(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被処理液が供給される供給部、前記被処理液中の固形分を濾過するフィルター、前記フィルターを通過した処理液を排出する第1排出部、および前記供給部に供給された前記被処理液の一部を排出する第2排出部を有する処理槽と、
前記供給部に供給される前記被処理液に気泡を供給可能な気泡発生装置と、
前記フィルターの濾過性能を検知する検知手段と、
前記検知手段からの出力に基づいて、前記フィルターの洗浄の要否を判断し、
前記洗浄が必要と判断した場合には、前記気泡発生装置によって気泡を加えた前記被処理液を前記供給部に供給し、前記被処理液の一部を前記フィルターで濾過し、前記被処理液の残部を前記フィルター上に堆積した固形分とともに前記第2排出部から排出させ、
前記洗浄が不要と判断した場合には、前記気泡を加えない前記被処理液を前記供給部に供給し、前記被処理液の一部を前記フィルターで濾過し、前記被処理液の残部を前記第2排出部から排出させる処理を実行させる制御部と、
前記気泡を加えた前記被処理液を、前記フィルターの前記被処理液の流入する一次面に向かって噴出する洗浄ノズルとを具備し、
前記フィルターは、複数の貫通孔と、少なくとも前記被処理液の流入する一次面側の表面に形成され、前記貫通孔の平均孔径よりも最大外形寸法の小さい複数の微細構造物とを有する処理システム。
被処理液が供給される供給部、前記被処理液中の固形分を濾過するフィルター、前記フィルターを通過した処理液を排出する第1排出部、および前記供給部に供給された前記被処理液の一部を排出する第2排出部を有する処理槽と、
前記供給部に供給される前記被処理液に気泡を供給可能な気泡発生装置と、
前記フィルターの濾過性能を検知する検知手段と、
前記気泡を加えた前記被処理液を、前記フィルターの前記被処理液の流入する一次面に向かって噴出する洗浄ノズルとを有し、
前記フィルターが、複数の貫通孔と、少なくとも前記被処理液の流入する一次面側の表面に形成され、前記貫通孔の平均孔径よりも最大外形寸法の小さい複数の微細構造物とを有する処理システムを用いた処理方法であって、
前記検知手段からの出力に基づいて、制御部によって前記フィルターの洗浄の要否を判断する工程と、
前記洗浄が必要と判断された場合に、前記気泡発生装置によって気泡を加えた前記被処理液を前記供給部に供給し、前記被処理液の一部を前記フィルターで濾過し、前記被処理液の残部を前記フィルター上に堆積した固形分とともに前記第2排出部から排出させる洗浄工程と、
前記洗浄が不要と判断された場合に、前記気泡を加えない前記被処理液を前記供給部に供給し、前記被処理液の一部を前記フィルターで濾過し、前記被処理液の残部を前記第2排出部から排出させる処理工程とを有する処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下、実施形態の処理システム及び処理方法を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態の処理システムを示す模式図である。処理システム100は、被処理液槽101と、処理槽102と、ポンプ106と、気泡発生装置109と、処理液槽103と、濃縮汚泥槽104と、これらを接続する配管とを有している。
図1に示す処理システム100は、フィルター10の被処理液領域102a側の面に被処理液を略平行に流動させながら、フィルター10で濾過するクロスフロー方式のものである。
【0010】
被処理液槽101は、被処理液を貯留する。被処理液としては、SS粒子を含む水などが挙げられる。被処理液槽101には、被処理液槽101内を攪拌する撹拌機が設置されていてもよい。被処理液槽101の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されるものではない。
【0011】
処理槽102は、被処理液が供給される供給部141と、被処理液中の固形分を濾過するフィルター10と、フィルター10を通過した処理液を排出する第1排出部142と、供給部141に供給された被処理液の一部を排出する第2排出部143とを有する。
処理槽102では、フィルター10で被処理液を濾過することにより、被処理液中からSS粒子などの濾過対象物(固形分)を除去し、処理液を生成する。処理槽102の外形形状は、特に限定されるものではなく、例えば、平面視での面積が広く、側面視での面積が小さい扁平形状を有するものなどが用いられる。
【0012】
処理槽102は、フィルター10によって、被処理液領域102aと処理液領域102bとに区画されている。処理槽102に設置されているフィルター10は、処理槽102の上下方向略中央部に略水平に設置されている。したがって、処理槽102内は、フィルター10によって上下に分割されている。そして、フィルター10より上側が被処理液領域102aとされ、フィルター10より下側が処理液領域102bとされている。
【0013】
流入配管108aは、被処理液槽101と処理槽102の供給部141とに連結されている。処理槽102の供給部141は、処理槽102の壁面上部に設けられている。
流入配管108aには、ポンプ106が設置されている。ポンプ106は、被処理液槽101内に収容された被処理液を処理槽102の供給部141に圧送する。
【0014】
流入配管108aには、配管108cを介して気泡発生装置109が連結されている。気泡発生装置109は、供給部141に供給される被処理液に気泡を供給可能なものである。本実施形態では、気泡発生装置109は、後述する洗浄時に、流入配管108a内を通過する被処理液に、配管108cを介して気泡を供給して、気泡含有被処理液を生成する。
【0015】
気泡発生装置109としては、従来公知のものを用いることができ、1〜100μmの気泡を含む気泡含有被処理液を生成しうるものを用いることが好ましい。1〜100μmの気泡を含む気泡含有被処理液を生成しうる気泡発生装置109としては、例えば、空気を被処理液中に導入する空気導入部と、導入された空気を被処理液中に気泡状に分散させる混合部とを有するものなどが挙げられる。気泡発生装置109に用いられる混合部としては、例えば、複数の小孔を有するオリフィスに被処理液および導入された空気を通過させる装置、スタティックミキサーにより被処理液と導入された空気とを混合する装置などが挙げられる。
【0016】
流出配管108fは、処理槽102の第2排出部143と弁107とに連結されている。処理槽102の第2排出部143は、処理槽102の壁面上部に設けられている。流出配管108fと処理槽102との接続位置(第2排出部143)は、処理槽102の平面視中心部を介して、流入配管108aと処理槽102との接続位置(供給部141)と略対向する位置となっている。
【0017】
弁107は、三方弁である。流出配管108fは、弁107を切り替えることにより、処理槽102の第2排出部143と、返送配管108bまたは排出配管108dと連通される。返送配管108bは、被処理液槽101に連結されている。したがって、被処理液槽101と処理槽102との間を、流入配管108aと流出配管108fと返送配管108bとを介して、被処理液が循環可能となっている。排出配管108dは、濃縮汚泥槽104に連結されている。
【0018】
処理液槽103は、処理槽102の第1排出部142から処理液配管108eを介して供給された処理液を貯留する。処理液は、被処理液が処理槽102内のフィルター10を、一次面11a側から二次面11b側に通過することにより生成したものである。処理液槽103の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
【0019】
処理液配管108eには、フィルター10の濾過性能を検知する検知手段として、処理液配管108e内を通過する処理液の流量を測定する流量計110が設置されている。流量計110としては、処理液の流量を連続して測定するものを用いてもよいし、所定の時間毎に測定するものを用いてもよい。流量計110によって測定した被処理液の流量の測定結果は、制御部120に送られる。
【0020】
制御部120は、流量計110(検知手段)からの出力に基づいて、フィルター10の洗浄の要否を判断し、洗浄が必要と判断した場合には洗浄を実行させ、洗浄が不要と判断した場合には処理を実行させる。本実施形態では、流量計110から送られた処理液の流量の測定結果が、予め決定された閾値以下であるか否かに応じて、制御部120がフィルター10の洗浄の要否を判断して、気泡発生装置109と弁107とを制御する。制御部120によるフィルター10の洗浄の要否の判断は、流量計110から処理液の流量の測定結果が送られてくる度に行ってもよいし、一定時間ごとに行ってもよい。
【0021】
制御部120における上記の処理液の流量の測定結果が閾値以下であるか否かの判断機能と、その判断結果に基づいて気泡発生装置109および弁107を制御する機能とは、例えば、コンピュータの中央演算装置に備えられた機能によって実現される。
【0022】
制御部120が、洗浄が必要と判断した場合には、制御部120が気泡発生装置109と弁107とを制御することにより、気泡発生装置109を駆動させ、弁107を切り替えて流出配管108fと排出配管108dとを連通させる。このことにより、気泡発生装置109から供給した気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を供給部141に供給し、気泡含有被処理液に含まれる被処理液の一部をフィルター10で濾過し、その残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄を実行させる。
【0023】
制御部120が、洗浄が不要と判断した場合には、制御部120が気泡発生装置109と弁107とを制御することにより、気泡発生装置109を停止させた状態で弁107を切り替えて流出配管108fと排出配管108dとを連通させる。このことにより、気泡を加えない被処理液を供給部141に供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部を第2排出部143から排出させる処理を実行させる。
【0024】
濃縮汚泥槽104は、被処理液中から除去されたSS粒子を多く含む濃縮液を貯留する。濃縮汚泥槽104には、処理槽102の被処理液領域102aから流出配管108fと排出配管108dとを介して供給される。濃縮汚泥槽104の形状、容量、材質等は、処理システム100の用途などに応じて適宜決定することができ、特に制限されない。
【0025】
図2は、処理槽102に設置されたフィルターを示す平面模式図である。
フィルター10は、複数の貫通孔13,13…と、少なくとも被処理液の流入する一次面11a側(
図1参照)の表面に形成された複数の微細構造物とを有する。本実施形態では、微細構造物は、フィルター10の表面全面に形成されている。すなわち、微細構造物は、フィルター10の一次面(流入面)11aと、被処理液が流出する二次面(流出面)11bと、貫通孔13の内壁面とを覆うように形成されている。微細構造物は、貫通孔13の平均孔径よりも最大外形寸法が小さいものである。微細構造物は、金属または合金で形成されていることが好ましい。
【0026】
貫通孔13の平均孔径は0.1μm〜5mmであることが好ましい。貫通孔13、13…の平均孔径が0.1μm以上であると、処理システム100において濾過流量が確保しやすくなり、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。貫通孔13、13…の平均孔径が5mm以下であると、ケークが容易に形成されるため、ケーク濾過による濾過性能を高めることができ、SS粒子が十分に除去された高品質の処理液が得られる。貫通孔13、13…の平均孔径とは、フィルター10を貫通する複数の貫通孔13、13…の内接円の直径の平均値を意味する。
【0027】
微細構造物は、円錐形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状を有するものであってもよいし、多面体形状を有するものであってもよい。
【0028】
次に、
図3および
図4を用いて、微細構造物が、円錐形、楕円錐形、多角錐形、円錐台形、楕円錐台形、多角錐台形のうち、少なくともいずれか1つの形状である場合の例として、微細構造物が、基端から先端に向けて先細りの形状を有する針状構造物である場合を説明する。
図3は、フィルターの一部を示す要部拡大模式図である。
図4に、微細構造物が針状構造物である場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、20000倍)を示す。微細構造物が針状構造物である場合、貫通孔13の平均孔径よりも最大外形寸法が小さいとは、貫通孔13の平均孔径よりも針状構造物の高さ寸法が小さいことを意味する。
【0029】
図3に示すフィルター10では、複数の微細構造物5の一部に、被処理液中から捕捉したSS粒子が付着している。
図3に示す微細構造物5は、基材11上に配置されためっき層3で形成されている。めっき層3と基材11との間には、下地層4が形成されている。
【0030】
本実施形態においては、基材11として、網目状のものが用いられている。網目状の基材11としては、
図2に示すように、線材が綾織されたものであってもよいし、平織されたものであってもよい。本実施形態においては、基材11として網目状のものを用いているため、貫通孔13が規則的に配置されている。
【0031】
基材11の材料としては、フィルター10を用いて濾過される被処理液中で使用できるものが用いられる。基材11の材料は、めっき処理を用いて、めっき層3、またはめっき層3および下地層4を容易に形成できるように、金属であることが好ましい。基材11に用いる金属としては、例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、およびこれらの合金などを用いることが好ましい。その中でも特に、基材11の材料として、耐蝕性に優れ、低コストで、加工しやすいステンレスを用いることが好ましい。
【0032】
下地層4は、めっき層3の基材11への接着性を高めるために、必要に応じて設けられる。下地層4に用いられる材料としては、例えば、基材11の表面にニッケル合金からなるめっき層3を形成する場合、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
【0033】
下地層4の厚みは、めっき層3の基材11への接着性を向上させることができる厚み以上とされている。また、下地層4の厚みは、貫通孔13の直径が、フィルター10にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に適した大きさとなる範囲の厚みとされている。
【0034】
複数の微細構造物5で形成されためっき層3に用いられる金属または合金としては、電気めっき等の処理によって、基材11や下地層4の表面に複数の微細構造物5を析出できるものを用いる。このような金属としては、鉄、ニッケル、銅、および、これらの合金などが挙げられる。めっき層3に用いられる金属としては、上記の金属の中でも特に、微細構造物5の形状の制御がしやすく耐食性に優れた金属であるため、ニッケルまたはニッケル合金を用いることが好ましい。ニッケル合金としては、ホウ素、リン、亜鉛から選ばれる一種以上の元素を含有するものが挙げられる。
【0035】
めっき層3は、複数の微細構造物(針状構造物)5が下地層4の表面に集合してなる複合体である。各微細構造物5では、微細構造物5の基端53aよりも基材11側の領域である基部5aが、隣接する他の微細構造物5の基部5aと一体化されている。このことにより、微細構造物5の基部5aは、下地層4の表面に連続して形成されている。
【0036】
隣接する微細構造物5間には、断面視で基端53aに近づくにつれて幅が狭くなる谷53が形成されている。谷53は、平面視で各微細構造物5を取り囲むように形成されている。各微細構造物5を取り囲む谷53は、隣接する別の微細構造物5を取り囲む谷53と平面視で繋がって形成されている。
【0037】
基材11の単位面積(1μm
2)当たりの微細構造物5の数(微細構造物の形成密度)は、1.2〜10.0個/μm
2であることが好ましい。
単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm
2以上であると、フィルター10の表面積が十分に広くなり、隣接する微細構造物5間にSS粒子が引っかかりやすくなる。このため、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすく、捕捉されたSS粒子によってケーク7が形成されやすいフィルター10とすることができる。
したがって、フィルター10は、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能を有するものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高いフィルター10とするために、3.0個/μm
2以上であることが好ましい。
【0038】
単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm
2以下であると、隣接する微細構造物5間の空間が狭くなりすぎることが防止される。このため、洗浄を行うことにより、微細構造物5からSS粒子が容易に除去される。
また、単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm
2以下であると、
図3に示すように、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成される。空間31は、ケーク7が形成された時に、ケーク濾過された処理液が流れる流路として機能する。このため、微細構造物5を有さないフィルターと比較すると、ケーク7を通過した処理液の得られる面積が大きくなるため、濾過流量を大きくすることができる。したがって、フィルター10は、SS粒子が除去されやすく、濾過流量の大きいものとなる。単位面積当たりの微細構造物5の数は、より濾過流量の大きい優れたフィルター10とするために、7.0個/μm
2以下であることが好ましい。
【0039】
微細構造物5が針状構造物である場合の基材11の単位面積(1μm
2)当たりの微細構造物5の数(微細構造物の形成密度)は、以下に示す方法により測定したものである。
フィルターを電子顕微鏡で観察し、縦2μm、横2μm、面積4μm
2の正方形内に存在する針状構造物の頂点の数を、4箇所測定する(
図4参照)。そして、4箇所で測定した針状構造物の頂点の数を平均し、単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数を算出する。
【0040】
基材11の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数(微細構造物の単位長さあたりの形成数)は1.0〜4.0個/μmであることが好ましい。
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が1.0個/μm以上であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が1.2個/μm
2以上である場合と同様に、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉できる優れた除去機能が得られる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、よりSS粒子の除去機能の高いフィルター10とするために、1.5個/μm以上であることが好ましい。
【0041】
上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数が4.0個/μm以下であると、単位面積当たりの微細構造物5の数が10.0個/μm
2以下である場合と同様に、隣接する微細構造物5間の空間が狭くなりすぎることが防止される。このため、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されているケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成されるものとなり、濾過流量の大きなフィルター10にすることができる。上記の単位長さ当たりの微細構造物5の数は、より一層濾過流量の大きいフィルター10とするために、3.0個/μm以下であることが好ましい。
【0042】
基材11の断面における単位長さ(1μm)当たりの微細構造物5の数は、以下に示す方法により測定したものである。
フィルター10を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで平滑化して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影した基材の断面の拡大写真における基材の表面の略延在方向に沿って、10μm当たりの針状の微細構造物の数を測定する。そして、測定した微細構造物5の数から単位長さ(1μm)当たりの微細構造物の数を算出する。
【0043】
本実施形態において、基材11の断面における針状の微細構造物5の平均高さHおよび基端部の平均幅Dは、以下に示す部分の寸法を、以下に示す測定方法により測定したものである。
図3に示すように、基材11の断面において隣接する微細構造物5間には、谷53が形成されている。基材11の断面において、微細構造物5を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線51でつなぎ、その長さを微細構造物5の基端部の幅D1、D2とする。また、微細構造物5の先端52と上記の直線51との最短距離を、微細構造物5の高さH1、H2とする。
【0044】
基材11の断面において、2つの微細構造物57、58が一体化されている場合(
図3における符号59で示す微細構造物)には、以下に示す部分の寸法を、微細構造物57、58の高さH3、H4および微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とした。
【0045】
まず、針状の微細構造物57、58が一体化された微細構造物59を挟んで対向する谷底である基端53a、53a間を、直線54でつなぐ。次いで、2つの微細構造物57、58間の谷55の谷底から直線54に向かって垂線56を引く。垂線56と直線54との交点から各基端53a、53aまでのそれぞれの距離を、微細構造物57、58の基端部の幅D3、D4とする。
【0046】
また、各微細構造物57、58の先端52a、52bと上記の直線54との最短距離を、各微細構造物57、58の高さH3、H4とする。なお、垂線56の長さが、微細構造物57、58の高さH3、H4の両方の高さの3/4未満である場合には、独立した2つの微細構造物とみなす。また、2つの微細構造物57、58が一体化されているとする基準は、前記独立した2つの微細構造物とみなされる場合以外とする。
【0047】
針状の微細構造物5の高さおよび微細構造物5の基端部の幅を測定するには、フィルター10を埋め込み樹脂で固定して切断し、その切断面をイオンミリングで研磨して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影する。その後、撮影した基材11の断面の拡大写真における基材の表面の略延在方向に沿う長さ10μmの範囲を1つの測定領域とし、4箇所の測定領域に存在する全ての上記の微細構造物5の高さおよび基端部の幅を測定する。そして、測定した4箇所の微細構造物5の高さの平均値を、微細構造物5の平均高さHとする。また、測定した4箇所の微細構造物5の基端部の幅の平均値を、微細構造物5の基端部の平均幅Dとする。
【0048】
基材11の断面における針状の微細構造物5の高さの変動係数は、0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数とは、上述した基材11の断面における微細構造物5の高さの分布の標準偏差を、前記微細構造物5の高さの算術平均値で除したものである。
【0049】
上記の変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性の優れたフィルター10となる。
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の高さのばらつきが十分に大きいものとなる。このため、フィルター10にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター10の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが複雑になるとともに、高さの高い微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、高さの高い微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター10とするために、0.18以上であることが好ましい。
【0050】
上記の変動係数が0.50以下であると、めっき層3の表面に形成されたケーク7を、高さの低い微細構造物5が支えることによって、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53とケーク7とに囲まれた空間31の広さが確保されやすくなる。このため、濾過によってケーク7が形成された後、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量が増大する。したがって、フィルター10は、針状構造物のないフィルターと比較して濾過流量に優れたものとなる。上記の変動係数は、より一層、濾過流量の多いフィルター10とするために、0.36以下であることが好ましい。
【0051】
基材11の断面における針状の微細構造物5の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H/Dは0.5〜4.0であることが好ましい。アスペクト比H/Dが0.5以上であると、隣接する針状の微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されたケーク7とに囲まれた十分な高さの空間31が形成される。このため、濾過によってケーク7が形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。アスペクト比H/Dは、より一層濾過流量の大きなフィルター10とするために、1.0以上であることが好ましい。
【0052】
アスペクト比H/Dが4.0以下であると、強度に優れた微細構造物5となるため、耐久性に優れたフィルター10となる。アスペクト比H/Dは、より一層耐久性の優れたフィルター10とするために、3.0以下であることが好ましい。
【0053】
基材11の断面における針状の微細構造物5の平均高さHは、0.2〜2.5μmあることが好ましい。上記の微細構造物5の平均高さHが0.2μm以上であると、隣接する微細構造物5間に形成されている谷53と、めっき層3上に形成されるケーク7とに囲まれた十分な高さの空間31が形成される。このため、濾過の際にケークが形成された後に、ケーク濾過された処理液が空間31内を流れやすくなり、濾過流量に優れたものとなる。上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れたフィルター10とするために、0.4μm以上であることが好ましい。
【0054】
上記の針状の微細構造物5の平均高さHが2.5μm以下であると、隣接する微細構造物5間の空間が狭くなりすぎることが防止される。このため、空間31が十分に確保された濾過流量に優れたフィルター10となる。上記の微細構造物5の平均高さHは、より一層濾過流量の優れたフィルター10とするために1.8μm以下であることが好ましい。
【0055】
フィルター10は、一次面11a側を平面視した場合に、一次面11a全体の平面積に対する貫通孔13の割合[(貫通孔13の面積/一次面11a全体の面積)×100]である開孔率が0.46%以上、63.0%以下であることが好ましい。
微細構造物5が針状構造物である場合に開孔率が0.46%以上であると、濾過流量が確保しやすくなり、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。一方、開孔率が63.0%以下であると、ケーク濾過による濾過性能を高めることができ、SS粒子が十分に除去された高品質の処理液が得られる。
【0056】
微細構造物5が針状である場合、貫通孔13の平均孔径は、0.5μm以上、20μm以下であることが好ましい。貫通孔13の平均孔径が0.5μm以上であると、より濾過流量が確保しやすくなり、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。貫通孔13の平均孔径が20μm以下であると、より一層容易にケーク7が形成されるため、ケーク濾過による濾過性能を高めることができる。
【0057】
次に、微細構造物5が針状構造物である場合のフィルター10の製造方法について説明する。
まず、綾織されて網目状とされた基材11を用意する。次いで、複数の貫通孔13,13…を有する基材11の表面に、めっき処理を用いて、下地層4を形成する。下地層4を形成するためのめっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、ニッケルまたはニッケル合金からなる微細構造物5を形成する前に、ステンレスからなる基材11の表面に下地層4を形成する場合には、電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、ニッケルまたはニッケル合金からなる下地層4を形成することが好ましい。
【0058】
次に、下地層4の設けられた基材11の表面に、電気めっき処理によって、複数の微細構造物5を析出させて、基材11をめっき層3で被覆する。めっき層3を形成するための電気めっき処理としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば、下地層4およびめっき層3がニッケルまたはニッケル合金からなるものである場合、下地層4の形成後、めっき浴に添加剤を添加して、連続して電解ニッケルめっき処理または無電解ニッケルめっき処理を用いて、めっき層3を形成することが好ましい。
【0059】
また、下地層4の設けられた基材11の表面の一部にのみ微細構造物を析出させる方法としては、例えば、微細構造物を析出させない部分を公知の方法を用いてマスキングしてから電気めっき処理を行う方法が挙げられる。また、下地層4の設けられた基材11の一次面側に微細析出物が析出されやすい条件で電気めっき処理を行うことにより、基材11の表面の一部に微細構造物の析出されない部分が形成されてもよい。
【0060】
複数の微細構造物5を析出させる電気めっき処理では、めっき浴に添加する添加剤の種類、濃度、めっき時間を変化させることにより、微細構造物5の形状および大きさを変化させることができる。添加剤としては、エチレンジアミン二塩酸塩(ethylenediamine dihydrochloride)、エチレンジアミン(EDA)などが挙げられる。
【0061】
めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて熱処理を行って、めっき層3の結晶化を促進してもよい。
また、めっき層3を形成するためのめっき処理を行った後、必要に応じて、フィルターの耐久性を向上させるために、めっき層3の表面に、他の金属や有機物などを用いて別の被覆層を形成してもよい。
【0062】
また、めっき層3の表面に改質処理を行って、被処理液との親和性が互いに異なる複数種類の改質領域を形成することもできる。めっき層3の改質処理としては、具体的には、親水化処理と疎水化処理とが挙げられる。こうした改質処理を行うことで、めっき層3の表面における被処理液の流れが、より複雑になり、SS粒子がめっき層3の表面で凝集しやすいものとすることができる。
【0063】
次に、本実施形態の処理システム100を用いて被処理液を処理する処理方法について説明する。
本実施形態では、被処理液の処理を開始する前に、弁107を切り替えることにより、流出配管108fと返送配管108bを接続し、処理槽102と汚泥濃縮槽104との連通を遮断する。
次に、被処理液槽101に、SS粒子を含む水などの被処理液を導入し、貯留する。そして、必要に応じて撹拌機によって、被処理液槽101内の被処理液を攪拌する。
【0064】
次に、最初の処理工程を行う。最初の処理工程は、ポンプ106を駆動して、流入配管108aを介して被処理液槽101から処理槽102の供給部141に向かって被処理液を圧送する。そして、供給部141から被処理液領域102aに供給された被処理液の一部が、フィルター10に一次面11a側から流入し、二次面11bから流出して濾過され、処理液となる。フィルター10を通過して生成した処理液は、処理槽102の第1排出部142から処理液配管108eを介して処理液槽103に供給され、貯留される。
【0065】
また、被処理液領域102aに供給された被処理液のうち、フィルター10を通過しなかった被処理液は、第2排出部143から排出され、流出配管108fと返送配管108bとを介して被処理液槽101に返送される。したがって、本実施形態では、被処理液は、被処理液槽101と処理槽102との間を循環されながら濾過される。
【0066】
ここで、処理槽102内に設置されたフィルター10の微細構造物5が針状構造物である場合の処理システム100の濾過性能について説明する。
フィルター10は、複数の針状の微細構造物5を有しているため、フィルター10とSS粒子を含む被処理液との接触面積が多い。このため、被処理液の濾過を開始すると、表面濾過および深層濾過の機構によって微細構造物5の表面に付着したSS粒子を起点として、めっき層3の表面の複数の箇所で速やかにSS粒子の凝集物が形成される。
【0067】
形成された凝集物は、フィルター10へのSS粒子を含む被処理液の濾過を継続させることにより、成長して剥離し、SS粒子を含む被処理液とともに貫通孔13に向かって移動する。貫通孔13に移動した1つまたは複数の凝集物は、貫通孔13をふさぐブリッジ状のケーク7となる。よって、被処理液の濾過を開始してから短時間で、所定のSS粒子の除去性能が得られる。また、本実施形態の処理方法では、表面濾過の機構だけでなく、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構も利用して、被処理液中の小さなSS粒子を除去できる。よって、優れた濾過性能が得られる。
【0068】
フィルター10は、
図3に示すように、隣接する微細構造物5間に谷53を有している。谷53は、断面視で谷底である基端53aに近づくにつれて幅が狭くなっている。このため、フィルター10に捕捉されたSS粒子は、谷53の基端53a近傍には入り込みにくい。
【0069】
したがって、めっき層3の表面にケーク7が形成されているフィルター10では、
図3に示すように、谷53とケーク7とに囲まれた十分な広さの空間31が形成される。空間31が形成された後、さらにフィルター10へのSS粒子を含む被処理液の供給を継続させても、空間31の上部はケーク7で形成された蓋が被せられた状態となっているため、SS粒子は空間31内に入り込みにくい。したがって、フィルター10へのSS粒子を含む被処理液の濾過を継続させても、濾過流量が確保される。
【0070】
本実施形態では、最初の処理工程を、処理液配管108e内を通過する処理液の流量を流量計110によって測定しながら行う。流量計110による処理液配管108e内を通過する処理液の流量の測定は、最初の処理工程を行っている間中、連続して行ってもよいし、所定の時間毎に行ってもよい。流量計110によって測定した処理液の流量の測定結果は、制御部120に送られる。
【0071】
最初の処理工程を継続すると、フィルター10に形成されているケーク7上にさらにSS粒子が堆積し、徐々に濾過流量が低下する。本実施形態においては、流量計110から出力された処理液配管108e内を通過する処理液の流量の測定結果に基づいて、制御部120によってフィルター10の洗浄の要否を判断する。具体的には、流量計110の測定した処理液配管108e内を通過する処理液の流量が閾値以下であるか否かを、制御部120によって判断する。その結果、処理液の流量が閾値超である場合には、洗浄が不要と判断され、最初の処理工程を継続する。
【0072】
一方、制御部120により判断した結果、上記の処理液の流量が閾値以下である場合には、洗浄が必要と判断される。洗浄が必要と判断された場合には、制御部120によって気泡発生装置109と弁107とを制御して、最初の処理工程から洗浄工程への切り換えを行う。具体的には、気泡発生装置109を駆動させて、配管108cを介して流入配管108a内を通過する被処理液に気泡を供給するとともに、弁107を切り替えて流出配管108fと排出配管108dとを連通させる。このことにより、気泡発生装置109から供給した気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を供給部141に供給し、気泡含有被処理液に含まれる被処理液の一部をフィルター10で濾過し、その残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄工程を行う。すなわち、洗浄工程では、供給部141から被処理液領域102a内のフィルター10の一次面11a側(被処理液領域102a)に供給された気泡含有被処理液は、フィルター10を洗浄しながらフィルター10で濾過される。
【0073】
気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさは、1〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさが1μm以上であると、気泡がケーク7に衝突することによるケークの崩壊が促進される。このため、気泡を含むことによる洗浄効果が顕著となり、好ましい。また、気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさが100μm以下であると、気泡の浮上速度が速すぎず、気泡含有被処理液中に気泡が均一に分散される。このため、気泡の衝突によるケーク7の崩壊が均等となり、ケークの崩壊が促進される。
【0074】
本実施形態において、気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさとは、被処理液に空気を導入した条件と同じ条件で、水道水中に空気を導入した時に得られる気泡の直径を意味する。なお、被処理液に空気を導入した条件とは、実際の装置において空気を導入する時の空気の圧力、流量、及び導入される被処理液の圧力、流量のことである。また、水道水中に空気を導入した時に得られる気泡の直径は、25℃1気圧における直径であり、例えばレーザー回折法などで測定して得られた分布の最頻値とする。
【0075】
次に、微細構造物5が針状構造物である場合のフィルター10の洗浄性について説明する。
微細構造物5が針状構造物である場合に洗浄工程を行うと、フィルター10に形成されているケーク7が気泡含有被処理液に押し流されて除去される。このとき、貫通孔13内およびフィルター10の一次面11a側に存在する空間31(
図3参照)には、各微細構造物5を取り囲むように形成された谷53を介して、多方向から洗浄液が流入する。このことにより、谷53の上部の少なくとも一部を覆うように形成されていたケーク7が、気泡含有被処理液に押し上げられて、ケーク7の剥離が促進される。また、微細構造物5は、基端53aから先端52に向けて先細りの形状を有している。このため、気泡含有被処理液に押し上げられたケーク7は、処理槽102内を通過しようとする気泡含有被処理液の流れによってフィルター10から容易に剥離される。
【0076】
しかも、本実施形態では、気泡含有被処理液に含まれる気泡がケーク7に衝突することで、ケーク7の崩壊が促進される。ケーク7が崩壊すると、ケーク7の崩壊された部分に気泡含有被処理液が入り込みやすくなって、ケーク7のさらなる崩壊が促進される。また、崩壊したケーク7は、SS粒子となって気泡含有被処理液によって容易に押し流される。その結果、フィルター10に形成されていたケーク7が速やかに除去され、高い洗浄効果が得られる。
【0077】
洗浄工程において、処理槽102の被処理液領域102aに供給された気泡含有被処理液は、被処理液領域102a内を通過することによって、フィルター10から除去されたSS粒子を含む濃縮した被処理液となる。洗浄工程において生成した濃縮した被処理液は、被処理液領域102aから流出配管108fと排出配管108dとを介して濃縮汚泥槽104に送られる。
【0078】
洗浄工程を継続すると、フィルター10に形成されているケーク7およびSS粒子が除去されて、徐々に濾過流量が向上する。本実施形態では、洗浄工程を、処理液配管108e内を通過する処理液の流量を流量計110によって測定しながら行う。流量計110による処理液配管108e内を通過する処理液の流量の測定は、洗浄工程を行っている間中、連続して行ってもよいし、所定の時間毎に行ってもよい。
【0079】
流量計110によって測定した処理液の流量の測定結果は、制御部120に送られる。本実施形態においては、流量計110から出力された処理液配管108e内を通過する処理液の流量の測定結果に基づいて、制御部120によってフィルター10の洗浄の要否を判断する。具体的には、流量計110の測定した処理液配管108e内を通過する処理液の流量が閾値以下であるか否かを、制御部120によって判断する。その結果、処理液の流量が閾値以下である場合には、洗浄が必要と判断され、洗浄工程を継続する。
【0080】
一方、上記の処理液の流量が閾値超である場合には、洗浄が不要と判断される。洗浄が不要と判断された場合には、制御部120によって気泡発生装置109と弁107とを制御して、洗浄工程から2回目の処理工程への切り換えを行う。具体的には、気泡発生装置109の駆動を停止させて被処理液への気泡の供給を停止するとともに、弁107を切り替えて流出配管108fと返送配管108bとを連通させて、被処理液を被処理液槽101と処理槽102との間を循環させ、処理槽102と汚泥濃縮槽104との連通を遮断させる。このことにより、最初の処理工程と同様に、気泡を加えない被処理液を供給部141に供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部を第2排出部143から排出させる2回目の処理工程を行う。
本実施形態の処理方法では、2回目の処理工程の後、必要に応じて、上記と同様の洗浄工程と2回目の処理工程とを、複数回連続して繰り返し行うことが好ましい。
【0081】
本実施形態の処理システム100では、流量計110からの出力に基づいて、制御部120がフィルターの洗浄の要否を判断し、洗浄が必要と判断した場合には、気泡発生装置109によって気泡を加えた被処理液を供給部141に供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄を実行させる。したがって、本実施形態の処理システム100では、洗浄工程において上記の洗浄を行うことで、フィルター10を洗浄しながら濾過できる。
【0082】
よって、本実施形態によれば、処理工程時(最初および2回目以降の処理工程)だけでなく洗浄工程時にも被処理液の濾過を継続できる。その結果、洗浄工程を行っても稼働率が低下することはなく、効率よく被処理液を処理できる。
しかも、本実施形態では、気泡含有被処理液を用いて複数の微細構造物5を有するフィルター10を洗浄するので、高い洗浄効果が得られる。このため、例えば、気泡を含まない清澄水を使用してフィルター10の一次面11aを洗浄する場合のように、フィルター10の洗浄に清澄水を使用する必要はない。また、本実施形態では、洗浄工程時にのみ気泡発生装置109によって気泡含有被処理液を生成するので、例えば、処理工程においても気泡発生装置109によって気泡含有被処理液を生成し、これを濾過する場合と比較して、処理コストが少なくて済み、好ましい。
【0083】
また、本実施形態の処理システム100は、少なくとも被処理液の流入する一次面11a側の表面に、貫通孔13の平均孔径よりも最大外形寸法の小さい複数の微細構造物5を有するフィルター10を有しているため、被処理液をフィルター10で濾過することにより、SS粒子が十分に除去された高品質の処理液が得られる。
【0084】
次に、微細構造物5が、多面体形状である場合の例を、
図5および
図6を用いて説明する。
図5および
図6は、微細構造物5が多面体形状である場合のSEM写真(二次電子像(SEI)、15.0kV、2000倍(
図5)、5000倍(
図6))を示す。
【0085】
多面体形状の微細構造物5は、複数の多面体が相互に結合して体積の一部を共有している。多面体形状の微細構造物5は、それぞれ、3つ以上の平面が交わる頂点を複数有している。各微細構造物5は、
図5および
図6に示すように、それぞれ異なる形状および異なる大きさを有している。微細構造物5は、基材11の表面、または基材11に形成された下地層4(
図3参照)の表面に、密集して形成されている。その結果、多面体形状の辺に相当する部分は、不規則な方向を向いている。
多面体形状の微細構造物5の材料としては、針状構造物で形成された微細構造物5に用いられる材料と同じものを用いることができる。
【0086】
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、0.5〜10μmであることが好ましい。析出物の平均最大外形寸法が上記範囲内であると、被処理液中のSS粒子が引っかかりやすい。このため、フィルター10に捕捉されたSS粒子によってケークが形成されやすくなる。その結果、ケーク濾過の機構を用いてSS粒子を捕捉しやすく、SS粒子を除去する機能の高いフィルター10となる。
【0087】
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が0.5μm未満であると、めっき層3の表面の凹凸が減少するとともに、多面体形状の析出物の間の空隙を通る被処理液量が低下して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる場合がある。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、2.0μm以上であることがさらに好ましい。
また、多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法が10μmを超えると、めっき層3とSS粒子を含む被処理液との接触面積が減少して、めっき層3へのSS粒子の付着が起こりにくくなる場合がある。多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、8.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0088】
多面体形状の微細構造物5における平均最大外形寸法の変動係数は0.15〜0.50であることが好ましい。変動係数が0.15〜0.50の範囲であると、より一層SS粒子の除去機能および洗浄性に優れたフィルター10となる。本実施形態において、多面体形状の微細構造物における平均最大外形寸法の変動係数とは、微細構造物5の最大外形寸法の標準偏差を、前記微細構造物5の最大外形寸法の算術平均値で除したものを意味する。
上記の変動係数が0.15未満であると、フィルター10にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター10の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが単調になり、微細構造物5にSS粒子が捕捉されにくくなる。また、上記の変動係数が0.50を超えると、外形寸法の小さい微細構造物5によってめっき層3の表面に形成されたケーク7を支える機能が得られにくくなる。
【0089】
上記の変動係数が0.15以上であると、微細構造物5の外形寸法のばらつきが十分に大きいものとなる。このため、フィルター10にSS粒子を含む被処理液を通過させる際に、フィルター10の表面でのSS粒子を含む被処理液の流れが複雑になるとともに、外形寸法の大きい微細構造物5にSS粒子が引っかかりやすくなる。その結果、深層濾過の機構によってSS粒子が捕捉されやすくなるとともに、外形寸法の大きい微細構造物5に引っかかったSS粒子を起点として、めっき層3の表面にケーク7が形成されやすくなる。上記の変動係数は、よりSS粒子が捕捉されやすいフィルター10とするために、0.18以上であることが好ましい。
【0090】
多面体形状の微細構造物5の平均最大外形寸法は、以下に示す測定方法により測定する。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて拡大したフィルター10の写真を撮影し、画像処理を行う。具体的には、多面体形状の微細構造物5の最も大きさの大きい部分の外形寸法を、一つの写真に対して代表的な10か所を選択して測定し、その平均値を平均最大外形寸法と定義する。
【0091】
次に、微細構造物5が多面体構造物である場合のフィルター10の製造方法について説明する。
微細構造物5が多面体構造物である場合のフィルター10は、微細構造物を析出させる電気めっき処理の条件以外は、上述した微細構造物が針状構造物である場合のフィルター10と同様にして製造できる。すなわち、電気めっき処理の条件を、例えば、非特許文献2に記載の条件とすることで、
図5および
図6に示す多面体構造物を析出させることができる。多面体構造物を析出させる電気めっき処理では、めっき浴に添加する添加剤の種類、濃度、めっき時間を変化させることにより、多面体構造物の形状および大きさを変化させることができる。添加材としては、2−ブチン−1,4−ジオールなどが挙げられる。
【0092】
次に、微細構造物5が多面体構造物であるフィルター10を有する処理システム100を用いて、被処理液を処理する処理方法について説明する。
この場合、フィルター10の濾過性能および洗浄性の他は、微細構造物5が上述した針状構造物である場合と同じであるので、同じ部分についての説明を省略する。
【0093】
微細構造物5が多面体構造物である場合のフィルター10は、複数の多面体構造物を有するため、フィルター10とSS粒子を含む被処理液との接触面積が多い。このため、被処理液の通過を開始すると、多面体構造物の表面にSS粒子が付着し、速やかにSS粒子の凝集物が形成される。さらに、形成された凝集物は、被処理液の濾過を継続することにより成長し、貫通孔13をふさぐケーク7となる。よって、被処理液の通過を開始してから短時間で、所定のSS粒子の除去性能が得られる。また、本実施形態の処理方法では、表面濾過の機構だけでなく、深層濾過の機構およびケーク濾過の機構も利用して、被処理液中の小さなSS粒子を除去できる。よって、優れた濾過性能が得られる。
【0094】
また、微細構造物5が多面体構造物である場合のフィルター10では、ケーク7が形成されると、隣接する多面体構造物間に形成されている隙間とケーク7とに囲まれた空間が形成される。空間の上部は、ケーク7で形成された蓋が被せられた状態となっているため、被処理液の濾過を継続させても、空間内にSS粒子が入り込みにくい。したがって、フィルター10へのSS粒子を含む被処理液の濾過を継続させても、濾過流量が確保される。
【0095】
微細構造物5が多面体構造物であるフィルター10を有する処理システム100を用いる場合においても、洗浄工程において、流入配管108a内で気泡を含む気泡含有被処理液を生成し、気泡含有被処理液を処理槽102の被処理液領域102aに供給する。
【0096】
微細構造物5が多面体構造物である場合にも、気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさは、1〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることがより好ましい。気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさが1μm以上であると、気泡がケーク7に衝突することによるケークの崩壊が促進される。このため、気泡を含むことによる洗浄効果が顕著となり、好ましい。また、気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさが100μm以下であると、気泡の浮上速度が速すぎず、気泡含有被処理液中に気泡が均一に分散される。このため、気泡の衝突によるケーク7の崩壊が均等となり、ケークの崩壊が促進される。
【0097】
微細構造物5が多面体構造物である場合に洗浄工程を行うと、フィルター10に形成されているケーク7が気泡含有被処理液に押し流されて除去される。このとき、貫通孔13内およびフィルター10の一次面11a側に存在する空間には、各微細構造物5を取り囲むように形成された谷を介して、多方向から洗浄液が流入する。このことにより、谷の上部の少なくとも一部を覆うように形成されていたケーク7が、気泡含有被処理液に押し上げられて、ケーク7の剥離が促進される。
【0098】
しかも、本実施形態では、気泡含有被処理液に含まれる気泡がケーク7に衝突することで、ケーク7の崩壊が促進される。ケーク7が崩壊すると、ケーク7の崩壊された部分に気泡含有被処理液が入り込みやすくなって、ケーク7のさらなる崩壊が促進される。また、崩壊したケーク7は、SS粒子となって気泡含有被処理液によって容易に押し流される。その結果、フィルター10に形成されていたケーク7が速やかに除去され、高い洗浄効果が得られる。
【0099】
本実施形態の処理システムでは、微細構造物5が多面体構造物である場合にも、流量計110からの出力に基づいて、制御部120がフィルターの洗浄の要否を判断し、洗浄が必要と判断した場合には、気泡発生装置109によって気泡を加えた被処理液を供給部141に供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄を実行させる。したがって、洗浄工程において上記の洗浄を行うことで、フィルター10を洗浄しながら濾過できる。よって、処理工程時だけでなく洗浄工程時にも被処理液の濾過を継続できる。
また、微細構造物5が多面体構造物である場合にも、気泡含有被処理液を用いてフィルター10を洗浄するので、高い洗浄効果が得られる。
また、微細構造物5が多面体構造物である場合にも、被処理液をフィルター10で濾過することにより、SS粒子が十分に除去された高品質の処理液が得られる。
【0100】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態の処理システムを示す模式図である。
図7に示す処理システム100Aは、被処理液槽101と、処理槽102Aと、ポンプ106と、気泡発生装置109と、処理液槽103と、濃縮汚泥槽104と、これらを接続する配管とを有している。
図2に示す処理システム100Aは、被処理液をフィルター10の被処理液領域102a側の面に略平行に流動させながら、フィルター10で濾過するクロスフロー方式のものである。
図7に示す処理システム100Aについて、
図1に示す処理システム100と同じ部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0101】
処理槽102Aは、略水平方向に延在する円筒状の外形形状を有する。処理槽102A内に設置されたフィルター10は、
図1に示す処理システム100に設置されたフィルター10を円筒状に形成したものである。
図7に示す処理システム100Aでは、円筒形のフィルター10の中心軸方向と、円筒状の処理槽102Aの中心軸方向とが、略同じとなっている。
【0102】
また、
図7に示す処理システム100Aでは、フィルター10の内側が被処理液の流入する一次面11a側とされ、フィルター10の外側が被処理液の流出する二次面11b側とされている。処理槽102A内は、円筒状のフィルター10の内側と外側に分割されている。そして、フィルター10の内側が被処理液領域102aとされ、フィルター10の外側が処理液領域102bとされている。
【0103】
処理槽102Aには、被処理液が供給される供給部として、処理用配管108hの接続された第1供給部141aと、洗浄用配管108gの接続された第2供給部141bとが設けられている。第1供給部141aおよび第2供給部141bは、円筒形の処理槽102Aの二つの端面のうち、一方の端面に形成されている。第1供給部141aは、一方の端面に接しているフィルター10の内側におけるフィルター10近傍に配置されている。第2供給部141bは、一方の端面に接しているフィルター10の略中心軸の位置に配置されている。
【0104】
また、処理槽102Aには、供給部に供給された被処理液の一部を排出する第2排出部143が設けられている。第2排出部143は、円筒形の処理槽102Aの二つの端面のうち、第1供給部141aが設けられている端面の反対側である他方の端面に形成されている。第2排出部143は、他方の端面に接しているフィルター10の略中心軸の位置に配置されている。
また、処理槽102Aの側面の下部には、フィルター10を通過した処理液を排出する第1排出部142が形成されている。
【0105】
第2供給部141bは、円筒形の処理槽102Aの二つの端面のうち、第2排出部143の設けられていない側の端面に形成されていてもよいし、第2排出部143の設けられている側の端面に形成されていてもよい。第2供給部141bからは、後述する洗浄ノズル121を介して被処理液が供給されるため、第2供給部141bと第2排出部143との距離に関係なく、洗浄ノズル121を介して供給された被処理液とフィルター10とを十分に接触させることができる。
【0106】
処理槽102Aの被処理液領域102aには、洗浄ノズル121が設置されている。洗浄ノズル121は、フィルター10の一次面11aに向かって、気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を噴出するものである。洗浄ノズル121は、一端が封じられた円筒状の本体121bと、本体121bから外周方向に向かって気泡含有被処理液を放出する複数の噴出口121a、121aとを有している。本体121bにおける封じられていない側の端部は、第2供給部141bに接続されている。
【0107】
洗浄ノズル121の本体121bの外径は、円筒状のフィルター10の内径よりも小さい。また、洗浄ノズル121は、本体121bの中心軸方向が、フィルター10および処理槽102Aの中心軸方向と、略同じとなるように設置されている。
噴出口121aは、本体121bの長さ方向および円周方向に一定の間隔で形成されている。噴出口121aの内径は、気泡含有被処理液が気泡を含むことによる洗浄効果が十分に得られるように、気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさよりも大きいことが好ましい。噴出口121aの形状は、特に限定されるものではない。噴出口121aの形状が平面視円形でない場合、噴出口121aの内径とは、噴出口121aの内接円の直径を意味する。
【0108】
図7に示す処理システム100Aでは、流入配管108aが、被処理液槽101と、流入配管108aから分岐された洗浄用配管108gおよび処理用配管108hと連結されている。
処理用配管108hは、弁107aを切り替えることにより、第1供給部141aと接続または遮断される。
洗浄用配管108gには、配管108cを介して気泡発生装置109が連結されている。洗浄用配管108gは、弁107bを切り替えることにより、第2供給部141bを介して洗浄ノズル121と接続または遮断される。
【0109】
制御部120は、流量計110(検知手段)からの出力に基づいて、フィルター10の洗浄の要否を判断し、洗浄が必要と判断した場合には洗浄を実行させ、洗浄が不要と判断した場合には処理を実行させる。本実施形態では、流量計110から送られた処理液の流量の測定結果が、予め決定された閾値以下であるか否かに応じて、制御部120がフィルター10の洗浄の要否を判断して、気泡発生装置109と弁107、107a、107bとを制御する。
【0110】
制御部120が、洗浄が不要と判断した場合には、制御部120が気泡発生装置109と弁107、107a、107bとを制御することにより、気泡発生装置109を停止させた状態で、弁107、107a、107bを切り替えて流出配管108fと排出配管108dとを連通させ、流入配管108aと第1供給部141aとを処理用配管108hを介して連通させる。このことにより、気泡を加えない被処理液を第1供給部141aに供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部を第2排出部143から排出させる処理を実行させる。
【0111】
制御部120が、洗浄が必要と判断した場合には、制御部120が気泡発生装置109と弁107、107a、107bとを制御することにより、気泡発生装置109を駆動させ、弁107、107a、107bを切り替えて流出配管108fと排出配管108dとを連通させ、流入配管108aと第2供給部141bとを洗浄用配管108gを介して連通させる。このことにより、気泡発生装置109から供給した気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を第2供給部141bに供給し、気泡含有被処理液に含まれる被処理液の一部をフィルター10で濾過し、その残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄を実行させる。
【0112】
次に、本実施形態の処理システム100Aを用いて被処理液を処理する処理方法について説明する。
本実施形態では、被処理液の処理を開始する前に、弁107aを切り替えることにより、流入配管108aと第1供給部141aとを連結する。また、弁107bを切り替えることにより、流入配管108aと第2供給部141bとを遮断する。また、弁107を切り替えることにより、流出配管108fと返送配管108bを接続し、処理槽102Aと汚泥濃縮槽104との連通を遮断する。
【0113】
その後、第1の実施形態の処理システム100を用いて被処理液を処理する場合と同様にして、最初の処理工程を行う。
そして、第1の実施形態と同様に、流量計110から出力された処理液配管108e内を通過する処理液の流量の測定結果に基づいて、制御部120によってフィルター10の洗浄の要否を判断する。その結果、処理液の流量が閾値超である場合には、洗浄が不要と判断され、最初の処理工程を継続する。
【0114】
一方、上記の処理液の流量が閾値以下である場合には、洗浄が必要と判断される。洗浄が必要と判断された場合には、制御部120によって気泡発生装置109と弁107、107a、107bとを制御して、最初の処理工程から洗浄工程への切り換えを行う。具体的には、気泡発生装置109を駆動させて配管108cを介して洗浄用配管108g内を通過する被処理液に気泡を供給するとともに、流入配管108aと第2供給部141bとを洗浄用配管108gを介して連通させ、流入配管108aと第1供給部141aとを遮断し、流出配管108fと排出配管108dとを連通させる。
【0115】
このことにより、気泡発生装置109から供給した気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を第2供給部141bに供給し、洗浄ノズル121を介してフィルター10の一次面11aに向かって噴出させる。そして、気泡含有被処理液に含まれる被処理液の一部をフィルター10で濾過し、その残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄工程を行う。すなわち、洗浄工程では、処理槽102Aの被処理液領域102a内のフィルター10の一次面11a側(被処理液領域102a)に供給された気泡含有被処理液は、フィルター10を洗浄しながらフィルター10で濾過される。
【0116】
本実施形態では、洗浄工程において、洗浄ノズル121の複数の噴出口121aから気泡含有被処理液が噴出されることにより、フィルター10の一次面11aの延在方向に対して略垂直に気泡含有被処理液が供給される。その結果、ケーク7の崩壊が促進され、フィルター10に形成されていたケーク7が速やかに除去され、高い洗浄効果が得られる。
【0117】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、洗浄工程を、処理液配管108e内を通過する処理液の流量を流量計110によって測定しながら行う。そして、第1の実施形態と同様に、流量計110から出力された処理液配管108e内を通過する処理液の流量の測定結果に基づいて、制御部120によってフィルター10の洗浄の要否を判断する。その結果、処理液の流量が閾値以下である場合には、洗浄が必要と判断され、洗浄工程を継続する。
【0118】
一方、上記の処理液の流量が閾値超である場合には、洗浄が不要と判断される。洗浄が不要と判断された場合には、制御部120によって気泡発生装置109と弁107、107a、107bとを制御して、洗浄工程から2回目の処理工程への切り換えを行う。具体的には、気泡発生装置109の駆動を停止させて被処理液への気泡の供給を停止するとともに、弁107、107a、107bを切り替えて流出配管108fと返送配管108bとを連通させ、流入配管108aと第1供給部141aとを処理用配管108hを介して連通させて、被処理液を被処理液槽101と処理槽102Aとの間を循環させ、流入配管108aと第2供給部141bとを遮断させ、処理槽102Aと汚泥濃縮槽104との連通を遮断させる。
【0119】
このことにより、最初の処理工程と同様に、気泡を加えない被処理液を第1供給部141aに供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部を第2排出部143から排出させる2回目の処理工程を行う。
本実施形態の処理方法では、2回目の処理工程の後、必要に応じて、上記と同様の洗浄工程と2回目の処理工程とを、複数回連続して繰り返し行うことが好ましい。
【0120】
図7に示す処理システム100Aにおいても、流量計110からの出力に基づいて、制御部120がフィルターの洗浄の要否を判断し、洗浄が必要と判断した場合には、気泡発生装置109によって気泡を加えた被処理液を第2供給部141bに供給し、被処理液の一部をフィルター10で濾過し、被処理液の残部をフィルター10上に堆積した固形分とともに第2排出部143から排出させる洗浄を実行させる。したがって、本実施形態の処理システム100Aでは、洗浄工程において上記の洗浄を行うことで、フィルター10を洗浄しながら濾過できる。よって、上述した第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0121】
図7に示す処理システム100Aにおいては、洗浄ノズル121として、円筒状の本体121bと、本体121bから外側に向かって気泡含有被処理液を噴出する複数の噴出口121aを有しているものを例に挙げて説明したが、洗浄ノズル121は
図7に示す例に限定されるものではない。
図8は、処理槽に他の洗浄ノズルが設置された処理システムを説明するための説明図である。
図8に示す処理システムと
図7に示す処理システム100Aとは、洗浄ノズル以外は同じであるため、同じ部材については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0122】
図8に示す洗浄ノズル122は、フィルター10の一次面11aに向かって、気泡含有被処理液を噴出する。洗浄ノズル122は、噴出される気泡含有被処理液の方向がフィルター10の内周の略接線方向となるように配置されている。
また、洗浄ノズル122の外径は、円筒状のフィルター10の内径よりも小さい。また、洗浄ノズル122の噴出口は、気泡含有被処理液が気泡を含むことによる洗浄効果が十分に得られるように、気泡含有被処理液に含まれる気泡の大きさよりも大きい内径を有することが好ましい。
【0123】
図8に示す洗浄ノズル122を有する処理システムを用いて洗浄工程を行う場合、洗浄ノズル122からフィルター10に気泡含有被処理液が供給されることにより、フィルター10の内周面に沿う旋回流が形成される。その結果、ケーク7の崩壊が促進され、フィルター10に形成されていたケーク7およびフィルター10上に付着していたSS粒子が速やかに除去され、高い洗浄効果が得られる。
【0124】
上記各実施形態では、基材11として、網目状のものを用いたフィルター10を例に挙げて説明したが、フィルター10の基材11は、上記の例に限定されるものではない。
例えば、基材として、複数の貫通孔の形成された板状の基材を有するフィルターを用いてもよい。
【0125】
図9は、フィルター他の例を示した外観斜視図である。
図10は、
図9に示すフィルターを端面側から見た時の断面図である。
フィルター212の有する板状の基材211は、上記各実施形態における網目状の基材11と同じ材料で形成されている。以下、フィルター212についての説明において、上記各実施形態におけるフィルター10と同じ構成については、説明を省略する。
【0126】
板状の基材211には、厚み方向に貫通する複数の貫通孔213、213…が形成されている。貫通孔213、213…は、基材211の一次面211aと二次面211bとを結ぶ円筒形の孔である。貫通孔213、213…は、一次面211aに沿って千鳥配列となるように配置されている。
【0127】
貫通孔213の平均孔径は1μm〜5mmであることが好ましい。貫通孔213、213…の平均孔径が1μm以上であると、フィルター212を有する処理システムにおいて濾過流量が確保しやすくなり、効率的に被処理液の濾過を行うことができる。貫通孔213、213…の平均孔径が5mm以下であると、ケークが容易に形成されるため、ケーク濾過による濾過性能を高めることができ、SS粒子が十分に除去された高品質の処理液が得られる。
貫通孔213、213…の平均孔径とは、フィルター212を貫通する複数の貫通孔213、213…の内接円の直径の平均値を意味する。
【0128】
フィルター212の表面全面には、複数の微細構造物205が形成されている。すなわち、微細構造物205は、フィルター212の一次面(流入面)211aと、被処理液が流出する二次面(流出面)211bと、貫通孔213の内壁面とを覆うように形成されている。微細構造物205としては、上記各実施形態における針状構造物または多面体構造物が形成されている。微細構造物205は、貫通孔213の平均孔径よりも最大外形寸法が小さいものである。
【0129】
図9に示すフィルター212は、上記各実施形態におけるフィルター10の基材11に代えて、基材211を用いること以外は、上記各実施形態におけるフィルター10と同様にして製造できる。
【0130】
図9および
図10に示すフィルター212では、被処理液が流入する一次面211a側が平坦面であって、複数の微細構造物205が形成されている。したがって、フィルター212に対する被処理液の流入時の液圧が均一となり、フィルター212の表面に液圧が局部的に集中することはない。このため、
図9に示すフィルター212では、被処理液の流入時の液圧に対するフィルター212の耐久性が高められるとともに、ケークの形成が促進される。
【0131】
図9に示すフィルター212では、基材211に、平面視円形の貫通孔213を千鳥配列となるように配置しているが、個々の貫通孔の形状やその配置は限定されない。
図11〜
図13は、フィルターの他の例を示した平面模式図である。
図11に示すフィルター291では、平面形状が矩形である貫通孔292を格子状に等間隔で配列している。
図12に示すフィルター294では、平面形状が長方形である貫通孔295を千鳥配列となるように形成している。
図13に示すフィルター297では、平面形状が六角形である貫通孔298を千鳥配列となるように形成している。
【0132】
これ以外にも、基材に形成する貫通孔の平面形状は、三角形や五角形など多角形状、楕円形状、十字形状など各種形状とすることができ、特に限定されるものでは無い。
また、複数の貫通孔の配列形態に関しても、例えば、
図11に示すフィルター291のように均等配列であってもよいし、
図9、
図12、
図13に示すに示すフィルター212、294、297のように、千鳥配列であってもよいし、その他、ランダムに配列してもよく、特に限定されるものでは無い。
これらの平面形状を有する貫通孔の平均孔径とは、フィルターを貫通する複数の貫通孔の内接円の直径の平均値を意味する。
【0133】
これらのフィルター291、294、297の表面全面には、
図9に示すフィルター212と同様に、複数の微細構造物205が形成されている。微細構造物205としては、上記各実施形態における針状構造物または多面体構造物が形成されている。微細構造物205は、貫通孔213の平均孔径よりも最大外形寸法が小さいものである。
【0134】
図9〜
図13に示すフィルター212、291、294、297は、板状のまま使用してもよいし、例えば、円筒状に形成して用いてもよい。
【0135】
また、基材として、線材を面状に配列させた濾過体と、前記線材を支持する支持部材とを有し、互いに隣接する前記線材どうしの間には隙間が形成され、前記濾過体のうち、被処理液が流入する一次面側に臨む前記線材は平坦面を成す基材を有するフィルターを用いてもよい。
【0136】
図14は、円筒状に形成されたフィルターの他の例を示した概略図である。
図15は、
図14に示すフィルターを端面側から見た時の断面図である。
図16は、
図14に示すフィルターの内周面側を示す要部拡大断面図である。
図14に示すフィルター300の有する基材310は、上記各実施形態における網目状の基材11と同じ材料で形成されている。以下、フィルター300についての説明において、上記各実施形態におけるフィルター10と同じ構成については、説明を省略する。
【0137】
フィルター300の基材310は、線材311を面状に配列させた濾過体312と、線材311を支持する支持部材313とから形成されている。濾過体312は、長尺の線材311をコイル状に巻回させ、中空の筒状体に成形させたものである。
【0138】
線材311は、延伸方向に対して直角な断面形状が三角形である。線材311は、隣接する線材同士の間に所定幅の隙間を保って離間するように、支持部材313に支持されている。これにより、円筒形の濾過体312には、内周面312aと外周面312bとの間を貫通するスリット状の隙間316が形成されている。
【0139】
支持部材313は、断面が四角形の線材である。支持部材313は、濾過体312の外周面312b側で線材311に接合されている。支持部材313は、線材311の周回方向に沿って、例えば等間隔で4か所形成されている。支持部材313は、濾過体312の中心軸に対して平行に延び、巻回された線材311を外周面312b側から支持している。支持部材313と線材311とは、例えば、焼結によって接合されている。
【0140】
濾過体312の内周面312a側に臨む線材311は、平坦面311fを有する。すなわち、断面形状が三角形である線材311の三角形の1辺が、内周面312aに沿うように配置されている。そして、線材311の内周面312aに沿う三角形の1辺と対向する三角形の頂点で、線材311が支持部材313に接合されている。
【0141】
図14に示すフィルター300では、濾過体312の内周面312aに向けて被処理液を流入させ、隙間316を通過させて被処理液の濾過を行い、外周面312bから濾過後の処理水を流出させる。周回違いで隣接する線材311、311同士の隙間316は、断面形状が三角形の線材311を用いることによって、被処理液が流入する内周面(一次面)312a側から、処理液が流出する外周面(二次面)312b側に向けて幅が広がるように形成されている。
【0142】
図14に示すフィルター300において、貫通孔の平均孔径とは、線材311間の隙間316における最も狭い部分の平均距離を意味する。言い換えると、フィルター300における貫通孔の平均孔径とは、内周面312a側に臨む隣接する平坦面311f間の距離を意味する。
【0143】
フィルター300では、被処理液が流入する内周面312a側(言い換えると、内周面312a側に臨む線材311の平坦面311f(
図16参照))に、複数の微細構造物305が形成されている。フィルター300の有する複数の微細構造物305としては、上記各実施形態における針状構造物または多面体構造物が形成されている。微細構造物305は、貫通孔の平均孔径よりも最大外形寸法が小さいものである。
微細構造物305は、フィルター300の表面全面に形成されていてもよい。
【0144】
図14に示すフィルター300は、上記各実施形態におけるフィルター10の基材11に代えて、コイル状に巻回した線材311と支持部材313とを焼結して結合した基材310を用いること以外は、上記各実施形態におけるフィルター10と同様にして製造できる。
【0145】
図14に示すフィルター300では、被処理液の流入する内周面312aを構成する線材311の平坦面311fに、複数の微細構造物305が形成されている。したがって、被処理液の流入時におけるフィルター300への液圧が均一となり、フィルター300の表面に液圧が局部的に集中することはない。このため、
図14に示すフィルター300では、被処理液の流入時の液圧に対するフィルター300の耐久性が高められるとともに、ケークの形成が促進される。
【0146】
図14に示すフィルター300では、断面が三角形の線材を用いた例を示したが、線材の断面形状は三角形に限定されるものではなく、例えば台形であってもよい。
図17は、フィルターの他の例における内周面側を示す要部拡大断面図である。
図17に示すフィルター370は、延伸方向に対して直角な断面形状が台形である線材371をコイル状に巻回させ、中空の筒状体にした濾過体372を備えている。線材371は、隣接する線材371同士の間に所定幅の隙間376を保って離間するように、外周面372b側で支持部材373に支持されている。
【0147】
図17に示すフィルター370では、濾過体372の内周面372aが、被処理液が流入する一次面とされ、外周面372bが、濾過体372によって濾過された処理水が流出する二次面とされる。濾過体372のうち、内周面372a側に臨む線材371は平坦面371fを有する。断面形状が台形の線材371は、台形の平行な2辺のうち長い方の一辺が内周面372aに沿うように配置され、平行な2辺のうち短い方の一辺が支持部材313に接合されている。
【0148】
フィルター370では、被処理液が流入する平坦な内周面372a側と、隙間376の内表面とに、複数の微細構造物305が形成されている。微細構造物305は、濾過体372の内周面372a(一次面)側に形成されていればよく、フィルター370の表面全面に形成されていてもよい。
【0149】
図14および
図17に示すフィルター300、370では、線材をコイル状に巻回させて中空の筒状体にした例を示したが、複数本の線材を一面上に配列させ、平板状としてもよい。
図18は、フィルターの他の例を示す外観斜視図である。
図18に示すフィルター390は、基材として、複数の線材391を面状に配列させた濾過体392と、線材391を支持する支持部材393とを備えている。濾過体392は、延伸方向に直角な断面形状が三角形である複数本の線材391を平面上に配列し、平板状に成形したものである。
【0150】
線材391は、隣接する線材391、391同士の間に所定幅のスリット状の隙間396を保つように、支持部材393に固着されている。フィルター390では、
図18における上側となる一面392a側に臨む線材391が平坦面391fを成している。断面形状が三角形の線材391の場合、三角形の1辺が一面392aに沿うように配置され、この一辺に対向する三角形の頂点で支持部材393に接合されている。
【0151】
支持部材393は、例えば、断面が矩形や三角形の線材からなり、濾過体392の他面392b側で線材391に接合されている。支持部材393は、線材391の配列方向に沿って延在し、複数の線材391と接合している。支持部材393と線材391とは、例えば、焼結によって接合されている。
【0152】
フィルター390では、
図18における上側となる一面(一次面)392a側から被処理液を流入させ、他面(二次面)392bから濾過後の処理水を流出させる。
フィルター390では、被処理液が流入する平坦な一面392aに、複数の微細構造物305が形成されている。微細構造物305は、濾過体392の一面392a(一次面)側に形成されていればよく、フィルター390の表面全面に形成されていてもよい。
【0153】
図14、
図17、
図18に示すフィルター300、370、390では、線材を支持する支持部材によって、隣接する線材同士の間に隙間を形成する場合の例を示したが、凸部を有する線材用いて、隣接する線材同士の間を所定幅の隙間を保って離間させてもよい。
図19は、フィルターの他の例を示す外観斜視図である。
【0154】
図19に示すフィルター90は、基材として、複数本の線材91を平面上に配列し、平板状に成形した濾過体92と、この線材91を支持する支持部材93とを備えている。
線材91は、断面が矩形のものであり、矩形の一辺に、所定の間隔で、凸部95が形成されている。凸部は、隣接する線材91同士の間を所定幅の隙間を保って離間させるものである。凸部95は、例えば、濾過体92を平面視したときに、線材91の配列方向に沿って千鳥配列になるように、隣接する線材91同士で位置をずらして形成されている。
【0155】
図19に示すフィルター90の平板状の濾過体92には、線材91に形成した凸部95によって、一面92aと他面92bとの間を貫通するスリット状の隙間96が形成されている。
図19に示すフィルター90において、貫通孔の平均孔径とは、線材91間の隙間96の平均距離を意味する。
【0156】
支持部材93は、例えば、断面が矩形や三角形の線材(
図19では矩形)である。支持部材93は、例えば線材91の配列方向に沿って延びるように形成されている。支持部材93は、濾過体92の他面92b側で複数の線材91に接合されている。支持部材93と線材91とは、例えば、焼結によって接合されている。
【0157】
図19に示すフィルター90の有する基材は、(
図19における濾過体92と支持部材93)は、上記各実施形態における網目状の基材11と同じ材料で形成されている。
フィルター90では、被処理液が流入する一面(一次面)92a側、および隙間96の内表面に、複数の微細構造物305が形成されている。フィルター90の有する複数の微細構造物305としては、上記各実施形態における針状構造物または多面体構造物が形成されている。微細構造物305は、貫通孔の平均孔径よりも最大外形寸法が小さいものである。
微細構造物305は、フィルター90の表面全面に形成されていてもよい。
【0158】
図19に示すフィルター90は、上記各実施形態におけるフィルター10の基材11に代えて、支持部材93と線材91とを焼結して結合したものを用いること以外は、上記各実施形態におけるフィルター10と同様にして製造できる。
図19に示すフィルター90は、板状のまま使用してもよいし、例えば、円筒状に形成して用いてもよい。
【0159】
上記各実施形態の処理システム(処理装置)および処理方法は、被処理液として被処理水を処理する場合に好適であるが、実施形態の処理システムおよび処理方法は、被処理水を処理する処理システムおよび処理方法に限定されない。
【0160】
上記各実施形態では、フィルターの濾過性能を検知する検知手段として、流量計を用いる場合を例に挙げて説明したが、流量計に限定されるものではなく、例えば、圧力計を用いてもよい。
次に、検知手段として圧力計を用いる場合の一例として、
図1に示す処理システム100において、供給部141から被処理液領域102aに供給される被処理液の圧力を測定する圧力計が設けられている場合を例に挙げて説明する。
圧力計の設置位置は、供給部141から被処理液領域102aに供給される被処理液の圧力を測定できればよく、流入配管108a内の配管108cとの連結部分よりも供給部141側の任意の位置に設置できる。
【0161】
圧力計としては、供給部141から被処理液領域102aに供給される被処理液の圧力を連続して測定するものを用いてもよいし、所定の時間毎に測定するものを用いてもよい。圧力計によって測定した供給部141から被処理液領域102aに供給される被処理液の圧力の測定結果は、制御部120に送られる。
【0162】
圧力計による上記被処理液の圧力の測定は、処理液配管108e内を通過する処理槽102の第1排出部142から排出された処理液の流量が、一定になるようにした状態で測定する。
具体的には、被処理液を供給部141に圧送するポンプ106の出力を調整することにより、処理液配管108e内を通過する処理液の流量が一定になるようにしてもよいし、処理液配管108eに流量調整バルブを設け、この流量調整バルブを開閉することにより、処理液配管108e内を通過する処理液の流量が一定になるようにしてもよい。
本実施形態では、処理液配管108e内を通過する処理液の流量が一定になるようにしているため、フィルターへのSS粒子の堆積に伴って、流出配管108fから排出される被処理液の流量が増大するとともに、供給部141から被処理液領域102aに供給される被処理液の圧力が上昇する。
【0163】
制御部120は、圧力計(検知手段)からの出力に基づいて、フィルター10の洗浄の要否を判断し、洗浄が必要と判断した場合には洗浄を実行させ、洗浄が不要と判断した場合には処理を実行させる。本実施形態では、圧力計から送られた被処理液の圧力の測定結果が、予め決定された閾値以下であるか否かに応じて、制御部120がフィルター10の洗浄の要否を判断して、気泡発生装置109と弁107とを制御する。制御部120によるフィルター10の洗浄の要否の判断は、圧力計から被処理液の圧力の測定結果が送られてくる度に行ってもよいし、一定時間ごとに行ってもよい。
【0164】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、被処理液が供給される供給部、前記被処理液中の固形分を濾過するフィルター、前記フィルターを通過した処理液を排出する第1排出部、および前記供給部に供給された前記被処理液の一部を排出する第2排出部を有する処理槽と、前記供給部に供給される前記被処理液に気泡を供給可能な気泡発生装置と、前記フィルターの濾過性能を検知する検知手段と、前記検知手段からの出力に基づいて、前記フィルターの洗浄の要否を判断し、前記洗浄が必要と判断した場合には、前記気泡発生装置によって気泡を加えた前記被処理液を前記供給部に供給し、前記被処理液の一部を前記フィルターで濾過し、前記被処理液の残部を前記フィルター上に堆積した固形分とともに前記第2排出部から排出させ、前記洗浄が不要と判断した場合には、前記気泡を加えない前記被処理液を前記供給部に供給し、前記被処理液の一部を前記フィルターで濾過し、前記被処理液の残部を前記第2排出部から排出させる処理を実行させる制御部とを持ち、前記フィルターは、複数の貫通孔と、少なくとも前記被処理液の流入する一次面側の表面に形成され、前記貫通孔の平均孔径よりも最大外形寸法の小さい複数の微細構造物とを有する処理システムとすることにより、洗浄工程時にも被処理液の濾過を継続でき、しかも高い洗浄効果が得られる。
【実施例】
【0165】
以下、実施例を用いて詳細に説明する。
(実施例1)
ステンレス製の平織りの金網(目開き34μm、線径30μm)を用意した。これをリンと亜鉛とニッケルとを含むめっき浴中に浸漬し、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、ステンレス鋼線(線材)で形成された金網をニッケル亜鉛合金からなる下地層で被覆した。
【0166】
その後、下地層を形成しためっき浴中に、ホウ酸と添加剤としてのエチレンジアミン(EDA)とを添加して、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、下地層で被覆された線材の全面を被覆するめっき層を形成し、実施例1のフィルターを得た。
実施例1のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面に微細構造物が形成されているか否かを確認した。その結果、表面に複数の針状構造物が形成されていた。
【0167】
次に、実施例1のフィルターについて、貫通孔の平均孔径を調べた。また、実施例1のフィルターについて、単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数、針状構造物の平均高さ、針状構造物の高さの変動係数、断面における針状構造物の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H(μm)/D(μm)を、それぞれ上述した方法により調べた。また、単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数を算出するために4μm
2当たりの針状構造物の数、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数を算出するために10μm当たりの針状構造物の数も調べた。
【0168】
その結果、貫通孔の平均孔径は、4μmであった。4μm
2当たりの針状構造物の数は16個〜19個(単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数(形成密度)は3.75個)であった(
図4参照)。また、このめっき層を埋め込み樹脂で固定した後、切断して断面観察を行ったところ、10μm当たりの針状構造物の数は20個(断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数は2個)であった。また、針状構造物の平均高さHは750nm、針状構造物の高さの変動係数は0.28であった。また、断面における針状構造物の基端部の平均幅Dは550nmであり、アスペクト比は1.36であった。
また、線材間の幅は4μmであり、線材幅は60μmであった。
【0169】
「濾過試験」
次に、実施例1のフィルターを、
図1に示す処理システムを模擬した処理槽に設置し、以下に示す条件で濾過試験を行った。
水道水中に、SS粒子として平均粒子径3.0μmのアルミナ粒子を1000mg/Lの濃度で分散させて被処理液とし、配管を介して処理槽に圧送した。そして、ポンプの出力を調整することにより、濾過圧力を0.1MPaで一定とする濾過試験を行ない、以下に示す方法により、処理液濁度を測定した。
その結果、濁度は0.5NTUであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
【0170】
「濾過試験での処理液濁度」
処理槽への被処理液の供給を開始してから30秒後にフィルターを通過した処理液の濁度を測定し、処理液濁度とした。
【0171】
また、濾過試験後のフィルターを埋め込み樹脂に埋め込み、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、ケークと微細構造物間の谷底までの距離(ケークとフィルターとの隙間の高さ)を3箇所測定し、その平均値を算出した。
図20は、濾過試験後の実施例1のフィルターのSEM写真であり、ケークと微細構造物の谷底までの距離を測定した結果を示す写真である。
図20に示す濾過試験後の実施例1のフィルターにおいて、ケークと微細構造物の谷底までの距離の平均値は0.7μmであった。
【0172】
「洗浄試験」
処理槽への被処理液の供給を開始してから10分間、上述した濾過試験と同様にして処理工程を行った後、以下に示すように、気泡発生装置を用いて被処理液に気泡を供給して気泡含有被処理液を生成し、処理槽に圧送した。そして、ポンプの出力を調整することにより、濾過圧力を0.1MPaで一定とする洗浄試験を1分間行ない、以下に示す方法により、洗浄試験での処理液濁度を測定した。
その結果、濁度は0.7FTUであった。また、洗浄試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
【0173】
気泡含有被処理液は、処理槽に被処理液を供給する配管に設置された気泡発生装置の空気導入部から、配管内を移動する被処理液に高圧空気を導入して気泡を供給し、気泡発生装置の混合部であるオリフィスに被処理液と気泡とを通過させて生成した。
【0174】
なお、被処理液に導入した高圧空気の導入条件は、水道水中に25℃1気圧の空気を導入した時に得られる気泡の直径が、25℃1気圧下で10〜40μmであり、20μmが分布の最頻値となる予め決定した導入条件とした。気泡の直径は、処理槽の被処理液領域に供給された水道水を、即時にレーザー回折法で分析した。
【0175】
また、洗浄試験を行った後のフィルターの表面を観察した。その結果を
図21および
図22に示す。
図21は、洗浄前の実施例1のフィルターの写真である。
図22は、洗浄後の実施例1のフィルターの写真である。
図21および
図22に示すように、洗浄試験を行うことにより、フィルターの表面のケークは剥離していた。
【0176】
「洗浄試験での処理液濁度」
洗浄試験を開始(被処理液への気泡の供給を開始)してから1分後にフィルターを通過した被処理液の濁度を測定し、処理液濁度とした。
【0177】
このような洗浄試験の後、気泡発生装置を停止して、上述した濾過試験と同様にして処理工程を10分間行ない、以下に示す方法により、洗浄後の濾過試験での処理液濁度を測定した。その結果、濁度は0.9NTUであった。
【0178】
「洗浄後の濾過試験での処理液濁度」
洗浄試験を停止(被処理液への気泡の供給を停止)してから30秒後にフィルターを通過した被処理液の濁度を測定し、処理液濁度とした。
【0179】
また、洗浄前の濾過試験および洗浄後の濾過試験での濾過速度を求め、「洗浄前の濾過試験(10分間)での濾過速度」に対する「洗浄後の濾過試験(10分間)での濾過速度」の割合である回復率{=(洗浄後/洗浄前)×100(%)}を算出した。その結果、回復率は75%であった。
【0180】
(比較例1)
洗浄試験において、気泡発生装置を停止した状態で、気泡含有被処理液に代えて気泡を加えない水道水を処理槽に圧送したこと以外は、実施例1と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。その結果、比較例1の回復率は65%であった。
このことから、気泡含有被処理液をフィルターの一次面側に供給してフィルターを洗浄しながら濾過することで、洗浄工程時にも被処理液の濾過を継続でき、しかも回復率が高く優れた洗浄効果が得られることが分かった。
【0181】
(実施例2)
幅900μmのステンレス製の断面視正方形の線材を支持部材に巻きつけて、焼結によって接合し、線材間の幅が30μmであり、中心軸と略平行に支持部材が延在する円筒状の基材を作製した。この基材にニッケルめっきを行って、ニッケルからなる下地層で被覆した。
その後、下地層を形成しためっき浴中に、添加剤として2−ブチン−1,4−ジオールを添加して、ニッケルめっき処理を行った。このことにより、下地層で被覆された基材の全面を被覆するめっき層を形成し、実施例2のフィルターを得た。
【0182】
実施例2のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面に微細構造物が形成されているか否かを確認した。その結果、表面に複数の多面体構造物が形成されていた。
【0183】
次に、実施例2のフィルターについて、貫通孔の平均孔径、平均最大外形寸法を、それぞれ上述した方法により調べた。
その結果、線材間の幅(貫通孔の平均孔径)は6μmであり、平均最大外形寸法は4μmであった。また、線材幅は924μmであった。
【0184】
「濾過試験」
次に、実施例2のフィルターを、
図7に示す処理システムを模擬した処理槽に設置し、以下に示す条件で濾過試験を行った。
水道水中に、SS粒子として平均粒子径0.1μmのアルミナ粒子を100mg/Lの濃度で分散させ、被処理液を供給する配管を介して処理槽に圧送した。そして、ポンプの出力を調整することにより、濾過圧力を0.1MPaで一定とする濾過試験を行ない、実施例1と同様にして、処理液濁度を測定した。
その結果、濁度は0.6FTUであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
【0185】
また、濾過試験後のフィルターの断面を、実施例1と同様にして観察し、実施例1と同様にして隙間の高さの平均値を算出した。その結果、隙間の高さの平均値は0.7μmであった。
【0186】
「洗浄試験」
処理槽への被処理液の供給を開始してから10分間、上述した濾過試験と同様にして処理工程を行った後、以下に示すように、気泡発生装置を用いて被処理液に気泡を供給して気泡含有被処理液を生成し、洗浄ノズルを介して処理槽に圧送した。そして、ポンプの出力を調整することにより、濾過圧力を0.1MPaで一定とする洗浄試験を1分間行ない、実施例1と同様にして、洗浄試験での処理液濁度を測定した。
その結果、濁度は0.7NTUであった。また、洗浄試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
【0187】
気泡含有被処理液は、実施例1と同様にして、生成した。
なお、被処理液に導入した高圧空気の導入条件は、水道水中に25℃1気圧の空気を導入した時に得られる気泡の直径が、25℃1気圧下で0.5〜10μmであり、4μmが分布の最頻値となる予め決定した導入条件とした。気泡の直径は、処理槽の被処理液領域に供給された水道水を、即時にレーザー回折法で分析した。
【0188】
洗浄ノズルとしては、一端が封じられた円筒状の本体と、本体から外周方向に向かって気泡含有被処理液を放出する平面視円形で内径2mmの複数の噴出口とを有するものを用いた。
また、洗浄試験を行った後のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、実施例1と同様に、フィルターの表面のケークは剥離していた。
【0189】
このような洗浄試験の後、気泡発生装置を停止して、上述した濾過試験と同様にして処理工程を10分間行ない、実施例1と同様にして、洗浄後の濾過試験での処理液濁度を測定した。その結果、濁度は0.9NTUであった。
また、洗浄前の濾過試験(10分間)および洗浄後の濾過試験(10分間)での濾過速度を求め、実施例1と同様にして回復率を算出した。その結果、回復率は75%であった。
【0190】
(実施例3)
処理用配管108hに配管108cを介して気泡発生装置109を連結し、洗浄試験において、気泡発生装置109から供給した気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を第1供給部141aに供給したこと以外は、実施例2と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。その結果、実施例3の回復率は70%であった。
【0191】
(比較例2)
洗浄試験において、気泡発生装置を停止した状態で、気泡含有被処理液に代えて気泡を加えない被処理液を処理槽に圧送したこと以外は、実施例2と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。その結果、比較例2の回復率は60%であった。
【0192】
実施例2および比較例2の結果から、気泡含有被処理液をフィルターの一次面側に供給してフィルターを洗浄しながら濾過することで、洗浄工程時にも被処理液の濾過を継続でき、しかも回復率が高く優れた洗浄効果が得られることが分かった。
また、実施例2と実施例3の結果から、気泡を加えた被処理液を、洗浄ノズルによってフィルターの一次面に向かって噴出することで、より高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0193】
(比較例3)
フィルターとして11.5μmのアルミナ粒子を捕捉できるステンレス金網(線径40μm、目開き10μm、綾畳織)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。その結果、比較例3の回復率は60%であった。
実施例2および比較例3の結果から、表面に複数の多面体構造物が形成されているフィルターを用いることで、洗浄効果が向上することが分かった。
【0194】
(実施例4)
実施例2と同じ幅900μmのステンレス製の断面視正方形の線材を平行に並べ、線材に対して略直交する方向に延在する支持部材上に焼結によって接合し、線材間の幅が30μmである板状の基材を作製した。このようにして得られた板状の基材を円筒状に加工し、実施例1と同様にして、下地層で被覆された基材の全面を被覆するめっき層を形成し、実施例4のフィルターを得た。
【0195】
実施例4のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、表面に微細構造物が形成されているか否かを確認した。その結果、表面に複数の針状構造物が形成されていた。
【0196】
次に、実施例4のフィルターについて、実施例1と同様にして、貫通孔の平均孔径、単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数、針状構造物の平均高さ、針状構造物の高さの変動係数、断面における針状構造物の基端部の平均幅Dと平均高さHとのアスペクト比H(μm)/D(μm)を調べた。また、単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数を算出するために4μm
2当たりの針状構造物の数、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数を算出するために10μm当たりの針状構造物の数も調べた。
【0197】
その結果、貫通孔の平均孔径は、10μmであった。また、4μm
2当たりの針状構造物の数は15個であり、単位面積(1μm
2)当たりの針状構造物の数は3.75個であった。また、10μm当たりの針状構造物の数は20個であり、断面における単位長さ(1μm)当たりの針状構造物の数は2個であった。また、針状構造物の平均高さHは750nm、針状構造物の高さの変動係数は0.28であった。また、断面における針状構造物の基端部の平均幅Dは550nmであり、アスペクト比は1.36であった。
また、線材間の幅は6μmであり、線材幅は924μmであった。
【0198】
「濾過試験」
次に、実施例4のフィルターを、
図8に示す処理システムを模擬した処理槽に設置し、実施例2と同様にして濾過試験を行ない、実施例1と同様にして処理液濁度を測定した。
その結果、濁度は0.6FTUであった。また、濾過試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
【0199】
また、濾過試験後のフィルターの断面を、実施例1と同様にして観察し、実施例1と同様にして隙間の高さの平均値を算出した。その結果、隙間の高さの平均値は0.7μmであった。
【0200】
「洗浄試験」
処理槽への被処理液の供給を開始してから10分間、上述した濾過試験と同様にして処理工程を行った後、以下に示すように、気泡発生装置を用いて被処理液に気泡を供給して気泡含有被処理液を生成し、洗浄ノズルを介して処理槽に圧送した。そして、ポンプの出力を調整することにより、濾過圧力を0.1MPaで一定とする洗浄試験を1分間行ない、実施例1と同様にして、洗浄試験での処理液濁度を測定した。
その結果、濁度は0.7NTUであった。また、洗浄試験を行うことにより得られた処理液は透明であった。
【0201】
気泡含有被処理液は、実施例1と同様にして、生成した。なお、被処理液に導入した高圧空気の導入条件は、実施例1と同じとした。
洗浄ノズルは、噴出される気泡含有被処理液の方向がフィルターの内周の略接線方向となるように配置した。また、洗浄ノズルとしては、内径5mmの噴出口を有し、洗浄試験中に、洗浄ノズルから噴出される気泡含有被処理液によって、フィルターの内周面に沿う旋回流が形成されるものを用いた。
【0202】
また、洗浄試験を行った後のフィルターの表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。その結果、実施例1と同様に、フィルターの表面のケークは剥離していた。
【0203】
このような洗浄試験の後、気泡発生装置を停止して、上述した濾過試験と同様にして処理工程を10分間行ない、実施例1と同様にして、洗浄後の濾過試験での処理液濁度を測定した。その結果、濁度は0.9NTUであった。
また、洗浄前の濾過試験(10分間)および洗浄後の濾過試験(10分間)での濾過速度を求め、実施例1と同様にして回復率を算出した。その結果、回復率は75%であった。
【0204】
(実施例5)
処理用配管108hに配管108cを介して気泡発生装置109を連結し、洗浄試験において、気泡発生装置109から供給した気泡を加えた被処理液(気泡含有被処理液)を第1供給部141aに供給したこと以外は、実施例4と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。その結果、実施例5の回復率は70%であった。
【0205】
実施例4の結果から、気泡含有被処理液をフィルターの一次面側に供給してフィルターを洗浄しながら濾過することで、洗浄工程時にも被処理液の濾過を継続でき、しかも回復率が高く優れた洗浄効果が得られることが分かった。
また、実施例4と実施例5の結果から、気泡を加えた被処理液を、洗浄ノズルによってフィルターの一次面に向かって噴出することで、より高い洗浄効果が得られることが分かった。
【0206】
(実施例6)
被処理液に導入した高圧空気の導入条件を、以下に示すものとし、気泡を加えた被処理液中の気泡の大きさが0.1μmとなるようにしたこと以外は、実施例2と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。
気泡発生装置109として、1μm以下の気泡を発生させるナノバブル発生装置を用いて、水道水中に25℃1気圧の空気を導入した時に得られる気泡の直径が、25℃1気圧下で100〜200nmであり、140nmが分布の最頻値となる予め決定した導入条件とした。気泡の直径は、処理槽の被処理液領域に供給された水道水を、即時にレーザー回折法で分析した。
実施例6の回復率は67%であった。
【0207】
(実施例7)
被処理液に導入した高圧空気の導入条件を、以下に示すものとし、気泡を加えた被処理液中の気泡の大きさが50mmとなるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして洗浄前および洗浄後の濾過試験での濾過速度を測定し、実施例1と同様にして回復率を調べた。
気泡発生装置109として、コンプレッサーを用いて、水道水中に25℃1気圧の空気を導入した時に得られる気泡の直径が、25℃1気圧下で30〜100mmであり、50mmが分布の最頻値となる予め決定した導入条件とした。気泡の直径は、処理槽の被処理液領域に供給された水道水を、即時にレーザー回折法で分析した。
実施例7の回復率は68%であった。
【0208】
実施例1〜7、比較例1〜3における気泡を加えた被処理液中の気泡の大きさ、微細構造物の形状、貫通孔の平均孔径、微細構造物の形成密度、微細構造物の単位長さあたりの形成数、微細構造物の平均高さ、微細構造物の高さの変動係数、平均最大外形寸法、回復率を表1に示す。
【0209】
【表1】
【0210】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。