特許第6509839号(P6509839)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘリオスペクトラ アクチエボラグの特許一覧

<>
  • 特許6509839-植物の成長を制御する方法 図000002
  • 特許6509839-植物の成長を制御する方法 図000003
  • 特許6509839-植物の成長を制御する方法 図000004
  • 特許6509839-植物の成長を制御する方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509839
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】植物の成長を制御する方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20190422BHJP
   A01G 9/20 20060101ALI20190422BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20190422BHJP
【FI】
   A01G7/00 601A
   A01G7/00 603
   A01G9/20 B
   G06Q50/02
【請求項の数】14
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-524807(P2016-524807)
(86)(22)【出願日】2014年7月9日
(65)【公表番号】特表2016-526890(P2016-526890A)
(43)【公表日】2016年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2014064705
(87)【国際公開番号】WO2015004179
(87)【国際公開日】20150115
【審査請求日】2017年6月26日
(31)【優先権主張番号】13175852.6
(32)【優先日】2013年7月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509253929
【氏名又は名称】ヘリオスペクトラ アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ポーヤンヴォリ、ティモ
(72)【発明者】
【氏名】レブハン、リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ヒルバリ、スタッファン
(72)【発明者】
【氏名】クレンディニング、キルク
【審査官】 川野 汐音
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/027198(WO,A1)
【文献】 特開2005−013056(JP,A)
【文献】 米国特許第05818734(US,A)
【文献】 特開2012−217352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00− 7/04
A01G 9/20
A01G 9/24− 9/26
A01G 22/00−22/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも自然光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御する方法であって、
前記植物の計画栽培期間の終了を規定する前記植物の所望の完成状態を取得する工程、
前記計画栽培期間の少なくとも一部期間中に前記植物を照らす自然光の予想量を含む、前記制御環境の外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を取得する工程
前記自然光の予想量及び前記計画栽培期間中に前記植物を照らす光の合計量に応じて光調整量を決定する工程であって、前記光の合計量、前記植物の種類に基づいて決定され、前記光調整量は、前記計画栽培期間が完了次第、植物が前記所望の完成状態に達するように決定される工程、及び
人工光源を使用することにより、及び自然光の量を低減させることにより、前記光調整量を提供する工程
を含む方法。
【請求項2】
前記自然光の予想量に応じて、前記計画栽培期間中に提供されるべき前記光調整量の配分スケジュールを決定する工程
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計画栽培期間中に前記植物を照らす光の合計量が、前記植物の成長状態及び前記制御環境の内部の環境パラメータのうちの少なくとも一方に基づいて更に決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記光の合計量が、前記計画栽培期間中に少なくとも1回再計算される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記制御環境の外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報が、前記計画栽培期間の少なくとも一部期間中に予想される温度変動の情報を更に含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記計画栽培期間の少なくとも一部期間中の前記予想される温度変動及び前記計画栽培期間中の所望の温度変動に基づき、前記制御環境の内部の温度の調整スケジュールを決定することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記計画栽培期間中の所望の温度変動が、前記植物の成長状態及び前記制御環境の内部の環境パラメータのうちの少なくとも一方に基づいて決定される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記配分スケジュールの決定が、前記植物が受容する光の量を制御するためのエネルギーコスト、前記制御環境のエネルギー消費量のレベル、及び前記制御環境のピークエネルギー消費量のうちの少なくとも1つに更に基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記配分スケジュールの決定が、前記制御環境内で栽培される前記植物に適用されているその時の栽培計画に更に基づく、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも自然光及び人工光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御するシステムであって、前記システムは、
制御ユニット、及び
前記制御ユニットに制御されるように接続された人工光源及び自然光の量を低減するための手段
を含み、前記制御ユニットは、
前記植物の計画栽培期間の終了を規定する前記植物の所望の完成状態を取得し、
前記計画栽培期間の少なくとも一部期間中に前記植物を照らす自然光の予想量を含む、前記制御環境の外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を取得し
前記自然光の予想量及び前記計画栽培期間中に前記植物を照らす光の合計量に応じて光調整量を決定し、前記光の合計量、前記植物の種類に基づいて決定され、前記光調整量は、前記計画栽培期間が完了次第、植物が前記所望の完成状態に達するように決定され、かつ
前記人工光源及び前記自然光の量を低減するための手段を使用することにより、前記光調整量を提供するように構成されているシステム。
【請求項11】
前記制御ユニットが、
前記自然光の予想量に応じて、前記計画栽培期間中に提供されるべき前記光調整量の配分スケジュールを決定するように更に構成されている、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御環境の外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報が、前記計画栽培期間の少なくとも一部期間中に予想される温度変動の情報を更に含む、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
植物の成長を制御するシステム用のコンピュータプログラム手段が格納されているコンピュータ読取り可能媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、請求項1に記載の各工程を実行するためのコードを含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
自然光及び人工光の混合光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御するように構成されている制御ユニットを含むシステム用のコンピュータプログラム手段が格納されているコンピュータ読取り可能媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、
前記植物の計画栽培期間の終了を規定する前記植物の所望の完成状態を取得するためのコード、
前記計画栽培期間の少なくとも一部期間中に前記植物を照らす自然光の予想量を含む、前記制御環境の外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を取得するためのコード
前記自然光の予想量及び前記計画栽培期間中に前記植物を照らす光の合計量に応じて光調整量を決定するためのコードであって、前記光の合計量が前記植物の種類に基づいて決定されるコード、及び
人工光源を使用すること及び自然光の量を低減させることにより、前記光調整量を提供するためのコード
を含むコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御するための方法に関する。また、本発明は、植物の成長を制御するための対応するシステム及びコンピュータプログラム製品に関する。本発明は、エネルギー消費量の低減、ワークフロー計画の向上、及び成長プロセスの予測精度の向上等に関して、温室操業の向上を可能にする。
【背景技術】
【0002】
植物の典型的な温室栽培は、太陽がもたらす自然エネルギーを利用する。しかしながら、場合によっては、例えば、温室の地理的な位置に応じて、例えば、加温/換気システム、並びに植物の提供される光の量を増加させるための人工照明及び補助照明、及び植物に提供される自然光の量を低減させるための光吸収カーテンを使用して、光及び/又は熱の量を調整し、温室内で栽培されている植物の成長を制御しなければならない。
【0003】
温室の人工照明及び補助照明は、典型的には、植物の成長を刺激し、自然光のみの使用と比較して成長プロセスを向上させさえする可能性のある照光システムの使用を伴う。そのような照光システムは、典型的には、複数の高出力光源を含む。高圧ナトリウム(HPS)を含む高輝度放電(HID)又は金属ハロゲン化物(MH)に基づく光源等の、様々な光スペクトルを有し、成長刺激に対して様々な効果をもたらす様々なタイプの光源が含まれ得る。金属ハロゲン化物に基づく照明を使用すると、典型的には、より短く茂みのような成長が促進されるが、それに比べて、高圧ナトリウムに基づく照明を使用すると、典型的には、より高く伸長した植物がもたらされる傾向がある。
【0004】
最近では、発光ダイオード(LED)の明るさの改良がなされている。その結果、LEDは十分に明るく、安価になり、例えば、温室環境での人工照明にも役立つようになっており、加えて、調整可能な色(光スペクトル)を有する光を照射する可能性が提供されている。違なる色のLEDを混合することにより、あらゆる色数を生成することができる。色調整可能な照明システムは、典型的には、幾つかの原色、一例として、3原色である赤、緑、及び青を含む。発生する光の色は、使用するLEDにより、並びに混合比により決定される。LEDを使用することにより、エネルギー消費量を減少させることが可能であり、これは、現在の環境動向によく合致する要件である。加えて、LEDに基づく照光システムを使用すると、光源が発する熱を最低限に抑えられ、温度管理が望ましい環境に特に好適である。
【0005】
LEDに基づく照光システムの一例は、特許文献1に開示されており、これは、プロセッサと通信可能に接続されている光センサを含み、上記プロセッサは、LEDが照射する光を調整することにより植物の成長及び特性を調節及び向上させるための制御アルゴリズムを実装している。
【0006】
特許文献1は、温室環境での人工照明に関連する有望な手法を示しており、植物特異的な光管理計画を導入する可能性を提供している。しかしながら、植物の全体的な成長プロセスの予測精度を向上させ得るように、照光システムが照射する人工光及び/又は補助光を更に最適化することが依然として望まれている。それには、特に、植物を栽培するための総エネルギー消費量、及び植物を収穫するためのワークフローを計画する可能性を考慮に入れて、植物が受容する光の量を何時及び何処で制御し、望ましい最終結果を達成するかが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2008/118080号
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によると、上記の課題は、少なくとも自然光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御するための方法によって、少なくとも部分的に解決される。上記方法は、植物の計画栽培期間の終了を規定する植物の所望の完成状態を取得すること、計画栽培期間の少なくとも一部期間中に植物を照らす自然光の予想量を含む、制御環境外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を取得すること、並びに自然光の予想量及び計画栽培期間中に植物を照らす光の合計量に応じて光調整量を決定し、光の合計量が、植物の種類に基づいて決定されることを含む。
【0009】
本発明により、計画栽培期間に植物が受容する光の量を制御することが可能となり、光の量は、植物の種類、及び少なくとも自然光の予想量を含む環境条件の予報に依存する。したがって、植物の成長プロセスは、計画栽培期間が完了したら直ちに、植物が所望の完成状態にあるように制御することができる。例えば、環境予報が考慮されているそのような管理機能性に従う利点には、例えば、「ジャストインタイム」方式を植物栽培に応用する可能性が含まれ、その場合、最終消費者、食料品店、又は工場等への輸送に好適な特定の成長状態に植物を到達させることが目標であってもよい。したがって、本発明の幾つかの実施態様では、所望の完成状態は、植物の「ジャストインタイム配送日」に直接的に関係していてもよい。そのため、植物を「制御環境から出荷する」時期に関して所望の最終結果を達成することができる。
【0010】
同時に、環境予報が考慮されているため、植物が最適な量の自然光を受容するように、植物を栽培することができ、それにより、植物を栽培するためのエネルギー消費量が最低限に抑えられる可能性がある。更に、天然資源の使用を増加させることができると同時に、植物の「準備完了」時期の制御の向上を達成することができる。本発明によると、光調整量は、負の値から正の値の範囲であってよいことを強調しておく。これはつまり、計画栽培期間に植物を照らす光の合計量を達成するのに必要な光の量は、より多い場合又はより少ない場合のいずれでもよいことを示す。計画栽培期間に植物を照らす光の合計量に関して、この用語は、典型的には、栽培サイクルの終了時に植物にそれまで到達した光の合計量を含むものと定義されるが、最終消費者への植物の特徴に負の影響を及ぼすことなく成長を遅延させるための光の最小瞬間量であり、植物にストレスを与えることなく成長を最大化させるための光の最大瞬間量を更に考慮するものとする。本発明によると、異なる植物成長プロセスを、異なる「栽培計画」と定義してもよい。そのような栽培計画は、例えば、植物の「抑制栽培」用の成長プロセス、並びに植物の「促成栽培」用の成長プロセスを規定する場合がある。また、「茂み」のような植物、花をたくさん咲かせる植物等を栽培するための栽培計画を含む更なる計画を規定/適用してもよい。
【0011】
本発明によると、「制御環境」という表現は、広く解釈されるべきであり、例えば、植物が少なくとも自然光の照光を受ける、温室、栽培キャビネット、又は同様の制御栽培環境を含む。したがって、制御環境は、典型的には、植物による自然光(太陽等の)の受容を可能にする透明な窓等を備える「室内環境」である。更に、温室は、1つ又は複数の植物を栽培するための少なくとも1つの生産ラインを保有する設備と定義されると理解されるべきだが、この用語は、複数の生産ラインを有する温室のクラスターを指す場合もある。同様に、「植物の所望の完成状態」という用語は、例えば、植物の好適な収穫日を含むだけでなく、例えば、最適で新鮮な植物を最終消費者に提供し、廃棄物を最低限に抑えるための物流網に適合するのに好適な成長状態(上記で言及したような)も含むと理解されるべきである。
【0012】
更に、「所定の種類の植物」という表現は、典型的には、任意の単一の種類の植物に関するか、又は同様の若しくは組み合わせ可能な成長特徴を有する、つまり所望の成長状態に達するのに必要な光の量が同様である複数の種類の植物の組合せである。計画栽培期間で所望の成長状態に到達させる場合、特定の種類の植物は、無論、例えば肥料の量並びに温室CO濃度(通常の手順に従って植物を栽培する場合)を含む、成長に影響を及ぼす更なる要因の影響下にある。
【0013】
例示であるが、植物は、植物を栽培し、所望の日に配送する目的で、制御環境に置かれている。所望の配送日を計画することができることにより、同じ配送日に成長が集中し過ぎないようにすることで、物流を事前に計画し、また植物を収穫するのに必要な温室労働力を最適化するための手段が提供される。第1の栽培期間中の天気予報が雨であることが予想され、その後、第2の(第1の期間後に続く)期間が、晴れで非常に良好な栽培条件であると予報されている場合、本発明による最適化は、所望の配送日から開始して、人工光をほとんど又は全く照射しない晴天候中期間を適用する(時間をさかのぼって)。したがって、成長は、第1の期間の終了時に、特定の段階(特定の成長状態)にある必要がある。第1の期間の完了時に特定の成長状態に到達させるためには、この第1の期間中に、計算された光の量を照射しなければならない。第1の期間中に過剰な光が照射されると、配送日には植物が成長し過ぎている可能性があることに留意すべきである。したがって、追加で照射される光のスケジュールの提案は、省エネルギーの点で最適化されていた。
【0014】
本発明の好ましい実施形態では、本方法は、計画栽培期間中に提供される光調整量の配分スケジュールを、自然光の予想量に応じて決定することを更に含む。配分スケジュールは、典型的には、計画栽培期間にわたって経時的に決定され(一日24時間以内の任意の時間を考慮することができる)、一日の様々な時間中に生じる可能性のある変動を含む(例えば、午前8時から午前11時の間は晴れであり、午前11時から午後2時の間は曇りであり、午後2時から午後6時の間は再び晴れである)。配分スケジュールを決定する際に、環境予報の統計的信頼性を考慮してもよく、それにより、計画栽培期間の完了後に所望の成長状態に到達する信頼性を向上させることが更に可能となる。
【0015】
好ましくは、計画栽培期間中に植物を照らす光の合計量は、植物の成長状態及び制御環境内部の環境パラメータのうちの少なくとも一方に基づいて更に決定される。植物の成長状態(例えば、現在の)は、例えば、植物の近傍に配置された、植物の様々な特徴(植物から反射される光のタイプ、クロロフィル蛍光、植物/葉の温度等)をモニタリングするように構成されているセンサから集められるセンサデータから決定することができる。制御環境内部の考えられる環境パラメータとしては、とりわけ、温度、COレベル、使用した肥料/レベル等、及び設定待ち時間(制御環境を加温/冷却するための時間/曲線)に関する情報が挙げられる。
【0016】
典型的には、計画栽培期間中に少なくとも1回、光の合計量を再計算することが有利な場合がある。すなわち、計画栽培期間中のある時点での植物の成長状態が、その時点で予想される状態と幾らか異なると判定された場合、光の合計量を再計算することが必要となる場合がある。この再計算は、例えば、制御環境内部で収集されたセンサデータに基づいて自動的に開始されてもよく、又はユーザがその時の/現在の成長状態をその場で調査及び判定した後でユーザにより開始されてもよい。
【0017】
一実施形態では、光の量を調整すること(つまり、光調整量を提供すること)は、人工光源、又は自然光の量を低減するための手段の少なくとも1つを使用することにより達成される。人工光源(又は複数の制御可能な光源を含む人工照明装置)は、例えば、LED光源を含んでいてもよい。他のタイプの人工光源には、例えば、金属ハロゲン化物(MH)技術に基づく光源、白熱光源、蛍光光源、高圧ナトリウム(HPS)光源、又はそれらの組合せが含まれる。同様に、植物が受容する自然光の量を低減する場合、例えば、光吸収カーテンを含む様々なタイプの光遮蔽技術を使用することができる。上記で考察した配分スケジュールに関して、人工光源を使用する場合、例えば、配分スケジュールを最適化して、人工光源を作動させる際の計画栽培期間中のエネルギーコストを最小限に抑えるために、電気エネルギーを配電する際に電力会社が使用する課金及び料金体系を考慮することが可能であることに留意されたい。
【0018】
加えて、本発明によると、具体的には計画栽培期間に関して、所望の完成状態を調整することが可能となる。成長プロセス制御の向上は、人工照明装置を使用して達成することができるため、「異なる様式」での植物栽培も可能であり得る。したがって、より短期間(又はより長期間)で成長プロセスを完了させることが求められる場合(例えば、需要の変化のため)、異なる植物栽培計画を実施してもよく、したがって、植物をより迅速な(又はよりゆっくりとした)様式で栽培してもよい。
【0019】
また、天候条件が予想外に変化した場合には、異なる栽培計画を選択することが望ましい場合があり、例えば、変化した天候条件のために生じる新しい要望又は可能性に応じて、新しい栽培計画が選択される。同様に、天候条件が幾らかネガティブに変化する(つまり、自然太陽光の量が最小限になることが予想される)場合には、例えば、成長した植物の所望の「品質水準」が達成され得るように植物を成長させるように、栽培計画を選択することができる。例えば、要望又は天候条件の変化に応じて、「途中で」指定の最終結果(例えば、限定するものではないが、植物の高さ、「茂み性」、花の数、匂い/味等に関して)に対応する更なる可能性も考えられ、これも十分に本発明の範囲内にある。同時に、複数の関連する温室が同じ発明概念を使用して制御されている場合、異なる温室に異なる調整を行って、温室全てで所望の「全体的最終結果」を達成することが可能となる(物流に関する考慮、人員計画、ピーク及び平均エネルギー消費量等を考慮して)。
【0020】
好ましくは、制御環境外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報は、計画栽培期間の少なくとも一部期間中に予想される温度変動の情報を更に含む。したがって、そのような実施形態では、予想される自然光の変動だけでなく、外部温度の経時的変動も考慮される。そのため、制御環境外部の予想温度に基づいて、制御環境内部の温度を制御することも可能となる。上記で考察されているように、例えば、設定待ち時間、課金及び料金体系、温度に関する環境予報の統計的信頼性を考慮に入れて、例えば、考察したジャストインタイム方式に関して植物の栽培を更に向上及び最適化し、かつ/又は植物栽培のコストを改善することができる。
【0021】
したがって、上記の考察と同様の様式で、計画栽培期間の少なくとも一部期間中の予想温度変動及び計画栽培期間中の所望の温度変動に基づき、制御環境内部の温度の調整スケジュールを決定することが可能となる。
【0022】
本発明の更なる実施形態では、配分スケジュールの決定は、植物が受容する光の量を制御するためのエネルギーコスト、制御環境のエネルギー消費量レベル、及び制御環境のピークエネルギー消費量の少なくとも1つに基づく。下記で考察するように、植物に受容される光の量を調整するための配分スケジュールを決定する場合、例えば追加量の人工光を提供するための、例えばエネルギーのコストを含む、更なる考慮を行うことも可能である。この概念は、無論、制御環境内温度の制御にも当てはまる。
【0023】
同様に、配分スケジュールの決定は、制御環境内で栽培される植物に適用されているその時の栽培計画に追加的に又は代替的に基づいていてもよい。植物の栽培に異なる栽培計画を適用するという概念は、上記で考察されており、下記の本発明の詳細な説明で更に詳述される。
【0024】
本発明の別の態様によると、少なくとも自然光及び人工光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御するシステムであって、植物の計画栽培期間の終了を規定する植物の所望の完成状態を取得し、計画栽培期間の少なくとも一部期間中に植物を照らす自然光の予想量を含む制御環境外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を取得し、かつ自然光の予想量及び計画栽培期間中に植物を照らす光の合計量に応じて光調整量を決定し、上記光の合計量が植物の種類に基づいて決定されるように構成されている制御ユニットを含むシステムが提供される。本発明のこの態様は、本発明の上記の態様に関して上記で考察したのと同様の利点を提供する。
【0025】
本発明の更なる態様によると、自然光及び人工光の混合光の照光を受容する制御環境に置かれている所定の種類の植物の成長を制御するように構成されている制御ユニットを含むシステム用のコンピュータプログラム手段が格納されているコンピュータ読取り可能媒体を含むコンピュータプログラム製品であって、植物の計画栽培期間の終了を規定する植物の所望の完成状態を取得するためのコード、計画栽培期間の少なくとも一部期間中に植物を照らす自然光の予想量を含む、制御環境外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を取得するためのコード、及び自然光の予想量及び計画栽培期間中に植物を照らす光の合計量に応じて光調整量を決定するコードであって、光の合計量が上記植物の種類に基づいて決定される、コードを含むコンピュータプログラム製品が提供される。本発明のこの態様も、本発明の上記の態様に関して上記で考察したのと同様の利点を提供する。
【0026】
制御ユニットは、好ましくは、マイクロプロセッサ又は他のタイプの計算デバイスである。同様に、コンピュータ読取り可能媒体は、取り外し可能な不揮発性ランダムアクセスメモリ、ハードディスクドライブ、フロッピーディスク、CD−ROM、DVD−ROM、USBメモリ、SDメモリカード、又は当技術分野で知られている類似のコンピュータ読取り可能媒体の1つを含む任意のタイプのメモリデバイスであってもよい。
【0027】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の特許請求の範囲及び以下の説明を検討すると明白になるであろう。当業者であれば、本発明の様々な特徴を組み合わせて、本発明の範囲から逸脱することなく、以下に記載されているもの以外の実施形態を考え出すことができることを理解する。
【0028】
その特定の特徴及び利点を含む本発明の種々の態様は、以下の詳細な説明及び添付の図面から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の現在の好ましい実施形態によるシステムを示す図である。
図2】Fig.2a〜Fig.2cは、植物を栽培するための本発明の実施形態による方法ステップの操作及びフローチャートを、Fig.3と共にグラフで示す図である。
図3】Fig.4は、様々な時間間隔で指定の植物成熟レベルを達成するための様々な栽培スケジュールの適用をグラフで示す図である。
図4】Fig.5は、植物を照らすために使用される人工光の追加量を提供するために使用される照明装置を詳細に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、本発明の現時点での好ましい実施形態が示されている添付の図面を参照して、これから以下でより完全に説明される。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に示されている実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は完全性のための提供されており、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるものである。本明細書全体にわたって、同様の参照文字は、同様の要素を指す。
【0031】
ここで、図面及び特に図1を参照すると、本発明の概念的実施によるシステム100が示されている。システム100は、図示されている実施形態では温室102である制御環境を含む。制御環境は、無論、発明概念の実施のタイプに応じて、立って入れる部屋又は栽培キャビネットの1つであってもよい。温室102は、典型的には、太陽からの自然光が温室102の内部に進入することを可能にするガラス及び/又は好適なプラスチック材料等の透明構造で構築されている壁及びその屋根を有し、その中には、例えば、ハーブ、薬用植物、観賞植物及び一般的な穀物等の複数の植物104が置かれている。
【0032】
温室102には、自然光の量を低減するための手段、及び光の量を増加させるための手段が更に配置されている。図1では、光の低減は、温室102の天井に配置されている制御可能な光吸収カーテン106により提供される。同様に、温室102には、光の量を増加させるために、1つ又は複数の制御可能な人工照明装置108が備えられている。そのような人工照明装置108の考え得る実施は、下記の図3(Fig.4)に関して更に考察されている。
【0033】
光吸収カーテン106及び人工照明装置108は、本発明に従って操作手順を実施するように構成されている制御ユニット110に接続され、これによって制御される。制御ユニット110は、温室102と一緒に配置されていてもよく、又は温室102から離れて遠隔に位置していてもよい(例えば、クラウドサービスを使用して)。
【0034】
制御ユニット110は、アナログ式でも時間離散性(time discrete)でもよく、汎用プロセッサ、特定用途向けプロセッサ、プロセシング部品を含む回路、分散処理部品の群、プロセシング用に構成されている分散型コンピュータの群等が挙げられる。プロセッサは、データ処理又は信号処理を実行するための、又はメモリに格納されているコンピュータコードを実行するための任意の数のハードウェア部品であってもよく、又はそれを含むものであってもよい。メモリは、本明細書に記載の種々の方法を完成又は容易にするための、データ及び/又はコンピュータコードを格納するための1つ又は複数のデバイスであってもよい。メモリは、揮発性メモリ又は不揮発性メモリを含んでいてもよい。メモリは、データベース要素、オブジェクトコード要素、スクリプト要素、又は本明細書の種々の活動を支援するための他のタイプの情報構造を含んでいてもよい。例示的な実施形態によると、任意の分散型又はローカル型メモリデバイスを、本明細書のシステム及び方法に使用することができる。例示的な実施形態によると、メモリは、プロセッサに通信可能に接続されており(例えば、回路又は任意の他の有線、無線、又はネットワーク接続を介して)、本明細書中に記載の1つ又は複数のプロセスを実行するためのコンピュータコードを含んでいる。デジタル制御ユニットにより提供されるものと同様の機能性は、無論、アナログを使用して、及び/又は電子回路の組合せを使用して達成してもよい。
【0035】
制御ユニット110は、温室102外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報を提供するためのローカル配置デバイスに更に接続されていてもよい。そのようなローカル配置デバイスは、例えば、図1に示されているような局所天候測定ステーション112であってもよい。制御ユニット110は、これに代えて又はこれに加えて、例えば、温室102の地理的位置(つまり、温室102の外部)における環境条件予報に関する詳細なメテオグラムを提供するサービスを含む遠隔予報サービス114に接続されていてもよい。そのようなメテオグラムは、例えば、太陽の出現予報(晴れ/曇り)、気温、露点、風速及び風向、湿度、気圧等に関する情報を含んでいる。
【0036】
図1には示されていないが、本発明によると、温室102内部に配置されている複数のセンサを導入することが可能である。そのようなセンサは、例えば、温室102内部の1つ又は複数の環境パラメータを決定するように、並びに植物の現在の/その時の成長状態を決定するように構成されていてもよい。センサは、例えば、気温/地温、気圧、肥料レベルを測定するためのセンサ、及び/又は植物104の成長状態を決定するために使用される画像取得デバイス(例えば、カメラ)が含まれていてもよい。無論、例えば、温室102内の又は複数の温室の現在の電力消費を測定するためのセンサ(例えば、電力計)等の他のセンサ及び類似の情報取得デバイスが含まれていてもよい。加えて、温室102は、その成長プロセス中の植物104の所望の温度変動にも依存して、温室102内の温度を制御するための制御ユニット110に接続された制御可能な発熱体(非表示)並びに窓(及び類似の制御可能な換気装置)(非表示)を含んでいてもよい。
【0037】
図2(Fig.2a〜Fig.2c及びFig.3)を更に参照すると、システム100の作動中に、植物104の所望の完成状態200が取得される:S1。ここで、所望の完成状態は、植物104の計画栽培期間の終了を規定することになる。すなわち、植物104の所望の完成状態は、植物104の発育、高さ、花の数、色等の、植物104の実際の状態に依存するだけでなく、所望の「完了時間」にも依存するであろう。上記で考察されているように、これにより、植物104は、例えば、特定の日(植物104を成長させるための栽培プロセスが最初に模倣された(imitated)時より未来の)に特定の状態に到達することが可能になるであろう。
【0038】
所望の完成状態が取得されたら、制御環境外部の少なくとも1つの環境パラメータの予報も取得される:S2。少なくとも1つの環境パラメータは、計画栽培期間、つまり、栽培プロセスの開始と植物104が所望の状態(上記で考察されているような)に到達していることが望まれている時間との間の少なくとも一部期間中に植物104を照らす自然光(例えば、太陽光)の予想量を含む。この予報は、上記で考察されているように、局所天候測定ステーション112又は遠隔予報サービス114の少なくとも一方又は両方から取得されるであろう。
【0039】
Fig.2bには、それぞれ、特定の種類の植物を栽培して、植物を所望の「品質」で所望の「成熟レベル」に到達させるための最小及び最大「境界」を示す2つの「点線」202、204が更に示されている。すなわち、例えば、最小境界線202は、例えば、最適な量の光、熱、水、肥料等が植物に施される場合に(場合により、自然光/自然熱を人工光/人工熱と組み合わせて)、特定の種類の植物を栽培して所望の成熟レベルに到達させるのにかかり得る最短の時間を示す。同様に、最大境界線204は、所望の品質で所望の成熟レベルに到達させるための成長プロセス(上記のように、光/熱/等により影響を受ける)を「遅延」させることが可能な最長の時間を示す。上記の考察に関して、最小境界線202は、このように、促成栽培計画を規定する場合があり、最大境界線204は、抑制栽培計画を規定する場合がある。境界線202、204は、直線として示されていることに留意すべきである。これは、単に例示に過ぎず、現実の栽培プロセスは、例えば、植物の現状に更に依存することになるであろう。例えば、幾つかの場合では、栽培プロセスの後期で成長速度を低減することが可能であってもよく、したがって、植物の成長は非線形になる場合がある。
【0040】
その後、プロセスでは、引き続き、自然光の予想量及び計画栽培期間中に植物104を照らす光の合計量に応じて光調整量が決定される:S3。光の合計量は、栽培する特定の種類の植物104に依存することになるか、又は様々な種類の植物が同じ温室102又は複数の温室で栽培される場合は、温室102で栽培される植物の特定の組合せに関する計画栽培期間に依存するであろう。
【0041】
光調整量を決定することにより、及び予報された天候条件(温室102の外部)を考慮に入れることにより、制御可能な光吸収カーテン106及び制御可能な人工照明装置108の操作のスケジュールを決めることが可能である。無論、制御ユニット110は、光吸収カーテン106及び人工照明装置108を制御するためのスケジュールを決定する際に、例えば、温室102内部に配置されている上記で考察したセンサ/画像取得デバイス、及び/又は温室102内の温度を制御するための待ち時間を考慮に入れることを含む、他の要因を考慮することになるであろう。
【0042】
したがって、最小限の(少なくともバランスが取れた)植物104の栽培コストで、植物104を所望の完成状態200にすることができるように、栽培手順を最適化することが可能となる。Fig.2cに提供されている図示では、植物104は、第1の栽培セグメント208及び第2の栽培セグメント210を組み合わせた栽培スケジュール206に従って栽培されるようにスケジューリングされている。第1の栽培セグメント208では、典型的には、加えられる人工光/人工熱の量は最低限であり、温室102内で利用可能な自然光/自然熱が使用される(つまり、高度に経済的である)。しかしながら、植物104が第1の栽培セグメント208に従って成長し続けた場合、所望の完成状態200では、植物の所望の成熟レベルには到達せず、むしろ時間が遅れることになるであろう。したがって、システム100は、今後の天気予報(等)を考慮に入れて、植物104の成長速度を、第2の栽培セグメント210に従って増加させる。典型的には、上記で考察したように、所望の時点で所望の完成状態200に到達するように、第1の208栽培セグメントから第2の210栽培セグメントへ移行させる時点での植物104の現状が考慮されるであろう。
【0043】
そのため、制御可能な光吸収カーテン106及び制御可能な人工照明装置108(並びに、温室102の場合は加温/換気に関しての)の操作をスケジューリングする場合、電力系統の設計、操作、及びエネルギー消費コスト(加温/換気/照明を操作するためのコストに影響を及ぼす場合がある)に関する情報を考慮に入れることも好ましい。例えば、幾つかの国々では、特定の電気エネルギー請求方式は、エネルギー消費量に基づく場合がある。ある期間にわたる定額料金又は変動料金に基づき、様々な契約があり得る。ピーク負荷が保証された定額料金で契約することも可能であり得る。また、顧客の必要とするピーク負荷は、その地域の電力系統の設計並びにその作動に関する要件を設定するであろう。変圧器のサイズ、ケーブル、ヒューズは、あるピーク負荷用に設計されており、コストと考えられるピーク負荷との関係性は非線形である。また更に、幾つかの国々では、時間単位で変動する電力レートで課金される可能性が提供されており、消費者は、より低料金のオフピーク時でのエネルギー消費を計画することが可能になる。上記の全て、又はこの情報の少なくとも幾つかを、本発明によるシステム100の操作をスケジューリングする際に使用することができる。
【0044】
更に、特に、ジャストインタイム概念に関する栽培プロセスの最適化に関して植物の成長プロセスを制御する場合、温室102内の光制御/温度制御等の決定に含められるべき追加の考慮を行うことが可能である。そのような考慮は、例えば、温室の実際のサイズに関係していてもよく、例えば、温室102に配置される植物104の数、並びに温室102内で作業する人員の数に関係していてもよい。例えば、栽培者/生産者が複数の温室を操作することに関して、例えば、エネルギー消費量(同じ栽培者/生産者が操作する複数の温室全ての合計消費量)、並びに複数の温室で働く(例えば、植物を栽培する際の一般的な操作)人員の数に関しての両方について、同様の考慮がなされてもよい。
【0045】
また更に、複数の温室の1つ内の栽培プロセスを制御する際に、物流に関する事項を考慮に入れてもよい。すなわち、物流の観点から、毎日決まって輸送することのできる植物の数には、一般的に限界がある(トラック、人員等)。そのため、システム100は、この種の事項を考慮に入れることができ、所望の完成状態に到達した植物の数は、植物を例えば工場/店舗/等に輸送するために使用される物流装置の収容能力と、ある意味で一致する。
【0046】
更に、栽培者が異なる種類の植物を栽培する場合、異なる種類の植物の所望の組合せが、同時に配送可能になり、したがって、特定の「消費者」(例えば、ここでも、例えば、工場/店舗/等)への輸送を最小限に抑えることが可能になるように、各種類の植物の栽培プロセスに関する知識を使用することが可能となる。
【0047】
いずれにせよ、予報された天候条件に関する統計的信頼性(もしあれば)を考慮に入れるように留意することが好ましい。図1から理解することができるように、(点線116)、予報の信頼性は、経時的に低下する。したがって、ある場合には、予報された天候条件の信頼性が非常に低いという事実に基づいて熱/光の調整を導入し、その後、信頼性が増した場合、及び/又は実際の天候条件が予報された天候条件と非常に異なる場合、後の時点で更なる調整を導入する必要が生じ得る。そのような場合、栽培プロセスは、以前に設定した所望の「配送日」に植物の準備ができているようにしておくことに主眼がおかれることになるであろう。これにより仮に人工照明/人工加温の追加使用が導入されても、植物は、所望の日/時に所望の完成状態になるであろう。そのため、植物の過剰成長に関連する浪費の可能性(又は植物が配送不可能であるために、最終消費者への植物の複数の追加輸送が必要となること)は最小限に抑えられる。
【0048】
図3(Fig.4)を更に参照すると、指定の植物成熟レベルを異なる時間間隔で達成するための様々な栽培スケジュールの適用がグラフで示されている。第1の例では、2つの異なる(組合せの)栽培スケジュール402、404が、指定の期間内に、第1の例では時間t=3で、所望の成熟レベル406(植物の状態)に到達するように適用されており、この第1の例では、植物の栽培は、t=0(例えば実生等)で開始されている。この例では、栽培スケジュール402には、栽培スケジュール404と比較して、より迅速な成長速度が初期に適用される。
【0049】
そのため、栽培スケジュール402は、例えば、第1の期間内では自然光/自然熱がほんの少量しか予報されていないが、第2のその後の次の期間内では、少なくともわずかに多くの太陽及びより高い外部温度が予想され得る場合に適用することができる。余裕をもって、また、例えばその時の(例えば、幾つかの国々では、週末に利用可能である)エネルギー料金が低いことを考慮して、天候が変化すると予報される場合、第2の期間中に最小限の量の人工光/人工熱で植物を栽培し、与えるエネルギー消費量を最小限に抑えても、t=3で所望の成熟レベル(植物状態)406に依然として到達するように、人工光/人工熱を適用して、第2の期間前に植物を特定の段階まで成長させる。
【0050】
同様に、第1の例の別のシナリオでは、他の栽培スケジュール404は、t=3で所望の成熟レベル406に到達するように適用される。このシナリオでは、第1の期間(t=0で始まる)では、植物は、初期には、栽培スケジュール402と比較して低い成長速度を示すことになる。このシナリオでは、システム100は、予報された天候、エネルギー料金、利用可能な労働力等を考慮に入れて、依然として所望の期間内に同じ所望の植物状態406に到達するように様々な考慮を行っている。
【0051】
第2の例では、植物104を栽培するために第3の栽培スケジュール408が適用され、この場合も植物104の栽培はt=0で開始される。この例では、栽培スケジュール408は、栽培スケジュール402と比較して、初期には、成長速度がわずかに遅くなる。しかしながら、特定の時点で、第3の栽培スケジュール408は、成長速度の急激な増加を可能にし、第3の栽培スケジュール408では、t=3での成熟レベル406と比較して、より早い時間で(つまり、t=2で)植物が所望の成熟レベル410に実際に到達することが可能になるであろう。植物の成長速度の急激な変化は、例えば、利用可能な労働力、物流要因、利用可能なエネルギー、エネルギー料金等の変化により、最終消費者/店舗/工場がより早い時期に植物104を受け取ることを要望することを含む様々な理由による場合がある。
【0052】
第3の例では、第4の栽培スケジュール412が、植物104の栽培に適用される。この第3の例では、植物104は、第1及び第2の例の栽培開始時点(つまり、t=0)と比較して、より早い時点(つまり、t=0以前で模倣された(imitated)成長を示し、したがってt=0で幾らか高い植物成熟レベルを示すように図示されている。図示されているように、栽培スケジュール412は、上記の考察と同じような様式で2つに細分化され、初期の第1の時期はより低い成長速度を示し、次いで後の第2の期間でより速い成長速度を提供する栽培計画に切り替わっている。
【0053】
したがって、本発明による体系化された様式では、「完成日」(例えば、414、410、及び406は、それぞれt=1、t=2、及びt=3である)の間隔を時間的にずらすように計画することが可能であり、これにより、人員計画、物流予測(上記で考察したような)、並びに温室102のピークエネルギー消費量の最適化が可能になる。
【0054】
特に、第4の栽培スケジュール412に関して、成長速度がより速い成長速度に切り替わる時点は、栽培スケジュール402が、より速い成長速度からより低い成長速度に切り替わる時点と本質的に同時であることは、図3(Fig.4)から明らかであろう。そのようなシナリオは、人工光及び人工熱を温室102に提供するための最大エネルギー消費量を考慮に入れる場合に有用であり得る。すなわち、栽培スケジュール402及び412が両方とも、かなりの量の電気エネルギー(人工光/人工熱等に関して)を消費することを含む場合、栽培スケジュールの一方のみに「より迅速な成長速度」の適用を許容することにより(つまり、栽培スケジュール402/412のうちの他方は、比較すると「より低い成長速度」である)、任意の電気エネルギー消費ピークが低減されるであろう。これにより、平均消費量は恐らく同じレベルに維持されることになるが、ピークレベルはより低くなるであろう。
【0055】
このシナリオは、栽培者が、同じ電気系統に接続されている複数の温室を有する場合に特に有用であり得る。10棟の温室での例では、本発明のシステムは、例えば、電気ヒーターを始動させ、10kW/hを10棟の温室の各々に入力する(温室の各々にあるヒーターは、10kWの瞬間消費量を示す)ことが好適であろうことを決定することができる。温室の各々にある電気ヒーターを同時に始動させると、ピークエネルギー消費量は100kWになるであろう。しかしながら、5棟の温室のみが、第1の時間でヒーターを始動させ、残りの5棟の温室が、第2の時間でヒーターを始動させた場合、ピークエネルギー消費量は50kWになるに過ぎないであろう。
したがって、本応用の状況では、熱及び/又は光の更なる適用を注意深くスケジューリングすることにより、任意の消費量ピークを最小限に抑え、それにより、より低い配電能力でより安価な電力系統接続を可能にすることにより(つまり、電気エネルギーを供給する電力会社に関して)、恐らくは諸経費も削減することが可能であろう。
【0056】
最後に、図4(Fig.5)を参照すると、上記で考察した人工照明装置108の詳細な図示が提供されている。人工照明装置108は、少なくとも1つの光源を含む。図示されている実施形態では、8つの異なる色のLEDに基づく光源502、504、506、508、510、512、514、516が、植物104を照らすために提供されている。人工照明装置108は、植物が反射する光を受容するように構成されているセンサ520、及び制御回路522を更に含み、制御回路522は、センサ520並びに光源502〜516に電気的に接続されている。
【0057】
好ましくは、光源は、異なる色(スペクトル)及び典型的には重複するスペクトル分布を有する(つまり、波長範囲が互いに重複し、異なるピーク波長を示す)。光源502〜516の様々な色は、典型的には、紫外線から遠赤外線までの範囲である。図4(Fig.5)には、8つの光源502〜516が示されているが、本発明の範囲内では、より多くの又はより少ない光源が備えられていてもよい。同様に、特定の波長範囲で望ましい強度を達成するために、同じ色のより多くの光源が備えられていてもよい。反射光を受容するように選択されたセンサ520は、例えば、分光計、波長が調整されたフォトレジスター(例えば、色フィルターが備えられている)、フォトダイオード、CCDセンサ、又は反射光若しくは蛍光を受容する他のタイプのセンサであってもよい。光源の場合と同様に、単一又は複数のセンサ520が備えられていてもよい。そのため、例えば、光源502〜516の各々に1つのセンサが備えられていてもよく、センサの各々は、光源及び入射日光の波長範囲に対応する波長応答を示す。本発明に従ってセンサ520を使用して、特定の所望の光計画が、入射日光、人工光、及び/又は日陰の日光の組み合わせで維持されることを決定してもよく、又は例えば、植物104からの反射光のスペクトル分布を決定することにより、植物104のその時の栽培状態を決定してもよい。したがって、システム100は、植物104からの反射光のスペクトル分布を使用して、好適に混合された人工光を、入射日光と組み合わせて植物104に向けて照射することを決定することができる。植物104からの反射光のスペクトル分布に基づいて、植物104に向けて照射される人工光を制御するという概念は、本出願人による欧州特許出願第12185721号明細書で更に考察されており、この文献は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0058】
本開示は、種々の操作を達成するための任意の機械読み取り可能媒体上の、方法、システム、及びプログラム製品を企図する。本開示の実施形態は、既存のコンピュータプロセッサを使用して、又はこの目的のために又は別の目的のために組み込まれた適切なシステム用の特殊用途コンピュータプロセッサにより、又はハードワイヤードシステムにより達成することができる。本開示の範囲内の実施形態には、そこに格納された機械実行可能な命令又はデータ構造を保持又は有する機械読み取り可能媒体を含むプログラム製品が含まれる。そのような機械読み取り可能媒体は、汎用又は特殊用途のコンピュータ又はプロセッサを有する他の機械によりアクセスすることができるあらゆる入手可能な媒体であり得る。例としては、そのような機械読み取り可能媒体は、RAM、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、又は他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、又は他の磁気記憶装置、又は機械実行可能な命令若しくはデータ構造の形態である所望のプログラムコードを保持若しくは格納するために使用することができ、汎用若しくは特殊用途のコンピュータ若しくはプロセッサを有する他の機械がアクセスすることができる任意の他の媒体を含んでいてもよい。情報が、ネットワーク接続又は別の通信接続(有線、無線、又は有線若しくは無線の組み合わせ)を介して機械に転送又は提供される場合、機械は、上記接続を、機械読み取り可能媒体として認識すると考えるのが妥当である。したがって、あらゆるそのような接続は、機械読み取り可能媒体と呼ばれるのが妥当である。上記の組み合わせも、機械読み取り可能媒体の範囲内に含まれる。機械実行可能な命令には、例えば、汎用コンピュータ、特殊用途コンピュータ、又は特殊用途処理機械に、ある機能又は一群の機能を実施させる命令及びデータが含まれる。
【0059】
図面は、方法ステップの特定の順序を示している場合があるが、ステップの順序は、示されているものと異なっていてもよい。また、2つ以上のステップを、同時に又は部分的に同時に実施してもよい。そのような変法は、選択したソフトウェアシステム及びハードウェアシステム並びに設計者の選択に依存するであろう。そのような変法は全て、本開示の範囲内にある。同様に、ソフトウエア実装は、ルールベースのロジック及び他のロジックを用いて標準的プログラミング技法で達成して、種々の接続ステップ、処理ステップ、比較ステップ、及び決定ステップを達成することができる。加えて、本発明は、その特定の例示的な実施形態を参照して記載されているが、多くの異なる変更及び改変等は、当業者であれば明白であろう。開示されている実施形態の変法は、当業者であれば、請求項に記載の発明を実施する際に、図面、本開示、及び添付の特許請求の範囲を検討すると、理解及び達成することができる。更に、請求項では、「含む」という単語は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「1つの」は、複数を除外しない。
図1
図2
図3
図4