(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509831
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】車両用燃料貯蔵システムを減圧させるための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B60K 15/035 20060101AFI20190422BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20190422BHJP
B60K 6/42 20071001ALI20190422BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
B60K15/035 B
B60K15/035 C
B60K15/05 A
B60K15/05 B
B60K15/035 Z
B60K6/42
F02M37/00 301Q
F02M37/00 301F
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-522418(P2016-522418)
(86)(22)【出願日】2014年6月20日
(65)【公表番号】特表2016-528086(P2016-528086A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】EP2014063071
(87)【国際公開番号】WO2014206895
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】13173897.3
(32)【優先日】2013年6月26日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515269659
【氏名又は名称】プラスチック・オムニウム・アドヴァンスド・イノベーション・アンド・リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ビョルン・クリエル
【審査官】
米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102007036112(DE,A1)
【文献】
特開2004−156499(JP,A)
【文献】
特開2010−216287(JP,A)
【文献】
特開平4−43849(JP,A)
【文献】
特開平11−28941(JP,A)
【文献】
特開2010−120535(JP,A)
【文献】
特開平8−258578(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102007011891(DE,A1)
【文献】
特開2008−114845(JP,A)
【文献】
特開2008−189305(JP,A)
【文献】
特開平11−193755(JP,A)
【文献】
特開2011−169276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/035
B60K 6/42
B60K 15/05
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分(100)及び第2部分(150)を備える車両用燃料貯蔵システムを減圧させるための方法であって、
前記第1部分(100)が、閉鎖可能なフィラーヘッド開口部(105)と流体連通し、前記第1部分(100)が、バルブ(120)により前記第2部分(150)から分離されており、
前記方法が、
− 第1期間において、前記バルブ(120)及び前記フィラーヘッド開口部(105)が閉鎖される間に、前記第1部分(100)を大気(180)と連通させることによって前記第1部分(100)を減圧させるステップ(220)と、
− 前記第1期間と同じ時間に開始するか又は前記第1期間よりも遅く開始する第2期間において、前記第2部分(150)を前記大気(180)と連通させることによって前記第2部分(150)を減圧させるステップ(240)と、
− 前記第1期間の終了より、前記フィラーヘッド開口部(105)へのアクセスの準備完了を得るステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1部分(100)が、フィラーネックを備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大気(180)との連通が、キャニスタ(160)を介して確立されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1部分(100)を前記減圧させるステップ(220)の前に、前記第1部分(100)が、前記大気(180)から、且つ存在する場合には前記キャニスタ(160)から隔離され、前記第1部分(100)を前記減圧させるステップ(220)が、燃料補給作業開始を検出した(210)ときに行われることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記燃料補給作業開始の前記検出(210)が、ボタンが押されたことを検出することを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記燃料補給作業開始の前記検出(210)が、燃料フラップが操作されたことを検出することを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記燃料補給作業開始の前記検出(210)が、燃料キャップ(190)が操作されたことを検出することを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1部分(100)を前記減圧させるステップが完了したときに、前記フィラーヘッド開口部(105)へのアクセスの準備完了を表示するステップ(230)をさらに含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記表示するステップ(230)が、前記燃料フラップをロック解除することを含むことを特徴とする請求項6を引用する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記表示するステップ(230)が、前記燃料キャップ(190)をロック解除することを含むことを特徴とする請求項7を引用する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記表示するステップ(230)が、車両オペレータに視覚的又は聴覚的信号を提供することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
第1部分(100)及び第2部分(150)を備える燃料貯蔵システムであって、
前記第1部分(100)が、閉鎖可能なフィラーヘッド開口部(105)と流体連通し、前記第1部分(100)が、バルブ(120)により前記第2部分(150)から分離されており、バルブ装置(110)が、前記第1部分が大気(180)と連通することを可能にし、且つ前記第2部分(150)が前記大気(180)と連通することを可能にするように構成され、前記バルブ装置(100)が、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された制御装置によって制御されることを特徴とする燃料貯蔵システム。
【請求項13】
前記フィラーヘッド開口部(105)へのアクセスの準備完了を表示するように構成された表示器手段をさらに備え、前記バルブ装置(110)及び前記表示器手段が、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成された制御装置によって制御されることを特徴とする請求項12に記載の燃料貯蔵システム。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の燃料貯蔵システムを備えるプラグインハイブリッド車両。
【請求項15】
制御装置に請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行させるように構成されたコード手段を備えるコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用燃料貯蔵システムの分野に関し、特に、ハイブリッド車両、燃料電池を動力とした車両又は非ハイブリッド内燃機関車両のための燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関によって伝えられる車両は、燃料蒸気がタンクから燃料吸着キャニスタに導かれる燃料蒸気放出回路を備えている。このようにして、例えば日中の温度変化の影響下におけるタンク内の過度の圧力の増大は、回避することができる。パージ回路が設けられ、内燃機関は、稼働状態におかれた場合にパージ回路を通じて、吸着された燃料を回収する。
【0003】
あるいは、ハイブリッド車両は、電気モータ又は内燃機関により伝えられるように構成されている。車両が、行程の前に所定の時間の間、電源にプラグ接続されたと仮定すると、ハイブリッドの特別な派生は、所定の行程の最初の60kmから100kmの間、電力のみを使用する。これらの車両は、“プラグインハイブリッド”とみなされる。“プラグインハイブリッド”車両は、内燃機関を一度も動作させずに多くの走行サイクルを行う。このような状況において、キャニスタは、定期的にパージされる予定とされず、従って、キャニスタは、通常、タンクから結合解除され、これによりキャニスタが過飽和状態になることを回避しなければならない。結果として、このようなハイブリッド車両の燃料タンクは、より多くの量の燃料蒸気を収容し、且つより高い圧力レベルに耐えるように構成されなければならない。
【0004】
しかしながら、燃料タンクの内部の増大した圧力は、燃料補給作業のためにタンクを開放する前に、環境的に安全な方法で軽減され、これにより、比較的多くの量の燃料蒸気を環境に解放すること、又は燃料蒸気を車両オペレータの顔に吹き付けることを回避しなければならない。
【0005】
公知のシステムでは、圧力軽減は、タンクを車両オペレータの要求に応じてキャニスタと流体連通させることによって達成され、このオペレータは、概して、この効果のためにダッシュボード上のボタンを押さなければならない。放出回路内のさまざまなバルブ及びラインによって導入される圧力損失を考慮すると、圧力軽減は、10秒のオーダーである所定の時間がかかる。この時間は、不都合なことに長く考慮される。
【0006】
バイエルン発動機製造株式会社の名義での特許文献1は、燃料タンクのフィラーチューブ内に設けられたチェックバルブ装置を有するシステムであって、装置が、圧力密封され、且つ周囲圧力とは反対に過度の圧力のタンクの外側でロックされた、システムを開示している。装置は、燃料補給中にタンクポンプノズルとの機械的接触なく開放されるように、チューブ内に配置されている。燃料は、ノズルを通じてチューブ内に流れる。バルブが、人が燃料補給作業を実行する場合に、人がチューブにおいてカバー又は留め金を開くときに、空気分離器放出パイプにおいて開放される。
【0007】
特許文献1は、圧力軽減要求と、実際の燃料補給作業が開始できる時点と、の間の時間を減少させる一方で、相当な量である可能性がある、フィラーチューブ内に存在する任意の蒸気の環境への解放という欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102 007036112号明細書
【特許文献2】欧州特許出願13176402.9号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態の目的は、上述した欠点を示すことなく、圧力軽減要求と、実際の燃料補給作業が開始できる時点と、の間の時間を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によれば、第1部分及び第2部分を備える車両用燃料貯蔵システムを減圧させるための方法であって、第1部分が、閉鎖可能なフィラーヘッド開口部と流体連通し、第1部分が、バルブにより第2部分から分離されており、方法が、第1期間において、前記バルブ及び前記フィラーヘッド開口部が閉鎖される間に、第1部分を大気と連通させることによって第1部分を減圧させるステップと、第2期間において、第2部分を大気と連通させることによって第2部分を減圧させるステップと、前記第1期間の終了より、フィラーヘッド開口部へのアクセスの準備完了を得るステップと、を含む方法が提供される。
【0011】
この出願の全体にわたって、用語“減圧”及び“圧力軽減”は、内部燃料システム圧力を周囲圧力と平衡にさせるプロセスを示すために使用される。平衡は、内部燃料システム圧力を周囲圧力の小さい差内で得ることを示し、この差は、−50mbarから50mbarの間であってもよく、好ましくは−20mbarから20mbarの間、さらにより好ましくは−10mbarから10mbarの間である。
− 測定された圧力を所定の圧力範囲と比較することから、
− 所定の時間が経過した後に、
減圧状態の終了を決定することができる。
減圧状態が達成されると、その後、フィラーヘッド開口部へのアクセスの準備完了が得られる。
当然ながら、減圧状態は、稼働状態、例えば周囲温度、内部タンク温度、周囲圧力及び燃料の揮発度に応じて較正することができる。
【0012】
第1期間及び第2期間は、同じ時間に、又はおよそ同じ時間に開始する。あるいは、第2期間は、第1期間よりも遅く開始してもよい。特に、第2期間は、第1期間が終了したとき、すなわち第1部分の減圧が完了したときに開始してもよい。
【0013】
本発明は、特に、準備完了のための時間が、段階的な圧力軽減を提供することによって減少することができるという発明者の洞察に基づいており、フィラー開口部に面する燃料貯蔵体積の密封された部分が初期に減圧され、この完了後にフィラーパイプへのアクセスが可能にされるとともに、燃料貯蔵容積の残りの部分が軽減されている。準備完了が得られると、使用者は、過度の炭化水素蒸気にさらされることなく燃料キャップを開放することができる。さらに、大気への排気は減少される。
【0014】
本発明による方法の一実施形態では、第1部分はフィラーネックを備えている。
【0015】
この実施形態は、特にタンクの内部に高圧(例えば350mbar)が存在する場合に、運転者が燃料補給作業を要求する時点と、運転者が燃料キャップを開放することが可能になる時点と、の間に必要とされる時間を著しく減少させる。最新式の密封された燃料システムでは、完全な燃料システムは、1ステップで減圧され、これは、多くの場合、5秒から10秒の間の減圧時間をもたらす。フィラーパイプの体積が極めて小さい(概して1リットルよりも少ない)ので、フィラーパイプは、数秒未満で減圧される。
【0016】
本発明による方法の一実施形態では、大気との連通が、キャニスタを介して確立される。
【0017】
ガス流内に存在する炭化水素を吸着するためのキャニスタの使用は、燃料貯蔵システムの部分を通気させる間に、環境内に解放される炭化水素の量を最小化させる。
【0018】
本発明による方法の一実施形態では、第1部分を減圧させるステップの前に、第1部分が、大気から、且つ存在する場合にはキャニスタから隔離され、第1部分を減圧させるステップが、燃料補給作業開始を検出したときに行われる。
【0019】
この実施形態では、放出回路は、通常閉鎖されている。これは、(極端に)キャニスタを飽和させること、及び/又は長期間の間キャニスタをパージする機会がない場合に環境に多量の燃料蒸気を解放することを回避する。
【0020】
大気及びキャニスタからの隔離は、少なくとも第2部分、すなわち貯蔵システムの容量の大部分に、且つ選択的に第1部分にも、すなわちフィラーヘッドと連通する部分に当てはまる。
【0021】
特別な一実施形態では、燃料補給作業開始の検出は、ボタンが押されたことを検出することを含む。
【0022】
別の特別な実施形態では、燃料補給作業開始の検出は、燃料フラップ(すなわち燃料ドア)が操作されることを検出することを含む。操作は、開放しているフラップを引っ張ること、又は燃料フラップ上で共通であるプッシュプッシュロックを係合解除することによってフラップを開放させようとすることからなる。
【0023】
別の特別な実施形態では、燃料補給作業開始の検出は、燃料キャップが操作されることを検出することを含む。操作は、所定の角度にわたって燃料キャップを回すことからなる。
【0024】
一実施形態では、本発明による方法は、第1部分を減圧させるステップが完了したときに、フィラーヘッド開口部へのアクセスの準備完了を表示するステップをさらに含む。
【0025】
燃料補給作業開始の検出が、燃料フラップが操作されることを検出することを含む場合、表示は、燃料フラップをロック解除することを含む。この場合、車両オペレータは、最初の放出が完了するまで、フィラーヘッド開口部にアクセスさせる、フラップを完全に開放させることが物理的に防止される。
【0026】
燃料補給作業開始の検出が、燃料キャップが操作されることを検出することを含む場合、表示は、燃料キャップをロック解除することを含む。この場合、車両オペレータは、燃料キャップを完全に開放させることと、最初の放出が完了するまでにフィラーヘッド開口部にアクセスすることと、が物理的に防止される。
【0027】
特別な一実施形態では、表示は、車両オペレータに視覚的又は聴覚的信号を提供することを含む。
【0028】
このような信号は、車両オペレータが、フィラーヘッド開口部を開放させることが安全であるときを決定することを可能にする。
【0029】
本発明による方法の一実施形態では、燃料貯蔵システムは、ガソリンを収容するように構成されている。別の実施形態では、燃料貯蔵システムは、ガソリンと、0%から95%の含有量のメタノール及び/又はエタノールと、の混合物を収容するように構成されている。
【0030】
本発明は、特に、ガソリンを貯蔵するためのシステムという状況で有益である。これは、このタイプの燃料が、温度が上昇して燃料システムの内部の圧力が高まったときに、特に蒸気を作り出すためである。
【0031】
本発明の一側面によれば、第1部分及び第2部分を備える燃料貯蔵システムであって、第1部分が、閉鎖可能なフィラーヘッド開口部と流体連通し、第1部分が、バルブにより第2部分から分離されており、バルブ装置が、第1部分が大気と連通することを可能にし、且つ第2部分が大気と連通することを可能にするように構成され、バルブ装置が、上述した方法を実行するように構成された制御装置によって制御される、燃料貯蔵システムが提供される。
【0032】
一実施形態では、本発明による燃料貯蔵システムは、フィラーヘッド開口部へのアクセスの準備完了を表示するように構成された表示器手段をさらに備え、バルブ装置及び表示器手段が、上述した方法を実行するように構成された制御装置によって制御される。
【0033】
本発明の一側面によれば、上述した燃料システムを備えるプラグインハイブリッド車両が提供される。
【0034】
本発明の一側面によれば、制御装置に上述した方法を実行させるように構成されたコード手段を備えるコンピュータプログラム製品が提供される。
【0035】
本発明におけるこれら及び他の側面及び利点は、添付の図面を参照してこれからより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態による燃料システムを概略的に表す。
【
図2】本発明の一実施形態による方法のフローチャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1のシステムは、フィラーヘッド105で終端するフィラーネック100と連通する燃料タンク150を含んでいる。一般性を喪失することなく、説明されるフィラーヘッド105は、燃料キャップ190によって遮断される。フィラーヘッド内に組み込まれた適切な閉鎖機構により、キャップのない構成が使用されてもよい。
【0038】
本発明の実施形態で使用される燃料タンク150は、好ましくは、プラスチックから作られる(すなわち、燃料タンクの壁は主にプラスチックから作られる)。
【0039】
用語“プラスチック”は、少なくとも1つの合成樹脂ポリマーを含む任意の材料を意味する。
【0040】
いかなるタイプのプラスチックも適している。特に適しているプラスチックは、熱可塑性物質のカテゴリーに属している。
【0041】
特に、ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、ポリケトン、ポリアミド及びそのコポリマーを使用することが可能である。ポリマー又はコポリマーの混合物が使用されてもよく、同様に、無機、有機且つ/又は天然フィラー、例えば非限定的に炭素、塩及び他の無機派生物、天然もしくはポリマー繊維とのポリマー材料の混合物を使用することも可能である。上述したポリマー又はコポリマーの少なくとも1つを含む、積み重ねられるか又は結合された層からなる多層構造を使用することも可能である。
【0042】
しばしば使用される1つのポリマーはポリエチレンである。極めて良好な結果が、高密度ポリエチレン(HDPE)で得られた。
【0043】
タンクの壁は、単一の熱可塑性物質層からなるか、又は2つの層からなってもよい。有利には、1つ以上の他の考えられる追加層が、液体及び/又は気体に対するバリア材料から形成された層からなってもよい。好ましくは、バリア層の性質及び厚さは、タンクの内面と接触する液体及び気体の浸透性を最小化させるように選択される。好ましくは、この層は、バリア樹脂、すなわち、燃料、例えばEVOH(部分的に加水分解されたエチレン/ビニルアセテートコポリマー)に対して不浸透である樹脂をベースとしている。あるいは、タンクは、燃料に対してタンクを不浸透とさせるために表面処理(フッ素化又はスルホン化)を受けてもよい。
【0044】
好ましくは、タンクは、HDPEベースの外側層の間に位置づけられたEVOHベースのバリア層を含む。
【0045】
燃料タンク150は、内部放出ライン140を介して通気させられ、内部放出ラインの開放端は、タンクの上部に位置しており、タンクの上部は、通常、タンク内に存在する液状燃料の表面の上にある“蒸気ドーム”を構成する。放出回路は、キャニスタ160と、大気ポート180を介してキャニスタの清浄空気端を大気に接続するラインと、をさらに含んでいる。キャニスタ160は、キャニスタパージバルブ170を介して内燃機関に接続するラインを越えて燃料蒸気端からパージされることができる。追加的なバルブ(図示せず)が、キャニスタへのアクセスをブロックするために放出ラインに存在し、これにより、中間的なパージなく長期間の間、キャニスタを燃料蒸気にさらすことを回避してもよい。
【0046】
内部チェックバルブ120が、フィラーネック100から燃料タンクの主要容積を密封する。
【0047】
内部チェックバルブ120は、フィラーパイプ100内の圧力が燃料タンク150の内部の圧力よりも高い場合に開放されるように構成される。
図1で説明される例では、内部チェックバルブ120は、フラッパータイプからなる。他の実施形態では、内部チェックバルブ120の開閉は、バネによって機械的に管理される。さらに別の実施形態では、内部チェックバルブ120は、電子チェックバルブによって置換することができる。
【0048】
本発明によるシステムの実施形態は、車両オペレータが、より迅速に燃料キャップを取り外して、以下の順序のステップ:
− フィラーパイプ100の減圧;
− フィラーキャップ190の開放;
− 燃料補給ノズルの導入;
− 燃料システムの燃料補給の開始;
を通じてフィラーパイプのノズルガイド内にノズルを導入することを可能にする。
【0049】
燃料システム150の残りの部分の減圧は、フィラーパイプ100の減圧と略同時に開始し、その後、継続し、これにより燃料補給作業の開始時に極めて低い圧力を有する。あるいは、燃料システム150の残りの部分の減圧は、フィラーパイプ100の減圧が終了したときに開始してもよい。
【0050】
本発明による圧力軽減プロセスのさまざまな段階は、バルブ装置110によって制御される。バルブ装置110は、当業者に公知の任意のさまざまなタイプの1つ以上のバルブからなり、これらのバルブは、以下のバルブチャネル:
− ポートDからポートA:このバルブチャネルは、フィラーネック100内に存在する燃料蒸気がキャニスタ160に到達することを可能にする;
− ポートEからポートA:このバルブチャネルは、燃料タンク150の蒸気ドーム内に存在する燃料蒸気がキャニスタ160に到達することを可能にする;
− ポートBからポートC:このバルブチャネルは、キャニスタ160の清浄空気側からの比較的清浄な空気が大気ポート180に到達することを可能にする;
の開放又は密封を可能にするように構成される。
【0051】
好ましくは、バルブ装置110は、常にキャニスタ160から燃料タンク150又はフィラーネック100への逆流を防止するようにさらに構成されている。
【0052】
特別な一実施形態において、バルブ装置110は、出願人の名義での特許文献2に開示されるものと同じタイプの電子バルブによって置換することができ、特許文献2の内容は、参照することによって本出願に組み込まれる。
【0053】
一方、(それぞれのポート接続部C−D及び/又はC−Eを介しての)清浄空気の流入が、選択的に、燃料タンク150及び/又はフィラーネック100内での圧力下の状況を軽減するために可能とされてもよい。
【0054】
フィラーネック100の通気は、バルブチャネルD−A及びB−Cを開放することによって達成される一方で、内部チェックバルブ120は、閉鎖されたままである。バルブの構成に応じて、この段階でバルブチャネルE−Aを閉鎖することが必要となる可能性がある。
【0055】
燃料タンク150の主要容積の通気は、バルブチャネルE−A及びB−Cを開放することによって達成される一方で、内部チェックバルブ120は、閉鎖されたままである。
【0056】
バルブ装置110は、完全に自動化された構成であるか、又は例えばECUもしくは専用の燃料システム制御ユニットによって外部から管理される1つ以上のバルブ要素の組立体であってもよい。一般性を喪失することなく、制御要素は、燃料システム制御ユニット130として
図1で説明される。燃料システム制御ユニット130は、本発明による方法のステップを制御するように構成されたハードウエア及びソフトウエアの任意の従来型の組み合わせである。その趣旨では、燃料システム制御ユニット130は、さまざまなセンサから信号を受信し、バルブ装置110における適切な要素を作動させる。燃料システム制御ユニット130は、本明細書で説明される本発明の対応する実施形態に従って、燃料フラップ及び/又は燃料キャップのロック解除をさらに制御してもよい。センサ(図示せず)は、燃料補給作業を開始するための要求を検出するためのセンサを含み、且つ燃料貯蔵システムの部分(特にフィラーネック100及びメインタンク150)ごとに圧力センサに分かれ、これにより、減圧段階の完了を決定する。特別な一実施形態では、単一の圧力センサが、燃料貯蔵システム内に設置され、このため、圧力センサが、第1期間においてフィラーパイプ100内の圧力の測定を与え、後の第2期間において燃料タンク150内の圧力の測定を与える。有利な一実施形態では、バルブ装置110は、フィラーパイプ及び/又は燃料タンク内の圧力を測定するために1つ以上の圧力センサを備える電子バルブによって置換することができる。
【0057】
これから、本発明の段階的な減圧方法の一実施形態が、
図2を参照してより詳細に説明される。
【0058】
燃料補給作業の開始は、概して、車両オペレータの特定の動作、例えば専用のボタンを押すこと、フィラーヘッドを覆うフラップを開放することなどによって生じる。それに応じて、燃料補給作業の開始を検出するステップ210が、ボタンの押圧を検出すること、フラップの開放を検出すること、フィラーパイプキャップを部分的に開放すること、又は(特にキャップのないフィラーヘッドの場合に)燃料補給ノズルの部分的な挿入を検出することなどによって達成される。燃料補給作業が、燃料ドアを(手動で又は自動的に)開放させることによって開始されると、ダッシュボード上の燃料補給要求ボタンを有する必要性が取り除かれ、これは、コストの減少につながる。
【0059】
検出ステップ210は、方法の残りの部分が、所定の状態が生じると電子制御ユニットによって始動させられるという意味においては、選択的である。
【0060】
次のステップ220では、圧力が、フィラーヘッドに面する第1分容積(又は“部分”)から軽減される。第1部分の減圧は、燃料貯蔵システム全体の減圧よりも短い時間がかかる。第1部分が、フィラーヘッド、従って車両オペレータに面する部分であるので、車両オペレータのフィラーヘッドへのアクセスを可能とするためにこの部分を減圧させることは十分である。このようにして、フィラーヘッド開口部へのアクセスが、従来技術の解決法に対して早められる。
【0061】
第1部分の減圧が完了すると、これは、適切に位置付けられた圧力センサによって検出され、システムは、要求される燃料補給作業のための準備が完了し、すなわち、フィラー組立体は、それから安全な方法でアクセスすることができる。好ましくは、システムは、燃料補給作業のために明確に合図をするか、又はその準備が完了していることを表示する(ステップ230)。この“表示”は、さまざまな方法で行われる。最も安全な方法は、車両オペレータが(例えばフラップの燃料キャップをロックすることによって)初期にフィラーヘッドにアクセスすることが物理的に防止され、且つシステムの準備が完了していることが(例えばフラップの燃料キャップをロック解除することによって)この防止を取り除くことによって表示される方法である。システム状態を表示するための他の一般的な方法が、視覚的表示器及び聴覚的表示器を含む。
【0062】
合図された準備が完了していることと、燃料が流れる実際の開始と、の間で、車両オペレータは、フラップ及びキャップを開放させることを完了させ、ノズルを挿入し且つフィラーピストルのフローレバーを係合させなければならない。これらの作業は、所定の時間がかかり、この間に、第2部分の減圧240が継続し、且つ可能であれば完了しさえする。
【0063】
第2部分の減圧が
図2において連続的なステップ240として説明されるが、第1部分の減圧(ステップ220)と平行してこのステップを開始することができる。
【0064】
第2部分の減圧240が完了すると、これは適切に位置付けられたセンサによって検出され、実際の燃料補給が始まることができる。第2部分の減圧240が、車両オペレータが燃料を流そうとする時間までに完了していない場合には、内部チェックバルブ120が閉鎖されたままであるべきであり、これにより、燃料ノズルの自動シャットオフシステムを即座に始動させる。それに応じて、内部チェックバルブ120は、その趣旨で信号を受信すると強制的に閉鎖されるように構成されるべきである。内部チェックバルブ120は、第2部分の減圧240が完了されると、その通常状態(通常閉鎖され、フィラーヘッド側からの超過圧力によって開放される)に戻ることを可能にされる。
【0065】
上記の説明において“車両オペレータ”と言及している場合、これは、限定することなく、車両に関する作業に所定の時間関わる任意の人に言及する。それは、ガソリンスタンドの係員、運転者、整備士などである。
【0066】
本発明が、本明細書の上記において個別のシステム及び方法の実施形態を参照して説明されたが、これは明確にするだけのためになされたものである。当業者は、システム又は方法単独に関連して説明された特徴が、同じ技術的効果及び利点を伴って、方法又はシステムそれぞれに適用することができることを理解するであろう。さらに、本発明の範囲は、これらの実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって規定される。
【符号の説明】
【0067】
100 第1部分、105 フィラーヘッド開口部、120 バルブ、150 第2部分、160 キャニスタ、180 大気