(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0020】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面10aは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0021】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。外槽20およびドラム22は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム22は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の内周面には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0022】
ドラム22の後部には、撹拌体24が回転自在に配される。撹拌体24は、ほぼ円盤形状を有する。撹拌体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の羽根24aが形成される。撹拌体24は、ドラム22と同軸に回転する。撹拌体24は、本発明の回転体に相当し、羽根24aは、本発明の突状部に相当する。
【0023】
外槽20の後方には、ドラム22および撹拌体24を駆動するトルクを発生させる駆動ユニット30が配される。駆動ユニット30は、本発明の駆動部に相当する。駆動ユニット30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および撹拌体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。具体的には、駆動ユニット30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、撹拌体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動ユニット30は、脱水工程時には、ドラム22および撹拌体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動ユニット30の詳細な構成は、追って説明される。
【0024】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0025】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。
【0026】
次に、駆動ユニット30の構成について詳細に説明する。
【0027】
図2および
図3は、駆動ユニット30の構成を示す断面図である。
図2は、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、
図3は、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。
図4は、駆動モータ100のロータ110の構成を示す、ロータ110の正面図である。
図5は、スプライン514が形成された軸受ユニット500の後部の拡大斜視図である。
図6(a)ないし(c)は、クラッチ機構部600のクラッチ体610の構成を示す図であり、それぞれ、クラッチ体610の正面図、右側面図および背面図である。
【0028】
駆動ユニット30は、駆動モータ100と、翼軸200と、ドラム軸300と、遊星歯車機構400と、軸受ユニット500と、クラッチ機構部600とを含む。駆動モータ100は、撹拌体24およびドラム22を駆動するためのトルクを発生する。翼軸200は、駆動モータ100のトルクにより回転し、当該回転を撹拌体24に伝達する。遊星歯車機構400は、翼軸200の回転、即ち駆動モータ100のロータ110の回転を減速してドラム軸300に伝達する。遊星歯車機構400は、本発明の減速機構に相当する。ドラム軸300は、遊星歯車機構400により減速された回転速度で翼軸200と同軸に回転し、当該回転をドラム22に伝達する。軸受ユニット500は、翼軸200およびドラム軸300を回転自在に支持する。クラッチ機構部600は、撹拌体24、即ち翼軸200を、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転させ、ドラム22、即ちドラム軸300を、遊星歯車機構400により減速された回転速度で回転させることが可能な二軸駆動形態と、撹拌体24およびドラム22、即ち、翼軸200、ドラム軸300および遊星歯車機構400を、駆動モータ100と等しい回転速度で一体的に回転させることが可能な一軸駆動形態との間で、駆動ユニット30の駆動形態を切り替える。
【0029】
駆動モータ100は、アウターロータ型のDCブラシレスモータであり、ロータ110とステータ120とを含む。ロータ110は、有底の円筒状に形成され、その内周面には、全周に亘って永久磁石111が配列される。
図4に示すように、ロータ110の中央部には、円形のボス部112が形成される。ボス部112には、翼軸200を固定するためのボス孔113が形成されるとともに、ボス孔113の外周に環状の被係合凹部114が形成される。被係合凹部114の外周部は、全周に亘って凹凸部114aを有する。
【0030】
ステータ120は、外周部に巻線121を有する。後述するモータ駆動部からステータ120の巻線121に駆動電流が供給されると、ロータ110が回転する。
【0031】
ドラム軸300は、中空形状を有し、翼軸200と遊星歯車機構400とを内包する。ドラム軸300は、中央部が外側に膨出し、この膨出した部位が、遊星歯車機構400の収容部となる。
【0032】
遊星歯車機構400は、太陽歯車410と、太陽歯車410を囲む環状の内歯車420と、太陽歯車410と内歯車420との間に介在する複数組の遊星歯車430と、これら遊星歯車430を回転自在に保持する遊星キャリア440とを含む。
【0033】
太陽歯車410が翼軸200に固定され、内歯車420がドラム軸300に固定される。一組の遊星歯車430は、互いに噛み合い、相反する方向に回転する第1歯車と第2歯車とを含む。遊星キャリア440は、後方へ延びるキャリア軸441を含む。キャリア軸441は、ドラム軸300と同軸であり、翼軸200が挿入されるために内部が中空に形成される。
【0034】
翼軸200の後端部は、キャリア軸441から後方に突出し、ロータ110のボス孔113に固定される。
【0035】
軸受ユニット500には、中央部に円筒状の軸受部510が設けられる。軸受部510の内部には、前部および後部に転がり軸受511、512が設けられ、前端部に、メカニカルシール513が設けられる。ドラム軸300は、外周面が転がり軸受511、512により受けられ、軸受部510内において円滑に回転する。また、メカニカルシール513により、軸受部510とドラム軸300との間への水の侵入が防止される。
図5に示すように、軸受部510の後端部には、内面に、全周に亘ってスプライン514が形成される。
【0036】
軸受ユニット500には、軸受部510の周囲に固定フランジ部520が形成される。固定フランジ部520の下端部に取付ボス521が形成される。
【0037】
軸受ユニット500は、固定フランジ部520において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。駆動ユニット30が外槽20に装着された状態において、翼軸200およびドラム軸300が外槽20の内部に臨む。ドラム22がドラム軸300に固定され、撹拌体24が翼軸200に固定される。
【0038】
クラッチ機構部600は、クラッチ体610と、クラッチスプリング620と、クラッチレバー630と、レバー支持部640と、クラッチ駆動装置650と、中継棒660と、取付プレート670とを含む。
【0039】
図6(a)ないし(c)に示すように、クラッチ体610はほぼ円盤形状を有する。クラッチ体610の前端部には、外周面に、環状のスプライン611が形成される。スプライン611は、軸受ユニット500のスプライン514と係合するように形成される。また、クラッチ体610の外周面には、スプライン611の後方に、フランジ部612が形成される。さらに、クラッチ体610には後端部に、環状の係合フランジ部613が形成される。係合フランジ部613は、ロータ110の被係合凹部114と同じ形状を有し、外周部に全周に亘って凹凸部613aを有する。係合フランジ部613が、被係合凹部114に挿入されると、凹凸部613a、114a同士が係合する。
【0040】
クラッチ体610の軸孔614にキャリア軸441が挿入される。軸孔614の内周面に形成されたスプライン614aとキャリア軸441の外周面に形成されたスプライン441aとが係合する。これにより、クラッチ体610が、キャリア軸441に対して、前後方向への移動が許容され、且つ、周方向への回動が規制される状態となる。
【0041】
クラッチ体610には、軸孔614の外側に環状の収容溝615が形成され、この収容溝615に、クラッチスプリング620が収容される。クラッチスプリング620は、一端が軸受部510の後端部に接し、他端が収容溝615の底面に接する。
【0042】
クラッチレバー630の上端部には、クラッチ体610のフランジ部612の後面に接触し、フランジ部612を前方へ押す押圧部631が形成される。クラッチレバー630は、レバー支持部640に設けられた支軸641に回動自在に支持される。クラッチレバー630の下端部には、取付軸632が形成される。
【0043】
クラッチ駆動装置650は、クラッチレバー630の下方に配置される。クラッチ駆動装置650は、トルクモータ651と、トルクモータ651のトルクにより水平軸周りに回転する円盤状のカム652とを含む。カム652の上面には、外周部にカム軸653が設けられる。カム652の回転中心とクラッチレバー630の取付軸632の中心とが前後方向において一致する。
【0044】
中継棒660は、上下方向に延び、クラッチレバー630とカム652とを連結する。中継棒660は、上端部がクラッチレバー630の取付軸632に取り付けられ、下端部が、カム652のカム軸653に取り付けられる。中継棒660には、中間位置にスプリング661が一体形成される。スプリング661は、引張スプリングである。
【0045】
レバー支持部640およびクラッチ駆動装置650は、ネジ止等の固定方法により、取付プレート670に固定される。取付プレート670は、軸受ユニット500の取付ボス521にネジにより固定される。
【0046】
駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、
図2に示すように、トルクモータ651により、カム軸653が最も下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660によって下方に引かれる。クラッチレバー630が支軸641を中心に前方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610を前方へ押す。クラッチスプリング620の弾性力に逆らって、クラッチ体610が前方へ移動し、クラッチ体610のスプライン611と軸受ユニット500のスプライン514とが係合する。
【0047】
クラッチ体610は、カム軸653が中間の所定位置まで移動すると、スプライン611がスプライン514と係合する位置に到達する。このときは、中継棒660のスプリング661が自然長の状態にある。クラッチ体610は、この係合位置より前には移動しないため、カム軸653が所定位置から最も下方の位置に移動すると、
図2の通り、スプリング661が下方に伸びる。こうなると、クラッチレバー630が、スプリング661によって、前方へ回動するように引かれるので、係合位置にあるクラッチ体610には、押圧部631から押圧力が加えられる。これにより、スプライン611をスプライン514にしっかりと係合させることができる。
【0048】
スプライン611とスプライン514とが係合すると、クラッチ体610が、軸受ユニット500に対して周方向への回動が規制され、回動できない状態となるので、遊星歯車機構400のキャリア軸441、即ち遊星キャリア440が、回転できないよう固定された状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転し、翼軸200に連結されている撹拌体24もロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。翼軸200の回転に伴い、遊星歯車機構400では、太陽歯車410が回転する。上述の通り、遊星キャリア440は固定された状態にあるので、遊星歯車430の第1歯車および第2歯車が、それぞれ、太陽歯車410と同方向および逆方向に回転し、内歯車420が太陽歯車410と同方向に回転する。これにより、内歯車420に固定されたドラム軸300が翼軸200と同方向に、翼軸200よりも遅い回転速度で回転し、ドラム軸300に固定されたドラム22が、撹拌体24よりも遅い回転速度で撹拌体24と同方向に回転する。言い換えれば、撹拌体24がドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同方向に回転する。
【0049】
一方、駆動ユニット30の形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、
図3に示すように、トルクモータ651により、カム軸653が最も上方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転し、カム軸653が上方へ移動すると、まず、スプリング661が縮んでいく。スプリング661が自然長に戻ると、その後は、カム軸653が移動するに従い、中継棒660が上方へ移動し、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660に押されて、上方へ移動する。クラッチレバー630が支軸641を中心に後方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610のフランジ部612から離れる。クラッチ体610が、クラッチスプリング620の弾性力によって後方へ移動し、クラッチ体610の係合フランジ部613とロータ110の被係合凹部114とが係合する。
【0050】
係合フランジ部613と被係合凹部114とが係合すると、ロータ110に対するクラッチ体610の周方向への回動が規制され、クラッチ体610は、ロータ110とともに回転可能な状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200およびクラッチ体610がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。このとき、遊星歯車機構400では、太陽歯車410と遊星キャリア440とがロータ110と等しい回転速度で回転する。これにより、内歯車420が、太陽歯車410および遊星キャリア440と等しい回転速度で回転し、内歯車420に固定されたドラム軸300がロータ110と等しい回転速度で回転する。即ち、駆動ユニット30では、翼軸200、遊星歯車機構400およびドラム軸300が一体となって回転する。これにより、ドラム22と撹拌体24が一体的に回転する。
【0051】
図7は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0052】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部701、記憶部702、操作部703、水位センサ704、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708およびドアロック装置709を備える。
【0053】
操作部703は、電源ボタン703a、スタートボタン703b、コース選択ボタン703cを含む。電源ボタン703aは、ドラム式洗濯機1の電源を投入および遮断するためのボタンである。スタートボタン703bは、運転をスタートさせるためのボタンである。コース選択ボタン703cは、洗濯運転に係る複数の運転コースの中から任意の運転コースを選択するためのボタンである。操作部703は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部701に出力する。
【0054】
水位センサ704は、外槽20内の水位を検知し、検知した水位に応じた水位検知信号を制御部701に出力する。
【0055】
モータ駆動部705は、制御部701からの制御信号に従って、駆動モータ100に駆動電流を供給する。モータ駆動部705は、駆動モータ100の回転速度を検出する速度センサ、インバータ回路等を有し、制御部701により設定された回転速度で駆動モータ100が回転するよう、駆動電流を調整する。たとえば、モータ駆動制御として、PWM制御が用いられる。この場合、制御部701が、検出された回転速度に基づいて決定したディーティー比のパルス電圧を駆動モータ100へ印加することにより、当該パルス電圧に対応する駆動電流が駆動モータ100に供給される。
【0056】
給水駆動部706は、制御部701からの制御信号に従って、給水バルブ51に駆動電流を供給する。排水駆動部707は、制御部701からの制御信号に従って、排水バルブ40に駆動電流を供給する。
【0057】
クラッチ駆動装置650は、第1検知センサ654および第2検知センサ655を含む。第1検知センサ654は、駆動ユニット30の駆動形態が二軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。第2検知センサ655は、駆動ユニット30の駆動形態が一軸駆動形態に切り替えられたことを検知して、検出信号を制御部701に出力する。クラッチ駆動部708は、第1検知センサ654および第2検知センサ655からの検出信号に基づいて制御部701から出力された制御信号に従い、トルクモータ651に駆動電流を供給する。
【0058】
ドアロック装置709は、制御部701からの制御信号に従ってドア12のロックおよびロック解除を行う。
【0059】
記憶部702は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部702には、各種洗濯運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部702には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0060】
制御部701は、操作部703、水位センサ704等からの各信号に基づいて、記憶部702に記憶されたプログラムに従い、モータ駆動部705、給水駆動部706、排水駆動部707、クラッチ駆動部708、ドアロック装置709等を制御する。
【0061】
ドラム式洗濯機1は、コース選択ボタン703cによるユーザの選択操作に基づき、各種運転コースの洗濯運転を行う。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。なお、運転コースによっては、中間脱水工程とすすぎ工程とが2回以上行われる場合がある。
【0062】
洗い工程およびすすぎ工程では、駆動ユニット30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられる。ドラム22内の洗濯物が水に浸かるよう、投入口11の下縁に至らない所定の水位まで外槽20内に水が溜められ、この状態で、駆動モータ100が、交互に、正転および逆転する。これにより、ドラム22と撹拌体24とが、撹拌体24の回転速度がドラム22の回転速度より速い状態で、交互に正転および逆転する。このとき、ドラム22は、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転する。
【0063】
ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされることにより、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する撹拌体24の羽根24aに洗濯物が接触し、羽根24aに洗濯物が擦られたり、羽根24aによって洗濯物が撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。
【0064】
このように、洗いおよびすすぎ時には、ドラム22の回転による機械力のみならず撹拌体24による機械力が洗濯物に付与されるので、洗浄性能の向上が期待できる。 中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動ユニット30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられる。駆動モータ100、即ち、ドラム22および撹拌体24は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押し付けられ、脱水される。
【0065】
このように、脱水時には、ドラム22と撹拌体24とが一体的に回転するので、ドラム22に張り付いた洗濯物が撹拌体24により撹拌されるようなことがなく、洗濯物を良好に脱水できる。
【0066】
さて、上述の通り、本実施の形態のドラム式洗濯機1では、駆動モータ100の回転を、遊星歯車機構400を用いて減速させ、ドラム22に伝える構成が採られている。かかる構成とした場合、二軸駆動形態において、駆動モータ100を停止させるときに、直ちに駆動モータ100への通電を停止すると、駆動モータ100は停止しようとするがドラム22は慣性力により回転し続けようとする結果、遊星歯車機構400の各歯車に大きな衝撃が加わるため、遊星歯車機構400から大きな異音が発生しやすい。
【0067】
そこで、本実施の形態では、二軸駆動形態において駆動モータ100を停止する場合に、遊星歯車機構400から発生する異音を低減するための停止制御処理が、制御部701により実行される。以下、停止制御処理について、詳細に説明する。
【0068】
図8は、停止制御処理を示すフローチャートである。
【0069】
駆動モータ100を起動させた後、駆動モータ100を停止させる時間になると、停止制御処理が開始される。
【0070】
制御部701は、目標回転速度として設定する回転速度、即ち、設定速度を、駆動モータ100の動作時の回転速度、たとえば、洗い工程の場合、洗濯物の洗いに適するとして設定された回転速度から、予め定められた低減速度V0だけ低下させる(S101)。たとえば、低減速度V0は、動作時の回転速度の数分の1から十数分の1程度の回転速度とされ得る。
【0071】
制御部701は、モータ駆動部705を制御し、駆動モータ100の回転速度が新たな設定速度となるように、駆動モータ100に供給する駆動電流を調整する(S102)。
【0072】
制御部701は、設定速度を更新してから維持時間T0が経過したか否かを判定する(S103)。維持時間T0は、新たな設定速度を維持するために予め設定された時間であり、たとえば、数百ミリ秒から数ミリ秒程度の時間とされる。維持時間T0が経過すると(103:YES)、制御部701は、次の速度低下により設定速度がゼロとなるか否かを判定する(S104)。そして、設定速度がゼロとならなければ(S104:NO)、制御部701は、ステップS101に戻り、再び、設定速度を低減速度V0だけ低下させる。
【0073】
こうして、ステップS104において、次の速度低下により設定速度がゼロとなるとの判定がなされるまで、ステップS101ないしS103の処理が繰り返される。その後、制御部701は、次の速度低下により設定速度がゼロとなると判定すると(S104:YES)、駆動モータ100への駆動電流の供給を停止させる(S105)。こうして、停止制御処理が終了する。
【0074】
図9(a)および(b)は、
図8の停止制御処理が行われた場合の設定速度の動きと駆動モータ100の実際の回転速度の動きとを模式的に示した図である。
【0075】
図9(a)に示すように、洗い工程時やすすぎ工程時には、洗いに適する洗い速度やすすぎに適するすすぎ速度で、駆動モータ100が正転および逆転を繰り返す。このとき、
図8の停止制御処理が行われることにより、駆動モータ100が停止するときには、維持時間T0毎に低減速度V0ずつ設定速度が小さくされる。これにより、駆動モータ100を停止させる際、駆動モータ100に供給される駆動電流は、直ちにゼロとなるのではなく、徐々に小さくなっていき、
図9(b)に示すように、駆動モータ100は、徐々に回転速度を下げながらやがて停止に至る。最終的に駆動モータ100への通電が停止される、即ち駆動電流がゼロとされるときには、駆動モータ100の回転速度は、非常に低い回転速度まで低下しており、これに伴ってドラム22の回転速度も非常に低い回転速度まで低下している。よって、この状態で通電停止により駆動モータ100が停止しても、ドラム22に働く慣性力は小さなものとなるため、遊星歯車機構400に大きな衝撃が加わらず、異音の発生が抑えられる。
【0076】
なお、駆動ユニット30の駆動形態が一軸駆動形態である場合は、駆動モータ100の回転が遊星歯車機構400により減速されることなくドラム軸300に伝えられるので、駆動モータ100を停止する際に遊星歯車機構400の異音が生じにくい。よって、制御部701は、脱水工程時など、駆動形態が一軸駆動形態に切り替えられている場合に、ドラム22、即ち駆動モータ100の回転を停止するときには、
図8の停止制御処理を実行せず、駆動モータ100への駆動電流の供給を即時に停止するようモータ駆動部705を制御する。これにより、一軸駆動形態において、不要にドラム22の回転停止に要する時間を長引かせることを防止できる。
【0077】
<実施の形態の効果>
以上、説明した通り、本実施の形態によれば、二軸駆動形態で駆動モータ100を動作させる場合、駆動モータ100を停止させるときは、回転速度が徐々に低下した後に停止に至るよう、駆動モータ100を制御するようにしたので、駆動モータ100を停止させたときに遊星歯車機構400加わる衝撃を低減でき、遊星歯車機構400の異音の発生を低減できる。
【0078】
また、ドラム22を急激に停止させた場合、ドラム22に振動が発生しやすいが、上記実施の形態によれば、ドラム22をゆっくりと停止させることができるので、振動の発生を抑制できる。
【0079】
さらに、上記実施の形態によれば、駆動モータ100を徐々に減速させるために、設定速度を一定時間毎に一定速度だけ小さくするモータ制御を行っている。ドラム22内の負荷量が小さいほどドラム22、即ち駆動モータ100は速く減速しやすいが、かかるモータ制御とすることにより、
図10(a)および(b)のように、負荷量の大小によらず、同じような時間を掛けて駆動モータ100の回転速度を低下させることができる。これにより、負荷量等に左右されず、遊星歯車機構400の異音の発生を良好に低減できる。
【0080】
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0081】
たとえば、上記実施の形態では、駆動モータ100のロータ110が、翼軸200により撹拌体24に直接結合されており、撹拌体24は、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転する。しかしながら、撹拌体24と駆動モータ100との間に、ドラム22と同様、歯車を用いた減速機構が介在されても良い。この場合、撹拌体24に用いられる減速機構の減速比は、遊星歯車機構400の減速比より小さくすることにより、撹拌体24をドラム22より速く回転させることができる。
【0082】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。
【0083】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0084】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。