特許第6509186号(P6509186)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6509186有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置、そして有機発光ダイオードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509186
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置、そして有機発光ダイオードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20190422BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20190422BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20190422BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20190422BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   H05B33/12 C
   H05B33/14 A
   H05B33/22 C
   H05B33/10
   H05B33/22 A
   H01L27/32
   G09F9/30 365
【請求項の数】8
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-228775(P2016-228775)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-103224(P2017-103224A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2016年11月28日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0169502
(32)【優先日】2015年11月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム, ヒジン
(72)【発明者】
【氏名】イ, ハクミン
(72)【発明者】
【氏名】パク, スンス
【審査官】 中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−295192(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/092939(WO,A1)
【文献】 特開2011−061016(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/070619(WO,A1)
【文献】 特開2004−247279(JP,A)
【文献】 特開平05−182762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極上に順次に位置する正孔注入層、正孔輸送層及び発光物質層を含む発光部と、
前記発光部上に位置する第2電極と、
を含み、
前記発光物質層は、第1発光層と、電子注入物質(electron injection material)が添加され、発光領域及び非発光領域を含む第2発光層とを含む多層構造からなり、
前記第1発光層は、ホスト及びドーパントを含む発光物質を含むとともに電子注入物質を含まず、前記第2発光層は、前記電子注入物質とともに前記発光物質を含み、
前記第2電極は、前記第2発光層の上面と接触している
有機発光ダイオード。
【請求項2】
前記電子注入物質は、アルカリ金属を含む、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項3】
前記第2発光層は、10−6cm/Vs〜10−4cm/Vsの電子移動度を有する、請求項1に記載の有機発光ダイオード。
【請求項4】
基板上に備えられたトランジスタと、
前記トランジスタに連結される、請求項1乃至請求項のうち、いずれか1項に記載の有機発光ダイオードと、
を含む、有機電界発光表示装置。
【請求項5】
基板上に第1電極を形成する段階と、
前記第1電極上に赤色、緑色及び青色のサブ画素毎に正孔輸送層を形成する段階と、
前記正孔輸送層上に第1発光層を形成する段階と、
前記第1発光層上に、発光領域及び非発光領域を含む第2発光層を形成する段階と、
前記第2発光層上に第2電極を形成する段階と、
を含み、
前記正孔輸送層と前記第1発光層及び前記第2発光層は、溶液工程を通じて形成され、
前記第1発光層は、ホスト及びドーパントを含む発光物質を含むとともに電子注入物質を含まず、前記第2発光層は、前記電子注入物質とともに前記発光物質を含み、
前記第2電極は、前記第2発光層の上面と接触している
有機発光ダイオードの製造方法。
【請求項6】
前記溶液工程は、インクジェット印刷(inkjet printing)、ノズル印刷(nozzle printing)、転写方式(transferring process)、スリットコーティング(slit coating)、グラビア印刷(gravure printing)及びサーマルジェット印刷(thermal jet printing)のうち、いずれか1つである、請求項に記載の有機発光ダイオードの製造方法。
【請求項7】
前記第1発光層は、有機溶媒を用いて形成され、前記第2発光層は、アルカリ金属の電子注入物質が分散された水溶性材料を用いて形成される、請求項に記載の有機発光ダイオードの製造方法。
【請求項8】
前記第1発光層は、水溶性材料を用いて形成され、前記第2発光層は、アルカリ金属の電子注入物質が分散された有機溶媒を用いて形成される、請求項に記載の有機発光ダイオードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置に関するものであり、さらに詳細には、溶液工程(soluble process)を利用して製造した有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置、そして有機発光ダイオードの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、情報ディスプレイに関する関心が高まり、携帯可能な情報媒体への利用要求が高まることに伴って、既存の表示装置であるブラウン管(Cathode Ray Tube;CRT)を代替する軽量薄型フラット表示装置(Flat Panel Display;FPD)に対する研究及び商業化が主に行われている。
【0003】
かかるフラット表示装置分野において、今までは軽くて電力消耗の少ない液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device;LCD)が最も注目されるディスプレイ装置であったが、液晶表示装置は発光素子ではなく、受光素子であり、明るさやコントラスト比及び視野角などの短所があることから、かかる短所を克服できる新しいディスプレイ装置に対する開発が活発に展開されている。
【0004】
新しいディスプレイ装置の1つである有機電界発光表示装置は、自己発光型であるため、液晶表示装置に比べて視野角とコントラスト比などに優れている。また、バックライトが要らないため、軽量・薄型が可能な上に消費電力の面でも有利である。そして、直流低電圧駆動が可能で、応答速度が速いという長所がある。
【0005】
以下、有機電界発光表示装置の基本的な構造及び動作の特性について、図面を参照し、詳細に説明する。
【0006】
図1は、一般的な有機発光ダイオードの発光原理を説明するダイアグラムである。
【0007】
一般的に有機電界発光表示装置は、図1に示すように有機発光ダイオードを備える。
【0008】
このとき、有機発光ダイオードは、画素電極である陽極(anode)18と、共通電極である陰極(cathode)28と、これらの間に形成された有機層30a、30b、30c、30d、30eとを備える。
【0009】
そして、有機層30a、30b、30c、30d、30eは、正孔輸送層(Hole Transport Layer;HTL)30bと、電子輸送層(Electron Transport Layer;ETL)30dと、正孔輸送層30bと電子輸送層30dとの間に介在された発光物質層(Emitting material Layer;EML)30cとを含む。
【0010】
発光効率を向上させるために陽極18と正孔輸送層30bとの間に正孔注入層(Hole Injection Layer;HIL)30aが介在され、陰極28と電子輸送層30dとの間に電子注入層(Electron Injection Layer;EIL)30eが介在される。
【0011】
このように構成される有機発光ダイオードは、陽極18と陰極28にそれぞれ正(+)と負(−)の電圧が印加されると、正孔輸送層30bを通過した正孔及び電子輸送層30dを通過した電子が発光物質層30cへ移動して励起子(exciton)を形成し、その励起子が励起状態(excited state)から基底状態、すなわち安定した状態(stable state)へ遷移する際に光が発生する。
【0012】
有機電界発光表示装置は、前述した構造の有機発光ダイオードを有するサブ画素をマトリクス状に配置し、そのサブ画素をデータ電圧とスキャン電圧で選択的に制御することによって画像を表示する。
【0013】
このとき、有機電界発光表示装置は、パッシブマトリクス方式と、スイッチング素子として薄膜トランジスタを用いるアクティブマトリクス方式に分かれる。このうち、アクティブマトリクス方式は、能動素子である薄膜トランジスタを選択的にオンにさせてサブ画素を選択し、ストレージキャパシタに保持される電圧でサブ画素の発光を維持する。
【0014】
かかる有機発光ダイオードは、一般的に真空蒸着を利用して形成する。真空蒸着は、形成しようとする層の物質を真空チャンバーで気相化し、基板上に蒸着する方法である。
【0015】
しかし、真空チャンバーを用いる場合、チャンバーの大きさは、少なくとも真空蒸着が行われる基板の大きさより大きくなければならない。また、チャンバー内に基板を入れるための十分な空間を確報する必要があるが、大型化には限界があるので、別の方式を考慮しなければならない。
【0016】
その一例に、溶液工程(soluble process)を利用する方法があるが、図面を参照して説明する。
【0017】
図2は、一般的な有機発光ダイオードの構造を概略的に示す例示図である。図2は、溶液工程を利用して製造した有機発光ダイオードの構造を概略的に示す。
【0018】
図2を参照すると、前述したように有機発光ダイオードは、基板1上に形成された第1電極18と、発光部30と、第2電極28とからなる。
【0019】
発光部30は、正孔輸送層30bと、電子輸送層30dと、正孔輸送層30bと電子輸送層30dとの間に介在された発光物質層30cとを含む。
【0020】
このとき、発光効率を向上させるため、第1電極18と正孔輸送層30bとの間に正孔注入層30aが介在され、第2電極28と電子輸送層30dとの間に電子注入層30eが介在される。
【0021】
かかる発光部30は、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)毎に分かれて溶液工程を通じて形成される。
【0022】
一般的に有機発光ダイオードを構成する層のうち、正孔注入層30aと正孔輸送層30b及び発光物質層30cは、溶液工程で形成するが、電子輸送層30dと電子注入層30e及び第2電極128は、真空蒸着法で形成する。
【0023】
これは、電子輸送層30dと電子注入層30eが、材料の特性上、安定性が落ちることから、溶液工程が難しいためである。
【0024】
かかる電子輸送層30dと電子注入層30eは、発光物質層30cの内部へ電子を伝達し、有機発光ダイオードの効率を向上させるための必須的な構成である。
【0025】
一般的に、有機発光ダイオードが低分子の発光物質層30cを含む場合は、蒸着方式を適用した電子輸送層30dを用いて、有機発光ダイオードが高分子の発光物質層30cを含む場合は、電子輸送層30d若しくはNaFのような電子注入層30eを用いる。
【0026】
高分子の有機発光ダイオードの場合、電子注入層30eの物質が発光物質層30cの内部へ拡散(diffusion)して電子の注入を増加させる原理を利用するが、拡散領域は非発光領域になるので、発光物質層30cの厚さが一定の水準以上にならなければならない。しかし、発光物質層30cの厚さが増加するに伴って駆動電圧が増加することになり、溶液工程の場合、一定の厚さ以上を適用することができないという限界がある。
【0027】
すなわち、NaFのような電子注入層30eを用いる場合、発光物質層30cの内部へNaが拡散し、電子伝達能力を向上させる。しかし、拡散領域が発光領域と重なると素子効率が減少することになるので、これを防止するため、発光物質層30cの厚さを一定の水準以上に設計する必要がある。しかし、発光物質層30cの厚さが増加するに伴って駆動電圧が増加する。また、溶液工程の場合、溶液の粘度増加によって塗布(jetting)特性が低下する問題があり、厚さ増加に対する限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は上記した問題を解決するためのものであって、溶液工程を利用して製造した有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置、そして有機発光ダイオードの製造方法を提供することを目的とする。
【0029】
本発明の他の目的は、多層構造の発光物質層を形成し、電子輸送層及び電子注入層を取り除いた有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置、そして有機発光ダイオードの製造方法を提供することである。
【0030】
その他、本発明の他の目的及び特徴は、後述する発明の構成及び特許請求の範囲に説明する。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記の目的を達成するため、本発明の一実施例に係る有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置は、電子注入物質(electron injection material)を添加して多層構造の発光物質層を形成することを特徴とする。
【0032】
そのため、本発明の一実施例に係る有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置は、第1電極と、第1電極上に順次に位置する正孔注入層、正孔輸送層及び発光物質層からなる発光部と、発光部上に位置する第2電極とを含んで構成することができる。
【0033】
発光物質層は、第1発光層と、電子注入物質が添加された第2発光層とを含む多層構造にすることができる。
【0034】
また、本発明は、前述した有機発光ダイオードを含む有機電界発光表示装置を提供する。
【0035】
また、本発明は、前述した有機発光ダイオードの製造方法を提供する。
【0036】
別の観点から、本発明は、電子輸送層に電子注入物質が添加(若しくはドープ)され、電子注入物質は領域によって濃度(若しくは密度)が異なることを特徴とする。
【0037】
すなわち、電子注入物質は、発光物質層と隣接する電子輸送層の下部領域において第1密度を有し、第2電極と隣接する電子輸送層の上部領域において第1密度より大きな第2密度を有することができる。
【0038】
さらに、本発明は、前述した有機発光ダイオードを含む有機電界発光表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0039】
前述したように、本発明の一実施例に係る有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置によると、電子伝達が増加することによって効率及び寿命が向上すると共に、蒸着工程が適用される電子注入層及び電子輸送層を取り除くことができるため、工程性に優れる効果を有する。
【0040】
一方、本発明の他の実施例に係る有機発光ダイオード及びこれを含む有機電界発光表示装置は、電子輸送層の電子伝達特性が向上し、電子注入物質による発光物質層の特性低下を最小化する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】一般的な有機発光ダイオードの発光原理を説明するダイアグラムである。
図2】一般的な有機発光ダイオードの構造を概略的に示す例示図である。
図3】本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置を概略的に示すブロック図である。
図4】有機電界発光表示装置のサブ画素に対する回路構成を示す例示図である。
図5】本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置の概略的な断面構造を示す図面である。
図6図5に示す本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置における有機発光ダイオードの構造を概略的に示す例示図である。
図7a】溶液工程の例を示す例示図である。
図7b】溶液工程の例を示す例示図である。
図8】電圧による電流密度を、例を挙げて示すグラフである。
図9】電流密度による電流効率を、例を挙げて示すグラフである。
図10】波長による光の強度を、例を挙げて示すグラフである。
図11】本発明の第2実施例に係る有機電界発光表示装置の概略的な断面構造を示す例示図である。
図12】本発明の第2実施例に係る有機電界発光表示装置における有機発光ダイオードの構造を概略的に示す例示図である。
図13図12における「A」部分の拡大図である。
図14】電圧による電流密度を、例を挙げて示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、第1電極と、前記第1電極上に順次に位置する正孔注入層、正孔輸送層及び発光物質層からなる発光部と、前記発光部上に位置する第2電極とを含み、前記発光物質層は、第1発光層と、電子注入物質(electron injection material)が添加された第2発光層とを含む多層構造からなる有機発光ダイオードを提供する。
【0043】
本発明の有機発光ダイオードにおいて、前記電子注入物質は、水溶性若しくは脂溶性アルカリ金属を含むことができる。
【0044】
本発明の有機発光ダイオードにおいて、前記第2発光層は、−3.0eV〜−2.6eVの低いLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)エネルギー準位を有し、かつ2.0eV〜2.5eVの三重項エネルギー(T1)を有することができる。
【0045】
本発明の有機発光ダイオードにおいて、前記第2発光層は、10−6cm/Vs〜10−4cm/Vsの電子移動度を有することができる。
【0046】
別の観点から、本発明は、基板上に備えられたトランジスタと、前記トランジスタに連結される、前述した有機発光ダイオードとを含む有機電界発光表示装置を提供する。
【0047】
さらに別の観点から、本発明は、基板上に第1電極を形成する段階と、前記第1電極上に赤色、緑色及び青色のサブ画素毎に正孔輸送層を形成する段階と、前記正孔輸送層上に第1発光層を形成する段階と、前記第1発光層上に電子注入物質を添加して第2発光層を形成する段階と、前記第2発光層上に第2電極を形成する段階とを含み、前記正孔輸送層と第1発光層及び第2発光層が溶液工程を通じて形成される、有機発光ダイオードの製造方法を提供する。
【0048】
本発明の有機発光ダイオードの製造方法において、前記溶液工程は、インクジェット印刷(inkjet printing)、ノズル印刷(nozzle printing)、転写方式(transferring process)、スリットコーティング(slit coating)、グラビア印刷(gravure printing)及びサーマルジェット印刷(thermal jet printing)のいずれか1つにすることができる。
【0049】
本発明の有機発光ダイオードの製造方法において、前記第1発光層は、有機溶媒を用いて形成し、前記第2発光層は、水溶性若しくは脂溶性アルカリ金属の電子注入物質が分散された水溶性材料を用いて形成することができる。
【0050】
本発明の有機発光ダイオードの製造方法において、前記第1発光層は、水溶性材料を用いて形成し、前記第2発光層は、水溶性若しくは脂溶性アルカリ金属の電子注入物質が分散された有機溶媒を用いて形成することができる。
【0051】
さらに別の観点から、本発明は、第1電極と、前記第1電極と対向する第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する発光物質層と、前記発光物質層と前記第2電極との間に位置し、電子注入物質が添加された電子輸送層とを含み、前記電子注入物質は前記発光物質層と隣接する前記電子輸送層の下部領域において第1密度を有し、前記第2電極と隣接する前記電子輸送層の上部領域において前記第1密度より大きな第2密度を有する、有機発光ダイオードを提供する。
【0052】
本発明の有機発光ダイオードにおいて、前記電子注入物質は、アルカリ金属を含むことができる。
【0053】
本発明の有機発光ダイオードにおいて、前記上部領域で前記電子注入物質は、前記電子輸送物質に対して150%の重量比を有し、前記下部領域で前記電子注入物質は、前記電子輸送物質に対して50%の重量比を有することができる。
【0054】
本発明の有機発光ダイオードは、前記第1電極と前記発光物質層との間に位置する正孔輸送層と、前記第1電極と前記正孔輸送層との間に位置する正孔注入層とをさらに含むことができる。
【0055】
さらに別の観点から、本発明は、基板上に備えられたトランジスタと、前記トランジスタに連結される、前述した有機発光ダイオードを含む有機電界発光表示装置を提供する。
【0056】
以下、図面を参照し、本発明に係る有機発光ダイオード及びこれを備える有機電界発光表示装置、そして有機発光ダイオードの製造方法の好適な実施例について、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。
【0057】
本発明の長所及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、図面と共に詳細に後述する実施例を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現化されるだろう。本実施例は、本発明の開示が完全であるようにし、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者に発明の範疇を完璧に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求の範囲の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘って、同一の参照符号は同一の構成要素を示す。図面における層及び領域の大きさや相対的な大きさは、明瞭な説明のために誇張することがある。
【0058】
素子(element)、若しくは異なる層の素子、若しくは「上(on)」に称されるものは、別の素子、または真上層だけでなく、間に別の層若しくは別の素子を介在した場合も全て含む。一方、素子が「直上(directly on)」または「真上」と称されるものは、間に別の素子若しくは層を介在しないことを示す。
【0059】
空間的に相対的な用語である「下(below、beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」などは、図面に示すように1つの素子若しくは構成要素と、他の素子若しくは構成要素との相関関係を容易に記述するために用いることができる。空間的に相対的な用語は、図面に示す方向に加えて、使用時または動作時の素子の相違の方向を含む用語として理解しなければならない。例えば、図面に示す素子をひっくり返した場合、他の素子の「下(below)」若しくは「下(beneath)」と記述された素子は、他の素子の「上(above)」に位置し得る。したがって、例示的な用語である「下」は、上下方向を全て含むことができる。
【0060】
本発明に用いられる用語は、実施例を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。本明細書において、単数形の表現は、別に言及しない限り複数形も含む。明細書において用いられる「含む(comprise及び/またはcomprising)」は、言及された構成要素、段階、動作及び/または素子の場合は1つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0061】
図3は、本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置を概略的に示すブロック図である。
【0062】
図3を参照すると、本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置は、映像処理部115と、データ変換部114と、タイミング制御部113と、データ駆動部112と、ゲート駆動部111と、表示パネル110とを含むことができる。
【0063】
映像処理部115は、RGBデータ信号(RGB)を利用し、平均画像レベルに応じて、最大輝度を具現化するようにガンマ電圧を設定するなど、様々な映像処理を行った後、RGBデータ信号(RGB)を出力する。映像処理部115は、RGBデータ信号(RGB)はもちろん、垂直同期信号(Vsync)、水平同期信号(Hsync)、データイネーブル信号(DES)及びクロック信号(CLK)のうち、1つ以上を含む駆動信号を出力する。
【0064】
タイミング制御部113は、映像処理部115若しくはデータ変換部114から 垂直同期信号(Vsync)、水平同期信号(Hsync)、データイネーブル信号(DES)及びクロック信号(CLK)のうち、1つ以上を含む駆動信号の供給を受ける。タイミング制御部113は、駆動信号に基づいて、ゲート駆動部111の動作タイミングを制御するためのゲートタイミング制御信号(GCS)と、データ駆動部112の動作タイミングを制御するためのデータタイミング制御信号(DCS)とを出力する。
【0065】
タイミング制御部113は、ゲートタイミング制御信号(GCS)とデータタイミング制御信号(DCS)に対応し、データ信号(DATA)を出力する。
【0066】
データ駆動部112は、タイミング制御部113から供給されたデータタイミング制御信号(DCS)に応じてタイミング制御部113から供給されるデータ信号(DATA)をサンプリングしてラッチ(latch)し、ガンマ基準電圧に変換して出力する。データ駆動部112は、データライン(DLl〜DLm)を通して変換されたデータ信号(DATA)を出力する。そして、データ駆動部112はIC(Integrated Circuit)の形に形成される。
【0067】
ゲート駆動部111は、タイミング制御部113から供給されたゲートタイミング制御信号(GCS)に応じてゲート電圧のレベルをシフトさせながらゲート信号を出力する。ゲート駆動部111は、ゲートライン(GLl〜GLn)を通してゲート信号を出力する。ゲート駆動部111はICの形に形成されてもよく、表示パネル110にゲートインパネル(Gate In Panel;GIP)の方式で形成されてもよい。
【0068】
表示パネル110は、一例に、赤色のサブ画素(SPr)、緑色のサブ画素(SPg)及び青色のサブ画素(SPb)を含むサブ画素構造に具現化することができる。すなわち、1つの画素(P)は、RGBサブ画素(SPr、SPg、SPb)からなる。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、白色のサブ画素をさらに含むこともできる。
【0069】
図4は、有機電界発光表示装置のサブ画素に対する回路の構成を示す例示図である。
【0070】
図4に示すサブ画素は、スイッチングトランジスタ、駆動トランジスタ、キャパシタ及び有機発光ダイオードを含む2T(Transistor)1C(Capacitor)構造に構成された場合を例に挙げている。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、補償回路が加えられた場合には、3T1C、4T2C、5T2Cなど様々に構成することができる。
【0071】
図4を参照すると、有機電界発光表示装置は、第1方向に配列されたゲートライン(GL)、第1方向と交差する第2方向に、互いに離隔して配列されたデータライン(DL)と駆動電源ライン(VDDL)によってサブ画素領域が定義される。
【0072】
1つのサブ画素には、スイッチングトランジスタ(SW)、駆動トランジスタ(DR)、キャパシタ(Cst)、補償回路(CC)及び有機発光ダイオード(OLED)が含まれることができる。
【0073】
有機発光ダイオード(OLED)は、駆動トランジスタ(DR)によって形成された駆動電流によって光を発光するように動作する。
【0074】
スイッチングトランジスタ(SW)は、ゲートライン(GL)を通じて供給されたゲート信号に応じ、データライン(DL)を通じて供給されるデータ信号がキャパシタ(Cst)にデータ電圧で保存されるようにスイッチング動作する。
【0075】
駆動トランジスタ(DR)は、キャパシタ(Cst)に保存されたデータ電圧によって駆動電源ライン(VDDL)とグラウンド配線(GND)との間に駆動電流が流れるように動作する。
【0076】
補償回路(CC)は、駆動トランジスタ(DR)の閾値電圧などを補償する。補償回路(CC)は、1つ以上のトランジスタとキャパシタで構成することができる。補償回路(CC)の構成は様々であり、これに関する具体例及び説明を省略する。
【0077】
かかるサブ画素の構造を有する有機電界発光表示装置は、光が放出される方向によって前面発光(top emission)方式や後面発光(bottom emission)方式、若しくは両面発光(dual emission)方式で具現化することができる。
【0078】
図5は、本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置の概略的な断面構造を示す図面である。
【0079】
図5は、赤色、緑色及び青色のサブ画素、すなわち、RGBサブ画素からなる1つの画素を例に挙げている。RGBサブ画素は、それぞれの有機発光ダイオードに含まれる発光物質をRGB色に区分して形成することができる。
【0080】
また、図5に示す有機電界発光表示装置は、画素が配列された基板方向へ光が放出される後面発光方式の有機電界発光表示装置を例に挙げている。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。画素が配列された基板と反対方向へ光が放出される前面発光方式の有機電界発光表示装置はもちろん、両面発光方式の有機電界発光表示装置にも適用することが可能である。
【0081】
また、図5は、共平面(coplanar)構造の薄膜トランジスタを用いた有機電界発光表示装置を例に挙げている。しかし、本発明が共平面構造の薄膜トランジスタに限定されるものではない。
【0082】
図6は、図5に示す本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置において、有機発光ダイオードの構造を概略的に示す例示図である。
【0083】
図5及び図6を参照すると、本発明の第1実施例に係る有機電界発光表示装置は、基板101上に形成されたトランジスタ(TFT)と有機発光ダイオード(OLED)で構成することができる。
【0084】
一例に、基板101は、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)に区分することができ、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)は、規則的に繰り返すことができる。かかる規則性は、ライン毎に若しくは対角線状に有することができる。
【0085】
駆動素子であるトランジスタ(TFT)は、半導体層124と、ゲート電極121と、ソース電極122と、ドレイン電極123とを含む。
【0086】
半導体層124は、透明なプラスチックや高分子フィルムなどの絶縁物質からなる基板101上に形成される。
【0087】
半導体層124は、非晶質シリコン膜、非晶質シリコンを結晶化した多結晶シリコン膜、酸化物(oxide)半導体、若しくは有機物(organic)半導体などで構成することができる。
【0088】
このとき、基板101と半導体層124との間には、バッファ層(不図示)をさらに形成することができる。バッファ層は、後続工程で形成されるトランジスタ(TFT)を、基板101から流出されるアルカリイオンといった不純物から保護するために形成することができる。
【0089】
半導体層124上には、シリコン窒化膜(SiN)若しくはシリコン酸化膜(SiO)などからなるゲート絶縁膜125aが形成されており、その上にゲート電極121を含むゲートライン(不図示)及び第1維持電極(不図示)が形成されている。
【0090】
ゲート電極121とゲートライン及び第1維持電極は、低抵抗特性を有する第1金属物質、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)若しくはこれらの合金からなる単層または多層に形成することができる。
【0091】
ゲート電極121とゲートライン及び第1維持電極上には、シリコン窒化膜若しくはシリコン酸化膜などからなる層間絶縁膜(interlayer insulation)125bが形成されており、その上にデータライン(不図示)、駆動電圧ライン(不図示)、ソース電極122、ドレイン電極123及び第2維持電極(不図示)が形成されている。
【0092】
ソース電極122とドレイン電極123は、所定の間隔で離隔して形成されており、半導体層124と電気的に連結される。例えば、ゲート絶縁膜125a及び層間絶縁膜125bには、半導体層124の両側を露出させる第1及び第2半導体層コンタクトホールが形成されており、第1及び第2半導体層コンタクトホールを通してソース電極122とドレイン電極123のそれぞれが半導体層124と電気的に接触する。
【0093】
このとき、第2維持電極は、層間絶縁膜125bを介してその下部の第1維持電極の一部と重なってストレージキャパシタを形成する。
【0094】
データライン、駆動電圧ライン、ソース電極122、ドレイン電極123及び第2維持電極は、低抵抗特性を有する第2金属物質、例えばアルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)若しくはこれらの合金からなる単層または多層に形成することができる。
【0095】
データライン、駆動電圧ライン、ソース/ドレイン電極122、123及び第2維持電極が形成された基板101上には、保護膜(若しくは平坦化膜)125cが形成されている。
【0096】
そして、保護膜125c上には、ドレイン電極123の一部を露出させるオーバーコート層125dが形成されている。オーバーコート層125dは、有機物質で形成することができるが、無機物質若しくは有機・無機混合物質で形成することもできる。保護膜125cがオーバーコート層125dの役割をする場合、オーバーコート層125dを形成しなくてもよい。
【0097】
次に、有機発光ダイオード(OLED)は、第1電極118と、発光部130と、第2電極128とを含むことができる。
【0098】
有機発光ダイオード(OLED)は、駆動薄膜トランジスタ(TFT)と電気的に連結される。さらに具体的に、駆動薄膜トランジスタ(TFT)の上部に形成された保護膜125c及びオーバーコート層125dには、駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極123を露出させるドレインコンタクトホールが形成されている。有機発光ダイオード(OLED)は、ドレインコンタクトホールを通して、駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極123と電気的に接続される。
【0099】
すなわち、第1電極118は、オーバーコート層125d上に形成され、ドレインコンタクトホールを通して、駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極123と電気的に接続される。
【0100】
第1電極118は、発光部130に電流(または電圧)を供給するものであり、所定の面積の発光領域を定義する。
【0101】
また、第1電極118は、陽極(anode)としての役割を行う。そのため、第1電極118は、仕事関数が比較的に大きい透明な導電性物質からなり、一例にインジウム・チン・オキシド(Indium Tin Oxide;ITO)若しくはインジウム・ジンク・オキシド(Indium Zinc Oxide;IZO)を含むことができる。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0102】
図5は、第1電極118が赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)毎に分かれてパターニングされた場合を例に挙げているが、本発明はこれに限定されるものではない。第1電極118は、全画素に亘って連結された1つの層で形成することができる。
【0103】
第1電極118が形成された基板101上には、バンク125eが形成されている。バンク125eは、有機絶縁物質からなり、第1電極118の縁周辺を堤のように囲んで開口部(opening)を定義する。
【0104】
また、バンク125eは、黒色の顔料を含む感光剤で形成することができるが、この場合、バンク125eは遮光部材の役割をする。
【0105】
バンク125eが形成された基板101上には、発光部130と第2電極128が順次に形成されている。
【0106】
すなわち、発光部130は、第1電極118と第2電極128との間に形成される。発光部130は、第1電極118から供給される正孔と第2電極128から供給される電子の結合によって発光する。
【0107】
発光部130は、光を出す発光物質層130cの他に、発光物質層130cの発光効率を向上させるための補助層(auxiliary layer)130a、130bを含む多層構造を有することができる。
【0108】
すなわち、発光部130は、正孔輸送層130b及び発光物質層130cを含む。
【0109】
素子の構成によって発光効率を向上させるため、第1電極118と正孔輸送層130bとの間に正孔注入層130aを介在することができる。
【0110】
正孔輸送層130bは単層で構成することもでき、2層で構成することもできる。
【0111】
本発明の第1実施例に係る発光部130は、正孔輸送層130bとの界面特性を向上させるための第1発光層130c´と、電子注入物質(electron injection material)を加えて電子注入を増加させた第2発光層130c´´との積層構造を有する発光物質層130cを含む。
【0112】
すなわち、第1発光層130c´は、正孔輸送層130bとの界面特性を向上させて素子の寿命を増加させる材料を適用することができる。第2発光層130c´´は、電子注入物質を加えて電子注入を増加させ、効率を向上させる材料を適用することができる。
【0113】
そのとき、第2発光層130c´´は、第1発光層130c´に影響、すなわち、損傷を与えない溶媒を使用し、電子注入物質が添加されている。したがって、第2発光層130c´´によって電子注入特性が向上し、電子輸送層及び電子注入層がなくても効率を向上させることができる。
【0114】
電子注入物質の一例に、水溶性若しくは脂溶性のアルカリ金属を含むことができる。
【0115】
第1発光層130c´に有機溶媒を用いる場合、第2発光層130c´´は、水溶性(water soluble)材料を用いて第1発光層130c´に損傷を与えない多層構造に形成することができる。また、第1発光層130c´に水溶性材料を用いる場合、第2発光層130c´´は、有機溶媒を用いて多層構造に形成することもできる。
【0116】
第2発光層130c´´は、−3.0eV〜−2.6eV程度の低いLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)エネルギー準位を有し、かつ約2.0eV〜2.5eVの三重項エネルギー(T1)を有することができる。
【0117】
第2発光層130c´´は、約10−6cm/Vs〜10−4cm/Vsの電子移動度を有することができる。
【0118】
このように、本発明は、既存の蒸着方式の電子輸送層及び電子注入層を取り除いても電子伝達が円滑に行われるようにして、有機発光ダイオードの効率及び寿命の向上を実現することができる。
【0119】
すなわち、電子輸送層及び電子注入層の除去によって発光物質層130cの内部へ電子注入層の物質が拡散する現象は起きず、発光物質層130c内部の発光領域の形成に制限を与えない。
【0120】
かかる発光部130は、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)毎に分けて、溶液工程(soluble process)を通じて形成することができる。溶液工程が可能な低分子若しくは高分子材料を第1電極118上に選択的にコーティングし、形成することができる。
【0121】
このとき、場合によっては、正孔注入層130aを省略することができ、若しくは正孔注入層130aと正孔輸送層130bを、材料をミックスして1層に形成することもできる。また、正孔注入層130aと正孔輸送層130bは、2層以上の多層に分けて形成することもできる。
【0122】
溶液工程で形成された赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)の発光物質層130cを成す材料は、それぞれ蛍光発光物質、若しくは燐光発光物質である。これら発光物質層130cは、1つ以上のホストに発光色を表すことができる1つ以上のドーパントを含むことができる。
【0123】
溶液工程に、インクジェット印刷(inkjet printing)、ノズル印刷(nozzle printing)、転写方式(transferring process)、サーマルジェット印刷(thermal jet printing)、若しくはスピンコーティング(spin coating)のいずれか1つを選択することができる。
【0124】
かかる溶液工程は、別途のマスクやチャンバーなしで行うことができる。したがって、溶液工程は、蒸着工程に比べて工程が単純であり、工程費用が安いので、有機発光ダイオード(OLED)の工程にかかる時間及び製造費用を節減できる効果を有する。
【0125】
特に、本発明の場合、既存の蒸着工程を利用する電子注入層及び電子輸送層を取り除くことができるので、工程性に優れる効果を有する。
【0126】
以下、本発明の第1実施例に係る発光部130の製造に適用される溶液工程の方法を例に挙げて説明する。
【0127】
図7a及び図7bは、溶液工程の例を示す例示図である。
【0128】
図7aは、インクジェット印刷に関するものであり、基板101上にインク145を滴下することが可能な噴射口を有するヘッド140を通じて印刷が行われる。
【0129】
この場合、印刷時にヘッド140または基板101が移動し、領域毎の微細な制御が容易である。すなわち、有機電界発光表示装置のサブ画素毎に選択的なコーティングを容易に行うことができる。
【0130】
インクジェット印刷の他、ノズル印刷(nozzle printing)は、スリット形状のノズルを用意して基板101上に印刷を行うことである。かかるノズルは、多数を備えることもできる。相対的にインクジェット印刷方式に比べて、より広い領域に分布されたパターンの印刷に適する。例えば、基板101上にバンクが形成されている有機電界発光表示装置の場合、前面ノズル印刷方式で所定の層を形成するとき、バンクによって領域別に区分することが可能である。
【0131】
図7bは、ロール印刷(roll printing)に関するものであり、パターン155が形成されたメインローラ150を回転させて基板101上に印刷パターンを形成するものである。この場合、補助ローラ151は印刷溶液が供給されるヘッドと接続し、印刷溶液がヘッドからメインローラ150のパターン155上に継続的に供給されるように誘導する。場合によって、メインローラ150にパターン155が形成されない場合、基板101全体に塗布することが可能である。
【0132】
かかる溶液工程の追加例に、転写方式(transferring process)、グラビア印刷(gravure printing)及びサーマルジェット印刷(thermal jet printing)をさらに挙げることができる。
【0133】
しかし、上述した例は、溶液工程の限定的な例に過ぎず、装備開発などによって、これとは異なる装備或いは異なる工程の溶液工程で行うこともできる。
【0134】
また、図5及び図6を参照すると、第2電極128は、発光部130上に形成され、発光部130に電子を提供する。
【0135】
第2電極128は、基板101の全体を覆うように形成することができる。すなわち、第2電極128は、全画素に亘って連結された1つの層で形成することができる。
【0136】
以下、かかるように構成される本発明の第1実施例に係る有機発光ダイオードの特性について図面を参照し、説明する。
【0137】
図8は、電圧による電流密度(J)を例に挙げて示すグラフである。
【0138】
図9は、電流密度による電流効率(current efficiency)を例に挙げて示すグラフである。
【0139】
そして、図10は、波長による光強度を例に挙げて示すグラフである。図10は、赤色の発光物質層に対する波長による光強度を例に挙げて示している。
【0140】
図8ないし図10に示す比較例1は、電子注入層を備える一般的な発光ダイオードであり、比較例2は、電子注入層と電子輸送層を備える一般的な発光ダイオードである。
【0141】
図8を参照すると、電子注入層だけでなく、電子輸送層を備える比較例2は、電子注入層のみを備える比較例1に比べて同一電圧においてさらに大きな電流密度を有する。
【0142】
そして、電子注入層と電子輸送層を備えることなく多層構造の発光部を備える本発明の第1実施例の場合(実験例1)、前述した比較例1及び比較例2に比べ、さらに大きな電流密度を有することが分かる。これは、効率が向上したことを意味するだけでなく、より低い電圧においても駆動が可能であることを意味する。
【0143】
図9を参照すると、電流密度による電流効率の傾向が分かるが、本発明の第1実施例の場合(実験例1)、比較例1及び比較例2に比べて電流効率が向上したことが分かる。
【0144】
また、同一の電流で効率が高いということは、寿命が向上したことを意味する。
【0145】
図10を参照すると、比較例1の場合、電子注入層の物質が発光物質層の内部へ拡散することによって発光領域が移動し、赤色の光の波長(600〜650nm)より高い波長滞でピークが発生することが分かる。
【0146】
これに比べて比較例2及び実験例1の場合は、そのような傾向が減少し、色の純度が向上することが分かる。
【0147】
図11は、本発明の第2実施例に係る有機電界発光表示装置の断面構造を概略的に示す図面であり、図12は、本発明の第2実施例に係る有機電界発光表示装置における有機発光ダイオードの構造を概略的に示す例示図である。
【0148】
図11及び図12に示すように、本発明の第2実施例に係る有機電界発光表示装置は、基板201上に形成されたトランジスタ(TFT)と有機発光ダイオード(OLED)で構成することができる。
【0149】
基板201は、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)を含み、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)は規則的に繰り返すことができる。例えば、基板201は、ガラス、透明なプラスチックや高分子フィルムなどの絶縁物質からなり、フレキシブルな特性を有することができる。
【0150】
駆動素子であるトランジスタ(TFT)は、半導体層224と、ゲート電極221と、ソース電極222と、ドレイン電極223とを含む。
【0151】
半導体層224は、基板201上に形成される。例えば、半導体層224は、非晶質シリコン、非晶質シリコンを結晶化した多結晶シリコン、酸化物(oxide)半導体物質、若しくは有機物(organic)半導体物質から構成することができる。
【0152】
このとき、基板201と半導体層224との間には、バッファ層(不図示)をさらに形成することができる。バッファ層は、後続工程で形成されるトランジスタ(TFT)を、基板201から流出されるアルカリイオンといった不純物から保護するために形成することができる。
【0153】
半導体層224上には、ゲート絶縁膜225aが形成される。ゲート絶縁膜225aは、シリコン窒化膜(SiN)若しくはシリコン酸化膜(SiO)のような無機絶縁物質から構成することができる。
【0154】
ゲート絶縁膜225a上には、ゲート電極221と、ゲートライン(不図示)及び第1維持電極(不図示)が形成される。
【0155】
ゲート電極221とゲートライン及び第1維持電極は、低抵抗特性を有する第1金属物質からなる。例えば、第1金属物質は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)若しくはこれらの合金である。また、ゲート電極221とゲートライン及び第1維持電極のそれぞれは、単層または多層構造を有することができる。
【0156】
ゲート電極221とゲートライン及び第1維持電極上には、層間絶縁膜(interlayer insulation)225bが形成される。例えば、前記層間絶縁膜225bは、シリコン窒化膜若しくはシリコン酸化膜のような無機絶縁物質から構成することができる。
【0157】
層間絶縁膜225b上には、データライン(不図示)、駆動電圧ライン(不図示)、ソース電極222、ドレイン電極223及び第2維持電極(不図示)が形成されている。
【0158】
ソース電極222とドレイン電極223は、所定の間隔で離隔して形成されており、半導体層224と電気的に連結される。例えば、ゲート絶縁膜225a及び層間絶縁膜225bには、半導体層224の両側を露出させる第1及び第2半導体層コンタクトホールが形成されており、第1及び第2半導体層コンタクトホールを通してソース電極222とドレイン電極223が半導体層224と電気的に接触する。
【0159】
このとき、第2維持電極は、層間絶縁膜225bを介してその下部の第1維持電極の一部と重なってストレージキャパシタを形成する。
【0160】
データライン、駆動電圧ライン、ソース電極222、ドレイン電極223及び第2維持電極は、低抵抗特性を有する第2金属物質からなる。例えば、第2金属物質は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、金(Au)、チタニウム(Ti)、ニッケル(Ni)、ネオジム(Nd)若しくはこれらの合金である。データライン、駆動電圧ライン、ソース電極222、ドレイン電極223及び第2維持電極のそれぞれは、単層または多層構造を有することができる。
【0161】
図面に示してはいないが、駆動素子である薄膜トランジスタ(TFT)と実質的に同一の形状を有するスイッチング素子が、赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)のそれぞれにさらに形成される。スイッチング素子は、ゲートライン、データライン及び駆動素子である薄膜トランジスタ(TFT)に電気的に連結される。
【0162】
データライン、駆動電圧ライン、ソース電極222、ドレイン電極223、第2維持電極が形成された基板201上に、保護膜(若しくは平坦化膜)225cとオーバーコート層225dが積層される。保護膜225cとオーバーコート層225dには、ドレイン電極223を露出させるドレインコンタクトホールが形成される。
【0163】
保護膜225cとオーバーコート層225dのそれぞれは、酸化シリコン若しくは窒化シリコンのような無機絶縁物質、またはフォトアクリルのような有機絶縁物質から構成することができ、保護膜225cとオーバーコート層225dのいずれか1つは、省略することができる。
【0164】
有機発光ダイオード(OLED)は、オーバーコート層225d上に位置し、薄膜トランジスタ(TFT)に電気的に連結される。有機発光ダイオード(OLED)は、第1電極218、発光部230及び第2電極228を含むことができる。
【0165】
第1電極218は、オーバーコート層225d上に赤色、緑色及び青色のサブ画素(R、G、B)毎に形成され、ドレインコンタクトホールを通して駆動薄膜トランジスタ(TFT)のドレイン電極223と電気的に接続される。第1電極218は、発光部230に電流(または電圧)を供給するものであり、所定の面積の発光領域を定義する。
【0166】
また、第1電極218は、仕事関数が比較的に大きい透明な導電性物質からなり、陽極(anode)として役割することができる。例えば、第1電極218は、インジウム・チン・オキシド(Indium Tin Oxide;ITO)若しくはインジウム・ジンク・オキシド(Indium Zinc Oxide;IZO)から構成することができる。ただし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0167】
有機電界発光表示装置が上部発光方式である場合、第1電極218の下部及び/または上部には、反射電極若しくは反射層をさらに形成することができる。例えば、反射電極若しくは前記反射層は、アルミニウム・パラジウム・銅(aluminum‐paladium‐copper;APC)の合金から構成することができる。すなわち、第1電極218は、透明な導電性電極と、反射電極若しくは反射層の二層構造を有することもでき、透明な導電性電極の上部及び下部に反射電極若しくは反射層が位置する三層構造を有することもできる。
【0168】
第1電極218が形成された基板201上には、バンク225eが形成される。バンク225eは、第1電極218の縁部を覆い、第1電極218の中央を露出する開口部(opening)を有する。バンク225eは、透明な有機絶縁物質から構成することができる。一方、バンク225eは、黒色の顔料を含む感光性物質からなり、遮光部材の役割をすることもできる。
【0169】
第1電極218上には、発光部230と第2電極228が順次に形成される。すなわち、発光部230は、第1電極218と第2電極228との間に位置する。発光部230は、第1電極218から供給される正孔と第2電極228から供給される電子の結合によって発光する。
【0170】
発光部230は、光を出す発光物質層230cと、発光物質層230cと第2電極228との間に位置する電子輸送層230dとを含む。また、発光部230は、第1電極218と発光物質層230cとの間に順次に積層された正孔注入層230aと正孔輸送層230bとをさらに含むことができる。
【0171】
このとき、電子輸送層230dは、電子輸送物質と、電子注入特性に優れた電子注入物質232を含む。電子輸送物質は、−3.0eV〜−2.0eVのLUMOエネルギー準位と、約10−5cm/Vs〜10−3cm/Vsの電子移動度を有することができる。また、電子注入物質232がドープされた電子輸送層230dは、約2.0eV〜2.5eVの三重項エネルギー(T1)を有することができる。
【0172】
例えば、電子注入物質232は、水溶性や脂溶性のアルカリ金属から選択することができる。
【0173】
電子注入物質232は、垂直方向に沿って濃度勾配(concentration gradient、若しくは密度勾配)を有する。
【0174】
すなわち、図12のA部分を拡大した拡大図である図13を参照すると、発光物質層230cと隣接した電子輸送層230dの下部領域240において、電子注入物質232は第1濃度若しくは密度を有し、第2電極228と隣接した電子輸送層230dの上部領域250において、電子注入物質232は第1濃度(若しくは密度)より大きな第2濃度(若しくは密度)を有する。
【0175】
例えば、上部領域250において電子注入物質232は、電子輸送物質に対して150%の重量比を有し、下部領域240において電子注入物質232は、電子輸送物質に対して50%の重量比を有することができる。
【0176】
電子注入物質232は、下部領域240と上部領域250のそれぞれにおいて濃度勾配を有する。すなわち、下部領域240と上部領域250のそれぞれにおいて、電子注入物質232の濃度(若しくは密度)は、上部領域250から下部領域240の方向に行くにつれて小さくなる。また、これとは異なり、電子注入物質232は、下部領域240と上部領域250のそれぞれにおいて同一濃度(若しくは密度)を有することもできる。
【0177】
電子輸送層230dは電子注入物質232を含み、電子注入特性が向上する。したがって、電子注入層を備えない、簡単な構造を有する薄型の有機発光ダイオードを提供することができる。
【0178】
また、電子注入物質232は、電子輸送層230dにおいて濃度勾配を有するため、電子注入物質232が発光物質層230cへ拡散することを最小化することができる。すなわち、希望する電子注入特性を得るためには、一定濃度の電子注入物質232を電子輸送層230dにドープしなければならないが、電子注入物質232は、発光物質層230cと隣接した下部領域240において低い濃度(若しくは密度)を有するため、一定濃度の電子注入物質232が発光物質層230cへ拡散することが最小化される。
【0179】
言い換えると、電子注入特性を向上させながら、電子注入物質232の拡散による素子の効率及び寿命減少の問題を防止することができる。
【0180】
実験例2
ガラス基板上にITOと正孔阻止層(Liq、1nm)を蒸着した後、電子注入物質がドープされた電子輸送層(50nm)と、cathode(Al、100nm)を順次に積層した(electron only device)。
【0181】
比較例3
ガラス基板上にITOと正孔阻止層(Liq、1nm)を蒸着した後、電子注入物質をドープしていない電子輸送層(50nm)と、cathode(Al、100nm)を順次に積層した。
【0182】
実験例2と比較例3の電圧による電流密度を測定し、図14に示す。
【0183】
図14に示すように、電子注入物質を含む電子輸送層を用いる有機発光ダイオードの特性が向上する。
【0184】
上記の説明に具体的に記載されているが、これは発明の範囲を限定するものというより、好ましい実施例として解釈しなければならない。よって、本発明は、説明した実施例によって定められるものではなく、特許請求の範囲及びそれと均等するものによって定められなければならない。
【符号の説明】
【0185】
118、218…第1電極、128、228…第2電極、130、230…発光部、130a、230a…正孔注入層、130b、230b…正孔輸送層、130c、230c…発光物質層、130c´…第1発光層、130c´´…第2発光層、230d…電子輸送層、232…電子注入物質、240…下部領域、250…上部領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14