【実施例】
【0068】
比較実施例1
この実施例は、その調製法が以下に表示される、本発明に準拠しない種々のスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0069】
a)本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタの製造
本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタは、同一の、即ち同じ性質及び同じ塩基重量の、正極及び負極を用いて調製され、前記電極はエッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスのYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準とした質量パーセントで表され、
前記電極は、厚さ158μm(コレクタを含む)及び活物質質量21.4mgを有する。
【0070】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液はアセトニトリル中のNaPF
6(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0071】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。容積及び重量当たりの容量は、放電曲線上に線形回帰を適用するため、2.43Vと1.35Vの間で、0.3A/g(1グラム電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0072】
b)本発明に準拠しない第2のスーパーキャパシタの製造
この実施形態では、様式a)の電解液がアセトニトリル中の1M NaClO
4で置換えられる。電極は厚さ135μm(コレクタを含む)であり、電極当たり15mgの活物質に相当する。
【0073】
c)本発明に準拠しない第3のスーパーキャパシタの製造
この実施形態では、様式a)の電解液がEC/PC/DMC(1/1/1)混合物中の1M LiPF
6で置換えられる。電極は厚さ160μm(コレクタを含む)であり、電極当たり21.1mgの活物質に相当する。
【0074】
d)結果
以下の表は、電極の質量容量及び質量密度に関して、実施形態a)〜c)で得られた結果を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
これらの結果は、リチウム化された塩を、ナトリウム含有塩で置換えることが、試験されたスーパーキャパシタの質量容量及び質量密度に何ら影響を及ぼさないことを示しており、このことはナトリウム含有塩の使用が、リチウム化された塩の使用と結果に関しては同等であることを示唆し得る。
【0077】
実施例1
この実施例は、本発明による高エネルギー密度の種々のパワーのスーパーキャパシタの、及び比較としての本発明に準拠しないスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0078】
a)本発明による第1のスーパーキャパシタの製造
第1の相では、正極及び負極の調製が行われる。
【0079】
正極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ156μm(コレクタを含む)及び活物質質量15.8mgを有する。
【0080】
負極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−91.7%のリファレンスKS6(Timcal Co.スイス、より入手)のグラファイト;
−3.15%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−3.15%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−2%の、質量平均分子量(M
W)300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ59μm(コレクタを含む)及び活物質質量19mgを有する。
【0081】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液は、アセトニトリル中のNaPF
6(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0082】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。エネルギー密度は、0.1A/g(1グラム電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0083】
b)本発明による第2のスーパーキャパシタの製造
この第2のスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M NaClO
4で置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0084】
c)本発明による第3のスーパーキャパシタの製造
この第3のスーパーキャパシタは、電解液がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート混合物中の1M NaClO
4で置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0085】
d)本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタの製造
この第4のスーパーキャパシタは、活性炭が負極に配置され、かつグラファイトが正極に配置されることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0086】
e)本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタの製造
この第5のスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M LiPF
6で置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0087】
f)結果
サイクリングは、0と2.5Vの間で行われ、作製されたスーパーキャパシタの各々につき、72秒において、質量エネルギーE(Wh/kgで表される)、質量パワーP(W/kgで表される)の測定が行われた。
【0088】
得られた結果は、以下の表に表示される。
【0089】
【表2】
【0090】
本発明によるスーパーキャパシタについて、質量エネルギー及び質量パワーの双方の面で高い値が得られることが見てとれる。
【0091】
本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタについては、容量は何ら測定することができず、このことは、ナトリウムが負極で挿入され得るのみであること、及びこの負極に存在する活性炭がナトリウムを挿入させるのに適さない、という事実によって説明される。
【0092】
本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタについては、アセトニトリルによるリチウム−アルミニウム合金の生成が観察され、負極の完全な劣化が生じる。このことはそれ故、リチウム、アルミニウム、及びアセトニトリルの併用を除外する。
【0093】
g)本発明のスーパーキャパシタと本発明に準拠しないスーパーキャパシタとの間の電圧プロファイルの比較
前述の第1のスーパーキャパシタによるスーパーキャパシタは、いくつかの充電/放電条件(それぞれ1gの活物質当たり0.6A、及び1gの活物質当たり1.25A)に供され、持続時間T(秒)に依存した、電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された
図3の曲線a)及びb)によって例示される。
【0094】
本発明に準拠しないスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M TEABF
4で置換えられたことを除いて、比較実施例1の様式a)のスーパーキャパシタに相当し、このスーパーキャパシタは、0.6A/gにおける充電/放電条件に供され、持続時間T(秒)に依存する電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された
図2の曲線c)によって例示される。
【0095】
同一の充電条件については、質量エネルギーは本発明によるスーパーキャパシタの場合よりも20%高いことが見られた。
【0096】
h)本発明のスーパーキャパシタのエネルギー密度を最大化するための提案
スーパーキャパシタから放出されるエネルギー密度を最大化するための1つの方法は、これらの電極の双方のエネルギー密度のバランスをとることである。これを行うため、本発明のスーパーキャパシタの構成電極材料の容量を測定することが必要である。
【0097】
実験の計画は、本発明によるスーパーキャパシタの正極及び負極について、種々の厚さ比の効果を試験するため、及び特に最大エネルギー密度を得るための最適比を見つけるため、精密に仕上げられた。この計画は、正極及び負極間の厚さ比が、活物質含量及び使用された活物質質量(活物質はそれぞれ、正極については、活性炭であり、「活物質+」として以下に示され、負極については、グラファイトであり、「活物質−」として以下に示される)と同様、それぞれ変更されたことを除いて、a)において記載されたものと同様のスーパーキャパシタを用いて、即ち、特に、アセトニトリル中の1M NaPF
6溶媒を用いて実施される。
【0098】
以下の表は、試験したスーパーキャパシタの特徴を分類しており、その特徴は以下の通りである:
−正極の活物質の、負極の活物質に対する質量比、Re
+/e
−と称される;
−活物質+の質量パーセント、%mat+と称される;
−活物質−の質量パーセント、%mat−と称される;
−正極の全質量、mtot+と称され、mgで表される;
−負極の全質量、mtot−と称され、mgで表される;
−正の活物質の使用された全質量、mact+と称され、mgで表される;
−負の活物質の使用された全質量、mact−と称され、mgで表される;
−正極の厚さ、e+と称され、μmで表される;
−負極の厚さ、e−と称され、μmで表される。
【0099】
【表3】
【0100】
a)において精密に仕上げられたスーパーキャパシタと同様の方法で、上記の表にその特徴が示されたスーパーキャパシタがグローブボックス中で精密に仕上げられ、サイクリングにおいて試験される。最初のフォーメーション工程は、低い電流(ここでは、100μA、即ち3〜6mA/g、これは、負極について約C/2における、充電/放電プロセスに相当する)を用いて定電流サイクリングを達成することからなる。
【0101】
セルのキャパシティが測定され(Q
cell)、得られた値を用いて、mAh/gで表される、正極及び負極の容量質量密度(それぞれQ
+及びQ
−)が、以下の式を用いて決定される:
Q
+=(Q
cell/mtot
+) Q
−=(Q
cell/mtot
−)
【0102】
このことが、
図1のグラフ(それぞれ、2mAでの試験について、曲線a)はQ
+、曲線b)はQ
−)から浮かび上がるように、Re
+/e
−比はQ
+に対しほとんど影響がない。Q
−については、曲線は直線領域へ分解され、そこでQ
−はRe
+/e
−に対し直線的に増加する。
【0103】
このことは、定理:負極は正極よりもずっと容量性がある、に適合する。負極を完全には挿入しないことにより、高いパワーレベルにアクセスすることが可能である。Re
+/e
−比=1では、双方の電極の容量が等しい。
【0104】
比較実施例2
この実施例は、その調製法が以下に表示される、本発明に準拠しない種々のスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0105】
a)本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタの製造
本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタは、同一の、即ち同じ性質及び同じ塩基重量の、正極及び負極を用いて調製され、前記電極はエッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスのYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準とした質量パーセントで表され、
前記電極は、厚さ106μm(コレクタを含む)及び活物質質量15.9mgを有する。
【0106】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液はアセトニトリル中のKPF
6(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0107】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。容積及び重量当たりの容量は、放電曲線上に直線回帰を適用することによって2.43Vと1.35Vの間で、0.3A/g(1グラムの電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0108】
b)本発明に準拠しない第2のスーパーキャパシタの製造
この実施例では、様式a)の電解液がアセトニトリル中の1M KClO
4で置換えられる。電極は厚さ150μm(コレクタを含む)であり、電極当たり21mgの活物質に相当する。
【0109】
c)本発明に準拠しない第3のスーパーキャパシタの製造
この実施例では、様式a)の電解液がEC/PC/DMC(1/1/1)混合物中の1M LiPF
6で置換えられる。電極は厚さ160μm(コレクタを含む)であり、電極当たり21.1mgの活物質に相当する。
【0110】
d)結果
以下の表は、電極の質量容量及び質量密度に関して、実施形態a)〜c)で得られた結果を示す。
【0111】
【表4】
【0112】
これらの結果は、リチウム化された塩を、カリウムを含む塩で置換えることが、試験されたスーパーキャパシタの質量容量及び質量エネルギー密度に何ら影響を及ぼさないことを示しており、このことはナトリウムを含有する塩の使用が、リチウム化された塩の使用と結果に関しては同等であることを示唆し得る。
【0113】
実施例2
この実施例は、本発明による高エネルギー密度の種々のパワーのスーパーキャパシタの、及び比較としての本発明に準拠しないスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0114】
a)本発明による第1のスーパーキャパシタの製造
第1の相では、正極及び負極の調製が行われる。
【0115】
正極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ168μm(コレクタを含む)及び活物質質量17.8mgを有する。
【0116】
負極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−91.7%のリファレンスKS6(Timcal Co.スイス、より入手)のグラファイト;
−3.15%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−3.15%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−2%の、質量平均分子量(M
W)300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ66μm(コレクタを含む)及び活物質質量18.9mgを有する。
【0117】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液は、アセトニトリル中のKPF
6(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0118】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。エネルギー密度は、0.1A/g(1グラム電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0119】
b)本発明による第2のスーパーキャパシタの製造
この第2のスーパーキャパシタは、電解液がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート混合物中の1M KPF
6で置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0120】
c)本発明による第3のスーパーキャパシタの製造
この第3のスーパーキャパシタは、電解液がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート混合物中の1M KClO
4で置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0121】
d)本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタの製造
この第4のスーパーキャパシタは、活性炭が負極に配置され、かつグラファイトが正極に配置されることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0122】
e)本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタの製造
この第5のスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M LiPF
6で置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0123】
f)結果
サイクリングは、0と2.5Vの間で行われ、作製されたスーパーキャパシタの各々につき、72秒において、質量エネルギーE(Wh/kgで表される)、及び質量パワーP(W/kgで表される)の測定が行われた。
【0124】
得られた結果は、以下の表に表示される。
【0125】
【表5】
【0126】
本発明によるスーパーキャパシタについて、質量エネルギー及び質量パワーの双方の面でより高い値が得られることが見てとれる。
【0127】
本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタについては、容量は何ら測定することができず、このことは、ナトリウムが負極で挿入され得るのみであること、及びこの負極に存在する活性炭がナトリウムを挿入させるのに適さない、という事実によって説明される。
【0128】
本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタについては、リチウム−アルミニウム合金の生成が観察される。
【0129】
このことはそれ故、リチウム、アルミニウム、及びアセトニトリルの併用を除外する。
【0130】
g)本発明のスーパーキャパシタと本発明に準拠しないスーパーキャパシタとの間の電圧プロファイルの比較
前述の第1のスーパーキャパシタによるスーパーキャパシタは、いくつかの充電/放電条件(それぞれ1gの活物質当たり0.6A、1gの活物質当たり1.25A、1gの活物質当たり1.85A、及び1gの活物質当たり3.7A)に供され、持続時間T(秒)に依存した、電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された
図3の曲線a)〜d)によって例示される。
【0131】
本発明に準拠しないスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M TEABF
4で置換えられたことを除いて、比較実施例1の様式a)のスーパーキャパシタに相当し、このスーパーキャパシタは、0.6A/gにおける充電/放電条件に供され、持続時間T(秒)に依存する電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された
図4の曲線e)によって例示される。
【0132】
同一の充電条件について、質量エネルギーは本発明によるスーパーキャパシタの場合よりも1.9倍高いことが見られた。
【0133】
h)本発明のスーパーキャパシタのエネルギー密度を最大化するための提案
スーパーキャパシタから放出されるエネルギー密度を最大化するための1つの方法は、これらの電極の双方のエネルギー密度のバランスをとることである。これを行うため、本発明のスーパーキャパシタの構成電極材料の容量を測定することが必要である。
【0134】
実験の計画は、本発明によるスーパーキャパシタの正極及び負極について、種々の厚さ比の効果を試験するため、及び特に最大エネルギー密度を得るための最適比を見つけるため、精密に仕上げられた。この計画は、電極間の厚さ比、活物質含量、及び使用された活物質質量(活物質はそれぞれ、正極については、活性炭であり、「活物質+」として以下に示され、負極については、グラファイトであり、「活物質−」として以下に示される)をそれぞれ変更したことを除いて、a)において記載されたものと同様のスーパーキャパシタを用いて、即ち、特に、アセトニトリル中の1M KPF
6電解液を用いて実施した。
【0135】
以下の表は、試験したスーパーキャパシタの特徴を分類しており、その特徴は以下の通りである:
−正極の活物質の、負極の活物質に対する質量比、Re
+/e
−と称される;
−活物質+の質量パーセント、%mat+と称される;
−活物質−の質量パーセント、%mat−と称される;
−正極の全質量、mtot+と称され、mgで表される;
−負極の全質量、mtot−と称され、mgで表される;
−正の活物質の使用された全質量、mact+と称され、mgで表される;
−負の活物質の使用された全質量、mact−と称され、mgで表される;
−正極の厚さ、e+と称され、μmで表される;
−負極の厚さ、e−と称され、μmで表される。
【0136】
【表6】
【0137】
a)において精密に仕上げられたスーパーキャパシタと同様の方法で、上記の表にその特徴が示されたスーパーキャパシタがグローブボックス中で精密に仕上げられ、サイクリングにおいて試験される。最初のフォーメーション工程は、低い電流(ここでは、100μA、即ち3〜6mA/g、これは、負極について約C/2における、充電/放電プロセスに相当する)を用いて定電流サイクリングを達成することからなる。
【0138】
セルのキャパシティが測定され(Q
cell)、得られた値を用いて、mAh/gで表される、正極及び負極の容量質量密度(それぞれQ
+及びQ
−)が、以下の式を用いて決定される:
Q
+=(Q
cell/mtot
+) Q
−=(Q
cell/mtot
−)
【0139】
図2のグラフ(それぞれ、2mAでの試験について、曲線a)はQ
+、曲線b)はQ
−)から明らかなように、Re
+/e
−比はQ
+に対しほとんど影響がない。Q
−については、曲線は直線領域へ分解され、そこでQ
−はRe
+/e
−に対し直線的に増加する。このことは、定理:負極は正極よりもずっと容量性がある、に適合する。負極を完全には挿入しないことにより、高いパワーレベルにアクセスすることが可能である。Re
+/e
−比=1では、双方の電極の容量が等しい。
【0140】
実施例3
この実施例は、電解液がカリウム塩をベースとしようと(この実施例のパートa))、又はナトリウム塩をベースしようと(この実施例のパートb))、本発明の装置において、それに良好な性能を与えることを目指して、溶媒としてアセトニトリル使用することの利益を証明することを目的とする。
【0141】
a)カリウム塩をベースとする電解液を用いた本発明による装置を用いて行われた試験
第1の相では、正極及び負極の調製が行われる。
【0142】
正極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントである。
【0143】
負極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−94%のリファレンスSLP30(Timcal Co.スイス、より入手)のグラファイト;
−2%の導電性カーボンVGCF(「気相成長炭素繊維(vapour grown carbon fibre)」の頭字語);
−2%のカルボキシメチルセルロース(リファランス7HXF、Aqualon);
−2%の、51%のスチレン−ブタジエンゴム(商標LD417(登録商標)でBASFより入手)を用いた分散物、
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントである。
【0144】
10.24cm
2に等しい表面積(即ち、3.2x3.2cmの寸法)をもつ前述の正極及び負極は、「パウチセル」タイプのセルに組立てられる。
【0145】
用いた電解液は、カリウム塩(KPF
6、1M)を含んでなる、アセトニトリルを含んでなる溶液であり、セル全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0146】
セルは、サイクリックボルタンメトリ−により調べられ、その結果が
図5に移されている。
【0147】
ボルタンモグラムの下面積は特に大きく、ボルタンモグラムの下面積がスーパーキャパシタの容量に比例することを認識すれば、このことはスーパーキャパシタのかなりの容積を裏付けるものである。
【0148】
b)ナトリウム塩をベースとする電解液を用いた本発明による装置を用いて行われた試験
このパートで試験された装置は、この場合にはアセトニトリルとナトリウム塩NaPF
6(1M)とを含んでなる溶液である電解液を除き、パートa)において例証されたものに類似する。
【0149】
装置はまた、サイクリックボルタンメトリ−により調べられ、その結果は
図6に複写されている。
【0150】
結果は、パートa)の装置を用いて得られたボルタンモグラム下面積が、パートb)の装置を用いて得られたものより大きいことを除いて、パートa)において例証された装置を用いて観察されたものと同様の傾向を示す。
【0151】
実施例4
この実施例は、本発明の装置の電極のバランシングの影響を、装置の性能(この実施例のパートa))及び装置の安定性(この実施例のパートb))について証明することを目的とする。
【0152】
a)装置の性能に対する電極のバランシングの影響
前置きとして、ハイブリッドスーパーキャパシタを用いて得られたボルタンモグラムを例示する
図7を参照すれば、かかるスーパーキャパシタを用いて予想される通常の電気化学的挙動が想起される。
【0153】
この図において、2つの部分が見られ(図では、それぞれ、パートa及びパートbと称される)、パートaは、いわゆる「スーパーキャパシタ性の」部分に相当し、パートb、はいわゆる「バッテリ」部分に相当する。
【0154】
現在、装置の最終的なエネルギーは、容量に比例し及び印加電圧の二乗に比例することから、それ故、できるだけ高い電圧に向けて、装置の動作を「バッテリ」部分(これは、最大の容量にアクセスする可能性を与える)に向けてずらすべく管理することに興味が持たれ得る。
【0155】
これを行うため、試験は、実施例3のパラグラフa)(これについては、電解液の塩はカリウム塩、KPF
6である)に記載されたものに類似の装置であって、異なる塩基重量(又は表面質量)をもつ負極を含んでなり、かつさらに特定的には以下の装置を用いて実施された:
−セル、いわゆる第1のセル、4mg/cm
3の負極と、8mg/cm
3の正極とを具備し、これは(正極/負極)比2に相当する;
−セル、いわゆる第2のセル、6mg/cm
3の負極と、8mg/cm
3の正極とを具備し、これは(正極/負極)比1.3に相当する;
−セル、いわゆる第3のセル、9mg/cm
3の負極と、8mg/cm
3の正極とを具備し、これは(正極/負極)比0.88に相当する;
−セル、いわゆる第4のセル、13mg/cm
3の負極と、8mg/cm
3の正極とを具備し、これは(正極/負極)比0.61に相当する。
【0156】
これらの異なるセルは、サイクリックボルタンメトリ試験に供され(0.5→3.2から0.5→4Vまで)、その結果は、第1のセルから第4のセルまで、それぞれ
図8〜11に移される。
【0157】
第1のセル(
図8)では、最初のサイクル(0.5〜2.2V)が起こるや否や、ピークの存在を認め得、既に「バッテリ」パートにあることを示している。
【0158】
反対に、第4のセル(
図11)では、最初のサイクル(0.5〜2.2V)は、「スーパーキャパシタ性の」パートに特異的な長方形の形状を有しており、「バッテリ」パートについては、0.5〜3Vのサイクルの間に現れるのみであって、即ち第1のセルに比較して約1Vの増加である。
【0159】
第2及び第3のセルは、同じ傾向に従う。
【0160】
これらの試験は、本発明による装置では、正極に比較して負極の過剰な塩基重量により、「バッテリ」パートへ向けた移動が容易に可能であることを示している。
【0161】
b)システムの安定性に対するバランシング及びサイクリングリミットの影響
この部分では、本発明の装置の安定性に対する本発明の装置上の電極のバランシングの影響が調べられる。
【0162】
これを行うため、試験は、実施例3のパラグラフa)(これについては、電解液の塩はカリウム塩、KPF
6である)に記載されたものに類似の装置であって、異なる塩基重量(又は表面質量)をもつ負極を含んでなり、かつさらに特定的には以下の装置を用いて実施された:
−セル、いわゆる第1のセル、4mg/cm
3の負極と、8mg/cm
3の正極とを具備し、これは(正極/負極)比2に相当する;
−セル、いわゆる第2のセル、13mg/cm
3の負極と、8mg/cm
3の正極とを具備し、これは(正極/負極)比0.61に相当する。
【0163】
前述のセルは、20mAで1,000サイクルの間に、1.5〜3.7Vの定電流サイクリングにより試験された。
【0164】
塩基重量の増加が、装置の安定性に影響を及ぼすことが見られる(特に、第2のセルについて、1,000サイクルにおいて、サイクル1に比較して40%を超える容量の損失によって具現化され、一方第1のセルではそれは60%を超える)。
【0165】
安定性をさらに改善するため、3.7V〜3.2Vを通すことにより、装置の動作上限の緩和が試験された。
【0166】
第2のセルを用いて、1.5〜3.2Vの間(3サイクル)をサイクリングすることにより、また1.5〜3.7Vの間(3サイクル)をサイクリングすることにより得られたボルタンモグラムを例示している
図12によって確認される通り、13mg/cm
2の塩基重量をもつ負極については、3.2Vにサイクルアップされる場合、3サイクルの終わりには何ら電流損失はないことが確認された(一方3.7Vにサイクルアップされる場合には、損失は既に確認されている)。
【0167】
1.5〜3.2Vの間で1,000サイクルにわたり定電流サイクリングを動作することにより、10%未満の容量の損失が確認され、このことが多くの適用にとり興味深いことが証明され得る。
【0168】
実施例5
この実施例は、リチウムをベースとする貯蔵システムと比較して、本発明の装置の安全面を証明することを目的とし、特に以下の事実に関連する:
−本発明の装置を完全に放電する可能性(パートa);
−パシベーション層なしに行う可能性(パートb);
−正極に対する負極のオーバーディメンショニングなしに行う可能性(パートc);
−アセトニトリル中で固体カリウムを溶解する可能性。
【0169】
試験された本発明の装置は、実施例3のパートa)のものである。
【0170】
a)本発明による装置を完全に放電する可能性
リチウムをベースとする貯蔵システムの場合、システムを完全に放電することは不可能であり、それはシステムへ負荷されたエネルギーが存在することを意味し、それ故それは安全に関わる潜在的リスクである。
【0171】
本発明の試験された装置の場合、装置を完全に放電することが可能であることを確認するため、0.5〜3.2Vの3サイクル、そして次に0〜3.2Vの3サイクルが行われた。
【0172】
上記で述べた試験のボルタンモグラムを例示する
図13において確認される通り、装置を完全に放電することは、装置が以降のサイクル中に同じ容量をもつことから、装置の性能に何ら影響を及ぼさない。
【0173】
さらに、装置の「事後分析」研究、即ち装置を開けた後、これらの種々の要素を目視により検査することにより、装置の完全な放電後に要素は何ら劣化を受けなかったと断言する可能性が示された。
【0174】
結論として、システムの完全な放電の可能性は、装置に直接介入することが絶対必要である場合に、無視できない利点を表す。
【0175】
b)パシベーション層を省略する可能性
リチウムをベースとするシステムの場合、安全問題の1つは、負極におけるパシベーション層形成の必要性に関係する。一般に適用される解決策は、その大部分が最初のサイクルで消費されるリチウムイオンを用いて、システムを飽和するための付加的なリチウムシートを適用することからなる。この適用には安全上の問題及び有意なオーバーコストがある。
【0176】
本発明の装置の場合、パシベーション層の形成は必ずしも必要ではなく、このことは安全性の観点から利点をもつ。
【0177】
c)正極に対する負極のオーバーディメンショニングなしに行う可能性
リチウムをベースとするシステムの場合、負極の表面におけるリチウム金属の任意の被着なしに行うという観点から、負極をオーバーディメンションすることが慣例である。
【0178】
本発明の装置の場合、負極をオーバーディメンショニングすることによって試験を行った(正極について、32
*32mmの代わりに35
*35mm)。この試験は、性能の面で何ら差異を示さず、このことはさらに、本発明の装置の別の利点である。
【0179】
d)アセトニトリル中で固体カリウムを溶解する可能性
アセトニトリルの使用は、アセトニトリル中のカリウムの性質の故に、電極の表面での固体カリウムの被着に関連したリスクを回避する可能性を与えるという意味で、確かに利点がある。