(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態の要約)
本実施の形態に係る車両用リッドロック装置は、車体に設けられたリッドをロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、車体に固定された収容部材と、収容部材に収容されたモータと、モータの回転によって所定の角度範囲で回転するセクタギヤと、セクタギヤの回転に伴って、一端部が前記収容部材に対して突出した突出位置と、前記一端部が前記収容部材側に引き込まれた引込位置との間を収容部材内で進退移動可能に配置されたロック部材と、ロック部材の移動時において、リッドのロック状態とアンロック状態とが切り替わるロック部材の所定の位置で出力信号の信号状態が変化するセンサと、を備え、ロック部材は、その移動方向に直交する方向に突出した凸部を有している。
【0011】
この車両用リッドロック装置によれば、単一のセンサでロック部材の突出位置と引込位置を検出することができるので、部品点数の削減を図りつつ、ロック部材の突出位置及び引込位置を検出することが可能である。
【0012】
[実施の形態]
本発明の実施の形態に係る車両用リッドロック装置の構成及び動作について、
図1乃至
図8を参照して説明する。この車両用リッドロック装置は、車体9の給油用開口部9aを開閉するフューエルリッド91のロック及びアンロックの切替が可能である。また本実施の形態では、車両用リッドロック装置が燃料給油口を開閉するフューエルリッドをロックする装置である場合について説明するが、これに限定されず例えば本発明における車両用リッドロック装置は、給電口に設けられたリッドを開閉する装置として用いられてもよい。なお、
図1及び
図2では、車両用リッドロック装置100を模式化して図示している。
【0013】
(車両用リッドロック装置の概要)
図1は、本実施の形態に係る車両用リッドロック装置100が搭載された車体の給油用開口部9a及びフューエルリッド91を示す斜視図である。
図2は、車両用リッドロック装置100のロック状態におけるフューエルリッド91及びその周辺部の構造を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、フューエルリッド91は、車体9にヒンジ92を介して開閉可能に取り付けられ、車体9に設けられた給油用開口部9aを開閉する。フューエルリッド91の内側に設けられた取付座面910には、車両用リッドロック装置100に係合するロック板911が取り付けられている。ロック板911には、後述する車両用リッドロック装置100のロック部材5の先端部に係止される凹部911aが形成されている。フューエルリッド91の取付座面910と対向する車体9の対向面9cには、フューエルリッド91を開方向に付勢するオープンスプリング9bが設けられている。
【0015】
図2に示すように、ロック板911は、例えば樹脂からなる部材であり、フューエルリッド91の取付座面910にボルト101によって固定されている。車両用リッドロック装置100は、車体9のアウタパネル93よりも内側に設けられたインナパネル94に車体取付部材90を介して固定された収容部材2を有している。
【0016】
フューエルリッド91の閉状態においては、フューエルリッド91のロック板911における凹部911aに車両用リッドロック装置100のロック部材5の先端部が係止することにより、フューエルリッド91が閉状態でロックされている。そして、フューエルリッド91の開動作においては、例えば運転者が運転席に設けられたリッドオープナーを操作することにより、車両用リッドロック装置100が作動してロック部材5が収容部材2から突出した突出位置Yから収容部材2に引き込まれた引込位置X(二点鎖線)に移動する。そうすると、フューエルリッド91におけるロック板911の凹部911aからロック部材5の先端部が離脱して、フューエルリッド91がオープンスプリング9bの付勢力を受けて半開する。このように、フューエルリッド91がアンロックされて開状態となる。
【0017】
(車両用リッドロック装置の構成)
図3(a)は車両用リッドロック装置100の右側面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示した車両用リッドロック装置100からカバー部材22が取り外された状態の右側面図である。
図4(a)は車両用リッドロック装置100の左側面図であり、
図4(b)は、
図4(a)に示した車両用リッドロック装置100からケース部材21が取り外された状態の左側面図である。
図5は、車両用リッドロック装置100の分解斜視図である。
【0018】
車両用リッドロック装置100は、前述した収容部材2と、収容部材2に収容されて出力軸3aにウォーム30が連結されたモータ3と、モータ3の回転運動を直線運動に変換するセクタギヤ4と、セクタギヤ4の回転に伴って直線運動する軸状の部材であって、一端部が収容部材2に対して突出した突出位置と、一端部が収容部材2側に引き込まれた引込位置位置(
図2に示す引込位置X)との間を進退移動可能に配置されたロック部材5と、ロック部材5を所定の方向に付勢するコイルばね6と、ロック部材5の移動時において、フューエルリッド91のロック状態とアンロック状態とが切り替わるロック部材5の所定の移動位置で出力信号の信号状態が変化するセンサ7と、モータ3を制御する制御部8と、を備えている。なお、ロック部材5は、本発明における「ロック部材」の一例である。
【0019】
ここで、本実施の形態において、「突出位置」とはロック部材5の前端面55がケース部材21に設けられたストッパ面212に接触する位置をいい、「引込位置」とはロック部材5に設けられてコイルばね6の一端6aと接触する後端面54が、ケース部材21に設けられたバネ接触面210dに接触する位置をいう。
【0020】
(モータの構成)
モータ3は、図略のターミナルが設けられたコネクタ部300を介して制御部8と電気的に接続されている。また、制御部8には、車室内に設けられたオープンスイッチ80が接続されている。給油時に使用者がオープンスイッチ80を操作すると、制御部8がモータ3への通電を開始する。これにより、モータ3が作動してセクタギヤ4が回転する。
【0021】
(セクタギヤの構成)
セクタギヤ4は、略扇形状であり、ウォーム30の出力軸3aに噛み合うギヤ部4bが外周部に形成されている。セクタギヤ4は、ケース部材21のケース本体部210に設けられたピン20が挿通される挿通孔40を有し、モータ3の作動に伴ってピン20に対して所定の角度範囲で回転する。また、セクタギヤ4は、ロック部材5の中間部53の接触面53aに係合する係合突起4aを有している。なお、接触面53aは本発明におけるロック部材の被係合部の一例である。
【0022】
(ロック部材の構成)
ロック部材5は、軸方向の他端部側に設けられた断面角形の本体部51と、軸方向の一端部側に設けられた断面円柱状のロックピン52と、本体部51とロックピン52との間に設けられてセクタギヤ4の係合突起4aが接触する接触面53aが形成された中間部53と、を有している。
【0023】
ロックピン52の先端には、軸方向に対して傾斜した傾斜面52aが形成されている。この傾斜面52aは、フューエルリッド91の閉動作時においてロック板911の先端面911bと摺動する摺動面として形成されている(
図2参照)。これにより、フューエルリッド91の閉動作時における、フューエルリッド91のロック板911とロック部材5との衝突が緩和されている。
【0024】
(コイルばねの構成)
コイルばね6は、ロック部材5の本体部51に設けられたばね収容部51aに収容されている。コイルばね6の一端6a側がロック部材5の本体部51に設けられたばね収容部51aに収容されていると共に、その他端6bがケース部材21に形成されたスライド収容部210bのバネ接触面210dに接触し、圧縮された状態で配置されている。これにより、ロック部材5は、引込位置から突出位置の方向の付勢力を常時受けている。
【0025】
(収容部材の構成)
図5に示すように、収容部材2は、モータ3を収容するモータ収容部210aが形成されたケース部材21と、ケース部材21の開口を覆うカバー部材22と、ケース部材21に対してカバー部材22を取り付けた状態において、ケース部材21及びカバー部材22に設けられた第1及び第2ロッド支持部211,221に固定される筒状部材23と、を有している。
【0026】
(ケース部材の構成)
ケース部材21は、前述のモータ収容部210aと、ロック部材5を軸方向にスライド可能に収容するスライド収容部210bとが形成されたケース本体部210と、ケース本体部210からロック部材5の軸方向に突出して形成された半円筒状の第1ロッド支持部211とを有している。
【0027】
(カバー部材の構成)
カバー部材22は、ケース部材21のモータ収容部210a及びスライド収容部210bの開口を覆うカバー本体部220と、第1ロッド支持部211の開口を覆い、かつ、カバー本体部220からロック部材5の軸方向に突出して形成された半円筒状の第2ロッド支持部221とを有している。ケース部材21に対してカバー部材22が取り付けた状態において、第1ロッド支持部211と第2ロッド支持部221とが重ね合わさって円筒状となる。車両用リッドロック装置100の組付状態においては、この円筒状の部位に、筒状部材23が外嵌している(
図3及び
図4参照)。
【0028】
(筒状部材の構成)
筒状部材23には、ロック部材5のロックピン52が貫通する貫通孔230が形成されている。筒状部材23は、軸方向の一端部側に取り付けられるリング状の車体取付部材90を介して車体に固定される。ロック部材5のロックピン52と筒状部材23との間にはシール部材10が配置され、筒状部材23からの浸水に対する防水性が確保されている。
【0029】
(センサの構成)
センサ7は、本体部70と、第1及び第2信号出力部71,72と、押圧操作されるスイッチ部73と、を有している。センサ7は、ロック部材5の軸方向移動に伴って後述する第1及び第2凸部511,512によってスイッチ部73が押圧される位置にケース部材21及びカバー部材22に対して固定されている。第1及び第2信号出力部は、制御部8に電気的に接続されている。これにより、制御部8は、センサ7の信号状態の切り替わりを検出することが可能である。
【0030】
(制御部の構成)
制御部8は、CPU、メモリ、インターフェイス、ソフトウェア等を適宜組み合わせたコントロールユニットであり、例えば車両のミラーやシート等の制御を行う電子制御ユニット(ECU)に搭載されている。また、制御部8は、センサ7の出力信号線に接続されており、センサ7の出力信号に応じてモータ3への通電を制御する。より具体的には、制御部8は、センサ7の信号状態が切り替わったときにモータ3への通電を停止するように構成されている。
【0031】
(ロック部材の第1及び第2凸部の構成)
次に、ロック部材5の構成の詳細について
図6を参照して説明する。
図6は、ロック部材5の構成例を示す平面図であり、(a)は、ロック部材5の上面図であり、(b)はロック部材5の右側面図であり、(c)はロック部材5の底面図である。
【0032】
図6(b)に示すように、ロック部材5には、ロック部材5の所定の移動位置でセンサ7の押動部としてのスイッチ部73に対する押圧状態を変化させる第1及び第2凸部511,512が設けられている。本実施の形態では、第1凸部511は、突出位置でセンサ7のスイッチ部73を押圧し、第2凸部512は引込位置でセンサ7のスイッチ部73を押圧する。第1及び第2凸部511,512は、本発明における凸部の一例である。
【0033】
第1及び第2凸部511,512は、本体部51の下端から突出し側面から見た形状が略台形状である。第1及び第2凸部511,512は、ロック部材5の移動方向に直交する方向に突出して形成され、ロック部材5の移動方向に沿って配置され、第2凸部512が第1凸部511よりもロックピン52側に配置されている。ここで、ロック部材5の移動方向とは、ロックピン52の軸方向に沿った方向をいう。
【0034】
第1凸部511は、本体部51の底面51bに平行な平坦面511aと本体部51の底面51bと平行な平面に対して傾斜した傾斜面511bと、を有している。同様に、第2凸部512は、本体部51の底面51bに平行な平坦面512aと本体部51の底面51bと平行な平面に対して傾斜した傾斜面512bと、を有している。
【0035】
第1凸部511と第2凸部512とは、ロック部材5の軸方向に所定の距離を隔てて配置されており、互いの傾斜面511b、512bとを対面させるように配置されている。
【0036】
ロック部材5が突出位置に移動すると、第1凸部511がセンサ7を押圧する。一方、ロック部材5が引込位置に移動すると、第2凸部512がセンサ7を押圧する。
【0037】
(車両用リッドロック装置の動作)
次に、車両用リッドロック装置100のアンロック動作について
図7を参照して説明する。
図7(a)は、フューエルリッド91が閉じたロック状態を示し、(b)はアンロック操作によってアンロック動作した状態を示し、(c)はアンロック動作が完了した状態を示している。
【0038】
図7(a)に示すように、フューエルリッド91が閉じて、かつ、フューエルリッド91がロックされた状態においては、ロック部材5のロックピン52の先端部が、フューエルリッド91のロック板911(
図2に示す)の底面に接触しているので、ロック部材5は、コイルばね6によって突出位置側への付勢力を受けながら、突出位置と引込位置との間に挟まれた中間位置(
図2に示す突出位置Y)に配置されている。ロック部材5の中間位置においては、センサ7のスイッチ部73が第1及び第2凸部511,512の間に挟まれた位置に配置される。つまり、ロック部材5が中間位置にあるときには、センサ7のスイッチ部73は押圧操作されていないので、制御部8にはオフ信号が出力される。なお、上述したフューエルリッド91がロックされた状態では、セクタギヤ4の係合突起4aはロック部材5における中間部53の接触面53aとは離間しており、セクタギヤ4とロック部材5とが係合していない非係合状態である。
【0039】
ここで、ロック部材5の移動方向における第1凸部511の平坦面511aと傾斜面511bが交わる交点をM
1とし、ロック部材5の移動方向における第2凸部512の平坦面512aと傾斜面512bとの交点をM
2とし、交点M
1と交点M
2との間の距離をS
2とし、ロックピン52の筒状部材23の先端面23aからの突出量をS
1とする。
【0040】
図7(b)に示すように、運転者が車室内のオープンスイッチ80を操作すると、制御部8がモータ3への通電を開始するように制御するので、モータ3への駆動電流が供給される。そして、モータ3の作動に伴ってセクタギヤ4が反時計回り方向(図の矢印方向)に所定の角度だけ回転し、セクタギヤ4の係合突起4aがロック部材5の中間部53における接触面53aに接触して、ロック部材5と係合した係合状態となる。これによって、ロック部材5が中間位置から引込位置に移動して、ロックピン52が筒状部材23の内部に完全に引き込まれると共に、ロック部材5の後端面54とケース部材21のバネ接触面210d(
図5参照)とが接触する。これにより、フューエルリッド91がアンロック状態となりオープンスプリング9b(
図1)の付勢力を受けて半開する。
【0041】
前述したロック部材5が引込位置に移動するときに、ロック部材5の第2凸部512がセンサ7のスイッチ部73を押圧する。これにより、センサ7から制御部8へオン信号が出力され、制御部8がモータ3への通電を停止して、モータ3の動作が停止する。これにより、ロック部材5の後端面54がケース部材21のバネ接触面210dに接触した後のモータ3への通電が防止される。すなわち、モータ3が拘束された際における異音の発生が抑制される。
【0042】
そうすると、
図7(c)に示すように、ロック部材5はコイルばね6の付勢力によって、引込位置から突出位置まで移動する。この際、ロック部材5の第1凸部511がセンサ7のスイッチ部73を押圧操作し、センサ7からオン信号が制御部8へ出力される。制御部8は、センサ7からのオン信号を受信して、フューエルリッド91の開状態を検出する。また、ロック部材5が引込位置から突出位置に移動する際には、ロック部材5の中間部53における接触面53aがセクタギヤ4の係合突起4aを押圧するので、ロック部材5はセクタギヤ4を時計回り方向に回転させながら引込位置から突出位置へ移動する。
【0043】
ここで、本実施の形態では、距離S
2は突出量S
3よりも少なくとも小さくなるように設定される(S
2<S
3)。また、本実施の形態では、距離S
2はロック部材5が収容部材2内で移動できる最小限の距離であるので、ロック部材5の突出位置と引込位置との間の移動距離をDとすると、移動距離Dは、少なくともS
2よりも大きくなるように移動距離Dが設定されている(D>S
2)。
【0044】
なお
図7においてはフューエルリッド91のロック状態が解除されるアンロック動作について説明したが、フューエルリッド91のアンロック状態からロック状態にするアンロック動作は基本的にロック動作の逆となる。
【0045】
より具体的には、開状態のフューエルリッド91が閉じられると、フューエルリッド91におけるロック板911の先端面911bとロック部材5のロックピン52の傾斜面52aとが接触してロック部材5が突出位置から引込位置側に押し込まれる。この際、ロック部材5は、セクタギヤ4とは非係合の状態で、突出位置から引込位置に移動する。これにより、例えばロック部材5とセクタギヤ4とが常時連結状態である場合には、リッドを閉じる際にコイルばねの復元力とモータ及びウォームギヤの噛み合い力を超える押し込み力が必要となるが、本実施の形態によればコイルばね6の復元力を上回る押し込み力で足りるので、フューエルリッド91を閉じる際に必要な押し込み力が低減される。
【0046】
そして、一旦引込位置側に押し込まれたロック部材5がコイルばね6の付勢力によって中間位置側に移動して、ロックピン52の先端がフューエルリッド91のロック板911の凹部911aに係止する。これにより、フューエルリッド91がロックされる。
【0047】
(制御部8の処理フロー)
次に、制御部8の処理内容の一例について
図8を参照して説明する。
図8は、制御部8が実行する処理のフローチャートの一例である。
【0048】
先ず、制御部8は、アンロック操作があったか否かについて判定する。この判定は、例えばオープンスイッチ80が操作された際に出力される出力信号を受け付けたときにアンロック操作があったと判定する。
【0049】
アンロック操作があった場合(ステップS10:Yes)、制御部8はセンサ7から出力された信号状態がオンかオフかを判定する(ステップS20)。一方、アンロック操作がない場合(ステップS10:No)、制御部8はステップS10の処理を繰り返す。
【0050】
センサ7からの出力信号がオンの場合(ステップS20:No)、そのまま処理を終了する。一方、センサ7からの出力信号がオフの場合(ステップS20:Yes)、制御部8はモータ3への通電を開始する(
図7(b)参照)。これにより、モータ3が作動してロック部材5が中間位置から引込位置側に引き込まれる。
【0051】
そして、制御部8は、センサ7の出力信号がオンかオフかを判定する(ステップS40)。つまり、モータ3への通電後、制御部8はセンサ7の信号状態を監視する。
【0052】
センサ7の出力信号がオフの場合(ステップS40:No)、ステップS40の処理を繰り返す。一方、センサ7の出力信号がオンの場合(ステップS40:Yes)、制御部8はモータ3への通電を停止する(ステップS50)。
【0053】
次に、制御部8は、センサ7の出力信号がオフではない場合で(ステップS60:No)、所定時間が経過したら(ステップS90:Yes)、異常であることを示す異常検知アラート信号を出力し(ステップS100)、フローチャートの処理を終了する。ステップS90において、所定時間経過していない場合は(ステップS90:No)、ステップS60の処理に戻る。
【0054】
一方、ステップS60において、センサ7の出力信号がオフと判定された後に(ステップS60:Yes)、センサ7の出力信号がオンである場合には(ステップS70:Yes)、制御部8はフューエルリッド91が正常に開操作されたことを示すリッド開アラート信号を出力し(ステップS80)、フローチャートの処理を終了する。ステップS70において、センサ7の出力信号がオンではないと判定された場合は(ステップS70:No)、制御部8は所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過している場合は異常アラート信号が出力される(ステップS100)。
【0055】
なお、ステップS90における所定時間には、例えば、コイルばね6によってロック部材5が引込位置から突出位置まで移動するのに要する時間が設定される。つまり、本実施の形態によれば、ロック部材5が引込位置から突出位置に移動する際において、センサ7がオフ信号になってから所定時間経過してもスイッチ部73がオン信号にならない場合は、異常状態であると判定されるように構成されている。ここで、異常状態とは、例えばロック部材5が突出位置に移動するまでの間に筒状部材23との摺動抵抗の増大により収容部材2内で固着してしまい、中間位置と突出位置の間で静止してしまう場合等である。
【0056】
以上説明した本実施の形態によれば、以下に示す作用及び効果が得られる。
【0057】
(1)ロック部材5は、ロック部材5の突出位置でセンサ7のスイッチ部73を押圧する第1凸部511と、ロック部材5の引込位置でセンサ7のスイッチ部73を押圧する第2凸部512とを有している。これにより、1つのセンサでロック部材5の突出位置と引込位置とを検出することができる。つまり、センサを複数備えることなくロック部材5の突出位置及び引込位置を検出することができるので、部品点数の削減を図りつつ、ロック部材5の突出位置及び引込位置を検出することが可能である。
【0058】
(2)ロック部材5は、その中間部53の接触面53aがセクタギヤ4の突出部4aに押圧されたときに、ロック部材5が突出位置と引込位置との間をセクタギヤ4と連動して移動する連動状態となる。従って、
図7(c)に示したようなロック部材5が突出位置に位置し、かつ、ロック部材5の接触面53aとセクタギヤ4の係合突起4aとが接触した状態から、ロック部材5の接触面53aとセクタギヤ4の係合突起4aとが離間する方向にロック部材5が移動する場合には、ロック部材5はセクタギヤ4とは独立して運動することができる。つまり、ロック部材5の被係合部としての接触面53aは、フューエルリッド91が開いた状態から閉じる際のフューエルリッド91に対する押し込み動作に伴って、ロック部材5が突出位置から引込位置に移動する際にはセクタギヤ4の係合突起4aと係合しない。これにより、例えばセクタギヤ4とロック部材5とが常に連動するように構成されている場合に比較して、セクタギヤ4を回転させる力が不要となるので、フューエルリッド91を閉じる際に必要な押し込み力を低減することができる。
【0059】
次に、変形例に係る車両用リッドロック装置について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9(a)は、車両用リッドロック装置のフューエルリッド91が閉じたロック状態を示し、(b)はアンロック操作によってアンロック動作した状態を示し、(c)はアンロック動作が完了した状態を示している。
図10は、変形例に係る制御部8が実行する処理のフローチャートの一例である。
【0060】
なお、
図9及び
図10において、上記実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の又は対応する符号及び名称を付してその説明を省略する。
【0061】
図9(a)〜(c)に示すように、本変形例に係る車両用リッドロック装置100は、その移動方向に直交する方向に突出して配置された単一の凸部511Aを有している。つまり、本変形例に係る車両用リッドロック装置100は、センサ7のスイッチ部73を押圧する凸部が1か所設けられている点で本実施の形態に係る車両用リッドロック装置100と異なる。凸部511Aは、ロック部材5の突出位置及び引込位置の間の移動に伴って、センサ7のスイッチ部73に対する押圧状態を変化させる。詳細は、以下に述べる。
【0062】
凸部511Aは、本体部51の底面51bに平行な平坦面511eと、平坦面511eの両側から底面51bに向かって延在し、本体部51の底面51bと平行な平面に対して傾斜した第1及び第2傾斜面511c,511dと、を有している。
【0063】
図9(a)に示すように、凸部511Aがセンサ7のスイッチ部73を押圧した状態では、平坦面511eがスイッチ部73と対面する。また、第1傾斜面511cはロック部材5が引込位置から突出位置に移動する際に、ロック部材5がスイッチ部73に最初に接触する接触面として形成され、第2傾斜面511dはロック部材5が突出位置から引込位置に移動する際に、ロック部材5がスイッチ部73に最初に接触する接触面として形成されている。第1及び第2傾斜面511c,511dが形成されていることにより、ロック部材5がセンサ7に対して円滑にスライドできるように構成されている。
【0064】
図9(a)に示すように、フューエルリッド91が閉じて、かつ、フューエルリッド91がロックされた状態においては、ロック部材5のロックピン52の先端部が、フューエルリッド91のロック板911(
図2に示す)の底面に接触しているので、ロック部材5は、コイルばね6によって突出位置側への付勢力を受けながら、突出位置と引込位置との間に挟まれた中間位置(
図2に示す突出位置Y)に配置されている。
【0065】
このロック部材5の中間位置においては、センサ7のスイッチ部73が凸部511Aに押圧された状態である。つまり、ロック部材5が中間位置にあるときには、センサ7のスイッチ部73は押圧操作されているので、制御部8にはオン信号が出力される。
【0066】
図9(b)に示すように、運転者が車室内のオープンスイッチ80を操作すると、制御部8がモータ3への通電を開始するように制御するので、モータ3への駆動電流が供給される。これに伴って、ロック部材5が中間位置から引込位置に移動して、ロックピン52が筒状部材23の内部に完全に引き込まれると共に、ロック部材5の後端面54とケース部材21のバネ接触面210d(
図5参照)とが接触する。これにより、フューエルリッド91がアンロック状態となりオープンスプリング9b(
図1)の付勢力を受けて半開する。
【0067】
前述したロック部材5が引込位置に移動するときに、ロック部材5の凸部511Aがセンサ7のスイッチ部73から離間する。これにより、センサ7から制御部8へオフ信号が出力され、制御部8がモータ3への通電を停止して、モータ3の動作が停止する。これにより、ロック部材5の後端面54がケース部材21のバネ接触面210dに接触した後のモータ3への通電が防止される。すなわち、モータ3が拘束された際における異音の発生が抑制される。
【0068】
そうすると、
図9(c)に示すように、ロック部材5はコイルばね6の付勢力によって、引込位置から中間位置を経由して突出位置まで移動する。従って、ロック部材5が中間位置に位置したときに凸部511Aがセンサ7のスイッチ部73を押圧操作し、その後ロック部材5がさらに移動して凸部511Aがセンサ7のスイッチ部73から離間する。すなわち、ロック部材5が引込位置から中間位置を経由して突出位置に移動する際には、センサ7からオン信号が制御部8へ出力され、所定時間経過後にオフ信号が出力される。制御部8は、これらの信号を受信して、フューエルリッド91の開状態を検出する。
【0069】
次に、変形例に係る制御部8の処理内容の一例について
図10を参照して説明する。
図10は、変形例に係る制御部8が実行する処理のフローチャートの一例である。
【0070】
先ず、制御部8は、アンロック操作があったか否かについて判定する。この判定は、例えばオープンスイッチ80が操作された際に出力される出力信号を受け付けたときにアンロック操作があったと判定する。
【0071】
アンロック操作があった場合(ステップS10:Yes)、制御部8はセンサ7から出力された信号状態がオンか否かを判定する(ステップS21)。一方、アンロック操作がない場合(ステップS10:No)、制御部8はステップS10の処理を繰り返す。
【0072】
センサ7からの出力信号がオフの場合(ステップS21:No)、そのまま処理を終了する。一方、センサ7からの出力信号がオンの場合(ステップS21:Yes)、制御部8はモータ3への通電を開始する(
図9(b)参照)。これにより、モータ3が作動してロック部材5が中間位置から引込位置側に引き込まれる。
【0073】
そして、制御部8は、センサ7の出力信号がオフか否かを判定する(ステップS41)。つまり、モータ3への通電後、制御部8はセンサ7の信号状態を監視する。
【0074】
センサ7の出力信号がオンの場合(ステップS41:No)、ステップS41の処理を繰り返す。一方、センサ7の出力信号がオフの場合(ステップS41:Yes)、制御部8はモータ3への通電を停止する(ステップS50)。
【0075】
次に、制御部8は、センサ7の出力信号がオンではない場合で(ステップS61:No)、所定時間が経過したら(ステップS90:Yes)、異常であることを示す異常検知アラート信号を出力し(ステップS100)、フローチャートの処理を終了する。ステップS90において、所定時間経過していない場合は(ステップS90:No)、ステップS60の処理に戻る。
【0076】
一方、ステップS61において、センサ7の出力信号がオンと判定された後に(ステップS61:Yes)、センサ7の出力信号がオフである場合には(ステップS71:Yes)、制御部8はフューエルリッド91が正常に開操作されたことを示すリッド開アラート信号を出力し(ステップS80)、フローチャートの処理を終了する。ステップS71において、センサ7の出力信号がオフではないと判定された場合は(ステップS71:No)、制御部8は所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間が経過している場合は異常アラート信号が出力される(ステップS100)。
【0077】
以上説明した本変形例によれば、ロック部材5が突出位置及び引込位置の間を移動する際にセンサ7のスイッチ部73を押圧する凸部511Aを有しているので、1つのセンサでロック部材5の突出位置と引込位置とを検出することができる。つまり、センサを複数備えることなくロック部材の突出位置及び引込位置を検出することができるので、部品点数の削減を図りつつ、ロック部材の突出位置及び引込位置を検出することが可能である。
【0078】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【0079】
また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【解決手段】車体に固定された収容部材と、収容部材に収容されたモータ3と、モータ3の回転によって所定の角度範囲で回転するセクタギヤ4と、セクタギヤ4の回転に伴って収容部材内で進退移動可能に配置されたロック部材と、ロック部材の移動時において、フューエルリッドのロック状態とアンロック状態とが切り替わるロック部材の所定の位置で出力信号の信号状態が変化するセンサ7と、を備え、ロック部材は、移動方向に直交する方向に突出して移動方向に沿って配置された第1及び第2凸部511,512を有し、第1凸部511はロック部材の突出位置でセンサ7のスイッチ部73を押圧し、第2凸部512はロック部材の引込位置でセンサ7のスイッチ部73を押圧する。