特許第6509815号(P6509815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6509815導電性塩としてリチウム以外のアルカリ元素から作製される少なくとも1つの塩を含んでなる電解液から作製される電気化学スーパーキャパシタ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509815
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】導電性塩としてリチウム以外のアルカリ元素から作製される少なくとも1つの塩を含んでなる電解液から作製される電気化学スーパーキャパシタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01G 11/06 20130101AFI20190422BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20190422BHJP
   H01G 11/62 20130101ALI20190422BHJP
   H01G 11/42 20130101ALI20190422BHJP
   H01G 11/38 20130101ALI20190422BHJP
【FI】
   H01G11/06
   H01G11/60
   H01G11/62
   H01G11/42
   H01G11/38
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-509432(P2016-509432)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公表番号】特表2016-521006(P2016-521006A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】EP2014058130
(87)【国際公開番号】WO2014173891
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2017年4月13日
(31)【優先権主張番号】1353753
(32)【優先日】2013年4月24日
(33)【優先権主張国】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アゼ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルジョーヌ,ジョアン
(72)【発明者】
【氏名】ピコ,マチュー
【審査官】 田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−069894(JP,A)
【文献】 特開2013−038170(JP,A)
【文献】 特開平01−258410(JP,A)
【文献】 特開2013−065837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/06
H01G 11/38
H01G 11/42
H01G 11/60
H01G 11/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッドスーパーキャパシタタイプの装置であって:
−活性炭を含んでなる多孔質正極と;
−リチウム以外のアルカリ元素の挿入が可能な炭素質物を含んでなる負極であり、この炭素質物が正極において使用される活性炭とは異なっている該負極と
−リチウム以外のアルカリ金属の塩の中から選択される塩を含んでなる非水電解液であって、リチウム以外の前記アルカリ金属の塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、及びそれらの混合物の中から選択され、前記電解液中に存在する1種以上の塩が、少なくとも1種の有機ニトリル溶媒中の溶液中にある、非水電解液と、
を含んでなる少なくとも1つのセルを含んでなり、
前記負極及び前記正極が、それぞれ導電性集電体と結合されており、
前記導電性集電体がアルミニウム製である、該装置
【請求項2】
前記正極において活性炭が、前記電極の全質量を基準として少なくとも60質量%の含量で存在する、請求項に記載の装置。
【請求項3】
リチウム以外のアルカリ元素の挿入が可能な前記炭素質物が、グラファイトタイプの炭素質物である、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記正極及び負極が、ポリマーバインダーの中から選択される少なくとも1つの有機バインダーを含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記ポリマーバインダーが、フッ素化ポリマー、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、及びそれらの混合物から選択される1つ以上のポリマーを含んでなる、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記正極が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、及びそれらの混合物の中から選択される、活性炭以外の導電性の炭素質添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記負極が、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、及びそれらの混合物の中から選択される、請求項1において定義され挿入が可能な活性炭以外の導電性の炭素質添加剤をさらに含んでなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記導電性の炭素質添加剤が、前記正極又は負極の全質量を基準として15質量%までの範囲の含量で存在する、請求項又はに記載の装置。
【請求項9】
前記ナトリウム塩が、NaClO、NaBF、NaPF、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウムビス(オキサラト)ボレート、NaSCN、NaSbF、NaAsF、NaAlCl、NaSiF、NaSOCF、及びそれらの混合物の中から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記カリウム塩が、KClO、KBF、KPF、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(オキサラト)ボレート、KSCN、KSbF、KAsF、KAlCl、KSiF、KSOCF、及びそれらの混合物の中から選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の装置
【請求項11】
前記電解液が少なくとも1種のナトリウム塩を含んでなる場合、それがNaClO、NaPF、NaBF、及びそれらの混合物の中から選択される塩を、少なくとも1種の有機ニトリル溶媒中の溶液中に含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記電解液が少なくとも1種のナトリウム塩を含んでなる場合、それがNaClO、NaPF、NaBF、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1種のナトリウム塩を、アセトニトリル中の溶液中に含んでなる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記電解液が少なくとも1種のナトリウム塩を含んでなるとき、それがナトリウム塩として、NaClO、NaPF、又はNaBFを:
−アセトニトリル単独;
である1種の溶媒中の溶液中に含んでなる、請求項10又は11に記載の装置。
【請求項14】
前記電解液が少なくとも1種のカリウム塩を含んでなる場合、それがKClO、KPF、KBF、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1種のカリウム塩を、少なくとも1種の有機ニトリル溶媒中の溶液中に含んでなる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項15】
前記電解液が、少なくとも1つのカリウム塩を含んでなる場合、それがKClO、KPF、KBF、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種のカリウム塩を、アセトニトリル中の溶液中に含んでなる、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記電解液が少なくとも1種のカリウム塩を含んでなるとき、それがカリウム塩として、KClO、KPF、又はKBFを:
−アセトニトリル単独;
である1種の溶媒中の溶液中に含んでなる、請求項14又は15に記載の装置。
【請求項17】
前記有機ニトリル溶媒がアセトニトリルである、請求項16のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高エネルギー密度をアクセスする可能性を与える、特定の電解液に関連した特定の電極対(正極及び負極)を含んでなる少なくとも1つのセルを含んでなる、特定のスーパーキャパシタタイプの電気化学装置に関する。
【0002】
これらの装置は、高エネルギー密度の迅速な供給を必要とする多くの分野において、特にクレジットカード、スマートラベルなどの厚さの小さいオンボードシステムの電源において、携帯電話の電源において、又はさらに電気自動車の電源において、その用途を見出す。
【背景技術】
【0003】
スーパーキャパシタ(スーパーキャパシタンスとしても記載され得る)は、エネルギーを蓄えるための装置であり、これを用いて、電気化学的バッテリについて得られるものと標準的な電解液キャパシタについて得られるものとの間の、中間のパワー密度及びエネルギー密度を得ることが可能であり、また電気化学的バッテリがなし得るよりもさらに迅速にエネルギーを蓄える特性をもつ。
【0004】
動作の観点からは、スーパーキャパシタは、そこから「電気化学二重層キャパシタ」(EDLCという頭字語でも公知)という名称が時に生じた、電気化学二重層の原理に基づき動作しており、即ち、言い換えれば、少なくとも1つのセル内で、イオン電解液で含浸され、電極間の電子絶縁を確保するとともに電解液イオンを容易に通過させる可能性与える多孔質膜により分離された、2つの多孔質電極(それぞれ、正極及び負極)の表面付近において、電解液からイオンを分布させることによるエネルギー貯蔵の原理に基づいている。
【0005】
それ故、より具体的には、スーパーキャパシタをベースとするセルは、以下の要素によって要約され得る:
−正極;
−電気化学二重層を形成する、正極/電解液界面;
−前記電解液で含浸された多孔質膜;
−負極;及び
−電気化学二重層を形成する、負極/電解液界面。
【0006】
それぞれが電気化学二重層を形成するこれら双方の界面の存在の故に、スーパーキャパシタは、一方が正極をもち他方が負極をもつ、2つのキャパシタの直列結合物としてみなされ得る。これらのキャパシタの双方は、スーパーキャパシタの端子に電流を印加することにより生成され、このことが双方の電極−電解液界面に電荷領域を生じ、エネルギーはそれ故静電的に貯蔵される。
【0007】
その双方の電極(正極及び負極)がともに活性炭をベースとし、かつ電解液がリチウムイオンをベースとするスーパーキャパシタが公知であり、このタイプのスーパーキャパシタは、高いパワー密度、高いサイクル性をもつが、しかしながらスーパーキャパシタの平均容量(10Wh/kg程度)と動作電圧との双方に関連して、エネルギー密度は低く、その制限因子(制限要因)は以下の通りである:
−長寿命及び制御された自己放電を保持するため、動作電圧は比較的高くなければならず(2.7〜2.8V程度)、自己放電現象はバッテリのそれよりも高いこと;
−電極材料の容積容量;及び
−受動的構成要素(コレクタ、セパレータ、ケーシングなど)、これらは装置の性能にとり有害であり得、設計者はこれらのタイプの構成要素を削減することになる。
【0008】
エネルギー密度増大の要求を満たす観点から、スーパーキャパシタは、活性炭をベースとした通常使用されるスーパーキャパシタと、バッテリとの間に位置して開発されてきており、このことからスーパーキャパシタは、特に、一方の電極が充電式バッテリ材料(通常は負極)から形成され、他方が活性炭をベースとして形成され(通常は正極)、これらの双方の電極の間に位置する電解液が通常は水性電解液であることから、非対称又はハイブリッドスーパーキャパシタとして記載される結果となった。
【0009】
言い換えれば、このタイプのスーパーキャパシタは、それにより負極における電荷の蓄積がレドックス反応によって起こる一方、正極における電荷の蓄積が電気化学二重層の形成によって起こるという原理に基づき動作する。
【0010】
このタイプのハイブリッドスーパーキャパシタは、特に以下において説明されている:
−特許文献1は、非対称電極の原理に基づくスーパーキャパシタを記載しており、第1の電極は、炭素質物、例えばガラス質炭素、活性炭を含んでなり、電気二重層の形成の中心であり、第2の金属電極は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄、プラチナ、及びそれらの合金をベースとし、この第2の電極がレッドックス反応の中心である;
−特許文献2もまた、非対称電極の原理に基づいており、第1の電極は、炭素質物をナノポーラス炭素として含んでなり、第2の多孔質金属電極は、例えばニッケル、コバルト、及び/又は鉛製である。
【0011】
これらのシステムは、主として水性媒体中で動作し、結果として以下の欠点を生じる:
−システムの動作電圧が低いこと(一般に、2.2V未満)であり、このことは、装置に電力供給するのに充分な出力電圧を得るために、一定数のセルの集合体からなるエネルギー貯蔵モジュールの形成を必要とし、このことは、無視できない余分の直列抵抗を電力エネルギー貯蔵システム中に生じるという欠点をもつ;
−比較的コストが高く、このことがそれらを、ある意味ニッチセクターにのみ手が届くものにしている。
【0012】
他のハイブリッドシステムもまた開発されており、これにおいて、双方の電極は炭素質物をベースとして作製され、特に負極はグラファイトをベースとし、多孔質の正極は活性炭をベースとし、一方電解液はリチウム化電解液である。
【0013】
このタイプの構造において解決されるべき主な問題の1つは、負極表面におけるリチウムのパシベーション層の作製である。
【0014】
負極表面におけるリチウムのパシベーション層の被着には様々な解決法が存在し、それらが提案されてきた:
−特許文献3に記載されたように、パシベーション層を形成するためにその大部分が最初のサイクル中に消費されるリチウムイオンを用いて、システムを飽和する目的で、付加的なリチウムシートをシステムにとり入れることであり、これはしかしながら重大な安全性及びオーバーコストの問題を生じるリスクがないわけではない;
−リチウムの蒸着によってこの層を被着することであり、この方法はしかしながら複雑かつ工業的には高価であり、また弱く酸化された層を生じ、これは電気化学的システムにおけるその使用にとり有害である。
【0015】
前述の欠点に加えて、グラファイトをベースとする負極と、活性炭をベースとする正極と、及びリチウム化電解液とを含む、集合体を基盤として動作するハイブリッドスーパーキャパシタは、以下の別の欠点をもつ:
−パシベーション層を含有する負極の抵抗の故に、また例えば、標準的な電解液、アセトニトリル中の1M TEABFに比較して、リチウム化電解液の低い導電率の故に、時定数が低下すること;
−グラファイトとリチウム化電解液との併用は、上記に議論されたように、一般にパシベーション層の発生を意味し、それ故、少なくとも最初のサイクルの間に電解液が有意に消費されること;
−リチウム化電解液は、高価であり(特にLiPF又はLiTFSI)、正極に活性炭を使用することは、孔を飽和することができるよう相対的に多量の電解液を必要とすることから、コストは全て高めとなること;及び
−前述のタイプのアセンブリングにおける負極の動作電位は、比較的高価な銅のコレクタの使用を課し、かつアルミニウムを用いた場合のように、高価ではない材料で作られたコレクタの使用を禁止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO95/21466
【特許文献2】WO00/02215
【特許文献3】WO2010024327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記を考慮して、本発明者らはその目標を、リチウム化電解液の使用に頼らない可能性を与え、特にパシベーション層の形成に関連した欠点の回避と、またリチウムの使用に関連したコストの回避も可能にする、新しいタイプのハイブリッドスーパーキャパシタを開発することに設定した。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そこで本発明者らは、スーパーキャパシタタイプの装置における特定の電極材料と特定の電解液とを、動機づけされた方法で選択することにより、これらの欠点を克服できることを発見した。
【0019】
このハイブリッドスーパーキャパシタタイプの装置は:
−活性炭を含んでなる多孔質正極と;
−リチウム以外のアルカリ元素の挿入が可能な炭素質物を含んでなる負極であり、この炭素質物は正極において使用される活性炭とは異なる該負極と、;及び
−リチウム以外の少なくとも1つのアルカリ金属の塩から選択される塩を含んでなる、非水電解液と、
を含んでなる少なくとも1つのセルを含んでなる。
【0020】
リチウム以外の少なくとも1つのアルカリ金属の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、及びそれらの混合物であり得、及び好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、及びそれらの混合物であり得る。
【0021】
さらなる記載に入るに先立ち、本発明者らは以下の定義を明記する。
【0022】
正極とは、本発明の範囲内において、電気化学二重層のフォーメーションの中心である電極を意味し、これは言い換えれば、この正極が、厳密に言えば、スーパーキャパシタの動作に充分適合する電極を形成することを意味する。
【0023】
負極とは、本発明の範囲内において、レドックス反応の中心である電極を意味し、これは特に、電解液の構造に入るアルカリ元素の挿入によって具現化される。例えば、これがナトリウムである場合には、挿入はナトリウム組成が少なくともNaC36以上であるように起こり得、またこれがカリウムである場合には、挿入はカリウム組成が最大でもKCに等しい、例えばKC64〜KCの範囲、及び有利にはKC16に対応するように起こり得る。
【0024】
さらに具体的には、上記で述べたような正極は、活性炭を含んでなり、この活性炭は電極の全質量を基準として少なくとも60質量%の含量で存在し得、電極の全質量は集電体の質量を含まないものと理解されている。好ましくは、活性炭は電極の全質量を基準として60質量%〜95質量%、さらに好ましくは電極の全質量を基準として85質量%〜95質量%の範囲の含量で存在する。
【0025】
活性炭の存在に加えて、正極は1つ以上の有機バインダーを含んでなっていてもよく、これは前記電極の機械的粘着を確保するのに貢献するものである。
【0026】
これらの有機バインダーは、とりわけ、以下の中から選択される1つ以上のポリマーを含んでなるポリマーバインダーであり得る:
ポリテトラフルオロエチレン(PTFEの頭字語で公知)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDFの頭字語で公知)、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重)コポリマー(PVDF−HFPの頭字語で公知)、フッ化エチレン−プロピレンコポリマー(FEPの頭字語で公知)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシビニルエーテルとの共重合からのコポリマー(PFAの頭字語で公知)などの、フッ素化ポリマー;
ポリイミド;
ポリアクリロニトリル;及び
それらの混合物。
【0027】
有利には、この又はこれらのバインダーは、一般に−40℃と、任意選択的に電解液の構造へ入る有機溶媒(複数)の沸点との間を含んでなる、使用温度の全範囲にわたるサイクリング中に、機械的強度を損なうことなく、可能な限り小さくなるよう選択される含量で存在する。例えば、バインダーは電解液の全質量を基準として15質量%以下、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは電解液の全質量を基準として2〜7質量%の含量で存在し得る。電極の全質量は集電体の質量を含まないものと理解されている。
【0028】
正極はまた、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、及びそれらの混合物から選択される、活性炭以外の導電性の炭素質添加剤、例えば気相中に得られるカーボンファイバ(VGCFの頭字語で公知)
を含んでなっていてもよく、前記炭素質添加剤は、正極の全質量を基準として15%まで、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは正極の全質量を基準として2〜10質量%の範囲の含量で存在し得る。電極の全質量は集電体の質量を含まないものと理解されている。
【0029】
正極が活性炭に加えてグラファイトを含む場合、グラファイトは導電性添加剤の役割を果たすこととなり、電気化学二重層の形成のための出発点として使用されることはない(言い換えれば、このグラファイトは活性化グラファイトではないと言ってよい)。かかる電極は、複合電極として記載され得る。
【0030】
負極は、上記に述べたように、それがナトリウム、カリウム、ルビジウム、及び/又はセシウムなどの、リチウム以外の少なくとも1つのアルカリ元素を挿入するための炭素質物を含んでなる限り、このタイプの適合された材料は有利には、グラファイトタイプの炭素質物、及びさらに具体的には粒状グラファイトタイプの炭素質物であり、その平均粒子サイズは1〜10μmであり、この粒子サイズはレーザ粒度測定D50によって測定される。
【0031】
正極と同様の方法で、負極は1つ以上の有機バインダーを含んでなっていてもよく、これは前記電極の機械的粘着を確保するのに貢献するものとなる。
【0032】
これらの有機バインダーもまた、以下の中から選択される1つ以上のポリマーを含んでなるポリマーバインダーであり得る:
ポリテトラフルオロエチレン(PTFEの頭字語で公知)、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDFの頭字語で公知)、ポリ(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重)コポリマー(PVDF−HFPの頭字語で公知)、フッ化エチレン−プロピレンコポリマー(FEPの頭字語で公知)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルコキシビニルエーテルとの共重合からのコポリマー(PFAの頭字語で公知)などの、フッ素化ポリマー;
ポリイミド;
ポリアクリロニトリル;及び
それらの混合物。
【0033】
有利には、この又はこれらのバインダーは、一般に−40℃と有機溶媒(複数)の沸点との間を含んでなる、使用温度の全範囲にわたるサイクリング中に、機械的強度を損なうことなく、可能な限り小さくなるよう選択される含量で存在する。
【0034】
例えば、バインダーは電解液の全質量を基準として15質量%以下、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは電解液の全質量を基準として2〜7質量%の含量で存在し得る。電極の全質量は集電体の質量を含まないものと理解されている。
【0035】
負極はまた、カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンファイバ、及びそれらの混合物から選択される、前述の炭素質挿入材料以外の導電性の炭素質添加剤、例えば気相中に得られるカーボンファイバ(VGCFの頭字語で公知)を含んでなっていてもよく、前記炭素質添加剤は、負極の全質量を基準として15%まで、好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは負極の全質量を基準として2〜10質量%の範囲の含量で存在し得る。電極の全質量は集電体の質量を含まないものと理解されている。
【0036】
さらに、負極はまた、挿入能力をもつ材料に加えて、それがグラファイトである場合には、正極のものと同じか又は異なる活性炭を含んでなっていてもよく、これが負極のパワー性能を改善する可能性を与え得る。このタイプの電極は、それ故複合電極と記載され得る。
【0037】
好ましくは、電解液は少なくとも1つのナトリウム塩及び/又は1つのカリウム塩を含む。
【0038】
負極がグラファイトタイプの炭素質物をベースとしかつ電解液が少なくとも1つのナトリウム塩を含んでなる場合、ナトリウムは高負荷ステージにおける挿入能力をもち、組成が最大でもNaC48に相当するようにし、これは非常に多くはない挿入されたナトリウムの量に相当し(特に、組成LiCの挿入化合物を形成するために挿入することになったリチウムと比較して)、このことは、負極の飽和現象がリチウムを用いた場合よりも速やかに達成されることから、電力システムのアクセスのための利点をもち、このことは、性能の観点からこの電極を制限のないものにするのに貢献する。
【0039】
電解液が少なくとも1つのカリウム塩を含んでなる場合、同じ見解が繰り返され得、カリウムは、それについて言えば、高負荷ステージにおいてグラファイトに挿入される能力をもち、組成が最大でもKCに相当するようにし、これは非常に多くはない挿入されたカリウムの量に相当するが、しかしながらこのことは、電極の性能については利点をもつ。
【0040】
これが正極であろうと負極であろうと、特に負極がグラファイトをベースとする場合、それらは所与の厚さの層の形態で生じてもよく、前記負極は有利には前記正極の層よりも大きい厚さをもつ。このことは、特に、負極の構造に入るグラファイトが市販の活性炭よりも約100倍導電性があるという事実から、エネルギー密度の増大を誘導するという利点をもつ。したがってこのことは、スーパーキャパシタが慣例的にリチウムイオンバッテリのそれよりも低いエネルギー密度をもつという事実に対し、対応策を見出す可能性を与える。
【0041】
有利には、負極は正極のそれよりも大きい表面質量を有する。
【0042】
実際、理論に縛られることなく、このことは本発明の装置の性能を、特に容量の面で改善する可能性を与える。
【0043】
有機電解液は、好ましくは、ナトリウム塩、カリウム塩、及びそれらの混合物の中から選択される塩を含んでなる。比較的低いステージにおいて挿入されるのみであるナトリウム又はカリウムの使用は、金属メッキの形成を避ける利点をもつが、その理由は、リチウムを用いた場合にはそれが起こり得え、安全性の面で問題を生じないことはないからである。
【0044】
ナトリウム塩については、これは、NaClO、NaBF、NaPF、ナトリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(NaTFSIの頭字語で公知)、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NaFSIの頭字語で公知)、ナトリウムビス(オキサラト)ボレート(NaBOBの頭字語で公知)、NaSCN、NaSbF、NaAsF、NaAlCl、NaSiF、NaSOCF、及びそれらの混合物の中から選択される塩であってよい。
【0045】
カリウム塩については、これは、KClO、KBF、KPF、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(KTFSIの頭字語で公知)、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(KFSIの頭字語で公知)、カリウムビス(オキサラト)ボレート(KBOBの頭字語で公知)、KSCN、KSbF、KAsF、KAlCl、KSiF、KSOCF、及びそれらの混合物の中から選択される塩であってよい。
【0046】
本発明の電解液の構造に入る塩は、何ら溶媒を添加することなく使用され得、この場合得られた電解液は、イオン液体として、又は少なくとも1つの有機溶媒中の、例えば少なくとも0.05mol/Lに等しい濃度の溶液中として記載され、これは25℃において前記有機溶媒の飽和に達し得る。
【0047】
前記有機溶媒は、以下から選択され得る:
−アセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル(MPNの頭字語で公知)、アジポニトリル(ADPの頭字語で公知)、グルタロニトリル、(GNの頭字語で公知)などのニトリル溶媒;
−エチレンカーボネート(ECの頭字語で公知)、プロピレンカーボネート(PCの頭字語で公知)、ジメチルカーボネート(DMCの頭字語で公知)、ジエチルカーボネート(DECの頭字語で公知)、エチルメチルカーボネート(EMCの頭字語で公知)などのカーボネート溶媒;
−γ−ブチロラクトン(GBLの頭字語で公知)、γ−バレロラクトン(GVLの頭字語で公知)などのラクトン溶媒;
−ジメチルスルホン(DMSの頭字語で公知)、エチルメチルスルホン(EMSの頭字語で公知)、ジエチルスルホン(DESの頭字語で公知)、スルホラン(SLの頭字語で公知)などのスルホン溶媒;
−N−メチルピロリドン(NMPの頭字語で公知)などのラクタム溶媒;
−N,N−ジメチルホルムアミド(DMFの頭字語で公知)、ジメチルアセトアミド(DMAの頭字語で公知)、ホルムアミド(FAの頭字語で公知)、N−メチルホルムアミド(NMFの頭字語で公知)などのアミド溶媒;
−アセトン、メチルエチルケトン(MEKの頭字語で公知)などのケトン溶媒;
−ニトロメタン(NMの頭字語で公知)、ニトロエタン(NEの頭字語で公知)などのニトロアルカン溶媒;
−1,3−ジアミノプロパン(DAPの頭字語で公知)、エチレンジアミン(EDAの頭字語で公知)などのアミン溶媒;
−ジメチルスルホキシド(DMSOの頭字語で公知)などのスルホキシド溶媒;
−酢酸エチル(EAの頭字語で公知)、酢酸メチル(MAの頭字語で公知)、酢酸プロピル(APの頭字語で公知)などのエステル溶媒;
−ジメトキシエタン(DMEの頭字語で公知)などの直鎖エーテル溶媒;
−ジオキサン、ジオキソラン(DIOXの頭字語で公知)、テトラヒドロフラン(THFの頭字語で公知)などの環状エーテル溶媒;
−3−メチル−2−オキサゾリドンなどのオキサゾリドン溶媒;及び
−それらの混合物。
【0048】
電解液が少なくとも1つのナトリウム塩を含んでなる場合、それは有利にはNaClO、NaPF、NaBF、及びそれらの混合物の中から選択される塩を、カルボネート溶媒、直鎖エーテル溶媒、ニトリル溶媒、ラクトン溶媒、アミド溶媒、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの溶媒中の溶液中に含んでなる。
【0049】
より特定的には、適当な電解液は、NaClO、NaPF、NaBF、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つのナトリウム塩を、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの溶媒中の溶液中に含んでなる電解液である。
【0050】
なおさらに特定的には、少なくとも1つの適当なナトリウム塩を含んでなる電解液は、ナトリウム塩として、NaClO、NaPF、又はNaBF(例えば1M)を:
−プロピレンカーボネート単独;
−エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1:1)混合物;
−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(1:1)混合物;
−ジメトキシエタン/プロピレンカーボネート(1:2)混合物;
−アセトニトリル単独;
−γ−ブチロラクトン単独;又は
−ジメチルホルムアミド単独、
などの溶媒、又は溶媒混合物中の溶液中に含んでなる電解液である。
【0051】
これらの特定の電解液は、高い導電性に適応する一方で、それらを作り上げる成分、NaClOが、LiPFなどのリチウムイオンバッテリにおいて通常使用されるリチウム塩よりも10倍安上がりであることが情報として認識されていることから、非常に高価ではないという利点をもつ。
【0052】
さらに特定的には、負極が上記で述べた複合電極である場合、適応された特定の電解液は、以下の混合物:
−アセトニトリル中の、TEAPF(テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート) + NaPF(例えば1M);又は
−アセトニトリル中の、TEABF(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート) + NaPF(例えば1M)、
などの、塩の混合物を含んでなる電解液であり得る。
【0053】
電解液が少なくとも1つのカリウム塩を含んでなる場合、それは有利にはKClO、KPF、KBF、及びそれらの混合物の中から選択される塩を、カルボネート溶媒、直鎖エーテル溶媒、ニトリル溶媒、ラクトン溶媒、アミド溶媒、及びそれらの混合物の中から選択される少なくとも1つの溶媒中の溶液中に含んでなる。
【0054】
より特定的には、適当な電解液は、KClO、KPF、KBF、及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つのカリウム塩を、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジメトキシエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、ジメチルホルムアミド、及びそれらの混合物の中から選択される、少なくとも1つの溶媒中の溶液中に含んでなる。
【0055】
なおさらに特定的には、少なくとも1つのカリウム塩を含んでなる適当な電解液は、カリウム塩として、KClO、KPF、又はKBF(例えば1M)を:
−プロピレンカーボネート単独;
−エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(1:1)混合物;
−エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(1:1)混合物;
−ジメトキシエタン/プロピレンカーボネート(1:2)混合物;
−アセトニトリル単独;
−γ−ブチロラクトン単独;又は
−ジメチルホルムアミド単独、
などの溶媒、又は溶媒混合物中の溶液中に含んでなる電解液である。
【0056】
これらの特定の電解液は、高い導電性に適応する一方で、それらを作り上げる成分、KClOが、LiPFなどのリチウムイオンバッテリにおいて通常使用されるリチウム塩よりも20倍安上がりであることが情報として認識されていることから、非常に高価ではないという利点をもつ。
【0057】
さらに特定的には、負極が上記で述べた複合電極である場合、適応された適当な特定の電解液は、以下の混合物:
−アセトニトリル中の、TEAPF(テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート) + KPF(例えば1M);
−アセトニトリル中の、TEABF(テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート) + KPF(例えば1M)、
などの、塩の混合物を含んでなる電解液であり得る。
【0058】
正極及び負極は、それぞれ導電性集電体と結合されていてもよく、この集電体は前記電極の1つの面上に取付けられた金属シートとして生じ得る。
【0059】
とりわけ、Na/Naペアの電位、及びカップルK/Kペアの電位が高い(それぞれ+0.22V対Li/Li、及び+0.12V対Li/Li)ことから、コレクタは銅、アルミニウム、ニッケル、又はステンレス鋼の中から選択される金属材料のコレクタを使用することが可能であり、アルミニウムのコレクタが特にコストを理由に好ましい。さらに、電解液にナトリウム又はカリウムを使用することは、アルミニウムコレクタと組合せて、電解液にアセトニトリルを使用する可能性を与え、そのことは以下の利点をもつ:
−リチウム化電解液に比較して、電解液の導電性の非常に強い増大;
−電極の厚さを有利に増大する可能性、及びそれ故エネルギー密度の増大。
【0060】
電解液において使用される有機溶媒がアセトニトリルである場合、本発明の装置はさらにベントなどの、ガス排出システムを含んでなっていてもよい。
【0061】
実際、高サイクル期間の間、アセトニトリルの分解から水素などのガスが生成され得、このガスの生成は装置に局部的変形を引き起し得、このことは電極の分離と、随伴する内部抵抗の増加とを誘発し得る。
【0062】
さらに、電解液において使用される有機溶媒がアセトニトリルである場合、電解液は溶媒の引火性を低減するようにする、少なくとも1つの添加剤を含んでなり得る。
【0063】
カレントコレクタはまた、平滑なコレクタであるか、又はその面の少なくとも1つにおいてエッチング処理されたコレクタであってもよい。
【0064】
好ましくは、集電体が銅製である場合、電解液はアセトニトリルを含んでならず、しかしカーボネート溶媒の混合物などの、少なくとも1つのカーボネート溶媒を含んでなっていてもよい。
【0065】
他の特徴は、本発明に準拠したスーパーキャパシタの実施例に関係した、以下の付加的な記載を読めばさらに明らかとなるであろう。
【0066】
当然ながら、以下の実施例は、本発明の対象を例示するものとして示されるにすぎず、何らこの対象を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】実施例1の段落g)で議論された種々のスーパーキャパシタについて、Re/eに依存した容量質量密度D(mAh/gで表される)における時間依存性変化を例示するグラフである。
図2】実施例2の段落g)で議論された種々のスーパーキャパシタについて、Re/eに依存した容量質量密度D(mAh/gで表される)における時間依存性変化を例示するグラフである。
図3】実施例1の段落g)で議論されたものによる充電/放電条件に供される、本発明によるスーパーキャパシタ及び本発明に準拠しないスーパーキャパシタについての、持続時間(T)に依存した電圧U(V)における時間依存性変化を例示するグラフである。
図4】実施例2の段落g)で議論されたものによる充電/放電条件に供される、本発明によるスーパーキャパシタ及び本発明に準拠しないスーパーキャパシタについての、持続時間(T)に依存した電圧U(V)における時間依存性変化を例示するグラフである。
図5】実施例3のパートa)に準拠した、アセトニトリル及びカリウム塩を含んでなる電解液を用いた本発明によるスーパーキャパシタについての、電位E(V)に依存した強度(mA)における時間依存性変化を例示するグラフである。
図6】実施例3のパートb)に準拠した、アセトニトリル及びカリウム塩を含んでなる電解液を用いた本発明によるスーパーキャパシタについての、電位E(V)に依存した強度(mA)における時間依存性変化を例示するグラフである。
図7】通常のハイブリッドスーパーキャパシタで得られたボルタンモグラムを例示するグラフである。
図8】実施例4(パートa)の様々なセルについてのボルタンモグラム(I(mA)対電位E(V))を例示するグラフである。
図9】実施例4(パートa)の様々なセルについてのボルタンモグラム(I(mA)対電位E(V))を例示するグラフである。
図10】実施例4(パートa)の様々なセルについてのボルタンモグラム(I(mA)対電位E(V))を例示するグラフである。
図11】実施例4(パートa)の様々なセルについてのボルタンモグラム(I(mA)対電位E(V))を例示するグラフである。
図12】実施例4(パートb)の第2のセルを用いて、1.5〜3.2Vの間(3サイクル)のサイクリングにより、及び1.5〜3.7Vの間(3サイクル)のサイクリングによって得られたボルタンモグラムを例示するグラフである。
図13】実施例5(パートa)で行われた試験の範囲内で得られたボルタンモグラムを例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0068】
比較実施例1
この実施例は、その調製法が以下に表示される、本発明に準拠しない種々のスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0069】
a)本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタの製造
本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタは、同一の、即ち同じ性質及び同じ塩基重量の、正極及び負極を用いて調製され、前記電極はエッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスのYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準とした質量パーセントで表され、
前記電極は、厚さ158μm(コレクタを含む)及び活物質質量21.4mgを有する。
【0070】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液はアセトニトリル中のNaPF(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0071】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。容積及び重量当たりの容量は、放電曲線上に線形回帰を適用するため、2.43Vと1.35Vの間で、0.3A/g(1グラム電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0072】
b)本発明に準拠しない第2のスーパーキャパシタの製造
この実施形態では、様式a)の電解液がアセトニトリル中の1M NaClOで置換えられる。電極は厚さ135μm(コレクタを含む)であり、電極当たり15mgの活物質に相当する。
【0073】
c)本発明に準拠しない第3のスーパーキャパシタの製造
この実施形態では、様式a)の電解液がEC/PC/DMC(1/1/1)混合物中の1M LiPFで置換えられる。電極は厚さ160μm(コレクタを含む)であり、電極当たり21.1mgの活物質に相当する。
【0074】
d)結果
以下の表は、電極の質量容量及び質量密度に関して、実施形態a)〜c)で得られた結果を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
これらの結果は、リチウム化された塩を、ナトリウム含有塩で置換えることが、試験されたスーパーキャパシタの質量容量及び質量密度に何ら影響を及ぼさないことを示しており、このことはナトリウム含有塩の使用が、リチウム化された塩の使用と結果に関しては同等であることを示唆し得る。
【0077】
実施例1
この実施例は、本発明による高エネルギー密度の種々のパワーのスーパーキャパシタの、及び比較としての本発明に準拠しないスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0078】
a)本発明による第1のスーパーキャパシタの製造
第1の相では、正極及び負極の調製が行われる。
【0079】
正極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ156μm(コレクタを含む)及び活物質質量15.8mgを有する。
【0080】
負極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−91.7%のリファレンスKS6(Timcal Co.スイス、より入手)のグラファイト;
−3.15%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−3.15%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−2%の、質量平均分子量(M)300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ59μm(コレクタを含む)及び活物質質量19mgを有する。
【0081】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液は、アセトニトリル中のNaPF(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0082】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。エネルギー密度は、0.1A/g(1グラム電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0083】
b)本発明による第2のスーパーキャパシタの製造
この第2のスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M NaClOで置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0084】
c)本発明による第3のスーパーキャパシタの製造
この第3のスーパーキャパシタは、電解液がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート混合物中の1M NaClOで置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0085】
d)本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタの製造
この第4のスーパーキャパシタは、活性炭が負極に配置され、かつグラファイトが正極に配置されることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0086】
e)本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタの製造
この第5のスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M LiPFで置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0087】
f)結果
サイクリングは、0と2.5Vの間で行われ、作製されたスーパーキャパシタの各々につき、72秒において、質量エネルギーE(Wh/kgで表される)、質量パワーP(W/kgで表される)の測定が行われた。
【0088】
得られた結果は、以下の表に表示される。
【0089】
【表2】
【0090】
本発明によるスーパーキャパシタについて、質量エネルギー及び質量パワーの双方の面で高い値が得られることが見てとれる。
【0091】
本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタについては、容量は何ら測定することができず、このことは、ナトリウムが負極で挿入され得るのみであること、及びこの負極に存在する活性炭がナトリウムを挿入させるのに適さない、という事実によって説明される。
【0092】
本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタについては、アセトニトリルによるリチウム−アルミニウム合金の生成が観察され、負極の完全な劣化が生じる。このことはそれ故、リチウム、アルミニウム、及びアセトニトリルの併用を除外する。
【0093】
g)本発明のスーパーキャパシタと本発明に準拠しないスーパーキャパシタとの間の電圧プロファイルの比較
前述の第1のスーパーキャパシタによるスーパーキャパシタは、いくつかの充電/放電条件(それぞれ1gの活物質当たり0.6A、及び1gの活物質当たり1.25A)に供され、持続時間T(秒)に依存した、電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された図3の曲線a)及びb)によって例示される。
【0094】
本発明に準拠しないスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M TEABFで置換えられたことを除いて、比較実施例1の様式a)のスーパーキャパシタに相当し、このスーパーキャパシタは、0.6A/gにおける充電/放電条件に供され、持続時間T(秒)に依存する電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された図2の曲線c)によって例示される。
【0095】
同一の充電条件については、質量エネルギーは本発明によるスーパーキャパシタの場合よりも20%高いことが見られた。
【0096】
h)本発明のスーパーキャパシタのエネルギー密度を最大化するための提案
スーパーキャパシタから放出されるエネルギー密度を最大化するための1つの方法は、これらの電極の双方のエネルギー密度のバランスをとることである。これを行うため、本発明のスーパーキャパシタの構成電極材料の容量を測定することが必要である。
【0097】
実験の計画は、本発明によるスーパーキャパシタの正極及び負極について、種々の厚さ比の効果を試験するため、及び特に最大エネルギー密度を得るための最適比を見つけるため、精密に仕上げられた。この計画は、正極及び負極間の厚さ比が、活物質含量及び使用された活物質質量(活物質はそれぞれ、正極については、活性炭であり、「活物質+」として以下に示され、負極については、グラファイトであり、「活物質−」として以下に示される)と同様、それぞれ変更されたことを除いて、a)において記載されたものと同様のスーパーキャパシタを用いて、即ち、特に、アセトニトリル中の1M NaPF溶媒を用いて実施される。
【0098】
以下の表は、試験したスーパーキャパシタの特徴を分類しており、その特徴は以下の通りである:
−正極の活物質の、負極の活物質に対する質量比、Re/eと称される;
−活物質+の質量パーセント、%mat+と称される;
−活物質−の質量パーセント、%mat−と称される;
−正極の全質量、mtot+と称され、mgで表される;
−負極の全質量、mtot−と称され、mgで表される;
−正の活物質の使用された全質量、mact+と称され、mgで表される;
−負の活物質の使用された全質量、mact−と称され、mgで表される;
−正極の厚さ、e+と称され、μmで表される;
−負極の厚さ、e−と称され、μmで表される。
【0099】
【表3】
【0100】
a)において精密に仕上げられたスーパーキャパシタと同様の方法で、上記の表にその特徴が示されたスーパーキャパシタがグローブボックス中で精密に仕上げられ、サイクリングにおいて試験される。最初のフォーメーション工程は、低い電流(ここでは、100μA、即ち3〜6mA/g、これは、負極について約C/2における、充電/放電プロセスに相当する)を用いて定電流サイクリングを達成することからなる。
【0101】
セルのキャパシティが測定され(Qcell)、得られた値を用いて、mAh/gで表される、正極及び負極の容量質量密度(それぞれQ及びQ)が、以下の式を用いて決定される:
=(Qcell/mtot) Q=(Qcell/mtot
【0102】
このことが、図1のグラフ(それぞれ、2mAでの試験について、曲線a)はQ、曲線b)はQ)から浮かび上がるように、Re/e比はQに対しほとんど影響がない。Qについては、曲線は直線領域へ分解され、そこでQはRe/eに対し直線的に増加する。
【0103】
このことは、定理:負極は正極よりもずっと容量性がある、に適合する。負極を完全には挿入しないことにより、高いパワーレベルにアクセスすることが可能である。Re/e比=1では、双方の電極の容量が等しい。
【0104】
比較実施例2
この実施例は、その調製法が以下に表示される、本発明に準拠しない種々のスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0105】
a)本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタの製造
本発明に準拠しない第1のスーパーキャパシタは、同一の、即ち同じ性質及び同じ塩基重量の、正極及び負極を用いて調製され、前記電極はエッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスのYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準とした質量パーセントで表され、
前記電極は、厚さ106μm(コレクタを含む)及び活物質質量15.9mgを有する。
【0106】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液はアセトニトリル中のKPF(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0107】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。容積及び重量当たりの容量は、放電曲線上に直線回帰を適用することによって2.43Vと1.35Vの間で、0.3A/g(1グラムの電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0108】
b)本発明に準拠しない第2のスーパーキャパシタの製造
この実施例では、様式a)の電解液がアセトニトリル中の1M KClOで置換えられる。電極は厚さ150μm(コレクタを含む)であり、電極当たり21mgの活物質に相当する。
【0109】
c)本発明に準拠しない第3のスーパーキャパシタの製造
この実施例では、様式a)の電解液がEC/PC/DMC(1/1/1)混合物中の1M LiPFで置換えられる。電極は厚さ160μm(コレクタを含む)であり、電極当たり21.1mgの活物質に相当する。
【0110】
d)結果
以下の表は、電極の質量容量及び質量密度に関して、実施形態a)〜c)で得られた結果を示す。
【0111】
【表4】
【0112】
これらの結果は、リチウム化された塩を、カリウムを含む塩で置換えることが、試験されたスーパーキャパシタの質量容量及び質量エネルギー密度に何ら影響を及ぼさないことを示しており、このことはナトリウムを含有する塩の使用が、リチウム化された塩の使用と結果に関しては同等であることを示唆し得る。
【0113】
実施例2
この実施例は、本発明による高エネルギー密度の種々のパワーのスーパーキャパシタの、及び比較としての本発明に準拠しないスーパーキャパシタの調製を例示する。
【0114】
a)本発明による第1のスーパーキャパシタの製造
第1の相では、正極及び負極の調製が行われる。
【0115】
正極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ168μm(コレクタを含む)及び活物質質量17.8mgを有する。
【0116】
負極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−91.7%のリファレンスKS6(Timcal Co.スイス、より入手)のグラファイト;
−3.15%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−3.15%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−2%の、質量平均分子量(M)300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントであり、
この電極は、厚さ66μm(コレクタを含む)及び活物質質量18.9mgを有する。
【0117】
前述の直径14mmの電極は、ボタン電池に組立てられる。用いた電解液は、アセトニトリル中のKPF(1M)であり、ボタン電池全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0118】
システムは、定電流サイクリングによって試験される。エネルギー密度は、0.1A/g(1グラム電極)の条件下に、0Vと2.5Vとの間の10サイクル後に測定される。
【0119】
b)本発明による第2のスーパーキャパシタの製造
この第2のスーパーキャパシタは、電解液がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート混合物中の1M KPFで置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0120】
c)本発明による第3のスーパーキャパシタの製造
この第3のスーパーキャパシタは、電解液がエチレンカーボネート/ジメチルカーボネート混合物中の1M KClOで置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0121】
d)本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタの製造
この第4のスーパーキャパシタは、活性炭が負極に配置され、かつグラファイトが正極に配置されることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0122】
e)本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタの製造
この第5のスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M LiPFで置換えられることを除いて、上記の段落a)において議論されたものと同様の方法に従って製造される。
【0123】
f)結果
サイクリングは、0と2.5Vの間で行われ、作製されたスーパーキャパシタの各々につき、72秒において、質量エネルギーE(Wh/kgで表される)、及び質量パワーP(W/kgで表される)の測定が行われた。
【0124】
得られた結果は、以下の表に表示される。
【0125】
【表5】
【0126】
本発明によるスーパーキャパシタについて、質量エネルギー及び質量パワーの双方の面でより高い値が得られることが見てとれる。
【0127】
本発明に準拠しない第4のスーパーキャパシタについては、容量は何ら測定することができず、このことは、ナトリウムが負極で挿入され得るのみであること、及びこの負極に存在する活性炭がナトリウムを挿入させるのに適さない、という事実によって説明される。
【0128】
本発明に準拠しない第5のスーパーキャパシタについては、リチウム−アルミニウム合金の生成が観察される。
【0129】
このことはそれ故、リチウム、アルミニウム、及びアセトニトリルの併用を除外する。
【0130】
g)本発明のスーパーキャパシタと本発明に準拠しないスーパーキャパシタとの間の電圧プロファイルの比較
前述の第1のスーパーキャパシタによるスーパーキャパシタは、いくつかの充電/放電条件(それぞれ1gの活物質当たり0.6A、1gの活物質当たり1.25A、1gの活物質当たり1.85A、及び1gの活物質当たり3.7A)に供され、持続時間T(秒)に依存した、電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された図3の曲線a)〜d)によって例示される。
【0131】
本発明に準拠しないスーパーキャパシタは、電解液がアセトニトリル中の1M TEABFで置換えられたことを除いて、比較実施例1の様式a)のスーパーキャパシタに相当し、このスーパーキャパシタは、0.6A/gにおける充電/放電条件に供され、持続時間T(秒)に依存する電圧U(V)における時間依存性変化が、添付書類として同封された図4の曲線e)によって例示される。
【0132】
同一の充電条件について、質量エネルギーは本発明によるスーパーキャパシタの場合よりも1.9倍高いことが見られた。
【0133】
h)本発明のスーパーキャパシタのエネルギー密度を最大化するための提案
スーパーキャパシタから放出されるエネルギー密度を最大化するための1つの方法は、これらの電極の双方のエネルギー密度のバランスをとることである。これを行うため、本発明のスーパーキャパシタの構成電極材料の容量を測定することが必要である。
【0134】
実験の計画は、本発明によるスーパーキャパシタの正極及び負極について、種々の厚さ比の効果を試験するため、及び特に最大エネルギー密度を得るための最適比を見つけるため、精密に仕上げられた。この計画は、電極間の厚さ比、活物質含量、及び使用された活物質質量(活物質はそれぞれ、正極については、活性炭であり、「活物質+」として以下に示され、負極については、グラファイトであり、「活物質−」として以下に示される)をそれぞれ変更したことを除いて、a)において記載されたものと同様のスーパーキャパシタを用いて、即ち、特に、アセトニトリル中の1M KPF電解液を用いて実施した。
【0135】
以下の表は、試験したスーパーキャパシタの特徴を分類しており、その特徴は以下の通りである:
−正極の活物質の、負極の活物質に対する質量比、Re/eと称される;
−活物質+の質量パーセント、%mat+と称される;
−活物質−の質量パーセント、%mat−と称される;
−正極の全質量、mtot+と称され、mgで表される;
−負極の全質量、mtot−と称され、mgで表される;
−正の活物質の使用された全質量、mact+と称され、mgで表される;
−負の活物質の使用された全質量、mact−と称され、mgで表される;
−正極の厚さ、e+と称され、μmで表される;
−負極の厚さ、e−と称され、μmで表される。
【0136】
【表6】
【0137】
a)において精密に仕上げられたスーパーキャパシタと同様の方法で、上記の表にその特徴が示されたスーパーキャパシタがグローブボックス中で精密に仕上げられ、サイクリングにおいて試験される。最初のフォーメーション工程は、低い電流(ここでは、100μA、即ち3〜6mA/g、これは、負極について約C/2における、充電/放電プロセスに相当する)を用いて定電流サイクリングを達成することからなる。
【0138】
セルのキャパシティが測定され(Qcell)、得られた値を用いて、mAh/gで表される、正極及び負極の容量質量密度(それぞれQ及びQ)が、以下の式を用いて決定される:
=(Qcell/mtot) Q=(Qcell/mtot
【0139】
図2のグラフ(それぞれ、2mAでの試験について、曲線a)はQ、曲線b)はQ)から明らかなように、Re/e比はQに対しほとんど影響がない。Qについては、曲線は直線領域へ分解され、そこでQはRe/eに対し直線的に増加する。このことは、定理:負極は正極よりもずっと容量性がある、に適合する。負極を完全には挿入しないことにより、高いパワーレベルにアクセスすることが可能である。Re/e比=1では、双方の電極の容量が等しい。
【0140】
実施例3
この実施例は、電解液がカリウム塩をベースとしようと(この実施例のパートa))、又はナトリウム塩をベースしようと(この実施例のパートb))、本発明の装置において、それに良好な性能を与えることを目指して、溶媒としてアセトニトリル使用することの利益を証明することを目的とする。
【0141】
a)カリウム塩をベースとする電解液を用いた本発明による装置を用いて行われた試験
第1の相では、正極及び負極の調製が行われる。
【0142】
正極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−84%のリファレンスYP50F(クラレケミカル(株)日本、より入手)の活性炭;
−4%のスチレン−ブタジエンゴム(BASFより入手、LD417);
−8%のリファレンスsuperC65(Timcal Co.スイス、より入手)のカーボンブラック;
−4%の、質量平均分子量300,000のカルボキシメチルセルロース(Aldrichより入手);
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は、集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントである。
【0143】
負極は、エッチング処理されたアルミニウムコレクタ上に:
−94%のリファレンスSLP30(Timcal Co.スイス、より入手)のグラファイト;
−2%の導電性カーボンVGCF(「気相成長炭素繊維(vapour grown carbon fibre)」の頭字語);
−2%のカルボキシメチルセルロース(リファランス7HXF、Aqualon);
−2%の、51%のスチレン−ブタジエンゴム(商標LD417(登録商標)でBASFより入手)を用いた分散物、
を含んでなる組成物を用いて厚さ30μmにコーティングすることにより調製され;
%は集電器を除いた電極の全質量を基準として表された質量パーセントである。
【0144】
10.24cmに等しい表面積(即ち、3.2x3.2cmの寸法)をもつ前述の正極及び負極は、「パウチセル」タイプのセルに組立てられる。
【0145】
用いた電解液は、カリウム塩(KPF、1M)を含んでなる、アセトニトリルを含んでなる溶液であり、セル全体を含浸させるために充分な量で使用される。用いたセパレータは、厚さ25μmのPDA25(登録商標)(ポリプロピレンに相当)(Treofan GmbH、ドイツ、より入手)である。
【0146】
セルは、サイクリックボルタンメトリ−により調べられ、その結果が図5に移されている。
【0147】
ボルタンモグラムの下面積は特に大きく、ボルタンモグラムの下面積がスーパーキャパシタの容量に比例することを認識すれば、このことはスーパーキャパシタのかなりの容積を裏付けるものである。
【0148】
b)ナトリウム塩をベースとする電解液を用いた本発明による装置を用いて行われた試験
このパートで試験された装置は、この場合にはアセトニトリルとナトリウム塩NaPF(1M)とを含んでなる溶液である電解液を除き、パートa)において例証されたものに類似する。
【0149】
装置はまた、サイクリックボルタンメトリ−により調べられ、その結果は図6に複写されている。
【0150】
結果は、パートa)の装置を用いて得られたボルタンモグラム下面積が、パートb)の装置を用いて得られたものより大きいことを除いて、パートa)において例証された装置を用いて観察されたものと同様の傾向を示す。
【0151】
実施例4
この実施例は、本発明の装置の電極のバランシングの影響を、装置の性能(この実施例のパートa))及び装置の安定性(この実施例のパートb))について証明することを目的とする。
【0152】
a)装置の性能に対する電極のバランシングの影響
前置きとして、ハイブリッドスーパーキャパシタを用いて得られたボルタンモグラムを例示する図7を参照すれば、かかるスーパーキャパシタを用いて予想される通常の電気化学的挙動が想起される。
【0153】
この図において、2つの部分が見られ(図では、それぞれ、パートa及びパートbと称される)、パートaは、いわゆる「スーパーキャパシタ性の」部分に相当し、パートb、はいわゆる「バッテリ」部分に相当する。
【0154】
現在、装置の最終的なエネルギーは、容量に比例し及び印加電圧の二乗に比例することから、それ故、できるだけ高い電圧に向けて、装置の動作を「バッテリ」部分(これは、最大の容量にアクセスする可能性を与える)に向けてずらすべく管理することに興味が持たれ得る。
【0155】
これを行うため、試験は、実施例3のパラグラフa)(これについては、電解液の塩はカリウム塩、KPFである)に記載されたものに類似の装置であって、異なる塩基重量(又は表面質量)をもつ負極を含んでなり、かつさらに特定的には以下の装置を用いて実施された:
−セル、いわゆる第1のセル、4mg/cmの負極と、8mg/cmの正極とを具備し、これは(正極/負極)比2に相当する;
−セル、いわゆる第2のセル、6mg/cmの負極と、8mg/cmの正極とを具備し、これは(正極/負極)比1.3に相当する;
−セル、いわゆる第3のセル、9mg/cmの負極と、8mg/cmの正極とを具備し、これは(正極/負極)比0.88に相当する;
−セル、いわゆる第4のセル、13mg/cmの負極と、8mg/cmの正極とを具備し、これは(正極/負極)比0.61に相当する。
【0156】
これらの異なるセルは、サイクリックボルタンメトリ試験に供され(0.5→3.2から0.5→4Vまで)、その結果は、第1のセルから第4のセルまで、それぞれ図8〜11に移される。
【0157】
第1のセル(図8)では、最初のサイクル(0.5〜2.2V)が起こるや否や、ピークの存在を認め得、既に「バッテリ」パートにあることを示している。
【0158】
反対に、第4のセル(図11)では、最初のサイクル(0.5〜2.2V)は、「スーパーキャパシタ性の」パートに特異的な長方形の形状を有しており、「バッテリ」パートについては、0.5〜3Vのサイクルの間に現れるのみであって、即ち第1のセルに比較して約1Vの増加である。
【0159】
第2及び第3のセルは、同じ傾向に従う。
【0160】
これらの試験は、本発明による装置では、正極に比較して負極の過剰な塩基重量により、「バッテリ」パートへ向けた移動が容易に可能であることを示している。
【0161】
b)システムの安定性に対するバランシング及びサイクリングリミットの影響
この部分では、本発明の装置の安定性に対する本発明の装置上の電極のバランシングの影響が調べられる。
【0162】
これを行うため、試験は、実施例3のパラグラフa)(これについては、電解液の塩はカリウム塩、KPFである)に記載されたものに類似の装置であって、異なる塩基重量(又は表面質量)をもつ負極を含んでなり、かつさらに特定的には以下の装置を用いて実施された:
−セル、いわゆる第1のセル、4mg/cmの負極と、8mg/cmの正極とを具備し、これは(正極/負極)比2に相当する;
−セル、いわゆる第2のセル、13mg/cmの負極と、8mg/cmの正極とを具備し、これは(正極/負極)比0.61に相当する。
【0163】
前述のセルは、20mAで1,000サイクルの間に、1.5〜3.7Vの定電流サイクリングにより試験された。
【0164】
塩基重量の増加が、装置の安定性に影響を及ぼすことが見られる(特に、第2のセルについて、1,000サイクルにおいて、サイクル1に比較して40%を超える容量の損失によって具現化され、一方第1のセルではそれは60%を超える)。
【0165】
安定性をさらに改善するため、3.7V〜3.2Vを通すことにより、装置の動作上限の緩和が試験された。
【0166】
第2のセルを用いて、1.5〜3.2Vの間(3サイクル)をサイクリングすることにより、また1.5〜3.7Vの間(3サイクル)をサイクリングすることにより得られたボルタンモグラムを例示している図12によって確認される通り、13mg/cmの塩基重量をもつ負極については、3.2Vにサイクルアップされる場合、3サイクルの終わりには何ら電流損失はないことが確認された(一方3.7Vにサイクルアップされる場合には、損失は既に確認されている)。
【0167】
1.5〜3.2Vの間で1,000サイクルにわたり定電流サイクリングを動作することにより、10%未満の容量の損失が確認され、このことが多くの適用にとり興味深いことが証明され得る。
【0168】
実施例5
この実施例は、リチウムをベースとする貯蔵システムと比較して、本発明の装置の安全面を証明することを目的とし、特に以下の事実に関連する:
−本発明の装置を完全に放電する可能性(パートa);
−パシベーション層なしに行う可能性(パートb);
−正極に対する負極のオーバーディメンショニングなしに行う可能性(パートc);
−アセトニトリル中で固体カリウムを溶解する可能性。
【0169】
試験された本発明の装置は、実施例3のパートa)のものである。
【0170】
a)本発明による装置を完全に放電する可能性
リチウムをベースとする貯蔵システムの場合、システムを完全に放電することは不可能であり、それはシステムへ負荷されたエネルギーが存在することを意味し、それ故それは安全に関わる潜在的リスクである。
【0171】
本発明の試験された装置の場合、装置を完全に放電することが可能であることを確認するため、0.5〜3.2Vの3サイクル、そして次に0〜3.2Vの3サイクルが行われた。
【0172】
上記で述べた試験のボルタンモグラムを例示する図13において確認される通り、装置を完全に放電することは、装置が以降のサイクル中に同じ容量をもつことから、装置の性能に何ら影響を及ぼさない。
【0173】
さらに、装置の「事後分析」研究、即ち装置を開けた後、これらの種々の要素を目視により検査することにより、装置の完全な放電後に要素は何ら劣化を受けなかったと断言する可能性が示された。
【0174】
結論として、システムの完全な放電の可能性は、装置に直接介入することが絶対必要である場合に、無視できない利点を表す。
【0175】
b)パシベーション層を省略する可能性
リチウムをベースとするシステムの場合、安全問題の1つは、負極におけるパシベーション層形成の必要性に関係する。一般に適用される解決策は、その大部分が最初のサイクルで消費されるリチウムイオンを用いて、システムを飽和するための付加的なリチウムシートを適用することからなる。この適用には安全上の問題及び有意なオーバーコストがある。
【0176】
本発明の装置の場合、パシベーション層の形成は必ずしも必要ではなく、このことは安全性の観点から利点をもつ。
【0177】
c)正極に対する負極のオーバーディメンショニングなしに行う可能性
リチウムをベースとするシステムの場合、負極の表面におけるリチウム金属の任意の被着なしに行うという観点から、負極をオーバーディメンションすることが慣例である。
【0178】
本発明の装置の場合、負極をオーバーディメンショニングすることによって試験を行った(正極について、3232mmの代わりに3535mm)。この試験は、性能の面で何ら差異を示さず、このことはさらに、本発明の装置の別の利点である。
【0179】
d)アセトニトリル中で固体カリウムを溶解する可能性
アセトニトリルの使用は、アセトニトリル中のカリウムの性質の故に、電極の表面での固体カリウムの被着に関連したリスクを回避する可能性を与えるという意味で、確かに利点がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13