特許第6509738号(P6509738)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6509738触媒組成物、触媒物品、並びに大きい粒子の分子ふるいを利用するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509738
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】触媒組成物、触媒物品、並びに大きい粒子の分子ふるいを利用するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/74 20060101AFI20190422BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190422BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20190422BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   B01J29/74 AZAB
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01D53/94 223
   F01N3/10 A
   F01N3/035 A
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-547557(P2015-547557)
(86)(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公表番号】特表2016-506294(P2016-506294A)
(43)【公表日】2016年3月3日
(86)【国際出願番号】US2013074750
(87)【国際公開番号】WO2014093666
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年12月12日
(31)【優先権主張番号】61/736,387
(32)【優先日】2012年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/104,716
(32)【優先日】2013年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ホーク,ジェフリー,ビー.
(72)【発明者】
【氏名】モイニ,アーマッド
(72)【発明者】
【氏名】ヒルゲンドルフ,マルクス
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/083045(WO,A1)
【文献】 特開平06−000372(JP,A)
【文献】 特開平06−327978(JP,A)
【文献】 特開平11−165073(JP,A)
【文献】 特開平02−261546(JP,A)
【文献】 特開平07−132234(JP,A)
【文献】 特表2012−515087(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0186375(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0079817(US,A1)
【文献】 特表2016−504182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
B01D53/86,53/94
F01N3/00−3/38,9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素酸化物、ハイドロカーボン及び一酸化炭素を含有するガスの処理用の触媒組成物であって、
ウォッシュコートを含み、
当該ウォッシュコートは、耐熱性金属酸化物担体上に担持された白金族金属と、分子ふるい粒子と、を含有し、
90%を超える前記分子ふるい粒子が1μmより大きい粒径及び50μm未満のd50を有し、
前記分子ふるい粒子が一次結晶の凝集体であり、
前記分子ふるい粒子の90%を超える粒子が、1μmより大きいサイズを有する一次結晶を有することを特徴とする触媒組成物。
【請求項2】
前記白金族金属の一部が、分子ふるい粒子上に担持されていることを特徴とする請求項1に記載の触媒組成物。
【請求項3】
95%を超える前記分子ふるい粒子が、1μmより大きい粒径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記分子ふるい粒子が、結合剤と混合された噴霧乾燥粒子であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記白金族金属が、白金及びパラジウムを含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項6】
96%を超える前記分子ふるい粒子が、1μmより大きい粒径を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記分子ふるい粒子成分が、1μmより大きい粒子を96%及び、2μmより大きい粒子を95%含有することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記分子ふるい粒子成分が、1μm〜10μmの範囲にある粒子を96%含有することを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項9】
前記分子ふるい粒子が、フォージャサイト、チャバサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM−5、ZSM−12、SSZ−13、SAPO−5、SAPO−37、オフレタイト、ベータゼオライト及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトであることを特徴とする請求項1〜の何れか一項に記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記ゼオライトが、H−ベータであることを特徴とする請求項に記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記ゼオライトが、モノモーダルな粒径分布を有することを特徴とする請求項又は10に記載の触媒組成物。
【請求項12】
ハイドロカーボン、一酸化炭素及び、窒素酸化物を含有するリーンバーンエンジンからの排気ガス処理用の触媒物品であって、長さ、入口端及び出口端を有する担体基材と、該担体上の酸化触媒物質を有し、前記酸化触媒物質は、請求項1〜11の何れか一項に記載の前記触媒組成物を含有することを特徴とする触媒物品。
【請求項13】
前記物品が、LNT、DOC及びCSFからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記排気ガスを、請求項12又は13に記載の触媒物品上を流す工程を有することを特徴とするハイドロカーボン、一酸化炭素及び窒素酸化物を含有するリーンバーンエンジンからの排気ガスの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ガスからの汚染物質を軽減するための触媒組成物及び触媒物品の分野に関する。具体的な実施形態は、大きな粒径の分子ふるいを有するリーンバーンエンジンを利用するための触媒物品と白金族金属に関し、分子ふるいは、白金族金属との負の相互作用を最小限にする。
【背景技術】
【0002】
使用者は、燃料希薄条件下の、高い空気/燃料比のおかけで、リーンバーンエンジン、例えば、ディーゼルエンジン、及び、リーンバーンガソリンエンジンを良好な燃費で稼働させることができる。ディーゼルエンジンは、特に、ガソリンエンジンよりも、燃費、耐久性、低速で高いトルクを発生させる点で重要な利点を提供する。
【0003】
しかし、排気の見地からは、ディーゼルエンジンは、対応する火花点火よりも、より厳しい問題を示す。排気問題は、微粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NO)未燃ハイドロカーボン(HC)及び一酸化炭素(CO)に関する。NOは、一酸化窒素(NO)及び二酸化窒素(NO)等を含む様々な窒素酸化物の化学種を記述するために使用される語である。
【0004】
耐火性の金属酸化物担体上に分散した白金族金属を含有する酸化触媒は、ハイドロカーボンと一酸化炭素の気体状の汚染物質の両方を、これらの汚染物質を酸化させる触媒作用によって、ニ酸化炭素と水に変えるために、ディーゼルエンジンの排気を処理するのに使用されることで知られている。そのような触媒は、一般的に、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれるユニット,又はより単純に触媒コンバータの中に含有されており、それが大気中に排出される前に、排気を処理するために、ディーゼルエンジンからの排気流路内に配置される。一般的に、ディーゼル酸化触媒は、セラミック又は金属基質(例えば、フロースルーのモノリス担体)上に形成され、その上には、一種以上の触媒コーティング組成物が溶解している。気体状のHC、CO及び微粒子状物質のSOF(可溶性有機成分)を変換することに加えて、白金族金属(一般的に耐火性酸化物担体上に分散している)を含む酸化触媒は、一酸化窒素(NO)からNOへの酸化を促進させる。
【0005】
内燃機関の排気を処理するために使用される触媒は、比較的低い温度で運転する期間、例えば、エンジン運転の最初の冷間始動期間中は、エンジンの排気が、排気中の有害成分を効果的に触媒変換をするための十分に高い温度に達していないので、あまり効果的ではない。
【0006】
この終わりまでに、分子ふるいとなる吸着剤、例えば、ゼオライトは、気体状の汚染物質、一般的にはハイドロカーボンを吸収し、最初の冷間期間中にそれらを保持させるために触媒処理システムの部分として供給される。排気ガス温度が上昇するにつれて、吸着されたハイドロカーボンは吸着剤から追い出され、より高い温度で触媒処理をされる。
【0007】
リーンバーンエンジン、例えば、ガソリン直噴及び部分リーンバーンエンジンの排気からのNOを減少させるための効果的な方法の一つは、ディーゼルエンジンからのNOと同様に、リーンバーンエンジンの運転条件下においてNOを捕捉し、貯蔵し、ストイキ又はリッチエンジン運転条件下又は、リッチにするために排気に注入された外部燃料で希薄エンジンを運転する条件下で、捕捉されたNOxを減少させることを必要とする。
【0008】
希薄運転サイクルは、一般的には1分から20分の間であり、リッチ運転サイクルは、一般的には、できるだけ多くの燃料を保持するために短い(1〜10秒)。NOの変換効率を高めるために、短くて頻繁な再生は、長いが、頻繁でない再生よりも好まれる。したがって、希薄NO捕捉触媒は、一般的には、NOx捕捉機能と、3通りの変換機能を提供しなければならない。
【0009】
希薄NO捕捉(LNT)システムの中には、アルカリ土類元素を含有するものもある。例えば、NO吸着剤組成物は、アルカリ土類金属酸化物、例えば、Mg、Ca、Sr及びBaの酸化物を含有する。他の希薄LNTシステムは、希土類金属酸化物、例えば、Mg、Ca、Sr及びBaの酸化物を含むことも可能である。NO吸着剤は、内燃機関からの排気ガスの浄化において、白金族金属触媒、例えば、アルミナ担体上に分散した白金と組み合わせて使用され得る。通常のLNTは、一般的に、NOを貯蔵するための塩基性吸着剤組成物(例えば、BaO/BaCO及び/又はCeO)と、触媒がNOを酸化及び還元するための白金族金属(PGM、すなわち、Pt、Pd、及びRh)を含有する。LNT触媒は、循環する希薄(捕捉モード)及びリッチ(再生モード)排気条件下で、動作し、式1〜6に示されるようにエンジンから排出されるNOがNに変換される。
【0010】
式1〜6:
希薄状態(捕捉モード):
2NO + O → 2NO (1)
4NO + 2MCO + O →2M(NO) + 2CO (2)
リッチ状態(再生モード):
M(NO + 2 CO → MCO + NO + NO + CO (3)
NO + CO → NO + CO (4)
2 NO + 2 CO → N + 2 CO (5)
2 NO + 2 H → N + 2 HO (6)
【0011】
分子ふるい、例えばゼオライトは、触媒の温度が低く、ハイドロカーボンをCOに酸化することができない車両の始動時に(コールドスタート)、エンジン排気からのハイドロカーボン(HC)を吸収するという目的で、ディーゼル酸化触媒(DOC)及び、上述のように希薄NOトラップ(LNT)アプリケーションにおいて使用される。排気の温度が、触媒中の白金族金属が活性化する温度まで上昇したときに、ハイドロカーボンは分子ふるいから放出され、その後、COに酸化される。DOC又はLNT触媒製剤中のゼオライトと白金族金属を結合させるための方策と方法は、数多く存在する。例えば、分子ふるいは、白金族金属と同じ層で結合され、又は異なる層に分離される。DOCアプリケーションのためには、PtとPdは、しばしば、ディーゼルエンジン排気中に存在する一酸化炭素(CO)とハイドロカーボン(HC)を酸化するために使用される白金族金属となる。これらの活性金属の選択は、パフォーマンス(すなわち、PtとPdが単独の場合と比べて、PtとPdの混合物のパフォーマンスが向上する)とコスト(すなわち、Pdの価格がPtよりもかなり低い)の組み合わせによる。ディーゼル排気で一般的に存在するハイドロカーボンを貯蔵する能力が高いので、HCを吸着するためにディーゼル用途でしばしば使用されるゼオライトは、ベータゼオライトである。しかし、最も商業的な供給源から入手可能なベータゼオライトが、同じスラリー及びコーティング層においてPt/PdDOC触媒と結合され、ゼオライトを加えないPt/PdDOC触媒と比べると、触媒のCO酸化能力は著しく減少する。ゼオライトのHC貯蔵機能のおかげでHCパフォーマンスが向上するが、Pt/Pd/アルミナ触媒とゼオライト間の負の相互作用のせいでCOパフォーマンスが減少する。この負の相互作用を回避する方法は、Pt/Pdとゼオライトを異なるコーティング層に分離させることである。しかし、スラリーを生成し、モノリスコーティングをすることを簡単にするためには、Pt/Pdとゼオライトを単一のスラリー内及び/又はコーティング層内で結合させることが望ましい。このことを実現するためには、CO酸化性能におけるPt/Pdとゼオライトの間の負の相互作用をクリアする新しい方法を見つけなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様は、触媒組成物に関する。様々な実施形態を以下に示す。実施形態1は、分子ふるい粒子と、さらに、耐火性の金属酸化物担体上に担持された白金族金属を含有する触媒組成物であって、分子ふるい粒子の90%を超える粒子が、1μmより大きな粒径と、50μm未満のd50を有する触媒組成物に関する。実施形態2は、実施形態1の変形例であって、白金族金属の一部が、分子ふるい粒子上に担持されているものに関する。実施形態3は、実施形態1又は2の変形例であって、分子ふるい粒子の95%を超える粒子が、1μmより大きな粒径を有するものに関する。
【0013】
実施形態4は、実施形態1〜3の変形例であって、分子ふるい粒子の96%を超える粒子が1μmより大きな粒径を有するものに関する。実施形態5は、実施形態1〜4の変形例であって、分子ふるい粒子が、結合剤と混合された噴霧乾燥粒子であることを特徴とする。実施形態6は、実施形態1〜5の変形例であって、白金族金属が、白金とパラジウムを含むことを特徴とする。実施形態7は、実施形態1〜6の変形例であって、分子ふるい粒子の90%を超える粒子が、1μmより大きなサイズを有する一次結晶を有することを特徴とする。実施形態8は、実施形態1〜7の変形例であって、分子ふるい粒子が、標準的な酸化触媒スラリー製造時の物理的一体性が保持され、凝集状態が維持された一次結晶の凝集体であることを特徴とする。実施形態9は、実施形態1〜8の変形例であって、分子ふるい粒子成分が、1μmよりも大きな粒子を約96%、2μmより大きな粒子を約95%含有することを特徴とする。
【0014】
実施形態10は、実施形態1〜9の変形例であって、分子ふるい粒子成分が、約1μm〜10μmの範囲にある粒子を96%含有することを特徴とする。実施形態11は、実施形態1〜10の変形例であって、さらに、微結晶を保持する結合剤も一緒に含有することを特徴とする。
【0015】
実施形態12は、実施形態1〜11の変形例であって、分子ふるい粒子が、フォージャサイト、チャバサイト、クリノプチロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM−5、ZSM−12、SSZ−13、SAPO−5、SAPO−37、オフレタイト、ベータゼオライト、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるゼオライトであることを特徴とする。実施形態13は、実施形態1〜12の変形例であって、ゼオライトがH−ベータであることを特徴とする。実施形態14は、実施形態1〜13の変形例であって、ゼオライトが、モノーダルな粒径分布を有することを特徴とする。実施形態15は、ハイドロカーボン、一酸化炭素と窒素酸化物を含有するリーンバーン内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒物品であって、長さ、入口端、出口端を有する担体基材と、担体上の酸化触媒物質を有し、酸化触媒物質は、実施形態1〜14の何れか1実施形態のウォッシュコートを含有することを特徴とする触媒物品に関する。実施形態16は、実施形態15の変形例であって、触媒物品に一つのウォッシュコート層を使用させることを特徴とする。実施形態17は、実施形態15又は16の変形例であって、物品がLNTであるものに関する。実施形態18は、実施形態15又は16の変形例であって、物品がDOCであるものに関する。実施形態19は、実施形態15又は16の変形例であって、物品がCSFであるものに関する。実施形態20は、排気ガスを実施形態15〜19に記載の触媒物品の上を流す工程を有し、ハイドロカーボン、一酸化炭素、窒素酸化物を含有するリーンバーンエンジンからの排気ガスを処理する方法を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例及び比較例に関する粒径分布を示す。
図2】比較例の触媒Aの製造で使用されるゼオライトのSEM写真である。
図3】触媒Bの製造で使用されるゼオライトのSEM写真である。
図4】触媒A、B及びCの粒径分析のグラフである。
図5】触媒Cの製造において使用されるゼオライトのSEM写真である。
図6】触媒B、C及びDの粒径分析のグラフである。
図7】比較例の触媒AからのウォッシュコートのSEM写真である。
図8】触媒DからのウォッシュコートのSEM写真である。
図9】触媒CからのウォッシュコートのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のいくつかの典型的な実施形態を記述する前に、本発明は、以下の記述で説明される構造又は工程の詳細に限定されないことを理解すべきである。
【0018】
本発明は、他の実施形態及び、様々な方法で実践され、実行されることが可能である。
【0019】
本発明の実施形態は、触媒組成物、分子ふるいを含む触媒物品、排気ガスシステム、そのような触媒物品を使用する排気ガスからの汚染物質を軽減する方法に関する。触媒物品は、内燃機関からのHC、CO及びNOを破壊するのに効果的である。具体的な実施形態は、触媒組成物、触媒物品、上述のリーンバーンエンジンからの排気ガスを処理するためのシステムに関する。触媒組成物は、耐火性金属酸化物担体上に担持された白金族金属を含有し、さらに、分子ふるい粒子の90%を超える粒子が、1μmより大きい粒径を有する多孔性分子ふるい粒子を含有する。いくつかの実施形態においては、分子ふるい粒子サイズは、80μm未満のd50を有する。一以上の実施形態においては、分子ふるい粒子は、80、70、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15又は10μm未満のd50を有する。具体的な実施形態においては、分子ふるい粒子サイズは、50μm未満のd50を有する。具体的な実施形態においては、分子ふるい粒子の95%を超える粒子が、1μmより大きい粒径を有し、より具体的な実施形態においては、分子ふるい粒子の96%を超える粒子が、1μmより大きい粒径を有し、さらにより具体的な実施形態においては、1μmより大きい約96%の粒子と、2μmより大きい約85%の粒子を含む。非常に具体的な実施形態においては、分子ふるい粒子組成物は、約96%の粒子が5μm以内の平均粒径を有し、平均粒径は、約5μmより大きい。一以上の実施形態においては、分子ふるい粒子成分は、約1μm〜10μmの範囲に96%の粒子を有する。一以上の実施形態によると、分子ふるい成分の平均粒径が、約15μmより大きく、分子ふるい粒子の約90%が、15μm以内の平均粒径を有する。
【0020】
一以上の実施形態によると、白金族金属の一部が、分子ふるい粒子上に担持されている。一以上の実施形態においては、PGMは、分子ふるい粒子上に意図的に分散されないが、当業者によって理解されるように、触媒物品を製造する間の、基材に塗布されるウォッシュコートを形成するためのスラリーを加工する間には、PGMの一定量は、分子ふるい粒子上に担持される。
【0021】
一以上の実施形態によると、分子ふるいは表面コーティングを含まない。一以上の実施形態においては、実質的に全ての分子ふるい粒子が、1μmより大きなサイズの一次結晶を有する。具体的な実施形態においては、実質的に全ての分子ふるい粒子は、1μmより大きい一次結晶の凝集体を有し、その凝集体は、標準的なディーゼル酸化触媒スラリーを製造する間に、物理的一体性を保持し、凝集状態を維持する。”実質的に全て”とは、98質量%より大きいことを意味する。具体的な実施形態においては、結合剤は、結晶をまとめる。好適な結合剤は、アルミナ、シリカ、セリア、ジルコニア、ホスフェート、及びそれらの組み合わせを含有する。有機結合剤は、スラリーを製造する間のコーティング部分の最後の焼成が終わるまで、ゼオライト凝集体をまとめるので、有機結合剤も使用可能である。
【0022】
粒子及び結晶を凝集させるための好ましい技術は、ゼオライトの孔を塞ぎ、ハイドロカーボンの吸着能力を減少させるほど高くないが、噴霧乾燥された粒子の構造的一体性を維持するために十分高いレベルにおける結合剤を用いた噴霧乾燥を含む。好適な結合剤は、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、及びホスフェートを含有する。有機結合剤物質もまた可能である。研究室規模及び商業的規模の両方で、噴霧乾燥物質のために異なる技術及び装置が存在するが、この発明の範囲は、特定のデザイン又は工程に限定されない。一つの特徴は、結合剤と混合されたゼオライトのスラリーが、細かい霧に微粒子化され、その後、所望の粒径の範囲の凝集粒子を発生させるために高温でフラッシュ乾燥される。使用される結合剤に依存して、噴霧乾燥さえたゼオライトは、結合剤を固定するために、より高い温度で任意に焼成されてもよい。他の好適な凝集技術は、ゼオライト粒子とワックス又は他の結合剤型物質を、タンブリング(tumbling)し、混合することを含む。
【0023】
ここで記載される大きさ/範囲のそれぞれは、”大きな粒径の分子ふるい粒子”と言及してもよい。分子ふるい粒子の大きな粒径は、白金族金属との負の相互作用を防止する。
【0024】
本発明の実施形態は、上述の大きな粒径の分子ふるいを利用することによって、同じコーティング層で結合されるときの、分子ふるいと、白金族金属酸化触媒との間の負の相互作用を排除することに関する。これは、それぞれの結晶が1μmよりも大きいか、又は小さい結晶のクラスターが1μmよりも大きいかのいずれかを含む。しかし、クラスター又は凝集体は、標準的なスラリー製造及びコーティング工程時に、凝集状態を維持するために(すなわち、維持>1μm)、十分な構造的一体性を有さなければならない。
【0025】
具体的な実施形態は、DOC、CSF又はLNT触媒物品の製造において、耐火性の酸化物担体粒子上に担持された白金族金属と結合されるときの、向上する性能のための大きな粒径の分子ふるいの使用に関する。具体的な実施形態において、白金及びパラジウムは、アルミナ担体(”Pt/Pd/アルミナ”)上で担持される。より具体的には、本発明の実施形態は、分子ふるいの大きな粒径が、分子ふるいと、ウォッシュコートされたPt/Pd/アルミナDOC又はLNT触媒を製造するために使用されるスラリー中に含まれる成分とで生じる負の相互作用を防止する分子ふるいの使用に関する。
【0026】
分子ふるいは、1μmより大きなサイズを有する一次結晶(すなわち、物理的手段、例えばミリング(milling)によって大きさを減少させることができない最小のビルディングブロック(building block))又は、凝集体が、標準的な触媒スラリーの製造及びコーティング時に物理的一体性を保持し、凝集状態を維持する限り、1μmより大きい一次結晶の凝集体から構成されることができる。
【0027】
したがって、本発明の実施形態において、ウォッシュコートされた白金族金属DOC又はLNT触媒を製造するために使用されるスラリー中に含まれる可溶性成分と負の相互作用をしない大きな粒径を有する分子ふるいを使用することで、同一のコーティング層の中で、分子ふるいと白金族金属が結合するときは、分子ふるいと白金族金属との間で生じる負の相互作用が排除される。
【0028】
被覆された触媒組成物中に分散されたゼオライト粒子の確認は、すでに、当業者に公知の様々な顕微鏡、化学分析技術及び画像解析技術を使用して達成されている。例えば、被覆された物品の断面(例えば、被覆されたモノリス)は、貴金属コーティングによって担持された耐火性酸化物内で分散されたゼオライト粒子を明らかにするための適切な倍率でSEM(走査電子顕微鏡)によって画像化され得る。それぞれのゼオライト粒子の組成は、スポット分析技術、例えば、EDS(エネルギー分散分光法)によって、又は、よく知られたバルク分析技術、例えば、XRD(X線回折)によって確認することができる。ゼオライト粒子が十分に大きい場合には、簡単な測定とカウントによって、それらの大きさと数量の数量的把握をすることができる。しかし、この工程を単純化するためには、特に、粒子が小さい場合には、異なる粒径のコーティング内のゼオライトの数分布を計算するためには、精巧な画像分析コンピュータソフトウェアプログラムを利用することができる。触媒ウォッシュコート内のゼオライトの粒径分布を定量化するのに使用できるのは2,3の技術しかないが、ここに記載していない他の公知の技術も同様に適切であり、必要に応じて利用することができる。
【0029】
本発明の具体的な実施形態はベータゼオライトの使用に関するが、コンセプトは、他のゼオライト、又はマイクロ多孔性結晶質固体組成物、特に、大きな孔の開口を有する組成物(例えば、ZSM−12、SAPO−37等)にも有効である。したがって、大きな粒径を有するどんな分子ふるい物質も本発明の範囲内である。
【0030】
この開示で使用される用語に関しては、以下の定義が提供される。
【0031】
ここで使用されるように、分子ふるいは、通常、四面体型部位を含み、細孔分布を有する酸素イオンの広範囲にわたる三次元ネットワークを基礎とする物質を参照する。ゼオライトは、分子ふるいの具体的な例であり、さらに、シリコンとアルミニウムを含有している。触媒層における“非ゼオライト担体”又は“非ゼオライト系担体”についての言及は、分子ふるい又はゼオライトではなく、白金族金属、安定剤、促進剤、結合剤及び結合、分散、含浸又は他の好適な方法を通る類を受け取る物質について参照する。そのような非ゼオライト系担体の例は、限定されないが、高表面積の耐火性金属酸化物を含む。高表面積耐火性金属酸化物担体は、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ‐アルミナ、ジルコニア‐アルミナ、チタニア‐アルミナ、ランタナ‐アルミナ、ランタナ‐ジルコニア‐アルミナ、バリア‐アルミナ、バリア‐ランタナ‐アルミナ、バリア‐ランタナ‐ネオジミア‐アルミナ、セリア‐アルミナ、セリア‐シリカ‐アルミナ、ジルコニア‐シリカ、チタニア‐シリカ、及びジルコニア‐チタニアからなる群から選択される活性化された化合物を含むこともできる。
【0032】
本発明の他の態様は、触媒物品に関連する。触媒物品は、長さ、入口端及び出口端を有する担体基材と、担体上の酸化触媒物質を有し、酸化触媒物質は、上述の酸化触媒組成物を含有する。一般的に、組成物は、ウォッシュコートの形態である。
【0033】
ここで使用されるように、“触媒”の語は、反応を促進させる物質を指す。ここで使用されるように、“触媒組成物”のフレーズは、反応を促進させる2種以上の物質の組み合わせ、例えば、担体上の白金族金属とゼオライトとの組み合わせである。
【0034】
ここで使用されるように、“担体”の語は、触媒種を運び、又は担持する担体を指す。例えば、耐火性金属酸化物粒子が、白金族金属触媒種の担体であってもよい。
【0035】
ここで使用されるように、“基質”の語は、上に担体が置かれている一枚岩の(monolithic、モノリスの)物質を指し、一般的には、上に触媒種を有する多くの担体を含有するウォッシュコートの状態である。ウォッシュコートは、液体溶媒中で、担体の所定の固体含有量(例えば、20〜60質量%)を有するスラリーを製造することによって形成され、ウォッシュコートは、その後、基材上に被覆され、乾燥されることによってウォッシュコート層を提供する。
【0036】
ここで使用されるように、“ウォッシュコート” の語は、処理されるガス流が通過するのに十分多孔性である基材物質、例えば、ハニカム型部材に塗布された触媒又は他の物質を薄く、接着して被覆する技術分野におけるその一般的な意味を有する。ウォッシュコートは、ウォッシュコートを形成するために、基材に、固体粒子と液体溶媒(一般的には、水性溶媒)との混合物であるスラリーを塗布することによって基材上に配置される。一旦塗布されると、ウォッシュコートは、一般的に乾燥され、任意に焼成される。
【0037】
“触媒物品”は、所望の反応を促進させるために使用される排気ガス処理システムの一要素を指す。例えば、触媒物品は、基材上の触媒種を有するウォッシュコートを含んでもよい。
【0038】
一種以上の実施形態においては、基材は、ハニカム構造を有するセラミック又は金属である。どんな好適な基材も使用してもよく、例えば、細く平行なガス流路を有し、流体の流れがそこを通過するために流路が開いているように、ガス流路は、基材の入口面から出口面までを通って伸びているタイプのモノリスの基材を使用してもよい。
流体入口から流体出口までの基本的に直線的な通り道である流路は、流路を通って流れる気体が触媒物質に接触するように、触媒物質がウォッシュコートとして被覆された壁によって定義される。モノリス基材の流路は、薄肉の導管であり、それは、どんな好適な断面の形状及び大きさ、例えば、台形型、長方形型、正方形型、正弦型、六角形型、楕円型、円形等も可能である。そのような構造は、断面平方インチ当たり、約60〜約900、又はそれ以上の気体注入口(すなわち、セル))を有してもよい。
【0039】
セラミック基材は、どんな好適な耐火性物質、例えば、コーディエライト、コーディエライト‐α‐アルミナ、シリコンカーバイド、シリコンニトリド、ジルコンムライド、スポジュメン、アルミナ‐シリカ‐マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α‐アルミナ、アルミノシリケート、その他同種類のもので形成されていてもよい。
【0040】
本発明の実施形態の触媒担体に有用な基材は、天然の金属でもよく、一種以上の金属又は金属合金で構成されていてもよい。金属基材は、様々な形状、例えば、小球、波板又はモノリスを使用してもよい。金属基材の具体例は、耐熱性の、卑金属合金を含有し、特に、鉄が、実質的に又は重要な構成要素である。そのような合金は、一種以上のニッケル、クロム及びアルミニウムを含有してもよく、これらの金属の合計は、有利なことに、合金の少なくとも約15質量%、例えば、約10〜25質量%のクロム、約1〜8質量%のアルミニウム、及び約0〜20質量%のニッケルを含有してもよい。
【0041】
リッチ排気流を含有する“リッチガス流”は、λ<1.0であるガス流を意味する。
【0042】
“リッチ期間”は、排気ガス成分がリッチである、すなわち、λ<1.0である排気処理の期間を指す。
【0043】
“希土類金属成分”は、ランタン、セリウム、プラセオジム及びネオジムを有する元素の周期表で定義されるランタン系列の一種以上の酸化物を指す。希土類金属成分は、Ce、Pr、Nd、Eu、Nb、Sm、Yb及びLaから選択される少なくとも一種以上の希土類金属を含むことができる。
【0044】
“アルカリ土類成分”は、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)及びラジウム(Ra)を含む元素の周期表で定義される一種以上の化学元素を指す。
【0045】
“アルカリ金属成分”は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びフランシウム(Fr)を含む元素の周期表で定義される一種以上の化学元素を指す。
【0046】
ここで記載される触媒物品は、排気ガス処理システムの部分として使用してもよい。したがって、大きい粒径を有する分子ふるいが、LNT、DOC又は一体型のLNTDOC触媒物品の部分として使用される場合には、触媒物品は、ディーゼル排気ガスを除去する処理用の一種以上の追加の成分を有する一体型排気処理システムで使用することができる。例えば、排気処理システムはさらに、すすフィルタ構成要素を有してもよい。すすフィルタは、特定の機能のために触媒されてもよい。触媒物品がDOCである場合は、フィルタは、一般的にフィルタから下流に配置される。LNT触媒物品はフィルタから上流又は下流に配置してもよい。
【0047】
具体的な実施形態においては、すすフィルタは、触媒されたすすフィルタ(CSF)である。CSFは、トラップしたすすを焼き払い、又は排気ガス流の排出物を酸化するための一種以上の触媒を含有するウォッシュコート層で被覆された基材を含むことができる。一般的に、すす燃焼触媒は、すすを燃焼させるための公知の触媒である。例えば、CSFは、一種以上の高表面積の耐火性オキシド(例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、及びジルコニアアルミナ)及び/又は燃焼されていないハイドロカーボンを燃焼させるための酸化触媒(例えば、セリア‐ジルコニア)及びある程度の粒子状物質で被覆され得る。しかし、好ましくは、すす燃焼触媒は、一種以上の白金族金属(PGM)触媒(白金、パラジウム及び/又はロジウム)を含有する酸化触媒である。一種以上の実施形態においては、大きな分子ふるいは、PGMが利用されるCSFを形成するために使用される。
【0048】
一般的には、例えば、ハニカムウォールフローフィルタ、包まれ、又はパックされた繊維フィルタ、連続気泡フォーム、焼結金属フィルタ等を含む、技術において公知のどんなフィルタ基材でも、具体的に例示されたウォールフローフィルタとともに使用することができる。CSF組成物を担持するのに有用なウォールフロー基材は、基材の縦軸方向に沿って伸長する多くの細い、実質的に平行なガス流路を有する。一般的に、それぞれの流路は、基材本体の一端で遮断され、他の流路は、反対側の端面で遮断される。そのようなモノリスの担体は、断面平方インチ当たり、約700まで又はそれ以上の流路(又は“セル”)まで有してもよいが、はるかに少ない流路を使用してもよい。例えば、担体は、平方インチ当たり、約7〜600、より一般的には、約100〜400のセル(“cpsi”)を有してもよい。セルは、長方形、正方形、円形、楕円形、三角形、六角形又は他の多角形形状の断面を有することができる。ウォールフロー基材は、一般的には、0.002と0.1インチの間の壁厚を有する。具体的なウォールフロー基材は、0.002と0.015インチの間の壁厚を有する。本発明の実施形態において使用される多孔性ウォールフローフィルタは、任意に触媒され、前述の要素の壁は、その上に又はその中に含まれた一種以上の触媒物質を有し、そのようなCSF触媒組成物が前に記述されている。触媒物質は、エレメントウォールの入口側のみで、出口側のみで、入口側と出口側の両方で存在してもよく、又は、ウォールそれ自体は、全て又は部分的に触媒物質で構成されてもよい。他の実施形態においては、本発明は、エレメントの入口及び/又は出口壁上の触媒物質の一種以上のウォッシュコート層と、触媒物質の一種以上のウォッシュコート層の組み合わせの使用を含んでもよい。
【0049】
当然のことながら、LNTは、屈折体の酸化物粒子及び分子ふるい上の白金族金属に加えて組成物を含有している。一般的には、LNTは、さらに、セリウムオキシド上に担持されたアルカリ金属、例えばバリウムを有するセリア粒子を含む。
【0050】
本発明の他の側面は、ハイドロカーボン、一酸化炭素及び窒素酸化物を含む内燃機関からの排気ガスを処理するための触媒物品を製造する方法に関する。実施形態においては、その方法は、白金族金属又は耐火性金属酸化物担体上に担持された金属及び分子ふるい粒子を含有するスラリーであって、分子ふるい粒子の90%を超える粒子が1μmより大きい粒径を有する分子ふるいを含有するスラリーを形成する工程を有する。
【0051】
さらに、本発明の他の実施形態は、ここで記載された触媒物品上に内燃機関からの排気ガスを流す工程を有する内燃機関からの排気ガスを処理する方法に関する。具体的な実施形態においては、内燃機関は上記で定義されたリーンバーンエンジンである。
【0052】
本明細書の全体を通して、実施形態に関連して記載された具体的な特徴、構造、物質又は特性を意味する“一実施形態”、“特定の実施形態”、“一以上の実施形態”又は、“実施形態”への言及は、少なくとも本発明の一実施形態に含まれる。したがって、本発明の全体にわたる様々な場所における、例えば、“一以上の実施形態”、“特定の実施形態”、“一実施形態”又は“実施形態”のフレーズの出現は、必ずしも、本発明における同一の実施形態について言及しているのではない。さらに、具体的な特徴、構造、物質又は特性は、一以上の実施形態における任意の好適な方法で組み合わせてもよい。上記方法の記載の順序は、限定されるものではなく、方法は、記載された操作を順序を変えるか、又は省略又は追加して使用してもよい。
【実施例】
【0053】
以下の非限定的な例によって、典型的な分子ふるい物質、ベータゼオライトに基づく本発明の実施形態の原理を説明する。
【0054】
実施例1−比較例の触媒Aの製造
BET表面積が約150m/g、細孔容積が約0.85cc/g、平均細孔半径が約100Åである高表面積ガンマアルミナを、標準的な初期湿潤法(incipient wetness techniques)を使用して硝酸パラジウム溶液に含浸した。厚いペーストを形成するための追加のDI水(脱イオン水)を加えた後に、白金“A”溶液を加えた。さらに、DI水で希釈し、硝酸を加えることでpHを4に減少させた後に、生成したスラリーを技術において公知の方法を使用して粒径90%を約20μm未満に粉砕した。商業的サプライヤから入手した高いシリカ対アルミナ比を有するベータゼオライト(ゼオライトA)を、その後、混合物中に分散させる。最後のスラリーを、この技術分野において公知の堆積方法を使用して、1“3による直径”の長いコージェライト基材上に被覆させる。被覆されたモノリスを、120℃で乾燥させ、450℃で空気中で1時間焼成させる。焼成後の合計ウォッシュコート堆積量は、ベータゼオライト0.5g/in3(0.5g/1.6387× 10−5)を含む約2.0g/in3(2.0g/1.6387× 10−5)であった。白金族金属の堆積物の合計は、Pt/Pd質量比が2:1である80g/ft(80g/2.8317×10−2)である。
【0055】
実施例2−触媒Bの製造
ゼオライトAのように名目上同じ組成であるが、異なる粒径分布を有する同一のサプライヤから得られる高いシリカ:アルミナ比のベータゼオライトを使用した(ゼオライトB)ことを除き、触媒Bを触媒Aと同様に製造した。
触媒Bを、触媒Aと同様に製造した。ゼオライトAのための、希釈水溶性スラリー中のレーザー光散乱法(Sympatec Quixel製、HD23型)による粒径測定では、以下の粒子分布:14%<1μm及び52%<2μm(d50=2μm)を示した。対照的に、ゼオライトBは、以下の粒子分布を有する:4%<1μm及び15%<2μm(d50=5μm)。明らかに、ゼオライトAは、2μm未満の小さい粒子のより大きな粒子を有し、実際には、非常に多くのサブミクロン粒子を有していた(図.1参照)。異なる粒径のゼオライトパウダーA及びBを示す比較のSEM写真は、図2及び3で示す。
【0056】
実施例3−触媒Cの製造
10%のセリア結合剤(ゼオライトC)を使用するより大きな粒径にする噴霧乾燥による凝集後であるが、同一の、高いシリカ対アルミナ比を有するベータゼオライト(ゼオライトA)を使用して触媒Cを触媒Aと同様に製造した。ゼオライトCのための、希釈水溶性スラリー中のレーザー光散乱法(Sympatec Quixel製、HD23型)による粒径測定では、以下の粒子分布:0.7%<1μm、1.5%<2μm、4.1%<5μm及び10%<11μm(d50=22μm)を示した。ゼオライトA、B及びCのための粒径分布プロットのまとめを図4に示す。ゼオライトA及びBと比較して、ゼオライトCの粒径は非常に大きい。噴霧乾燥されたゼオライト粉末Cの大きな粒径を示すSEM写真を図5に示す。
【0057】
実施例4:触媒Dの製造
触媒Dを、ゼオライトBとCの間の粒径分布を有する、異なる高いシリカ対アルミナの比を有するベータゼオライト(ゼオライトD)を使用した点を除いて、触媒Aと同様に製造した。ゼオライトDのための、希釈水溶性スラリー中のレーザー光散乱法(Sympatec Quixel製、HD23型)による粒径測定では、以下の粒子分布:0.5%<1μm、12%<3μm、及び27%<4.5μm(d50=7μm)を示した。ゼオライトB、C及びDのための粒径分布プロットのまとめを図6に示す。ゼオライトDは、ゼオライトBよりも大きい粒径分布を有するが、ゼオライトCより小さい。
【0058】
実施例5:ウォッシュコートされた触媒A、C及びDのSEM画像
SEM画像は、ウォッシュコートされた触媒A,C及びDから得られた(図7〜9)。被覆されたコアをエポキシ中に固定し、その後、モノリスを通るガス流の方向に対して垂直に切断することで、断面に、ウォッシュコートされた導管を露出させた。1μmより小さい粒子の大きなフラクションを有するゼオライトを使用した比較触媒Aのために、ウォッシュコート中の個々のゼオライト粒子を特定することは困難である。しかし、噴霧乾燥されたゼオライトを使用した触媒D、及び、特に触媒Cにとって、ゼオライト粒子がはっきりと見える(図8及び9)。
【0059】
実施例6:比較触媒Eの製造
触媒Eを、2種の異なるスラリーを使用して2つの異なる層において触媒を被覆することを除いて実施例1で記載された工程に類似する工程によって製造した。トップ層を被覆するために使用されるスラリーは、Pt、Pd、アルミナ及びゼオライトA、触媒Aを製造するために使用される同一の小さい粒径のゼオライトを含有していたのに対し、ボトム層を被覆するために使用されるスラリーは、Pt、Pd及びアルミナのみ含んでいた。ボトム層における白金族金属の堆積量は、2:1のPt/Pd質量比で、53g/ft(53g/2.8317×10−2)であった。同一の2:1のPt/Pd質量比がゼオライトともにトップ層で使用されたが、27g/ft(27g/2.8317×10−2)の低い堆積量である。合計白金族金属堆積量は2:1のPt/Pd質量比を有する80g/ft(80g/2.8317×10−2)であった。焼成後の合計ウォッシュコート堆積量は、ベータゼオライトをトップ層に0.5g/in3(0.5g/1.6387× 10−5)含む約2.6g/in3(2.6g/1.6387× 10−5)である。
【0060】
実施例7:触媒Fの製造
触媒Fを噴霧乾燥ゼオライトCをゼオライトAの代わりに使用したことを除いて触媒Eと同様に製造した。
【0061】
実施例8−触媒のエージング(aging)及び試験
実施例1〜7で製造された被覆されたPt/Pd触媒モノリス組成物を以下のように試験した。最初に、被覆されたモノリスを25時間750℃でディーゼルエンジン排気流中で老化(age)させた。排気流の温度を、上流のバーナーDOC上で噴射されたディーゼル燃料を燃焼させることで750℃まで上昇させた。エージング後に、徐々に温度が上昇する間に、小さな試料の上をシミュレートされたディーゼルエンジン排気を通過させることのできる実験室用の反応システムを使用して、被覆されたモノリスについて一酸化炭素(CO)の着火(LO)のための評価をした。ガス流組成物は、COを1600ppm、C1基(basis)上の合計炭化水素を550ppm(プロピレン250ppm、デカン150ppm及びトルエン150ppm)、O10%、NO100ppm、CO4.5%、HO4%、及び平衡窒素を含有する。試験の試料を15℃/分のランプ率で315℃にランピングする前に、100℃で流れるガスの下で、2〜3分間平衡させた。総ガス流空間速度は、70000h−1であった。触媒アウトレット(outlet)CO濃度を、フーリエ変換赤外(FTIR)分析器を使用して測定し、CO変換を温度の関数として計算した。発生したCOの50%変換時の温度を表1の触媒A〜Fにまとめた。
750℃のエンジンエージングの後、小さな粒径のゼオライトAを使用した単層の比較触媒Aを参照するためのCOLO温度は、全て、大きな粒径を有するゼオライトを使用した触媒B、C及びDよりも6〜9℃高かった。同様に、小さな粒径のゼオライトAを使用した2重層の比較触媒Eを参照するためのCOLO温度は、噴霧乾燥ゼオライトCを使用した触媒Fよりも4℃高かった。明らかに、小さな粒径を有するベータゼオライトの使用は、非常に高いCOLO温度と悪いパフォーマンスという結果になった。
【0062】
【表1】
【0063】
実施例9−新しいヨーロッパのドライブサイクル(NEDC)車両をシミュレートする実験反応器を使用する触媒評価
触媒A、C、E及びFを、また、車両の過渡挙動をシミュレートするために設計された実験反応器上でCO及びHC変換性能のために評価した。より具体的には、反応器は、特定の認可ドライブサイクルの下で運転する時のディーゼル車両の排気ガス流、排出量及び温度をシミュレートするために設計された。表2は、新しい排出ドライブサイクル(NEDC)を使用して試験したときのそれぞれの触媒のためのCO及びHC排出量をまとめている。総CO及びHC排出量は、それぞれ、1.03g/km/L‐cat及び0.27g/km/L‐catであったのに対し、この試験のための平均NEDC排気温度は163℃であった。750℃のエンジンエージングの後、噴霧乾燥された(大きい粒径の)ゼオライトCで製造された単層の触媒CのためのCO及びHC変換は、小さな粒径のゼオライトAで製造された比較触媒AのCO及びHC変換よりも少なくとも5%高かった。同様に、ゼオライトCを含む二重層の触媒FのためのCO及びHC変換は、ゼオライトAで製造された比較触媒Eよりも4%高かった。明らかに、大きな粒径を有するベータゼオライトの使用は、非常に高い触媒能力を示す結果となった。
【0064】
【表2】
【0065】
上記の記述は、説明的なものであって、制限的なものとなることを意図されていないことを理解されるべきである。多くの他の実施形態は、当業者にとって上記の記載を見れば明らかである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって権利化されているものと同等の全範囲のものとともに、添付された特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9