特許第6509669号(P6509669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509669
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト支持装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/856 20180101AFI20190422BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   B60N2/856
   A47C7/38
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-154059(P2015-154059)
(22)【出願日】2015年8月4日
(65)【公開番号】特開2017-30619(P2017-30619A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大久保 拓也
(72)【発明者】
【氏名】猪瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】野中 正己
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−112975(JP,A)
【文献】 特許第5038735(JP,B2)
【文献】 実公平02−046420(JP,Y2)
【文献】 特開2012−214128(JP,A)
【文献】 実公平04−021315(JP,Y2)
【文献】 特開2008−254474(JP,A)
【文献】 特開2008−253336(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0254339(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0134761(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00− 2/90
A47C 7/00− 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に延びるピラー基部及び前記ピラー基部に対して略垂直かつ互いに略平行に延びる左右一対のピラー本体部を備えたヘッドレストピラーと、
内部空間を形成するように互いに結合された第1部材及び第2部材を含み、前記内部空間に前記ピラー基部を受容すると共に、前記第1部材及び前記第2部材が協働して形成する軸受孔に前記ピラー基部を回動可能に支持する支持部材と、
前記ピラー基部に結合され、前記内部空間内に配置されたピラー側係止部材と、
前記支持部材に変位可能に支持されて前記内部空間内に配置され、前記ピラー側係止部材を選択的に係止することによって前記支持部材に対する前記ヘッドレストピラーの相対角度を固定する支持部材側係止部材とを有し、
前記支持部材及び前記ピラー本体部の一方がシートバックに結合され、他方がヘッドレストに結合され、
前記ピラー側係止部材は、ピラー側衝当部を有し、
前記第1部材及び前記第2部材の一方は、前記ピラー側衝当部に当接することによって、前記支持部材に対する前記ヘッドレストピラーの回動範囲を規制する支持部材側衝当部を有し、
前記ピラー側衝当部及び前記支持部材側衝当部の少なくとも一方に可撓性を有する緩衝材が設けられ、
前記ピラー側衝当部、前記支持部材側衝当部及び前記緩衝材は前記内部空間内に配置されていることを特徴とするヘッドレスト支持装置。
【請求項2】
前記軸受孔は、前記第1部材及び前記第2部材にそれぞれ形成された軸受壁の互いに当接する突当部に形成されることを特徴とする請求項1に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項3】
前記軸受壁の一方は前記ピラー基部を係止する弾性爪を有し、前記軸受壁の他方は前記弾性爪を受容する受容溝を有することを特徴とする請求項2に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項4】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記ピラー基部を挟むように配置された少なくとも2つの結合部において互いに結合されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項5】
前記支持部材側係止部材は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記ピラー側係止部材を係止する係止位置と前記ピラー側係止部材から離れた解除位置との間で回動可能に支持され、
前記支持部材側係止部材を前記係止位置に向けて付勢する付勢部材と、
前記支持部材側係止部材に結合された一端と、前記支持部材の外方に引き出された他端とを有する操作部材とを更に有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1つの項に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項6】
前記第2部材は、縁部に対して前記第1部材から離れる方向に膨出し、前記第1部材との間に前記内部空間を形成する膨出部を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材を互いに締結するボルトによって、前記支持部材はシートバックフレームに締結されていることを特徴とする請求項6に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項8】
前記シートバックは、上下に延びる左右一対のサイドフレームと、左右の前記サイドフレームの上端を連結する第1アッパフレームと、前記第1アッパフレームの下方において左右の前記サイドフレームを連結する第2アッパフレームと、前記第1アッパフレームに設けられた左右一対の第1ブラケットとを有し、
前記支持部材は前記第1ブラケットのそれぞれと、前記第2アッパフレームとに締結されている請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項9】
左右一対の前記第1ブラケットの間には第2ブラケットが掛け渡され、
前記支持部材はさらに前記第2ブラケットに締結されている請求項8に記載のヘッドレスト支持装置。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか1つの項に記載のヘッドレスト支持装置を有する車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートのヘッドレスト支持装置に関し、詳細にはシートバックに対してヘッドレストを角度変更可能に支持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにおいて、シートバックに対してヘッドレストを角度変更可能に支持するヘッドレスト支持装置が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1に係るヘッドレスト支持装置は、シートバックに結合された下端を備えた左右一対の脚部及び脚部の上端どうしを連結する横軸部を有するピラーと、横軸部に回動可能に支持されたメインフレームと、メインフレームに被せられたカバー材とを有する。カバー材にパッド及び表皮が被せられることによって、ヘッドレストが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5038735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るヘッドレスト支持装置は、メインフレームが2枚の金属板をかしめ等によって互いに結合させる構成であるため、組み立てに特殊な治具を要する。また、メインフレーム及びピラーの相対角度を固定するために横軸部に設けられたラッチプレートがメインフレームの外部に突出した構造であるため、メインフレーム及びラッチプレートを覆うカバー材が必要になる。そのため、ヘッドレスト支持装置は、部品点数が多く構造が複雑になると共に、大型化するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、構造が簡素であり、かつコンパクトなヘッドレスト支持装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、左右に延びるピラー基部(25)及び前記ピラー基部に対して略垂直かつ互いに略平行に延びる左右一対のピラー本体部(26)を備えたヘッドレストピラー(21)と、内部空間(38)を形成するように互いに結合された第1部材(31)及び第2部材(32)を含み、前記内部空間に前記ピラー基部を受容すると共に、前記第1部材及び前記第2部材が協働して形成する軸受孔(48)に前記ピラー基部を回動可能に支持する支持部材(22)と、前記ピラー基部に結合され、前記内部空間内に配置されたピラー側係止部材(50)と、前記支持部材に変位可能に支持されて前記内部空間内に配置され、前記ピラー側係止部材を選択的に係止することによって前記支持部材に対する前記ヘッドレストピラーの相対角度を固定する支持部材側係止部材(60)とを有し、前記支持部材及び前記ピラー本体部の一方がシートバック(1)に結合され、他方がヘッドレスト(24)に結合されることを特徴とするヘッドレスト支持装置(20)を提供する。
【0007】
この態様によれば、ピラー側係止部材及び支持部材側係止部材が第1部材及び第2部材に囲まれた内部空間に配置されるため、支持部材の周囲に直接にパッドを配置することができ、支持部材の周囲にカバー材を設ける必要がない。これにより、ヘッドレスト支持装置の簡素化及び小型化が可能になる。
【0008】
また、上記の態様において、前記軸受孔は、前記第1部材及び前記第2部材にそれぞれ形成された軸受壁(46、47)の互いに当接する突当部に形成されるとよい。
【0009】
この態様によれば、第1部材及び第2部材が互いに結合した状態で、ピラー基部は軸受孔から離脱することができず、ヘッドレストピラーが支持部材に安定性良く支持される。
【0010】
また、上記の態様において、前記軸受壁の一方は前記ピラー基部を係止する弾性爪(46B)を有し、前記軸受壁の他方は前記弾性爪を受容する受容溝(47A)を有するとよい。
【0011】
この態様によれば、第1部材及び第2部材が離れた状態において、軸受壁の一方はピラー基部を保持することができるため、組付作業が容易になる。また、弾性爪が受容溝に受容されることによって、両軸受壁は互いに当接して軸受孔を形成することができる。
【0012】
また、上記の態様において、前記第1部材及び前記第2部材は、前記ピラー基部を挟むように配置された少なくとも2つの結合部(34、35)において互いに結合されているとよい。
【0013】
この態様によれば、溝部及び壁部の相対位置が安定し、軸受孔が所定の形状に維持される。これにより、ヘッドレストピラーが支持部材に安定性良く支持される。
【0014】
また、上記の態様において、前記支持部材側係止部材は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記ピラー側係止部材を係止する係止位置と前記ピラー側係止部材から離れた解除位置との間で回動可能に支持され、前記支持部材側係止部材を前記係止位置に向けて付勢する付勢部材(64)と、前記支持部材側係止部材に結合された一端と、前記支持部材の外方に引き出された他端とを有する操作部材(65)とを更に有するとよい。
【0015】
この態様によれば、簡単な構成で支持部材側係止部材が操作可能になる。
【0016】
また、上記の態様において、前記ピラー側係止部材は、ピラー側衝当部(52)を有し、前記第1部材及び前記第2部材の一方は、前記ピラー側衝当部に当接することによって、前記支持部材に対する前記ヘッドレストピラーの回動範囲を規制する支持部材側衝当部(54)を有し、前記ピラー側衝当部及び前記支持部材側衝当部の少なくとも一方に可撓性を有する緩衝材(53)が設けられているとよい。
【0017】
この態様によれば、ピラー側衝当部及び支持部材側衝当部の衝突が緩衝されるため、騒音が低減すると共に、操作時の感触が向上する。
【0018】
また、上記の態様において、前記第1部材及び前記第2部材を互いに締結するボルト(83、85、87)によって、前記支持部材はシートバックフレームに締結されているとよい。
【0019】
この態様によれば、第1部材、第2部材、及びシートバックフレームを締結するボルトの本数を減らすことができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の構成によれば、構造が簡素であり、かつコンパクトなヘッドレスト支持装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係るヘッドレスト支持装置を備えた車両用シートの要部を前方から見た斜視図
図2】実施形態に係るヘッドレスト支持装置を前方から見た斜視図
図3】第2部材を取り除いた状態のヘッドレスト支持装置を前方から見た斜視図
図4】実施形態に係るヘッドレスト支持装置を備えた車両用シートの要部を後方から見た斜視図
図5図2のV−V断面図
図6図2のVI−VI断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明のヘッドレスト支持装置の実施形態について説明する。本実施形態に係るヘッドレストの支持装置は、車両用シートのシートバックにヘッドレストを取り付けるために使用される。
【0023】
図1に示すように、シートバック1は、骨格としてのシートバックフレーム2に、パッド及び表皮を被せて形成させる。シートバックフレーム2は、上下に延びる左右一対のサイドフレーム3と、各サイドフレーム3の上端を連結する第1アッパフレーム4と、第1アッパフレーム4の下方において左右のサイドフレーム3を連結する第2アッパフレーム5とを有する。左右のサイドフレーム3の上部と第1アッパフレーム4のフレーム本体部4Aとは、屈曲された1つの連続したパイプ部材から形成されている。第1アッパフレーム4のフレーム本体部4Aの左右方向における中央部の前側部分は、前方を向く平面部を形成するように変形されている。
【0024】
図1図4に示すように、フレーム本体部4Aの平面部には、左右一対の第1ブラケット7が溶接されている。左右一対の第1ブラケット7は、シートバック1の左右方向における中央を通るセンターラインを対称軸として対称となる位置に配置されている。各第1ブラケット7は、前方を向く前側部7Aと、前側部7Aの左右両縁から後方に延びる左右の側部7Bとを有して、断面が後方に開口した溝形をなす。各第1ブラケット7は、左右の側部7Bの後縁において第1アッパフレーム4に結合されている。各第1ブラケット7は、第1アッパフレーム4に対して上方及び下方に延びている。各第1ブラケット7の前側部7Aの上部7Cは、下部7Dに対して前方に張り出している。
【0025】
図4図6に示すように、左右一対の第1ブラケット7の間には、第2ブラケット11が掛け渡されている。第2ブラケット11は、前後を向く主面を備えた板状をなし、左右両端が第1ブラケット7の側部7Bに溶接されている。第2ブラケット11は、フレーム本体部4Aから前方に距離をおいて配置されると共に、フレーム本体部4Aの上縁よりも上方に突出している。
【0026】
図1図3に示すように、第2アッパフレーム5は、前後を向く主面を備えた板状をなす。第2アッパフレーム5には、剛性を高めるために、適所にビードが形成されている。第2アッパフレーム5の上縁の左右方向における中央部には上方に突出した締結座5Aが形成されている。
【0027】
ヘッドレスト支持装置20は、ヘッドレストピラー21と、ヘッドレストピラー21を回動可能に支持する支持部材22とを有する。本実施形態では、支持部材22はシートバックフレーム2に結合され、ヘッドレストピラー21はヘッドレスト24に結合される。
【0028】
ヘッドレストピラー21は、左右に延びるピラー基部25と、ピラー基部25の左右の端部からピラー基部25に対して略垂直かつ互いに略平行に延びる左右一対のピラー本体部26を備え、全体として略U字形に形成されている。ピラー基部25及び左右のピラー本体部26は、連続した金属棒やパイプ部材を屈曲させることによって形成されている。
【0029】
支持部材22は、互いに結合された第1部材31と第2部材32とを有する。第1部材31及び第2部材32は、様々な材料を選択することができるが、本実施形態では樹脂材料から形成されている。第1部材31は支持部材22の後側部分を構成し、第2部材32は支持部材22の前側部分を構成する。第1部材31及び第2部材32は、それぞれの縁部において互いに当接している。第1部材31及び第2部材32は、後述する左右一対の第1結合部34、第2結合部35、左右一対の第3結合部36、及び第4結合部37において互いに結合されている。
【0030】
図5及び図6に示すように、第2部材32の中央部は、縁部に対して前方に膨出した膨出部32Aを形成している。膨出部32Aによって、第1部材31及び第2部材32は互いに協働して、両者の間に内部空間38を画成する。図2に示すように、第1部材31の縁部は、第2部材32の縁部よりも外方に張り出している。第1部材31の縁部には、前方に突出する縁リブ41が延設されている。第2部材32の縁部の端面は、縁リブ41の内側面に当接するように配置される。
【0031】
図2図4に示すように、第1部材31及び第2部材32は、上下方向における中央部において左右幅が最も大きく、下方に向けて左右幅が漸減している。具体的には、第1部材31及び第2部材32の下部は、前方から見て角の1つが他の2つの角に対して下方に配置された三角形状に形成されている。第1部材31及び第2部材32の上部は、前方から見て左右に長い略長方形に形成されている。第1部材31及び第2部材32の上部は、中央部に対して左右幅が小さく形成されている。第1部材31の上部の左右幅は、左右の第1ブラケット7の内側面間の距離よりも小さく形成されている。第1部材31及び第2部材32の中間部の左右幅は、左右の第1ブラケット7の内側面間の距離よりも大きく、かつ左右の第1ブラケット7の外側面間の距離よりも小さく形成されている。
【0032】
図3及び図5に示すように、第1部材31及び第2部材32の間における中央部と上部との境界部分であって内部空間38内には、軸受部45が形成されている。軸受部45は、第1部材31の前面31Aから前方に突出した左右一対の第1軸受壁46と、第2部材32の後面に形成された左右一対の第2軸受壁47とを有する。左右の第1軸受壁46及び第2軸受壁47は、支持部材22の左右方向における中央を通るセンターラインCを対称軸として左右対称となる位置に配置されている。左右において互いに対応する第1軸受壁46及び第2軸受壁47は、互いに当接し、その突当面に協働して軸受孔48を形成する。左右の軸受孔48は、左右に延びる軸線を有し、第1軸受壁46及び第2軸受壁47の境界部を左右に貫通している。左右の軸受孔48は、互いに同軸に配置されている。左右の軸受孔48には、ピラー基部25が挿入され、左右方向に延びる軸線を中心として回転可能に支持される。
【0033】
第1軸受壁46の、軸受孔48の後半部を形成する溝46Aの開口端には、可撓性を有する弾性爪46Bがそれぞれ形成されている。弾性爪46Bは、溝46Aに配置されたピラー基部25を係止する。これにより、第2部材32が第1部材31から分離された状態においても、溝46Aにピラー基部25を保持することができる。弾性爪46Bは、ピラー基部25が溝46Aに挿入されるときに変形してピラー基部25の挿入を可能にし、ピラー基部25の溝46Aへの挿入が完了した後に復元してピラー基部25の外周面に摺接する。弾性爪46Bはピラー基部25を回動可能に支持する軸受孔48の一部を構成する。第2軸受壁47の、第1軸受壁46との突当面には、弾性爪46Bを受容する受容溝47Aが形成されている。
【0034】
図2に示すように、第2部材32の膨出部32Aの左右側部には、ピラー基部25が通過する切欠部49が形成されている。切欠部49は、左右方向から見て、前後に延び、前端が閉じられている一方、後端が第2部材32の縁部まで延びて開口している。切欠部49の前端は、左右から見て半円形に形成され、ピラー基部25の外周面の一部に沿うように配置されている。切欠部49は、第1部材31の前面31Aと協働して周方向に閉じた孔を形成する。
【0035】
図3及び図6に示すように、ピラー基部25の左右の第1軸受壁46の間に位置する部分には、ピラー側係止部材50が設けられている。ピラー側係止部材50は、主面が左右を向く板部材によって形成され、ピラー基部25に溶接等によって結合されている。ピラー側係止部材50は、センターラインC上に配置されている。ピラー側係止部材50の外周部には、第1係止溝50A及び第2係止溝50Bが形成されている。第1係止溝50A及び第2係止溝50Bは、それぞれピラー側係止部材50を左右方向に貫通すると共に、ピラー基部25を中心とした径方向外方に向けて開口している。
【0036】
ピラー側係止部材50には、ピラー基部25と平行に左右に突出するシャフト52が結合されている。シャフト52の一端には、緩衝材53が装着されている。緩衝材53は、ゴム等の可撓性を有する材料から形成され、筒形に形成されてシャフト52の一端に被せられている。第1部材31の前面31Aには、シャフト52の一端と対向する部分に第1衝当部54が前方に向けて突設されている。シャフト52の一端が緩衝材53を介して第1衝当部54に突き当たることによって、ヘッドレストピラー21の後方への回動(左方から見た場合にピラー基部25を中心とした時計回りに回動)の限界位置が定まる。緩衝材53は、シャフト52が第1衝当部54に突き当たるときの衝撃を吸収し、異音の発生を抑制すると共に操作感を向上させる。シャフト52の一端が緩衝材53を介して第1衝当部54に突き当たるとき、ヘッドレストピラー21は起立位置(使用位置)にあり、ピラー本体部26がピラー基部25から上方に延びる。
【0037】
ヘッドレストピラー21の前方への回動(左方から見た場合にピラー基部25を中心とした反時計回りに回動)の限界位置は、ピラー側係止部材50が第1部材31の前面31Aに設けられた第2衝当部(不図示)に当接することによって定まる。ピラー側係止部材50が第2衝当部に当接するとき、ヘッドレストピラー21は退避位置(不使用位置)にあり、ピラー本体部26がピラー基部25から前方に延びる。このように、ヘッドレストピラー21は、起立位置と退避位置との間で回動可能となっている。
【0038】
ヘッドレストピラー21と第1部材31との間には、第1部材31に対してヘッドレストピラー21を退避位置に付勢する第1付勢部材56が設けられている。本実施形態では、第1付勢部材56は捩じりコイルばねであり、ピラー基部25に支持されたコイル部と、シャフト52の他端に係止され一端と、第1部材31の前面31Aに係止された他端とを有する。
【0039】
第1部材31の前面31Aの中央部であって、軸受部45より下方の部分には、支持部材側係止部材60が回動可能に設けられている。支持部材側係止部材60は、主面が前後を向く板部材によって形成され、第1部材31及び第2部材32を厚み方向(前後方向)に貫通するボルト81の外周部に回動可能に支持されている。ボルト81は、後述するように、第4結合部37において、第1部材31及び第2部材32に形成されたボルト挿通孔(不図示)を後方から前方に通過し、ナット82が螺着されることによって、第1部材31及び第2部材32を締結する。ボルト81は、支持部材22のセンターラインC上に配置されている。
【0040】
支持部材側係止部材60の外周部には、ボルト81を中心とした径方向外方に向けて延びる係止片60Aが設けられている。支持部材側係止部材60は、ボルト81を中心として係止片60Aが第1係止溝50A又は第2係止溝50B内に配置される係止位置と、係止片60Aが第1係止溝50A又は第2係止溝50Bから離脱した解除位置との間で回動可能になっている。第1部材31には、支持部材側係止部材60が係止位置及び解除位置にあるときに当接する衝当部(不図示)が設けられている。支持部材側係止部材60が衝当部に突き当たることによって、第1部材31に対する支持部材側係止部材60の回動範囲が定まっている。
【0041】
支持部材側係止部材60と第1部材31との間には、第1部材31に対して支持部材側係止部材60を係止位置に付勢する第2付勢部材64が設けられている。本実施形態では、第2付勢部材64は引っ張りコイルばねであり、支持部材側係止部材60に係止され一端と、第1部材31の前面31Aに係止された他端とを有する。
【0042】
支持部材側係止部材60には、第1操作部材65及び第2操作部材66が結合されている。第1操作部材65は、織布等から形成された帯状部材である。第2操作部材66は、ガイドスリーブ66Aとガイドスリーブ66Aに変位可能に受容されたケーブル66Bとを有するコントロールケーブルである。第1操作部材65及び第2操作部材66のケーブル66Bの一端は、支持部材側係止部材60の外周部に回動可能に結合されている。例えば、支持部材側係止部材60の外周部に支持軸が突設され、支持軸に第1操作部材65及び第2操作部材66のケーブル66Bの一端が回動可能に支持され、支持軸の先端部にプッシュナット等の抜け止め部材が結合されているとよい。
【0043】
図2に示すように、第2部材32には、第1部材31が通過するための開口(不図示)と、第2部材32のケーブル66Bが通過するための開口32Cとが形成されている。開口32Cの一端は、第1操作部材65及びケーブル66Bと支持部材側係止部材60との結合部と対向する部分に配置され、他の部分に対して幅が広く形成されている。これにより、第1操作部材65及びケーブル66Bを支持部材側係止部材60に結合するときに、開口32Cを利用して工具等を支持部材側係止部材60に到達させることができる。第2部材32の前面には、ガイドスリーブ66Aの端部に設けられた係止具66Cを係止する係止溝32Eが形成されている。
【0044】
図2に示すように、第1操作部材65の他端は、サイドフレーム3に結合された環状のガイド部材67を通過した後、シートバック1のパッド及び表皮を通過して、シートバック1の外方に引き出されている。乗員は、第1操作部材65を第2付勢部材64の付勢力に抗して引くことによって、支持部材側係止部材60を係止位置から解除位置に変位させることができる。第2操作部材66のケーブル66Bの他端は、リンク機構69に出力端に接続されている。リンク機構69は、例えばシートクッションに対してシートバック1を回動可能に支持するリクライニング機構に接続されており、リクライニング機構の操作状態に応じて第2操作部材66を操作するように構成されているとよい。例えば、リンク機構69は、リクライニング機構のロック解除が行われたときに、第2操作部材66を第2付勢部材64の付勢力に抗して引き、支持部材側係止部材60を係止位置から解除位置に変位させるように構成されているとよい。リンク機構69は第2アッパフレーム5に支持されている。
【0045】
図2及び図3に示すように、第1部材31及び第2部材32は、第1部材31及び第2部材32の上端部に配置された左右一対の第1結合部34と、第1部材31及び第2部材32の下端部に配置された第2結合部35と、第1部材31及び第2部材32の中央部の左右両端部に配置された左右一対の第3結合部36と、第1部材31及び第2部材32の中央部に配置された第4結合部37を有する。
【0046】
第4結合部37では、第1部材31、第2部材32、及び支持部材側係止部材60に形成されたボルト挿通孔(不図示)にボルト81が挿通され、ボルト81にナット82が螺着されることによって、第1部材31及び第2部材32が互いに締結される。第4結合部37で結合されることによって、第1部材31及び第2部材32は互いに結合した状態に維持される。支持部材22がシートバックフレーム2に取り付けられる前の状態においては、第1部材31及び第2部材32は第4結合部37において互いに結合されている。第4結合部37は、第1部材31及び第2部材32の中央であり、センターラインC上に配置されている。
【0047】
各第1結合部34は、第1部材31及び第2部材32の軸受部45よりも上方であって、センターラインCを対称軸として対称となる位置に配置されている。また、各第1結合部34は、それぞれ第1軸受壁46の直上方に配置されている。
【0048】
左右の第1結合部34は、第2ブラケット11と対向する位置に配置される。左右の第1結合部34では、第1部材31、第2部材32、及び第2ブラケット11を厚み方向(前後方向)に貫通するボルト挿通孔(不図示)にボルト83が挿通され、ボルト83にナット84が螺着されることによって、第1部材31、第2部材32、及び第2ブラケット11が互いに締結されている。すなわち、ボルト83及びナット84によって、第1部材31、第2部材32、及び第2ブラケット11は共締めされている。左右の第1結合部34は、第1アッパフレーム4よりも上方に配置される。
【0049】
第2結合部35は、第1部材31及び第2部材32の第4結合部37(支持部材側係止部材60)の下方であって、センターラインC上に配置されている。
【0050】
第2結合部35は、第2アッパフレーム5の締結座5Aと対向する位置に配置される。第2結合部35では、第1部材31、第2部材32、及び締結座5Aを厚み方向(前後方向)に貫通するボルト挿通孔(不図示)にボルト87が挿通され、ボルト87にナット88が螺着されることによって、第1部材31、第2部材32、及び締結座5Aが互いに締結されている。すなわち、ボルト87及びナット88によって、第1部材31、第2部材32、及び締結座5Aは共締めされている。
【0051】
各第3結合部36は、第1部材31及び第2部材32の軸受部45よりも下方、かつ第4結合部37よりも上方であって、センターラインCを対称軸として対称となる位置に配置されている。また、各第3結合部36は、左右の第1軸受壁46よりも左右外方に配置されている。
【0052】
左右の第3結合部36は、第1ブラケット7の下部7Dと対向する位置に配置される。左右の第3結合部36では、第1部材31、第2部材32、及び第1ブラケット7を厚み方向(前後方向)に貫通するボルト挿通孔(不図示)にボルト85が挿通され、ボルト85にナット86が螺着されることによって、第1部材31、第2部材32、及び第1ブラケット7が互いに締結されている。すなわち、ボルト85及びナット86によって、第1部材31、第2部材32、及び第1ブラケット7は共締めされている。左右の第3結合部36は、第1アッパフレーム4よりも下方に配置される。
【0053】
図4図6に示すように、第1部材31の後面31Bには、左右に延在する第1〜第3横リブ91〜93と、上下に延在する左右一対の縦リブ94と、複数の当接リブ95が後方に向けて突設されている。第1横リブ91は、第1アッパフレーム4のフレーム本体部4Aの下縁と、第4結合部37との間に配置されている。第2及び第3横リブ92、93は、第4結合部37と第2結合部35との間に、上下に間隔をおいて配置されている。左右一対の縦リブ94は、第4結合部37を左右から挟むように配置され、それぞれの上端が第1横リブ91に結合され、下端が第2アッパフレーム5の上縁まで延びている。第2及び第3横リブ92、93と、左右の縦リブ94とは、互いに交差している。第1及び第2横リブ91、92と、左右の縦リブ94とは、第4結合部37を囲むように配置されている。
【0054】
第1横リブ91の左右両端は、左右の第1ブラケット7まで延びている。複数の当接リブ95は、第1部材31の後面31B上を第1横リブ91の上側の側面から上方に延在している。各当接リブ95の突出端縁は、第1アッパフレーム4の外形と相補的な形状に形成されており、第1アッパフレーム4の外面と当接している。例えば、各当接リブ95は、上側ほど後方への突出長さが漸減している。
【0055】
図1に示すように、左右のピラー本体部26の先端部は、ヘッドレスト24内に挿入され、ヘッドレスト24と結合している。ヘッドレスト24は、例えば、支持体と、支持体に被せられたパッド及び表皮と、支持体に設けられ、左右のピラー本体部26を受容する筒状のピラー保持部とを有するとよい。ピラー保持部は、ピラー本体部26に係合し、ピラー保持部に対するピラー本体部26の挿入長さを調節するロック部材を有してもよい。
【0056】
以上のように構成したヘッドレスト支持装置20の効果について以下に説明する。ヘッドレスト支持装置20は、ヘッドレスト使用位置において前方から見て、第1結合部34がヘッドレストピラー21に囲まれたスペースに配置されるため、支持部材22及びヘッドレストピラー21がコンパクトに配置され、ヘッドレスト支持装置20の小型化が可能になる。
【0057】
ピラー基部25を上下に挟む左右の第1〜第3結合部34〜36において支持部材22がシートバックフレーム2に結合されるため、シートバックフレーム2に対してヘッドレスト支持装置20が安定性良く支持される。また、支持部材22が、第1及び第3結合部34、36において第1アッパフレーム4に結合され、第2結合部35において第2アッパフレーム5に結合されるため、第1〜第3結合部34〜36間の上下方向における距離を大きくすることができ、シートバックフレーム2に対してヘッドレスト支持装置20が安定性良く支持される。
【0058】
また、第1アッパフレーム4に対して上下に突出した第1ブラケット7及び第2ブラケット11に第1及び第3結合部34、36を結合させたため、ピラー基部25を上下に挟む第1及び第3結合部34、36の両方を第1アッパフレーム4に結合させることができ、シートバックフレーム2に対してヘッドレスト支持装置20が安定性良く支持される。また、ピラー側係止部材50、すなわちヘッドレストピラー21から支持部材22に荷重が伝達される部分の左右に一対の第1結合部34が配置されるため、シートバックフレーム2に対してヘッドレスト支持装置20が安定性良く支持される。
【0059】
また、複数の当接リブ95において支持部材22が第1アッパフレーム4に当接するため、シートバックフレーム2に対してヘッドレスト支持装置20が安定性良く支持される。
【0060】
また、上記の態様において、第2結合部35は、前方から見てピラー側係止部材50を通る鉛直線上に配置されているとよい。
【0061】
第2結合部35が前方から見て前記ピラー側係止部材50を通る鉛直線上に配置されているため、第2結合部35がピラー側係止部材50から支持部材22に加わる荷重を効率良く受けることができる。
【0062】
ピラー側係止部材50及び支持部材側係止部材60を介してヘッドレストピラー21からの荷重が加わるボルト81の周囲が第1及び第2横リブ91、92及び左右の縦リブ94によって補強されているため、支持部材22の変形が抑制される。特に、縦リブ94に、ヘッドレストピラー21からの荷重は、第1及び第2アッパフレーム4、5側に効率良く伝達される。
【0063】
第1〜第3結合部34〜36では、支持部材22をシートバックフレーム2に結合するボルト83、85、87によって、第1部材31及び第2部材32が共締めされているため、必要なボルトの数を減らすことができる。
【0064】
ピラー側係止部材50及び支持部材側係止部材60が第1部材31及び第2部材32に囲まれた内部空間38に配置されるため、支持部材22の周囲に直接にパッドを配置することができ、支持部材22の周囲にカバー材を設ける必要がない。これにより、ヘッドレスト支持装置20の簡素化及び小型化が可能になる。
【0065】
ピラー基部25は、第1部材31及び第2部材32の間に形成される軸受孔48に支持され、支持部材22から脱離しなくなる。そのため、ヘッドレストピラー21が支持部材22に安定性良く支持される。
【0066】
また、第1軸受壁46に弾性爪46Bを設けられたことによって、第1部材31及び第2部材32が互いに離れた状態においても、第1軸受壁46はピラー基部25を保持することができる。これにより、ヘッドレスト支持装置20の組付作業が容易になる。また、弾性爪46Bが受容溝47Aに受容されることによって、第1及び第2軸受壁46、47は互いに当接して軸受孔48を形成することができる。
【0067】
支持部材22に対するヘッドレストピラー21の回動範囲を規定するシャフト52の一端(ピラー側衝当部)と第1衝当部54(支持部材側衝当部)とは、緩衝材53を介して互いに衝突するため、衝突による騒音が低減すると共に、操作時の感触が向上する。
【0068】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。上記の実施形態では、支持部材22がシートバックフレーム2に結合され、左右のピラー本体部26がヘッドレスト24に結合された例について説明したが、他の実施形態では、左右のピラー本体部26がシートバックフレーム2に結合され、支持部材22がヘッドレスト24に結合されてもよい。例えば、第1アッパフレーム4に左右一対の筒状のピラー支持部材を設け、左右のピラー本体部26を対応するピラー支持部材に挿入してピラー支持部材に支持させる。そして、支持部材22の外面にパッド及び表皮を被せてヘッドレスト24を形成してもよい。この場合、ピラー支持部材に対するピラー本体部の挿入長さを変更可能、かつ所定の位置で挿入長さを固定可能にすることによって、シートバック1に対するヘッドレスト24の高さを調節可能にすることができる。
【符号の説明】
【0069】
1 :シートバック
2 :シートバックフレーム
3 :サイドフレーム
4 :第1アッパフレーム
4A :フレーム本体部
5 :第2アッパフレーム
7 :第1ブラケット
11 :第2ブラケット
20 :ヘッドレスト支持装置
21 :ヘッドレストピラー
22 :支持部材
24 :ヘッドレスト
25 :ピラー基部
26 :ピラー本体部
31 :第1部材
32 :第2部材
34 :第1結合部
35 :第2結合部
36 :第3結合部
37 :第4結合部
38 :内部空間
45 :軸受部
46 :第1軸受壁
46B :弾性爪
47 :第2軸受壁
47A :受容溝
48 :軸受孔
50 :ピラー側係止部材
52 :シャフト(ピラー側衝当部)
53 :緩衝材
54 :第1衝当部(支持部材側衝当部)
60 :支持部材側係止部材
64 :第2付勢部材
65 :第1操作部材
66 :第2操作部材
81、83、85、87:ボルト
91 :第1横リブ
92 :第2横リブ
93 :第3横リブ
94 :縦リブ
95 :当接リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6