特許第6509223号(P6509223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6509223液相を排出するための集合通路を備えた熱交換器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509223
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】液相を排出するための集合通路を備えた熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20190422BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20190422BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20190422BHJP
   F28F 17/00 20060101ALI20190422BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   F28D7/16 A
   F28D9/00
   F25B39/02 M
   F28F17/00 501D
   F28F3/08 301A
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-536745(P2016-536745)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2016-539308(P2016-539308A)
(43)【公表日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】EP2014003208
(87)【国際公開番号】WO2015082061
(87)【国際公開日】20150611
【審査請求日】2017年8月29日
(31)【優先権主張番号】13005656.7
(32)【優先日】2013年12月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391009659
【氏名又は名称】リンデ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Linde Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン カイザー
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン ブレナー
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05651270(US,A)
【文献】 国際公開第2004/111564(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/060411(WO,A1)
【文献】 特開2012−141126(JP,A)
【文献】 米国特許第5836382(US,A)
【文献】 特開2002−081699(JP,A)
【文献】 中国実用新案第201209980(CN,Y)
【文献】 特公昭10−001040(JP,B1)
【文献】 西独国特許出願公開第3637904(DE,A)
【文献】 西独国特許出願公開第3424916(DE,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0086140(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101424464(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/10−7/16
F28D 1/02−1/06
F25B 39/02
F28D 9/00−9/02
F28F 3/00−3/08
F25J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の媒体(F1)と第2の媒体(F2)との間で間接的な熱交換を行う柱状の熱交換器(1)であって、
前記第1の媒体(F1)の液相(L1)を収容する胴体室(3)を有する柱状の胴体(2)と、
前記第1の媒体(F1)を収容する第1の熱交換通路、及び、前記第2の媒体(F2)を収容する第2の熱交換通路を有し、これにより、前記第1の媒体(F1)と前記第2の媒体(F2)との間で間接的に熱を交換可能であり、前記胴体室(3)内に存在する前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)によって包囲されうるように前記胴体室(3)内に配置されている、少なくとも1つのプレート型熱交換器(4)と、
前記胴体室(3)から前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)を排出するために、前記胴体室(3)内に配置されている集合通路(5)と
を備える熱交換器において、
前記集合通路(5)は、前記胴体室(3)の下部領域(33)に配置されており、
前記集合通路(5)は、前記少なくとも1つのプレート型熱交換器(4)の下方に、かつ、前記胴体(2)と前記少なくとも1つのプレート型熱交換器(4)との間に、配置されており、
前記集合通路(5)は、該集合通路(5)の内室(I)を画定しかつ前記胴体室(3)内で、前記柱状の胴体(2)の柱軸線と平行な方向である延在方向(7)に沿って長手方向に延在する壁(W)を有し、
前記集合通路(5)の内室(I)は、前記胴体(2)に設けられている排出管(6)に接続されており、これにより、前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)が、前記集合通路(5)を通り、前記排出管(6)を経て前記胴体室(3)から排出可能となる、
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
記胴体室(3)の上部領域(34)は、前記第1の媒体(F1)と前記第2の媒体(F2)との間での間接的な熱交換時に生じる前記第1の媒体(F1)の気相(G1)を集合させるように構成されている、
請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプレート型熱交換器(4)は、前記第1の媒体(F1)が前記熱交換器(1)の運転時に前記少なくとも1つのプレート型熱交換器(4)内を上昇するように構成されており、
記第2の媒体(F2)は、前記少なくとも1つのプレート型熱交換器(4)内で前記第1の媒体(F1)に対する向流又は交差流として案内されている、
請求項1又は2記載の熱交換器。
【請求項4】
前記胴体室(3)内に複数のプレート型熱交換器(4)が配置されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項5】
前記集合通路(5)の前記壁(W)は、前記胴体(2)の下面(16)に沿って延在している、
請求項1からまでのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項6】
前記排出管(6)は、前記延在方向(7)を基準として、前記集合通路(5)の前記内室(I)の中央へ開口している、
請求項1から5までのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項7】
前記集合通路(5)の前記内室(I)は、前記延在方向(7)に対する横断方向に、前記排出管(6)へ向かって増大する断面積を有しており、これにより、前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)の速度(v)が前記集合通路(5)において最大限に均等となり、隣接する前記胴体室(3)における前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)の流れも最小限の負の影響しか受けない、
請求項1から6までのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項8】
前記集合通路(5)の壁(W)は、上面(9)とこれに向かい合う下面(10)とを有しており、
前記上面(9)及び前記下面(10)は、前記集合通路(5)の前記壁(W)の相互に向かい合う側壁(11)を介して相互に接続されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項9】
記壁(W)の下面(10)は、前記胴体(2)によって形成されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項10】
前記集合通路(5)は、前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)を前記集合通路(5)へ導入するように構成された複数の流入開口(12,13)を有しており、
数の前記流入開口(12,13)は、前記集合通路(5)の上面(9)及び/又は側壁(11)に形成されており、
記集合通路(5)の前記流入開口(12,13)の数、分布、寸法及び/又は形状は、前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)の速度(v)が前記集合通路(5)において最大限に均等となるように、かつ、隣接する前記胴体室(3)における前記第1の媒体(F1)の前記液相(L1)の流れも最小限の負の影響しか受けないように、選定されている、
請求項1からまでのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項11】
前記胴体(2)は、前記延在方向(7)に対する横断方向に、柱状の周壁(14)を有しており、
該周壁(14)は、前記胴体(2)の2つの端部壁(15)を相互に接続している、
請求項1から10までのいずれか1項記載の熱交換器。
【請求項12】
前記排出管(6)は、前記胴体(2)の周壁(14)の下部領域(16)に、配置されている、
請求項1から11までのいずれか1項記載の熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば“The standards of the brazed aluminium plate-fin heat exchanger manufacturer’s association (ALPEMA)”、第3版、2010年の第67頁の図9−1に示されているような熱交換器に関する。当該熱交換器は、胴体室を取り囲む胴体(「シェル」)と、胴体室内に配置された少なくとも1つのプレート型熱交換器(「コア」)とを有している。熱交換器のこのような構成は、「コア・イン・シェル(core-in-shell)型」又は「ブロック・イン・シェル(block-in-shell)型」熱交換器とも称される。
【0002】
このような熱交換器により、特に、熱交換器の運転時にプレート型熱交換器を包囲する浴を形成し、プレート型熱交換器内を(鉛直線に沿って)下方から上方に上昇する(いわゆる熱サイフォン効果)第1の媒体を、好ましくは第1の媒体に対する向流又は交差流としてプレート型熱交換器内を案内される第2の媒体(例えば液化すべき気相又は冷却すべき液相)と間接的に熱交換させることができる。このときに発生する第1の媒体の気相は、プレート型熱交換器の上方の胴体室内に集合し、そこから排出される。また、第1の媒体の液相の少なくとも一部は、対応する排出管を介して、胴体室から排出される。好ましくは、プレート型熱交換器の上端で気相とともに発生する液相が、少なくとも1つのプレート型熱交換器を包囲する浴へ戻される。
【0003】
上述した熱交換器では、通常、第1の媒体の全流体量が少なくとも1つの流入管を通して胴体室へ導入される。当該流体の一部は、垂直方向で下方へ向かって流れ、下方から少なくとも1つのプレート型熱交換器へ流入し、そこで部分的に気化される。別の一部、すなわち、胴体室から排出されるべき第1の媒体の液相(好ましくはプロセス技術的に制御された状態でコア・イン・シェル型熱交換器から主として連続的に排出される流体であって、好ましくは、胴体室を空にするために熱交換器から排出される流体でない)は、主として水平方向で、第1の媒体の液相用の排出管へ向かって流れる。この場合、横断流の最大体積流量は、第1の媒体の液相用の排出管の領域に発生する。少なくとも1つの流入管を通る流体がどこで胴体室へ導入されるか、及び、胴体室にどのような液圧条件が存在するかに応じて、水平流と垂直流とが相互に負の影響を与え合うことがある。また、特に第1の媒体の液相用の排出管近傍の隘部では比較的高い流速が発生し、これによりコア・イン・シェル型熱交換器の動作も負の影響を受けることがある。
【0004】
また、胴体室から第1の媒体の液相を排出する際には、渦が発生したり流体流とともに気泡が流れたりしないよう、注意が必要である。さらに、気泡発生のおそれがあるため、相対的に高い(特に局所的な)流速は回避すべきである。よって、第1の媒体の液相用の排出管の近傍に流れに影響する構造物が存在してはならないし、また、流体がこの領域で胴体室に流入してはならないという設定がなされることが多い。このことは、より大きな胴体長さを要し、コスト及び重量の増大をもたらす。
【0005】
胴体室内の最低液位を保証するために、米国特許第5651270号明細書には、胴体室の内部に堰を配置することが提案されている。当該堰は、胴体室を熱交換領域と排出領域とに分割する。この手段も、より大きな胴体長さを必要とし、コスト及び重量の増大をもたらす。
【0006】
なお、別の抵抗要素(例えば堰)が組み込まれることにより、水平方向の流れの一部が大幅に阻害されてしまう。上述したタイプの各要素を越えて流れるには、当該の要素の前方の液位を高めることによって形成される過圧が必要である。ただし、このようにすると、要素間の各空間にそれぞれ異なる液位が生じ、コア・イン・シェル型熱交換器の動作が負の影響を受けることがある。
【0007】
こうした効果は、それぞれの要素を越えるのに必要な過圧が体積流量の関数であるかぎり、いっそう強まる。この場合、体積流量が増大するにつれて、過圧も大きくしなければならない。
【0008】
したがって、上記のことから、本発明の基礎とする課題は、冒頭に言及した形式の、改善された熱交換器を提供することである。この問題は、請求項1記載の特徴を有する熱交換器によって解決される。
【0009】
本発明によれば、第1の媒体の液相の少なくとも一部を胴体室から排出するために、胴体室内に配置される集合通路が設けられ、この集合通路は、その内室を画定しかつ胴体室内で水平の延在方向に沿って長手方向に延在する壁を有する。
【0010】
本発明の一構成によれば、胴体室内には、例えば並列又は直列に運転可能な複数のプレート型熱交換器を設けることができる。
【0011】
この種のプレート型熱交換器は、一般に相互に平行に配置される複数のプレート又は薄板を有しており、これらのプレートあるいは薄板は、熱交換に関与する媒体のための多数の熱交換通路を形成する。プレート型熱交換器の好ましい態様では、複数の波形又は蛇腹形の板(いわゆるフィン)が設けられ、これらの板は、それぞれプレート型熱交換器の2つの平行なパーティングプレートあるいは仕切り板の間に配置される。ここで、プレート型熱交換器の最も外側の2つの層は、カバープレートにより形成される。こうして、それぞれ2つのパーティングプレートの間又はパーティングプレートとカバープレートとの間に、それぞれの間に位置しているフィンに基づいて多数の平行なチャネル又は熱交換通路が形成され、これらのチャネル又は熱交換通路を通して媒体が流動可能となる。したがって、隣り合う各熱交換通路内を流れる媒体の間で熱交換が行われる。この場合、第1の媒体に対応する熱交換通路を第1の熱交換通路と称し、第2の媒体に対応する熱交換通路を第2の熱交換通路と称する。
【0012】
側方に向かって、それぞれ2つの隣り合うパーティングプレートの間、又は、カバープレートとその隣のパーティングプレートとの間には、好ましくは、それぞれの熱交換通路を閉鎖する閉鎖条片(いわゆるサイドバー)が設けられている。第1の熱交換通路は、鉛直線に沿って上方から下方へ開口しており、特に閉鎖条片によっては閉鎖されないので、第1の媒体の液相は下方から第1の熱交換通路内へ到達可能であり、上方のプレート型熱交換器の箇所で第1の熱交換通路から液相又は気相として排出可能である。
【0013】
カバープレート、パーティングプレート、フィン及びサイドバーは、好ましくは、アルミニウムから製造され、例えば炉内で相互にろう接される。管を備えた適切なヘッダを介して、媒体を熱交換通路に導入可能又は熱交換通路から排出可能である。
【0014】
熱交換器の胴体は、特に周囲を取り巻く(円)柱状の壁を有することができ、この壁は、熱交換器が規定通りに配置された状態において、好ましくは、壁又は胴体の長手軸線(柱軸線)が水平線に沿って延在するように配向される。胴体は、端部に、それぞれ上述の壁に接続された、好ましくは向かい合う壁を有し、これらの端部壁は、水平線又は長手軸線に対する横断方向に延在する。
【0015】
好ましくは、集合通路は(規定通りに配置された熱交換器を基準として)胴体室の下部領域、例えば内室に向かう胴体の内側に配置されるように構成される。好ましくは、集合通路は、胴体、特にその周壁と、少なくとも1つのプレート型熱交換器との間に配置される。また好ましくは、集合通路が鉛直線に沿って少なくとも1つのプレート型熱交換器の下方に配置されるように構成してもよい。さらに、プレート型熱交換器は、水平線に沿って別のプレート型熱交換器に並ぶように配置することもできる。この場合、集合通路は好ましくは、鉛直線に沿って胴体室内で第1の媒体の液相の液面下方に配置され、これにより相応に、第1の媒体の液相が集合通路によって胴体室から排出可能となる。
【0016】
熱交換器の動作方式に関しては、冒頭に述べたように、好ましくは、少なくとも1つのプレート型熱交換器は、第2の熱交換通路へ案内される第2の媒体が、隣接する第1の熱交換通路へ案内される第1の媒体に対して冷却され、及び/又は、少なくとも部分的に液化されて、これにより第1の媒体の気相が形成されるように構成される。ここで、胴体室は、気相を集合させるように構成される。
【0017】
さらに好ましくは、少なくとも1つのプレート型熱交換器は、第1の媒体が、熱交換器の運転時に、少なくとも1つのプレート型熱交換器内、つまり、このために設けられる少なくとも1つのプレート型熱交換器の第1の熱交換通路内又は第2の熱交換通路内を上昇するように構成される。ここでは特に、少なくとも1つのプレート型熱交換器は、第2の媒体を第1の媒体に対する向流又は交差流として第2の熱交換通路へ案内するように構成される。
【0018】
好ましくは、集合通路は、第1の媒体の液相を排出すべく、特に胴体下側に配置される排出管に連通可能に接続され、これにより、第1の媒体の液相は、排出管を介して集合通路から排出可能となる。集合通路は、好ましくはこの集合通路の長さ全体にわたって分散配置される複数の排出管、例えば2つ又は3つの排出管に連通可能に接続することもできる。
【0019】
また、本発明の一実施形態では、集合通路は、延在方向に沿って、すなわち、胴体の長手軸線(柱軸線)に対して平行な方向又は水平線に沿った方向に沿って延在し、ここで、好ましくは、上述した延在方向(長手軸線)に対する横断方向に、例えば管状(特には円形)又は例えば角形、特に長方形状の断面を有する。好ましくは、集合通路は、延在方向に沿って、熱交換器の長さの少なくとも60%、70%、80%又は90%にわたって、特には熱交換器の胴体室の長さ全体にわたって、延在する。
【0020】
さらに、集合通路は、好ましくは集合通路の内室を取り囲む壁を有し、この内室内を液相が上述した排出管に向かって流動可能である。その際、集合通路の壁の、熱交換器の下面側の領域又は鉛直線に沿って下方へ向かう領域を集合通路の下面と称し、その反対側の、集合通路の壁の、熱交換器の上面側の領域を相応に集合通路の上面と称する。集合通路の上面と下面とは、好ましくは、集合通路の、胴体の長手軸線に沿って延在する側壁により相互に接続される。集合通路は、端部側で、好ましくは、相互に向かい合う端面により画定され、この両端面はそれぞれ上面、下面及び側壁を相互に接続する。集合通路は端部側が開放されるように構成してもよい。
【0021】
さらに本発明の変形形態においては、集合通路の壁の上述した領域の1つ又は複数を、熱交換器の胴体により形成できる。好ましくは、集合通路の下面又は集合通路の壁の下面は、熱交換器の胴体により形成される。つまり、側壁及び端面は相応に胴体室側から胴体に当接する。
【0022】
液相を排出するために、集合通路は、好ましくは少なくとも1つの流入開口、特に好ましくは複数の流入開口を有し、この流入開口は、特に集合通路の上面に、及び場合により集合通路の相互に向かい合う側壁に形成される。その際、集合通路の上面に設けられる流入開口は、好ましくはスリット状に形成され、これに対して、側壁に設けられる流入開口は、好ましくは円形の輪郭を有する(例えば孔)。
【0023】
好ましくは、隣り合う流入開口の間隔、具体的には特に上面もしくは側壁に設けられた流入開口どうしの間隔は、集合通路のそれぞれの端面に向かって減少している。すなわち、集合通路の一方の端面の近傍に位置する隣り合う2つの流入開口は、好ましくは、集合通路の延在方向に沿って、(延在方向を基準として)集合通路の中央付近に位置する隣り合う2つの流入開口よりも小さな相互間隔を有している。
【0024】
好ましくは、流入開口の数、分布、寸法及び/又は形状は、第1の媒体の液相の速度場が集合通路において好ましくは均等となるように選定される。特には、隣接する胴体室における流れも最小限の負の(不都合な)影響しか受けないように選定される。
【0025】
さらに、本発明の一態様によれば、集合通路の延在方向に対して垂直な平面での集合通路の断面(場合によっては輪郭)は、集合通路において第1の媒体の液相の特に均等な速度場が生じるように選択される。これにより特に、隣接する胴体室での流れも、最小限の負の影響しか受けない。
【0026】
好ましくは、このことは、排出管に向かう集合通路の断面積の拡大/増大により、及び/又は、集合通路に設けられる流入開口の定められた配置、形状及び寸法により、促進される。
【0027】
好ましくは、排出管は、集合通路又は集合通路の内室の中央へと開口する。
【0028】
また、熱交換器は、胴体室に配置され、1つの排出管に連通する、又は、それぞれが1つもしくは複数の排出管に連通する、本発明の集合通路を複数有することができる。
【0029】
この場合、これらの集合通路の位置、寸法及び配向は、好ましくは、第1の媒体の液相の速度場が各集合通路において好ましくは均等となるように選定される。
【0030】
さらに、胴体はもちろん複数の排出管を有していてもよく、これらの排出管は、上述したような集合通路に、又は場合によっては上述した形式の複数の集合通路に、接続可能である。
【0031】
また、本発明の別の実施形態によれば、流入開口、特に集合通路の側壁に設けられた流入開口が、鉛直線に沿って、胴体下側の胴体内面に対して定められた間隔を有するように構成可能である。このようにすれば、例えば設備の静止時又は流入流の遮断時に、流体の排出を制限することができる(つまり、胴体室内に定められた残留量が残る)。
【0032】
さらに、流体の排出の制限は、胴体室内で集合通路を相応に配置することによっても、例えば集合通路を胴体下側から定義された高さに配置することによっても、達成される。
【0033】
また、個々のもしくは全ての流入開口に、渦の発生もしくは拡大を防止する渦破砕部材を設けることもできる。なお、各流入開口は基本的には個々に構成可能である。
【0034】
本発明の解決手段により、特に、コア・イン・シェル型熱交換器の速度場を良好に制御できる。これにより、貯蔵室もしくは胴体室の全体寸法を良好に活用できる。固有の動作条件に応じて、特に小さな胴体寸法を達成可能である。
【0035】
さらに、集合通路を(例えばプレート型熱交換器の下方に)適切に配置して流入開口を形成することにより、渦の発生もしくは流体にともなうガスの流れを防止できる。
【0036】
また、本発明の集合通路の構成により、相対的に高い(局所的な)流速を回避できる。
【0037】
さらに、流入開口を適切に配置することにより、排出すべき流体を、意図的に、貯蔵室もしくは胴体室の所定の領域、すなわち、プレート型熱交換器での部分気化のために垂直方向で下方へ向かっては僅かな流体しか流れない領域から取り出すことができる。このようにすれば、特に、各流れが相互に負の影響を与え合うことが防止される。
【0038】
胴体寸法をより小さくできるため、本発明の熱交換器の材料、製造及びメンテナンスに係る全体費用が低減されるという利点が得られる。絶縁コストも小さくなる。
【0039】
さらに、集合通路は圧力を担持しない部材であるので、壁厚さ、材料及び製造への要求は小さくて済む。また、集合通路の断面形状も、耐性への影響なく、任意に形成可能である。
【0040】
なお、コア・イン・シェル型熱交換器の排出管の位置は可変である。例えば、排出管を胴体下側の中央部又は縁部に配置できる。これにより、周囲部材の構造への制限が緩和される。
【0041】
本発明のさらなる詳細及び利点を、図に即した実施形態の以下の記述により説明する。なお、本発明の好ましい実施形態は各従属請求項に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明の熱交換器の断面図である。
図2図1の線II−IIで切断した熱交換器の別の断面図である。
図3図1及び図2の本発明の熱交換器の集合通路の上面図である。
【0043】
図1は、図2及び図3と関連して、熱交換器1を示している。熱交換器1は横置きされた柱状(円柱状)の胴体2を有しており、この胴体2は熱交換器1の胴体室3を画定している。この場合、胴体2は柱状の周壁14を有しており、この柱状の周壁14の端部は相互に向かい合う2つの壁15によって画定されている。
【0044】
胴体2によって取り囲まれている胴体室3内には、複数の平行な熱交換通路を有する、プレート型熱交換器4が配置されている。
【0045】
この場合、プレート型熱交換器4は、例えば波形又は蛇腹形の板(いわゆるフィン)を有しており、これらの板は、それぞれプレート型熱交換器4の2つの平板なパーティングプレート又は仕切り板の間に配置されている。こうして、それぞれ2つのパーティングプレート間(あるいはパーティングプレートとカバープレートとの間、下記参照)に、多数の平行なチャネル又は熱交換通路が形成され、これらのチャネル又は熱交換通路を通してそれぞれの媒体F1,F2が流動可能である。最も外側の2つの層は、プレート型熱交換器4のカバープレートにより形成されており;側方に向かって、それぞれ2つの隣り合うパーティングプレートの間又はパーティングプレートとカバープレートとの間に設けられる。
【0046】
胴体室3は、熱交換器1の運転中、胴体2の上面8に設けられた流入管60を介して、第1の媒体F1で満たされる。熱交換器1へ流入する当該流は、通常は2相であるが、液相のみであってもよい。この場合、第1の媒体F1の液相L1は、プレート型熱交換器4を包囲する浴を形成しており、第1の媒体F1の気相G1は、液相L1の上方、胴体室3の上部領域34に集合させることができる。
【0047】
第1の媒体F1の液相L1は、プレート型熱交換器4の対応する第1の熱交換通路内を上昇可能であり、その際、この液相L1は、例えば冷却すべき第2の媒体F2、すなわち、第1の媒体F1に対する交差流として、プレート型熱交換器4の対応する第2の熱交換通路内を案内される媒体による、間接的な熱交換によって部分的に気化される。このときに発生する第1の媒体F1の気相G1は、プレート型熱交換器4の上端を出て熱交換器1の胴体室3内を上昇し、そこから胴体2の上面8の相応の排出管40を介して排出可能となる。さらに、液相L1の一部は胴体室3内を循環する。ここでは、当該部分は、下方から上方へ向かってプレート型熱交換器4の第1の熱交換通路内へ圧送され、その後、プレート型熱交換器4外の胴体室3内を再び下方へ向かって流れる。
【0048】
第2の媒体F2は、適切な流入管Oを介してプレート型熱交換器4へ案内され、対応する第2の熱交換通路を通流した後冷却乃至液化されて、排出管O’を介してプレート型熱交換器4から排出される。
【0049】
熱交換器1の下面16側の胴体2の胴体室3に向かう内面2aに、ボックス状の集合通路5が配置されており、この集合通路5は延在方向7に沿って延在している。この場合、集合通路5は、特に長手方向に延在するように形成されており、したがって、延在方向7において、延在方向7に対する横断方向におけるよりも大きな広がりを有している。
【0050】
さらに、集合通路5は、集合通路5の内室Iを画定する壁Wを有しており、この内室Iを通して、第1の媒体F1の液相L1が胴体室3から排出される。壁Wは、具体的には、1つの上面9と、この上面9を起点として延びる2つの側壁11とを有しており、この2つの側壁11は、延在方向7に沿って延在し、かつ、集合通路5の、上面9に向かい合う底部(下面)10を介して相互に接続されている。この底部10は胴体2により形成されている。さらに、集合通路5又はその壁Wは2つの端面11a,11bを有しており、これら2つの端面11a,11bは延在方向7に沿って相互に向かい合っている。
【0051】
熱交換器1の運転時に胴体室3から第1の媒体F1の液相L1を特に連続的に排出すべく、側壁11に好ましくは円形の流入開口13が設けられ、及び/又は、集合通路5の上面9に好ましくはスリット状の複数の流入開口12が設けられて、これらの流入開口を通して液相L1を集合通路5に導入することができる。この場合、流入開口12,13は延在方向7に沿って相互に並ぶように配置されており、ここで、隣り合う流入開口12,13の間隔は、延在方向7に沿って、排出管6から集合通路5の両端面11a,11bへ向かってそれぞれ好ましくは減少している。ここで、スリット状の流入開口12の長手軸線は、それぞれ集合通路5の延在方向7に対する横断方向に延在している。
【0052】
さらに、集合通路5は胴体2の排出管6に接続されており、この排出管6は集合通路5の下面10で集合通路5内へ開口しているので、流入開口12,13を介して集合通路5の内室I内に到達した第1の媒体F1の液相L1は、集合通路5から排出管6を介して排出可能となる。
【0053】
排出管6は、延在方向7に沿って好ましくは集合通路5の中央に配置されている。ここで、集合通路5の上面9は、好ましくは排出管6に向かって上り勾配の2つの部分9a,9bを有しており、これら2つの部分9a,9bは好ましくは排出管6の上で合致する。
【0054】
集合通路5の断面積は、集合通路5において第1の媒体F1の液相L1の最大限に均等な速度v若しくは速度分布を得るために、好ましくはそれぞれ集合通路5の端面11a,11bから排出管6に向かう方向で増大(拡大)している。これにより特に、隣接する胴体室3における液相L1の流れも最小限の負の(不都合な)影響しか受けない。
【符号の説明】
【0055】
1 熱交換器、 2 胴体、 2a 内面、 3 胴体室、 4 プレート型熱交換器、 5 集合通路、 6 排出管、 7 延在方向、 8 胴体の上面、 9 集合通路の上面、 9a,9b 上面部分、 10 集合通路の下面、 11 集合通路の側壁、 11a,11b 端面、 12 スリット状の流入開口、 13 円形の流入開口、 14 胴体の周壁、 15 胴体の端部壁、 16 胴体の下面、 33 胴体室の下部領域、 34 胴体室の上部領域、 40 気相の排出管、 60 流入管、 F1 第1の媒体、 L1 第1の媒体の液相、 G1 第1の媒体の気相、 F2 第2の媒体、 I 集合通路の内室、 O 第2の媒体の流入管、 O’ 第2の媒体の排出管、 v 液相L1の速度、 W 集合通路の周壁
図1
図2
図3