【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明による方法において、独立請求項の特徴によって達成される。本発明によれば、始動すなわち運転のための方法が、一方では、所定の過速度すなわち超過回転速度への開口装置の始動すなわち運転を含み(以下ではステップ1と呼ぶ)、他方では、始動段階の前の区間よりも後の区間において、開口装置の回転速度曲線または進行の勾配がより小さくなるように、開口装置の回転速度低下を調節する設定を含む(以下ではステップ2と呼ぶ)。
【0012】
上述のステップ1では、最初の筬打ち時の動作回転速度に対して開口装置が加速される過速度が予め定められており、したがってその値および/またはその上限が正確に規定されている。過速度は、少なくとも機械データに基づいて自動的に計算されることが特に好ましいが、プロセスデータにも基づいて計算されることが好ましい。これについては、以下により詳細に説明する。
【0013】
ステップ2は、非傾斜路形状の進行すなわち曲線、したがって、時間範囲t1からt3までの間、ステップ1からの過速度から始まる、開口装置の回転速度に対しての非一定の勾配を提供し、好適には、織機のt2からt3までの始動プロセスを時間的に完全に含むか、または時間的にそれと一致させることができる。勾配の進行すなわち曲線は、エネルギーフィードバックが、始動プロセスの後の時間区間において、前の時間区間よりも大きくなっている。これは、開口装置の制動が、織機の始動の間に均一な態様(傾斜路形状)で進行するのではなく、むしろ始動段階の後の区間において、好ましくは織機の始動の終わりに向かってより強くなることを意味する。このように、熱および他の損失を考慮して、織機の実際のエネルギー要求が考慮される。
【0014】
このように、本発明によれば、エネルギーまたは電力のフィードバックは、需要または要求に適合する形で、すなわち始動する織機による需要または要求が最も強い場合に特に強力な程度で進行する。
【0015】
好適には、時間的
平均において、時点t2と時点t’との間の開口装置の回転速度進行すなわち曲線の勾配は、時点t’と時点t3との間の時間的
平均よりも小さくない。したがって、始動段階の終わりに向かう開口装置の回転速度曲線の勾配は、始動段階のより早い時間周期よりも小さい。これは、始動段階の終わりに、始動段階のはじめよりも、より多くのエネルギーが開口装置から織機にフィードバックされることを意味する。
【0016】
同様の有利な回転速度曲線では、時間的
平均において、時点t2と時点t’との間の開口装置の回転速度曲線の勾配が、時点t’と時点t3との間の時間的
平均の絶対値よりも小さい絶対値を含む。
【0017】
始動段階の終わりに向かう開口装置の回転速度曲線の勾配が、始動段階の全時間周期のうち最も小さいことが特に好ましい。したがって、この実施形態では、エネルギーフィードバックは、時点t3における織機始動の終了時に最大である。
【0018】
時点t1またはt2で始まる開口装置の回転速度曲線の勾配が、次第に、厳密に単調に低下する減少関数である場合、開口装置から織機へのエネルギー供給は連続的に上昇し、これは、織機の実際のエネルギー需要または要求を比較的正確に反映している。
【0019】
また、好ましい実施形態では、始動する織機の回転速度曲線が傾斜路形状ではなく、始動プロセス全体(時点t2とt3との間)にわたって、または少なくともその終わりに向かって、勾配が減少するように規定される。これにより、電力テークアップが均一化され、すなわち、織機始動の終わりの電力ピークがそれほど強く発されず、それにより、開口装置によるエネルギー的な始動補助が容易になる。これに関して、織機の回転速度は、現行では、その運動エネルギーおよびエネルギー平均質量慣性モーメント(以下で定義される)から計算して決定される値として理解されるべきであることに留意されたい。
【0020】
上述したように、所定の開口装置の過速度すなわち超過回転速度は、好ましくは、機械データを用いて計算装置によって計算される。同様に、織機の全始動段階についての開口装置の回転速度曲線が、機械データを用いて計算装置によって計算され、これに関して、開口装置の回転速度曲線は、好ましくは、計算上期待される、始動する織機の電力需要または要求に応じる。
【0021】
所定の機械データは、好ましくは、開口装置および/または織機の質量慣性モーメント、開口装置および/または織機のエネルギー平均質量慣性モーメント、ネットワークおよび電源関連データ、例えば、共通のコンバータ中間回路の特性データや開口装置および織機の駆動装置の技術特性データ、電源のピーク電力などから選択される、一部またはすべてのデータである。
【0022】
機械データだけでなく、プロセスデータも、好ましくは、過速度および開口装置のさらなる回転速度曲線の計算の精度を高めるために利用される。好適には少なくとも部分的に利用されるこれらのプロセスデータは、好ましくは、計算されたまたは推定された織機の損失に基づいており、好適には、開口装置の損失にも基づいている。また、好ましくは、これらのプロセスデータは、織機の所定の始動段階の持続時間に基づくようなデータを含む。
【0023】
ステップ1とステップ2の両方を以下でより詳細に説明する。
【0024】
ステップ1に関して、開口装置の過速度が計算される。好ましくは、機械データとして、少なくとも織機および開口装置のエネルギー平均質量慣性モーメントが使用される。この点に関して、エネルギー平均質量慣性モーメントは、作業機械(織機または開口装置)と同じ動作回転速度で回転する仮想のフライホイール質量の質量慣性モーメントであり、適切な作業機械と同じ運動エネルギーを有する。
【0025】
織機および開口装置のこれら2つのエネルギー平均質量慣性モーメントの関係または比によって、2つの関連する運動エネルギーの関係または比も始動すなわち運転の終了時と同じ大きさで固定される。このように増加した過速度に開口装置を加速することが(計算により)可能となり、織機の始動に十分であるように、それに続く再制動中に非常に多くのエネルギーが放出される。これに関して、損失のないシステムの計算例は:
【0026】
織機に関して:
エネルギー平均質量慣性モーメント:J
WM=2kgm
2
始動終了時の動作回転速度:ω
Arb=600min
−1
これにより、運動エネルギーは:
W
kin,WM=2J
WM×ω
Arb2=3948J
となる。
【0027】
開口装置に関して:
エネルギー平均質量慣性モーメント:J
FBM=4kgm
2
始動終了時の動作回転速度:ω
Arb=600min
−1
これにより、運動エネルギーは:
W
kin,FBM=2J
FBM×ω
Arb2=7896J
となる。
【0028】
織機のエネルギー要求を完全にカバーできるようにするために、開口装置は、織機始動のはじめに(7896+3948)J=11844Jの運動エネルギーを有する必要があり、これは735min
−1の回転速度に対応する。しかし、このように開口駆動装置が大きいことは、コスト上の理由から望ましくないので、織機始動のためのエネルギー要求を開口装置から完全に取り出す上記の提案は実用的ではない。しかしながら、計算例は、エネルギー平均質量慣性モーメントが、織機の始動中に開口装置の回転速度プロファイルまたは運動経路を決定するための感知可能な値であることを示している。
【0029】
さらに重要な値は、すでに上述したネットワークおよび電源条件によって与えられる。これに関して、特に、織機および開口装置の共通のコンバータ中間回路のための電源の特性データが特に考慮される。
【0030】
さらに、電源のピーク電力、例えば、織機の始動の持続時間の間に適用される、定格電力の2倍の倍数が考慮されるのが好適である。例えば、特殊なネットワーク、例えば、ITネットワークに起因して、予備変圧器が製織工場で利用されるかどうかは同様に重要である。これに関して、プリアンプの電力および短絡電圧または内部インピーダンスは重要な役割を果たす。上記の範囲および文脈で言及されたネットワークおよび電源条件は、織機および開口装置の駆動装置の技術特性データと同様に、機械データに割り当てられ、このデータは、例えば、レギュレータもしくはコントローラのピーク電流および/またはアクチュエータもしくはモータのピーク回転モーメントもしくはトルクを含む。
【0031】
とりわけ、始動プロセス中の織機の予想される損失は、プロセスデータに関連する。これらを、例えば伝達油の温度から推定することができ、または、機械がすでに動作していた場合には止まっていた停止時間を考慮した平均消費電流、もしくは再度オイルの温度や、該当する場合、新たな動作回転速度から推定することができる。開口手段(保持フレーム、リフトワイヤ)を含む開口装置の損失も考慮されることが好ましい。
【0032】
平均電力およびピーク電力を、始動プロセスにおける織機の総エネルギー要求または需要(動作回転速度での運動エネルギーの合計、および損失の補償)から、および始動期間から計算することができる。次に、ネットワークおよび電源条件から、開口装置による始動支援が必要かどうか、またはこの電力(とりわけピーク電力)のために利用されるべきかどうかを推定することができる。
【0033】
これに対応して、好適な実施形態によれば、織機の始動のはじめに開口装置の過速度は、開口装置のエネルギー平均質量慣性モーメントによって決定され、必要なエネルギーまたは電力を、再び動作回転速度に制動することによって提供することができる。これが経時的な開口装置の一様な傾斜路形状の再制動を前提として行われる場合、このようにして、開口装置の過速度がエネルギーフィードバックに対して許容される最小の可能な値を得ることになる。
【0034】
上記の方法によって、織機の始動支援の目的のために、単にステップ1の使用を通じて、開口装置の回転速度挙動に関する数学的に明確な規定または事前定義を生成することが可能である。しかしながら、本発明の範囲内では、すでに上述したように、織機の始動の間に一様な、すなわち傾斜路形状の開口装置の制動が最適ではないことが認識されている。この場合、すなわち、織機始動のはじめには、開口装置は、織機が必要とするよりもかなり多くのエネルギーをフィードバックすることになる。これは、コンバータ中間回路、特に受動的なネットワーク電源の許容できない高電圧のために、始動プロセスの中断および停止の誤ったトリガを非常に迅速に引き起こす可能性がある。
【0035】
本発明によれば、この問題は、ステップ2の使用を通して解決される。開口装置の回転速度の勾配が織機の始動中における始動段階のうちの後の区間でより小さいために、まずコンバータ中間回路にエネルギーが殆どまたは全く供給されず、時間経過に応じて、織機による電力またはエネルギー需要が増加する。
【0036】
上述のステップ1および2を実施する前に、好ましくは、機械データおよび該当する場合はプロセスデータに基づいて、所定の計算装置によって、開口装置によるエネルギー的な始動支援がさらに必要であるかどうかが決定される。始動支援が必要であれば、オペレータは、この始動支援を起動するか許可するように求められるか、またはそれが自動的に起動されたことが通知されるのが好ましい。しかし後者の場合には、オペレータが始動支援を再び停止状態にできるようにすることが推奨される。
【0037】
本発明は、例示的な実施形態に関連して以下で説明される。