【実施例】
【0289】
一般に、本明細書で用いられる命名法、および本発明で利用される実験手順は、分子学的、生化学的、微生物学的および組換えDANの技術を含む。そのような技術は、文献中に完全に説明されている。例えば、「Molecular Cloning: A laboratory Manual,Sambrookら、(1989)」;「Current Protocols in Molecular Biology」,第I−III巻、Ausubel,R.M.編(1994);Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology」,John WileyおよびSons,Baltimore,Maryland (1989);Perbal,「A Practical Guide to Molecular Cloning」,John Wiley & Sons, New York(1988)」;Watsonら、「Recombinant DNA」,Scientific American Books,New York;Birrenら、(編)「Genome Analysis:A Laboratory Manual Series」,第1〜4巻,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York(1998);以下に示された方法論:米国特許第4,666,828号、第4,683,202号、第4,801,531号、第5,192,659号および第5,272,057号;「Cell Biology:A Laboratory Handbook,第I〜III巻 Cellis,J.E.,編.(1994);「Culture of Animal Cells − A Manual of Basic Technique」,Freshney,Wiley−Liss,N.Y.(1994),第3版;「Current Protocols in Immunology」,第I−III巻 Coligan J.E.,編(1994)」、「Stitesら、(編),Basic and Clinical Immunology(第8版),Appleton & Lange,Norwalk,CT(1994);Mishell and Shiigi(編),「Selected Methods in Cellular Immunology」,W.H.Freeman and Co.,New York(1980)」を参照のこと;利用可能な免疫アッセイは、特許および科学文献に広範に記載されており、例えば、米国特許第3,791,932号;第3,839,153号;第3,850,752号;第3,850,578号;第3,853,987号;第3,867,517号;第3,879,262号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;第4,098,876号;第4,879,219号;第5,011,771号および第5,281,521号:「Oligonucleotide Synthesis」,Gait,M.J.,編(1984);「Nucleic Acid Hybridization」,Hames,B.D.,およびHiggins S.J.,編(1985);「Transcription and Translation」,Hames,B.D.,およびHiggins S.J.,編.(1984);「Animal Cell Culture」,Freshney,R.I.,編(1986);「Immobilized Cells and Enzymes」,IRL Press,(1986);「A Practical Guide to Molecular Cloning」,Perbal,B.,(1984)および「Methods in Enzymology,Vol.1−317,Academic Press;「PCR Protocols:A Guide To Methods And Applications」,Academic Press,San Diego,CA(1990);Marshakら、「Strategies for Protein Purification and Characterization−A Laboratory Course Manual」,CSHL Press(1996)」を参照のこと;それらの全てが、参照により援用される。他の一般的引用文献は、本明細書全体に示される。
【0290】
実施例1
第IX凝固因子の生成および利用
組み換えFIX分子のクローニングおよび発現
【0291】
第IX因子クローンを、本発明者らの真核生物発現ベクターpCI−neo(Promega,カタログ番号.E1841)中で構築した。ホモサピエンス第IX凝固因子のORFクローンは、「OriGene」(RC219065)に注文された。プライマーは、Sigma−Genosysに注文された。
【0292】
301−1−pCI−neo−p200−11の構築物(第IX因子−ctp x2):
【0293】
プライマー101:5´GTTTAGTGAACCGTCAGAAT3´(配列番号36)
【0294】
プライマー103
R:5´TTGAGGAAGATGTTCGTGTA3´(第IX因子のSspI部位を含む)(配列番号37)
【0295】
PCR反応は、プライマー101およびプライマー103
RならびにプラスミドDNA、第IX因子のcDNAクローン(OriGene"RC219065)をテンプレートとして用いて行い、PCR増幅の結果、約1085bp(pcr 10)の生成物が形成され、ゲルから精製された(第IX因子配列のアミノ末端を含むフラグメント)。
【0296】
プライマー98:5´ATTACAGTTGTCGCAGGTGA 3´(配列番号38)。
【0297】
プライマー99
R:5´GCTGGAGCTAGTGAGCTTTGTTTTTTCCTT 3´(配列番号39)。
【0298】
プライマー100:5´GCTCACTAGCTCCAGCAGCAAGGCC 3´(配列番号40)。
【0299】
プライマー27
R:5´TTTTCACTGCATTCTAGTTGTGG 3´(配列番号41)。
【0300】
3つのPCR反応を行った。最初の反応は、プライマー98およびプライマー99
RならびにプラスミドDNA、第IX因子のcDNAクローン(OriGene´´、RC219065)をテンプレートとして用いて行い、PCR増幅の結果として、約540bpの生成物を得た。
【0301】
第二の反応は、プライマー100およびプライマー27
Rならびに402−2−p72−3のプラスミドDNA(hGH−CTP−CTP)をテンプレートとして用いて行い、PCR増幅の結果、約258bpの生成物を得た。
【0302】
最後の反応(pcr3)を、プライマー98および27
R、ならびに前の2つの反応の生成物の混合物をテンプレートとして用いて行い、PCR増幅の結果、約790bpの生成物を得て、TAクローニングベクター(Invitrogen,カタログK2000−01)に連結した。SspI−EcoRIフラグメントを単離した(TA 3−3)。
【0303】
別のPCR反応(pcr12)を、プライマー101およびプライマー27
Rを用い、ならびにpcr10の生成物およびpcr3のSspI−EcoRIフラグメントの混合物をテンプレートとして用いて行い、PCR増幅の結果、約1700bpの生成物を得て(第IX因子−ctp−ctp)、TAクローニングベクター(Invitrogen,カタログ K2000−01)中に連結した(lig180)。
【0304】
誤りが第IX因子配列中で見出され、そのフラグメントを置き換えて、正しいDNA配列を有する第IX因子−ctp−ctpの挿入物を形成した。
【0305】
TA−pcr3−3を、SspIおよびXbaIで消化し、大きいフラグメントを単離した(ベクター)。TA180−4を、SspIおよびXbaIで消化して、小さいフラグメント(挿入物)を単離して、SspIおよびXbaIで消化されたTA−pcr−3−3の単離された大きいフラグメントに連結した。この新しいプラスミドTA−183−2を、SalIおよびNotIで消化し、第IX因子−CTP−CTP挿入物を、単離した(約1575bp)。このフラグメントを真核生物発現ベクターpCI−neo(SalIおよびNotIで消化した)中に挿入して、301−2−p200−11クローンを得た。
【0306】
pCI−dhfr−第9因子−ctp×2(p223−4)の構築:ベクターpCI−dhfr(p6−1)を、SmaIおよびNotIで消化した。第IX因子−CTP−CTP(p200−11)を、ASisIF.I.およびNotIで消化した。2つのフラグメントを連結した。
【0307】
pCI−dhfr第9因子−ctp×3(p225−7)の構築:ベクターpCI−dhfr OXM−CTP×3(p216−4)を、XbaIおよびApaIで消化した。第IX因子−CTP−CTP(223−4)を、XbaIおよびApaIで消化した。2つのフラグメントを連結した。
【0308】
pCI−dhfr第9因子−ctp×3 T148A(p243−2)の構築:プラスミドp225−7は、トレオニンを148位に含んでいた。この理由は、FIXのより一般的な形態は、この位置にアラニンを含み、Thrが、部位指向性変異誘発方法を用いてAlaに置換されたためであった。
【0309】
プライマー75:ctcccagttcaattacagct(配列番号42)。
【0310】
プライマー122r:ggaaaaactgcctcagcacgggtgagc(配列番号43)
【0311】
プライマー123:gtgctgaggcagtttttcctgatgtggactat(配列番号44)
【0312】
プライマー124r:caacacagtgggcagcag(配列番号45)。
【0313】
3つのPCR反応を行った。最初の反応は、プライマー75およびプライマー122rならびにプラスミドDNAp225−7をテンプレートとして用いて行った、PCR増幅の結果、約692bpの生成物を得て、ゲルから精製した。第二のPCR反応は、プライマー123およびプライマー124r、ならびにプラスミドDNAp225−7をテンプレートとして用いて行った、PCR増幅の結果、約237bpの生成物を得て、ゲルから精製した。第三の重複PCR反応を、プライマー75および124r、ならびに前の2つの反応の生成物の混合物をテンプレートとして用いて行った、PCR増幅の結果、約910bpの生成物を得た。この重複PCR生成物を、XbaIおよびNsiIで消化し、p225−7プラスミド(XbaIおよびNsiIで消化)に再連結して、第IX因子−ctpx3 T148A(p243−2と命名)を得た。
【0314】
FIX−4CTP(p259−4)の構築:3.5CTPフラグメントを、制限酵素Apa1およびXba1によってoxym−4CTP(p254−3)から単離した。FIX+0.5CTPフラグメントは、制限酵素Apa1およびXba1を用いてFIX−3CTP(p243−2)から単離した。2つのフラグメントを連結した。
【0315】
FIX−5CTP(p260−18)の構築:4.5CTPフラグメントを、制限酵素Apa1およびXba1によってoxym−5CTP(255−1)から単離した。FIX+0.5CTPフラグメントは、酵素Apa1およびXba1を用いてFIX−3CTP(p243−2)から単離した。2つのフラグメントを連結した。
【0316】
Dg44細胞を、100mmの組織培養皿にプレートして、50〜60%コンフルエンスまで増殖させた。総計2μg(マイクログラム)のFIX cDNAを、タンパク質を含まない培地(Invitrogene CD Dg44)中でFuGene試薬(Roche)を用いて1つの100mmプレートのトランスフェクションのために用いた。その培地をトランスフェクションの48時間後に取り出して、ヌクレオシドなしで、800μg/mlのG418(Neomycin)の存在下で、タンパク質を含まない培地(Invitrogene CD Dg44)で置き換えた。14日後、トランスフェクトされた細胞集団を、T25組織培養フラスコ中に移して、選択をさらに10〜14日間、細胞が安定なクローンとして増殖を開始するまで続けた。高発現のクローンを選択した。約2×10
7個の細胞を用いて、5ng/mlのビタミンK3(メナジオン重亜硫酸ナトリウム;Sigma)を補充した1700cm
2のローラーボトル(Corning,Corning NY)中で300mlの増殖培地に接種した。この生成培地(ハーベスト)を、細胞生存度が約70%に急速に低下した後に収集した。生成物培地を、最初に清澄化し、次いで約20倍に濃縮し、流動濾過カセット(10KDa MWCO;Millipore Corp.)を用いてPBSで透析した。
【0317】
FIX抗原レベルの決定:FIX−CTPハーベスト抗原レベルを、AssayMax HumanFIX ELISAキット(AssayPro−EF1009−1)を用いて決定した。算出されたタンパク質濃度は、2つの独立した試行における3つの異なる希釈の平均である(
図1A,表1)。
【0318】
【表1】
【0319】
FIX SDS−PAGE−イムノブロット:FIX−CTPハーベストまたは精製されたrhFIX(American Diagnostics)、100ngのタンパク質を、12%のTris−グリシンゲル上に、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGE分析は、ウエスタンイムノブロットによって、抗ヒトFIXポリクローナル抗体および抗ヒトγカルボキシル化モノクローナル抗体(American Diagnostics)を用いて行った。以前に報告のとおり、rhFIXは、55KDaで移動したが、2つのCTPと融合したFIXは、75KDaで移動した。FIX−CTPタンパク質の両方の改変体とも、γカルボキシル化され、FIX活性に関する必須の翻訳後修飾および機能が示された(
図1B)。
【0320】
FIX発色活性の決定:FIX−CTPハーベスト対rhFIXタンパク質のインビトロ力価の比較の評価(American Diagnostics)を、市販の発色活性試験キット,BIOPHEN(Hyphen BioMed 221802)を用いて行った。トロンビン、リン脂質、カルシウムの存在下では、過剰量のFXIaは、サンプリングされたFIXをFIXaに活性化した。FIXaは、トロンビン、活性化FVIII:C(過剰量で供給された)、リン脂質、およびカルシウムと酵素抱合体を形成し、アッセイ系の存在下では、第X因子をFXaに活性化する。この活性は、制限因子であるFIXの量と直接相関する。次いで、生成されたFIXは、FXa発色基質(pNA)に対するその比活性によって測定される。生成されたpNAの量は、FIXa活性に正比例する。rhFIXおよびFIX−CTPハーベストを連続希釈して、その力価を、rhFIXまたはヒト血漿からなる参照調製物に対してFIXハーベストの用量反応曲線を比較することによって評価した。FIXの平均EC50は、21ng/mlであったが、FIX−(CTP)
2ハーベスト算出EC50は、382ng/mlであり、FIX−CTPハーベスト算出EC50は、1644ng/mlであった。FIX−(CTP)
2ハーベストの酵素活性の約15倍の減少が観察された(
図2)。
【0321】
FIX凝固活性(aPTT):活性化された部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、凝固カスケードの内因性かつ共通の経路の完全性を示す基準となる。aPTTは、内因性の経路活性化因子、リン脂質およびカルシウムの添加後、血漿が凝固する時間の秒数である。組織因子は、プロタイム(PT)試薬でそのままにリン脂質に含まれないので、aPTT試薬は、部分トロンボプラスチンと呼ばれる。活性化因子は、この系を開始し、次いで内因性経路の残りの工程は、リン脂質の存在下で生じる。参照aPTT範囲は、実験の間で変化するが、通常は、27〜34秒の範囲である。
【0322】
アッセイの原理は、rhFIXの添加によるFIX−枯渇のヒト血漿の凝固活性を修復するFIX−CTPハーベストの能力を定量することであった。300μlのFIX−枯渇ヒト血漿を、100μlのrhFIXまたはFIX−CTPハーベストと混合して、連続希釈した。37℃での60秒のインキュベーション後、トロンボプラスチン、CaCl
2、およびリン脂質を、この混合物に添加し、凝固時間の秒数を決定した(American Medical Laboratoriesが行った)。力価は、FIXハーベストの用量反応曲線を、rhFIXまたはヒト血漿からなる参照調製物と比較することによって評価した。1単位のFIX活性は、1mlの正常なヒト血漿の活性に等しいFIX濃度に相当する。示されたaPTTの結果によって、FIX−(CTP)
2は、rhFIXと比較してその比凝固活性において5.7倍の低下を示すことが示される(表2)。さらに、aPTTの結果を、発色活性インビトロアッセイと一緒にして、FIX−(CTP)
2ハーベストは、FIX−CTPハーベストに対して改善された酵素活性を有する(表2)。FIX−CTPタンパク質の改善された活性は、発現系の最適化(すなわち、フリンとの同時トランスフェクション、およびビタミンK3培地濃度の最適化)後に得ることが可能で、これは、フリンでの超(Superr)トランスフェクション後に強化された(データ示さず)。
【0323】
【表2】
【0324】
薬物動態学的試験:rhFIX(American Diagnostic)およびFIX−CTPハーベストを、単回の静脈内注射で、Sprague−Dawleyラット(1物質あたり6匹のラット)に対して、体重1Kgあたり75μgの用量で投与した(表3)。
【0325】
【表3】
【0326】
血液サンプルを、投与後0.083、0.5、1.5、4、8、24、48、および72時間後に、交互に3匹のラットから眼窩後部より採取した。血漿は、サンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。FIX濃度は、FIX ELISA特異的アッセイ(AssayPro)によって定量した。薬物動態学的プロファイルは、各々のタンパク質について算出し、各時点で3匹の動物の平均を示す(
図3)。終末半減期は、PKソリューション2.0ソフトウェアを用いて算出した。表4に、異なるサンプリング時点で観察されたFIX濃度をまとめる。
【0327】
【表4】
【0328】
PKプロファイルおよび終末半減期を、表5にまとめる。FIX−CTPハーベストは、rhFIXと比較して改善されたT
1/2β値を示す(それぞれ、2倍および5倍)。FIX投与コレクションでは、FIXの動物血漿濃度は、24時間では、定量限界未満(below limit of quantitation)(BLQ)であったので、追加のPKパラメーターは算出されなかった。
【0329】
【表5】
【0330】
本試験では、新規の治療力価を残しつつ、FIX半減期を延長させるための新規のアプローチが記載された。活性タンパク質に対してCTPペプチドを付加することは、タンパク質の活性を妨げるのに有害な影響を有する。従って、FIXのC末端にCTP配列を追加することによる活性な組み換えFIX−CTPの生成は予期されない。
【0331】
免疫親和性精製されたFIX−CTP−CTPのキャラクタライゼーション
FIX−CTP−CTP精製
活性の増大した高い等級の含量のタンパク質(PKプロファイルが臨床設定を模倣しており、かつ臨床設定に外挿され得る)を評価するために、FIX−CTP−CTPとは、そのカルボキシ末端で直列して2CTP単位で修飾されたFIXである。FIX−CTP−CTPは、FIXのN末端領域に存在するγカルボキシグルタミル(Gla)残基に対するマトリックス結合モノクローナル抗体(American Diagnostics カタログ番号3570MX)を用いて精製された。モノクローナル抗体を、Sepharose CL−4Bに結合した。FIX−CTP−CTPハーベストを、88μg/mlで、20mM Tris、150MmのNaClおよび10mMのEDTA(PH=7.4)に対して透析した。負荷速度は、0.5ml/分であった、20MmのTris−HCl、350mMのNaClおよび50mMのCaClを用いて溶出を行い、結合された画分は、5回リサイクルした。最後に、溶出画分をPBSで透析し、吸引して、濃縮した。
【0332】
FIX抗原レベルの決定:FIX−CTPハーベスト、FIX−(CTP)
2ハーベスト、およびFIX−(CTP)
2精製タンパク質レベルを、HumanFIX ELISAキット(Affinity Biologicals;カタログ番号FIX−AG RUO)を用いて決定した。算出したタンパク質濃度(μg/ml)は、2つの独立した試行の平均である(
図4,表6)。
【0333】
【表6】
【0334】
さらに、FIX−CTP−CTPを、Bradfordアッセイで定量した。算出された濃度は、202μg/mlであり、これは、ヒトFIXのELISAによって得られた濃度と同様である。
【0335】
SDS−PAGEブロット:FIX−CTP−CTPハーベスト、未結合の画分および精製されたタンパク質を、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いて12% Tris−グリシンゲルにロードした。SDS−PAGEクマーシー分析を、クマーシーブルー試薬(800ngのタンパク質)を用いてゲルを染色することによって行った。ウエスタンイムノブロットは、100ngのタンパク質、抗ヒトFIXポリクローナル抗体(Ab)、および抗ヒトγカルボキシル化モノクローナルAb(American Diagnosticsカタログ番号499およびカタログ番号3570)を用いて行った。免疫親和性精製手順は、FIX−CTP−CTP部分を有意に富化したが、純度は低下させた(
図5)。
【0336】
N末端配列決定:FIX−CTP−CTP精製タンパク質を、12%のTris−グリシンSDS−PAGEによって分離して、引き続きPVDF膜に電気的にブロットした。目的のバンドを、切り出して、精製Biobrene処理ガラスファイバーフィルター上に置いた。N末端配列分析は、140C HPLC微小勾配システム(micro−gradient system)を装備したパルス液体タンパク質シーケンサーを用いてエドマン分解によって行った。N末端の配列決定によって、FIX−CTP−CTPが、不完全および完全なプロペプチド切断タンパク質の混合物であることが明らかになった。不十分なプロ−ペプチド切断は、FIX凝固活性を低減させることが示された。フリン(Furin)での同時トランスフェクションによって、プロペプチド切断プロセスは改善され得る。
【0337】
FIX発色活性の決定:FIX−CTP−CTP精製されたタンパク質、対rhFIX(American Diagnostics)およびヒト正常血漿のプールのインビトロ力価の比較の評価を、市販の発色活性試験キット、BIOPHEN(Hyphen BioMed 221802)を用いて行った。トロンビン、リン脂質、およびカルシウムの存在下では、過剰量のFXIaは、FIXをFIXaに活性化する。FIXaは、トロンビン(過剰量で供給された)との酵素抱合体を形成し、リン脂質およびカルシウムは、第X因子を、アッセイ系の存在下で、FXaに活性化する。この活性は、限定要因である、FIXの量と直接相関する。この生成されたFXaは、FXa発色基質(pNA)上でのその非活性によって測定された。生成されたpNAの量は、FIXa活性と正比例した。rhFIX、ヒト血漿およびFIX−CTP−CTPを、連続希釈して、力価は、用量反応曲線と比較することによって評価した(
図6)。rhFIXの平均EC
50は、68.74ng/mlであったが、FIX−CTP−CTPの算出したEC
50は505ng/mlであった。FIX−CTP−CTPの酵素活性における約7倍の低下が、組み換えFIXに対して観察され、正常なヒトのプール血漿に対して16.5倍低下する。この低下した活性は、N末端分析によって特定された、N末端プロ−ペプチドの不十分な切断で説明可能である。
【0338】
FIX凝固活性(aPTT):活性化された部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、凝固カスケードの内因性の経路および共通の経路の完全性を示す基準となる。aPTTとは、内因性の経路活性化因子、リン脂質およびカルシウムの添加後に血漿が凝固するのにかかる時間(秒で測定)である。
【0339】
このアッセイは、FIX−CTP−CTPタンパク質が、rhFIXの添加により、FIX枯渇ヒト血漿の凝固活性を修復するための能力を定量した。300μlのFIX欠損ヒト血漿を、100μlのrhFIX、FIX−CTP−CTP(FIX−CTP−CTP(CTPは、C末端で直列))、または正常プールヒト血漿と混合し、これをさらに希釈した。37℃で60秒のインキュベーション後に、組織因子(TF)、CaCl
2、およびリン脂質を、この混合物に添加した。凝固時間の秒数を決定した。力価は、rhFIXまたはヒト血漿の参照調製物に対してFIX−CTP−CTPの用量反応曲線を比較することによって評価した。一単位のFIXとは、1mlのヒト正常血漿の活性に等しい量のFIXとして規定した。
【0340】
aPTTの結果、FIX−CTP−CTP凝固活性は、正常なプールのヒト血漿よりも1.4少ないだけであり、rhFIXと同様である。発色活性のインビトロアッセイと共に、aPTTの結果により、FIX−CTP−CTP精製によって、その活性が損なれなかったことが示唆される。
【0341】
FIX−CTP−CTPの薬物動態学的活性:精製FIX−CTP−CTP、rhFIX(American Diagnostic)およびハーベスト(FIX−CTP−CTPおよびFIX−CTPを含有)を、単回の静脈内注射で、体重1kgあたり100μgの用量で、Sprague−Dawleyラットに投与した(1物質あたり8匹のラット)(表7)。
【0342】
【表7】
【0343】
血液サンプルを、投与後0.083、0.5、2、4、7、10、24、48、および72時間で4匹のラットから交互に眼窩後から採取した。クエン酸処理した血漿(0.32%)をサンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。FIX濃度を、ヒトFIX ELISAキット(Affinity Biologicals)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルを、各々の時点で4匹の動物の平均として各時点で算出した(
図7)。終末半減期は、PKソリューション2.0ソフトウェア(Solutions 2.0 Software)を用いて算出した。表8は、観察されたFIX濃度を、異なるサンプリング時点でまとめる。
【0344】
【表8】
【0345】
PKパラメーターのまとめを、表9に示す。
【0346】
【表9】
【0347】
FIX−CTP−CTPハーベストは、FIX−CTPハーベストと比較して改善されたPKプロファイルを示した。さらに、精製されたFIX−CTP−CTPは、T
1/2β値の3倍の増大、およびAUCの4.5倍の増大をrhFIXと比較して示した。
【0348】
単一のCTPの融合物に対する直列のCTP分子に融合された分泌されたFIXの量の減少は、余分なCTPの追加に起因するのであって、ELISAによる検出の減少に起因するのではないようである。この理由は、Bradford精製のFIX−CTP−CTP算出濃度は、ELISA算出濃度と同様であったからである。
【0349】
FIX−CTP−CTP凝固活性は、プールされたヒト血漿と同様であった。しかし、そのインビトロ発色活性は、rhFIXまたはプールされたヒト血漿と比較した場合、有意に低かった。発色活性アッセイは、凝固アッセイと比較して極めて鋭敏なアッセイとして報告された。FIX−CTP−CTPの活性の低下のための理由は異なる場合がある。CTPの追加は、FXIaに対するFIXの親和性を減少する場合もあるし、または転写後修飾を低減させる場合もある(例えば、12−10GLA残基およびプロ−ペプチド切断)。N末端分析によって、FIX−CTP−CTPプロ−ペプチドのタンパク質分解性切断は、分泌の前に完全には完了しなかったことが明らかになった。この転写後修飾は、タンパク質の正常な酵素活性に重要であるので、フリン−PACEプラスミドとの同時トランスフェクションが好適であり、かつFIX−CTP−CTP活性を改善し得る。
【0350】
最終的に、ラットでのFIX−CTP−CTPの比較のPK試験によって、FIXのC末端に対する2つの直列のCTPの融合が、半減期が延長されたFIXを生じることが示された。
【0351】
FIX枯渇マウスモデル:インビボ活性を評価するために、FIXノックアウトマウスを得て、培養コロニーを確立する。10μgのいずれかの市販の組み換えhFIX(BeneFIX(登録商標))またはrFIX−(CTP)
2(FIX−CTP−CTP)を、麻酔されたFIXノックアウトマウス(22−28g)の尾静脈に注入する。注入されたタンパク質の量は、正常な血漿中の必要な濃度(5μg/ml)のFIXに等しい。血液サンプルを、クリップした尾から、ヘパリン処理した毛細管中に特定の時点で採取する。血漿サンプルを、FIXレベルについてELISAによって評価して、有効性をaPTT凝固アッセイによって測定する。
【0352】
FIXプロペプチド切断有効性の増大:CTPペプチドcDNAを、ヒトFIXcDNAの3´末端に融合した。対応するrFIXおよびフリン(Furin)発現性構築物を、Dg44細胞中に同時トランスフェクトした。また、ヒトrFIXのcDNAも、コントロールとしてFurinプラスミドとともに同時トランスフェクトした。高レベルのFIXの分泌によって、細胞中の限られた量のフリンプロテアーゼに起因する、前因子(pro−factor)と成熟のFIX因子との混合物の分泌が生じる。フリン(Furin)発現ベクターと前因子発現ベクターとの同時トランスフェクションによって、回収が増大され、完全にプロセシングされたFIXの培地中への分泌が生じる。
【0353】
FIX−(CTP)
2およびFurinの同時トランスフェクションの後、安定なクローンを生成して、ハーベストを、プロ−ペプチド切断評価のために収集する。100ngのタンパク質を、12%のTris−グリシンゲル上に、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGE分析を、ウエスタンイムノブロットによって、抗ヒトFIXポリクローナルAb(American Diagnostics)および抗プロ−ペプチドポリクローナル抗体を用いて行う。前に報告されたとおり、rhFIXは、55KDaで移動したが、2つのCTPに融合されたFIXは、75kDaで移動した。FIXタンパク質の両方の改変体は、適切な全長プロ−ペプチド切断を受けることが示される。
【0354】
適切なプロ−ペプチド切断が、FIX−(CTP)
2酵素活性を改善するか否かを決定するために、フリン(Furin)と同時トランスフェクトされたFIX−(CTP)
2ハーベストの発色および凝固活性の比較の評価を行う。FIX−(CTP)
2比活性における有意な改善が観察され、これはrhFIXと同様である。
【0355】
結論として、本明細書に記載される結果によって、FIX−CTP−CTPは、血友病B患者を治療するのに有効に用いられ得ることが示唆される。CTP構築物に融合されたFIXは、特定のインビトロの指標での欠点を克服する、改善されたインビボの薬理学的能力による利益を享受する。この提唱された治療は、注入の速度として前の治療を上回る利点があり、必要量は減少される。
【0356】
アルブミン融合した分子ストラテジーを用いて、FIX半減期を改善する場合、組み換えFIXが不活性になることに注意することが重要である。本発明の新規のアプローチは、改善された長時間作用型活性を示す新規の組み換えFIX融合タンパク質の設計および精製を提供する。わずかなサイズの改変では、注入されたFIXの薬物動態を改善しなかったので、FIXに融合されたCTPが、薬物動態学的パラメーターを容易にするという知見は予想されなかった。高度にグリコシル化されたペプチド−シアル酸残基の存在によって、タンパク質は安定化され、タンパク質は、FIX機能の重要な決定因子を廃することなく血管受容体との相互作用から保護された。
【0357】
FIX−CTPは、血友病B患者においてrFIXに対して同様の治療有効性を有し、必要な投与頻度は少ない。FIX−CTPの単回注射は、出血性のエピソードを制御し、血友病B患者における外科的介入の間に必要な注射の回数を減らすのに十分である。
【0358】
CTP技術を、長時間作用型FIXの開発のために利用した。特に、組み換えrFIX分子の半減期の延長は、FIXに対する少なくとも1つのCTPの融合によって行われた。組み換えFIX−CTPは、哺乳動物細胞で発現され、インビトロおよびインビボでキャラクタライゼーションされた。rFIX−CTPのインビトロ活性は、rFIXに匹敵したことが示された。ラットにおける薬物動態学的試験および有効性試験によって、rFIX−CTPの改善された特性が示された。この試験の結果、野性型酵素に対して同様の止血特性を有している半減期が延長されたrFIX分子を開発することが実現可能であることが示される。
【0359】
実施例2
精製されたFIX−CTP
3対FIX−CTP
4およびFIX−CTP
5の比較の評価
2.1 試験の目的
【0360】
部分精製プロセス後のFIX−CTP
4およびFIX−CTP
5、対FIX−CTP
3の薬物動態学的パラメーターの比較の評価
【0361】
2.2 FIX−CTP
4およびFIX−CTP
5ハーベストの生成
【0362】
4〜5つの直列のCTP配列に対してC末端で融合されたFIX cDNA(OriGene RC219065)は、10ng/LのビタミンK3(Sigma,Mennadion)の存在下で、Excellgene発現系を用いて、Dg44細胞中で発現された。ハーベストを収集し(300ml)、濾過して、凍結した。
【0363】
2.3 FIX−CTP
3ハーベストの生成
【0364】
FIX−CTP
3は、社内で、CHO細胞中で、pCI−DHFRベクター、クローン196、BR−9を用いて、25ng/LのビタミンK3(Sigma)の存在下で発現した。ハーベストを収集して、濾過した。
【0365】
全てのFIX−CTPサンプル(3、4および5つのCTP)を、材料がないせいで、Jacalinカラムのみで精製した。
【0366】
2.4 FIX抗原レベルの決定
【0367】
FIX抗原レベルは、ヒトFIX ELISAキット(Affinity Biologicals;カタログ番号FIX−AG RUO)を用いて決定した。算出したタンパク質濃度は、4つの独立した試行の平均である。FIX−CTP
3濃度は、2つの追加の形態と比較してわずかに高かった(表10)。
【0368】
【表10】
【0369】
2.5FIX−CTP クマーシー染色およびイムノブロット
【0370】
FIX−CTP
3、FIX−CTP
4、およびFIX−CTP
5ハーベストを、12%のTris−グリシンゲルに、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGE分析を、ウエスタンイムノブロットによって、抗CTPポリクローナルAb(Adar Biotech Production)または抗Gla Ab(American Diagnostica)を用いて行った。
【0371】
前に報告のとおり、3つのCTPに融合されたFIXは、80kDaで移動したが、4または5つのCTPに融合されたFIXは、それぞれ、85KDaまたは90KDaで移動した。予想どおり、ExcellgeneからのFIX−CTP
4およびFIX−CTP
5ハーベストは、Prolorで産生されたFIX−CTP
3ハーベストと比較して極めて低レベルのγカルボキシル化を示した(
図8)。
【0372】
Jacalinカラムを利用する精製プロセス(グリコシル化タンパク質の免疫親和性精製後)、FIX−CTP
3、FIX−CTP
4、およびFIX−CTP
5を12%のTris−グリシンゲルに、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGEを、クマーシーブルー色素によって、サンプル検出のために染色した。全ての改変体によって、かなりきれいなバンドプロファイルが示され(
図9)、これは純度の改善を示唆していた。
【0373】
2.6 FIX発色活性の決定
【0374】
完全に精製された(HAカラム)FIX−CTP
3、FIX−CTP
4、およびFIX−CTP
5、対ヒトプール正常血漿のインビトロ力価の比較の評価を、市販の発色活性試験キット、BIOPHEN(Hyphen BioMed 221802)を用いて行った。全てのサンプルを連続希釈して、その力価を、正常ヒト血漿の参照調製物に対して用量反応曲線を比較することによって評価した。血漿と比較したFIX−CTP
4およびFIX−CTP
5の発色活性の低下(
図10)は、例えば、不適切なγカルボキシル化およびプロ−ペプチド切断、あるいはCTPカセットの付加に起因する、FIXタンパク質の不適切な転写後修飾の結果であり得る。FIX−CTP
4およびFIX−CTP
5活性における変動(表11)は、抗原部位のCTPマスキングに起因する、FIX ELISAの不適切な定量能力によって生じ得る。
【0375】
【表11】
【0376】
2.7薬物動態学的試験
【0377】
Jacalin精製のFIX−CTP
3、FIX−CTP
4、およびFIX−CTP
5(それぞれ、群A、BおよびC)を、単回の静脈内注射で、Sprague−Dawleyラット(1群あたり6匹のラット)体重1kgあたり250μgの用量で投与した。血液サンプルは、投与の0.083、0.5、2、5,8、24、48、72および96時間後に、3匹のラットから交互に眼窩後部より採取した(表12)。クエン酸処理した血漿(0.38%)を、サンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。
【0378】
【表12】
【0379】
血漿サンプル中のFIX濃度は、ヒトFIX ELISAキット(Affinity Biologicals)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルを算出し、これは各時点での3匹の動物の平均である。終末半減期は、PK Solutions 2.0 Softwareを用いて算出した。下の表13は、異なるサンプリング時点で算出したFIX濃度をまとめる。
【0380】
【表13】
【0381】
PKプロファイルおよびPKパラメーターのまとめを、下の表14および
図11に示す。全ての時点での完全なPK分析プロファイルによって、FIXに対する4または5つのCTPカセットの付加は、FIX−CTP
3と比較してその半減期を増大しなかったことが示唆された。FIX−CTP
5投与後のAUCは、FIX−CTP
3に対して1.4倍〜1.6倍まで増大し、これは統計学的に有意ではなかった。
【0382】
【表14】
【0383】
投与96時間後のサンプルは、アッセイの定量の下限である、極めて低いFIX濃度を有することが示され、終末半減期を再計算して、より正確かつ科学的に適切な計算を得た(表15)。この計算によれば、FIX−CTP
3、FIX−CTP
4、およびFIX−CTP
5の半減期の間ではさらに小さい相違が得られた。
【0384】
【表15】
【0385】
2.8 結論:
【0386】
本試験では、FIX−CTP
3、FIX−CTP
4、およびFIX−CTP
5の薬物動態学的パラメーターおよび潜在的な凝固活性を評価した。FIXに対する4および5個のCTPの融合では、FIX−CTP
3と比較して優れた半減期も改善された半減期の延長も得られず、発色活性の低下が観察された。下の表16は、種々のFIX−CTP融合改変体(1〜5個のCTP)についての半減期の改善パーセントをまとめる。FIXに対するCTPの融合は、その薬物動態学的挙動を改善したが、予期せぬことに、この改善には限界があった。驚くべきことに、FIXに対する3、4または5個のCTPの直列の融合後、同様の半減期の値が算出された。
【0387】
【表16】
【0388】
これらのデータによって、FIXに対する3CTPの融合は、タンパク質の半減期に最大の改善を生じることが示唆され、FIX−CTP
3は、さらなる臨床開発のための半減期、構造および潜在的な凝固活性に関して最適の改変体であることが確認される。
【0389】
実施例3
FIX−/−血友病マウスモデルのFIX−CTP
3治療
上記のとおり、FIX−CTP、FIX−CTP
2およびFIX−CTP
3ハーベストのPKプロファイルならびにrhFIXに対する凝固活性を試験する試験を行った。FIX−CTP
3は、改善されたPKプロファイルを示したが、その凝固活性は、FIX−CTP
1およびFIX−CTP
2ハーベストまたはrhFIXに対して維持していた。この結果をさらに評価するために、FIX−CTP
3 γ−カルボキシグルタメートタンパク質を精製した。FIX−CTP
3は、単回のIV投与後、正常なラットにおいて、rhFIXと比較して、半減期の3倍の増大と、4.5倍高いAUCを示す。FIX−CTP
3は、ほとんどが、N末端プロペプチドの不十分な切断および適切な転写後修飾(PTM)、例えば、適切なγカルボキシル化におそらく起因して、インビトロの発色の活性と凝固活性の低下を示した。
【0390】
現行の試験では、3つの直列のCTPに融合されたヒト組み換えFIXの薬物動態学的特性および薬理動態学的特性を、FIX欠損マウスで試験した。
【0391】
試験の目的:
【0392】
同様の比活性および用量(PDに対する同様な比活性およびPKについて同様のFIX定数)での、FIX欠損マウスにおける、FIX−(CTP)
3の単回のIV投与後のrFIX−(CTP)
3対市販のrhFIX(BeneFIX(登録商標))の薬物動態学的パラメーターおよび薬力学的パラメーターを決定すること。
【0393】
FIX−CTP
3ハーベストの生成:
【0394】
3つの直列のCTP配列に対してC末端で融合されたFIXのcDNA(OriGene RC219065−Thr 148)を、25ng/mlのビタミンK3(Sigma,Mennadion)の存在下で、Excellgene発現系を用いてDg44細胞中で発現した。5リットルの細胞懸濁液を含む5つの別々のバッチを培養して(総計25リットル)、60〜70%への生存度低下後に回収した。そのハーベストを濾過して、−70℃で凍結した。
【0395】
ハーベストFIX抗原レベルの決定:
【0396】
ハーベストFIX抗原レベルは、ヒトFIX ELISAキット(Affinity Biologicals;カタログ番号FIX−AG RUO)を用いて決定した。抗原レベルは、各々のバッチについて算出した。FIX濃度は、異なるバッチを通じて維持された(表17)。
【0397】
【表17】
【0398】
FIX−CTP
3精製プロセス:
【0399】
短い精製試験の後、以下の3つのカラムを用いる精製プロセスを行った:DEAE Sepharose,Heparin SepharoseおよびHA Bio Rad Ceramic Hydroxyapatite type 1(40 μm)、FIX−CTP
3。γ−カルボキシル化富化タンパク質を精製した。要するに:5リットルの清澄化されたハーベストを、4℃で4日間にわたって解凍した。各々の精製バッチについて、清澄化したハーベスト(2リットル)を4倍濃縮して、20mMのTris−HCl(pH8.2)に対して、10kDaの分子量カットオフサイズを有する使い捨て中空ファイバーカートリッジを用いて、透析した。このプロセス(UFDF1)を2回行って、1リットルのUFDF1を、DEAEセファロースカラムにロードして、第IX因子を20mMのTris−HCl、200mMのNaCl、10mMのCaCl2(pH8.2)で溶出した。その生成物を20mMのTris−HCl、10mMのCaCl2(pH7.5)を用いて1:1に希釈し、そのpHを7.5に調節した後に、Heparin Sepharoseカラムにロードした。その溶出は、20mMのTris−HCl、300mMのNaCl、および10mMのCaCl2(pH7.5)で行った。その溶出された生成物を濃縮して、10mMのリン酸塩(pH6.8)に対して、Pellicon XLカセット 10KDaカットフ膜(UFDF2)を用いて透析した。その生成物をHAカラムにロードして、第IX因子の活性化された画分を、150mMのリン酸塩(pH6.8)で溶出した。その精製生成物を2mg/mlの標的濃度まで濃縮して、TBS(pH7.45)に対して透析し、アリコートに分けて、−70℃で保管した。
【0400】
この精製プロセスを、総容積(25リットル)を精製するために、毎週で5回繰り返した。この精製プロセスは、HA番号6−10と名付けた。各々の精製生成物を、別々に評価した(App番号1−5)。精製プロセスの終わりに、異なるバッチをプールして、4mg/mlの標的濃度までさらに濃縮した。
【0401】
FIX−CTP
3分析特性:
【0402】
FIX抗原レベルの決定
【0403】
FIX−CTP
3γ−カルボキシル化富化タンパク質抗原レベルを、ヒトFIX ELISAキットを用いて決定した(Affinity Biologicals;カタログ番号FIX−AG RUO)。算出したタンパク質濃度は、2つの独立した試行の平均である(表18)。
【0404】
【表18】
【0405】
SDS−PAGEブロット:
【0406】
FIX−CTP
3γ−カルボキシル化富化タンパク質、rhFIXおよびrFIXa(活性化FIX)を、12%のTris−グリシンゲルに対して、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGEクマーシー分析は、クマーシーブルー試薬(800ngのタンパク質)を用いてゲルを染色することによって行った(
図12)。ウエスタンイムノブロットは、100ngのタンパク質と、抗ヒトFIXポリクローナルAb(
図12B)、抗ヒトγカルボキシル化モノクローナル抗体(American Diagnosticsカタログ番号499,3570)(
図12C)、抗FIXプロ−ペプチドポリクローナルAb(
図12D)、および抗CTPポリクローナルAb(
図12E)とを用いて行った。前に報告されたとおり、FIX−CTP
3は、75KDaで移動した。
【0407】
精製手順は、FIX−CTP
3部分を有意に富化したが、一方で不純物は減らした。この精製プロセスの収率は、極めて低く、抗−Glaイムノブロットで示されたように、γ−カルボキシル化FIX−CTP
3画分のみを収集するための要件に起因してほぼ2〜3%(データ示さず)におよんだ(
図12B)。クマーシーおよびFIXイムノブロットに基づいて、FIX−CTP
3部分は、ほぼ60〜70%しかなく、追加のより低分子のバンド(おそらくより低いグリコシル化型を有する)も検出された。
【0408】
FIX−CTP
3凝固活性:
【0409】
FIX−CTP3発色活性:
【0410】
FIX−CTP
3ハーベストおよびFIX−CTP
3γ−カルボキシル化富化タンパク質、対ヒトプール正常血漿のインビトロ力価の比較の評価は、市販の発色活性試験キット、BIOPHEN(Hyphen BioMed 221802)を用いて行った。FIX−CTP
3ハーベストおよびタンパク質を連続希釈して、その力価は、用量反応曲線を、正常ヒト血漿からなる参照調製物と比較することによって評価した。前に示されるとおり、FIX−CTP
3ハーベストは、ヒトプール血漿よりも50倍活性が低かった(表19,
図13)。FIX−CTP
3精製後、発色活性は、有意に改善されて、ヒトプール血漿よりも4.72倍活性が低いだけであった(表19,
図13)。ハーベストの低下した発色活性は、FIXタンパク質改変体の不適切な転写後修飾、例えば、不十分なγカルボキシル化およびプロ−ペプチド切断の結果であり得る。FIX−CTP
3のγ−カルボキシル化画分の精製および富化後、活性は改善され、これは、FIX活性に対するγ−カルボキシル化の重要な寄与を示す。
【0411】
【表19】
【0412】
一段階
凝固アッセイ(aPTT):
【0413】
活性化された部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は、凝固カスケードの内因性かつ共通の経路の完全性を示す基準となる。aPTTとは、内因性の経路活性化因子、リン脂質およびカルシウムの添加後に血漿が凝固するのにかかる時間(秒)である。このアッセイの原理は、FIX−CTP
3が、rhFIXの添加により、FIX枯渇ヒト血漿の凝固活性を修復するための能力を定量することであった。200μlのFIX欠損ヒト血漿を、25μg/mlのFIX−CTP
3と混合し、さらにTBS中で希釈した。37℃で60秒のインキュベーション後、50μlのPTT活性化因子(ActinFS)および50μlのカルシウム25mMを、この混合物に添加し、凝固時間の秒数を、Sysmex(登録商標)CA 1500 Coagulator(確認されたaPTTアッセイを用いるSheba hospital,National Coagulation Centerによって行った)を用いて決定した。その力価は、正常なヒトプール血漿の参照調製物の用量反応曲線に対するFIX−CTP
3の比較によって評価した。結果は、<1〜110%のFIXレベルをカバーしている標準曲線から外挿した活性のパーセントで表現する。FIX−CTP
3は、身体中のFIXの正常値である5μg/mlでの活性は、6.5%であることが示されたので、正常ヒトプール血漿に対してその凝固活性の15〜20倍の低下を示した(表20)。
【0414】
【表20】
【0415】
また、FIX−CTP
3は、BeneFIX(登録商標)と比較して凝固時間の延長を示した(表21および
図14)。
【0416】
【表21】
【0417】
追加の凝固アッセイを、独立して、FIX欠損マウスにおいて、Paul Monahan博士によって、ノースカロライナ大学(University of North Carolina)で行い、その後にPK−PD試験を開始した。aPTTの結果、FIX−CTP
3凝固活性は、適切な凝固活性に必要な、より長期間(秒で測定)およびより高濃度で示されるとおり、正常なプールされたヒト血漿よりも40倍小さいことが示唆された(表22)。
【0418】
【表22】
【0419】
FIX−CTP
3およびBeneFIX(登録商標)についてELISAによって算出されたFIX抗原レベルに基づいた比活性(u/ml)は、それぞれ、4.46および198.9であった。
【0420】
発色アッセイ対aPTTアッセイにおいて示されるとおり、算出されたFIX−CTP
3活性の不完全性は、aPTTアッセイの優れた感度およびインビボの関連性によって説明可能である。発色活性アッセイでは、過剰量の試薬および酵素が存在し、これは、強度の劣るFIX形態を活性化し得る。FIX−CTP比活性値の相違は、異なる試薬および自動装置の使用によって説明できる。ノースカロライナ大学で算出された活性の値を、PK−PD試験計画のために用いた。
【0421】
FIXaタンパク質検出:
精製プロセス後に、FIX活性化(FIXa)は生じなかったことを確認するために、FIXa検出アッセイを、FIXa Biophen Chromogenic Assay(カタログ番号Ref.221812)を用いて行った。このアッセイは、前に記載のとおり、発色活性カスケードを用いて特定のサンプルに存在するFIXaの量を測定する。FIX−CTP
3およびrhFIXを希釈して、FIXaレベルを評価した。FIX−CTP
3は、精製しても貯蔵しても活性化されなかった(表23)。
【0422】
【表23】
【0423】
FIX−CTP
3 PK−PD試験:FIX−CTP
3およびrhFIX(BeneFIX(登録商標))を、単回の静脈内注射で、C57BIのFIX欠損マウスに対して、体重1kgあたり625μg(体重1kgあたり100IUのFIXを含む)の用量で投与した。血液サンプルは、投与0.25、4、24、48、72、および96時間後に交互に3匹のマウスから眼窩後部より採取した。クエン酸処理した血漿(0.32%)を、サンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。hFIX抗原レベルを評価して、詳細なPK分析を行った。FIX−CTP
3がBeneFIX(登録商標)と比較してFIX欠損動物の凝固活性を増大させる能力を評価するために、FIX−/−処理したマウスから収集した、クエン酸処理した血漿サンプルにおけるFIX活性を、自動化FIX活性アッセイを用いて算出した(表24)。
【0424】
【表24】
【0425】
FIX−/−マウスにおけるFIX−CTP3薬物動態学的プロファイル
【0426】
FIX濃度は、ヒトFIXのELISAキットs(Affinity Biologicals;カタログ番号FIX−AG RUO)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルは、各々のタンパク質について算出し、これは、各時点での3匹の動物の平均である。下の表25および
図15は、コホート1&3について異なるサンプリング時点で算出されたFIX濃度をまとめる。PKプロファイルおよびPKパラメーターのまとめは、下に示す(表26&27)。また、PK分析を、コホート番号2について行い、暴露を確認した(データ示さず)。
【0427】
【表25】
【0428】
2区画のモジュールを用いて(WinLinソフトウェア)、AUC0−inf、T
終末およびクリアランス(CL)を決定した。PKパラメーターは、下の表26に記載する
【0429】
【表26】
【0430】
rhFIXに対する3つのCTP「カセット」の付加は、FIX半減期をインビボで少なくとも2.5倍まで延長した。インビボのFIX−CTP
3投与後のAUCは、rhFIXに対して2倍まで増大した。FIX−CTP
3注射マウスは、BeneFIX(登録商標)注射マウスと比較して改善されたPKプロファイルを示した。
【0431】
FIX欠損マウスにおけるFIX−CTP3薬力学的プロファイル:
【0432】
PKサンプリングと並行して、BeneFIX(登録商標)またはFIX−CTP
3のいずれかを投与されたFIX欠損動物(クエン酸処理した血漿サンプル)を、aPTTアッセイによってそれらの凝固活性について評価して、これを活性%に変換した。各々の収集時点での活性%を、現在の凝固時間/正常なプールのマウス血漿の凝固時間×100として算出した。表27は、BeneFIX(登録商標)またはFIX−CTP
3のいずれかの投与後の活性値をまとめる。
【0433】
FIX−CTP
3投与後、有意な凝固活性は、投与1時間後に検出し、投与後4時間で96%活性に到達していたが、BeneFIX(登録商標)の最大の活性値は、40%であった(表27,
図16)。FIX−CTP
3凝固活性は、さらに長期間維持され、活性の延長を示す。BeneFIX(登録商標)治療マウスの凝固活性は、36時間より後の時点では検出不能であったが、FIX−CTP
3治療したマウスは、投与後72時間で測定可能な活性を保持し続けていた(表27,
図16)。凝固%の薬物動態学的プロファイルの分析によって、FIX−CTP
3凝固活性は、有意にさらに長期間維持され、その半減期はBenefix(登録商標)よりもほぼ2倍高いことが示唆される(表28)。
【0434】
【表27】
【0435】
【表28】
【0436】
9.3FIX欠損マウスの出血チャレンジ
【0437】
FIX欠損マウスに、100IU/kgのBeneFIX(登録商標)またはrFIX−CTP
3の単回静脈内注射を与えた。尾静脈を、投与後48時間でわずかにクリップして、尾静脈出血時間(TVBT)および出血強度(ヘモグロビンOD)を評価した。第二の出血チャレンジを、ホメオスターシス到達15分後に行い、同じパラメーターを測定した。最初の出血チャレンジ後、FIX−CTP
3投与動物の出血は、ヘモグロビンOD値で示されたとおりBeneFIX(登録商標)出血よりも有意に強度が低かった(
図17)。
【0438】
血友病性マウスにおける最初の出血チャレンジの間、出血時間は、治療有効性と必ずしも相関しないことが以前に報告されたので、さらなる出血後に恒常性を評価することが推奨される。一旦、最初の出血が自然にまたは手技的に停止されれば、第二の出血性チャレンジを初回の15分後に行い、その時間と出血強度を再測定した。第二の出血性エピソードの間、FIX−CTP
3を投与された動物は、出血の時間および強度を低減させ、FIX−CTP
3は後の時点では強力であったことが示されている(
図18)。
【0439】
最終的に、動物を第二の出血チャレンジの後、12時間の間さらに観察し、全ての再発性の出血事象を記録した。FIX−CTP
3を投与された動物は、出血事象が再発することなく次の12時間の間血液の恒常性を維持できた。対照的に、50%のBeneFIX(登録商標)治療マウスには、尾からの自発的な出血のエピソードがあった(表29)。
【0440】
【表29】
【0441】
直列の3つのCTP「カセット」に対して融合されたFIXの単一の分子から構成された融合タンパク質である組み換えFIX−CTP
3は、血友病Bを有する患者を治療するために用いられた現在利用可能なFIX生成物の短い半減期に取り組むために開発された。本発明者らは、rFIX−CTP
3の排泄半減期がラットにおいて(以前に報告したとおり)およびFIX欠損マウスにおいて、rFIXよりも一貫して2.5倍〜4倍長いことを実証した。
【0442】
理論で拘束されるものではないが、融合タンパク質は、FIXのクリアランスを低下し、FIXをプロテアーゼ活性、マスキングによる分解から保護し、肝受容体に対するFIXの親和性を低下する。CTPドメインのこれらの特徴をまとめると、FIXの半減期は延長される。
【0443】
rFIX−CTP
3の薬物動態学的分析に加えて、本発明者らは、FIX欠損マウスにおけるFIX−CTP
3の薬力学的特性を検査した。rFIX−CTP
3およびrFIXを、FIX欠損マウスにおける凝固欠損レベルを補償するために匹敵する用量(単位)で投与した。しかしFIX欠損マウスにおけるrFIX−CTP
3の効果は、投与後少なくとも76時間まで有意に延長され、より高い活性のピークに達した。FIX−CTP
3凝固活性は、BeneFIX(登録商標)と比較して1時間遅れて開始した。FIX活性化が必要とされる場合がある。この理由は、3つ直列のCTPの付加は、理論的には、活性化部位をマスクして、カスケードの開始を遅らせるからである。FIX−CTP
3投与の後、100%のピーク活性が観察されたが、BeneFIX(登録商標)活性は40%でしかなかった。優れた初期活性は極めて重要なパラメーターであり、3つのCTPの付加には、回収を改善する能力があることを示す。
【0444】
血友病Bの患者への予防的なFIX補充療法は、正常な凝固活性の1〜2%という血漿レベルを維持することを目的とする。尾静脈出血アッセイは、鋭敏なインビボ試験であり、ヒトの出血の恒常性モデルを模倣している、低い活性値で出血恒常性を維持する能力を測定する。投与48時間後の尾静脈出血チャレンジに対する応答では、rFIX−CTP
3を投与した動物は、血液恒常性を維持し、出血性のエピソードは短くかつ重篤度は低く、このことは、持続した凝固活性を示す。
【0445】
FIXは、抱合体タンパク質であって、過度の翻訳後修飾を受ける、多数の機能的なドメインを含む。FIX活性について必須の翻訳後修飾の1つは、ビタミンK依存性γ−グルタミルカルボキシラーゼによるGlaドメイン中の最初の12個のグルタミン酸のγ−カルボキシル化である。この修飾は、リン脂質膜に対するFIXの結合を容易にし、従って、その機能に重要である。γ−カルボキシル化されていないFIXは、機能的ではなく、従って、γ−カルボキシル化は、律速段階である。
【0446】
このPK−PD試験は、一過性にトランスフェクトされた細胞を用いて行った。翻訳後修飾の過剰の分析評価は、安定な最適化クローンから産生され、かつ分泌された安定なFIX−CTP
3タンパク質で行う。
【0447】
示されたデータに基づけば、FIX−CTP
3凝固因子は、FIX補充療法の慣用的な予防の用量を投与されている患者での注射の頻度を低減させる能力を有する。rFIX−CTP
3によって、各因子の投与後の出血からの長期的な保護を付与するか、出血性のエピソードを治療するのに必要な因子の全体的単位を減少するか、および/または外科手術の間十分な恒常性を少ない注射で維持することが可能になる。
【0448】
実施例4
凝固因子FVIIの生成および利用
活性化された第VII(FVIIa)凝固因子の時間作用性形態は、血友病Aおよび血友病Bの患者の治療に有用である。FVIIa−CTP
3組み換えタンパク質は、注入の頻度を減少することによって、および薬物負荷を低減させることによってさえ、血友病患者の治療を改善するのに臨床的能力を有し、これによって患者のクオリティー・オブ・ライフを有意に改善し得、自発性の出血性エピソードを回避し、かつ関節および他の臓器に対する損傷の蓄積を回避し得る予防的な治療アプローチを可能にする。
【0449】
ヒトCTPに対するFVIIの融合に基づく、半減期の延長がある組み換えFVIIa−CTP分子の生成が本明細書で記載されている。組み換えFVIIa−CTPを、哺乳動物細胞で発現して、インビトロおよびインビボでキャラクタライゼーションした。rFVII−CTP活性は、rFVIIに匹敵することが示された。ラットでの薬物動態学的試験および有効性の試験では、rFVII−CTPの改善された特性が示された。本試験の結果、野性型酵素と極めて類似の止血性特性を有する半減期が延長されたrFVIIa分子を開発することが実現可能であることが示された。
【0450】
組み換えFVII分子のクローニングおよび発現:いくつかの第VII因子クローンを、本発明者らの真核生物発現ベクター(pCI−dhfrr)中で構築した(
図19)。Human MGCが確証したFLのcDNAクローン(IRCM)(homo sapiensの第VII凝固因子の配列を含む)は、「Open Biosystems」(OB−MHS4426)に注文した。以下のプライマーを、Sigma−Genosysによって、プライマー67:5´CTCGAGGACATGGTCTCCCAGGCCC3´(第VII因子DNAの5´末端およびXhoIの制限部位を含む)(配列番号5);プライマー68
R:5´TCTAGAATAGGTATTTTTCCACATG3´(XbaIの制限部位を含む)(配列番号6);プライマー69:5´TCTAGAAAAAAGAAATGCCAGC3´(XbaIの制限部位を含む)(配列番号7);およびプライマー70
R:5´GCGGCCGCATCCTCAGGGAAATGGGGCTCGCA3´(第VII因子DNAの3´末端およびNotIの制限部位を含む)(配列番号8)の配列で合成した。
【0451】
クローニングは、2セットのPCR反応で行った。最初の反応は、テンプレートとして第VII因子配列(OB−MHS4426)を有するcDNAプラスミドを用いて、プライマー67およびプライマー68
Rで行った、PCR増幅の結果、約534bpの生成物を得て、単離し、TAクローニングベクターに連結した(Invitrogen,カタログ番号:K2000−01)。第VII因子配列のアミノ末端を含むXhoI−XbaIフラグメントを単離した。第二の反応を、プライマー69およびプライマー70
Rを用いて行い、さらに、第VII因子配列(OB−MHS4426)を有するcDNAプラスミドをテンプレートとして用いたPCR増幅の結果として、約813bpの生成物を得て、TAクローニングベクター中に連結した(Invitrogen,カタログ番号:K2000−01)。XbaI−NotIフラグメント(第VII因子配列のカルボキシ末端を含む)を単離した。2つのフラグメントを、本発明者らの真核生物発現ベクターpCI−dhfr(三重連結)に挿入して、501−0−p136−1クローンを生成した。
【0452】
プラスミド501−p136−1(pCI−dhfrベクター中の第VII因子)を、制限酵素XhoIおよびKpnIで消化した。約1186bpのフラグメントを単離した。部分的な第VII因子クローン(1180bp〜1322bp)、続いてCTP配列、末端配列およびNotI配列(GeneArt(0721543)によって合成された)を、制限酵素KpnIおよびNotIで消化した。約253bpのフラグメントを、単離した。2つのフラグメントを、本発明者らの真核生物発現ベクターpCI−dhfr(三重連結)中に挿入して、501−1−p137−2クローンを生成した。pCI−dhfr−701−2−p24−2を、制限酵素XhoIおよびApaIで消化して、大きいフラグメント(ベクター)を単離した。
【0453】
pCI−dhfr−501−2−p137−2(第VII因子−ctp x1)を、制限酵素XhoIおよびApaIで消化し、約1200bpの挿入物を単離した。ベクターおよび挿入物を連結して、501−2−p139−2を得た。Dg44細胞を100mmの組織培養ディッシュにプレートして、50〜60%コンフルエンスまで増殖した。総計2μgのDNAを、タンパク質を含まない培地(Invitrogen CD Dg44)中でFuGene試薬(Roche)を用いる1つの100mmのプレートのトランスフェクションのために用いた。その培地をトランスフェクションの48時間後に取り出して、ヌクレオシドなしでタンパク質を含まない培地(Invitrogen CD Dg44)と入れ替えた。14日後、トランスフェクトされた細胞集団を、T25組織培養フラスコに移し、その選択を10〜14日間、細胞が適切なクローンとして十分に増殖を始めるまで続けた。高度に発現性のクローンを選択して、約2×10
7個の細胞を用いて、5ng/mlのビタミンK3(メナジオン重亜硫酸ナトリウム;Sigma)を補充した1700cm
2のローラーボトル(Corning,Corning NY)中で300mlの増殖培地に接種した。この生成培地(ハーベスト)を、細胞生存度が約70%まで急速に低下した後に収集した。生成物培地を、最初に清澄化し、次いで約20倍に濃縮し、流動濾過カセット(10KDa MWCO;Millipore Corp,Billerica,MA)を用いてPBSに透析した。
【0454】
FVII抗原レベルの決定
【0455】
CTPペプチドをコードしているcDNAを、ヒトFVIIをコードしているcDNAの3´末端に融合した。対応するrFVII構築物を、Dg44細胞中にトランスフェクトした。コントロールとして、ヒトrFVIIのcDNAを利用した。生成培地(ハーベスト)を収集し、濃縮して、分泌された組み換えFVIIをさらに、評価した。rFVII、rFVII−CTPおよびrFVII−CTP−CTP抗原レベルを、AssayMax HumanFVII ELISAキット(AssayPro)によって決定した(
図20A)。天然のrFVIIと比較したrFVII−CTPおよびrFVII−(CTP)
2の分泌レベルに有意な相違は認められなかった。
【0456】
SDS−PAGEブロット
【0457】
SDS−PAGE分析は、50ngのいずれかのハーベスト、精製されたまたは活性化されたrFVIIタンパク質をロードすることによって行った。サンプルを、12%のTris−グリシンゲル上に、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGE分析は、ウエスタンイムノブロットを、抗ヒトFVIIモノクローナル抗体(Ab)(R&D systems)または抗CTPポリクローナル抗体(ウサギで生成した)を用いて行うことによって行った。
【0458】
rFVII抗原のレベルは、抗FVII AbでイムノブロットしたSDS−PAGEにおける検出されたタンパク質レベルと相関した。rFVII−CTPは、単結合としてとして移動したが、FVIIコントロールの対応する分子量は、約52KDaであった(データ示さず)。両方のタンパク質とも、イムノブロットでFVIIに特異的な抗体と反応した。また、rFVII−CTPは、CTPに特異的な抗体と反応した。rFVIIは、微量の活性化タンパク質を有するそのチモーゲン型で分泌された。
【0459】
FVII発色活性:
【0460】
rFVII、rFVII−CTPおよびrFVII−(CTP)
2ハーベスト活性は、市販の発色試験キット(AssaySense HumanFVII 発色活性アッセイキット(AssayPro)を用いて決定した。rFVII−CTPの機能およびそれがさらに活性化される能力(FVIIa)をキャラクタライゼーションするために、濃縮されたrFVII−CTP(ハーベスト)を、FXa特異的基質の存在下で定量されたシグナルを放出する、TF/FVIIaが第X因子を第Xa因子に活性化する能力を測定する市販の発色試験キットに入れた(AssayPro)。rFVIIタンパク質のC末端でのCTPペプチドの添加は、FVIIセリンプロテアーゼ活性を阻害しなかった(
図20B,20C)。
【0461】
FVII凝固活性:
【0462】
プロトロンビン時間(PT)は、凝固の外因性経路を測定する。PTとは、外因性経路の活性化因子、リン脂質およびカルシウムの添加後に血漿が凝固するのにかかる時間(秒で測定)である。これを用いて、特にワルファリン投与、肝障害、およびビタミンK状態の測定において、血液の凝固傾向を決定する。プロトロンビン時間の参照範囲は通常、約12〜15秒である。特に、このアッセイは、FVII−CTPおよびFVII−(CTP)
2ハーベストが、rhFVIIの添加によってFVII−枯渇ヒト血漿の凝固活性を修復する能力を定量した。300μlのFVII欠乏症ヒト血漿を、100μlのFVII、FVII−CTPおよびFVII−(CTP)
2ハーベストと、特定の濃度で、または正常プールヒト血漿と混合し、さらに希釈した。37℃で60秒のインキュベーション後、組織因子(TF)、CaCl
2、およびリン脂質をこの混合物に添加した。凝固時間の秒数を決定した。力価は、FVII−CTPおよびFVII−(CTP)
2ハーベストの用量反応曲線を、rhFVIIまたはヒトプール血漿からなる参照調製物に対して比較することによって評価した。一単位の活性なFVIIとは、1mlのヒト正常血漿の活性に等しいFVIIの量として規定した。rFVIIおよびrFVII−CTPのPT凝固活性は、凝固計(Instrumentation Laboratory)で測定した。
【0463】
前に示されたとおり、rFVIIタンパク質のC末端でのCTPペプチドの付加は、そのセリンプロテアーゼ活性を障害せず、ヒト血漿において天然の第X因子および第IX因子の開始および活性化を提供する。C末端での追加のCTPの挿入後、セリンプロテアーゼ活性の3倍の減少があった(データ示さず)。
【0464】
薬物動態学的試験:
【0465】
rFVII、rFVII−CTP、およびrFVII−(CTP)
2ハーベストを、Sprague−Dawleyラット(1物質あたり6匹のラット)に対して、体重1kgあたり100μgの用量で静脈内投与した。全てのインビボ実験について、それぞれのタンパク質の量を、FVII ELISAキットに基づいて決定した。各々のFVII試験物質について、注入量は、モル濃度の相違を提供する、rFVII−CTPに対するrFVIIの分子量の相違を考慮することによって算出した。
【0466】
血液サンプルは、定量すべきサンプリング手順レベルの妨害を最小化するための交互のサンプリングスキームを用いて眼窩後部より採取した(3匹のラットから30分および90分で、ならびに2、6、および48時間に採取、残りの3匹のラットからは、15分および60分、ならびに1.5、4、および24時間に交互に採取)。血漿は、サンプリング直後に調製し、−20℃で分析時まで保管した。FVII濃度は、FVII ELISA比アッセイによって定量した。半減期および曲線下面積(AUC)は、台形公式を用いて算出した。これらのクリアランスパラメーターの比較によって、インビボの半減期およびrFVII−(CTP)
2のAUCが、rFVIIのものよりも有意に高いことが明らかになった(表30)。
【0467】
【表30】
【0468】
組み換えFVIIa−CTPのキャラクタライゼーション:
【0469】
活性化の間、FVIIは、R152で切断されて、単一のジスルフィド架橋によって一緒に保持される重鎖および軽鎖が生じる。rFVIIa−(CTP)
2は、イオン交換カラム精製プロセスによって、精製されて、活性化される。rFVIIa−(CTP)
2を完全に評価するために、タンパク質を、SDS−PAGE上に、市販のFVIIa(NovoSeven(登録商標))に対する還元条件下でロードする。重鎖および軽鎖のドメインを分離し、これは、分子量55および25KDaの別々のバンドとして移動した。両方のタンパク質とも、FVIIに特異的な抗体と反応したが、rFVIIa−CTPの重鎖は特異的に抗CTP特異的抗体と反応し、これによって、このバンドは、CTPに融合されたFVII重鎖に相当することが示された。軽鎖は特異的に、抗γカルボキシラーゼAbと反応する。FVIIaタンパク質濃度は、FVIIa特異的なELISAキットによって決定される。
【0470】
FVIIaのN末端配列決定:
【0471】
活性化されたまたはチモーゲン精製されたタンパク質中のrFVII−CTP−CTPを、SDS−PAGEによって(12%のTris−グリシン上で)分離し、引き続きPVDF膜に対して電気ブロットする。目的のバンドを切り出して、精製Biobrene処理グラスファイバーフィルター上に置く。N末端配列分析は、140C HPLC微小勾配系を装備したパルス液タンパク質シーケンサーを用いて、エドマン分解によって行う。組み換えタンパク質の特定および適切なプロ−ペプチド切断はさらに、N末端配列決定によって確認する。
【0472】
FVIIa凝固活性:
【0473】
FVII−(CTP)
2凝固活性を評価するために、活性化部分トロンボプラスチン時間アッセイ(aPTT)を行う。FVII欠乏症血漿サンプルは、rFVIIa(NovoSeven(登録商標))またはrFVIIa−(CTP)
2で置換する。300μlのFVII欠乏症ヒト血漿を、100μlのFVIIaまたはrFVIIa−(CTP)
2と、特定の濃度で、または正常プールされたヒト血漿(さらに希釈されている)と混合する。37℃での60秒のインキュベーション後。組織因子(TF)、CaCl
2、およびリン脂質を、この混合物に添加する。凝固時間(秒数)を決定する。力価は、rFVIIa−(CTP)
2の用量反応曲線を、rhFVIIaまたはヒトプール正常血漿からなる参照調製物に対して比較することによって評価する。1単位のFVIIaとは、1mlのヒト正常血漿の活性に等しいFVIIaの量として規定する。rFVIIおよびrFVIIa−(CTP)
2のaPTT凝固活性は、凝固計(Instrumentation Laboratory)で測定する。rFVIIaおよびrFVIIa−(CTP)
2のaPTT凝固活性は同様である。
【0474】
ラットでの薬物動態学的試験:
【0475】
rFVIIaに対するCTPの付加の影響を、その作用時間延長能力に対して特徴づけるために、ラットでの比較の薬物動態学的試験を行う。TBSに含まれるNovoSeven(登録商標)(rFVIIa)およびrFVIIa−(CTP)
2を6匹のSDラットに対してIV注射する。経時的なFVIIaのレベルを、FVIIaのELISAキットを用いて決定する。半減期およびAUCは、各々のタンパク質に関して算出する。これらのクリアランスパラメーターの比較によって、rFVIIa−(CTP)
2の半減期、回収およびAUCのインビボ測定が、NovoSeven(登録商標)のものに対して優れていることが明らかになる。
【0476】
FVIIa−CTPのインビボ有効性モデル(血友病のFVIII欠損マウスモデル):
【0477】
インビボの活性モデルを評価するために、FVIIIノックアウトマウスを得て、増殖性のコロニーを確立する。10μgのいずれかの市販の組み換えhFVIIa(NovoSeven(登録商標))またはrFVIIa−(CTP)
2を、麻酔したFVIIIノックアウトマウスの尾静脈に注射する(22〜28g)。注射したタンパク質の量は、正常な血漿中の必要なFVIIIの濃度(5μg/ml)と等しい。血液サンプルは、クリップした尾からヘパリン処理した毛細管中へ、特定の時点で採取する。血漿サンプルを、ELISAによってFVIIaレベルについて評価して、有効性は、PTT凝固アッセイによって測定する。
【0478】
この試験では、CTPとのFVIIの融合構築物を生成する。この組み換えタンパク質は、半減期の延長および治療力価の保持を提供する治療の基礎である。
【0479】
これらの結果、rFVIIa−(CTP)
2は、血友病患者において、rFVIIaと同様の治療有効性を有することが示唆される。さらに、この技術によって、必要な投与頻度は下がる。rFVIIa−(CTP)
2の単回注射は、外科的介入の間に必要な、出血性のエピソードを制御し、注射の回数を減少するのに十分である。この組み換えタンパク質は、長期の予防的治療として用いてもよい。
【0480】
実施例5
精製されたFVII−CTP
3、FVII−CTP
4、およびFVII−CTP
5の比較の評価
5.1 試験の目的
【0481】
FVII−CTP
4およびFVII−CTP
5、対FVII−CTP
3の薬物動態学的パラメーターおよび凝固活性の比較の評価
【0482】
5.2 FVII−CTP
4およびFVII−CTP
5ハーベストの生成
【0483】
4〜5つのCTP配列に対してC末端で融合されたFVIIのcDNAを、20μg/LのビタミンK3(Sigma,Mennadion)の存在下でExcellgene発現系を用いてDg44細胞中で発現した。そのハーベストを、収集し(300ml)、濾過して、凍結した。
【0484】
5.3 FVII−CTP
3ハーベストの生成
【0485】
FVII−CTP
3は、社内で、哺乳動物発現系、CHO細胞において、pCI−DHFRベクターを用いて発現した。安定なトランスフェクトされたプール番号71を、振盪フラスコ中で、25ng/LのビタミンK3(Sigma)の存在下で増殖させた。そのハーベストを、収集して濾過した。
【0486】
全てのFVII−CTPハーベスト(3、4および5つのCTP)を、濃縮して、TBS(50mMのTris、150mMのNaCl,pH7.4)に対して、Pellicon XL MWCO 10kDaを用いて透析した。
【0487】
5.4 FVII抗原レベルの決定
【0488】
FVII抗原レベルは、ヒトFVII ELISAキット(Zymotest HyPhen)を用いて決定した(表31)。算出したタンパク質濃度は、2つの独立した試行の平均である。
【0489】
【表31】
【0490】
5.5 FVII−CTPイムノブロット
【0491】
FVII−CTP
3、FVII−CTP
4、およびFVII−CTP
5のハーベストを、12%のTris−グリシンゲル(expedeon)上に、Precisionプラス二重色タンパク質マーカー(plus dual color protein marker)(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGE分析は、ウエスタンイムノブロットによって、抗CTPポリクローナル Ab(Adar Biotech Production)または抗Gla Ab(American Diagnostica)を用いて行った。
【0492】
3、4および5つのCTPに融合されたFVIIは、それぞれ80、90および100kDaで移動した。予想どおり、ExcellgeneのFVII−CTP
4およびFVII−CTP
5のハーベストは、Prolorで生成されたFVII−CTP
3ハーベストと比較して低いγカルボキシル化含量を含む。この理由はこの生成プロセスは、最適化されなかったからである(
図21)。
【0493】
5.6 FVIIインビトロ力価の比較の評価
【0494】
正常なヒトプール血漿に対するHA精製された(高度にγカルボキシル化された画分)FVII−CTP
3、FVII−CTP
4、およびFVII−CTP
5のインビトロ力価の比較の評価を、市販の発色活性試験キット、BIOPHEN(Hyphen BioMed 221304)を用いて行った。全てのサンプルを連続希釈して、その力価は、用量反応曲線を、正常ヒト血漿からなる参照調製物に対して比較することによって評価した。FVII−CTP
3およびFVII−CTP
5によって、プールされた正常血漿よりも低い発色活性が示された(
図22)。FVII−CTP
4によって、FVII−CTP
3およびFVII−CTP
5と比較して、EC50比によって反映されるとおり、高い活性が示された(表32)。
【0495】
【表32】
【0496】
5.7 FVIIのインビトロ凝固活性:
【0497】
Sheba Medical Center,the Israel National Coagulation Centerで行われた第VII因子(FVII)活性アッセイは、第VII因子(Siemens)欠損の免疫吸着された血漿を用いる、プロトロンビン(PT)ベースのアッセイである。PT試薬は、インノビン(innovin)であり、アッセイは、Sysmex(登録商標) CA 1500装置で行う。FVII正常の範囲は、55〜145%内である。
【0498】
【表33】
【0499】
身体の循環しているFVIIの正常レベは、約0.5μg/mlであるので、FVII−CTP
3およびFVII−CTP
5ハーベストは、正常なヒトプール血漿に対してそれらの凝固活性の3倍の低下を示し、この結果は、得られた発色活性と相関する(表33)。
【0500】
FVII−CTP
4ハーベストは、発色活性アッセイで観察されたとおり、正常なヒトプール血漿に対してその潜在的な凝固活性の3倍の増大を示す(表33)。FVII−CTP
4の活性パーセンテージは、FVII−CTP
3およびFVII−CTP
5の活性パーセンテージと比較してかなり高い。ELISA方法の方法論的限界によって、FVII−CTP
4のAgレベル算出の正確性は制限され得る。
【0501】
5.8 薬物動態学的試験
【0502】
2つの薬物動態学的試験を行って、FVII−CTP
3、FVII−CTP
4、およびFVII−CTP
5の薬物動態学的(PK)パラメーターを決定した。この最初の試験の間、FVII−CTP
3、FVII−CTP
4、およびFVII−CTP
5(それぞれ、第A群、B群およびC群)を、単回の静脈内注射で、Sprague Dawleyラット(1治療あたり6匹のラット)に対して、体重1kgあたり250μgの用量で投与した。血液サンプルは、投与の0.083、0.5、2、5、8、24、48、72および96時間後に、交互に3匹のラットから眼窩後部より採取した(表34)。クエン酸処理した血漿(0.38%)を、サンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。
【0503】
【表34】
【0504】
血漿サンプル中のFVII濃度は、ヒトFVII Elisaキット(ZymutestFVII−Biophen)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルを算出して、これは、各時点での3匹の動物の平均である。終末半減期値は、PK Solutions 2.0 Softwareを用いて算出した。下の表35は、異なるサンプリング時点で算出したFVII濃度をまとめる。PKプロファイル(
図23〜24)およびPKパラメーターのまとめ(表36)も下に示す。FVII−CTP
5によって、FVII−CTP
3およびFVII−CTP
4と比較して優れたプロファイルが示された(表36)。
【0505】
【表35】
【0506】
【表36】
【0507】
4つまたは5つのCTPの付加は、3つのCTPと比較してそれぞれ2倍および3倍まで、有意にFVII半減期を延長した(表36)。この優位性は、本試験の最初の部分ではさらに有意であって(0.083−8時間)、このことは、潜在的に改善されたタンパク質回収および余計な血管クリアランスの低下を示唆している。FVII−CTP
4およびFVII−CTP
5投与後のAUCは、FVII−CTP
3に対してそれぞれ3倍および4倍まで増大した。また、クリアランスは、4および5つのCTPをFVIIに付加したときも低下した(表36)。
【0508】
本試験で観察されたとおり、4つおよび5つのCTPの付加は、3つのCTPと比較してFVII半減期を、初期半減期および終末半減期の両方で、有意に延長した。第一および第二の試験における半減期の値は、全体的な傾向は維持されていたにもかかわらず、用量および試験期間によって達成された種々の分析アプローチのせいで異なる。FVII−CTP
4およびFVII−CTP
5投与後のAUCは、FVII−CTP
3に対して、それぞれ2.5倍および7倍まで増大した。
【0509】
5.9 結論:
【0510】
本試験では、FVII−CTP
3、FVII−CTP
4、およびFVII−CTP
5のPKパラメーターおよび潜在的な凝固活性を評価した。FVIIに対する4および5つのCTPの融合によって、FVII−CTP
3と比較して、同様の発色活性およびインビトロの凝固活性を維持しつつ、優れてかつ改善された半減期、暴露およびクリアランスの低下が得られた。これらの結果は、種々の濃度のタンパク質で観察され、ハ^ベストおよび精製タンパク質の両方について一致していた。FVIIに対するC末端でのCTPの融合の全体的な効果を評価するとき、1〜5個のCTPの融合は、CTPに比例してFVIIの半減期およびAUCをかなり増大し、このことによって、本明細書において下の表37にまとめたとおり、分子のCTP部分が増大するにつれて、FVIIの寿命および安定性は有意に改善されたが、一方で、その最初のインビトロ凝固活性は維持されていたことが示唆される。
【0511】
【表37】
【0512】
前に報告したように、FVII半減期は、ヒトおよび動物の両方で活性型のFVII(FVIIa)の半減期と相関する。従って、半減期の同様の改善が、CTP融合後に活性化形態について得られることが予想される。
【0513】
実施例6
FVIII欠乏症の血友病性マウスにおけるFVII−CTP
3の実現可能性試験
市販のFVIIに対してFVII−CTP、FVII−CTP
2およびFVII−CTP
3のハーベストのPKプロファイルおよび凝固活性を試験する、本明細書に上記した試験を行った。FVII−CTP
3は、FVII−CTPおよびFVII−CTP
2のハーベストまたはrhFVIIに対してその凝固活性を維持しつつ、改善されたPKプロファイルを示した。FVII−CTP
3のインビトロおよびインビボの特性をさらに特徴づけるために、最小安定プール発現および分泌のタンパク質が生成され、精製および活性化プロセスが開発された。
【0514】
本試験では、FVIIa−CTP
3の薬物動態学的特性および薬力学的特性を、FVIII欠損マウスで試験した。このタンパク質のPKプロファイルを評価した。FVIIa特異的な活性バースのPKプロファイルを評価して、市販の生成物NovoSeven(登録商標)と比較した。さらに、尾静脈横切(生存試験)後のFVIII欠損マウスにおいてFVIIa−CTP
3が凝固を誘導する長時間作用型インビボの恒常性の能力を試験した。
【0515】
試験の目的:
【0516】
同様の活性用量での単回のIV投与後、FVIII欠損マウスにおけるFVIIa−CTP
3対市販のrhFVIIa(NovoSeven(登録商標))の薬物動態学的パラメーターおよび薬力学的パラメーターを評価すること。
【0517】
同様の活性用量、その後の尾静脈横切のチャレンジ(生存試験)でのFVIIa−CTP
3およびNovoSeven(登録商標)の単回IV投与によって、FVIIa−CTP
3がFVIII欠損マウスにおいて恒常性を維持するインビボの能力を決定すること。
【0518】
FVII−CTP
3ハーベストの生成:
【0519】
FVII−CTP
3は、社内でDg44細胞において、pCI−DHFRベクターを用いて発現した。安定なトランスフェクトされたプール番号71を、振盪フラスコ中で、25ng/LのビタミンK3(Sigma)の存在下で増殖した。細胞懸濁物を培養して、生存度が60〜80%に低下した後に回収した。このハーベストをろ過して、−70℃で凍結した。
【0520】
ハーベストのFVII抗原レベルの決定:
【0521】
FVII抗原レベルは、ヒトFVII ELISAキット(Zymotest HyPhen)を用いて決定した(表38)。各々のプールされたハーベストバッチについて抗原レベルを算出した。
【0522】
【表38】
【0523】
FVII−CTP
3の精製プロセス(
図25)
【0524】
プロセスの概要
【0525】
短い精製試験の後に、2つのカラムを用いる以下の精製プロセスを行った。VII−Selectアフィニティーカラム(GE)およびセラミックハイドロキシアパタイト(Ceramic Hydroxyapatite)1型(HA)、40μm(Bio Rad)、FVII−CTP
3 γ−カルボキシル化富化タンパク質を精製した。自動活性化を、CaCl
2の存在下で、一晩、2〜8℃で、精製されたFVII−CTP
3のインキュベーションによって誘導した。この精製プロセスは、その最終の開発段階にあり、最適化されている最中であり、従って、この精製工程の一部は、2つのバッチで同一ではない。
【0526】
10kDaの中空ファイバーまたはペリコンカセットを用いる限外濾過/ダイアフィルトレーション(UFDF)
【0527】
清澄化したハーベストを、4℃で週末をまたいで解凍した(2〜3日)。
【0528】
バッチ31では、清澄化したハーベスト(12リットル)を、10KDa分子量カットオフを有する中空ファイバーカートリッジ(GE Healthcareカタログ番号UFP−10−C−4X2MA)を用いて、4倍に濃縮した(2連続の施行)。濃縮されたハーベストを、1〜2容積のTBS(50mMのTris、150mMのNaCl(pH7.4))に対してダイアフィルトレートした。
【0529】
バッチ38において、清澄化したハーベスト(8.5リットル)を、10KDa分子量カットオフを有するPellicon 2(Millipore)カセットを用いて4倍濃縮した。濃縮されたハーベストを直接、VII−Selectカラム上にロードした。
【0530】
両方の限外濾過を、氷冷緩衝液を用いて氷上で行った。UFDFサンプルを、ロードする前に0.22μmでろ過した。
【0531】
FVII−Selectカラムで捕獲
【0532】
UFDFまたは濃縮されたハーベストを、VII−Selectカラム(XK16/20,CV 18ml)にロードして、TBS(pH7.4)を用いて予備平衡化した。そのカラムを、50mMのTris−HCl、0.5MのNaCl(pH7.5)で洗浄し、およびFVII−CTP
3を、50mMのTris−HCl、1MのNaCl(50(v/v)%)、プロピレングリコール(Propylene Glycol)(pH7.5)で溶出した。そのプロセスを、同じカラムを利用する2つの連続サイクルで行った。
【0533】
セラミックヒドロキシアパタイトカラムでのγカルボキシル化ベースの分離
【0534】
溶出された生成物を、10mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)を用いて1:10希釈して、セラミックヒドロキシアパタイトカラム(XK16/20,CV24ml)にロードした。このカラムを、59mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)で洗浄し、第VII因子のγ−カルボキシル化富化画分を、500mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)を用いて溶出した。このプロセスを、同じカラムで、2連続サイクルで行った。各々のバッチで、2つのサイクルの溶出液を、プールして、1.7〜2mg/mlに濃縮し、20mMのTris−HCl、100mMのNaCl(pH8.2)でダイアフィルトレートして、容積を少なくして、活性化工程のための材料を調製した。
【0535】
FVII活性化
【0536】
精製されたFVII−CTP
3を、1mg/mlに希釈して、20mMのTris−HCl,100mMのNaClおよび1mMのCaCl
2(pH8.2)中で、2〜8℃で24時間インキュベートした。活性化は、予備的形成緩衝液(20mMのクエン酸塩,240mMのNaCl,13.3mMのグリシン,pH6.9)への緩衝液交換(UFDF)によって終わらせた。
【0537】
FVII−CTP
3およびFVIIa−CTP
3分析特性:
【0538】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット
【0539】
精製されたFVII−CTP
3、およびFVIIa−CTP
3を、12%のTris−グリシンゲルの上に、Precision Plus Dual Color Protein Marker(Bio−Rad)を用いてロードした。SDS−PAGEクマーシー分析を、クマーシーブリリアントブルー試薬(1レーンあたり5または10μgのタンパク質)を用いてゲルを染色することによって行った。抗ヒトFVIIポリクローナルAb(R&D systems;AF2338)、抗ヒトγカルボキシル化モノクローナル抗体(American Diagnosticsカタログ番号499,3570)、および抗CTPポリクローナルAbを用いて、ウエスタンブロット分析を行った(1レーンあたり1μgのタンパク質)。還元条件下では、FVII−CTP
3は、75KDaで移動し、およびFVIIa−CTP
3は、それぞれ
図26でバンド2および3として示される、2つの主なバンド(50kDaの重鎖および25kDaの軽鎖)として移動した。
【0540】
この精製手順は、不純物を減少しながら、FVII−CTP
3部分を有意に富化した。精製プロセスの収率は、25〜30%のFVIIであった(ELISAによる)。精製の間に失われたタンパク質のほとんどは、低いFVII発色活性を有するか、または活性がなかった。クマーシー染色したSDS−PAGEに基づけば、減少したFVIIa−CTP
3は、予想されたバンドをより多く含む。約75kDaへ移動するバンドは、非活性化FVIIに相当する(
図26,バンド1)。このバンドは、異なるγカルボキシル化含量を反映し得る、わずかなMWの相違がある2つのバンドからなる。20kDaより低いMWを有する追加のバンドが観察された。これは、重鎖の分解生成物であることが以前に報告された。
【0541】
FVII−CTP
3 発色活性:
【0542】
製造過程の画分におけるFVII−CTP
3ハーベスト、および精製されたFVII−CTP
3、対ヒトプール正常血漿のインビトロ力価の比較の評価を、市販の発色活性試験キット、BIOPHEN(Hyphen BioMed 221304)を用いて行った。FVII−CTP
3ハーベストおよびタンパク質を連続希釈して、その力価は、用量反応曲線を、正常ヒト血漿の参照調製物に比較することによって評価した。FVII−CTP
3精製の後、発色活性は、有意に改善され、非活性画分は、主にHAカラムによって分けた(
図27)。FVII発色活性と、FVIIの検出(ウエスタンブロットでモノクローナル抗Gla抗体を用いる)との間で強力な相関が観察された。ハーベスト中でEC50値によって反映されるようなFVII発色活性の力価は、カルボキシル化および非−カルボキシル化の両方のFVII画分から影響される。FVII−CTP
3のγ−カルボキシル化画分の精製および富化後、活性は改善され、これによって、FVII活性に対するγ−カルボキシル化の重要な寄与が示された(
図27)。このパラメーターは、適切なFVIIインビボ活性に極めて重要であり、さらにクローン発達プログラムで取り組まれる。
【0543】
A280によるタンパク質決定
【0544】
FVIIa−CTP
3およびNovoSeven(登録商標)の理論的な吸光係数は、ProtParamアルゴリズム(http://web.expasy.org/protparam)を用いて算出した。算出は、アミノ酸配列に基づく。FVII−CTP
3およびNovoSeven(登録商標)の算出された吸光係数は、それぞれ、1.186および1.406である。これらの値は、280nmで1g/Lの吸光度に相当する。
【0545】
2つのタンパク質の間の吸光係数の相違は単に、NovoSeven(登録商標)と比較したFVIIa−CTP
3の分子量の増大に由来する。この理由は、CTPは、芳香族残基およびシステイン残基を欠き、従って、吸光度に寄与しないからである。
【0546】
A280によるタンパク質の決定を、最終のFVIIについて用い、精製された製造過程のサンプルについては、VII−Selectカラムの溶出から出発する。
【0547】
FVIIa抗原レベルの決定
【0548】
FVIIa抗原レベルを、HumanFVIIa ELISAキット(IMUBIND,American Diagnostica)を用いて決定した。各々のバッチについて抗原レベルを算出した。しかし、このツールは、注射用の用量の決定には有用ではなかった。この理由は、これは、活性生成物の量には相当しなかったからである。
【0549】
FVIIa−Staclot(登録商標)VIIa−rTFの凝固アッセイ
【0550】
FVIIaは、単鎖のFVIIの鎖内切断に由来する。天然の組織因子(TF)は、FVIIaの補因子である。TFに対する結合の際、FVIIは、それ自体は、FVIIaに変換されるが、第X因子のXaへの活性化を媒介する。可溶性の組織因子は、天然の組織因子の細胞外部分である。これは、自動活性化によってFVIIを活性化することはもはや不可能であり、ただし、組織因子に結合したFVIIaは、FXをFXaに活性化し得る。
【0551】
このアッセイで用いられる組み換え可溶性組織因子(rsTF)は、aFVIIa凝固試験を構築するためにFVIIa特異性を利用する。rsTF(FVIIaの存在下で)、カルシウムおよびリン脂質は、FVIIをFVIIaへ活性化することなく、血漿の凝固を提供する。
【0552】
この系での観察された凝固時間は、サンプル中に存在するFVIIの妨害なく、試験したサンプル中のFVIIa含量と反比例関係を有する。
【0553】
このアッセイは、Omri Laboratories(Nes−Ziona,Israel)によって行った。FVIIa活性は、再構成後NovoSeven(登録商標)およびFVIIa−CTP
3の両方について各々の試験の前に評価した。NovoSeven(登録商標)活性は、バイアルで報告されたとおり予想された活性とは相関しなかったが、その矛盾は、活性評価に関する異なるアプローチに起因し得る。表39は、タンパク質濃度を考慮することなく、1つの容積についてのFVIIa凝固活性をまとめる。
【0554】
【表39】
【0555】
FVIIa−CTP
3の比活性
【0556】
FVIIaの比活性(タンパク質濃度で割った活性/mlとして算出)は、A280に基づいて算出して、表40に示す。MWが異なる、2つの分子の比活性を比較する場合、補償を行って、活性を正規化しなければならない(すなわち、分子量の相違という理由で、1mgのNovoSeven(登録商標)中の活性部位の数は、FVIIa−CTP
3よりも1.185倍高い)。変換係数の算出は、以下の式に示す。
【0557】
【数1】
【0558】
【表40】
【0559】
FVIIa−CTP
3のPK−PD試験:
【0560】
試験の概要
【0561】
FVIIa−CTP
3およびrhFVIIa(NovoSeven(登録商標)、NS)を、単回の静脈内注射で、C57BFVIII欠損マウスに対して、6.4E6U/kg体重(160,000U/動物)の用量で投与した。血液サンプルは、投与の0.166、0.5、2、4、8、12、24、34、48、58、および72時間後に4匹のマウスから交互に眼窩後部より採取した(表41)。クエン酸処理した血漿(0.32%)を、サンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。FVIIa凝固活性レベルを、評価して、詳細なPK分析を行った。この試験は、Omri Laboratories(Nes−Ziona,Israel)が行った。
【0562】
【表41】
【0563】
FVIII欠損マウスにおけるFVIIa−CTP
3のPKプロファイルプロファイル
【0564】
血液サンプル中のFVIIa活性を、Staclot(登録商標)VIIa−rTFキット(Stago,Parsippany,NJ)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルを、各々のタンパク質について算出して、各々の時点で4匹の動物の平均を示す。
図28は、実験全体を通じたFVIIaのPKプロファイルに相当する。FVIIa回収を、表42に示す。PKパラメーターを表43にまとめる。
【0565】
表41に、NovoSeven(登録商標)またはFVIIa−CTP
3のいずれかの投与後の凝固活性値をまとめる。FVIIa−CTP
3およびNovoSeven(登録商標)は、最大活性の半分に、投与後1時間で達した。NovoSeven(登録商標)の最大の活性値は、FVIIa−CTP
3の最大活性値の43%にしか達しなかった。FVIIa−CTP
3凝固活性は、長期間維持され、これは、活性の延長を示していた。NovoSeven(登録商標)治療マウスの凝固活性は、12時間より後の時点では検出不能であったが、FVII−CTP
3治療マウスは、投与後48時間で測定可能な活性を保持し続けていた(表41および
図28)。
【0566】
FVIIaに対する3つ直列のCTPコピーの付加は、投与後の最大活性で測定して、インビトロ分析に基づいて予想の活性と比較した場合、回収を100%まで上昇し(表42)、半減期および平均残留時間を(MRT)を5倍に増大した。暴露時間(AUC)は、3倍に増大された(表43)。
【0567】
【表42】
【0568】
【表43】
【0569】
【表44】
【0570】
トロンビン生成アッセイ(TGA)
【0571】
トロンビンの生成は、凝固カスケードの基本的な部分であり、そのようなものとして、特定の個体が、どのようによくトロンビンを生成できるかという評価は、出血または血栓症のいずれかのリスクと関連し得る。トロンビン生成を分析するときに共通して測定された変数としては以下が挙げられる:遅延時間(時間のずれ)、ピークトロンビン生成までの時間、ピーク、内因性トロンビン能力(endogenous thrombin potential)[ETP](すなわち、曲線下面積および尾)、トロンボグラム(「TG」)の時間経過。遅延時間後、トロンビンのバーストが観察される。しかし、凝固は、遅延時間の終わりに生じ、この時全てのトロンビンの95%より多くがまだ形成されていなかった。トロンビン生成アッセイは、Omri Laboratoriesで、ヒト血友病性血漿を補充したトロンボグラム(Thrombinoscope)試薬を用いて行った。TGAは、NovoSeven(登録商標)およびFVIIa−CTP
3の注入に由来する、マウス血漿中の凝固能力の反映。
図29は、FVIIa−CTP
3またはNovoSeven(登録商標)のいずれか投与後のマウス血漿のTGAパラメーター値に相当する。FVIIa−CTP
3投与後、3つ全てのパラメーター(トロンビン生成の速度、生成されたトロンビンの最大量およびKIIa)によって、NovoSeven(登録商標)治療を上回るFVII−CTP
3の利点が示される。これによってさらに、NovoSeven(登録商標)と比較して、FVII−CTP
3の潜在的な長時間作用型優位性という観念が強化される。
【0572】
FVIIa−CTP
3の尾静脈横切(TVT)試験:
【0573】
試験の概要
【0574】
FVIIa−CTP
3についてのPK/PD試験から得られたデータによって、FVIIa−CTP
3の機能への洞察が得られ、FVIIa−CTP
3は、NovoSeven(登録商標)と比較した場合、薬物動態学的利点を有することが示された。しかし、タンパク質がインビトロで凝固を誘導する能力は、外傷性の事象後には、まだ示されていない。FVIIa−CTP
3が出血を停止する能力を評価するために、同じFVIII欠損マウスモデルを、出血チャレンジのために使用した。
【0575】
FVIII欠損マウスに、FVIIa−CTP
3またはNovoSeven(登録商標)の単回静脈内注射を与えた。マウスに、FVIIa凝固活性アッセイで評価した各々の薬物の能力によって算出して、等価なFVIIa活性(1.6E05単位,200μl)を提供する量の薬物を投薬した(表44)。この投与された用量は、FVIIa−CTP
3の活性の低下に起因して、9mg/kgのNovoSeven(登録商標)、および40mg/kgのFVII−CTP
3であった。対照群には、200μlのビヒクルを注射した。
【0576】
尾静脈を、投与の15分後(注射1)、24時間後(注射2)または48時間後(注射3)で尾の先端から2.7cmで横切開し、マウス生存を24時間記録した。
【0577】
【表45】
【0578】
タンパク質濃度は、A280で決定した。
【0579】
結果
【0580】
3回の注射についてのビヒクル注射対照群(5匹の動物×3注射)由来のデータを、
図30にまとめる。尾静脈横切の24時間後に30%の生存を観察した。
【0581】
NovoSeven(登録商標)およびFVIIa−CTP
3治療したマウスは、FVIIa投与後15分で行った尾静脈横切後に適切な止血活性を示した。FVIIa−CTP
3およびNovoSeven(登録商標)治療した動物では、100%の生存率が観察された(
図30)。
【0582】
PK/PD試験で示された、FVII−CTP
3のクリアランス速度の低下は、投与24時間後に行った尾静脈横切後に最もはっきりと予想される。NovoSeven(登録商標)の生存速度の低下が観察される。対照群と同様に、50%の死亡が10時間内に観察される。それまでの間、90%のFVIIa−CTP
3治療マウスが生存した(
図30)。この結果、FVIIa−CTP
3治療の長時間作用型有効性が強調される。
【0583】
投与48時間後、生存率の低下が、FVIIa−CTP
3またはNovoSeven(登録商標)のいずれで治療された群でも示される(
図30C)。FVIIa−CTPマウスでのわずかな改善が観察されたが,その相違は統計学的有意差には達しなかった。
【0584】
考察:
【0585】
組み換えタンパク質に対するCTP融合は、匹敵する活性を維持しつつ、タンパク質の循環半減期を延長させる。70KDの閾値サイズを超えるタンパク質のクリアランスの低下の背景の機構は、腎クリアランスに関しては十分理解されているが、CTP融合の後には、追加的な保護が達成される。CTP融合は、タンパク質シールドの周囲を掃引して、これをタンパク質分解性切断から保護し、その半径方向の分子量を高度に負の電荷に起因して増大し、かつ肝クリアランス受容体に対するその親和性を低減させると考えられる。
【0586】
本試験は、FVIIに対するCTP融合が、タンパク質の半減期およびクリアランスに影響することに対して特異的な洞察を行い、またこの修飾後のその比活性のパラダイムに取り組むことも目標とした。FVIII欠損マウスに、FVIIa−CTP
3または組み換えの市販のFVIIa(NovoSeven(登録商標))の単回IV注射を同様の用量(単位ベース)で投与し、PK活性ベースの分析を行った。FVIIa−CTP
3は、それぞれ、その半減期およびAUCにおける5倍および3.5倍の増大で反映されるとおり、優れた寿命を示した。A280で測定したタンパク質濃度で割った、Staclot(登録商標)活性キットで算出したFVIIa−CTPの比活性(U/mg)は、NovoSeven(登録商標)の比活性よりも4〜5倍低いことが示された。
【0587】
CTPが、インビボでFVIIaの止血性効果にどう影響するかという理解に基づいて、FVIIa−CTP
3が出血を低減させる能力を検討した。血友病性マウスモデルにおける尾静脈横切出血モデルでは、rFVIIa投与は、チャレンジされた動物の生存率を改善し、かつ出血して死亡することを回避し得る。本明細書に記載される試験では、動物にFVIIa−CTP
3またはNovoSeven(登録商標)を投与した。両方の分子とも、投与0.25時間後に横切を行った場合、恒常性を維持することが可能であった。尾の横切が投与後24時間で行われた時、FVIIa−CTP
3治療群について、活性の有意な期間延長が示された。ビヒクル治療群の生存率は、予想よりも高く、かつ以前の試験で得られたよりも高い(以前の試験では、50%対20%、データ示さず)。治療動物の生存パーセントを、投与後36時間を含む、より早期の時点でさらに評価する。
【0588】
結論として、FVIIa−CTP
3は、NovoSeven(登録商標)と比較した場合、血友病性マウスの活性の期間延長を有し、これは、より長期間の止血性効果へ変換されることが示された。集められたデータによって、FVIIに対するCTPの融合は、血友病を有する患者での予防治療を有意に改善する能力のある技術であることが示唆される。
【0589】
実施例7:SDラットに対する単回のIVまたはSC注射後の精製されたFVII−CTP
3対FVII−CTP
5のプロファイルの比較の評価
試験の目的
2つの試験を行った。
【0590】
第一の試験の目的は、動物1匹あたり50μgの単回静脈内投与後に、雄性Sprague Dawleyラットにおいて、FVII選択−およびHA−カラム精製後のrFVII−CTP3、対rFVII−CTP5の薬物動態学的パラメーターを決定することであった。
【0591】
第二の試験では、rFVII−CTP3−HA、対rFVII−CTP5−HAの薬物動態学的パラメーターを、1匹の動物あたり100μgの単回の静脈内または皮下投与後に、雄性Sprague Dawleyラットで検査した。
【0592】
結果
FVII−CTP3およびFVII−CTP5抗原レベルの決定
【0593】
FVII抗原レベルは、HumanFVII ELISAキット(Zymotest HyPhen)(表45を参照のこと)を用いて決定した。 T
【0594】
【表46】
【0595】
試験したサンプルのウエスタンブロット分析
FVII−CTP
3,5サンプルを、Precisionプラス二重色タンパク質マーカー(plus dual color protein marker)(Bio−Rad)を用いて、4〜12%のbisTrisgel(NuPage,invitrogene)にロードした。SDS−PAGE分析は、ウエスタンイムノブロットによって、ポリクローナル抗FVII Ab(R&D systems)、抗CTPポリクローナル Ab(Adar biotech production)または抗Gla Ab(American diagnostica)を用いて行った。まとめると、3および5つのCTPに融合されたFVIIは、それぞれ、80および100kDaで移動した(
図31を参照のこと)。
【0596】
FVIIインビトロ力価の比較の評価
Shebaメディカルセンター、ナショナル凝固センターで行われたFVII活性アッセイは、第VII因子の欠損した免疫吸着血漿を用いるPTベースのアッセイである(Siemens)。PT試薬は、インノビンであり、そのアッセイは、Sysmex CA 1500装置で行う。FVIIの正常範囲は、55〜145%内である。サンプル活性は、表46にまとめる。
【0597】
【表47】
【0598】
身体中で循環するFVIIの正常レベルは、約0.5μg/mlである。FVII−CTP
3およびFVII−CTP
5の両方とも、正常なヒトプール血漿に対してそれらの凝固活性の約5倍の低下を示す。
【0599】
薬物動態学的試験
2つの薬物動態学的試験を行って、FVII−CTP
3およびFVII−CTP
5(FVII選択およびFVII HAカラムの後)の薬物動態学的(PK)プロファイルおよびパラメーターを決定した。この最初の試験では、FVII−CTP
3、およびFVII−CTP
5(FVII選択/HA精製の後)を、単回の静脈内注射で、Sprague Dawleyラット(1物質あたり6匹のラット)に対して、50μg/ラットの用量で投与した。
【0600】
血液サンプルを、投与後0.083、0.5、2、5、8、24、48、72、96および120時間後に、交互に3匹のラットから眼窩後部より採取した。クエン酸処理した血漿(0.38%)をサンプリング直後に調製して、−20で分析時まで保管した。
【0601】
第二の試験では、HAカラム後のサンプルのみを試験した。これらのサンプルを、単回の静脈内または皮下注射で、Sprague Dawleyラット(1物質あたり6匹のラット)に対して、100μg/ラットの用量を用いて投与した。血液サンプルを、上記の最初の試験と同じ時点および条件で収集した。
【0602】
【表48】
【0603】
【表49】
【0604】
これらの2つの試験の間の主な相違は、投与量と、投与経路とである。第一の試験では、ラットに、50μg/ラットでIV注射したが、第二の試験では、ラットに、100μg/ラットでIVまたはSC注射した(総計500μg/kg;200g重量のラット)。投与量の増大は、投与の種類の変化により、SC投与では、IV投与と同様の効果を達成するためにより高用量を必要とする。
【0605】
PK試験の分析
血漿サンプル中のFVII濃度を、ヒトFVII Elisaキット(zymutest FVII−Biophen)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルを算出し、これは、各時点での3匹の動物についての平均を反映している。終末半減期の値は、PKソリューションズ(solutions)2.0ソフトウェアを用いて算出した。下の表に、種々のサンプリング時点で算出したFVII濃度をまとめる。PKのプロファイルおゆおびPKパラメーターを、下の表にまとめる。
【0606】
【表50】
【0607】
【表51】
【0608】
【表52】
【0609】
5つのCTPの付加によって、3つのCTPと比較してFVII半減期が延長された。5つのCTPの両方の形態(すなわち、FVIISおよびFVII HA)は、長い時点(96時間および120時間)で検出したが、FVII−3 CTP HAおよびFVIIS−3 CTPは、それぞれ、72時間および96時間まで検出された。この事実に基づき、FVII−5 CTPの半減期は、3CTPの改変体よりも長い(
図32を参照のこと)。全ての試験した材料(3および5つのCTP)の半減期を同じ時点(8〜72時間)で比較することで、この半減期が同様であるが、5つのCTPは、かなり長いことが示された(
図32)。
【0610】
【表53】
【0611】
再度、第一の試験で観察されるとおり、5つのCTPの付加によって、3つのCTPの付加と比較して、初期および終末の半減期の両方で、ならびに両方の投与方法で(IVおよびSC,
図33を参照のこと)、FVII半減期が延長された。予想とおり、SC投与後、FVIIは最初に、それがIV投与された時と比較して後の時点で、血液中で、検出された。
【0612】
上記において、2つのPK試験をまとめた。最初の試験の主な目的は、2つの異なるカラム(FVII選択およびFVII HA)の後のFVII−3CTPとFVII−5 CTPとの間の相違をチェックすることであった。本発明者らの以前の試験では、ハーベスト、対、精製されたタンパク質をチェックして、FVIIの3CTPと5CTPとの間の相違が、ハーベストをラットに注射したときより大きかったことが見出された。
【0613】
両方のカラムの後のFVII 3/5 CTPの結果の間に有意な相違はなく、従って、第二の試験では、FVII HA 3/5 CTPを注射することを決定した。
【0614】
実施例8:皮下注射後のFVIII欠損マウスでのFVIIa−CTP
3(MOD−5014)の生存試験
試験目的
皮下投与後、尾静脈横切試験で、NovoSeven(登録商標)、MOD−5014(FVIIA−CTP
3)およびMOD−5019(FVIIA−CTP
5)の有効性を評価すること。
【0615】
FVIIa−CTP
3(MOD−5014)およびFVIIa−CTP
5(MOD 5019)分析特性:
A280によるタンパク質決定
NovoSeven(登録商標)の理論的吸光を、ProtParamアルゴリズム(http://web.expasy.org/protparam)を用いて算出した。この計算は、アミノ酸配列に基づく。NovoSeven(登録商標)の算出された吸光係数は、1.406であり、MOD−5019については、1.075である(値は、280nmで1g/Lの吸光度に相当する)。MOD−5014の吸光係数は、Mscanでのアミノ酸分析で決定した。MOD−5014の吸光係数は、1.27である。
【0616】
FVIIa−STACLOT VIIa−rTFの凝固アッセイ
FVIIaは、単鎖のFVIIの鎖内切断に由来する。ナイーブな組織因子(TF)は、TFに対する結合の際の、FVIIaの補因子であり、FVIIは、第X因子のXa因子への活性化を媒介するが、それ自体は、FVIIaに変換される。可溶性組織因子は、天然の組織因子の細胞外部分である。これはもはや、自動活性化によってFVIIを活性化できないが、組織因子に結合したFVIIaは、FXをFXaに活性化できる。
【0617】
本アッセイで用いられる組み換え可溶性組織因子(rsTF)は、FVIIa特異性を利用して、FVIIa凝固試験を構築している。組み換え可溶性組織因子(rsTF)は、FVIIa、カルシウムおよびリン脂質の存在下で、FVIIをFVIIaに活性化することなく、血漿の凝固を生じる。
【0618】
この系で観察された凝固時間は、サンプル中に存在するFVIIの妨害なしで、試験したサンプル中のFVIIa含量と反比例関係を有する。
【0619】
FVIIa活性を、各々の試験の前に、再構成されたNovoSeven(登録商標)について、ならびにMOD−5014およびMOD−5019について評価した。
【0620】
FVIIa比活性(タンパク質濃度で割って、活性/mlとして算出される)を、A280に基づいて算出し、表53に示す。分子量が異なる2つの分子の比活性を比較したとき、活性を正規化するために補償を行わなければならない(すなわち、分子量相違のせいで、1mgのNovoSeven(登録商標)の活性部位の数は、MOD−5014では1.185倍高く、MOD−5019よりも1.307倍高い)。従って、換算率の計算は、以下の式で示される。
【0621】
【数2】
【0622】
【表54】
【0623】
試験の概要
最も重大な指標は、外傷性の事象の後で、タンパク質がインビボで凝固を誘導する能力である。MOD−5014が出血を停止する能力を評価するために、同じFVIII欠乏症マウスモデルを出血チャレンジのために使用した。
【0624】
FVIII欠乏症マウスに、MOD−5014、MOD−5019またはNovoSeven(登録商標)の単回皮下注射を与えた。A群およびB群に、それぞれ、NovoSeven(登録商標)およびMOD−5014を、FVIIa活性と等価な量で投与した。C群には、MOD−5019を、MOD−5014と等価な量のFVIIaタンパク質量で投与して、重要な因子(タンパク質の活性または量)を評価した。投与された用量は、4.2mg/kgのNovoSeven(登録商標)、ならびに8.6mg/kgのMOD−5014およびMOD−5019であった。尾静脈を、投与の12時間後に尾の先端から2.7cmで横切して、マウスの生存を、24時間記録した。
【0625】
【表55】
【0626】
結果
【0627】
実験データを、表55および
図34にまとめる。
【0628】
【表56】
【0629】
TVT24時間後、NovoSeven(登録商標)注射マウスのうち11%しか生存しなかった。MOD−5014のうち30%およびMOD−5019のうち40%が、この時点で生存していた。皮下注射されたMOD−5014およびMOD−5019は、NovoSeven(登録商標)と比較して改善されたマウス生存を示す。にもかかわらず、動物のうち50%より多くが実験の間に死んだため、結果は、最適ではなかった。
【0630】
第VII因子aは、他の凝固因子と同様に、正常に静脈内に注射されて、血流で直接利用可能になる。しかし、本発明は、本明細書で提供される組成物が、SC投与後に血流中で驚くべきことにより効果的に吸収されるということを示す。皮下にFVIIaを投与可能であることは、予防適用に用いることが可能であるので、利点として作用する。また、皮下注射は、患者にとって自己注射がかなり容易であり、かつ患者がごく若く、血管が小さく見つけるのが困難である時有利である。
【0631】
従って、皮下適用は、予防治療に用いることができる。
【0632】
実施例9:SDラットにおける皮下投与後の組み換えMOD−5014、対NOVOSEVEN(登録商標)の比較のPK−PD試験
【0633】
試験の目的
単回のSC投与後のSDラットにおける、MOD−5014、対市販のrFVIIaの薬物動態学的パラメーターおよび薬力学的パラメーターを決定すること。
【0634】
2つの異なるクローン(クローン番号28対61)に由来するMOD−5014生成物を含む2つの独立した実験(05010&05034)を、それらの薬物動態学的パラメーターによって比較すること。
【0635】
実験方法
動物
24匹の雄性SDラットが、注射の開始の少なくとも4日前にHarlan Laboratories Israel,Ltdから到着した。その動物は、健常な若い成体であって、試験開始時点で約200グラムであった。治療開始の時点での動物の体重変動は、各々の性別の平均体重の±20%を超えるべきではない。本試験で用いられる動物の健康状態は、到着時に試験する。良好な健康状態の動物のみを、実験室の条件に馴化させ、この試験に用いる。
【0636】
FVIIa−STACLOT VIIa−Rtfの凝固アッセイ
このアッセイで用いられる組み換え可溶性組織因子(rsTF)は、FVIIa凝固試験を構築するためにFVIIa特異性を利用している。rsTFは、FVIIa、カルシウムおよびリン脂質の存在下では、FVIIをFVIIaに活性化することなく、血漿の凝固を生じる。
【0637】
この系で観察された凝固時間は、サンプル中のFVIIの存在の妨害なしに、この試験されたサンプル中でのFVIIa含量と反比例関係を有する。
【0638】
FVIIa活性を、再構成の後のNovoSeven(登録商標)、および各試験の前のMOD−5014の両方について評価した。FVIIa比活性を、A280に基づいて算出した。MWが異なる2つの分子の比活性を比較する時、活性を正規化するためには補償をおこなわなければならない(すなわち、分子量の相違のおかげで、1mgのNovoSeven(登録商標)の活性部の数は、MOD−5014よりも1.185倍高い)。
【0639】
PKソルバー(solver)ソフトウェア
薬物動態学的パラメーターは、PKソルバーソフトウェアを用いて算出した。IV投与曲線は、2つの区画のCAボーラスとして分析し、SC投与は、NCA血管外(Extravascular)−対数(Log)線形台形分析として分析した。半減期、AUC、クリアランス、および容積分布の詳細を算出して、出力パラメーターを実験群間の比較で試験した。
【0640】
実験材料
実験番号05010:
A.
NovoSeven(登録商標)RT:(31.7.12*で調製されたロット番号AU61553)A280によるFVIIa濃度:0.86mg/ml。FVIIa Staclot活性アッセイ:56,867U/mg。注入用量:946μg/kg。*NovoSeven(登録商標)アリコート(全て同じロット番号由来)のプール。
B.
クローン28:MOD−5014 RS12−001:0.77mg/ml**A280に基づく。FVIIa Staclot活性アッセイ:34,162 U/mg。注射用量:850μgFVIIa/kg。
【0641】
実験番号05034:
A.
NovoSeven(登録商標)RT:(1.1.13で調製したロット番号AU61347)A280によるFVIIa濃度:0.82mg/ml(滅菌NS緩衝液で0.4mg/mlに希釈)。FVIIa Staclot活性アッセイ:55,688U/mg。注射用量:360μg/kgおよび20,047.7U/kg。
B.
クローン61:MOD−5014バッチ75:1.9mg/ml**A280に基づく(処方緩衝液で0.89mg/mlに希釈)。注射用量:20,047.7U/kg。FVIIa凝固活性:25,002* U/mg(FVIIa Staclot活性アッセイに基づく)。
C.
クローン61:MOD−5014バッチ81A:2.36mg/ml(A280に基づく)(試験日の朝に濾過して、280nmで再測定)、(処方緩衝液で0.4mg/mlに希釈)。注射用量:360μgFVIIa/kg。FVIIa凝固活性:24943U/mg(FVIIa Staclot活性アッセイに基づく)。
D.
クローン61:MOD−5014バッチ81A:2.36mg/ml(A280に基づく)、(処方緩衝液で0.89mg/mlに希釈)。注射用量:20,047.7U/kg。FVIIa凝固活性:24,943U/mg(FVIIa Staclot活性アッセイに基づく)。
【0642】
試験の概要
【0643】
実験番号05010
【0644】
MOD−5014およびNovoSeven(登録商標)を、単回の静脈内または皮下注射で、SDラットに対して、0.9mg/kg体重の用量で投与した。血液サンプルを、投与の0.5、4、8、12、24、34、48および58時間後に、交互に3匹のラットから眼窩静脈で採取した。クエン酸処理した血漿(0.32%)を、サンプリング直後に調製して、−20℃で分析時まで保管した。試験は、「Science in Action」,Nes−Zionaで行った。FVIIa凝固活性レベルを、評価して、詳細なPK分析をProlor−Biotechで行った。
【0645】
【表57】
【0646】
実験番号05034
【0647】
MOD−5014およびNovoSeven(登録商標)は、単回の皮下注射で、SDラットに対して、体重1kgあたり0.9mgの用量で投与された。血液サンプルを、投与の0.5、2、4、6、8、12、24、34、48および72時間後に、交互に3匹のラットから眼窩静脈で採取した。クエン酸処理した血漿(0.32%)を、サンプリング直後に調製して、−20Cで分析時まで保管した。試験は、「Science in Action」,Nes−Zionaで行った。
【0648】
FVIIa凝固活性レベルを評価して、詳細なPK分析を、Prolor−Biotechで行った。
【0649】
【表58】
【0650】
結果
【0651】
血液サンプル中のFVIIa活性を、STACLOT VIIa−rTFキット(Stago)を用いて定量した。薬物動態学的プロファイルを、各々のタンパク質について算出し、これは、各時点での3匹の動物の平均である。
【0652】
実験番号05010
【0653】
バックグラウンドの低下後:15mU/ml。
【0654】
図35は、NovoSeven(登録商標)またはMOD−5014のいずれかのIV投与およびSC投与後のFVIIaのPKプロファイルを示す。各時点でのFVIIa活性値を、表57にまとめる。IVおよびSC投与は、異なるPKパターンを有する(
図35;バックグラウンドの低下後:15mU/ml)。IV注射後のCmaxは、血液中の投与直後薬物の存在に起因して、SC注射後に得られたよりも高い(0.5時間で測定、表57および表58)。しかし、SC投与後、薬物分子は、細胞内マトリックスおよび組織に移動し、従って、Cmaxは、注射から2時間後にのみ測定できる。SC投与後の薬物の総回収は、IV注射後、Cmax値より低い。
【0655】
注射の8時間後、NovoSeven(登録商標)は、IVまたはSCのいずれかによって注射した場合、等しいPKパターンを表した(バックグラウンドの低下後:15mU/ml、
図35)。さらに、NovoSeven(登録商標)治療したマウスの凝固活性は、12時間よりも遅い時点では検出不能であったが、MOD−5014治療マウスは、投与後58時間で測定可能な活性を保持し続けていた(表57;バックグラウンドの低下後:15mU/ml;
図35)。
【0656】
【表59】
【0657】
【表60】
【0658】
実験番号05034
図36は、NovoSeven(登録商標)またはMOD−5017のいずれかのSC投与後のFVIIのPKプロファイルに相当する。クローン番号61の2つの異なるバッチ(番号75および番号81)を、NovoSeven(登録商標)と比較して、同じ濃度または同じ活性単位で検査した。各時点でのFVIIa活性値を、表59にまとめる。
【0659】
この結果によって、以前の実験に相当するSC投与後の同様のPKパターンが示される。さらに、NovoSeven(登録商標)の凝固活性は、12時間より遅い時点では検出不能であったが、MOD−5014治療マウスは、投与後24時間で測定可能な活性を保持し続けた(表59および
図36;ならびにバックグラウンドの低下後:56mU/ml(8、12時間)または32mU/ml(0.5、2、6、14時間))。
【0660】
クローン番号61バッチ番号81(D)Cmax(1,301mU/ml)は、クローン番号61バッチ番号75(B)およびNovoSeven(登録商標)(A)のCmax値(それぞれ、3,521mU/mlおよび5,908mU/ml)よりも低いが、それらは全て、同じ単位活性で注射された(表6)。しかし、バッチ番号75(B)およびバッチ番号81(D)は、注射8時間後に測定された同じ活性単位(それぞれ、559mU/mlおよび478mU/ml)を有する(
図36および表59;ならびにバックグラウンドの低下後:56mU/ml(8、12時間)または32mU/ml(0.5、2、6、14時間))。
【0661】
【表61】
【0662】
【表62】
【0663】
この報告は、2つのPKをまとめた(05010 & 05034)。本発明者らは、皮下投与におけるタンパク質の半減期およびクリアランスにおいて、FVIIに対するCTP融合の影響の特異的な洞察を得ること、ならびにこの修飾後のその比活性のパラダイムに取り組むことを目的とした。これらの試験では、SDラットに、組み換え市販のFVIIa(NovoSeven(登録商標))と比較して、2つのクローンおよび2つの異なるバッチに由来するMOD−5014の単回SC注射を与えた。この構成要素は、同様のFVIIa濃度(μg/Kg)で、または同じ活性レベル(U/Kg)で注射し、PK活性ベースの分析を行った。
【0664】
第一の試験の主要な目的は、IVおよびSC投与後の種々のPKパラメーターを確立することであった。この試験に基づいて、本発明者らは、IVまたはSC投与後に測定したPKパターンの間に相違があることを結論できる。7.78時間というt
1/2がMOD−5014のSC注射後に測定され、IV注射後はわずか4.2時間であった。AUC値は、同じであった(表58)。
【0665】
しかし、第二の試験は、NovoSeven(登録商標)と比較して、同じFVIIa濃度または等しい活性単位で注射された、MOD−5014クローン番号61の2つのバッチの間の相違に焦点をおいている。この試験では、本発明者らは、クローン61バッチ番号75が、バッチ番号81よりも優れたPKパラメーターを表したことを示した。同じ単位活性レベルで注射されたバッチ番号81は、未知の理由から低いCmaxを有した。さらに、2つの活性値の間で2.5倍の代わりに、2つの異なる用量(FVIIa濃度によって、または単位活性によって)で、クローン61バッチ番号81を注射した時、同じCmaxが測定された。両方の試験の分析をまとめた後、本発明者らは、表されたクローン28が、SC注射後のクローン61番号75(よりよいバッチ)よりも、t
1/2パラメーターを延長すると結論できる(それぞれ、7.78時間および5.7時間、表60)。また、本発明者らは、異なる時点のサンプルが、PK曲線の変動を提供する、異なるPKパターンを創出するとも結論できる。この曲線のパターンによって、血液中の薬物挙動についてよりも本発明者らに教示できる。従って、本発明者らは、Baxterによって検出されたものと同様の時点を決定すると決めた(0、0.5、2、6、8、12、24、34、48、72時間)。さらに、05010実験のFVIIa濃度は極めて高く、以下のSC実験で改訂された(05034)。将来のPK試験のために、本発明者らは、1用量について体重1kgあたり360μgのFVIIaで成分を注射すると決めた。
【0666】
以上まとめると、本発明者らは、SC投与後の本発明者らのMOD−5014生成物についてさらに試験して、最も高品質のクローンおよびバッチを決定し、MOD−5014注射量について最良の方法(FVIIa濃度または活性単位による)を決定できる。
【0667】
本発明の特定の特徴を、図示し、本明細書に記載したが、当業者であれば、多くの改変、置換、変化および等価物を想到するであろう。従って、添付の特許請求の範囲は、本発明の真の趣旨の範囲内に入るかの如く、このような全てのこのような変形および変更を包含するものとすることが理解されるべきである。