(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、
適切なタイミングでディーゼル機関を制御し、燃焼室に取込む燃焼空気を適切に増大させ、完全燃焼出来る燃料量を増やすことにより、機関始動時の立ち上り特性の改善および
許容瞬時負荷投入量の改善を図り、
黒煙発生をより適切に抑制することが可能な過給機付き内燃機関の制御方法及び過給機付き内燃機関を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載された過給機付き内燃機関の制御方法は、
内燃機関の回転速度の制御をガバナによる燃料噴射量の制御で行う内燃機関の制御方法であって、
機関始動指
令によって過給機へのアシストエア供給を開始し、前記アシストエアによる過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分が最初にゼロ又はマイナスになったタイミングで
、前記機関始動指
令を実行する
制御と、
負荷投入指令によって過給機へのアシストエア供給を開始し、前記アシストエアによる過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分が最初にゼロ又はマイナスになったタイミングで、前記負荷投入指令を実行する制御のうち、
少なくとも何れか一方の制御を行うことを特徴としている。
【0009】
アシストエアの供給先は、過給機のコンプレッサに供給する場合と、特開2014−058958の如く過給機の排気タービンに供給する場合とがある。本実施形態は、過給機コンプレッサにアシストエアを供給する場合を示している。
「負荷投入」とは、内燃機関が始動後所定の回転速度(例えば所定の定格回転速度等)になった後に、発電機の電路遮断器の接続や船舶のクラッチ嵌入によるプロペラ負荷の接続など、内燃機関に負荷を接続することを意味する。
「微少時間単位」とは、例えば過給機の軸端に取り付けた電磁ピックアップ、回転速度ピックアップセンサ等の回転速度検出センサで検出し、回転速度の増加分を算出するまでの時間であり、通常250ms(ミリ秒)〜500ms間隔で回転速度増加分を検出すれば充分である。
「微少時間単位当たりの回転速度増加分」とは「微少時間単位当たりの回転数増加分」と同意語である。なお、本明細書においては、「微少時間単位当たりの回転速度増加分」を特に「回転速度の増加分」という場合がある。「所定値以下」の所定値とは、限りなく回転速度増加分がゼロに近い値が好ましい。
【0011】
請求項
2に記載された過給機付き内燃機関の制御方法は、請求項1に記載の過給機付き内燃機関の制御方法において、
前記過給機へのアシストエア供給の停止は、
前記機関始動指令の場合には、前記機関始動指令を実行した後に過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分がゼロ又はマイナスになったタイミング
と、前記機関始動指令を実行した後に機関回転速度が設定回転速度になったタイミン
グからなる群から選択された一のタイミングで行い、
前記負荷投入指令の場合には、負荷投入後の機関回転速度が設定回転速度に復帰したタイミン
グで行うことを特徴としている。
【0012】
上記「燃料増加指令」は、後述する請求項5、6に係わる「燃料噴射量の増加を所定の範囲量に制限する燃料ラック制限」を行っていない場合も含み、機関始動指令や負荷投入指令によって、通常ガバナが多量の燃料噴射位置にまで燃料噴射ポンプラックを動かす場合も含んでおり、最も広義に解するものとする。
【0014】
請求項3に記載された過給機付き内燃機関の制御方法は、請求項1または2に記載の過給機付き内燃機関の制御方法において、
前記機関始動指令又は前記負荷投入指令の実行からアシストエア供給の停止までの間、
前記ガバナの制御による燃料噴射量の増加を所定の範囲量に制限する燃料ラック制限を行うことを特徴としている。
【0015】
請求項4に記載された過給機付き内燃機関の制御方法は、請求項3に記載の過給機付き内燃機関の制御方法において、
前記燃料ラック制限においては、
前記燃料噴射量の増加を、
前記機関始動指令の場合は、機関始動トルクに相当する燃料噴射量の110〜115%の範囲に、
また前記負荷投入指令の場合は、投入負荷量に相当する定常負荷運転時の燃料噴射量の110〜115%の範囲に、制限することを特徴としている。
【0016】
機関始動時は、機関回転速度が上昇し機関出力は回転速度の上昇に伴って増大するが、機関トルクは略一定であるため機関始動トルクとしている。従って、「機関始動トルクに相当する燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限する」とは、必要機関開始トルクを得るために必要な燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限することを意味し、「投入負荷量に相当する定常負荷運転時の燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限する」とは、定めた投入負荷量を定常的に(一定にして)かけた際に必要となる燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限することを意味する。
【0017】
前記燃料噴射量を通常負荷運転又は定常負荷運転に相当する燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限する燃料噴射量制限は、前記過給機コンプレッサへのアシストエア供給の停止と共に停止される。通常負荷運転と定常負荷運転とは、同義語として扱う。
【0018】
請求項
3〜4に記載された負荷投入時の燃料制限制御において、負荷投入時の機関回転速度制御はガバナによる燃料増制御であり、負荷投入量が大きい場合には機関回転速度が急激に低下しその結果としてガバナが最大燃料噴射位置にまで燃料噴射ポンプラックを動かすことになる。しかし、この状態ではアシストエア供給により燃焼空気の取込量を増やしたとしても、投入負荷量に必要な燃料よりも多大な燃料が燃焼室に噴射され、燃焼空気不足となり多量の黒煙が発生することになる。この対策として、投入負荷量に相当する定常運転時の燃料噴射ポンプのラック目盛り量を確認し、負荷投入により低下した機関回転速度の復帰と外気温度の変化に対する余裕として10〜15% 増しの燃料噴射量となる燃料噴射ポンプラック目盛りに制限している(機関始動時や負荷投入時等の過渡状態での燃焼は外気温度等の影響を受けやすいため燃料噴射量を制限しつつ余裕を設けている。)。
【0019】
これ等の燃料制限に関しては、負荷投入と同時に電気ガバナによって、またはエアシリンダ等で各燃料噴射ポンプラックに連結されているレーシャフトの動きを拘束し、負荷投入時に過大な燃料が噴射されないようにする。
【0020】
ガバナは、機関回転速度の低下で燃料増指令を出すメカニズムであり、投入負荷が大きいほど機関回転速度の低下は急激であり、燃料噴射ポンプの最大噴射まで燃料を増大する。その噴射量を制限するのである。
【0021】
また、機関始動時も同様に機関始動に必要な燃料噴射ポンプラック目盛りの10から15% 負荷増しの燃料噴射量となる燃料噴射ポンプラック目盛りとなるように機関始動指令と同時に電気ガバナによって、またはエアシリンダ等により各燃料噴射ポンプラックに連結されているレーシャフトの動きを拘束し、始動時に過大な燃料が噴射されないようにすることを特徴としている。
【0022】
ガバナ指令による燃料増指令を適切な燃料噴射量に制限することで、黒煙発生の少ない環境に適合した機関を提供することが可能となる。
【0023】
請求項5に記載された過給機付き内燃機関は、
回転速度の制御をガバナによる燃料噴射量の制御で行う内燃機関であって、
機関始動指令又は負荷投入指令によって過給機へのアシストエアを供給するアシストエア供給手段と、
前記過給機の回転速度を測定する過給機回転速度測定手段と、
前記機関始動指令によって過給機へのアシストエア供給が開始された後、前記アシストエアによる過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分が最初にゼロ又はマイナスになったタイミングで
、前記機関始動指
令を実行する
制御と、前記負荷投入指令によって過給機へのアシストエア供給が開始された後、前記アシストエアによる過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分が最初にゼロ又はマイナスになったタイミングで、前記負荷投入指令を実行する制御のうち、少なくとも何れか一方の制御を行うための制御信号を発する制御手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0025】
請求項6に記載された過給機付き内燃機関は、請求項5に記載の過給機付き内燃機関において、
前記制御手段は、
前記機関始動指令の場合には、前記機関始動指令を実行した後に過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分がゼロ又はマイナスになったタイミング
と、前記機関始動指令を実行した後に機関回転速度が設定回転速度になったタイミン
グからなる群から選択された一のタイミングで前記過給機へのアシストエア供給の停止信号を発し、
前記負荷投入指令の場合には、負荷投入後の機関回転速度が設定回転速度に復帰したタイミン
グで前記過給機へのアシストエア供給の停止信号を発することを特徴としている。
【0027】
請求項7に記載された過給機付き内燃機関は、請求項5又は6に記載の過給機付き内燃機関において、
前記制御手段は、前記機関始動指令又は前記負荷投入指令の実行からアシストエア供給の停止までの間、
前記ガバナの制御による燃料噴射量の増加を所定の範囲量に制限する燃料ラック制限を行う指令を発することを特徴としている。
【0028】
燃料ラック制限は、機関始動又は負荷投入と同時に電気ガバナによって、またはエアシリンダ等で各燃料噴射ポンプラックに連結されているレーシャフトの動きを拘束するように燃料ラック制限制御電磁弁等を作動させて、機関始動時および負荷投入時に過大な燃料が噴射されないようにするものである。
【0029】
請求項8に記載された過給機付き内燃機関は、請求項7に記載の過給機付き内燃機関において、
前記制御手段は、
前記燃料ラック制限において、
前記燃料噴射量の増加を、
前記機関始動指令の場合は、機関始動トルクに相当する燃料噴射量の110〜115%の範囲に、
また前記負荷投入指令の場合は、投入負荷量に相当する定常負荷運転時の燃料噴射量の110〜115%の範囲に、
制限することを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、アシストエアによる過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分、すなわち、アシストエアによる過給機の回転速度の増加分を測定して、ディーゼル機関の機関始動指令又は負荷投入指令の実行を行う。すなわち、前記アシストエアによる過給機の微少時間単位当たりの回転速度増加分が所定値以下になったタイミングで、機関始動指令にあっては機関の始動を行い、負荷投入指令にあっては負荷投入を行う。このように、アシストエアによる過給機の回転速度の増加分を計測することによって、適切なタイミングでディーゼル機関を制御することができ、燃焼室に取込む燃焼空気を適切に増大させ、完全燃焼出来る燃料量を増やすと共に、許容瞬時負荷投入量の向上を簡単な制御で的確に図ることが出来、黒煙発生をより適切に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本実施形態は、非常用発電機関等の負荷を駆動する過給機付きレシプロ式内燃機関と、その制御方法に関するものである。一般的に、非常用発電機関の場合には、非常時における防災負荷の瞬時投入量が大きく、機関の体格は機関の最大出力ではなく許容負荷投入量で決定される場合が殆どである。特に近年開発される、高圧力比過給機を搭載し、燃焼空気の取込み量を増大している高過給機関では、最大出力時の正味平均有効圧力は2.5MPaに達しているものもある。しかし、高過給機関といえども、無負荷運転状態からの負荷投入に関しては、無負荷状態では排気ガスエネルギーが少ないため過給機の回転速度が低く給気圧力が上昇せず、無過給機関と同様な大気圧給気状態となる。
【0033】
このように、高過給機関であっても、負荷投入時の過給機回転速度は排気ガスエネルギーが増大してから一次遅れ特性で上昇してくるため、許容瞬時負荷投入量に関しては無過給機関の投入量である正味平均有効圧力0.5 〜0.6MPaと大差はなく、最大出力が大きな機関でも、無過給機関と比較して許容瞬時負荷投入量がそれほど大きくならないため、非常用機関としての適用時には高過給機関のメリットが生かされていない状況となっている。
【0034】
本実施形態は、上述した問題点を解決することを目的の一つとしており、高過給機関の負荷投入に際し、過給機へのアシストエア供給のタイミングの適正化により、燃焼室に取込む燃焼空気を増大させて完全燃焼出来る燃料量を増やすことにより、許容瞬時負荷投入量の向上を図るとともに、ガバナ指令による燃料増指令を適切な燃料噴射量に制限することで黒煙発生を抑制することを可能としている。
【0035】
このような過給機へのアシストエア供給のタイミングの適正化を図ることで、高出力機関の許容瞬時負荷投入量を増大させることが可能となり、設備全体的なコストメリットが得られるとともに、負荷投入時にも黒煙発生の少ない環境に与える負荷の小さい機関を提供することが可能となった。
【0036】
ここで、本実施形態の過給機付きディーゼル機関の場合、詳細は後述するが、シリンダへ適切な空気量を供給する手段として、例えば高圧空気源である高圧空気槽または別個に設けたアシスト用空気槽と、これら空気槽から減圧弁を経由して適切に減圧したアシスト空気を任意に供給及び遮断ができるアシストエア電磁弁とを設けておき、アシストエア電磁弁の制御によって過給機のコンプレッサのブレード(翼)の外周にエアを必要に応じて吹付けるようにした。これにより、機関始動および負荷投入前に過給機の回転速度を上昇させて供給燃焼空気量を増やすと同時に、アシスト空気自体がシリンダ内に取り込まれ燃焼空気として利用されるようにした。このようにして燃焼空気量を増やす過給機へのアシストエア供給と機関始動や負荷投入とのタイミングの適正化により、機関の始動時や負荷投入時に必要な空気量を確保し、機関出力の向上および黒煙の発生を抑制することができる。
【0037】
まず、実施形態の制御方法について、詳細に述べる。
図1及び
図2を参照して実施形態の制御方法が適用されるディーゼル機関1の構成を説明する。
図1に示すように、ディーゼル機関1には、図示しないコンプレッサにより高圧空気が貯留される高圧空気槽2が設けられている。高圧空気槽2には供給用の主配管3が接続されており、主配管3は減圧弁4を経て複数(図示例では2個)の空気操作弁5の入口に接続され、各空気操作弁5の出口は伸縮継手6を経てディーゼル機関1の過給機7に接続されている。
【0038】
図1に示すように、高圧空気槽2には制御空気配管8が接続されている。制御空気配管8は、空気制御箱9に設けられた減圧弁10と、空気制御箱9に設けられたアシストエア電磁弁11を経て、各空気操作弁5に接続されており、アシストエア電磁弁11を開とすることにより各空気操作弁5に制御用空気を送ってこれを開とし、高圧空気槽2の高圧空気をアシストエアとして各過給機7に供給できるようになっている。
本実施形態においては、高圧空気槽2、主配管3及び空気操作弁5でアシストエア供給手段が構成されている。前記制御用空気は、別系統の計装用空気を用いてもよい。空気操作弁5に代えて制御用空気の不要な電磁弁を用いてもよい。
【0039】
図2に示すように、実施形態のディーゼル機関1は、複数のシリンダ15(図示例では一つのシリンダ15を代表して図示)と、シリンダ15の内部に昇降自在に設けられたピストン16と、シリンダ15の上部に設けられたシリンダヘッド17を有している。シリンダヘッド17には、吸気弁18で開閉される吸気ポート19及び排気弁20で開閉される排気ポート21が形成され、吸気ポート19と排気ポート21には、それぞれ吸気管22及び排気管23が連通されている。また、シリンダヘッド17には、燃料カム24に連動する燃料噴射ポンプ25に接続された燃料噴射弁26がシリンダ15内に向けて設けられている。
【0040】
図2に示すように、実施形態のディーゼル機関1は、過給機7(ターボチャージャ)を有している。過給機7は、タービン軸30に連結された回動自在のタービン31及びコンプレッサ32を備えている。タービン31は、排気管23に接続された排気ガス出口管33において、タービンノズル34の下流に設けられている。コンプレッサ32は、吸気管22に接続された吸気入口管35において、吸気デフューザ36の上流側に設けられている。吸気デフューザ36と吸気管22の間には空気冷却器37が設けられている。高圧空気槽2から空気操作弁5(
図1参照)を介して過給機7に送り込まれるアシストエアは、
図2に示す一例では、吸気入口管35においてコンプレッサ32の上流に設けられたアシストノズル40に供給されるようになっている。但し、排気ガス出口管33においてタービン31に上流側からアシストエアを供給することとしてもよい。但し、吸気側であるコンプレッサ32の上流に供給した方がシリンダ15内に供給される空気量が増えるので好ましい。
【0041】
図1及び
図2に示す実施形態のディーゼル機関1において、機関始動時および負荷投入時にエアアシスト制御を行い、過給機7のコンプレッサ32の駆動を空気力でアシストする。すなわち、機関始動指令および負荷投入指令がONとなった時、アシストエア電磁弁11が開となり、高圧空気槽2からの高圧空気が減圧弁10で適切な圧力に減圧された制御エアとなり、空気操作弁5を操作して開とする。すると、高圧空気槽2からの高圧のアシストエアが主配管3及び減圧弁4で適切な圧力に減圧され空気操作弁5を経由し、過給機7のコンプレッサ32の外周近傍のアシストノズル40に供給され、コンプレッサ32の回転をアシストする。そして、過給機7の回転速度、すなわちタービン軸30の回転速度の上昇が飽和した時点で、機関始動または負荷投入が行われる。
【0042】
前記機関始動が行われた後には、機関始動後の過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミング又は前記機関始動後の機関回転速度が設定回転速度になったタイミング若しくは燃料増加指令が解除されたタイミングで、アシストエア電磁弁11の操作により空気操作弁5を閉としてアシストエアの過給機7への供給をOFFとする。
一方、前記負荷投入が行われた後には、機関回転速度が設定回転速度に達した時点で、アシストエア電磁弁11の操作により空気操作弁5を閉としてアシストエアの過給機7への供給をOFFとする。
【0043】
上記エアアシスト制御において、エアアシストの停止のタイミングを図るため、機関回転速度測定手段である回転速度検出センサによって機関回転速度(単位時間当たりの回転数)を測定し、また過給機回転速度測定手段である回転速度検出センサによって過給機回転速度(単位時間当たりの回転数)を測定する。具体的な一構成例を説明すれば、機関回転速度を回転速度検出センサによって計測する場合を説明する。
図2に示すピストン16は、図示しない連接棒を介してクランク軸に連結されており、このクランク軸の軸端にはフライホイールが取り付けられている。このフライホイールの端面外周側には反射板が取付けられており、図示しないフォトセンサ等の回転速度検出センサによってこの反射板による反射光を検出し、その出力信号によってディーゼル機関1の回転速度を検出することができる。
なお、これら回転速度検出センサの詳細については
図5及び
図6を参照して後述する。
【0044】
このディーゼル機関1の始動から燃料運転までの過程を
図1及び
図2を参照して説明する。先ず、ディーゼル機関1を始動する始動指令信号によりアシストエア電磁弁11が励磁される。アシストエア電磁弁11が励磁により開弁すると、制御用空気配管8からの制御用空気が空気操作弁5を開状態とする。すると、高圧空気槽2から主配管3を経て減圧弁4で減圧調整された高圧空気が開となった空気操作弁5を経由してアシストエアとして過給機7のコンプレッサ32近傍のアシストノズル40に供給される。過給機7は、この時点では、供給されたアシストエアにより回転駆動されているだけであり、排気ガスによって駆動されている状態ではない。
【0045】
なお、過給機7を回転駆動したアシストエアは、ディーゼル機関1の吸気弁18の開いているシリンダ15に入り充満すると同時に吸気弁18と排気弁20がオーバラップして開いているシリンダ15に入り、排気管23を経由して外部に排出される。さらに過給機回転速度が上昇して供給空気量が増大すると、供給空気系の圧力バランスの関係から過給機7がサージングを発生して過給機回転速度が変動する現象が発生するので、サージングが発生する前に機関を始動する。
【0046】
アシストエアによる過給機回転速度上昇がゼロまたマイナスになった信号もしくは機関回転速度が設定回転速度に到達した信号を受けて、図示しない機関始動電磁弁が励磁されて開弁し、高圧空気槽2からの制御用空気が図示しない始動弁を開状態とするので、高圧空気槽2から圧縮空気がディーゼル機関1のシリンダ15内に供給され、ピストン16を押してディーゼル機関1を始動させる。ピストン16が作動し始めると同時に、過給機7に供給されていたアシストエアが、開弁される排気弁20及び吸気弁18を経てシリンダ15内に流入し、所謂、機関始動時のエアアシストとしても作用するようになる。また、機関始動時と同様に図示しないクランク軸にて駆動されるギヤトレインにより燃料噴射ポンプ25も作動され、液体燃料が燃料噴射弁26から噴射される。
【0047】
ここで、過給機7の駆動を補助するアシストエアの供給圧力について説明する。
図1に示す減圧弁4から、
図2に示すアシストノズル40までのアシストエア配管系(アシストエア供給システム)においては、配管サイズ、配管長さ等により圧力損失や容量等が異なるので、必要供給圧力も異なる。アシストエアの供給圧力としては、この抵抗による圧力低下を考慮し、アシストノズル40の位置において最大の質量流量が確保できる臨界圧力比(0.53)以下となる圧力を維持し、過給機7のコンプレッサへ一定のアシストエア質量流量が確保できる圧力とする。
【0048】
上記最大の質量流量が確保できるノズルの臨界圧力比(0.53)以下となる圧力とは、
(アシストノズル40後の圧力PL/アシストノズル40前の圧力PH≦0.53)+減圧弁4からアシストノズル40までの圧力損失△P
であるから、高圧空気槽2の下流に設けた減圧弁4の出口位置での二次圧力は、
PH+△Pである(ここで、△Pは減圧弁4からアシストノズル40までの圧力損失、PH≧PL/0.53)
一般的に減圧弁4の二次側圧力は0.7MPa〜1.0MPa程度である。
【0049】
このように本実施形態の制御方法によれば、アシストエアによる過給機の回転速度の増加分を計測し、
機関始動に際しては、過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミングで機関始動を実行し、機関始動後の過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミング又は前記機関始動後の機関回転速度が設定回転速度になったタイミング若しくは燃料増加指令が解除されたタイミングで、アシストエア供給の停止を行い、
負荷投入に際しては、過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミングで負荷投入を実行し、機関回転速度が設定回転速度に到達したタイミングでアシストエア供給の停止を行うので、
適切なタイミングでディーゼル機関を制御することができ、燃焼室に取込む燃焼空気を適切に増大させ、完全燃焼出来る燃料量を増やすと共に、許容瞬時負荷投入量の向上を簡単な制御で的確に図ることが出来、黒煙発生をより適切に抑制することが可能となる。
【0050】
次に、以上説明したアシストエアのさらに具体的な制御方法を、
図3及び
図4に示す流れ図を参照して詳細に説明する。
図3及び
図4は一連の制御手順を示す流れ図であるが、図示の便宜上、前半(
図3)及び後半(
図4)の2図に分割して示したものである。
【0051】
まず、
図3の手順について説明する。
図3において、適宜の入力手段によりガバナに機関回転速度NGを設定する(S1)。次に、適宜の入力手段により制御部50に機関始動指令を与える(S2)。アシストエアの供給が開始され(S3)、過給機回転速度ntの計測がサンプリング間隔(微少時間単位)Δtで開始される(S4)。アシスト開始後、i時間後の過給機回転速度ntiと、i+Δt時間後の過給機回転速度nti+Δtとの差Δntを演算し(S5)、これが正(Δnt>0)の場合は、回転速度が上昇中であり、S3に戻ってアシストエアを継続する。しかし、差Δntが0以下(Δnt≦0)の場合は、回転速度が十分上昇してこれ以上増加はしない状態、すなわち飽和しているものとして、ここで機関始動を実行する(S6)。
【0052】
この「機関始動実行」(S6)工程の実行の後、後述する「負荷投入またはクラッチON指令」(S12)までの制御は、以下に説明する第1の制御方法(S7〜S11を経由する制御)と、第2の制御方法(S30〜S35を経由する制御)のどちらか一方を採用すればよい。第1の制御方法における手順S7〜S11は、過給機回転速度に基づくアシストエア停止等の制御に係り、第2の制御方法における手順S30〜S35は、機関回転速度に基づくアシストエア停止等の制御に係る。これら第1及び第2の制御方法の互いに異なる部分、すなわち手順S7〜S11と手順S30〜S35の部分は、何れか一方のみを行うOR処理となっている。すなわち、
図3及び
図4に示す流れ図は2つの制御方法を一括して示すものである。
【0053】
以下の説明では、まず第1の制御方法について説明し、その後に、第2の制御方法のうち、第1の制御方法とは異なる部分について説明する。なお、これら異なる制御方法を実現する内燃機関の制御系は、制御方法ごとに異なる構成となっており、その詳細については次項で
図5及び
図6を参照して説明する。
【0054】
第1の制御方法について説明する。
機関始動実行(S6)後、燃料ラック制限が開始され(S7)、過給機回転速度ntの計測がサンプリング間隔(微少時間単位)Δtで開始される(S8)。アシスト開始後、i時間後の過給機回転速度ntiと、i+Δt時間後の過給機回転速度nti+Δtとの差Δntを演算し(S9)、これが正(Δnt>0)の場合は、回転速度が上昇中であり、エアアシストを継続する。しかし、差Δntが0以下(Δnt≦0)の場合は、回転速度が十分上昇してこれ以上増加しない状態、すなわち飽和しているものとして、ここで燃料ラック制限を終了し(S10)、アシストエアも停止する(S11)。
【0055】
図4において、機関の運転中、機関に発電機負荷を接続する負荷投入指令、または舶用機関におけるクラッチON指令が発令される(S12)。アシストエアの供給が開始され(S13)、過給機回転速度ntの計測がサンプリング間隔(微少時間単位)Δtで開始される(S14)。アシスト開始後、i時間後の過給機回転速度ntiと、i+Δt時間後の過給機回転速度nti+Δtとの差Δntを演算し(S15)、これが正(Δnt>0)の場合は、回転速度が上昇中であり、手順S13に戻ってエアアシストを継続する。しかし、差Δntが0以下(Δnt≦0)の場合は、回転速度が十分上昇してこれ以上増加はしない状態、すなわち飽和しているものとして、ここで負荷投入またはクラッチONを実行する(S16)。
【0056】
その後、燃料ラック制限を開始し(S17)、機関回転速度ngの計測が開始される(S18)。測定した機関回転速度ngと、ガバナに設定した機関回転速度NGとを比較演算し(S19)、測定した機関回転速度ngの方が、ガバナに設定した機関回転速度NGよりも小さい場合には(ng<NG)、回転速度が上昇中であり、燃料ラック制限とエアアシストを継続する。しかし、測定した機関回転速度ngの方が、ガバナに設定した機関回転速度NG以上である場合には(ng≧NG)、回転速度が必要なだけ上昇したものとして(S20)、燃料ラック制限を終了するとともに(S21)、アシストエアも停止する(S22)。
【0057】
次に、第2の制御方法において、第1の制御方法と異なる部分について説明する。すなわち、手順S1〜S6及びS12〜S22までは、第1の制御方法同じであるので、機関始動実行(S6)の後、負荷投入又はクラッチON指令(S12)までを説明する。
【0058】
機関始動実行(S6)後、燃料ラック制限を開始し(S30)、機関回転速度ngの計測が開始される(S31)。測定した機関回転速度ngと、ガバナに設定した機関回転速度NGとを比較演算し(S32)、測定した機関回転速度ngの方が、ガバナに設定した機関回転速度NGよりも小さい場合には(ng<NG)、回転速度が上昇中であり、燃料ラック制限とエアアシストを継続する。しかし、測定した機関回転速度ngの方が、ガバナに設定した機関回転速度NG以上である場合には(ng≧NG)、ガバナに設定した機関回転速度NGに到達し、交流発電機関であれば同期回転速度になり、クラッチつきの舶用機関であればクラッチ嵌入速度に到達したものとし(S33)、燃料ラック制限を終了するとともに(S34)、アシストエアも停止する(S35)。そして、負荷投入又はクラッチON指令(S12)の発令に至る。
【0059】
3.実施形態の制御方法を実現するための構成について
以上説明したような制御方法を実現するために必要な過給機付き内燃機関における構成、特に制御系の構成について、
図5及び
図6の機能ブロック図を参照して説明するとともに、この過給機付き内燃機関におけるアシストエア制御及び燃料ラック制限制御について再度説明する。
なお、以下の説明では、アシストエア電磁弁11の参照符号は、図示の都合上、その操作状況により符号11A(開、供給開始)と符号11B(閉、供給停止)を使い分けることとするが、2つの電磁弁が存在することを意味するものではない。同様に、燃料ラック制限制御電磁弁も符号60A(開、燃料ラック制限を開始)と符号60B(閉、燃料ラック制限を終了)を使い分けることとする。
【0060】
図5は、
図3及び
図4を参照して説明した制御方法のうち、手順S7〜S11、を含む第1の制御方法に係る制御系の構成を示す機能ブロック図である。
制御手段50は、入力手段70から「機関始動指令」51を与えられた場合と、「負荷投入指令(クラッチ嵌指令)」52を与えられた場合に、アシストエア電磁弁11Aに各指令を与えてアシストエア電磁弁11Aを「開」すなわち「供給開始」とし、アシストエアの過給機7への供給を開始させる。
【0061】
制御手段50は、過給機回転速度比較器54を有する。過給機回転速度比較器54は、前記過給機7に設けられた回転速度検出センサ55から「過給機回転速度信号」を取得し、連続した微小時間ごとに2つの回転速度の差を算出し、その差が増大しなくなったとき、「機関始動指令」51を与えられていた場合は、「機関始動1」を実行すると共に燃料ラック制限制御電磁弁60Aを「開」とし「燃料ラック制限を開始」し、「負荷投入指令(クラッチ嵌指令)」52を与えられていた場合には、「負荷投入57」を実行すると共に燃料ラック制限制御電磁弁60Aを「開」とし「燃料ラック制限を開始」する。
【0062】
また、「機関始動指令」51を与えられていた場合は、すなわち、「機関始動1」を実行している場合は、過給機回転速度比較器54は、回転速度検出センサ55から「過給機回転速度信号」を取得し、連続した微小時間ごとに2つの回転速度の差を算出し、その差が増大しなくなったとき、アシストエア電磁弁11Bを「閉」としてアシストエアを「供給停止」とすると共に、燃料ラック制限制御電磁弁60Bを「閉」として「燃料ラック制限を終了」させる。
【0063】
制御手段50は、機関回転速度比較器61を有する。機関回転速度比較器61は、「負荷投入指令(クラッチ嵌指令)」52を与えられていた場合は、すなわち、「負荷投入57」を実行している場合は、入力手段70において実行された「機関回転速度設定」62によってガバナに設定された機関回転速度NGと、機関1の回転速度を検出する回転検出センサ63が実際に取得した「機関回転速度信号」との差を演算し、ガバナに設定された機関回転速度NGよりも実際の「機関回転速度信号」が大きくなったとき、アシストエア電磁弁11Bを「閉」としてアシストエアを「供給停止」とし、また燃料ラック制限制御電磁弁60Bを「閉」として「燃料ラック制限を終了」させる。
【0064】
以上説明したように、
図5に示した制御系の構成によれば、「機関始動指令」51を与えられていた場合、すなわち、「機関始動1」を実行している場合のアシストエア電磁弁11Bの閉(停止)によるアシストエアの停止操作と、燃料ラック制限制御弁60Bの終了操作は、過給機回転速度比較器54における比較結果によって実行するとともに、「負荷投入指令(クラッチ嵌指令)」52を与えられていた場合、すなわち、「負荷投入57」を実行している場合のアシストエア電磁弁11Bの閉(停止)によるアシストエアの停止操作と、燃料ラック制限制御弁60Bの終了操作は、機関回転速度比較器61における比較結果に応じて実行している。
【0065】
図6は、
図3及び
図4を参照して説明した制御方法のうち、手順S30〜S35を含む第2の制御方法に係る制御系の構成を示す機能ブロック図である。
図6に示す制御方法によれば、過給機回転速度比較器54が、前記過給機7に設けられた回転速度検出センサ55から「過給機回転速度信号」を取得し、連続した微小時間ごとに2つの回転速度の差を算出し、その差が増大しなくなったとき、「機関始動指令」51を与えられていた場合は、「機関始動1」を実行すると共に燃料ラック制限制御電磁弁60Aを「開」とし「燃料ラック制限を開始」し、「負荷投入指令(クラッチ嵌指令)」52を与えられていた場合には、「負荷投入57」を実行すると共に、燃料ラック制限制御電磁弁60Aを「開」とし「燃料ラック制限を開始」する点は、第1の制御方法に係る制御系の構成と変わりがない。
しかし、「機関始動1」を実行している場合と「負荷投入57」を実行している場合とのアシストエア電磁弁11Bの閉(停止)によるアシストエアの停止操作と、燃料ラック制限制御弁60Bの終了操作は、機関回転速度比較器61の比較結果のみに応じて実行しており、過給機回転速度比較器54の比較結果に基づいて実行することはない。
【0066】
4.実施形態の制御実例について
次に、
図7〜
図10を参照し、本実施形態のディーゼル機関1を発電機関とした場合の始動時及び負荷投入時と、本実施形態のディーゼル機関1を舶用機関とした場合の始動時及び負荷投入時について、過給機回転速度・機関回転速度・オパシティメータ値の各項目の時間的変動を、実施形態と従来例を比較しつつ説明する。
【0067】
図7は、発電機関の始動時の図であり、(a)は従来例、(b)は本実施形態を示す図である。
従来は、分図(a)に示すように、機関始動後、機関の回転速度が、ガバナに設定した設定回転速度NGに上昇するまでの間、空気が不足し、オパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇するという問題があった。
【0068】
本実施形態では、分図(b)に示すように、機関始動指令が発令された後、実際に機関始動が実行される前に、アシストエアの供給が開始されるので、十分な量の空気が供給されるため、オパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇することがなく、低い値を維持することができる。また、機関の回転速度が、ガバナに設定した設定回転速度NGまで上昇するために要する時間も短縮され、立ち上がりが円滑である。この制御は、
図3において、S2〜S11、S30〜S35に相当する。
【0069】
図8は、舶用機関の始動時の図であり、(a)は従来例、(b)は本実施形態を示す図である。
舶用機関では、ガバナに設定した設定回転速度NG、すなわち始動回転速度としては、定格回転速度NRの0.3〜0.4倍に設定されている場合が多い。
従来は、分図(a)に示すように、機関始動後、機関の回転速度が、ガバナに設定した設定回転速度NGに上昇するまでの間、空気が不足し、オパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇するという問題があった。
【0070】
本実施形態では、分図(b)に示すように、舶用機関の始動指令が発令された後、実際に機関始動が実行される前に、アシストエアの供給が開始されるので、十分な量の空気が供給されるため、オパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇することがなく、低い値を維持することができる。また、機関の回転速度が、ガバナに設定した設定回転速度NGまで上昇するために要する時間も短縮され、立ち上がりが円滑である。この制御は、
図3において、S2〜S11、S30〜S35に相当する。
【0071】
図9は、発電機関の負荷投入時の図であり、(a)は従来例、(b)は本実施形態を示す図である。
発電機関では、負荷投入前は、機関はガバナに設定した設定回転速度NG(定格回転速度)で運転されているが、発電機負荷は接続されておらず、発電はされていない状態にある。
従来は、分図(a)に示すように、負荷投入後、発電機負荷が接続されて発電が始まり、機関回転速度が急激に低下するので、この低下に応じてガバナのフィードバック制御により燃料の供給量を増加させるが、過給機7の回転速度は燃料の供給量増加に追随できず、空気不足となり、そのためオパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇するという問題があった。
【0072】
本実施形態では、分図(b)に示すように、負荷投入指令が発令された後、実際に負荷投入される前に、アシストエアの供給が開始され、十分な量の空気が供給されるため、負荷投入後、発電機負荷が接続されて発電が始まった際、機関回転速度の低下が少なくて済む。その後、ガバナのフィードバック制御により燃料の供給量が増加するが、過給機7の回転速度は燃料の供給量増加に追随して増大し、十分な空気を供給するため、オパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇することがなく、低い値を維持することができる。また、機関の回転速度が、ガバナに設定した設定回転速度NGまで上昇するために要する時間も短縮され、立ち上がりが円滑である。この制御は、
図4において、S12〜S22に相当する。
【0073】
図10は、舶用機関の負荷投入時の図であり、(a)は従来例、(b)は本実施形態を示す図である。
始動後の舶用機関は、ガバナに設定した設定回転速度NG、すなわち始動回転速度として、定格回転速度NRの0.3〜0.4倍の回転速度で運転されている。
従来は、分図(a)に示すように、負荷投入後、機関回転速度が急激に低下するので、この低下に応じてガバナのフィードバック制御により燃料の供給量を増加させるが、過給機7の回転速度は燃料の供給量増加に追随できず、空気不足となり、そのためオパシティメータの値が機関回転速度の増加に伴って急激に上昇するという問題があった。
【0074】
本実施形態では、分図(b)に示すように、負荷投入指令が発令された後、実際に負荷投入される前に、アシストエアの供給が開始され、十分な量の空気が供給されるため、負荷投入後、機関回転速度の変動が少なくて済む。また、オパシティメータの値は機関回転速度の維持に伴って低い一定の値を維持することができる。この制御は、
図4において、S12〜S22に相当する。
【0075】
5.実施形態の作用及び効果
以上説明した実施形態の過給機付き内燃機関及びその制御方法によれば、次のような作用効果が得られる。
ディーゼル機関1に始動指令を与えた後、さらに発電機関の負荷投入または舶用機関のクラッチ等のON指令を出すと同時に、過給機7のコンプレッサ32へのアシストエア供給を開始して過給機回転速度を上昇させる。始動指令直後は機関1はまだ始動はされておらず、また負荷投入指令の直後は発電機関の負荷投入または舶用機関のクラッチONもまだ実行されていない。その後、微小時間t毎に過給機回転速度を検出し、過給機回転速度の上昇がゼロとなった時点、すなわちアシストエアでの過給機回転速度上昇がサチュレート(飽和)したタイミングで、機関始動、負荷投入およびクラッチがONとなる。これにより、機関に始動負荷および負荷投入による負荷が掛かる前に燃焼空気量を最大限度にまで増大させることが可能となり、燃焼改善による機関の立ち上り特性の改善、許容負荷投入量の増大を図り、黒煙の発生を低減することができる。
【0076】
また、このような方法を採用した場合でも、発電機系の慣性モーメントが大きく始動トルクが大きい場合および大負荷投入時には、ガバナによる制御のため機関は最大量の燃料噴射状態となり、これを完全燃焼させるに必要な燃焼空気量確保が不可能なケースもある。このため、機関始動に必要なトルクおよび投入負荷量に見合った燃料噴射量となるように、エアシリンダ等によるストッパまたは電気ガバナに組込まれているトルクリミッタを利用した燃料制御を併用することで、機関始動時および負荷投入時の燃料噴射量を適正に制限して黒煙発生を大幅に削減することが出来る。
【0077】
負荷投入後のアシストエアをOFFとするタイミングは、負荷がステップ状に投入される場合やランプ状(ramp傾斜路状)に投入される場合等があるので、負荷投入指令およびクラッチON指令から機関回転速度が所定の設定回転速度、例えば発電機の場合は定格回転速度に復帰するまでの間とする。
【0078】
なお、ここで定格回転速度とは、機関銘板に打刻されている回転速度であり、発電機関の場合には発生周波数と発電機極数から決まる同期回転速度であり、舶用機関の場合は機関銘板に打刻されている定格出力すなわち連続最大出力(Maximum Continuous Rating )が出せる機関回転速度である。
【0079】
機関始動時および負荷投入時の機関回転速度制御に関しては、機関始動時には、ブースターにより燃料増指令が出され、負荷投入およびクラッチON時には、負荷投入時の機関回転速度の急激な低下に応えてガバナにより燃料増指令が出され、いずれの場合も燃料増方向に燃料噴射ポンプ25が駆動される。
【0080】
しかし、この状態では、前述したようなアシストエア制御を採用して燃焼空気量を増やしたとしても、機関始動に必要なトルクおよび投入負荷に必要なトルク発生量よりも多大な燃料が燃焼室に噴射されるために燃焼空気不足状態となり黒煙が発生することになる。この対策として、機関始動時は、機関立上げに必要なトルクを発生させるに必要な燃料噴射ラック目盛りを確認し、負荷投入時およびクラッチON時には投入負荷量およびクラッチON時の投入負荷量に相当する定常運転時の燃料噴射ポンプラック目盛り量を確認し、それらのラック目盛りに対し、外気温度変化に対する余裕分として10〜15%増しの燃料噴射量となる燃料噴射ポンプラック目盛りに制限する。これ等の燃料制限は、始動指令、負荷投入指令およびクラッチON指令と同時にガバナのトルクリミッタ又はエアシリンダ等により各燃料噴射ポンプ25のラックに連結されているレーシャフトの動きを拘束することにより行うことが好ましい。
【0081】
このように、本実施形態による過給機付き内燃機関の制御方法によれば、燃料噴射量の増加を、機関始動指令の場合は、機関始動トルクに相当する燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限し、また負荷投入指令の場合は、投入負荷量に相当する定常負荷運転時の燃料噴射量の110〜115%の範囲に制限している。
【0082】
ここで、機関が発生する機関始動トルクについて検討すると、
I : 機関始動状態および負荷投入状態での機関全体としての慣性モーメント
ω0 : 機関始動指令時の機関始動前の機関停止時の角回転速度ω0 = 0
ω1 : 機関始動後の設定機関回転速度の角回転速度
t: 機関立上げ時間
T: t時間で機関立上げに必要なトルク(機関始動トルク)
とした場合、運動量の変化が力積であるから、
I×( ω1 −ω0) = T×t
となり、従って、
T = I×( ω1 −ω0)/ t
となる。
また、機関の発生トルクは正味平均有効圧力に比例し、正味平均有効圧力は燃料噴射量に比例するので、機関立上げ時に必要な機関トルクを発生するための燃料噴射量が特定できる。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の過給機付きディーゼル機関及びその制御方法によれば、機関の始動や負荷の投入が発令された場合には、始動や投入に先立ってアシストエアを過給機に投入し、アシストエアによる過給機の単位時間当たりの回転速度の増加分を測定し、過給機の回転速度の上昇が飽和したことを検出してから機関を実際に始動し、又は負荷を実際に投入する。
すなわち、本実施形態の制御方法によれば、アシストエアによる過給機の回転速度の増加分を計測し、
機関始動に際しては、過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミングで機関始動を実行し、機関始動後の過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミング又は前記機関始動後の機関回転速度が設定回転速度になったタイミング若しくは燃料増加指令が解除されたタイミングで、アシストエア供給の停止を行い、
負荷投入に際しては、過給機回転速度の上昇が所定値以下になったタイミングで負荷投入を実行し、機関回転速度が設定回転速度に到達したタイミングでアシストエア供給の停止を行うので、
適切なタイミングでディーゼル機関を制御することができ、ディーゼル機関の制御において燃焼室に取込む燃焼空気を適切に増大させ、完全燃焼出来る燃料量を増やすと共に、許容瞬時負荷投入量の向上を簡単な制御で的確に図ることが出来、黒煙発生をより適切に抑制することが可能となった。