I)。SSFO発現領域内のチャネルからのマルチユニット記録では、調節されたチャネルで、青色光パルスに応答したスパイク発生の有意な増加が観察された(
図6I〜J;77±18%;非調節チャネルの−3.4±4.4%と比較;n=記録された3マウスの4調節チャネル及び4非調節チャネル;p=0.02;両側t検定))。
【0158】
調節チャネルの局所フィールド電位(LFP)記録における顕著な変化も観察された。ウェーブレットスペクトル解析を用いて、各チャネルのLFP活性の時間解像スペクトログラム(
図6K〜L;左)を作製し、活性化前ベースライン期間と活性化後期間との間の平均変化を定量化した。非調節チャネルでは、LFPへの活性化パルスの明白な影響はなく(
図6K、左)ベースライン期間と比べて活性化後及び脱活性化後期間の全周波数においてパワーが平均的に少しだけ低下していた。(
図6K、右)。一方、ウイルス的に形質導入された領域内に位置する調節されたチャネルはSSFOでの活性化後にガンマ帯活性の顕著な増加を示し(
図6L)、これは明確に活性化期間に時間的に限定されており、590nm脱活性化パルスにより終了した(
図6L、右)。ガンマ帯活性の上昇はガンマ活性上昇を示した同じチャネル内のより低い周波数パワーの低下と関連していた(
図6L、右;挿入図)。これらの動物でなされた行動実験中に行われた記録の同様な分析は、オープンフィールド実験(
図7B)、社会的探索試験(
図7C)、及び新規物体探索試験(
図7D)の行動試験中に1sの470nm光パルスを送達した実験において一致したガンマ帯活性の上昇を示した。総合すると、これらのデータは、社会的障害を有する自由行動哺乳動物において、自閉症及び統合失調症で見られる生理学的バイオマーカー(ベースラインガンマ帯活性の上昇)が、選択的細胞E/Iバランス上昇と共に保存されていることを示している。
【0159】
最後に、インビボでE/Iバランス上昇により誘導されるガンマを誘導及び発現した新皮質回路(
図6)がそれ自体で、他の脳領域の非存在下で、この生理的現象を生じさせることができるかどうかを調べた。急性スライスはインビボ標本よりも急激なオシレーションパターンに不応性であるが、この低下した標本でさえ、中程度のCaMKII::SSFO活性化(
図4A〜B)条件下での電流固定膜電位における20〜80Hz帯のパワー上昇及び利用可能な最も強力なチャネルロドプシン(CaMKII::C1V1−E162T)を用いた電流固定膜電位における30〜80Hzガンマの上昇が見られた。
【0160】
高い光パワー密度(12mWmm−2)では、ガンマ周波数で最大のパワー増大(30〜80Hz;
図8B)が観察された。それより低い光パワー(4.3mWmm
−2及び0.6mWmm−2)では、単調に低下したガンマパワー及びより低い周波数で比較的増大したパワーが観察された(シータ、8〜12Hz及びベータ、15〜25Hz;
図8B〜C)。電位固定条件下で、0mVで記録されたIPSC及び−60mVで記録されたEPSCの両方の対応するスペクトルを分離した(
図8A)。総合すると、これらの結果は、前頭前皮質において内因的に発生したガンマオシレーションという生理学的バイオマーカーと安定的E/Iバランス上昇との間の単調な関係と一致している。
【0161】
ここに提示したデータは、mPFC中のE/I比上昇の結果としての社会的行動の特異的損傷を示している。原則的に、E/I比の上昇は、抑制性細胞を抑制することでも達成され得る。但し、この機能喪失型のアプローチは、抑制性細胞の高く安定なベースライン活性パターンがあるというありそうにないイベントにおいてのみ効果を示すことが予測される。実際、ホームケージ又は3チャンバー社会的探索パラダイムに、AAV5−EF1α−DIO−eNpHR3.0−EYFPウイルスをPV::Creマウスの両半球のmPFCに注射して(PV::eNpHR3.0マウスの作出)、両側に光ファイバーコネクターを植え込んだ場合、予想され得たように、これらの条件下でeNpHR3.0の活性化に関連した行動障害は見られなかった(
図9)。しかし、細胞E/I比上昇仮説の核心となる、より重要な疑問は、抑制の増大が、興奮性細胞のSSFO活性化により生じたE/Iバランス上昇に関連する行動障害をレスキューする方向で作用し得るという予測である(
図3)。
【0162】
C1V1は、ボルボックスのVChR1陽イオンチャネル及びコナミドリムシのChR1陽イオンチャネルに由来するキメラ光感受性タンパク質である。C1V1及びそのバリアントは、高い有効性(high potency)での皮質E/I上昇の実験的操作及び皮質スライスにおけるガンマオシレーションのモニタリング(これにより用量反応試験が可能になる)、低い脱感作(E/Iバランスの階段様変化の誘導を可能にする)、並びにレッドシフトした興奮(同じ神経回路内の異なる集団を別々に駆動することを可能にする)を可能にする。本例では、最も信頼できる用量反応を可能にする最も有効性の高いC1V1バリアントを選択した。上記の予測を試験するために、自由行動マウス用の組合せ的光遺伝学的実験を設計し、スペクトルを最大限離して、SSFOで錐体細胞を駆動し且つC1V1−E122T/E162Tを用いてPV細胞を共活性化する(又はしない)ように、C1V1及びSSFOの固有なスペクトル特性及び時間的特性を強化した。PV::CreマウスのmPFCに、AAV5−CaMKIIα−SSFO及びAAV5−EFlα−DIO−C1V1−E122T/E162Tの組合せを注射し、錐体ニューロン中でSSFOを、PV細胞中でC1V1を発現させた(ここではSSFO/C1V1マウスと呼ぶ;n=7)。第2のマウス群には、CaMKIIα−SSFOウイルスだけを注射し(CaMKIIα::SSFO、n=9)、対照マウスにはCaMKIIα−EYFPを注射した(n=10)。2〜4週間後、C1V1−E122T/E162T(590nm光で駆動)及びSSFO(470nmピークで強力な電流が得られるように駆動;
図10A)を分離するスペクトル時間的戦略を用いて、4つの異なる照射パラダイム下でマウスの3チャンバー社会性試験を行った。最初の特徴解析は光送達なしで行い、ベースラインの社会的選好(social preference)を得た(
図10B)。この試験では、全マウスが、ソーシャルチャンバーへの有意な選好を示した(
図10B、
図11;CaMKIIα−SSFOマウス、p=0.002;SSFO/C1V1マウス、p=0.0003;CaMKIIα−EYFPマウス、p=0.032)。
【0163】
次に、同じパラダイムのマウスを、SSFO/C1V1マウス中のPV細胞中のC1V1−E122T/E162Tだけを活性化するように590nmのパルスレーザー光を送達しながら、新たな若いマウスと試験した(
図10B)。この試験でも、先のPV::SSFO実験と一致して、全マウスが新たな若いマウスへの正常な選好を示した((
図10C及び
図11;CaMKIIα−SSFOマウス、p=0.008;SSFO/C1V1マウス、p=0.005;CaMKIIα−EYFPマウスp=0.014)。3番目の試験では、試験前の馴化期間中に2sの470nm光パルスでSSFOを活性化した(
図10B)。この試験では、CaMKIIα::SSFO群及びSSFO/C1V1群はどちらもソーシャルチャンバーへの選好を示さなかった(
図10C〜D;それぞれp=0.21及びp=0.87)。これはCaMKIIα::SSFOマウスにおける本発明者らの先の観察(
図3I)と一致する深刻な社会的行動障害である。ここでスペクトル時間的分離の重要性に注目されたい。SSFOを最大限駆動するための470nm光を使用すると確実にC1V1−E122T/E162Tも駆動されるが、対照的なC1V1−E122T/E162T一時性及びSSFOの安定性により、2sの470nm光パルス後に行われる行動試験はSSFO活性の存在下のみになる。最後に、行動試験期間全体で470nm光パルスを10Hzで送達することにより興奮性細胞中のSSFOの活性化に抑制性細胞中のC1V1−E122T/E162Tの更なる活性化を加え、細胞E/Iバランスを補償することによる行動障害のレスキューを試みた(
図10A〜B)。これらの照射条件下、CaMKIIα::SSFOマウス(活性化されるC1V1−E122T/E162Tなし。純粋な細胞E/Iバランス上昇を経験)は、ソーシャルチャンバーへの有意な選好のない重度な社会的行動障害を示した(
図10C;p=0.59)が、対照的に、SSFO/C1V1マウスでは、この補償的な抑制性ニューロンの活性増大により、ソーシャルチャンバーへの選好が回復した(
図10D;p=0.005)。予想された通り、対照CaMKIIα−EYFPマウスは、2s 470nm及び10Hz 470nm刺激パラダイムの両方でソーシャルチャンバーへの有意な選好を示した(
図11)。
【0164】
考察
複数の証拠から、自閉症及び統合失調症における薬物療法に不応答性の社会性障害及び情報処理障害の病因論において細胞興奮−抑制(E/I)バランス上昇の関与が示唆されてきた。しかし、1)個々の細胞型選択的制御ができず、2)関係する神経回路の働きに関して回路の発達及び成熟へのそのような制御の長期的影響とE/I異常の即時的影響とを切り離すことができなかったため、この仮説を正式に試験するのは困難であった。皮質超小型回路内の興奮及び抑制の密な相互作用及び薬理学的複雑さが、種々の疾患モデル及びヒト患者において観察される行動障害の主な要素としての細胞E/Iバランス上昇の確認を阻んでいた。今回、2つの新規な光遺伝学的ツールを用いることで、細胞E/Iバランス上昇仮説の直接的裏付けが得られ、生じる社会的機能障害の回路生理学的発現が同定された。
【0165】
上昇E/I状態をより完全に理解するために、その根底にある回路生理学的発現をインビトロ及びインビボの両方で探索した。これは細胞E/Iバランス上昇が開始させ得る幅広い回路現象を考えると複雑であることは間違いない。細胞E/Iバランス上昇は、皮質回路内の情報伝達が量的に損なわれるように主ニューロンの伝達機能を変化させることが見出された。これとは顕著に対照的に、E/Iバランスの低下(主細胞スパイク頻度への劇的影響にも関わらず社会的機能には影響しなかった)は、情報伝達を損なわず、主ニューロンにおいて伝達関数の全体的形状を保存していた。また、社会的機能障害に関連付けられる疾患状態の臨床マーカー(ベースラインガンマパワーの上昇)と、上昇細胞E/I状態における自由行動中の電気生理学的発見との間の一致が特定された。覚醒行動マウスにおいて記録及び光学的調節を組み合わせるために新規な慢性多点オプトロード(CMO)デバイスを用いて、上昇した細胞E/Iバランスにより生じる又は上昇した細胞E/Iバランスを直接経験する領域内で現れる強力且つ安定なガンマオシレーションに上昇E/I状態が関連することを見出した。これらのマウスにおいて、上昇E/I−ガンマ状態下で、歩行行動又は無生物物体探索における大きな変化は観察されなかったが、社会的行動の特異的障害が観察された。
【0166】
一次視覚皮質中のPFC以外の場所でのE/I比上昇は社会的行動を損なわせなかったことから、社会的行動へのE/Iバランス上昇の影響はPFCに特異的であることが示された。したがって、PFCネットワークは、その広範な皮質下結合性と共に、E/Iバランスのわずかな変化状態において精神関連症状を特に誘発し易いと考えられ、この考えは、精神疾患に関連するPFC抑制性マーカーの変化及び自閉症個体で観察されるPFCリズム性の変化が観察されることにより裏付けられる。PV陽性ニューロンが抑制された条件下での行動障害は観察されなかった。特に、PV陽性ニューロンを完全に抑制する能力は、発現の浸透度(DIO::SSFOはPV陽性細胞の約25%で発現)と影響が標的細胞のベースライン活性レベルに依存するという事実とにより限定される。
【0167】
最後に、上昇したE/Iバランスにより生じる障害を回復させようと試み、興奮性ニューロン(SSFOを用いて)及び抑制性PVニューロン(C1V1バリアントを用いて)の両方を独立して調節するために、広範囲に遺伝子操作した新規な赤色光活性化チャネルロドプシンのファミリー(まとめてC1V1バリアントと呼ぶ)を用いた。2つの光遺伝学的ツールの活性を一緒にスペクトル時間的に分離する新規な形態を用いて、細胞E/Iバランスを上昇させたマウスにおいて、細胞抑制を増大させると社会的行動障害が改善されることを見出した。
【0168】
実施例は発明の純粋な例であることが意図され、したがって如何なる点でも発明を限定するものと見なされるべきではない。実施例でも前述の本発明の態様及び実施形態を記載及び詳細に説明した。前述の実施例及び詳細な説明は、限定のためではなく、例示のために提供するものである。本明細書中に引用された全ての刊行物、特許出願、及び特許を、それぞれの個々の刊行物、特許出願、又は特許が具体的に個々に参照により援用されると記載したのと同じように、参照により本明細書に援用する。特に、本発明に関連して使用され得る組成物及び方法を記載及び開示する目的で、本明細書中に引用した全刊行物を明示的に参照により本明細書に援用する。前述の発明は、理解し易いように図解及び例を用いていくらか詳細に記載されているが、当業者には、本発明の教示を考慮して、特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなくある程度の変更及び改変を発明に加えることができることは明らかである。
【0169】
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