(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509868
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】着陸装置駆動システムのフレキシブルインターフェース
(51)【国際特許分類】
B64C 25/40 20060101AFI20190422BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20190422BHJP
F16H 55/10 20060101ALI20190422BHJP
F16H 55/12 20060101ALI20190422BHJP
F16D 1/06 20060101ALI20190422BHJP
F16D 3/16 20060101ALI20190422BHJP
F16D 3/20 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
B64C25/40
F16H1/06
F16H55/10
F16H55/12
F16D1/06 210
F16D3/16 V
F16D3/20 Z
【請求項の数】21
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-539632(P2016-539632)
(86)(22)【出願日】2014年9月3日
(65)【公表番号】特表2016-533966(P2016-533966A)
(43)【公表日】2016年11月4日
(86)【国際出願番号】GB2014052653
(87)【国際公開番号】WO2015033125
(87)【国際公開日】20150312
【審査請求日】2017年8月10日
(31)【優先権主張番号】1315802.7
(32)【優先日】2013年9月5日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】1410034.1
(32)【優先日】2014年6月5日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510286488
【氏名又は名称】エアバス オペレーションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AIRBUS OPERATIONS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】アルノー ディディー
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2012/0305702(US,A1)
【文献】
特開2002−364735(JP,A)
【文献】
特開2005−163804(JP,A)
【文献】
特開2012−219960(JP,A)
【文献】
特開2002−323059(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0233969(US,A1)
【文献】
特開2011−131822(JP,A)
【文献】
特開昭58−190117(JP,A)
【文献】
国際公開第01/046605(WO,A1)
【文献】
特表2013−514229(JP,A)
【文献】
特開昭57−057923(JP,A)
【文献】
特表2013−503070(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0026284(US,A1)
【文献】
特表2013−514228(JP,A)
【文献】
米国特許第02453279(US,A)
【文献】
米国特許第02578764(US,A)
【文献】
米国特許第02687857(US,A)
【文献】
米国特許第02963103(US,A)
【文献】
米国特許第03079680(US,A)
【文献】
米国特許第03490306(US,A)
【文献】
特開昭50−059656(JP,A)
【文献】
米国特許第04335963(US,A)
【文献】
特表平08−511605(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0111907(US,A1)
【文献】
特開2005−241008(JP,A)
【文献】
特開2005−054962(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0005726(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0226621(US,A1)
【文献】
特開2011−131878(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0337891(US,A1)
【文献】
英国特許出願公告第00556203(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 25/32−25/66
F16D 1/06
F16D 3/16
F16D 3/20
F16H 1/00− 1/26
F16H 55/10−55/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機着陸装置の駆動システムであって、前記駆動システムは、
ピニオンギアと、
駆動軸線周りに前記ピニオンギアを回転させるよう構成した駆動シャフトと、
前記ピニオンギアに噛合して前記ピニオンギアによって回転可能となるよう構成した被駆動ギアであって、前記着陸装置の車輪に連結可能とし、前記車輪を車輪軸線周りに回転させることができる、該被駆動ギアと、
複数個の被駆動ギア結合部材を有するフレキシブルなインターフェースであって、前記被駆動ギア結合部材それぞれは、被駆動ギアに取り付けた第1連結部分、前記車輪軸線からオフセットした距離で車輪に取り付けることができる第2連結部分、及び第1連結部分と第2連結部分との間の継手を有し、前記継手が第1連結部分と第2連結部分との間における相対移動を可能にする、該フレキシブルインターフェースと、を備え、
前記フレキシブルインターフェースは、1個又は複数個のフェールセーフキャッチを有し、各フェールセーフキャッチは、前記車輪に対して取り付け可能であり、また前記被駆動ギア結合部材のうち1個又は複数個が故障した場合に被駆動ギアを保持するよう構成されている、駆動システム。
【請求項2】
請求項1記載の駆動システムにおいて、前記継手は球面継手とする、駆動システム。
【請求項3】
請求項2記載の駆動システムにおいて、前記球面継手は、第1連結部分又は第2連結部分に対して並進運動できる構成とする、駆動システム。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記継手は、少なくとも2つの自由度内での相対移動を可能にする、駆動システム。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記継手は、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線にほぼ平行な第1局部軸線に沿う並進運動を可能にする、駆動システム。
【請求項6】
請求項5記載の駆動システムにおいて、前記継手は、前記第1局部軸線に沿う並進運動を生ずる運動学的円筒状継手又は運動学的摺動継手を有する、駆動システム。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記継手は、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線に角度をなす第2局部軸線に沿う並進運動を可能にする、駆動システム。
【請求項8】
請求項7記載の駆動システムにおいて、前記継手は、前記第2局部軸線に沿う並進運動を生ずる運動学的円筒状継手又は運動学的球面継手を有する、駆動システム。
【請求項9】
請求項7又は8記載の駆動システムにおいて、前記第2局部軸線は前記車輪軸線に対してほぼ半径方向に指向する、駆動システム。
【請求項10】
請求項1又は4記載の駆動システムにおいて、前記継手は、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線にほぼ平行な第1局部軸線に沿う並進運動、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線に角度をなす第2局部軸線に沿う並進運動、及び前記第1連結部分と前記第2連結部分との間の相対回転を可能にする、駆動システム。
【請求項11】
請求項1〜10のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記被駆動ギアはほぼリング状の形状とし、前記複数個の被駆動ギア結合部材は前記被駆動ギアの周りにほぼ均等に分布させる、駆動システム。
【請求項12】
請求項1〜11のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記被駆動ギア結合部材それぞれは、前記第1連結部分を前記車輪軸線に向けて押圧するよう構成した弾性部材を有する、駆動システム。
【請求項13】
請求項1〜12のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記フレキシブルインターフェースは、前記ピニオンギアを前記駆動シャフトに連結して前記ピニオンギアの前記駆動軸線に対する傾動を可能にするよう構成したピニオンギア結合部材を有する、駆動システム。
【請求項14】
請求項13記載の駆動システムにおいて、前記ピニオンギア結合部材は、前記駆動シャフトと前記ピニオンギアとの間のクラウン状のスプライン継手を有する、駆動システム。
【請求項15】
請求項13記載の駆動システムにおいて、前記ピニオンギア結合部材は、前記駆動シャフトと前記ピニオンギアとの間の等速継手又はCV継手を有する、駆動システム。
【請求項16】
請求項13〜15のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記ピニオンギア結合部材は、前記ピニオンギアの前記駆動軸線に沿う並進運動を可能にする構成とする、駆動システム。
【請求項17】
請求項1〜16のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記被駆動ギア結合部材それぞれの前記第1連結部分は、前記被駆動ギアに取り付けたブッシュを有し、また前記継手は、前記第2連結部分に連結して前記ブッシュ内で摺動する構成とした連係動作する円筒状のシャフトを有する、駆動システム。
【請求項18】
請求項1〜17のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記被駆動ギア結合部材それぞれの前記第2連結部分は、ソケット部分を有し、また前記継手は、前記第1連結部分に連結して前記ソケット部分内で回転及び並進運動する構成としたボール部分を有する、駆動システム。
【請求項19】
請求項1記載の駆動システムにおいて、前記1個又は複数個のフェールセーフキャッチは、前記被駆動ギア結合部材のうち1個又は複数個の前記被駆動ギア結合部材における前記第2連結部分に取り付ける、駆動システム。
【請求項20】
請求項1〜19のうちいずれか一項記載の駆動システムにおいて、前記ピニオンギア及び前記被駆動ギアのうち一方はスプロケットを有し、前記ピニオンギア及び前記被駆動ギアのうち他方はリングを形成するよう構成した一連のローラを有し、前記ローラそれぞれは、前記ピニオンギア又は被駆動ギアの回転軸線から一定距離におけるローラ軸線の周りに回転可能とする、駆動システム。
【請求項21】
請求項20記載の駆動システムにおいて、前記一連のローラにおける各ローラはピンの周りに回転可能とし、前記ピンは、少なくとも一方の端部を環状支持部材に固着する、駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機着陸装置の車輪と、地上走行用に車輪を回転させる駆動システムとの間におけるフレキシブルなインターフェース(接続部)に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機は飛行場における場所間で地上走行することが必要となる。例としては、滑走路と、航空機の乗客が乗り降りする場所(例えば、ターミナルゲート)との間で走行する。一般的にこのような走行は、航空機エンジンからの推力を使用して航空機を前方に推進し、着陸装置車輪を回転させることによって達成する。このような地上走行速度は比較的低いことが必要であるため、エンジンは極めて低出力で稼働しなければならない。このことは、この低出力での推進効率が悪い結果として比較的高い燃料消費が存在することを意味する。このことは、上昇したレベルの大気汚染及び騒音公害の双方を空港周りに局所的にもたらす。さらに、エンジンが低出力で稼働しているときでさえも、一般的に車輪にブレーキをかけて地上走行速度を制限する必要があり、このことは高度のブレーキ摩耗をもたらす。
【0003】
旅客機の逆進、例えば、主エンジンを使用してターミナルゲートから離れることはできない。逆進が必要なとき、又は主エンジン推力による地上走行が実用的でない他の状況において、牽引トラックを使用して航空機を引き回す。このプロセスは面倒であり、長い時間と労力を要し、またコストがかかる。
【0004】
したがって、地上走行操作中に航空機着陸装置の車輪を動かす駆動システムの必要性がある。
【0005】
航空機が地上にある間に車輪を駆動すること、及び着陸前に車輪をスピンさせることの双方を行う幾つかの自律地上走行システムが近年提案されている。例としては、航空機機首動力車輪システムを提案している特許文献1(米国特許出願公開第2006/0065779号)に記載されているものがあり、このシステムは、クラッチを使用して車輪が自由にスピンできるモードと、車輪を電動モータによって駆動できるモードとの間で切り替える。このクラッチは、さらに、モータが着陸前に車輪を予めスピンさせることができるよう動作可能である。
【0006】
機首着陸装置に限定されない従来構成としては、特許文献2(国際公開第2011/023505号)に記載されているものがある。この特許文献2に開示されているシステムは、被駆動歯付きピニオンギアを車輪における歯付きリングギアとの駆動係合及び離脱状態に移動させるアクチュエータを使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0065779号明細書
【特許文献2】国際公開第2011/023505号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様は、航空機着陸装置の駆動システムを提供し、前記駆動システムは、
ピニオンギアと、
駆動軸線周りに前記ピニオンギアを回転させるよう構成した駆動シャフトと、前記ピニオンギアに噛合して前記ピニオンギアによって回転可能となるよう構成した被駆動ギアであって、前記着陸装置の車輪に連結可能とし、前記車輪を車輪軸線周りに回転させることができる、該被駆動ギアと、複数個の被駆動ギア結合部材を有するフレキシブルなインターフェースであって、前記被駆動ギア結合部材それぞれは、被駆動ギアに取り付けた第1連結部分、前記車輪軸線からオフセットした距離で車輪に取り付けることができる第2連結部分、及び第1連結部分と第2連結部分との間の継手を有し、前記継手が第1連結部分と第2連結部分との間における相対移動を可能にする、該フレキシブルインターフェースと、を備える。
【0009】
したがって、フレキシブルインターフェースは、使用中に着陸装置内の変形、例えば、垂直方向荷重及び制動荷重によって生ずる車軸の曲げ、並びに車輪自体の変形から駆動システムを隔絶して、駆動システム及び車輪における摩耗及び/又は応力を制限する。
【0010】
継手は、好適には、第1連結部分と第2連結部分との間の回転運動、好適には、3つ又はそれ以上の自由度での回転運動を生ずる球面継手とする。好適な球面継手としては、例えば、ボール及びソケット継手又は球面軸受がある。このような回転運動は、例えば車軸の曲げによって生ずる車輪の誤整列又は変形から被駆動ギアを隔絶するよう作用し、またさらに、被駆動ギアの車輪に対する組み付けを容易にするのに役立つ。
【0011】
前記球面継手は、さらに、第1連結部分又は第2連結部分に対して並進運動できる構成、例えば、第1部分と第2部分との間で並進運動を達成するために摺動する構成にすることができる。このような並進運動は、被駆動ギアを更なる変形又は誤整列から隔絶するよう作用し得る。
【0012】
幾つかの実施形態において、球面継手は、車輪軸線に対して角度をなす(例えば、車輪軸線に対してほぼ半径方向に指向する)軸線に沿って並進運動(例えば、摺動によって)して、タイヤ荷重によって生ずる車輪形状の変形(例えば、ひし形、又は楕円形の形状への変形)から、及び/又は車輪リムの変形の結果による被駆動ギアとピニオンギアとの間における中心間距離変動から被駆動ギアを隔絶できる構成とし得る。
【0013】
付加的又は代替的に、球面継手は、車輪軸線にほぼ整列する軸線に沿って並進運動して(例えば、摺動によって)、車軸ゆがみの結果による被駆動ギアとピニオンギアとの間の相対傾動から被駆動ギアを隔絶できるよう構成し得る。
【0014】
前記継手は、好適には、少なくとも2つの自由度内での相対移動ができるようにする。
【0015】
前記継手は、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線にほぼ平行な(整列する)第1局部軸線に沿う並進運動を可能にし得る。このような運動によれば、被駆動ギアは車輪に対して傾動し、車軸変形の結果による被駆動ギアとピニオンギアとの間の相対傾動を隔絶できる。前記継手は、前記第1局部軸線に沿う並進運動を生ずる運動学的円筒状継手又は運動学的摺動継手を有することができる。
【0016】
前記継手は、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線に角度をなす第2局部軸線に沿う並進運動を可能にする。このような運動によれば、被駆動ギアと車輪との間で相対並進運動して、車輪リム変形の結果としての被駆動ギアとピニオンギアとの間の中心間距離変動を隔絶する、及び/又はタイヤ荷重によって生ずる車輪形状変化(例えば、円形から楕円形又はひし形形状への変形)から隔絶することができる。前記継手は、前記第2局部軸線に沿う並進運動を生ずる運動学的円筒状継手又は運動学的ボール継手(又は運動学的球面継手、例えば、摺動可能な運動学的球面継手)を有して第2局部軸線に沿う並進運動を生ずることができる。前記第2局部軸線は前記車輪軸線に対してほぼ半径方向に指向することができる。
【0017】
前記継手は、好適には、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線にほぼ平行な第1局部軸線に沿う並進運動、前記第1連結部分の前記第2連結部分に対する前記車輪軸線に角度をなす第2局部軸線に沿う並進運動、及び前記第1連結部分と前記第2連結部分との間の(制限された)相対回転を可能にする。
【0018】
前記被駆動ギアはほぼリング状の形状とすることができ、また前記複数個(好適には、3若しくは5個、又は被駆動ギアから車輪にうまくトルクを伝達するのに必要な個数)の被駆動ギア結合部材は前記被駆動ギアの周りにほぼ均等に分布させることができる。
【0019】
前記被駆動ギア結合部材それぞれは、好適には、前記第1連結部分を前記車輪軸線に向けて押圧するよう構成した弾性部材(例えば、ばね)を有するものとする。このようにして、弾性部材は被駆動ギアを車輪に対して心出しするよう作用する。
【0020】
前記フレキシブルインターフェースは、好適には、前記ピニオンギアを前記駆動シャフトに連結して前記ピニオンギアの前記駆動軸線に対する傾動を可能にするよう構成したピニオンギア結合部材を有する。前記ピニオンギア結合部材は、好適には、前記駆動シャフトと前記ピニオンギアとの間のクラウン状(頂部のある形状)にしたスプライン継手を有する。前記ピニオンギア結合部材は、代案として、前記駆動シャフトと前記ピニオンギアとの間の等速継手(CV継手)を有する。前記ピニオンギア結合部材は、前記ピニオンギアの前記駆動軸線に沿う並進運動を可能にするよう構成し得る。
【0021】
前記被駆動ギア結合部材それぞれの前記第1連結部分は、前記被駆動ギアに取り付けたブッシュを有し、また前記継手は、前記第2連結部分に連結して前記ブッシュ内で摺動する構成とした連係動作する円筒状のシャフトを有することができる。
【0022】
前記被駆動ギア結合部材それぞれの前記第2連結部分は、ソケット部分を有し、また前記継手は、前記第1連結部分に(好適には、円筒状のシャフトに対して剛性連結によって)連結して前記ソケット部分内で回転及び並進運動する構成としたボール部分を有することができる。
【0023】
前記フレキシブルインターフェースは、1個又は複数個のフェールセーフキャッチを有し、各フェールセーフキャッチは、前記車輪に対して取り付け可能にし、また前記被駆動ギア結合部材のうち1個又は複数個が故障した場合に被駆動ギアを保持するよう構成することができる。前記1個又は複数個のフェールセーフキャッチは、前記被駆動ギア結合部材のうち1個又は複数個の前記被駆動ギア結合部材における前記第2部分に取り付けることができる。
【0024】
好適には、前記ピニオンギア及び前記被駆動ギアのうち一方はスプロケットを有し、前記ピニオンギア及び前記被駆動ギアのうち他方はリングを形成するよう構成した一連のローラを有し、ローラそれぞれは、前記ピニオンギア又は被駆動ギアの回転軸線から一定距離におけるローラ軸線の周りに回転可能とする。前記一連のローラにおける各ローラはピンの周りに回転可能とし、前記ピンは、少なくとも一方の端部を環状支持部材に固着することができる。
【0025】
本発明の態様は、航空機着陸装置の駆動システムを提供し、前記駆動システムは、ピニオンギアと、駆動軸線周りに前記ピニオンギアを回転させるよう構成した駆動シャフトと、前記ピニオンギアに噛合して前記ピニオンギアによって回転可能となるよう構成した被駆動ギアであって、前記着陸装置の車輪に連結可能とし、前記車輪を車輪軸線周りに回転させることができる、該被駆動ギアと、前記駆動シャフトと前記ピニオンギアとの間で、ピニオンギアが前記駆動軸線に対して傾動できるようにするクラウン状のスプライン継手を有するフレキシブルなインターフェースと、を備える。
【0026】
このような構成によれば、車軸ゆがみにより生ずる車輪に対する被駆動ギアの傾動を許容してピニオンギアと被駆動ギアとの間の相対傾動を可能にする。クラウン状のスプライン継手のスプラインは、駆動シャフトからピニオンギアへのトルク伝達を行うとともに、クラウン状の(バレル状にした)形状によれば、ピニオンギアが駆動軸線に対して傾動できるようにする。
【0027】
クラウン状のスプライン継手は、好適には、前記ピニオンギアが前記駆動軸線に沿って並進運動できるよう構成する。クラウン状のスプライン継手は、このような並進運動を達成するため駆動シャフトに対して摺動可能とし得る。
【0028】
本発明に実施形態を、以下に添付図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】着陸装置が使用中に受ける変形の3つのモードのうち1つであり、航空機の重量に起因する垂直方向荷重による車軸ゆがみを示す。
【
図1B】着陸装置が使用中に受ける変形の3つのモードのうち1つであり、(水平方向)制動荷重による車軸ゆがみを示す。
【
図1C】着陸装置が使用中に受ける変形の3つのモードのうち1つであり、タイヤ荷重による車輪リム変形を示す。
【
図2】分かり易くするため着陸装置のモータ及び種々の機構部分は省略して、本発明の実施形態による駆動システムを示す。
【
図3】ピニオンギアは省略して、
図2の実施形態を示す。
【
図5A】本発明の実施形態によるフレキシブルインターフェースの被駆動ギア結合部材を示す。
【
図5B】本発明の実施形態によるフレキシブルインターフェースの被駆動ギア結合部材を示す。
【
図6】本発明の実施形態による被駆動ギア結合部材のボール/円筒状部継手ソケットの変更例を示す。
【
図7】本発明の実施形態による被駆動ギア結合部材のボール/円筒状部継手ソケットの変更例を示す。
【
図8A】本発明の実施形態による被駆動ギア結合部材のボール/円筒状部継手ソケットの変更例を示す。
【
図8B】本発明の実施形態による被駆動ギア結合部材のボール/円筒状部継手ソケットの変更例を示す。
【
図9A】本発明の実施形態によるフレキシブルインターフェースのピニオンギア結合部材を示す。
【
図9B】本発明の実施形態によるフレキシブルインターフェースのピニオンギア結合部材を示す。
【
図9C】本発明の実施形態によるフレキシブルインターフェースのピニオンギア結合部材を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
航空機着陸装置は使用中に多くの異なる変形モードを受ける。とくに、各車軸220は、着陸装置の脚230に対して、航空機の重量に起因する垂直方向荷重の結果としてゆがみを生ずる(
図1A、220Aはゆがみを生ずる前の車軸を示し、また220Bはゆがみを生じた後の車軸を示す)、また制動中に加わる水平方向荷重に起因してゆがみを生ずる(
図1B、220Aはゆがみを生ずる前の車軸を示し、また220Bはゆがみを生じた後の車軸を示す)。さらに、各車輪リム210は、タイヤ荷重に起因して(ひし形又は楕円形に)変形する(
図1C、210Aはゆがみを生ずる前の車輪リムを示し、210Bはゆがみを生じた後の車輪リムを示す)。各変形モードは、一般的に車輪極端部で±10mmの範囲内での変形を生ずる。例えば、車輪の垂直方向高さは、タイヤ荷重による車輪ひずみの結果として10mm減少し、また垂直方向航空機荷重により生ずる車軸曲がりの結果として約2〜3°にわたり傾動し、これにより車輪リムの周縁において約10mmの変位を生ずる。
【0031】
図2〜4に示す本発明の実施形態による航空機の自律地上走行用の駆動システム100は、着陸装置の車輪(ホイール)200を駆動するよう構成する。駆動システム100は、クラウン状のスプライン継手300を有するフレキシブルインターフェースを介して駆動シャフト120に取り付けたピニオンギア110を有し、駆動シャフト120は、適切に歯車を設けたモータ(図示せず)によって駆動される。モータは、1個のみの車輪を駆動する、又は差動装置若しくはそれに類似するものを介して2つ若しくはそれ以上の数の車輪を駆動するよう構成する。したがって、着陸装置における1つ、幾つか、又はすべての車輪を駆動システムによって能動的に駆動することができ、また着陸装置あたり複数駆動システムがあり得る。ピニオンギア110は被駆動ギア130に噛合し、この被駆動ギア130は、環状リムギアの形態とし、車輪リム210の周りに均等に分布させた3個の被駆動ギア結合部材400を有するフレキシブルインターフェースを介して車輪200の車輪リム210に取り付ける。被駆動ギアは駆動ピニオンよりも大きい直径を有する。この構成により、トルク増強ギア比を生じ、また空間を有効利用する。
【0032】
上述の変形モードは、駆動システム100内に誤整列及び/又は歪みを生ずる結果となり、この理由としては、ピニオンギア110を着陸装置の脚又は車軸(図示せず)に取り付けるとともに、被駆動ギア130を車軸周りに回転可能な車輪200に取り付けるからである。フレキシブルインターフェース300,400が存在しない場合、車軸ゆがみ(
図1A及び1B)により、被駆動ギア130がピニオンギア110に対して傾動する結果となり、すなわち、これらギアの回転軸線が互いに傾動する。同様に、フレキシブルインターフェース300,400が存在しない場合には、タイヤ荷重に起因する車輪リム変形(
図1C)により、被駆動ギア130のピニオンギア110に対する並進的変位を生ずる、すなわち、これギアの回転軸線が互いに変位する結果となり得る。このような車輪リム変形は、さらに、被駆動ギア130の望ましくないひずみを生じ得る。その他には、被駆動ギア130と車輪200との間を剛性的に連結する場合、車輪リム210内に更なる歪みを生じ得る。
【0033】
フレキシブルインターフェース300,400は、駆動システム100をこれら変形から隔絶させるよう作用する。
【0034】
フレキシブルインターフェースにおける被駆動ギア結合部材400は、それぞれ被駆動ギア130のウェブに取り付けたブッシュ420内に収容したシャフト部分412を有する継手部材410を備え、このシャフト部分412は、ブッシュ420内で限定された並進運動及び回転運動の双方を行うことができ、運動学的円筒状継手を生ずる。
【0035】
継手部材410は、さらに、連結部分416によってシャフト部分412からに離間するボール部分414を有し、このボール部分414はソケット部材430内に収容する。ソケット部材430は、車輪リム210に堅固に連結し、また内部にボール部分414を配置するソケットチャンバ432と、連結部分416が貫通するとともにソケットチャンバ432への開口部をなす溝孔開口418とを有する。ソケットチャンバ432は、概して継手部材410のボール部分414が溝孔開口418の範囲で区切られる線形経路に沿って運動できるよう細長にする。ボール部分414は、さらに、チャンバ432内で回転することもできる。このようにして、ボール部分414及びソケット部材430は運動学的ボール−ソケット継手をなす。
【0036】
各ソケット部材430は、ボール部分414を車輪軸線に向けて押圧するよう構成したばね440を有する。このようにして、3個のばね440は、被駆動ギア130を車輪リム210に対して心出しするよう作用する。
【0037】
各ソケット部材430はさらにキャッチフィンガ450を有し、このキャッチフィンガ450は、ソケット部材430に堅固に取り付け、また被駆動ギア130のウェブに貫通させた過大サイズの貫通孔455に貫通する。貫通孔455は、駆動システム100の正常動作中にはキャッチフィンガ450と被駆動ギア130との間に接触が確実に生じないようにするが、被駆動ギア結合部材400の継手部材410が破断するか、又は結合部材が故障した場合、キャッチ450が被駆動ギア130を保持し、車輪200との連結を維持するサイズにする。
【0038】
図6,7,8A及び8Bは、ソケット部材430のあり得る形態を示し、適切な形態は、対処すべき特定車輪変形に応じて選択する。
図6において、チャンバ432は、車輪200がその周りを回転する車輪軸線に対するほぼ半径方向にボール部分414が直線的な線形並進運動を生ずるよう構成する。
図7においては、チャンバ432は、車輪軸線に対する半径方向に角度をなす方向にボール部分414が直線的な線形並進運動を生ずるよう構成する。
図8A及び8Bにおいて、チャンバは、車輪軸線に対する半径方向に角度をなす、ボール部分414の湾曲した線形並進運動(
図8Aにおけるラインは並進運動ラインを示す)を生ずる構成とする。
【0039】
図9A及び9Cに示すクラウン状のスプライン継手300は、ピニオンギア110を駆動シャフト120の回転軸線に対して傾動できるよう作用する。クラウン状のスプライン継手300は、複数個の雄形スプライン310を有し、これら雄形スプライン310は、これらに対応してピニオンギア110に形成した複数個の雌形溝320と連係動作するよう構成する。これらスプライン310及び溝320は、継手がバレル(樽)形状を有するよう湾曲させる。したがって、スプライン310は、溝320内で長手方向に摺動し、ピニオンギア110が駆動シャフト120に対して傾動することを可能にする。継手300は、溝320内に玉軸受(図示せず)を設け、この移動を容易にすることができる。
【0040】
代替的実施形態において、クラウン状のスプライン継手300は、等速(CV、constant velocity)継手に置き換えることができる。
【0041】
他の実施形態において、クラウン状のスプライン継手300は、駆動シャフト120に摺動可能に取り付けて、ピニオンギア110と駆動シャフト120との間で相対並進運動が可能となるようにすることができる。このような実施形態において、被駆動ギア結合部材400にはシャフト部分412及びブッシュ420を設ける必要がなく、その代わり連結部分416を被駆動ギア130に堅固に連結することができる。
【0042】
さらに他の実施形態において、ボール部分414及びソケットチャンバ432をシャフト部分及びブッシュ(図示せず)に置換して、運動学的円筒状継手をなすようにすることができる。
【0043】
図示の実施形態において、ピニオンギア110及び被駆動ギア130は、それぞれローラギア(ピンギア)又はスプロケットとする。他の実施形態において、ピニオンギア110はスプロケットとし、また被駆動ギア130はローラギアとすることができる。ローラギアは、リング状に配列した一連のローラによって互いに連結し、連続した軌道を形成する2個の堅固な環状リングによって形成した一連のローラを有する。各ローラはピン周りに回転可能にし、このピンは、環状リング相互間に延在し、環状リング相互を堅固に連結する。図示の実施形態において、ローラギアは、互いに隣接する2つのローラ列として示し、他の実施形態において、単一のローラ列のみを必要とする。
【0044】
スプロケット及びローラギアを介してモータ−車輪間の連結を行うことの重要な利点は、このような機構が本来的に堅牢であり、環境汚染に耐性がある点である。したがって、駆動システムをケーシング内に包囲して、デブリ又は他の汚染物が進入するのを防止する必要がない。これに対して、噛合する歯付きギアを採用する駆動システム構成は、汚染物から適正に保護しなければならず、必要とされる保護ケーシングが重量及び費用を増大し、ルーチン点検が困難になる。
【0045】
スプロケット−ローラ構成の他の利点は、噛合する歯付きギア構成よりも、車輪変形及びピニオンと被駆動ギアとの間の誤整列に対してより大きな耐性がある点である。
【0046】
他の実施形態において、ローラギアは、支持部材の外周に沿って延在させ、またこの外周に固定したローラチェーン(アタッチメントチェーン又はアタッチメントローラチェーンとしても知られている)で代用することができる。
【0047】
さらに他の実施形態において、被駆動ギア及びピニオンギアは、駆動変速装置に一般的に使用されるタイプの歯付きギアとすることができる。
【0048】
本発明を1つ又は複数の好適な実施形態につき説明したが、当然のことながら、特許請求の範囲で定義した発明の範囲から逸脱することなく、様々な改変又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0049】
100 駆動システム
110 ピニオンギア
120 駆動シャフト
121 回転軸線
130 被駆動ギア
200 車輪
210 車輪リム
220 車軸
230 脚
300 結合部材(フレキシブルインターフェース)
310 雄形スプライン
320 雌形内部溝
400 被駆動ギア結合部材(フレキシブルインターフェース)
410 継手部材
412 シャフト部分
414 ボール部分
416 連結部分
418 溝孔開口
420 ブッシュ
430 ソケット部材
432 ソケットチャンバ
440 ばね
450 キャッチフィンガ
455 貫通孔