(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
オーブン(1)、昇華ユニット(2)、昇華ユニットと接触している凝縮ユニット(3)、昇華および凝縮ユニットを回転させる回転駆動装置(4)、ならびに真空ポンプまたは真空ポンプシステム(6)を含む、化合物を昇華させるための装置において、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールから選択される回転継手(5)を回転部と固定部との間に有し、前記昇華ユニット(2)および前記凝縮ユニット(3)が管によって取り囲まれ、取り囲む管に真空を発生させることを特徴とする装置。
前記昇華ユニットおよび前記凝縮ユニットが水平に配列されること、または前記昇華ユニットおよび前記凝縮ユニットが水平に対して傾斜していることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の装置。
室温で固体である化学物質(昇華材料)を精製する方法であって、前記物質を真空中で加熱し、気相に変換し、続いて凝縮する、方法において、昇華材料を含有する容器が回転すること、および前記方法を、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールから選択される回転継手を回転部と静止部との間に有する請求項1記載の装置で実施することを特徴とする方法。
【発明の概要】
【0001】
本発明は、化合物の真空精製方法、およびこの方法を実施するための装置に関する。
【0002】
高価な有機、有機金属および無機化合物が様々な用途に使用されている。かくして、たとえば、API(「医薬品有効成分」)は医薬用途の有効成分である。さらに重要な適用分野は電子用途、特に有機エレクトロニクスの分野の材料であり、その中でも特に有機半導体および有機導電体が用いられる。かくして、たとえば、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)、有機太陽電池(O−SC)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機集積回路(O−IC)、有機フォトダイオードおよび有機レーザーダイオード(O−レーザー)を、有機エレクトロニクスの分野において挙げることができる。
【0003】
これらの適用例はすべて、以下の共通点を有する。一般的に、所望の効果を達成するために少量の材料が使用される。一方、使用される材料には高い要求が求められ、高度の純度が必要とされる。したがって、医薬品有効成分の場合、二次成分を把握する必要があり、所望の効果とは別に、不純物が原因となる不要な副作用を起こさないように、最小限の(規定の)量の不純物、たとえば金属不純物を実現する必要がある。有機半導体の場合、多くの特性が、具体的には最小限の含有量の微量不純物に左右される。したがって、少量のppm単位の不純物がその領域に存在していれば、伝導性、電荷担体の移動度または作動存続期間などの特性を桁違いに変更させることが完全に可能である。
【0004】
使用される材料で、合成法から直接得られる、純度が十分なものはごく僅かである。必要条件または特定の純度を実現するには、通常、複雑な精製工程を要する。これらは、たとえば、(反復される)再結晶、ソックスレー抽出、連続高温抽出、カラム濾過および/もしくはクロマトグラフィーまたはさらにゾーンメルトからなる。
【0005】
昇華または固体蒸留によって精製工程を完了させ、さらに必要に応じてこれを複数回繰り返して、触媒カップリング工程または反応器の摩耗から存在する溶媒残留物および無機不純物、たとえば塩または金属痕跡を除去することが成功裏に証明された。さらに、分別昇華または蒸留によって物質分離も実施できる。この最後の精製方法は、有機エレクトロニクス装置の中心パラメータ、たとえば処理可能性、効率、電圧および寿命にとって決定的に重要である。
【0006】
典型的には、室温で固体の、精製しようとする材料は、真空下の保存容器(昇華ユニット)中で固体または液体状態から気相に変換され、凝縮ユニット中で液相または固相に戻される。
【0007】
従来技術に従い、以下の昇華または固体蒸留法を、分子量の範囲が約400g/mol〜2000g/molで、昇華または蒸発温度が約200℃〜500℃の範囲の材料に対して用いる。
【0008】
1)標準的な昇華:
従来技術による昇華において、真空容器中で昇華材料を熱源によって加熱し、昇華させることで凝縮器上に析出する。たとえばHouben−Weyl、第4版、Allgemeine Laborpraxis[General Laboratory Practice]、I/1巻およびI/2巻に従来設計が記載されている。
【0009】
2)キャリヤーガス昇華:
キャリヤーガス昇華において、減圧下で、連続ガス流が加熱された昇華材料を通過する。昇華物は、冷却したゾーンで再び析出する。たとえば、Houben−Weyl、第4版、Allgemeine Laborpraxis[General Laboratory Practice]、I/1巻およびI/2巻に従来設計が記載されている。
【0010】
以下に記載の通り、両方の方法において改善が依然として必要である。
【0011】
1)標準的な昇華装置中での昇華は、昇華温度に達したときに、昇華材料/加熱面の境界面で開始する。しかし、昇華ゾーン全体にわたって点在する昇華材料が経路を塞ぐため、気相に変換した分子を、この時点で凝縮ゾーンに移動させることはできない。そのため昇華は、昇華材料のエッジ領域でのみ生じ、その結果、気相に変換できる部分は非常に小さくなる。これは昇華速度が非常に遅くなり、実践上不満足な結果となる。
【0012】
2)昇華速度を高めるための温度上昇は、昇華材料の全表面の昇華をもたらすが、実用的な昇華速度に達するのに必要な昇華温度の超過は、材料の熱伝導率が非常に低いことが原因で、かなり大きくなることが頻繁であり、これにより昇華材料の分解が生じる。分解は、典型的には、最高温点になる昇華材料/加熱面の界面で生じる。その際、この箇所で灰の層が高頻度で形成され、これは昇華材料/加熱面の界面間の絶縁層として作用し、これにより昇華材料に熱を加えることがさらに困難になる。
【0013】
3)キャリヤーガス昇華装置中の実際の昇華は、同様の問題を生じる。ここでも、入熱の不足および必要な昇華温度の大幅な超過が、観察される材料の灰化を高い頻度で招く。さらに、キャリヤーガス流によって、材料が装置の広範領域にわたって分布または同伴することが頻繁にあり、これによって昇華材料の取り出しがさらに困難になる。さらに、長さが場合によっては3メートルもある長いガラス管を使用することから、装置が実践上非常に扱いにくく複雑であり、また非常に高価であることから、この方法の利用は経済的に難しいと言える。
【0014】
上記の問題が原因となり、有機エレクトロルミネセンス素子に典型的に使用される多くの材料、たとえば有機金属のIrまたはPt錯体、たとえばIr(piq)
3(トリス(フェニルイソキノリン)イリジウム(III))、または蛍光化合物として用いられるスチリルアミンは、上記の標準的な昇華法を使用した昇華中に部分的または完全分解を経る。有機エレクトロニクスの分野において用いられる他の多くの材料にも同じことが当てはまる。ごく僅かな頑強な材料のみがこれらの方法を用いて、分解することなく十分に速い昇華速度で昇華させることが可能である。
【0015】
実際の昇華に関する精製方法に、固体蒸留がある。室温で固体であるいくつかの材料が、実用的な昇華速度または蒸発速度に達する前に溶融する。融液に変換した後、これらは固体蒸留を経て、凝縮ユニットの冷却に応じて、液体または固体状態で凝縮が起こり得る。その結果として、標準的な昇華装置中での固体蒸留の性能は、かなりの不備を有する。対流により、融液への入熱は、固体の昇華の場合よりもこの場合の方が良好であるが、その設計のために、融液/気相の界面に対応する蒸発面はここでも小さい。実際、これは蒸発速度を遅らせる結果となる。また、2つのさらなる問題が起きる。溶融材料は、常に、少量の、典型的には0.0001%〜1%の、先行する湿式化学精製方法に由来する揮発性残留溶媒を含有する。これらは、有機材料が溶融する間に自然に蒸発し、それらと一緒に融液の液滴を運搬し、凝縮器上で凝縮された凝縮物を不純にする。
【0016】
さらなる問題として、凝縮器上に有機ガラスとして多く凝縮する凝縮物の熱伝導率が非常に低いということがあり、これは有機ガラスに典型的である。その結果、凝縮物の層の厚さが典型的に数ミリメートルの薄いものである場合でも、凝縮熱が十分に放散できなくなり、すなわち凝縮物は凝縮器上で固化しなくなるが、その代わりに液体形態で生成され、凝縮器から滴り落ちて融液に戻ることになる。この現象は、一般の標準的な昇華装置で処理できる物質量を約50gに限定してしまうが、そうでなければ、その領域中の蒸発速度10g/hで熱応力が非常に大きくなり、著しい分解が生じるからである。
【0017】
したがって、本発明の目的は、この目的のために技術的改善を施すことである。特に、比較的多量の材料を短時間かつ少ない分解率で精製または昇華できる方法が所望される。このタイプの方法の精度でもってのみ、工業規模の昇華を適切に行なうことが可能である。本発明のさらなる目的は、感熱性の材料の昇華に対して技術的改善を施すことである。
【0018】
驚くべきことに、昇華装置が、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールから選択される真空気密継手を有し、昇華材料を高真空下、すなわち回転容器から通常10
-3mbar未満の真空下で昇華させると、かなり少ない分解で、または全く分解がなく、より効率的に昇華法を実施できることが発見された。たとえば有機エレクトロルミネセンス素子に使用したいくつかの材料の場合、昇華はこのタイプの方法で唯一可能であり、これに対し、標準的な昇華法ではこれらの材料は完全に分解してしまう。
【0019】
したがって、本発明は、この方法、およびこの方法を実施するための装置に関する。
【0020】
従来技術は、昇華または蒸留材料が回転容器中に位置する、昇華および蒸留の方法を開示している。
【0021】
L.C.Craigら(Anal.Chem.1950、22、1462)は、希薄溶液から溶媒を分離する蒸留法を記載している。この方法は、フラスコを用意し、それを水浴で加熱し、その中に最初に溶液を入れ、モーター手段によって回転させながら留去した溶媒を捕集フラスコに集めるものである。ここでの装置は真空ポンプに接続されている。固定接続手段による回転フラスコと真空ポンプとの連結は、ジョイント用グリースでよく滑らかにした球面研削継手によって行なわれる。しかし、留去した溶媒は、回転する球面研削継継手のジョイント用グリースを部分的に溶解するため、この方法は高真空条件下での作業に不適切である。したがって、この装置は長時間の操作上で漏れが発生するようになり、それが生じると、特に比較的大規模な作業の場合、次は高真空の利用が妨げられる。さらに精製した生成物は、ジョイント用グリースによって不純になり、高純度の化合物の合成では望ましくない。したがって、この方法は工業で成立せず、結果として他の方法で置き換えられている。
【0022】
さらなる開発として、ロータリーエバポレーターを使用した溶媒の分離を挙げることができる(たとえばCH412800)。回転および静止構成要素間の封止に、自己密封型軸封、特にリップシールがロータリーエバポレーターにおいて通常使用される。しかし、これらは約1mbarの真空レベルまでしか封止しないため、高真空の方法には不適切である。
【0023】
特に、比較的少量の有機化合物のさらなる精製方法として、管球蒸留または昇華(たとえばHouben−Weyl、第4版、Allgemeine Laborpraxis[Genenral Laboratory Practice]、I/1巻およびI/2巻)がある。ここで化合物を、真空中で回転加熱フラスコから回転非加熱フラスコへ蒸留または昇華させるが、回転および静止構成要素間で使用されるシールは、ロータリーエバポレーターの場合のように、ここでもリップシールが通常使用される。したがって、これらの装置は高真空下の大規模工程には不適切である。しかし、非常に小型の装置の場合、工業規模の精製方法には不適切であるが、装置容量が小さく、漏れ速度が遅い真空ポンプの高い吸い込み性能に起因して、1mbarより良好な減圧を可能にすることができる。しかし、この装置の規模を拡大して、高真空下で作業することは不可能である。したがって、この装置は工業規模の昇華には使用できない。
【0024】
本発明は、室温で固体である化学物質(以下、昇華させようとする材料を昇華材料と呼ぶ)を精製する方法であって、物質を真空中で加熱し、気相に変換し、続いて凝縮し、ここで、昇華材料を含有する容器が操作中に回転する、方法において、この方法を、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールから選択される回転継手を回転部と静止部との間に有する装置で実施することを特徴とする方法に関する。
【0025】
回転継手は、回転軸と静止構成要素との継手である。
【0026】
本発明による方法によって、昇華材料を固体状態からまたは融液から気相に変換することができる。同様に、固相または液相に、好ましくは固相に凝縮することができる。真の意味の昇華は、固体→気体→固体への移行を意味する。本発明の意味における固体蒸留は、固体(室温)→液体(高温)→気体→固体または液体(冷却温度による)への移行を意味する。したがって固体蒸留は、融液から行なわれる。本発明による方法は、昇華と固体蒸留の両方に関する。どちらの方法も同様に、以下、本発明の意味において昇華と呼ぶ。
【0027】
本発明による方法は一般的に、所定の圧力および温度の範囲内で蒸発できる全ての化合物に好適であることから、この方法に使用できる有機、有機金属または無機物質は、当初は限定されない。本発明の方法は特定の精製品質を実現するので、最初に記載した通り、高価な材料、たとえば、生物学的または薬学的に活性の化合物もしくは材料向けの、または有機エレクトロニクス用途、具体的には有機半導体向けの使用に好適である。
【0028】
化学物質は、有機、有機金属または無機でもよい。本発明の意味における有機化合物は、少なくとも1個の炭素原子、好ましくは複数の炭素原子を含有し、以下の有機金属化合物の定義に該当しない化合物の意味になる。有機化合物は、好ましくは、主に炭素、水素、重水素、窒素、酸素、ケイ素、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ホウ素、リンおよび硫黄からなる。炭素が非金属に結合している化合物も、有機化合物の定義に該当する。本発明の意味における有機金属化合物は、少なくとも1種の有機配位子が金属に配位結合している化合物を意味し、この配位は、炭素または別の配位原子を介して行なわれ得、「有機配位子」は、配位子が少なくとも1個の炭素原子を含有することを意味する。本発明の意味における無機化合物は、有機金属化合物について上に挙げた定義に該当しない金属化合物、または金属を含有しない無機分子化合物のいずれかを意味する。
【0029】
本発明による方法を使用できる、実例となる薬学的に有効な化合物類は、特に、好適な熱安定性を有するものである。このタイプの物質は、たとえば、「Lehrbuch der Pharmakologie und Toxikologie」[Textbook of Pharmacology and Toxicology](E.Mutschlerら、Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft、Stuttgart 2003)、「Allgemeine und spezielle Pharmakologie und Toxikologie」[General and Specialised Pharmacology and Toxicology](K.Aktoriesら)および「Deutschen Arzneibuch 2004」[German Pharmacopoeia 2004]において概説される。一般的に、高熱安定性は比較的高含有量の芳香族または複素環式芳香族構造要素と関連する。これらは、たとえば、ベンゾジアゼピン、ジベンゾアゼピン、アンフェタミン、メタドン、ヘテロアリールまたはアリール置換の酢酸およびプロピオン酸製剤、アルカロイド製剤、イソキノリン系物質、スチルベンまたはジフェニルメタン系物質の構造要素に基づく活性化合物中でみられる。
【0030】
本発明による方法を使用できる典型的な有機半導体は、一般的に、環状、直鎖または分枝の拡張共役系、特に芳香族または複素環式芳香族単位に基づくが、さらに直鎖共役系、たとえばスチルベンまたはトラン誘導体にも基づく。さらに、多様な有機金属錯体、典型金属(たとえばAlまたはBe錯体)と遷移金属(たとえば、銅、白金およびイリジウム錯体)の両方とも、この範囲内に該当する。このタイプの物質は、たとえば、「Special Issue on Organic Semiconductors and Devices,Part B」(J.Polym.Sci.,Part B:Polym.Phys.2003、41)において概説される。典型的な構造類は、たとえば、直鎖または分枝オリゴアリーレンまたはヘテロアリーレン、スピロビフルオレン誘導体、インデノフルオレン誘導体、インデノカルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、拡張縮合芳香族化合物(たとえば、アントラセン、ナフタセンまたはペンタセン誘導体)、グラフェン、置換スチルベン誘導体およびオリゴスチルベン誘導体(たとえば、ビス(ジアリールアミノ)ビススチリルアリーレン)、ヒドロキシキノリン系アルミニウム、亜鉛、ベリリウム錯体ならびにオルトメタル化イリジウムおよび白金錯体、たとえば、WO05/033244、WO04/081017またはWO06/061182に記載のものである。本発明による方法はさらに、続いて有機半導体へさらに変換される前駆体、たとえば続いて半導体ポリマーに変換されるモノマーの昇華に用いることもできる。
【0031】
一般的に、本発明による方法は、従来技術による全ての昇華可能な化合物に使用できる。化合物は、著しく分解することなく、使用する温度範囲内および使用する圧力範囲内で蒸発できれば、本発明の意味において昇華可能である。好ましい温度および圧力の範囲を、以下にさらに詳述する。本発明の意味において、著しい分解がない昇華とは、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99%の化合物が分解せずに昇華できることを意味する。
【0032】
本発明による方法は、300〜5000g/molの範囲、好ましくは400〜2500g/mol、特に好ましくは450〜1500g/molの範囲の分子量を有する有機および有機金属化合物の精製に特に好適である。これらは、好ましく定義された有機または有機金属化合物である。
【0033】
本発明による方法において、昇華操作の間、昇華ユニットを回転させながら、昇華材料を、オーブン(1)中で、真空中の昇華ユニット(2)中にて加熱し、気相に変換する。ここでの回転速度は、好ましくは0.5〜100min
-1の範囲、特に好ましくは1〜20min
-1の範囲、非常に特定的に好ましくは1.5〜10min
-1の範囲、特に2〜5min
-1の範囲である。ここでの回転は通常、加熱後にスイッチを入れるが、加熱前にもスイッチを入れることがある。ここでの温度は、技術的に有用な蒸発速度に達するまでの各圧力で与えられる昇華または蒸発温度によって調節する。一般的に、蒸発速度は可能な限り高い方が好ましい。技術的に有用な蒸発速度は、用途および活性化合物の部類に応じて、10〜1000g/hの範囲である。化合物の部類によっては、1〜10g/hの範囲の蒸発速度でも技術的に有用であり得る。これは、特に有機金属化合物の場合に有用であり、その理由は、これらの化合物を全く分解させずに昇華させることはほとんど困難なため、有機半導体部品に用いられるからである。ここでの蒸発は上記の通り、固体および融液の両方から起こり得る。
【0034】
10
-3〜10
-6mbarの範囲の圧力での、ここでの化合物の昇華または蒸発温度は、多くが200℃より高く、多くはさらに250℃を上回る。これは特に有機半導体に該当し、これらは通常、電子装置に採用される。
【0035】
昇華材料は、200℃〜500℃の範囲、特に好ましくは250℃〜450℃の範囲、非常に特定的に好ましくは250℃〜400℃の範囲の温度で気相に変換されることが好ましい。ここでの昇華温度は材料によって決まり、熱分解を防止するためには実現し得るできるだけ最低の昇華温度、したがって実現し得る最高の真空が好ましい。
【0036】
使用する真空は、通常、10
-3未満〜10
-8mbarの範囲、好ましくは10
-3未満〜10
-7mbarの範囲、特に好ましくは10
-4〜10
-6mbarの範囲である。これらの値は、特にキャリヤーガスの注入なしで実施する方法に該当する。使用する圧力の範囲は、好ましくは多段式真空ポンプシステムによって実現する。
【0037】
本発明の態様において、本方法を分別昇華として実施する。すなわち昇華材料の複数の留分を集める。このタイプの分別昇華は、混合物の分離、たとえば立体異性体の混合物の分離にも使用できる。
【0038】
本発明による方法は、好ましくは動的真空下で実施する。したがって本方法を実施する間、装置は常に真空ポンプシステムに接続されている。これは静的真空を上回る利点を有し、より良好な真空がこれにより実現できる。
【0039】
本発明による方法のさらなる態様において、本方法は、不活性キャリヤーガスを使用して実施する。キャリヤーガスを使用する場合、本発明による方法は、好ましくは10
-1〜10
-4mbarの範囲の圧力で実施する。これにより、気相への変換を促進させることができる。このやり方で、感受性物質の場合に、有効な蒸発/昇華温度を下げて、分解を防ぐことが可能である。あるいは、より速い昇華速度を同じ温度で実現することができる。使用するキャリヤーガスは、一般的に不活性ガス、たとえば、窒素、ヘリウム、アルゴン、クリプトン、キセノンまたは六フッ化硫黄であってもよい。装置が冷却トラップを備える場合、冷却トラップ中で凝縮せず、したがって冷却トラップを遮断しないキャリヤーガスを使用すべきである。冷却トラップが液体窒素の温度(−196℃)で操作される場合、好適なキャリヤーガスは特にヘリウムである。
【0040】
本発明のさらなる態様において、本方法を半連続的に実施する。この目的を達成するために、新しい昇華材料を融液で昇華ユニットに供給することが好ましい。これには、常にごく少量の昇華材料しか昇華ユニットに存在しないという利点があり、したがって材料の熱応力はほんの少しで済むことを意味する。
【0041】
本発明による方法は、好ましくは以下の通りに実施する。既によく乾燥してあるべき昇華材料を、最初に昇華ユニットに入れる。装置を閉じ、真空を発生させる。本発明の態様において、先ず、回転させずに加熱を実施し、実際の昇華温度に達するとき、またはその直前にのみ回転のスイッチを入れる。これにより、昇華させる材料の散布を防止、または少なくとも減少させることができる。これは、特に材料が融液から蒸発する場合に該当する。ここでは、加熱中、材料を昇華温度に直接加熱せずに、通常まだ存在する残留溶媒を生成物から先ず比較的低温で除去するために段階的に温度を上昇させていくことが好ましい。特に比較的大規模な昇華の場合、比較的小規模での好適な昇華温度を先ず決定することが適切である。昇華材料が溶融している、または固体状態からの昇華の場合で昇華温度が達している、もしくはほとんど達していたら、回転のスイッチを入れる。昇華の完了後、昇華材料を凝縮ユニットから取り出す。
【0042】
本発明は、同様に、本発明による方法を実施するための装置に関する。本発明による装置を、
図1に図表で示す。
【0043】
したがって、本発明はさらに、オーブン(1)、昇華ユニット(2)、昇華ユニットと接触している凝縮ユニット(3)、昇華および凝縮ユニットを回転させる回転駆動装置(4)、ならびに真空ポンプまたは真空ポンプシステム(6)を含む、化合物を昇華させるための装置において、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールから選択される回転継手(5)を回転部と固定部との間に有することを特徴とする装置に関する。
【0044】
本発明による方法を実施することができる、本発明による装置を以下に詳述する。
【0045】
図1のオーブン(1)を、昇華ユニット(2)および凝縮ユニット(3)の両方を取り囲むように表す。この目的のために、オーブンはさまざまな温度ゾーンを有する必要があり、ここでは昇華ユニットの温度は凝縮ユニットの温度よりも高い。本発明の代替の態様において、オーブン(1)は昇華ユニット(2)のみを取り囲んでもよく、一方、凝縮ユニット(3)はオーブンの外側に配置される。
【0046】
一般的に、従来技術にしたがって使用される全ての加熱法は、オーブン(1)に適している。加熱は、間接的(たとえば、熱風、熱浴、加熱マントル、放射熱などによって容器の壁/ジャケットが加熱される)または直接的(たとえばIRまたはマイクロ波結合による)に実施できる。また、昇華材料を金属粒子(ビーズ)と混合し、これらの金属粒子を誘導加熱することもできる。好ましい態様において、加熱は間接加熱、好ましくは高温ガスによって行ない、そのためオーブンは好ましくは熱風炉である。この方法は、熱風炉が低熱容量のため迅速に加熱することができ、精製操作の完了後、迅速に冷却して戻すことができるという利点がある。さらにこの方法は、発火源がないため安全性がより優れている。室温で空気を取り入れることによる能動冷却法も、この方法で可能である。所望の温度を選択的に選択し、制御しながら調節することができるオーブンを選択することが好ましい。これにより、一部が感熱性の材料の熱応力、および材料の分解が減少する。工程を正確に制御できるように、オーブン中のさまざまな点における温度を決定することが好ましい。
【0047】
本発明のさらなる好ましい態様において、オーブン(1)は種々の加熱ゾーンに分けることができ、各ゾーンで温度を選択的に設定でき、すなわちオーブンは、好ましくは、ゾーン毎の温度設定が可能であるように構成される。これは、特に放射炉および熱風炉の場合に可能である。したがって、たとえば、複数の放射炉または熱風炉を使用することができ、オーブン中の個々の加熱ゾーンを互いに絶縁、または少なくとも熱的に遮断することができる。これは
図4に図表で表してあり、ここで(1)〜(6)は
図1に記載のものと同じ意味を有する。(1a)〜(1d)は別々の加熱源を表し、ここでT
(1a)>T
(1b)>T
(1c)>T
(1d)が温度に適用される。(1e)は加熱ゾーンの互いからの熱遮断を表す。
【0048】
これは、オーブンの温度ゾーンがさまざまであることから、凝縮ユニットをオーブン中に導入し、分別昇華によりさらなる材料の精製をも可能にするという利点を有し得る。
【0049】
本発明の好ましい態様において、熱風源を使用する場合、容器の壁の過熱およびこれに伴う昇華材料の熱分解のリスクを防ぐために、熱風は昇華ユニットを直接通過しない。代わりに、たとえば中間に導入した静的平板(偏向板、バッフル板)もしくは金属繊維によって、回転するファンの羽根によって、または別の好適な偏向装置によって、熱風源と昇華ユニットとの間で熱風をそらすことが好ましい。これによって、昇華ユニット全体に均一な加熱を実現することが可能になる。
【0050】
昇華ユニット(2)は昇華材料が入れられ、そこから昇華材料が蒸発して出て行くユニットであり、一方、凝縮ユニット(3)はそこで昇華材料が凝縮されるユニットである。ここでの凝縮ユニットは1つ以上の容器で構成されていてもよい。
【0051】
昇華ユニット(2)および凝縮ユニット(3)を、以下にさらに詳述する。
【0052】
本発明の態様において、昇華ユニット(2)は、たとえばフランジによって凝縮ユニット(3)と真空気密に接続されており、昇華および凝縮ユニットに直接真空を発生させる。これは
図1の図表に対応する。
【0053】
本発明のさらなる態様において、昇華ユニット(2)および凝縮ユニット(3)は管、たとえばガラス管によって取り囲まれ、取り囲むガラス管に真空を発生させる。この管は、たとえばすりガラス製ジョイントまたはガラス製平面フランジの手段によって、装置の残りの部分に接続されている。昇華ユニットおよび凝縮ユニットは、取り囲む管の中に挿入される。これにより装置への昇華材料の出し入れが容易になるため、この態様は有益であると証明されている。この態様の場合、取り囲む管に十分な真空安定性があり、昇華および凝縮ユニットにこの必要条件を満たす必要がなければ、さらに十分と考えられる。この態様は、
図5に図表で表してあり、ここでユニット(1)〜(6)は
図1に記載のものと同じ意味を有し、(14)は昇華および凝縮ユニットを取り囲む管を表す。本発明のこの態様において、昇華ユニット(2)および凝縮ユニット(3)は通常、真空気密に互いに接続されることなく、代わりに互いに対して密接せずに位置する、または互いに押し込まれるのみである。
【0054】
昇華ユニット(2)は、最初は制限されていない。したがって、たとえば、ガラス容器、セラミック容器、コランダム、窒化ホウ素もしくはグラファイトで作られた容器、または種々のスチールもしくは金属変形体で作られた容器が好適である。グラファイトは誘導的に加熱もできるという利点を有する。本発明の好ましい態様では、ガラス容器を使用する。石英またはDuranガラス(ホウケイ酸3.3)の使用が優先される。
【0055】
容器の形状はさまざまであり得る(
図6および7)。すなわち、球形、円筒形の容器の他、管、さらに曲面形状も可能である。本発明の好ましい態様において、使用する昇華ユニットは先が丸くなった、または外方に向けて曲線底面を有する円筒形容器である。この容器の形状は、丸底フラスコよりも容積と連係して表面積が広いことから、特に好適であることが証明されている。
【0056】
本発明の態様において、昇華ユニットおよび凝縮ユニットを備えた装置は水平に配列されている。本発明のさらなる態様において、装置全体は、すなわち昇華ユニットおよび凝縮ユニットも水平に対して傾斜し、その角度が好ましくは1〜10°であり、昇華ユニットは凝縮ユニットよりも低く配置される。このタイプの装置の傾斜は、昇華ユニットが比較的多量の材料を収容でき、したがってこの装置が比較的多量の昇華に適するという点で有利である。昇華された材料は通常凝縮ユニット中で固体形態、たとえばガラスで形成される、または液体形態で凝縮することから、通常粉末形態で昇華ユニットに導入され昇華される材料より高い密度を有するため、装置を傾斜させることによって生じる不都合はない。
【0057】
昇華材料に加えて、粉砕体も昇華ユニット(2)に添加してもよい。これらによって材料の混合が改善し、したがってより均一な温度分布、およびより良好な昇華速度がもたらされる。さらにこれらは、たとえば結晶の摩砕によって、昇華材料の粉砕をもたらす。これにより表面積が比較的広い昇華材料が生じ、それに続き、結果として昇華がより迅速になる。使用する粉砕体は、好ましくはビーズ、またはほぼ球体のものである。これらは好ましくは1〜10mm、特に好ましくは2〜6mmの直径を有し、種々の直径のビーズ混合物が特に好適であると証明されている。粉砕体に好ましい材料はガラスまたは金属、特に好ましくは石英またはDuranガラスから選択される。粉砕体は、特に好ましくは、昇華装置と同じ材料から選択される。
【0058】
蒸発した材料は、オーブン中またはオーブンの外側の温度が低めのゾーンにある凝縮ユニット(3)上で凝縮される。凝縮ユニットは通常、昇華ユニットと同じ速度で回転する。凝縮ユニット(3)は、永久的に昇華ユニット(2)と接続されてよい(
図6)。昇華ユニット(2)および凝縮ユニット(3)はまた、たとえばフランジによって互いに接続されてよいが、高温が要求されるため、これは熱安定性シール、たとえばKalrezシール、金シールまたはグラファイトシールの手段によって封止される。昇華ユニット(2)と凝縮ユニット(3)との間の接続を加熱して、この領域内で材料が昇華できないようにすることによって、材料が2つの容器間の比較的狭い接続を遮断することがないようにすることが好ましい。しかし、本発明の好ましい態様において、凝縮ユニットは上記のように昇華ユニットと永久的に接続されることはない(
図7)。これは昇華された生成物の取り出し、ならびに昇華および凝縮ユニットの洗浄を容易にする。上記の通り、昇華および凝縮ユニットを管に挿入し、次いでそこから真空を発生させることが好ましい。
【0059】
凝縮ユニット(3)はさまざまな材料、たとえばガラス、金属またはセラミックからなってよいが、低表面エネルギー、特に70mN/m未満の表面エネルギーを有する表面、たとえばPTFEからなっていてもよく、これはたとえばDE102005038211に記載されており、ここに記載されるものと同じ表面エネルギーの定義が適用される。低表面エネルギーを有する材料、たとえばPTFEでコーティングされたガラス、金属またはセラミックで作られた凝縮ユニットも同様に好適である。本発明の好ましい態様において、凝縮ユニットはガラスからなる。これは、装置の透明性が昇華および凝縮の工程を続けることを可能にするという利点を有する。また、1つ以上の相当の材料で凝縮ユニットを構成することも可能である。これは複合材料の意味で行なってよく、またコーティングの意味で行なってもよい。
【0060】
凝縮ユニット(3)にはさまざまな容器の形状が適し、たとえば上記の昇華ユニットと同じもの、たとえば円筒形または球形のユニットが適する。凝縮ユニットの好ましい形状は、昇華させた材料が固体状態で凝縮するか、液体状態で凝縮するかによっても左右される。
【0061】
昇華させた材料が液体状態で凝縮する場合、凝縮ユニットは、好ましくは円筒形または球形、特に円筒形であり、それは両端に狭まりと開口があり、凝縮ユニットが複数存在する場合、一方で緩くまたはシール手段によって昇華ユニットと接続し、他方で任意に次の凝縮ユニットと接続するか、または凝縮ユニットが複数存在する場合、2つの凝縮ユニットと接続する。これは
図6Aに図表で表す。さらに冷却すると、液体状態で凝縮された材料が固化し、固体材料は、多くはガラスの形態で得られる。また固化に際して、ガラス状の材料は高い頻度で凝縮ユニットからすぐに離れるため、昇華の完了後に容易に取り外すことができる。昇華させた材料が自然に外れなければ、昇華の完了後、たとえば剥離することによって、凝縮ユニットから機械的に分離させる。
【0062】
昇華させた材料が、直接固体状態で凝縮する場合、上記の凝縮ユニットを同様に使用することができる。さらに、昇華させた材料の凝縮が生じ得る円筒リング内にディスクを有する円筒形ユニットは、固体状態の凝縮の場合、凝縮ユニットとして好適であることが証明されている。これは
図6Bの平面図および
図6Cの側面図に図表で表されており、いずれも凝縮ユニットについての図である。ここでの(3a)は外円筒リングを表し、(3b)は凝縮が生じるディスクを表し、(3c)は円筒リング内のディスクを安定化する接続部を表す。分別昇華の場合、複数のこうしたユニットを互いに対して位置させることができ、したがって種々の温度に加熱できる、このような複数の凝縮ユニットが存在する。昇華の完了後、昇華させた材料の取り出しは通常機械的に、たとえば剥離することによって実施される。
【0063】
ここでの凝縮ユニット(3)は適切な凝縮を促進するために、(所定の圧力下で)昇華または蒸発温度を十分に大きく下回る温度で操作される。ここでの凝縮は液体状態または固体状態で行なうことができる。比較的小型の昇華装置の場合や遅い昇華速度の場合、空冷またはガス流、たとえば空気もしくは窒素流による冷却はここで十分であり得る。しかし、全てのまたは一部の凝縮ユニットを、たとえば水冷によって(一定して)低温にすることも有利となり得る。特に球形の凝縮ユニットは、冷却浴、たとえば水または氷浴に浸すことによって容易に冷却できるという利点を有する。ユニットを回転することによって、ユニット全体を均一に冷却する。冷却温度は、好ましくは昇華物がガラス様状態で得られるように選択される。これは、ガラス転移温度未満まで冷却することによって実現する。このようにして昇華物は装置からより容易に取り出すことができる。しかし一般的に、凝縮ユニットの能動冷却は必要ではない。
【0064】
製品規格に応じて、既に上に記載されたように、凝縮ユニット1つのみの代わりに複数の凝縮ユニット、たとえば一方の後ろにまた一つというように配置した複数のフラスコまたはシリンダー、またはここでの順序で異なる温度に加熱する上で詳述した複数の凝縮ユニットを使用して、同時に蒸発した不純物の分離を通じてさらなる精製を成し遂げることが適切または必須であり得る。この方法で、他のやり方では分離するのが難しい生成混合物の分離、たとえば生成物の立体異性体の分離を同様に促進することができる。したがってこの方法によって、たとえば化合物のジアステレオマー、たとえばアトロプ異性体の分離が促進されるが、一方従来技術の方法による、たとえば従来技術の昇華による分離では、満足な結果は得られない。
【0065】
回転継手(5)は、本発明によれば、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールである。
【0066】
エバポレーター/昇華ユニットの回転は、たとえばエバポレーター/昇華ユニットが金属またはガラス製の中空軸に搭載されるような方法で実施することができる。この中空軸は歯付きベルトを介した変動モーターによって動作する。ここでの各々の場合において、回転速度の調節および制御の両方が可能でなければならない。
【0067】
図1は、回転駆動装置(4)および回転継手(5)を別々の要素としてさらに示す。本発明の代替の態様において、回転駆動装置は回転継手に組み込まれて、単一の要素としてもよい。特に磁性流体シールを有する回転フィードスルーの場合、このような回転駆動装置と回転継手の組合せは市販されている。
【0068】
本発明による方法は、好ましくは10
-7mbar以下を範囲とする圧力下で実施されるため、対応する要望が回転継手にある。本発明によれば、複動もしくは三動式メカニカル面シール(たとえばUS6976681)または磁性流体シールを有する回転フィードスルーを使用する。これらの回転継手は従来技術において一般的に既に知られており、市販されている。継手の回転から熱が発生するため、特に比較的大型の昇華装置の場合、継手を冷却することが好ましいことがある。冷却はたとえば、ガス流または水によって実施され得る。
【0069】
必要な圧力範囲は多段式真空ポンプシステム(6)、好ましくは二段式真空ポンプシステムによって実現されることが好ましい。吸い込み性能が5〜50m
3/hのプレポンプ、たとえば、油ポンプ、空転スクロールポンプ、回転翼型ポンプまたはルーツポンプは、約5×10
-2〜5×10
-1mbarの範囲の前真空を発生する。これらに接続するものは高真空ポンプ、たとえばターボ分子ポンプまたは油拡散ポンプであり、これによりそれぞれの場合において所望の範囲の真空を実現することができる。真空ポンプと実昇華装置との間に、昇華材料中に存在する溶媒残留物、およびさらなる揮発性副生成物を凝縮させる冷却トラップまたはバッフルを設置することが適切であり得る。これによりさらに圧力を再び低減させることができる。冷却トラップまたはバッフルはさらに真空ポンプを保護し、ポンプの構成要素、たとえば油の装置内への逆拡散を防止するために働く。スクロールポンプとターボ分子ポンプとの組合せは、これによって絶対的にオイルフリーの真空を発生させることができるという利点をもたらす。したがってこの組合せは好ましい。さらに装置は、装置の圧力測定のためにマノメーターを有してもよい。昇華の開始は若干の圧力増加によって示され、昇華の終了はさらなる圧力の低下によって示されるため、昇華工程を追従し制御するために、これも適切であり得る。
【0070】
装置は、絶対に必須であるとは限らないが、その存在が適切であり得るさらなる要素も有し得る。そのため、たとえば温度計および/またはマノメーターの存在は、昇華工程をモニタリングするためにも適切である。また大型、すなわち重い装置の場合、昇華ユニットを支えるために、その閉口部に回転軸受(rotating bearing)を設けることも適切、または必須であり得る。プロセス制御システムの使用も適切であり得る。
【0071】
キャリヤーガス昇華を実施するための装置はさらなる要素、たとえば
図2に示す不活性ガスフィードを要する。
図2の装置の構成要素(1)〜(6)は、
図1の装置に記載のものと同じ意味を有する。この装置はさらに以下の要素を有する。
(7)ガス供給管
(8)回転継手
(9)メータリングバルブ
(10)ガス源
キャリヤーガスは、好ましくは昇華ユニット中に、同軸上に供給される。この目的を達成するために、エバポレーターユニットはキャリヤーガス供給管(7)を備え、オーブンは同軸形態のままにしておく。キャリヤーガスは、好ましくは昇華ユニットに供給される前に予熱しておいてもよい。ガス源(10)、たとえばガス容器と接続する静的メータリングバルブ(9)への接続は、さらなる回転継手(8)の手段によって実施できる。これは同様に、好ましくは、磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールである。
【0072】
半連続的な作業を行なう装置を
図3に示す。
図3の装置の構成要素(1)〜(6)は、
図1の装置に記載のものと同じ意味を有する。この装置はさらに以下の要素を有する。
(11)回転継手
(12)保存容器
(13)計測装置
ここでの回転継手(11)は同様に、好ましくは磁性流体シールを有する回転フィードスルーまたは複動もしくは三動式メカニカル面シールである。
【0073】
キャリヤーガス供給に関しては、半連続的作業用の装置もまた昇華ユニットの一端部に供給管を有する。ここでの昇華ユニットへの供給は原則として、昇華ユニットの両側から可能である。これはさらなる回転シール(11)を介して、任意に加熱した材料を液体または固体状態で含有する保存容器(12)と接続される。これは止め栓または別の計測装置(13)によって、昇華ユニット内へ計測しながら供給することができる。融液を固化させずに供給することを促進するために、供給管を加熱することが適切であり得る。
【0074】
本発明による方法によって、または本発明による装置を使用して高純度の材料が精製されることから、装置自体が可能な限り高い清潔度を確保しなければならない。したがって、昇華ユニットと凝縮ユニットは両方とも、昇華を実施する前に念入りに清浄しておくことが好ましい。この目的のために、対応する昇華ユニットおよび凝縮ユニットを仮焼または焼成によって浄化することも好ましく、これにより不純物が熱分解される。
【0075】
本発明による方法および本発明による装置は従来技術をしのぐ、以下の驚くべき利点を有する。
1. 本発明による方法は、従来技術によって可能な分と比べて、バッチ当たり有意に多量の材料を昇華させることができる。
2. 昇華される材料の熱負荷が、従来技術による装置の場合よりもかなり低い。これにより材料の損失を回避させることができる。従来技術による昇華では完全に分解してしまう感熱性の一部の材料については、本発明による方法のみが完全な昇華を可能にする。さらに均一な熱投入は、観察される材料の灰化がない、または少なくとも顕著に少ないことを意味する。
3. 良好な混合によって、昇華は従来技術による装置よりもかなり迅速に進行し、これは重要な技術的利点を表す。
4. 本発明による方法は、融液から蒸発が起きる昇華においても重要な利点をもたらす。上記の利点は別として、回転によって均一な蒸発が実現し、蒸発溶媒が回避されるために沸騰が遅れることから、融液中の残留溶媒がここでは問題にならないことを強調すべきである。そのため昇華された材料の汚染も回避される。さらに、化合物が固体状態ではなく液体状態で凝縮する場合、精製材料から、まだここでは未精製の材料への逆流が生じ得ないので、本発明による方法では問題が発生しない。
5. 本発明による方法はキャリヤーガスを使用して実施することもでき、その結果昇華工程がさらに加速し、それに加え昇華温度が低下する。したがってこの方法は、感熱性の物質に特に適している。
6. 本発明による方法は半連続的に実施することもでき、さらに大規模な昇華を可能にすると同時に、昇華させる材料の熱応力を低減することができる。
【0076】
本発明を以下の実施例によって、これらに限定することなく、より詳細に説明する。当業者であれば、本発明の工程を使用しないで示された記述および例からさらなる態様を見出すか、または記載の方法を用いてさらなる材料を当然ながら精製するであろう。特に、本発明の工程を使用しないで、装置のスケーリングおよびより大規模で作業することも可能である。
【0077】
図面中に示す番号は、上記の記述および実施例において詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】
図1は、本発明による方法を実施するための装置を示す。
【
図4】
図4は、複数の加熱ゾーンを有する、本発明による方法を実施するための装置を示す。
【
図5】
図5は、ガラス管に取り囲まれた昇華および凝縮ユニットを備えた装置を示す。
【
図6】
図6は、永久的に接続された昇華および凝縮ユニットの好適な容器形状:A)円筒−円筒、B)球−球、C)円筒−球、D)キャリヤーガス供給型または半連続的な作業向けの円筒−円筒を示す。
【
図7】
図7は、永久的には接続されない昇華および凝縮ユニットの好適な容器形状:A)液体状態で凝縮するための昇華および凝縮ユニット、B)固体状態で凝縮するための凝縮ユニット(平面図)、C)固体状態で凝縮するための凝縮ユニット(側面図)を示す。
【
図8】
図8は、本発明による昇華装置の全体図、設計図を示す。
【0079】
[実施例]
例1:昇華を実施するための従来技術による装置の構造(比較例)、装置1
構成要素:
- NS45円錐形すりガラス製ジョイントソケットを備えた、Schott MainzのDuranガラス製の4Lの一口ガラスフラスコ、
- 片方の端部にNS45円錐形すりガラス製ジョイントコーンを備え、他方の端部に平面フランジを備えた、長さ1m(内径40mm)のガラス管、
- 可変加熱フード、
- ターボドラッグポンプスタンド、
- 液体窒素で充填できる、冷却トラップ
昇華させる特定量の化合物MAT1〜MAT6を、初めに4Lの一口ガラスフラスコに入れる(例4、表2を参照)。一口フラスコにはガラス管が備わっており、NS45円錐形すりガラス製ジョイントコーンはテフロン(登録商標)リングで封止されている。このユニットは、平面フランジを介してターボドラッグポンプスタンドに接続されており、調節可能加熱フード中に位置する。真空が静止状態に達するまで装置を評価する(例4、表2を参照)。加熱フードの手段によって、表3に示す昇華温度まで温度を20℃ずつ徐々に連続的に上昇させていく。昇華が完了したら、装置を室温に冷却し、真空を解除し、フラスコの上半分に蓄積した昇華物を機械的に取り出し、NMRまたはHPLCによる純度分析にかける。
【0080】
例2:昇華を実施するための本発明による装置の構造、装置2
本発明による昇華装置は、
図1に示す構成要素を含む。完成設計図を
図8に示す。ここで個々の構成要素は以下の意味を有する。
A)前真空を発生させるプレポンプ
B)高真空を発生させるターボ分子ポンプ
C)真空測定のためのマノメーター
D)液体窒素を使用して冷却した冷却トラップ
E)昇華空間とポンプスタンドを分離するためのスプール弁
F)磁性流体シールおよび電気駆動装置を備えた回転フィードスルー
G)温度制御のための4つのPT100熱電素子を備えた、絶縁V2A管(直径250mm、長さ450mm)からなる熱風炉
H)オーブン加熱のための空気加熱器
I)空気加熱器用のファン
J)オーブン中の流量管理のためのバッフル
K)オーブン中への空気入口
L)昇華ユニットおよび凝縮ユニットからなる昇華容器
昇華させる特定量の化合物MAT1〜MAT6を、初めに昇華ユニット(2)または(L)に入れる(例4、表2を参照)。本発明による昇華ユニットを組み立て、ベース圧力に排気する(例4、表2を参照)。続いて回転のスイッチを入れ(回転速度1.5min
-1)、熱風炉の手段によって、表2に示す昇華温度まで温度を50℃ずつ徐々に上昇させていく。昇華が完了したら、装置を室温に冷却し、真空を解除し、凝縮ユニット中に蓄積した昇華物を機械的に取り出し、NMRまたはHPLCによる純度分析にかける。
【0081】
例3:キャリヤーガス昇華を実施するための本発明による装置の構造、装置3
本発明による昇華装置は、
図2に示す構成要素からなり、これらは
図8と同様に交互に並べられ、市販のOリングフランジを有する波形真空ホースによって接続される。
【0082】
昇華させる特定量の化合物MAT4およびMAT6を、初めに昇華ユニット(2)に入れる(例4、表2を参照)。本発明による昇華ユニットを組み立て、ベース圧力に排気し(例4、表2を参照)、回転のスイッチを入れる(回転速度1min
-1)。続いて熱風炉の手段によって、表2に示す昇華温度まで温度を50℃ずつ徐々に上昇させていく。昇華温度に達したらヘリウムキャリヤーガス流を調節して、指示圧力(例4、表2を参照)に達するようにする。昇華が完了したら、装置を室温に冷却し、真空を解除し、凝縮ユニット中に蓄積した昇華物を機械的に取り出し、NMRまたはHPLCによる純度分析にかける。
【0083】
例4:さまざまな有機および有機金属物質の昇華
以下の有機物質MAT1〜MAT6(概要、表1)を上記の装置中で蒸発させて精製する。
【0084】
【表1】
【0085】
実施した昇華実験の概要を表2に再現する。
【0086】
【表2-1】
【0087】
【表2-2】
【0088】
【表2-3】
【0089】
【表2-4】
【0090】
【表2-5】
【0091】
【表2-6】
【0092】
【表2-7】
【0093】
記載した実験は本発明による方法によって、物質をはるかに迅速に大規模で昇華させることができ、副反応または分解が非常に少ないことを示す。上に示す物質のいくつかについては、本発明による方法のみが唯一昇華させることができる。
【0094】
例5:異性体分離のための本発明による方法の使用
化合物のアトロプ異性体、たとえば下記の9,10−ビス(4−メチルナフサ−1−イル)アントラセンのアトロプ異性体(WO06/048268)の部分的または完全分離は、本発明による方法によって実施することができる。9,10−ビス(4−メチルナフサ−1−イル)アントラセンの1:1アトロプ異性体混合物100gを、T=280℃およびp=9×10
-4mbarで200gのガラスビーズ(直径5mm)を加えた装置3中で、固相から昇華させる。50gの昇華物および50gの残留物に相当する総処理量約50%の後、昇華を終わらせる。昇華物中のアトロプ異性体比は、より容易に揮発するアトロプ異性体に対して約2.3:1.0であり、残留物のアトロプ異性体比は、より低い揮発性のアトロプ異性体に対して約1.0:2.3である。昇華物および残留物のアトロプ異性体の判定は、WO06/048268にしたがって実施した。それぞれの場合において、総処理量50%の後、昇華物の昇華および停止を繰り返すことによって、昇華物中の高揮発性アトロプ異性体をかなり濃縮することがより簡単にできる。この方法で20:1を上回る比率を容易に実現できる。低揮発性アトロプ異性体は、質量処理量80%以上で、残留物中でかなり濃縮され得る。この方法で1:20を上回る比率を容易に実現できる。
【0095】
例6:大規模な昇華のための本発明による方法の使用
以下の例は、本発明による方法および本発明による装置による昇華も、キログラム規模で実施できることを示す。この目的を達成するために、用いる材料、昇華法のパラメータならびに昇華後の収率および純度を、それぞれの場合において以下に示す。加熱後に回転のスイッチを入れる。
【0096】
例6a:
材料:MAT7(約670g/molの分子量を有するトリアリールモノアミン誘導体)、純度99.83%
充填材:5000g
温度:285℃
最終圧力:10
-6mbar未満
回転速度:1min
-1
昇華の継続時間:13.5h
収率(純度):留分1:4500g(99.97%)、留分2:300g(99.97%)。
【0097】
第2の昇華は純度を99.99%超まで向上させる。
【0098】
例6b:
材料:MAT8(約670g/molの分子量を有するトリアリールモノアミン誘導体)、純度99.88%
充填材:5500g
温度:300℃
最終圧力:10
-6mbar未満
回転速度:2min
-1
継続時間:17h
収率(純度):留分1:4690g(99.99%)、留分2:580g(99.94%)。
【0099】
留分2の第2の昇華は純度を99.99%超まで向上させる。
【0100】
例6c:
材料:MAT9(約590g/molの分子量を有する2,4,6−トリアリール−1,3,5−トリアジン誘導体)、純度99.41%
充填材:5000g
温度:310℃
最終圧力:10
-6mbar未満
回転速度:4min
-1
継続時間:13h
収率(純度):留分1:4430g(99.96%)、留分2:140g(99.98%)。
【0101】
第2の昇華は純度を99.99%超まで向上させる。