(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の電力量取得装置、電力量取得方法及び電力量取得プログラムを、図面を参照して説明する。
【0008】
まず、本実施形態における電力量取得システムの概略について説明する。
図1は、本実施形態における電力量取得装置を備える電力量取得システムの構成例を示す図である。
図1に示すように、電力量取得システム1は、配電系統2と、制御コントローラ3と、電力量取得装置4と、受電設備5と、配電設備6とを備える。電力量取得システム1は、例えば、上下水道プラントにおける受電設備及び配電設備から電力値、電流値及び電圧値等を取得して、取得した電力値、電流値及び電圧値等に基づいて、プラント内の各設備における電力量を取得する。
【0009】
配電系統2は、電力会社の所有する配電設備であって、例えば6600Vの高圧の交流電力を配電する。
【0010】
制御コントローラ3は、
図1には示していないが、プラント内の各設備と有線又は無線による通信可能な構成であり、各設備の動作制御や、各設備の状態に関する情報(各設備における電力量、電圧値及び電流値等の実測値の情報)の取得・管理を行う。制御コントローラ3は、測定機器からの実測値がパルス信号で入力される場合には、そのパルス信号を実測値に変換する機能を有する。制御コントローラ3は、電力量取得装置4と通信可能に接続されており、各設備から取得した実測値に関する情報等を電力量取得装置4へ出力する。
【0011】
電力量取得装置4は、制御コントローラ3から、プラント内の各設備における電力量、電圧値及び電流値等の実測値を取得する。電力量取得装置4は、取得した実測値に基づいて、各設備の電力量を推定することで、各設備の電力量を取得する。
【0012】
受電設備5は、配電系統2からの高圧の交流電力を受電して、プラント内の各設備に対応する例えば420Vの電圧に降圧して出力する。受電設備5は、第1の計器用変圧器10と、第1の遮断器11と、第1の変流器12と、電力量計13と、第1の変圧器14とを備える。
【0013】
第1の計器用変圧器10は、配電系統2からの6600Vの電圧を電力量計13で計測可能な例えば110Vの電圧に変換する。第1の計器用変圧器10の一次側端子は、配電系統2と電気的に接続されている。第1の計器用変圧器10の二次側端子は、電力量計13の入力端子と電気的に接続されている。
【0014】
第1の遮断器11は、配電系統2から第1の変圧器14に向かう電路の電流を遮断する遮断器であり、例えば真空遮断器(VCB)を用いる。第1の遮断器11の入力端子は、配電系統2及び第1の計器用変圧器10の一次側端子と電気的に接続されている。第1の遮断器11の出力端子は、第1の変流器12の一次側入力端子と電気的に接続されている。
【0015】
第1の変流器12は、第1の遮断器11を流れる電流の値を電力量計13で計測可能な電流値に変換する。第1の変流器12の一次側入力端子は、第1の遮断器11の出力端子と電気的に接続されている。第1の変流器12の一次側出力端子は、第1の変圧器14の一次側端子と電気的に接続されている。第1の変流器12の二次側端子は、電力量計13に電気的に接続されている。
【0016】
電力量計13は、第1の計器用変圧器10からの電圧を測定した電圧値と、第1の変流器12からの電流を測定した電流値とから、電力量(kWh)を計測し出力する。電力量計13は、第1の計器用変圧器10の二次側端子と電気的に接続される第1入力端子と、第1の変流器12の二次側端子と電気的に接続される第2入力端子とを備える。電力量計13が出力した電力量は、受電電力量と呼ばれるものであり、プラント内の全設備で消費される電力量を示す。電力量計13が出力した電力量は、制御コントローラ3に実測値の一つとして伝送される。
【0017】
第1の変圧器14は、配電系統2からの6600Vの電圧をプラント内の設備に対応する420Vの電圧に変換する。第1の変圧器14の一次側端子は、第1の遮断器11の出力端子と電気的に接続されている。第1の変圧器14の二次側端子は、配電設備6の入力端子と電気的に接続されている。
【0018】
配電設備6は、プラント内の複数の電動機7、複数の照明機器8及び複数の照明機器9を含む各設備に配電を行う。配電設備6は、第2の計器用変圧器15−1、15−2と、第2の遮断器16−1、16−2、16−3と、第2の変流器17−1、17−2、17−3と、電力量計18と、第3の遮断器19と、第3の変流器20と、電流計21と、電圧計22と、電流計23−1、23−2と、第2の変圧器24−1、24−2とを備える。
【0019】
第2の計器用変圧器15−1、15−2は、第1の変圧器14から入力される420Vの電圧を電力量計18及び電圧計22で計測可能な例えば110Vの電圧に変換する。第2の計器用変圧器15−1、15−2の一次側端子は、第1の変圧器14の二次側端子と電気的に接続されている。第2の計器用変圧器15−1の二次側端子は、電力量計18の入力端子と電気的に接続されている。第2の計器用変圧器15−2の二次側端子は、電圧計22の入力端子と電気的に接続されている。
【0020】
第2の遮断器16−1、16−2、16−3は、第1の変圧器14から各設備に向かう電路の電流を遮断する遮断器であり、例えば真空遮断器(VCB)を用いる。第2の遮断器16−1、16−2、16−3の入力端子は、第1の変圧器14の二次側端子と電気的に接続されている。第2の遮断器16−1、16−2、16−3の出力端子は、それぞれ第2の変流器17−1、17−2、17−3の一次側入力端子と電気的に接続されている。
【0021】
第2の変流器17−1、17−2、17−3は、それぞれ第2の遮断器16−1、16−2、16−3を流れる電流の値を電力量計18及び電流計23−1、23−2で計測可能な電流値に変換する。第2の変流器17−1、17−2、17−3の一次側入力端子は、それぞれ第2の遮断器16−1、16−2、16−3の出力端子と電気的に接続されている。第2の変流器17−1の一次側出力端子は、第3の遮断器19の入力端子と電気的に接続されている。第2の変流器17−1の二次側端子は、電力量計18に電気的に接続されている。第2の変流器17−2、17−3の一次側出力端子は、それぞれ第2の変圧器24−1、24−2の一次側端子と電気的に接続されている。第2の変流器17−2、17−3の二次側端子は、それぞれ電流計23−1、23−2の入力端子に電気的に接続されている。
【0022】
電力量計18は、第2の計器用変圧器15−1からの電圧を測定した電圧値と、第2の変流器17−1からの電流を測定した電流値とから、電力量を計測し出力する。電力量計18は、第2の計器用変圧器15−1の二次側端子と電気的に接続される第1入力端子と、第2の変流器17−1の二次側端子と電気的に接続される第2入力端子とを備える。電力量計18が出力する電力量は、全ての電動機7で消費される電力量を示す。
【0023】
第3の遮断器19は、第2の遮断器16−1から電動機7に向かう電路の電流を遮断する遮断器であり、例えば真空遮断器(VCB)を用いる。第3の遮断器19は、複数の電動機7に対応して設置されている。第3の遮断器19の入力端子は、第2の変流器17−1の二次側端子と電気的に接続されている。複数の第3の遮断器19の出力端子は、それぞれ複数の第3の変流器20の一次側入力端子と電気的に接続されている。
【0024】
第3の変流器20は、第3の遮断器19を流れる電流の値を電流計21で計測可能な電流値に変換する。第3の変流器20の一次側入力端子は、それぞれ第3の遮断器19の出力端子と電気的に接続されている。第3の変流器20の一次側出力端子は、電動機7の入力端子と電気的に接続されている。第3の変流器20の二次側端子は、電流計21に電気的に接続されている。
【0025】
電流計21は、第3の変流器20からの電流を測定した電流値(以下、電動機電流値という)を出力する。電流計21が出力する電動機電流値は、各電動機7に流れる電流値を示す。電圧計22は、第2の計器用変圧器15−2で変圧された電圧値を測定して、電圧値を出力する。この電圧計22が出力する電圧値は、第2の変圧器24−1の一次電圧値となる。電流計23−1、23−2は、第2の変流器17−2、17−3の二次側端子からの電流を測定した電流値(以下、変圧器電流値という)を出力する。この電流計23−1、23−2が出力する電流値は、それぞれ第2の変圧器24−1、24−2の一次電流値となる。
【0026】
第2の変圧器24−1、24−2は、第1の変圧器14から第2の遮断器16−2、16−3及び第2の変流器17−2、17−3を介して入力される420Vの電圧を照明機器8及び照明機器9に印加可能な例えば105Vの電圧に変換する。
図1に示すとおり、第2の変圧器24−1に対しては、電圧計22により一次電圧値を取得できるが、第2の変圧器24−2に対しては、電圧計が設置されていないので、一次電圧値を取得できない。このような場合でも、本実施形態の電力量取得装置4は、第2の変圧器24−2の変圧器負荷を取得することができる。
【0027】
電力量計18が出力した電力量、電流計21が出力した電流値、電圧計22が出力した電圧値及び電流計23−1、23−2が出力した電流値は、制御コントローラ3に実測値として伝送される。
【0028】
次に、本実施形態における電力量取得装置4の構成例について説明する。
図2は、本実施形態の電力量取得装置4の構成例を示す図である。
図2に示すとおり、電力量取得装置4は、電動機電力量取得部41と、負荷電力量取得部42と、受電電力量取得部43と、設備電力量取得部44と、データ管理部45と、電力量情報格納部46と、表示制御部47とを備える。
【0029】
電力量取得装置4は、マウスやキーボード等の入力部48及び液晶ディスプレイ等の表示部49が接続されている。
図2には示していないが、電力量取得装置4は、制御コントローラ3と通信する通信機能と、入力部48からの入力信号を処理する入力処理機能とを備える。なお、電力量取得装置4は、入力部48と表示部49とが一体となったタッチパネルと接続される構成であってもよい。
図2では、電力量取得装置4は、入力部48及び表示部49を備えていないが、入力部48及び表示部49を備える構成であってもよい。
【0030】
電動機電力量取得部41は、電流計21で計測した電流値を制御コントローラ3経由で取得する。電動機電力量取得部41は、各電動機7の有効電力P3n[kW]又は有効電力P1n[kW]を、取得した電流計21で計測した電流値を用いて、以下の(式1)又は(式2)により求める。
P3n=電流値I3n×公称電圧×√3×力率PF3n … (式1)
P1n=電流値I1n×公称電圧×力率PF1n … (式2)
上記式において、記号nは自然数であり回路番号または機器番号とし、重複がないようにする。電流値I3n又は電流値I1nは、電流計21で測定した電流値である。公称電圧は、第1の変圧器14の出力側の線間電圧である。力率PF3n又は力率PF1nは、電動機7の力率であり固定値とする。また、「√3」は、3の平方根を示すものであり、実際には√の横線が数字の3の上まで延びているものとする。
【0031】
電動機電力量取得部41は、電動機7が3相誘導電動機の場合には(式1)を用いて有効電力P3n[kW]を求め、電動機7が単相誘導電動機の場合には(式2)を用いて有効電力P1n[kW]を求める。
(式1)又は(式2)において、公称電圧を用いた理由は以下の通りである。第1の変圧器14の定格二次電圧を用いたとすると、電圧降下の影響で過大に有効電力を算出してしまうという問題がある。第1の変圧器14の負荷定格電圧を用いたとすると、過少に有効電力を算出してしまうという問題がある。そこで、公称電圧を使用することにより、現実の値と差異が生じるが、後述するように設備電力量取得部44において、受電電力量に基づいて各設備における電力量を調整することで対応する。公称電圧は、例えば事前に測定等行うことで求めた固定値である。
【0032】
負荷電力量取得部42は、第2の変圧器24−1の一次電流値と一次電圧値とから求めた変圧器負荷を、照明機器8の有効電力として求める。これは、照明機器8等を含む電圧105Vで稼働する多数の負荷は、有効電力を個別に求めることは困難である。よって、照明機器8等を含む負荷の有効電力として、第2の変圧器24−1の変圧器負荷を用いる。第2の変圧器24−1の一次電流値は、電流計23−1から得られる。第2の変圧器24−1の一次電圧値は、電圧計22から得られる。
【0033】
上述したように、第2の変圧器24−2の一次電流値は、電流計23−2から得られるが、第2の変圧器24−2の一次電圧値は得ることができない。この場合には、負荷電力量取得部42は、上位(高圧側)の電圧値を用いて第2の変圧器24−2の一次電圧値を推定する。負荷電力量取得部42は、電力量計13で得た電力値(6600V)に第1の変圧器14の変圧比を乗算することで、第2の変圧器24−2の一次電圧値を推定する。負荷電力量取得部42は、電流計23−2から得た第2の変圧器24−2の一次電流値と、推定した一次電圧値とから第2の変圧器24−2の変圧器負荷を求め、照明機器9の有効電力とする。
【0034】
負荷電力量取得部42は、第2の変圧器24−1の一次電圧値を用いて変圧器負荷を推定する際に、第1の変圧器14における2次電圧の位相を考慮する。第2の変圧器24−1の一次電圧のさらに高圧側の電圧は、第1の変圧器14を介するため、それぞれの電圧の位相およびスカラーが異なる。特に電圧の位相は、変圧器結線が星形−三角結線(スター・デルタ結線)であるか、三角−星形結線(デルタ・スター結線)であるかによって異なる。スター・デルタ結線の場合は、二次側電圧は一次側よりも30度遅れ位相となる。デルタ・スター結線の場合は、二次側電圧は一次側よりも30度進み位相になる。すなわち、負荷電力量取得部42は、スター・デルタ結線である第1の変圧器14の一次側電圧を二次側電圧に換算するには、二次側電圧の位相を30度遅らせる。この場合の第2の変圧器24−1の一次電圧の位相は、30度位相を遅らせた第1の変圧器14の2次側電圧の位相と同じとする。負荷電力量取得部42は、デルタ・スター結線である第1の変圧器14の一次側電圧を二次側電圧に換算するには、二次側電圧の位相を30度進ませる。この場合の第2の変圧器24−1の一次電圧の位相は、30度位相を進ませた第1の変圧器14の2次側電圧の位相と同じとする。
【0035】
ここで、第2の変圧器24−2の一次電流値を測定する電流計23−2も無い場合について説明する。利用者は、第2の変圧器24−2の一次電流値を手持ちの電流計で何度か測定して測定値を得て、入力部48から測定値を入力する。負荷電力量取得部42は、入力された測定値から第2の変圧器24−2の負荷率を求めて、この負荷率に基づいて照明機器9の有効電力を推定する。ただし、この推定方法は、推定した有効電力の精度が上述した推定方法に比べて低下する可能性が高い。
【0036】
電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、上述した有効電力を求める処理を所定の周期(例えば、0.5秒〜100秒の範囲内の周期)で行う。電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、制御コントローラ3を介して設備における実測値を所定の周期で取得する。電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、所定の周期で求めた有効電力の30分間の平均である平均有効電力を求め、求めた平均有効電力に基づいて各設備の電力量(kWh)を取得する。電動機電力量取得部41は、電動機7の電力量である電動機電力量を取得する。負荷電力量取得部42は、第2の変圧器24−1、24−2の変圧器負荷に基づいて照明機器8及び照明機器9の電力量である負荷電力量を取得する。
【0037】
平均を求める30分の開始時刻と終了時刻は、例えば毎時0分〜30分、30分〜60分とする。また、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、電動機7、照明機器8及び照明機器9等の負荷が稼働しているか否かの情報に基づいて、上記有効電力の推定処理を行っても良い。具体的には、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、電動機7、照明機器8及び照明機器9等の負荷が稼働している間のみ、上記有効電力の推定処理を行う。ただし、この処理は、制御コントローラ3は、電動機7、照明機器8及び照明機器9等の設備(負荷)が稼働しているか否かの情報を取得する機能を有し、かつ、電力量取得装置4は、制御コントローラ3から設備が稼働しているか否かの情報を取得する機能を有することが前提となる。また、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、設備が稼働しているか否かを、設備に流れる電流値に基づいて、所定の閾値以上の電流値の場合に稼働中であると判断する構成としてもよい。
【0038】
受電電力量取得部43は、電力量計13で計測された受電電力量を制御コントローラ3から取得する。電力量計13は、制御コントローラ3からの制御に応じて、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42と同じ周期及び同じタイミングで受電電力量を出力する。
【0039】
設備電力量取得部44は、総電力量取得部44aと、差分電力量取得部44bと、調整部44cとを備える。総電力量取得部44aは、電動機電力量取得部41が取得した各電動機7の電動機電力量と、負荷電力量取得部42が取得した各設備の負荷電力量とを加算して総電力量を求める。差分電力量取得部44bは、求めた総電力量と、受電電力量取得部43が取得した受電電力量とを比較して、その差分値を取得する。調整部44cは、差分電力量取得部44bが取得した差分値が小さくなるように、総電力量を求める際に電動機電力量及び負荷電力量を調整して、調整後電動機電力量及び調整後負荷電力量を取得する。受電設備5において計測される受電電力量は、電力量計13により計測された正確な値である。設備電力量取得部44は、受電電力量に基づいた、より精度の高い各設備の電力量を取得することができる。なお、設備電力量取得部44における各設備の電力量の調整処理について詳細を後述する。
【0040】
データ管理部45は、電動機電力量取得部41、負荷電力量取得部42及び受電電力量取得部43が取得した電動機電力量、負荷電力量及び受電電力量に関する情報と、設備電力量取得部44が取得した調整後の調整後電動機電力量及び調整後負荷電力量に関する情報と、受電電力量とを、時刻情報に関連付けて電力量情報格納部46に格納させて、電力量情報格納部46に格納させた電力量情報の管理を行う。
【0041】
電力量情報格納部46は、電動機電力量取得部41、負荷電力量取得部42及び受電電力量取得部43が取得した電動機電力量、負荷電力量及び受電電力量に関する情報と、設備電力量取得部44が取得した調整後の調整後電動機電力量及び調整後負荷電力量に関する情報と、受電電力量と時刻情報に関連付けて格納する。表示制御部47は、データ管理部45が電力量情報格納部46から読み出した電力量に関する時系列の情報を表示部49に表示させる。これにより、利用者は、表示部49に表示された各設備の電力量の時間的な推移を把握し、節電対策等を検討することができる。
【0042】
設備電力量取得部44における各設備の電力量の調整処理の詳細について説明する。
調整部44cは、差分電力量取得部が取得した差分値を、按分係数及び精度係数を用いて電動機電力量及び負荷電力量に対して振り分ける処理により、設備毎の電動機電力量及び負荷電力量の調整を行う。ここで、設備毎とは、1つの設備毎に限られるものではなく、配電の構成や電力量の観点から複数の設備をまとめたもの毎であってもよい。
【0043】
按分係数は、設備毎に求めた電力量のデータ群を百分率に変換した係数である。設備毎の按分係数の総和は、100(%)である。按分係数は、小数点第一位までを有効数字とする。精度係数は、設備毎に求めた電力量の精度を定める係数である。精度係数は、例えば最大値を5として1〜5までの5段階の自然数である。精度係数は、例えば利用者が入力部48から入力する固定値である。
【0044】
各設備の有効電力として無視できないのは、設備毎に発生する損失である。この損失は常に発生するものと仮定し、利用者は、例えば総電力量の5%〜10%くらいの値を固定値の損失固定値(kWh単位)として、入力部48から設定する。
【0045】
設備電力量取得部44は、具体的には、以下の(1)〜(9)の設定又は処理を行うことで、設備毎の電力量を調整して、調整後の設備毎の調整後電動機電力量及び調整後負荷電力量を取得する。
(1)差分電力量取得部44bは、受電電力量から損失固定値を差し引いた値を、第1の電力量A[kWh]として算出する。
(2)差分電力量取得部44bは、第1の電力量Aから総電力量を差し引いた値を第2の電力量(第1の差分値)B[kWh]として算出する。
【0046】
(3)調整部44cは、以下の一覧に示すように精度係数を百分率に変換する。
精度係数1:100±40%
精度係数2:100±30%
精度係数3:100±20%
精度係数4:100±10%
精度係数5:100%
【0047】
精度係数5の場合は、推定した電力量が信頼性ある場合であり、調整部44cは、100%に変換する。例えば、実測した電流値を設備毎に計測している場合が精度係数5とする。例えば、複数の設備をまとめて電流値を計測している場合を精度係数4とする。例えば、変圧器の一次電流値と一時電圧値を計測して電力量を求めている場合は精度係数3とする。例えば、変圧器の一次電流値と推定した一時電圧値とから電力量を求めている場合は精度係数2とする。例えば、変圧器の負荷率から電力量を求めている場合は精度係数1とする。例えば、精度係数1の場合は、調整部44cは、推定した電力量が信頼性に欠ける場合であり100±40%に変換する。ここで、±の符号は、総電力量が受電電力量よりも小さい場合が+符号をとり、大きい場合には−符号をとる。
【0048】
(4)調整部44cは、按分係数に(3)で変換した百分率の精度係数を乗算して、設備毎の合成係数φを算出する。なお、設備毎の按分係数の初期値は、例えば設備毎の電力量の総電力量に対する割合等を考慮して、利用者が適当に設定する。
(5)差分電力量取得部44bは、第2の電力量(第1の差分値)Bに(4)で調整部44cが取得した合成係数φを乗算して、設備毎の差分電力量C[kWh]を求める。
【0049】
(6)総電力量取得部44aは、総電力量に(5)で差分電力量取得部44bが取得した設備毎の差分電力量Cを加減演算し(通常は加算演算)、調整後の総電力量D[kWh](以下、調整後総電力量Dという)を求める。
(7)差分電力量取得部44bは、受電電力量から調整後総電力量Dを差し引き差分値(以下、第2の差分値という)を求める。調整部44cは、その第2の差分値が所定の閾値以下であるか否かを判断する。この所定の閾値は、受電電力量と調整後総電力量Dとがほぼ等しい値であるか否かを判断する閾値であり、例えば、1.0[kWh]である。
【0050】
(8)調整部44cは、第2の差分値が所定の閾値以下でなければ、按分係数を調整して(4)の処理にもどる。すなわち、設備電力量取得部44は、第2の差分値が所定の閾値以下となるまで(すなわち、調整後総電力量Dが受電電力量にほぼ等しくなるまで)(4)〜(7)の処理を繰り返す。調整部44cは、例えば、精度係数の高い(精度の良い)設備の電力量に対応する按分係数をより大きな値とする調整を行う。
【0051】
(9)調整部44cは、調整後総電力量Dが受電電力量にほぼ等しい場合には、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42が取得した電動機電力量及び変圧電力量に対して、(5)で求めた設備毎の差分電力量Cを加算して、調整後電動機電力量及び調整後負荷電力量を取得する。
【0052】
次に、本実施形態における電力量取得装置4の動作について説明する。
図3は、本実施形態の電力量取得装置4の動作例を示すフロー図である。
図3に示すように、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、制御コントローラ3を介して各設備における電流値等の実測値を取得する(ステップS31)。受電電力量取得部43は、電力量計13から制御コントローラ3を介して受電電力量を取得する。電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42は、取得した実測値等に基づいて各設備の有効電力を求め、求めた各設備の有効電力に基づいて推定した各設備の電力量を取得する(ステップS32)。電動機電力量取得部41は、電動機7の電力量である電動機電力量を取得する。負荷電力量取得部42は、変圧器に接続されている設備の電力量である負荷電力量を取得する。
【0053】
総電力量取得部44aは、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42が取得した電動機電力量及び負荷電力量を加算して総電力量を求める(ステップS33)。差分電力量取得部44bは、求めた総電力量と、受電電力量取得部43が取得した受電電力量とに基づいて、各設備の電力量を調整するための差分電力量Cを算出する(ステップS34)。調整部44cは、電動機電力量取得部41及び負荷電力量取得部42が取得した設備毎の電動機電力量及び負荷電力量に対して、算出した設備毎の差分電力量Cを加算して、調整後電動機電力量及び調整後負荷電力量を取得する(ステップS35)。
【0054】
次に、
図3に示したステップS34における、設備電力量取得部44が総電力量及び受電電力量に基づいて差分電力量Cを算出する処理のフローについて説明する。
図4は、
図3に示したステップS34における、設備電力量取得部44が総電力量及び受電電力量に基づいて差分電力量Cを算出する処理のフロー図である。
図4に示すように、差分電力量取得部44bは、受電電力量と損失固定値との差である第1の電力量Aを求める(ステップS41)。
【0055】
差分電力量取得部44bは、第1の電力量Aと総電力量との差である第2の電力量Bを求める(ステップS42)。調整部44cは、按分係数に百分率に変換した精度係数を乗算して、設備毎の合成係数φを求める(ステップS43)。差分電力量取得部44bは、第2の電力量Bに調整部44cが取得した合成係数φを乗算して、設備毎の差分電力量Cを求める(ステップS44)。
【0056】
総電力量取得部44aは、総電力量に設備毎の差分電力量Cを加算演算し、調整後総電力量Dを求める(ステップS45)。差分電力量取得部44bは、受電電力量と調整後総電力量Dとの差である第2の差分値を取得する。調整部44cは、第2の差分値が所定の閾値以下であるか否かを判断する(ステップS46)。ここで、受電電力量と調整後総電力量Dとの差である第2の差分値が所定の閾値以下ではないと判断した場合(ステップS45のNO)には、調整部44cは、按分係数を調整する(ステップS47)。受電電力量と調整後総電力量Dとの差である第2の差分値が所定の閾値以下であると判断した場合(ステップS45のYES)には、調整部44cは、設備毎の差分電力量Cを確定して(ステップS48)、ステップS34の処理を終了する。
【0057】
以上の処理により、電力量取得装置4は、各設備の電力量を取得することができ、表示部49に取得した各設備の電力量に関する情報を表示することができる。これにより、利用者は、各設備の電力量を把握することができる。利用者は、正しく電力需要を把握することで、電力調達において電力費低減を実現するための情報を得ることができる。
【0058】
本実施形態の電力量取得システム1は、簡易に電力量を取得することができる。ここで、“簡易”とは、設備に対して、電力量計や電力トランスデューサといった新たな機器を追加する工事及び配線などを含めた既存設備の改造する工事を行わないことを含む。
【0059】
図1に示したプラントの設備及び設備に対する配電の構成は一例であり、設備の数や種類と、各設備に対する配電の構成は、利用者が任意に変更することができる。上記実施形態において、電力量取得装置4内の各機能部は、ソフトウェア機能部であるものとしたが、LSI等のハードウェア機能部であってもよい。上記実施形態において、電動機電力量取得部41は、電動機7の電力量を取得する構成としたが、これに限定されるものではない。電動機電力量取得部41は、電動機7と同様に個々で消費する電力量が大きい他の種類の設備の電力量を取得するように構成してもよい。
【0060】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、各設備からの電流値及び電圧値等の実測値に基づいて、簡易に設備毎の電力量を取得することを可能とする。
【0061】
また、以上に説明した電力量取得装置4内の機能をソフトウェアによって実現する場合は、それらの機能を実現するためのプログラムを、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録し、そのプログラムをコンピューターシステムに読み込ませて実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピューターシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD(Compact Disk)−ROM等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピューターシステム内部の揮発性メモリー(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0062】
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピューターシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピューターシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。