【実施例】
【0031】
[製造例1]
[脱塩わかめの製造]
フレーク状乾燥わかめ200gに25%の含水エタノール4000mLを加え、これをスリーワンモーター(型式:BLh600;新東科学社製)を用いて速度「3」で60分間撹拌し、洗浄した。洗浄後、濾過して液部を除去し、固形部に25%(v/v)の含水エタノール4000mLを加え、更に同一の条件にて洗浄した。その後濾過して液部を除去し、固形部を90℃で1時間真空乾燥し、更に40℃で24時間真空乾燥し、得られた乾燥物を粉砕し、粉末状の脱塩わかめ約146.4gを得た。以上の操作を計6回繰り返し、粉末状の脱塩わかめ(試作品1)約878gを得た。尚、得られた脱塩わかめのタンパク質含有量は28%であった。
【0032】
[製造例2]
[わかめタンパク質含有組成物の製造]
水道水8000mLにクエン酸三ナトリウム二水和物160g、無水クエン酸1.6g、アルギン酸リアーゼ(製品名:アルギン酸リアーゼS;28000units/g;アマノエンザイム社製)40mg及び脱塩わかめ(試作品1)201.5gを加え、撹拌しながら45℃で4時間処理した。処理物を5000×g、15℃で5分間遠心分離し、上清液を廃棄し、沈殿物を回収した。
得られた沈殿物に水道水6000mL、クエン酸三ナトリウム二水和物80g、無水クエン酸0.8g及びアルギン酸リアーゼ(製品名:アルギン酸リアーゼS;28000units/g;アマノエンザイム社製)40mgを加え、撹拌しながら45℃で17時間処理した。処理物を5000×g、15℃で5分間遠心分離し、上清液を廃棄し、沈殿物を回収した。得られた沈殿物に超純水3000mLを加えて撹拌した後、5000×g、15℃で5分間遠心分離し、沈殿物を回収する操作を4回繰り返すことにより、該沈殿物を洗浄した。洗浄後、沈殿物を凍結乾燥して粉砕し、72.6gの粉砕物を得た。得られた粉砕物に100%エタノール700mlを加えて10分間撹拌し、濾過して液部を除去し、固形部を回収する操作を6回繰り返した。
得られた固形部を40℃で24時間真空乾燥し、61.9gの乾燥物を得た。得られた乾燥物のうち61.0gに水道水1500mLを加え、これに1N塩酸を加えpH4.8に調整した後に、セルラーゼ(製品名:セルラーゼT「アマノ」4;アマノエンザイム社製)2gを加え、45℃で5時間撹拌した。処理物を5000×g、15℃で5分間遠心分離し、上清液を廃棄し、沈殿物を回収した。
得られた沈殿物に超純水1200mLを加えて撹拌した後、5000×g、15℃で5分間遠心分離し、沈殿物を回収する操作を3回繰り返すことにより、該沈殿物を洗浄した。
洗浄した沈殿物に50%エタノール1000mLを加えて撹拌した後、5000×g、15℃で5分間遠心分離し、沈殿物を回収する操作を4回繰り返すことにより、沈殿物を更に洗浄した。洗浄した沈殿物に100%エタノール1000mLを加えて撹拌した後、5000×g、15℃で5分間遠心分離し、沈殿物を回収する操作を2回繰り返すことにより、沈殿物を更に洗浄した。
洗浄後、沈殿物を真空乾燥し、50.2gのわかめタンパク質含有組成物(試作品2;タンパク質含有量約80%)を得た。
【0033】
[試験例1]
[わかめ由来成分の長期摂取によるサーチュイン遺伝子発現活性化の評価]
【0034】
(1)わかめ由来成分混合飼料の調製
AIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)に脱塩わかめ(試作品1)を加えて均一になるように混合し、脱塩わかめを1質量%含有するわかめ由来成分混合飼料を調製した。
【0035】
(2)被検動物及び飼育環境
生後19週齢のC57BL/6Jマウス(雄)74匹にAIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)及び水道水を自由に摂取させて7日間予備飼育し、下記の群分けを行った後試験に供した。予備飼育期間及び試験期間を通してマウスは室温23±1℃、相対湿度45.5±5%、換気回数20回/時、照明時間8時〜20時に維持された飼育室で飼育した。
【0036】
(3)群分け及び飼育期間
予備飼育したマウスの群分けを行った。群分けでは、各群の平均体重値がほぼ等しくなるように、わかめ由来成分混合飼料摂取群(以下、「WC摂取群」という)及び対照群の2群(各群37匹)に分けた。WC摂取群にはわかめ由来成分混合飼料及び水道水を、対照群にはAIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)及び水道水を自由摂取させて88週間飼育した。飼育終了日に、生存していたマウスの体重を測定した後、解剖して肝臓を摘出した。尚、飼育終了日におけるマウスの生存率は、WC摂取群では56.3%であり、対照群では48.3%であった。即ち、わかめ由来成分として脱塩わかめを摂取したマウスは、寿命が延長したことが分かった。
【0037】
(4)DNAマイクロアレイによる遺伝子発現量の測定
飼育終了日に、生存していたマウスより血清コレステロール値が平均的な4匹の肝臓を各群から摘出し、摘出した肝臓を、その約10倍容量のRNAレーター試薬(Ambion社製)に浸漬し、4℃で一晩静置した。静置後の肝臓は、その後RNAの抽出に供するまでの間、−80℃で保存した。次に、トリゾール試薬(商品名:TRIzol;Invitrogen社製)を用いて各々の肝臓から全RNAを抽出し、RNeasy Mini キット (QIAGEN社製)を用い、添付の手順書に従いRNAを精製した。
続いて、精製したRNAについて、DNAマイクロアレイ(商品名:GeneChipmiRNA Array;Affymetrix社製)を用いて、添付の手順書に従い、GeneChip工程及びArrayのスキャンを実施した。GeneChip工程では、Mouse genome Array 430 2.0を用いた。Arrayのスキャンの際は、GeneChip 3000 Scannerを用いて画像データを取得し、GeneChipデータ解析システムGCOS(GeneChip Operating Software)を用いて、各サンプルのArray画像データを確認した。更に、統計解析ソフトウェアR(http://www.r−project.org/)及び統計解析ソフトウェアBioconductor(http://www.bioconductor.org/)を用いてサーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現量を数値として抽出し、対照群の発現量(平均値)を1とした場合のWC摂取群の発現量(平均値)を算出した。結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1の結果から、わかめ由来成分として脱塩わかめを摂取したマウスは、サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現が活性化することが分かった。
【0040】
[試験例2]
[わかめ由来成分の短期摂取によるサーチュイン遺伝子発現活性化の評価]
【0041】
(1)わかめ由来成分混合飼料の調製
AIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)に脱塩わかめ(試作品1)を加えて均一になるように混合し、脱塩わかめを1質量%含有するわかめ由来成分混合飼料1を調製した。また、AIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)にわかめタンパク質含有組成物(試作品2)を加えて均一になるように混合し、わかめタンパク質含有組成物を0.25質量%含有するわかめ由来成分混合飼料2を調製した。
【0042】
(2)被検動物及び飼育環境
生後4週齢のSDラット(雄)12匹にAIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)及び水道水を自由に摂取させて7日間予備飼育し、下記の群分けを行った後試験に供した。予備飼育期間及び試験期間を通してラットは室温23±1℃、相対湿度45.5±5%、換気回数20回/時、照明時間8時〜20時に維持された飼育室で飼育した。
【0043】
(3)群分け及び飼育期間
予備飼育したラットの群分けを行った。群分けでは、各群の平均体重値がほぼ等しくなるように、わかめ由来成分混合飼料1摂取群(以下、「WC1摂取群」という)、わかめ由来成分混合飼料2摂取群(以下、「WC2摂取群」という)及び対照群の3群(各群4匹)に分けた。WC1摂取群にはわかめ由来成分混合飼料1及び水道水を、WC2摂取群にはわかめ由来成分混合飼料2及び水道水を、対照群にはAIN−93G飼料(オリエンタル酵母工業社製)及び水道水を自由摂取させて28日間飼育した。飼育終了日に、生存していたラットの体重を測定した後、解剖して肝臓を摘出した。
【0044】
(4)リアルタイムPCRによる遺伝子発現量の測定
摘出した肝臓を、その約10倍容量のRNAレーター試薬(Ambion社製)に浸漬し、4℃で一晩静置した。静置後の肝臓は、その後RNAの抽出に供するまでの間、−80℃で保存した。その後、MicroSmash(型式:MS−100;トミー精工社製)で肝臓を各々破砕処理し、得られた破砕液について、RNeasy Mini キット(QIAGEN社製)を用いて、添付の手順書に従い全RNAを抽出した。全RNAをUltraPure Distilled Water(Invitrogen社製)を用いて62.5ng/μLの濃度になるように希釈し、希釈した全RNAを16μLとHigh Capacity RNA−to−cDNA Master Mix(Applied Biosystem社製)4μLを混合した。その後、PCR用サーマルサイクラー「GeneAmp PCR System 9700」(Applied Biosystem社製)を使用して{25℃ 5分 → 42℃ 30分 → 85℃ 5分}×1サイクルのプログラムにて逆転写反応を行い、cDNA溶液を得た。
続いて、TaqMan Gene Expression Assays(Applied Biosystem社製)を用いてリアルタイムRCR解析を行った。具体的には、BioMark 48.48 Dynamic ArrayのSample inletsに、TaqMan Universal Master Mix II,no UNGを3μL、GE Sample Loading Reagentを0.30μL、cDNA溶液を2.70μL混合した溶液をアプライし、Assay inletsに、TaqMan Gene Expression Assayを3.0μL、Assay Loading Reagentを3.0μL混合した溶液をアプライした。反応は、{50℃ 2分 → 95℃ 10分}×1サイクル → {95℃ 15秒 → 60℃ 1分}×40サイクルのプログラムにて行った。得られたTATA box結合タンパク質遺伝子とサーチュイン遺伝子(SIRT1)のCt値(Thereshold Cycle)から各群についてサーチュイン遺伝子(SIRT1)発現量(平均値)を算出し、更に対照群の発現量(平均値)を1とした場合のWC1摂取群及びWC2摂取群の発現量を算出した。結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の結果から、わかめ由来成分として脱塩わかめ又はわかめタンパク質含有組成物を摂取したラットは、サーチュイン遺伝子(SIRT1)の発現が活性化することが分かった。また、その効果は、脱塩わかめを1質量%含有するわかめ由来成分混合飼料1を摂取したWC1摂取群よりも、わかめタンパク質含有組成物を0.25質量%含有するわかめ由来成分混合飼料2を摂取したWC2摂取群のほうが高いことが確認された。