(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6509874
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】タービンエンジンを確実に始動させるための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F02C 7/275 20060101AFI20190422BHJP
F02C 7/32 20060101ALI20190422BHJP
F02C 6/00 20060101ALI20190422BHJP
F02C 7/26 20060101ALI20190422BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20190422BHJP
F02C 3/04 20060101ALI20190422BHJP
F01D 19/00 20060101ALI20190422BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20190422BHJP
B64D 31/06 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
F02C7/275
F02C7/32
F02C6/00 B
F02C7/26 Z
F02C7/00 A
F02C7/00 F
F02C3/04
F01D19/00 L
F01D19/00 J
H02P9/04 F
B64D31/06
【請求項の数】16
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-542180(P2016-542180)
(86)(22)【出願日】2014年12月15日
(65)【公表番号】特表2017-503954(P2017-503954A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】FR2014053334
(87)【国際公開番号】WO2015097361
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2017年11月10日
(31)【優先権主張番号】1363458
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516235451
【氏名又は名称】サフラン・ヘリコプター・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プマレッド,バンサン
(72)【発明者】
【氏名】アリエ,ピエール
【審査官】
高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−150362(JP,A)
【文献】
特開2006−002771(JP,A)
【文献】
英国特許出願公告第00740090(GB,A)
【文献】
米国特許第02938338(US,A)
【文献】
米国特許第06147414(US,A)
【文献】
特開2002−165497(JP,A)
【文献】
特開平08−277723(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 31/06
F01D 19/00
F02C 3/04
F02C 6/00
F02C 7/00
F02C 7/275
F02C 7/26
F02C 7/32
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジンを確実に始動するための始動システムであって、
蓄電池(110)と、DCスタータ(120)と、電子調整コンピュータ(142、142’)と、伝動ギアボックス(162)と、始動段階の間、インジェクタへの燃料の分配を管理しかつ燃料を点火するための始動用付属品(168)と、ガス発生器(160)であって、それ自体が、フリータービン(167)とともに、圧縮機(164)、燃焼室(165)、および高圧タービン(166)を備えるガス発生器(160)と、を備え、
システムは、第1回路および第2回路であって、並列に接続され、かつ、前記蓄電池(110)と前記DCスタータ(120)との間に配置された第1回路および第2回路を、さらに備え、
第1回路は、第1スイッチ(132)に直列に接続されたDC−DCコンバータ(130)を備え、第2回路は、第2スイッチ(133)を備え、
システムは、圧縮機(164)の回転速度を感知するためのセンサ(163)と、フリータービン(167)への入口での温度を感知するためのセンサ(151)と、圧縮機(164)の回転速度を感知するための前記センサ(163)およびフリータービン(167)の入口温度を感知するための前記センサ(151)によって供給される情報に応じて、前記第1スイッチ(132)および前記第2スイッチ(133)を制御するための制御回路(141)とを、少なくともさらに備えることを特徴とする始動システム。
【請求項2】
DC−DCコンバータ(130)および第1スイッチ(132)と直列に第1回路内で接続されたダイオード(131)をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の始動システム。
【請求項3】
DCスタータ(120)は、スタータ−発電機型であることを特徴とする請求項1または2に記載の始動システム。
【請求項4】
DCスタータ(120)の回転速度を感知するためのセンサ(161)をさらに備え、
DC−DCコンバータ(130)は、前記第1スイッチ(132)が閉じられたときに、DCスタータ(120)の回転速度を感知するためのセンサ(161)によってサーボ制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の始動システム。
【請求項5】
DC−DCコンバータ(130)は、前記第1スイッチ(132)が閉じられたときに、圧縮機の回転速度を感知するための前記センサ(163)によってサーボ制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の始動システム。
【請求項6】
DC−DCコンバータ(130)は、電磁適合性フィルタ(134)と、前負荷回路(135)と、降圧型チョッパ(136)とを備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の始動システム。
【請求項7】
電子調整コンピュータ(142)は、タービンエンジンの好ましい点火ウインドウに対応する速度設定値Nrefを準備するためのユニットと、DC−DCコンバータ(130)に速度設定値Nrefを伝達するための伝達リンク(145)とを備えることを特徴とする請求項4に記載の始動システム。
【請求項8】
電子調整コンピュータ(142’)は、タービンエンジンの好ましい点火ウインドウに対応する速度設定値Nrefを準備するためのユニットと、トルク設定値Crefを準備するためのユニットと、トルク設定値CrefをDC−DCコンバータ(130)に伝達するための伝達リンク(152)とを備えることを特徴とする請求項5に記載の始動システム。
【請求項9】
電子調整コンピュータ(142、142’)は、第1スイッチ(132)および第2スイッチ(133)を作動させるためにヘリコプターの搭載ネットワークを管理するためのユニット(141)に適用される各論理信号SL1、SL2を準備するためのユニットを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の始動システム。
【請求項10】
電子調整コンピュータ(142,142’)は、圧縮機の回転速度NGが所定閾値を超えたことを検出するための、第1スイッチ(132)および第2スイッチ(133)を非アクティブ化させるための、かつ、始動用付属品(168)を非アクティブ化するためのユニットを備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の始動システム。
【請求項11】
DC−DCコンバータ(130)のための制御回路を備え、制御回路は、速度サーボ制御ループおよび電流サーボ制御ループの両方を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の始動システム。
【請求項12】
前記速度サーボ制御ループおよび前記電流サーボ制御ループは、DC−DCコンバータ(130)を制御するための独立した制御回路に組み込まれていることを特徴とする請求項11に記載の始動システム。
【請求項13】
前記速度サーボ制御ループは、前記電子調整コンピュータ(142’)に組み込まれ、かつ、前記電流サーボ制御ループは、DC−DCコンバータ(130)を制御するための独立した制御回路に組み込まれていることを特徴とする請求項11に記載の始動システム。
【請求項14】
蓄電池(110)と、DCスタータ(120)と、電子調整コンピュータ(142、142’)と、伝動ギアボックス(162)と、始動段階の間、インジェクタへの燃料の分配を管理しかつ燃料を点火するための始動用付属品(168)と、ガス発生器(160)であって、それ自体が、フリータービン(167)とともに、圧縮機(164)、燃焼室(165)、および高圧タービン(166)を備えるガス発生器(160)と、を備えるタービンエンジンを確実に始動するための始動方法であって、
第1回路および第2回路を並列に接続し、かつ、前記蓄電池(110)と前記DCスタータ(120)との間に第1回路および第2回路を置く工程であって、第1回路は、第1スイッチ(132)に直列に接続されたDC−DCコンバータ(130)を備え、第2回路は、第2スイッチ(133)を備える工程と、
圧縮機(164)の回転速度を測定する工程と、
フリータービン(167)の入口での温度を測定する工程と、
圧縮機(164)の回転速度およびフリータービン(167)の入口での温度に関する測定情報に応じて、前記第1スイッチ(132)および前記第2スイッチ(133)を制御する工程と、を備えることを特徴とする始動方法。
【請求項15】
始動を初期化するときに、始動用付属品(168)はアクティブ化され、かつ、同時に、速度設定値Nrefは前記DC−DCコンバータ(130)に伝達され、速度設定値はタービンの好ましい点火ウインドウに対応しており、
速度設定値Nrefまで前記圧縮機(164)による速度の取得を調整するように、圧縮機(164)を加速するために、その後、スタータ(120)に供給される電圧を調整するために、DC−DCコンバータ(130)をアクティブ化させる間、前記第1スイッチ(132)は閉じられ、
前記速度設定値Nrefが到達されたときに、タービンエンジンの燃焼室(165)が点火され、フリータービン(167)の入口での温度が測定され、
一旦、燃焼室(165)が点火したことを確認する温度における上昇が検出されると、第2スイッチ(133)が閉じられ、第1スイッチ(132)が開かれ、かつ、DC−DCコンバータ(130)が非アクティブ化され、
圧縮機の回転速度が始動終了閾値を超えたことを検出した後に、始動用付属品(168)が非アクティブ化され、かつ、第2スイッチ(133)が開かれることを特徴とする請求項14に記載の始動方法。
【請求項16】
航空機のタービンエンジンに適用されることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の始動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンエンジンを確実に始動させるための方法およびシステムに関する。
【0002】
本発明の適用分野は、より詳細には、ヘリコプター用のターボシャフトエンジンまたは固定翼航空機用のターボプロップのようなガスタービン航空機エンジンの始動を制御する分野、または飛行機に搭載されたガスタービン補助動力ユニット(APU)の始動を実際に制御する分野である。
【0003】
それにもかかわらず、本発明は、他の種類のタービンエンジン、例えば、産業用タービンに適用可能である。
【背景技術】
【0004】
既知の方法では、航空機のタービンエンジンは、燃焼室と、前記燃焼室に圧縮空気を供給するように圧縮機に取り付けられた圧縮機ホイールを有する圧縮機シャフトと、前記シャフトを回転駆動させるように前記シャフトに十分な始動トルクを供給するために、前記シャフトに接続された少なくとも1つのスタータまたはスタータ−発電機と、を備える。
【0005】
タービンエンジンを始動するために、スタータは、第1始動段階において圧縮機シャフトを加速することによって開始し、第1始動段階の間、始動インジェクタから上流の燃料回路は、加圧下に置かれ、かつ、パージされる。その後、第2始動段階では、燃料噴射が、エンジンの燃焼室内の前記燃料を点火する前に、開始される。最後に、第3始動段階の間、予め定義されたいくつかの回転速度で、スタータの動作が停止され、エンジンは、前記燃料の燃焼の結果として加速し続けることができる。
【0006】
燃料を点火させることを可能にするために、圧縮室に圧縮機ホイールによって供給される空気は、正確な燃料/空気比を保証するように、かつ、火炎を吹き消してしまうことを避けるために、燃料インジェクタでの特定の圧力条件および速度条件を満たさなければならない。しかし、燃焼室に圧縮機ホイールによって供給される空気の量は、圧縮機シャフトの回転速度に比例するので、ガス発生器シャフトの回転速度は、したがって「点火ウインドウ」と称される速度の範囲内になければならず、かつ、点火が正確に発生することを保証するのに十分な長さの時間の間、そのウインドウに留まる必要がある。
【0007】
従来、ほとんどすべての軽いまたは中間のヘリコプターのターボシャフトエンジン、重いヘリコプターのターボシャフトエンジンでさえも、また、軽い固定翼航空機の多数のターボプロップも、28ボルト(V)でDCを給電される直流(DC)スタータ−発電機を使用して始動される。
【0008】
DCスタータの主な利点は、以下の事実にある。DCスタータは、比較的簡単かつよく理解されたロバストな設計の電気機械であり、DCスタータは、容易に入手可能であり、DCスタータは、静的コンバータを必要とせず、かつ、なんらかの複雑な制御方式を必要とせず、28V電源、例えば、ヘリコプターの電池から直接にターボシャフトエンジンを始動するために使用されうる。
【0009】
それにもかかわらず、実用的な実施は、困難に遭遇する。この困難は、より良く理解するために以下に要約された以下の基本式と一緒に、
図7を参照して説明される。
【0010】
様々なパラメータは、以下のように定義されうる。
【0011】
Uo:電池10の開回路電圧
Rbat:電池10の内部抵抗11
Rcab:ケーブル31の抵抗
Rarm:スタータ20の電機子巻線の抵抗21
E=E(N):スタータ20の逆起電力(逆emf)
Istart:電機子始動電流
Ubat:電池10の端子間電圧
Ustart:スタータ20の端子間電圧
【0012】
このことは、次式を与える。
Istart=(Ubat−Ustart)/Rcab=(Uo−E(N))/(Rbat+Rcab+Rarm)
ここで、E(N)=k×Nであり、Nはスタータ20の回転速度であり、kは、(スタータ20の巻線に特に依存する)スタータ20の電気的定数である。
【0013】
また、スタータ20の電磁トルクは、次式で表される。
Cem=k×Istart×Iex
ここで、Iexは、励起電流である(直列励起を伴うスタータに対して、Iex=Istartであり、Iexが個別に励磁された機械に対して発電制御ユニット(GCU)によって独立して調整されることも可能である。)。
【0014】
N=0、E=0において、したがって次式が結論されうる。
Istart=Uo/(Rbat+Rcab+Rarm)
【0015】
電機子電流Istartは、始動の最初の瞬間の間、すなわち、スタータ20の逆emfが、未だ非常に低いとき、電池10の開回路電圧Uoに直接に比例し、かつ、電源ラインの合計抵抗(Rbat+Rcab+Rarm)によってのみ制限されることがわかる。残念ながら、(例えば、公称条件下で28Vの設計値を有する)電源電圧は、始動が電池からなされるかまたは地上パワーユニットからなされるかに応じて、かなり変化しうる。また、電池の内部抵抗Rbatは、低温では増加する。しかし、温度が上昇したときに、電気導体の抵抗RcabおよびRarmは増加する。
【0016】
したがって、始動の開始時の電流、およびその結果としてのトルクは、電源の種類、周囲条件(温度)、および(スタータが高温または低温である)環境に応じて、かなり変化しえることがわかる。この電源は、例えば、28V(電池、他のタービンのスタータ−発電機、航空機のAPU、または地上において始動用に使用される地上パワーユニット)を提供する。
【0017】
実際には、製造業者は、(抵抗のいくつかの最小値を与える)適切なセクションのケーブルを使用することによって、または、以下で説明されるように、数瞬間の後に切り替えられる始動抵抗に直列に接続することによって、始動電流を制限する。
【0018】
また、ガス発生器および関連する伝動ギアボックスによって対抗されるトルクも、特に、(空気の密度に関連する)、大気圧P0、大気温度T0、および油温度に関連するパラメータに応じて大きく変化しうる(油温度は、ポンプ、オルタネータ、スタータなどのような伝動ギアボックスに取り付けられている付属機器を有する減速歯車装置を本質的に備える伝動ギアボックスにおける摩擦に関連する。)。
【0019】
規定の最小の始動トルクは、
図8において理解されうるように、温度が減少するのに伴って増加する。
図8は、ガス発生器の回転速度に対する公称値NGの百分率として表される回転速度に応じてトルクがどのように変化するかを示す曲線1から4を描いている。4つの曲線は、それぞれ、最大トルクCmax、−40℃での最小トルクCmin1、−30℃での最小トルクCmin2、および+55℃での最小トルクCmin3に対するものである。
【0020】
このことは、しばしば、地上における場合および電池を使用する場合に、ケーブルのインピーダンスRcabを最小にするために、かつ、非常に低い温度において十分なトルクを供給するために、始動電力回路を過大寸法にするように製造業者を導く。その結果、(まれに標準化された、しばしば、高電圧を提供する)地上パワーユニットを使用して始動するとき、(低い対抗トルクを示す圧縮機を用いて)高地で、または(低摩擦を有する)既に高温のエンジンを用いて、大変高い始動トルクであって、規定最大値Cmaxよりも大きな始動トルクを有し、かつ、低い対抗トルクであって、低い対抗トルクが点火ウインドウをあまりに速く通過するようにガス発生器を早く加速するように導く低い対抗トルクと、を有することを可能にする。
【0021】
また、特定のタービンエンジンは、約8%NGから15%NGの範囲にある低くかつ比較的狭い点火ウインドウによって、特徴付けられていることが知られている。ここで、NGは、ガス発生器の公称速度であり、エンジンが、エンジンにエンジンの最大発進出力(TOP)を供給することを可能にする条件下で動作している場合、100%NGは、圧縮機シャフトの回転速度にほぼ対応する。これらの制限外では、燃焼室は点火できない。
【0022】
また、燃焼室内の点火スパークプラグのスパーク周波数は、一般に非常に小さく、数ヘルツ(Hz)のオーダーである。スパークの数、およびしたがって点火の可能性は、ガス発生器がわずかな時間しか点火ウインドウ内に留まらない場合、さらに小さくなる。
【0023】
考慮することが困難である別の要因は、燃焼室に関連付けられた噴射ハーネスに燃料を充填するために必要な可変時間であり、このことは、バルブが開いた瞬間と燃料が実際に燃焼室内に進入した瞬間との間の遅延につながりうる。
【0024】
最後に、一旦、始動インジェクタが点火したら、火炎が隣接するインジェクタに伝搬するのに必要な時間は、また、複雑かつ現在不完全に制御されている現象であり、それにより、大きすぎない速度で空気が流れることを必要とする。
【0025】
すべてのこれらの理由により、したがって、良好な条件下で燃焼室を点火することを確実とするために、かつ、火炎を安定させることを確実とするために、点火ウインドウをあまりに速く通過させることを避け、かつ、いくつかの最小持続時間の間、点火ウインドウに留まることが、重要である。
【0026】
したがって、高すぎる可能性がある不完全に制御された始動トルクが、点火ウインドウをあまりも早く通過させて、始動を失敗に導きうることがわかる。
【0027】
制御されていない現代の28Vスタータ−発電機およびスタータは、すべての可能な状況での最小トルクおよび最大トルクに対する矛盾した仕様を満たすことが困難であることが、観察されている。
【0028】
したがって、ターボシャフトエンジンの点火および始動がよりロバストにされることを可能にするシステムを有することが望ましい。
【0029】
図9に示されるように、始動抵抗を組み込むための提案が、既になされてきた。始動電流を制限するために、スイッチ33と直列に接続された抵抗値Rstartの抵抗32は、電池10と直列に置かれている(それにより、スタータ20の逆emfが低い間に電流を制限することを可能にする電圧降下を生成する)。抵抗32は、スイッチ34を閉じることによって、特定の速度閾値より上では、短絡される。それにもかかわらず、始動抵抗は、始動トルクが高すぎる状況(高い電池電圧、低い抵抗、熱いエンジン、など)下のみにおいてガス発生器の加速を低減するのに役立つ。
【0030】
他の状況下では、特に、対抗トルクが高い場合または電源電圧が低い(低温の電池)場合に、始動電流を制限する必要がなく、実際に、このことは、潜在的にハンディキャップであるかもしれない。
【0031】
また、始動抵抗は、非常に大量の電力(1キロワット(kW)から3kW)を消費する。したがって、始動抵抗は、製造するのに複雑であり、ジュール効果の熱損失が周囲の機器を過剰に加熱することなく容易に排出されうる場所に設置される必要がある。最後に、抵抗において失われるエネルギーは、電池を過大寸法にすることにつながる。
【0032】
提案は、また、
図10および
図11に示されるように、直列/並列の始動を実行するためになされている。その解決策は、28V電池を用いて始動された特定のターボプロップにおいて、使用されている。その解決策は、2つの電池13および14を必要とする。
図10に示されるように、始動の開始時かつ速度(または電流)閾値より低いときに、電池13および14は、並列に接続される。ここで、スイッチ17が開いている間、2つのスイッチ15および16が閉じている。このように、スタータ20は、28Vに等しい電圧Uで給電され、電池13および14は高い始動電流を共有し、電流I/2が、電池13および14のそれぞれを流れる。
【0033】
速度閾値を超えて、スタータ20の逆emfが、電流を制限するのに十分に増大したとき、電池13および14は、
図11に示されるように、直列に再接続される。ここで、スイッチ17が閉じられている間、2つのスイッチ15および16が開いている。このように、電流Iは、電池13および14のそれぞれを流れる。その後、スタータ20は、本実施例における56Vに等しい2倍の電圧2Uで給電され、それにより、スタータ20に還流させることなく最大補助速度が増加されることを可能にする。
【0034】
直列/並列の始動は、2つの28V電池を必要とする。一方、ヘリコプターは、一般的に(「寒冷気候キット」を除いて)1つのみの電池と、56Vの公称電圧で動作するように設計されたDCスタータとを備える。容易に入手できる28Vスタータ−発電機およびスタータの全てが、繰り返しの使用においてその電圧を受け入れるように設計されているわけではない。その回路の目的は、むしろ、スタータに還流させることなく、ガス発生器を高速(かつしたがって、高い逆emfで)加速させることの補助を継続することであるので、また、点火ウインドウにおける速すぎる加速の問題は、取り扱われていない。
【0035】
コンピュータ制御下で始動シーケンス(および始動段階)を最適化するための提案も、既になされている。このアイデアは、好ましい点火ウインドウ内でガス発生器のシャフトの回転速度を駆動させかつ安定化させ、その後、一旦、点火が(例えば、T45、すなわち、フリータービンへの入口でのガスの温度における増加を検出することによって)観察されると、最適な方法で加速を制御することである。
図12のグラフは、その方法を示し、時間に応じて増加する回転速度(セグメント5)、続いて、8%NGから15%NGの範囲内で変化しうる一定の回転速度NGignition(セグメント6)を示している。ここで、NGは、ガス発生器の回転の公称速度である。
図12のグラフは、その後、例えばフリータービンへの入口におけるガスの温度(T45)における増加を検出することにより、点火を検出した後の、時間に応じて再び増加する回転速度(セグメント7)を示す。セグメント6は、このように、点火ウインドウの範囲内で多かれ少なかれ一定である値で回転速度を維持することに相当している。一方、セグメント7は、多かれ少なかれ一定である加速に相当している。
【0036】
国際公開第2011/056360号および加国特許出願公開第2685514号明細書は、また、タービンエンジンに対する制御された始動の関係を記載している。
【0037】
図13に示されるように、米国特許出願公開第2010/0283242号明細書は、DC/AC制御コンバータ23によって給電された交流電流(AC)スタータ20を使用して、ターボプロップ40を始動するための装置の電気的アーキテクチャを記載し、この電気的アーキテクチャは、ガス発生器の加速が制御されることを可能にする。DC/AC制御コンバータ23は、それ自体、昇圧DC/DCコンバータ21およびDCバス22を介して、28V電池10から給電される。始動の全電力のために設計されたカスケードDC/DCおよびDC/ACコンバータに置かれることに基づく、やや類似のアーキテクチャが、米国特許第5493201号明細書に記載されている。
【0038】
なお、上述の「最適化された」始動、および上述の様々な特許文献において特定された変形は、完全に適用される場合、すなわち、点火後に制御されるガス発生器の加速を伴う場合に、特別なスタータ技術(例えば、励磁巻線との同期機)を使用する場合のみに、実施されうることが観察されうる。スタータは、パワーエレクトロニクス(インバータ)の最大電力をスタータに供給する能力を、速度およびトルクにわたって提供する制御を可能とするパワーエレクトロニクス(インバータ)を制御することを必要とする。その最大出力は、非常に高い(10kWから20kWの範囲の)レベルに簡単に到達できる。このようなパワーエレクトロニクスは、したがって特に重く、高価である。
【0039】
「高電圧」ACスタータを使用する電源アーキテクチャは、特定の回転機械および全電力に対して寸法決めされたDC/ACコンバータだけでなく、DCバス(数百ボルト)の電圧まで28Vのネットワーク電圧を上昇させるためにDC/DCチョッパも必要とする。すべての状況下では、したがって、このことは、特に、重く、複雑、かつ高価である解決策を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】国際公開第2011/056360号
【特許文献2】加国特許出願公開第2685514号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0283242号明細書
【特許文献4】米国特許第5493201号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0041】
本発明は、上記の欠点を改善することを、特に、始動の信頼性を改善しかつターボシャフトエンジンの点火および始動をよりロバストにしながら、電源用の電池を過大寸法にすることを回避できることを、求める。
【課題を解決するための手段】
【0042】
上述の課題を解決するために、本発明は、タービンエンジンを確実に始動するための始動システムを提供する。システムは、蓄電池と、DCスタータと、電子調整コンピュータと、(特に、スタータにガス発生器および燃料ポンプを機械的に駆動させることを可能にするのに役立つ)伝動ギアボックスと、始動段階の間、インジェクタへの燃料の分配を管理しかつ燃料を点火するための(スパークプラグ、始動ソレノイドバルブおよび/または停止ソレノイドバルブのような)始動用付属品と、ガス発生器であって、それ自体が、(例えば、機械的な歯車装置を介するヘリコプターのローターまたはターボプロップのプロペラを駆動するための)フリータービンとともに、圧縮機、燃焼室、および高圧タービンを備えるガス発生器と、を備える。システムは、第1回路および第2回路であって、並列に接続され、かつ、前記蓄電池と前記DCスタータとの間に配置された第1回路および第2回路をさらに備え、第1回路は、第1スイッチと直列に接続されたDC−DCコンバータを備え、第2回路は、第2スイッチを備え、システムは、圧縮機の回転速度を感知するためのセンサと、フリータービンへの入口での温度を感知するセンサおよび圧縮機の回転速度を感知するための前記センサとフリータービンの入口での温度を感知するためのセンサによって供給される情報に応じて前記第1スイッチおよび前記第2スイッチを制御するための制御回路とを、少なくともさらに備えることを特徴とする。
【0043】
好ましくは、システムは、DC−DCコンバータおよび第1スイッチと直列に第1回路内で接続されたダイオードをさらに備える。
【0044】
特定の実施形態では、DCスタータは、スタータ−発電機型であり、したがって、例えば、タービンエンジンが搭載された航空機の搭載ネットワークに電力を供給するために、ガス発生器の速度閾値より上では、発電機モードにスタータ−発電機を切り替えることを可能にする。
【0045】
特定の実施形態では、始動システムは、DCスタータの回転速度を感知するセンサをさらに備え、前記第1スイッチが閉じられているとき、DC−DCコンバータは、DCスタータの回転速度を感知するためのセンサによってサーボ制御される。
【0046】
このような状況下では、電子調整コンピュータは、タービンエンジンの好ましい点火ウインドウに対応する速度設定値Nrefを準備するためのユニットと、DC−DCコンバータに速度設定値Nrefを伝達するための伝達リンクと、を備えてもよい。
【0047】
別の特定の実施形態では、前記第1スイッチが閉じているとき、DC−DCコンバータは、圧縮機の回転速度を感知するための前記センサによってサーボ制御される。
【0048】
このような状況下では、電子調整コンピュータは、タービンエンジンの好ましい点火ウインドウに対応する速度設定値Nrefを準備するためのユニットと、スタータのトルク設定値Crefを準備するためのユニットと、DC−DCコンバータにトルク設定値Crefを伝達するための伝達リンクと、を備えてもよい。
【0049】
一例として、DC−DCコンバータは、電磁適合性フィルタと、前負荷回路と、降圧型チョッパとを備えてもよい。
【0050】
より具体的には、電子調整コンピュータは、第1スイッチおよび第2スイッチを作動させるために、ヘリコプターの搭載ネットワークを管理するためのユニットに適用される各論理信号SL1、SL2を準備するためのユニットを備える。
【0051】
電子調整コンピュータは、圧縮機の回転速度NGが所定閾値を超えたことを検出し、第1スイッチおよび第2スイッチを非アクティブ化させ、また、始動用付属品を非アクティブ化させるためのユニットを備える。
【0052】
本発明の1つの態様では、DC−DCコンバータの制御回路は、速度サーボ制御ループおよび電流サーボ制御ループの両方を備える。
【0053】
速度サーボ制御ループおよび電流サーボ制御ループは、DC−DCコンバータを制御するための独立した制御回路に組み込まれてもよい。
【0054】
変形実施形態では、速度サーボ制御ループは、電子調整コンピュータに組み込まれ、電流サーボ制御ループは、DC−DCコンバータを制御するための独立した制御回路に組み込まれている。
【0055】
本発明は、また、タービンエンジンを確実に始動するための始動方法を提供する。タービンエンジンは、蓄電池と、DCスタータと、電子調整コンピュータと、伝動ギアボックスと、始動段階の間、インジェクタへの燃料の分配を管理しかつ燃料を点火するための始動用付属品と、ガス発生器であって、それ自体が、フリータービンとともに、圧縮機、燃焼室、および高圧タービンを備えるガス発生器と、を備える。方法は、第1回路および第2回路を並列に接続し、かつ、前記蓄電池と前記DCスタータとの間に第1回路および第2回路を置く工程であって、第1回路は、第1スイッチと直列に接続されたDC−DCコンバータを備え、第2回路は、第2スイッチを備える工程と、圧縮機の回転速度を測定する工程と、フリータービンの入口での温度を測定する工程と、圧縮機の回転速度およびフリータービンの入口での温度に関する測定情報に応じて、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチを制御する工程と、を備えることを特徴とする。
【0056】
より具体的なやり方では、始動を初期化するとき、始動用付属品は、アクティブ化され、同時に、速度設定値Nrefは、前記DC−DCコンバータに伝達され、速度設定値は、タービンの好ましい点火ウインドウに対応している。速度設定値Nrefまで前記圧縮機による速度の取得を調整する
ように、圧縮機を加速
するために、その後、スタータに供給される電圧を調整
するために、DC−DCコンバータをアクティブ化させる間、前記第1スイッチは閉じている。速度設定値Nrefが到達されたとき、タービンエンジンの燃焼室が点火され、フリータービンの入口での温度が測定される。一旦、燃焼室が点火されたことを確認する温度における上昇が検出されると、第2スイッチが閉じられ、第1スイッチは開かれ、かつ、DC−DCコンバータが非アクティブ化される。圧縮機の回転速度が始動終了(end−of−start)閾値を超えたことを検出した後、スタータを非アクティブ化させるように、始動用付属品が非アクティブ化され、かつ、第2スイッチが開かれる。
【0057】
本発明は、航空機、特にヘリコプターのターボシャフトエンジンを始動するためのシステムに最も特に適用される。
【0058】
本発明は、タービンエンジンを始動する重要な瞬間は燃焼室を点火することであるという事実を考慮する。点火が検出されるまで、十分な持続時間の間、好ましい点火ウインドウ内にガス発生器の速度を安定化させることは、したがって、点火における失敗の原因の大部分を回避するのに役立つ。失敗の原因は不完全に制御されたスタータのトルク、あまりにも早く点火ウインドウを通過すること、燃料配管を満たすのに必要な時間、非常に低い温度で点火インジェクタから主インジェクタに火炎を伝搬させ、その後に安定化させるのに必要な時間などである。
【0059】
この制約は、ガス発生器の(15%NGよりも小さな、ここでNGは発電機の公称速度である)低い回転速度においてのみ適用する。この制約は、製造業者に、速度の全範囲にわたって始動トルクを制限させることを必要とする。それは、非常に低い温度での始動の状況では、ハンディキャップになりうる。非常に低い温度では、ガス発生器からの対抗トルクが高く、スタータへの電源電圧が低く、かつ、点火が困難である。
【0060】
対照的に、一旦、燃焼室が点火されると、ガス発生器の加速に関連する最大トルクおよび最小トルクの要件は、制約されることがずっと少ない。トルクは、以下の速度まで、ガス発生器を補助するのに十分に高ければ、十分である。この速度では、高圧タービンから受け取られた電力が、ターボシャフトエンジンのガス発生器をガス発生器自身で加速させることを可能にし、かつ、火炎を吹き消すほど大きくない。この第2段階では、スタータ上での正確なdNG/dt制御を有することが必須ではない。引き出される電力がずっと大きいので、このことは、特に有利である。
【0061】
したがって、本発明は、エンジンの燃焼室が点火されていない限り、エンジンのガス発生器の速度を向上させ、エンジンの点火ウインドウ内の一定の速度に維持するのに役立つターボシャフトコンピュータの制御下にある装置からなる。主な利点は、点火ウインドウ内で回転するガス発生器を維持するために必要な電力が、非常に低いことである。一例として、ヘリコプターターボシャフトエンジンのガス発生器の回転をそのエンジンの点火ウインドウに維持するために必要な機械的パワーは、1kWから3kWのオーダーである。一方、始動シーケンスの間に、スタータによって生じる最大電力は、5kWから20kWに、すなわち5から7倍より大きくなりうる。このように、低パワーエレクトロニクスに基づくユニットのサイズおよびコストは、始動速度の全範囲にわたってスタータを制御するように設計された類似のシステムに対する場合のサイズおよびコストよりも、ずっと低い。
【0062】
一旦、点火が検出されると、装置は、切り替えられ、かつ、スタータは、一般的に28Vで、制御なしで、航空機の搭載ネットワークから直接に給電される。切り替え時に既に回転しているスタータからの逆emfは、始動電流を低減し、かつ、ガス発生器が最初に静止しているときに観察される電流ピークの大部分を取り除くのに役立つ。
【0063】
本発明の他の特徴および利点は、例として、かつ、添付図面を参照して与えられた特定の実施形態の以下の詳細な説明から、明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】
図1は、本発明に係るタービンエンジンのスタータ装置の一実施形態の概略全体図である。
【
図2】
図2は、
図1に示される本発明の装置に備えられるのに適したDC−DCコンバータの一例のより詳細な図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るタービンエンジンのスタータ装置の、スタータ装置の制御回路と併せての第1実施形態の概略全体図である。
【
図4】
図4は、
図3の第1実施形態に対応するサーボ制御ループの概略図である。
【
図5】
図5は、本発明に係るタービンエンジンのスタータ装置の、スタータ装置の制御回路と併せての第2実施形態の概略全体図である。
【
図6】
図6は、
図5の第2実施形態に対応するサーボ制御ループの概略図である。
【
図7】
図7は、従来のスタータ装置に対応する電気回路図である。
【
図8】
図8は、飛行条件内の燃焼室の点火を保証するのに適した様々な動作条件に対する回転速度に応じたスタータトルクに対する最大値および最小値の状況を示す様々な曲線を描くグラフである。
【
図9】
図9は、従来の始動抵抗の挿入を示す電気回路図である。
【
図10】
図10は、閾値速度に応じて並列に接続される2つの電池を有する従来のスタータ装置の電気回路図である。
【
図11】
図11は、閾値速度に応じて直列に接続される2つの電池を有する従来のスタータ装置の電気回路図である。
【
図12】
図12は、コンピュータによって制御される既知の始動シーケンスを示すグラフである。
【
図13】
図13は、DC−AC制御コンバータによって給電されるACスタータを使用するターボプロップ用の従来技術のスタータ装置の図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
図1は、本発明の装置の概略構成を示す図である。
【0066】
タービンエンジン用の信頼性のあるスタータシステムは、単一の電池または一群の電池であってもよい蓄電池110を備える。蓄電池110は、航空機の搭載ネットワークからの電源、例えば28Vによって構成されていてもよい。しかし、本発明は、この電圧に限定されるものではない。
【0067】
DCスタータ120は、単純なDCスタータによって、または、(一旦、始動段階が終了すると、例えば、搭載ネットワークに電力を供給するために)発電機モードにおいてだけでなく電動機モードにおいて動作可能なスタータ−発電機(SG)によって構成されてもよい。以下の説明では、特に断らない限り、用語「スタータ」は、スタータのみおよび/またはスタータ−発電機の双方を対象とするために使用される。
【0068】
タービンエンジンのスタータシステムは、伝動ギアボックス162であって、特に、エンジンの主軸にスタータ120からの動きを伝達するための減速歯車装置を備え、また、燃焼室に燃料を噴射するインジェクタと関連するポンプのような補助機器を備える伝動ギアボックス162を、備える。
【0069】
図1は、また、ガス発生器160を備えるタービンエンジンの主要な要素を示す。ガス発生器160自体は、フリータービン167とともに、圧縮機164と、燃焼室165と、高圧タービン166と、始動用付属品168とを備える。
図1は、また、スタータ120の回転速度を感知するためのセンサ161と、エンジンの圧縮機164のシャフトの回転速度を感知するセンサ163とを、示す。
【0070】
本発明のスタータシステムは、第1回路および第2回路であって、並列に接続され、かつ、蓄電池110とDCスタータ120との間に挿入された第1回路および第2回路を有する。第1回路は、第1スイッチ132および任意選択でダイオード131に直列に接続されたDC−DCコンバータ130を備える。第2回路は、第2スイッチ133を備える。
【0071】
図3および
図5を参照して以下で説明されるように、システムは、また、フリータービン167への入口での温度を感知するためのセンサ151のようなエンジンの動作を測定するための他のセンサを有する。フリータービン167への入口での温度T45は、燃焼室165内の点火状態を表す情報を提供する。したがって、センサ151の代わりに、燃焼室165内の点火状態を観察することを可能にする他の種類のセンサを使用することが可能である。
【0072】
第1スイッチ132および第2スイッチ133は、圧縮機164の回転速度を感知するためのセンサ163およびフリータービン167への入口での温度を感知するためのセンサ151によって供給される情報に応じて、制御回路141(
図3および
図5)によって制御される。
【0073】
電子調整コンピュータ142、142’は、電子エンジンコントローラ(EECU)(
図3および5)として知られているエンジンの従来の電子コンピュータにより構成されてもよい。電子調整コンピュータ142、142’は、センサ151および163によって提供された測定値を管理するのに、かつ、制御回路141と協働してDC−DCコンバータ130を制御するのに、役立つ。制御回路141は、航空機の搭載ネットワークを管理するためのモジュールのような既存の電気マスターボックスであってもよい。
【0074】
このように、本発明のスタータ装置は、DC−DCコンバータ130によって本質的に構成される。接触器132が閉じられたときに、DC−DCコンバータ130は、始動段階の開始時にスタータ120に給電し、かつ、点火ウインドウにガス発生器160を維持するのに必要な電力を供給する。
【0075】
一旦、点火が確認されると、電池110から直接に遮断されることなくスタータ120に給電するために、接触器133が閉じられ、かつ、接触器132が開かれる。電池110は、制御されない方法で始動が継続されうるように、例えば、28Vで、搭載ネットワークに組み込まれてもよい。
【0076】
スイッチ132および133は、ヘリコプターの「電気マスターボックス」の一部を形成してもよい。ダイオード131は、必須ではない。しかし、それにもかかわらず、ダイオード131は、接触器132および133の重複動作の間、DC−DCコンバータ130からの出口を保護する目的のために有用でありうる。
【0077】
一例として、DC−DCコンバータ130は、単純な降圧チョッパ136(
図2参照)を備えてもよい。降圧チョッパ136は、ネットワーク(例えば、28V)の電源電圧Uを取り込む。また、降圧チョッパ136は、スタータ120のトルクを調節するために、かつ、したがって、動作条件(搭載ネットワークの電圧、電源110およびスタータ120のインピーダンス、圧縮機164からの対抗トルク)と独立して、設定値におけるガス発生器160の圧縮機164のシャフトの回転速度NGをサーボ制御するために必要な電流I
Dを、スタータ電機子120に供給する。
【0078】
必要な電力が低いので、DC−DCコンバータは、スタータ120の逆emfがほぼゼロであるとき、始動の最初の瞬間の間、搭載ネットワークから引き出される電流を制限するプログレッシブスタータシステムとして機能する。この態様は、スタータ120における温度制約、溝切りにおける機械的制約、スタータ120からの駆動装置の弱いリンクを低減することを可能にし、また、ヘリコプターの電池110における始動時に、この態様は、速度および逆emfの両方がゼロであるときにスタータ120に切り替えた場合に、搭載ネットワークにおいて観察される電圧降下を減少させることもできる。
【0079】
電気機械の速度を調整することは、速度センサ161を必要とする。速度センサ161は、(特に、還流を管理するために、いくつかのスタータ−発電機がスタータ120に適合された)スタータ120自体の一部を形成するか、スタータ120の駆動装置(フォニックホイール、ホール効果センサなど)に固定されてもよい。
【0080】
好ましい点火ウインドウは、飛行条件(大気圧P0、大気温度T0)に応じて変化しうるので、DC−DCコンバータ130に対する速度設定値Nrefを変更できることが望ましい。速度設定値は、ターボシャフトエンジンのコンピュータ142によって準備され、かつ、
図3に示されるように、デジタルリンクまたはアナログリンク145を介して(例えば、可変デューティ比として)装置に伝達される。
【0081】
一例として、かつ、
図2に示されるように、DC−DCコンバータ130は、電磁適合性フィルタ134であって、結合鉄芯インダクタ101およびコンデンサ102、103を有する電磁適合性フィルタ134と、続いて、前負荷回路135であって、スイッチ105によって切り替えられうる抵抗104を有する前負荷回路135と、降圧型チョッパ136であって、コンデンサ106、パワー半導体部品で構成される制御スイッチ107、ダイオード108、および直流(DC)I
Dを出力するためのインダクタ109を有する降圧型チョッパ136と、を備えてもよい。
【0082】
図3から
図6を参照して、いくつかの変形実施形態における本発明のスタータシステムの動作のより詳細な説明が続く。
【0083】
始動の選択において、タービンエンジン142を制御するコンピュータ(EECU)は、ヘリコプターの搭載ネットワークを管理するためのシステム(電気マスターボックス)141に、論理信号SL1を送信し、始動ソレノイドバルブおよびスパークプラグをアクティブ化させ、かつ、参照168のもとで
図1、
図3、および
図5においてシンボル的にまとめてグループ化されている始動用付属品を制御するためのライン149を用いて始動するのに適切な燃料流量制御関係を適用する。
【0084】
同時に、EECU142は、ターボシャフトエンジンの好ましい点火ウインドウに対応する速度設定値Nrefを準備するために、EECU142が取得する様々なパラメータ(大気圧P0、大気温度T0、残留温度T45、すなわち、フリータービンへの入口でのガスの温度など)を使用する。また、EECU142は、この設定値を、DC−DCコンバータ130に伝達する。
【0085】
論理信号SL1がアクティブ化すると、電気マスターボックス141は、接触器132を閉じ(ライン147を介するアクティブ化)、DC−DCコンバータ130にアクティブ化設定値を送信する(ライン144を介して「ON/OFF」信号をアクティブ化させる)。
【0086】
搭載ネットワーク110によって給電されるDC−DCコンバータ130は、動作することを開始し、ガス発生器160の圧縮機164のシャフトの回転を加速し、その後、速度設定値Nrefにおける回転機械による速度NGの取得を調節するように、スタータ120に供給される電流I
Dを調整する。
【0087】
ガス発生器160の圧縮機164のシャフトの回転速度NGであって、センサ163によって測定され、かつ、ライン148によってEECUに供給される回転速度NGが、速度設定値Nrefに到達し、かつ、速度設定値Nrefにおいて安定したことを、一旦、EECU142が観察すると、電子調整コンピュータ142は、始動用付属品を制御するためのライン149を介して必要な制御情報を送信することによって、タービンエンジンを点火することを開始する。
【0088】
EECU142が、例えば、ライン151を介してT45における上昇を測定することによって、燃焼室の点火を検出しかつ確認すると、EECU142は、ヘリコプターの搭載ネットワークを管理するためのシステム141に論理信号SL2を送信し、その後、論理信号SL1を非アクティブ化させる。
【0089】
論理信号SL2がアクティブ化すると、電気マスターボックス141は、接触器133を閉じる(ライン143を介するアクティブ化)。搭載ネットワーク110から直接に給電されるスタータ120は、従来の方法でタービンエンジンを加速しかつ始動することを継続する。同時に、ダイオード131は、逆電流に対して遮断されるようになり、したがって、DC−DCコンバータ130からの出口を短絡することを回避するのに役立つ。
【0090】
ダイオード131によって可能となる接触器132および133の制御における重複が、スタータ120への電力供給における不連続が存在しないことを保証するのに役立つことが観察されるべきである。
【0091】
論理信号SL1が非アクティブ化すると、電気マスターボックス141は、接触器132を開き(ライン147を介して伝達された信号の非アクティブ化)、それにより、スタータ120のDC−DCコンバータ130からの出口を絶縁し、かつ、DC−DCコンバータ130に対する非アクティブ化設定値を送信する(ライン144におけるON/OFF信号の非アクティブ化)。
【0092】
ガス発生器160の圧縮機164のシャフトの回転速度NGが、始動終了閾値(閾値であって、その閾値からターボシャフトエンジンが独立して動作する閾値)を超えたことを、EECU142が検出すると、EECU142は、ライン149を介して始動用付属品168および論理信号SL2を非アクティブ化させる。
【0093】
論理信号SL2が非アクティブ化すると、電気マスターボックス141は、接触器133を開き(ライン143を介する制御信号の非アクティブ化)、それにより、スタータ120への電力供給をオフにする。
【0094】
速度閾値より上では、スタータ−発電機120が、搭載ネットワーク110に電力を供給するように、発電機モードに切り替えられうるが、スタータがスタータであるのみである場合は、この動作は実行されえない。
【0095】
DC−DCコンバータ130を制御する観点からは、従来の方法において見出される2つのインターリーブ調整ループがある。すなわち速度サーボ制御、続いて、トルクサーボ制御または電流サーボ制御(
図4および
図6を参照せよ)である。
【0096】
ライン172によって供給される、タービンエンジンに対する理想的な点火ウインドウに対応する速度設定値Nrefは、EECU170によって取得されたパラメータ(例えば、包括的ではないが、大気圧P0、圧縮機への入口での空気温度T0など)に応じてブロック171において、タービンエンジンのEECU170によって準備される。また、速度設定値Nrefは、デジタルの方法またはアナログの方法で、DC−DCコンバータ130の制御システム180に送信される。
【0097】
センサ161によって測定され、かつ、ライン146(
図3)または181(
図4)によって伝達される回転機械の回転速度NDは、速度誤差ΔNを与えるために、比較器182において速度設定値Nrefと比較される。速度誤差ΔNは、トルク設定値Crefを与えるために、補正器183によって処理される。このトルク設定値Crefは、ブロック184によって処理され、ブロック184は、トルク設定値Crefを電流の設定値Irefに変換する。DC−DCコンバータ130からの出口における測定された電流I
Dは、誤差ΔIを与えるために、比較器186において基準Irefと比較される。誤差ΔIは、通電デューティ比τに対する設定値188を与えるために、補正器187によって処理される。通電デューティ比τは、DC−DCコンバータ130のチョッパのパワー半導体(複数可)189(
図4)または107(
図2)を制御するために使用される。
【0098】
わずかに異なる、
図5および
図6に示される別の実施形態では、速度サーボ制御ループは、EECU270によって計算される。比較器274に入力272として供給される速度設定値Nrefは、
図4のブロック171に類似するブロック271において、上述と同様の方法でEECU270により準備される。しかし、速度設定値Nrefは、トルク設定値Crefを準備するために、比較器274の入力273に供給されて、(スタータ120の回転速度NDに比例する)ガス発生器160の圧縮機164のシャフトの測定された回転速度NGと比較される。トルク設定値Crefは、DC−DCコンバータ130の制御回路280にEECU270によって送信される。このトルク設定値Crefは、
図4の上述の実施形態と同様の方法で、DC−DCコンバータ130の制御回路280によって、チョッパの半導体286を制御することで終わるように、処理される。
図6の要素281から286は、それぞれ
図4の要素184から189に対応し、再度説明されない。
【0099】
この実施形態の利点の1つは、この実施形態が、スタータ120における速度センサ161を省略することを可能にし、速度ループが、センサ163を使用してガス発生器の速度NGを取得することによってターボシャフトエンジンのコンピュータ内で直接的に処理されることであることがわかる。
【0100】
一般的な方法において、本発明は、タービンエンジンを確実に始動するためのシステムおよび方法の両方に関する。
【0101】
タービンエンジンを確実に始動するための方法であって、タービンエンジンは、蓄電池110と、DCスタータ120と、電子調整コンピュータ142、142’と、伝動ギアボックス162と、始動段階の間、インジェクタへの燃料の分配を管理しかつ燃料に点火するための始動用付属品168と、ガス発生器160であって、それ自体が、高圧タービン166とともに、圧縮機164、燃焼室165、およびフリータービン167とを備えるガス発生器160とを備える方法は、
第1回路および第2回路を並列に接続し、かつ、前記蓄電池110と前記DCスタータ120との間に第1回路および第2回路を置く工程であって、第1回路は第1スイッチ132と直列に接続されたDC−DCコンバータ130を備え、第2回路は第2スイッチ133を備える工程と、
圧縮機164の回転速度を測定する工程と、
フリータービン167の入口での温度を測定する工程と、
圧縮機164の回転速度およびフリータービン167の入口での温度に関する測定情報に応じて、前記第1スイッチ132および前記第2スイッチ133を制御する工程と、を備える。
【0102】
より具体的には、始動を初期化するときに、始動用付属品168がアクティブ化され、同時に、速度設定値NrefがDC−DCコンバータ130に送信され、速度設定値は、タービンの好ましい点火ウインドウに対応する。速度設定数Nrefまで前記圧縮機164による速度の取得を調整する
ように、圧縮機164を加速
するために、その後、スタータ120に供給される電圧を調整する
ために、DC−DC変換器130をアクティブ化する間、前記第1スイッチ132は閉じられる。速度設定値Nrefが到達されたとき、タービンエンジンの燃焼室165が点火され、フリータービン167の入口での温度が測定される。一旦、燃焼室165が点火されたこと確認する温度における上昇が検出されると、第2スイッチ133は閉じられ、第1スイッチ132は開かれ、DC−DCコンバータ130が非アクティブ化される。圧縮機の回転速度が始動終了閾値を超えたことを検出した後に、始動用付属品168は非アクティブ化され、かつ、第2スイッチ133は開かれる。
【0103】
信頼性のある始動のための本発明の方法およびシステムは、多くの利点を有する。
【0104】
方法およびシステムは、タービンエンジンのガス発生器の燃焼室内における点火の失敗または失火の結果としての不成功な始動の数を低減することを可能にする。
【0105】
方法およびシステムは、始動が、始動条件(飛行条件、油温、スタータ用の電源電圧など)に対して、よりロバストであることを可能にする。
【0106】
方法およびシステムは、始動の持続時間におけるばらつきを最小化することを可能にする。
【0107】
したがって、方法およびシステムは、不成功な始動と新しい試みとの間の換気を回避することを可能にし、その結果、方法およびシステムは、搭載電池のサイズおよび重量を低減することを可能にする。
【0108】
方法およびシステムは、必要な最大始動トルクのテンプレートを満たすために、スタータ用の電源を設計する上での製造業者の作業を簡素化する。
【0109】
方法およびシステムは、ゼロ速度で始動するときの突入電流を制限することを可能にし、それによって、スタータ−発電機のブラシの摩耗を最小化すること、結合(溝切り、弱いリンク)における応力を最小化すること、搭載ネットワークにおける電圧降下を低減すること、および電池の寸法を最適化することを、可能にする。
【0110】
このことは、ヘリコプターに対する可用性の向上につながり、不成功な始動が低い割合になる。
【0111】
装置の電力を低減することによって、装置の重量およびコストも、完全始動電力(最大始動電力の約15%)のために寸法決めされた静的コンバータと比較して、低減されている。
【0112】
本発明のシステムは、現在、ヘリコプターに使用されているブラシ付きのほとんどの28Vスタータ−発電機および28Vスタータと、互換性がある。
【0113】
本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に入る任意の変形にも及ぶ。
【0114】
したがって、一例として、制御されるDC−DCコンバータ130を備える装置は、エンジンの仕様が知られている条件では、電気マスターボックス141に、製造業者によって直接に搭載されてもよい。この仕様は、まず、性能(トルク、回転速度)に関する要件を備え、次に、使用されるインタフェース(速度設定値を装置に伝達するためのフォーマット)を備える。