特許第6510059号(P6510059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510059
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】織機の始動方法
(51)【国際特許分類】
   D03D 51/02 20060101AFI20190422BHJP
   D03C 1/14 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   D03D51/02
   D03C1/14 F
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-542027(P2017-542027)
(86)(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公表番号】特表2018-508662(P2018-508662A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】EP2016052923
(87)【国際公開番号】WO2016128517
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2017年9月28日
(31)【優先権主張番号】102015102029.7
(32)【優先日】2015年2月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591021578
【氏名又は名称】リンダウェル、ドルニエ、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング
【氏名又は名称原語表記】LINDAUER DORNIER GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 卓久
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル、レーマン
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−514804(JP,A)
【文献】 特表2001−502761(JP,A)
【文献】 特表2004−512437(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/033447(WO,A1)
【文献】 特表2005−534830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03C 1/00−19/00
D03D 29/00−51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機および開口装置の制御された運転のための方法であって、
前記織機および前記開口装置はコントローラに接続され、
前記織機は主駆動装置によって駆動され、
前記開口装置は電気モータ補助駆動装置によって駆動され、
前記織機および前記開口装置は、エネルギー流伝達のための共通のコンバータ中間回路によって接続され、
前記開口装置は、時点t0で始動され、その動作回転速度を上回る過速度に時点t1まで増加し、時点t1は時点t3の前にあり、
前記織機は、前記時点t0よりも後にある時点t2で始動され、前記織機の始動段階は時点t2から時点t3までの時間間隔にあり、
前記コンバータ中間回路による前記開口装置から前記織機への動力伝達(フィードバック)は、所定の始動段階において実行される、
方法において、
前記開口装置が、前記時点t0と前記時点t1との間で予め定められた過速度まで運転されること、および、
前記開口装置の前記回転速度曲線の勾配が、前記始動段階のうちの前の区間よりも後の区間でより小さくなること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
記時点t2と時点t’との間における前記開口装置の前記回転速度曲線の前記勾配の平均値が、前記時点t’と前記時点t3との間における勾配の平均値よりも小さくないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
記開口装置の前記回転速度曲線の前記勾配、前記始動段階の全時間スパン内で前記始動段階の終わりの時点が最も小さいことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記開口装置の前記回転速度曲線の前記勾配が、前記2つの時点t1またはt2から次第に、厳密に単調に減少する関数であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記開口装置の前記所定の過速度が、機械データを用いて計算装置によって計算されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記開口装置の前記過速度およびさらなる回転速度曲線の計算、追加的なプロセスデータ、少なくとも計算されまたは推定された織機の損失も考慮することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記開口装置の前記過速度およびさらなる回転速度曲線の計算は、開口装置の損失に基づくプロセスデータも考慮することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記開口装置の前記過速度およびさらなる回転速度曲線の計算は、前記織機の前記所定の始動段階の持続時間に基づくプロセスデータも考慮することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の始動段階における前記織機の前記回転速度曲線が、少なくともその終わりである前記時点t3に向かって減少する勾配を含むように規定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織機および開口装置の制御された始動すなわち運転のための方法に関し、織機は主駆動装置によって駆動され、開口装置は電気モータ補助駆動装置によって駆動される。
【背景技術】
【0002】
このような織機および開口装置は公知である。これらにおいて、開口装置は、中心駆動シャフトが電気モータに接続された別個の駆動装置を含み、中心駆動シャフトからは開口手段の運動が誘導される。これに関し、開口手段が中心駆動シャフトの運動から分離されることができる開口装置として、Staeubli社のタイプ2881のドビー機、またはStaeubli社のタイプLXのジャカード機、またはBonas社のSIが挙げられる。
【0003】
織機の駆動シャフトは、そこからさらなる運動(織機筬、該当する場合、機械的な緯入れ要素)が誘導されるものであるが、次に、それを直接駆動する少なくとも1つのアクチュエータに接続され、アクチュエータは、同様に通常は電気モータとして実現される。このような直接駆動は、機械的構造が非常に簡単で、ほぼメンテナンスが不要であり、非常に正確に調整可能である。
【0004】
さらに、織機の駆動装置および開口装置の駆動装置は、共通のDC電圧中間回路(以後、コンバータ中間回路と呼ぶ)によって接続され、これにより、相互に一緒になってエネルギー流を形成または生成することができる。
【0005】
前述の織機の直接駆動の欠点の1つは、要求される高度に動的な織機の始動に必要な高いピーク電力が、アクチュエータを介して直接供給されなければならないことである。このピーク電力は、本質的に電源ネットワークにより直接供給されるべきである。このような電力ピークは、安定した電源ネットワークおよび適切な電源導体断面の場合でさえ、強い電圧降下をもたらし、このような電圧降下は直接駆動に利用されるコンバータの中間回路電圧にさらに進展し、織機始動の中断および停止を誤ってトリガすることになり得る。織機が弱電源ネットワーク上で動作する場合、この問題は一層顕著になる。開発途上国や新興国への繊維生産のシフトがますます進んでいる。電源ネットワークの定格電圧レベルおよび/またはタイプのために予備変圧器が必要になった場合、その条件はさらに不利になり、それにより、予備変圧器は、追加の特性インピーダンスのために、始動すべき織機の観点から電源ネットワークをさらに弱くする。
【0006】
最初の筬打ちに提供される回転速度(以下、動作回転速度と呼ぶ)までに織機が始動することが上記の理由により可能ではない場合には、この回転速度を低下させる対策が知られている。つまり、最初の筬打ちのための動作回転速度は、物品に実際に提供される動作回転速度と著しく異なる場合がある。しかしながら、これは、織物にスタートマークや許容できない品質の低下を招く可能性がある。同様に、動作回転速度の一般的な低下は許容可能な解決策ではなく、なぜなら、製品の生産がそれに対応してより長くかかるため、製織工場の経済的な収益性に問題があるからである。
【0007】
独国実用新案権第20021049号明細書は、最も近い先行技術として、織機および開口装置用の別々の駆動装置についての実現性を示し、これは、独国特許第10053079号明細書から知られている開口装置の好ましい始動プロセスを構成し、運動エネルギーを有する織機のそれに続く始動プロセスを支援するようになっている。そのために、開口装置は、織機の始動の終わりに到達すべき動作回転速度を超える回転速度まで加速される。その後、織機が始動するまでの間に、すなわち始動段階の間に、開口装置は、織機の始動を支援するために、再制動によって運動エネルギーを放出する。
【0008】
独国実用新案権第20021049号明細書は、とりわけ、織物および開口装置のための一般的な電動要素を有する駆動装置の解決策に焦点が当てられていることにより、開口装置の制動プロセスは、織機始動のはじめに始まり、この始動プロセスの間に(実質的に)均一に進行することが提案されている。しかしながら、織機始動のはじめには、開口装置が織機によって必要とされるよりも多くのエネルギーをフィードバックすることになるため、このようなフィードバックは最適ではないことが判明した。織機および開口装置の駆動装置の共通のコンバータ中間回路の電圧レベルは、その後、急激に上昇し、そのエネルギーは制動抵抗の熱に変換されなければならず、プロセスのために失われることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国実用新案権第20021049号明細書
【特許文献2】独国特許第10053079号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、開口装置の運動フィードバックエネルギーをより有効に利用することにより、織機のピーク電力要求を低減することであり、それによってコンバータ中間回路における電圧限界を維持することでプロセスの安全性を確保する。また、織機の始動原動力の低減がない場合も容認される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、本発明による方法において、独立請求項の特徴によって達成される。本発明によれば、始動すなわち運転のための方法が、一方では、所定の過速度すなわち超過回転速度への開口装置の始動すなわち運転を含み(以下ではステップ1と呼ぶ)、他方では、始動段階の前の区間よりも後の区間において、開口装置の回転速度曲線または進行の勾配がより小さくなるように、開口装置の回転速度低下を調節する設定を含む(以下ではステップ2と呼ぶ)。
【0012】
上述のステップ1では、最初の筬打ち時の動作回転速度に対して開口装置が加速される過速度が予め定められており、したがってその値および/またはその上限が正確に規定されている。過速度は、少なくとも機械データに基づいて自動的に計算されることが特に好ましいが、プロセスデータにも基づいて計算されることが好ましい。これについては、以下により詳細に説明する。
【0013】
ステップ2は、非傾斜路形状の進行すなわち曲線、したがって、時間範囲t1からt3までの間、ステップ1からの過速度から始まる、開口装置の回転速度に対しての非一定の勾配を提供し、好適には、織機のt2からt3までの始動プロセスを時間的に完全に含むか、または時間的にそれと一致させることができる。勾配の進行すなわち曲線は、エネルギーフィードバックが、始動プロセスの後の時間区間において、前の時間区間よりも大きくなっている。これは、開口装置の制動が、織機の始動の間に均一な態様(傾斜路形状)で進行するのではなく、むしろ始動段階の後の区間において、好ましくは織機の始動の終わりに向かってより強くなることを意味する。このように、熱および他の損失を考慮して、織機の実際のエネルギー要求が考慮される。
【0014】
このように、本発明によれば、エネルギーまたは電力のフィードバックは、需要または要求に適合する形で、すなわち始動する織機による需要または要求が最も強い場合に特に強力な程度で進行する。
【0015】
好適には、時間的平均において、時点t2と時点t’との間の開口装置の回転速度進行すなわち曲線の勾配は、時点t’と時点t3との間の時間的平均よりも小さくない。したがって、始動段階の終わりに向かう開口装置の回転速度曲線の勾配は、始動段階のより早い時間周期よりも小さい。これは、始動段階の終わりに、始動段階のはじめよりも、より多くのエネルギーが開口装置から織機にフィードバックされることを意味する。
【0016】
同様の有利な回転速度曲線では、時間的平均において、時点t2と時点t’との間の開口装置の回転速度曲線の勾配が、時点t’と時点t3との間の時間的平均の絶対値よりも小さい絶対値を含む。
【0017】
始動段階の終わりに向かう開口装置の回転速度曲線の勾配が、始動段階の全時間周期のうち最も小さいことが特に好ましい。したがって、この実施形態では、エネルギーフィードバックは、時点t3における織機始動の終了時に最大である。
【0018】
時点t1またはt2で始まる開口装置の回転速度曲線の勾配が、次第に、厳密に単調に低下する減少関数である場合、開口装置から織機へのエネルギー供給は連続的に上昇し、これは、織機の実際のエネルギー需要または要求を比較的正確に反映している。
【0019】
また、好ましい実施形態では、始動する織機の回転速度曲線が傾斜路形状ではなく、始動プロセス全体(時点t2とt3との間)にわたって、または少なくともその終わりに向かって、勾配が減少するように規定される。これにより、電力テークアップが均一化され、すなわち、織機始動の終わりの電力ピークがそれほど強く発されず、それにより、開口装置によるエネルギー的な始動補助が容易になる。これに関して、織機の回転速度は、現行では、その運動エネルギーおよびエネルギー平均質量慣性モーメント(以下で定義される)から計算して決定される値として理解されるべきであることに留意されたい。
【0020】
上述したように、所定の開口装置の過速度すなわち超過回転速度は、好ましくは、機械データを用いて計算装置によって計算される。同様に、織機の全始動段階についての開口装置の回転速度曲線が、機械データを用いて計算装置によって計算され、これに関して、開口装置の回転速度曲線は、好ましくは、計算上期待される、始動する織機の電力需要または要求に応じる。
【0021】
所定の機械データは、好ましくは、開口装置および/または織機の質量慣性モーメント、開口装置および/または織機のエネルギー平均質量慣性モーメント、ネットワークおよび電源関連データ、例えば、共通のコンバータ中間回路の特性データや開口装置および織機の駆動装置の技術特性データ、電源のピーク電力などから選択される、一部またはすべてのデータである。
【0022】
機械データだけでなく、プロセスデータも、好ましくは、過速度および開口装置のさらなる回転速度曲線の計算の精度を高めるために利用される。好適には少なくとも部分的に利用されるこれらのプロセスデータは、好ましくは、計算されたまたは推定された織機の損失に基づいており、好適には、開口装置の損失にも基づいている。また、好ましくは、これらのプロセスデータは、織機の所定の始動段階の持続時間に基づくようなデータを含む。
【0023】
ステップ1とステップ2の両方を以下でより詳細に説明する。
【0024】
ステップ1に関して、開口装置の過速度が計算される。好ましくは、機械データとして、少なくとも織機および開口装置のエネルギー平均質量慣性モーメントが使用される。この点に関して、エネルギー平均質量慣性モーメントは、作業機械(織機または開口装置)と同じ動作回転速度で回転する仮想のフライホイール質量の質量慣性モーメントであり、適切な作業機械と同じ運動エネルギーを有する。
【0025】
織機および開口装置のこれら2つのエネルギー平均質量慣性モーメントの関係または比によって、2つの関連する運動エネルギーの関係または比も始動すなわち運転の終了時と同じ大きさで固定される。このように増加した過速度に開口装置を加速することが(計算により)可能となり、織機の始動に十分であるように、それに続く再制動中に非常に多くのエネルギーが放出される。これに関して、損失のないシステムの計算例は:
【0026】
織機に関して:
エネルギー平均質量慣性モーメント:JWM=2kgm
始動終了時の動作回転速度:ωArb=600min−1
これにより、運動エネルギーは:
kin,WM=2JWM×ωArb=3948J
となる。
【0027】
開口装置に関して:
エネルギー平均質量慣性モーメント:JFBM=4kgm
始動終了時の動作回転速度:ωArb=600min−1
これにより、運動エネルギーは:
kin,FBM=2JFBM×ωArb=7896J
となる。
【0028】
織機のエネルギー要求を完全にカバーできるようにするために、開口装置は、織機始動のはじめに(7896+3948)J=11844Jの運動エネルギーを有する必要があり、これは735min−1の回転速度に対応する。しかし、このように開口駆動装置が大きいことは、コスト上の理由から望ましくないので、織機始動のためのエネルギー要求を開口装置から完全に取り出す上記の提案は実用的ではない。しかしながら、計算例は、エネルギー平均質量慣性モーメントが、織機の始動中に開口装置の回転速度プロファイルまたは運動経路を決定するための感知可能な値であることを示している。
【0029】
さらに重要な値は、すでに上述したネットワークおよび電源条件によって与えられる。これに関して、特に、織機および開口装置の共通のコンバータ中間回路のための電源の特性データが特に考慮される。
【0030】
さらに、電源のピーク電力、例えば、織機の始動の持続時間の間に適用される、定格電力の2倍の倍数が考慮されるのが好適である。例えば、特殊なネットワーク、例えば、ITネットワークに起因して、予備変圧器が製織工場で利用されるかどうかは同様に重要である。これに関して、プリアンプの電力および短絡電圧または内部インピーダンスは重要な役割を果たす。上記の範囲および文脈で言及されたネットワークおよび電源条件は、織機および開口装置の駆動装置の技術特性データと同様に、機械データに割り当てられ、このデータは、例えば、レギュレータもしくはコントローラのピーク電流および/またはアクチュエータもしくはモータのピーク回転モーメントもしくはトルクを含む。
【0031】
とりわけ、始動プロセス中の織機の予想される損失は、プロセスデータに関連する。これらを、例えば伝達油の温度から推定することができ、または、機械がすでに動作していた場合には止まっていた停止時間を考慮した平均消費電流、もしくは再度オイルの温度や、該当する場合、新たな動作回転速度から推定することができる。開口手段(保持フレーム、リフトワイヤ)を含む開口装置の損失も考慮されることが好ましい。
【0032】
平均電力およびピーク電力を、始動プロセスにおける織機の総エネルギー要求または需要(動作回転速度での運動エネルギーの合計、および損失の補償)から、および始動期間から計算することができる。次に、ネットワークおよび電源条件から、開口装置による始動支援が必要かどうか、またはこの電力(とりわけピーク電力)のために利用されるべきかどうかを推定することができる。
【0033】
これに対応して、好適な実施形態によれば、織機の始動のはじめに開口装置の過速度は、開口装置のエネルギー平均質量慣性モーメントによって決定され、必要なエネルギーまたは電力を、再び動作回転速度に制動することによって提供することができる。これが経時的な開口装置の一様な傾斜路形状の再制動を前提として行われる場合、このようにして、開口装置の過速度がエネルギーフィードバックに対して許容される最小の可能な値を得ることになる。
【0034】
上記の方法によって、織機の始動支援の目的のために、単にステップ1の使用を通じて、開口装置の回転速度挙動に関する数学的に明確な規定または事前定義を生成することが可能である。しかしながら、本発明の範囲内では、すでに上述したように、織機の始動の間に一様な、すなわち傾斜路形状の開口装置の制動が最適ではないことが認識されている。この場合、すなわち、織機始動のはじめには、開口装置は、織機が必要とするよりもかなり多くのエネルギーをフィードバックすることになる。これは、コンバータ中間回路、特に受動的なネットワーク電源の許容できない高電圧のために、始動プロセスの中断および停止の誤ったトリガを非常に迅速に引き起こす可能性がある。
【0035】
本発明によれば、この問題は、ステップ2の使用を通して解決される。開口装置の回転速度の勾配が織機の始動中における始動段階のうちの後の区間でより小さいために、まずコンバータ中間回路にエネルギーが殆どまたは全く供給されず、時間経過に応じて、織機による電力またはエネルギー需要が増加する。
【0036】
上述のステップ1および2を実施する前に、好ましくは、機械データおよび該当する場合はプロセスデータに基づいて、所定の計算装置によって、開口装置によるエネルギー的な始動支援がさらに必要であるかどうかが決定される。始動支援が必要であれば、オペレータは、この始動支援を起動するか許可するように求められるか、またはそれが自動的に起動されたことが通知されるのが好ましい。しかし後者の場合には、オペレータが始動支援を再び停止状態にできるようにすることが推奨される。
【0037】
本発明は、例示的な実施形態に関連して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】一定のエネルギー伝達部の場合のフィードバックの計算方法を説明するための流れ図である。
図2】本発明を明確にするために、t1<t2の場合の概略的な回転速度−時間線図である。
図3図2と同様にt1<t2であるが、開口装置の回転速度が極大値を有する概略的な回転速度−時間線図である。
図4】t1>t2の場合の概略的な回転速度−時間線図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、出発点から進行して、織機の始動の各時点で織機の電力需要を比例的に支援する計算方法を示しており、相対的に見て、割合は一定(例えば40%)のままである。織機の始動は、運動エネルギーおよびエネルギー平均質量慣性モーメントから計算された回転速度が動作回転速度まで経時的に傾斜路形状に増加するように進行しなければならない。したがって、これに関して、織機の予想される電力要求は、開口装置が所定の過速度に達した時点t1の前には位置しない時点t2、すなわち織機の始動時点で可能なパーセンテージに関して一定のままである割合でカバーされる。
【0040】
計算ステップ1Aでは、機械データおよびプロセスデータ1A’から織機の初期最大電力需要または要求が決定される。この例では、織機の動作回転速度およびエネルギー平均質量慣性モーメントが機械データとして使用される。時間または遷移角度範囲として表される、織機の予想される損失または損失モーメントおよび始動期間は、プロセスデータとして含まれる。
【0041】
好適には、始動プロセスの終わりに向かって、したがって動作回転速度で、織機の運動エネルギーがまず計算される。このエネルギーを遷移角度範囲で割った値は、機械的に有効な加速モーメントを与える。これには、動作回転速度における予想される損失モーメントが加えられ、それは主として伝達部内の油温に依存する。このようにして生じる、動作回転速度を乗じた合計のモーメントが、織機の最大必要電力を提供する。
【0042】
この最大必要電力は、ネットワークまたは電源条件を特徴付ける機械データと比較され、これには、コンバータ中間回路のための電源ユニットの特性データ(受動または能動ネットワーク電源、該当する場合、ブースト機能または昇圧型コンバータ機能、ピーク電力)だけでなく、潜在的な予備変圧器の特性データ(定格電力、短絡電圧、または内部インピーダンス)も含まれる。比較は推定値である。例えば、どのピーク電力において、適切な予備変圧器または適切な電源ユニットが、どの程度の電圧降下を示すことが期待されるか、表に格納される。このようにして予想されるコンバータ中間回路における全電圧降下が非常に強いか、または顕著である場合、モータ端子での電圧需要をもはや満足させることができず、および/またはコンバータ中間回路の不足電圧検出器がトリガされ、始動プロセスの中断および停止をもたらし、それに対応して、開口装置の部分に追加のエネルギーまたは電力が供給されなければならない。開口装置からの補給されるこの電力の割合は、計算ステップ1Aから値1a’(需要量)として出力される。
【0043】
計算ステップ1Bを計算ステップ1Aと同時にまたは略並行して実行すると、計算ステップ1Bにおいて開口駆動装置の既知のピークトルクまたは回転モーメントにその動作回転速度が乗算されるのが、この目的に適している。開口駆動装置のピーク電力が得られる。該当する場合、損失モーメントはピークトルクから事前に差し引かれている。このようにして算出された開口駆動装置のピーク電力は、計算ステップ1Bからの値1b’(能力または可能性)として出力される。
【0044】
計算ステップ2では、まず、1a’(需要量または要求量)と1b’(能力または可能性)とが比較される。需要量が能力よりも大きい場合、意図された動作回転速度への始動中に上述のタイプの問題を排除することはできない。したがって、ステップ2Bにおいて反応がトリガされる。これは、該当する場合、より低い動作回転速度を選択し、試験方法で機械を始動させる要求と関連付けて、オペレータへの警告信号から構成され得る(経路2b’参照)。このようにして、ステップ1Aからの推定値を、コンバータ中間回路の実際に観測された挙動によって補正することができる。別の可能性は、オペレータへの対応する情報通知の下で、動作回転速度を自動的に低減させることを含む。この場合にも、適切な機械始動は、検証のために役立つことができ、該当する場合、ステップ1Aからの仮定の修正に役立つことができる。これに関して、低減された動作回転速度は、需要量1a’が能力1b’と全く同じになるように計算されるべきである。
【0045】
Min(1a’,1b’)として数学的に表現された2つの値1a’,1b’のうち小さい方が、2c’として計算ステップ3に転送される。このピーク電力の半分に織機の始動に必要な時間を乗じると、開口装置の部分に補給されるべきエネルギーが得られ、このエネルギーは、織機の始動時点t2で利用可能でなければならない。開口装置のこの補助エネルギー、動作回転速度、およびエネルギー平均質量慣性モーメントからの計算は、時点t2において、開口装置が、動作回転速度と比較して有していなければならない過速度ωU,FBMを与える。(さらに理解を深めるために、上記の無損失システムの計算例も参照されたい)。
【0046】
始動中の織機の電力要求または需要は、回転速度および時間に比例して発生し、これに対応して、この方法のための上記の取り決めまたは同意に従って、電力は開口装置の部分に補給される(最終的に値2c’に達するまで)。この事実とすでに知られているωU,FBM(t2)の値から、任意の所望の時点tにおける開口装置の回転速度の値ωFBM(t)を織機の始動完了時点t3まで計算することができる。時間の積分によって、角度の進行すなわち曲線φFBM(t)が得られる。駆動レギュレータまたはコントローラが所定の指示をどのように必要とするかに依存して、例えば、[t2...t3]の範囲内の等距離の時点については、ωFBM(t)またはωFBM(t)の関連する縦座標値を用いて値の対(支持点)が形成され、これにより、ソフトウェアルーチン(該当する場合、駆動レギュレータまたはコントローラ自体において)が、電子カムディスクに対応する数式を生成する。計算に必要なデータの織機からのさらなる伝達は、図1の1a’’を参照する。
【0047】
異なる好適な計算方法は多項式を使用することであり、その係数は開口装置の回転速度または角度進行が所望の方法で織機の始動範囲に対して予め定められるような方法で決定される。
【0048】
本発明に対応する時間の関数として、開口装置(FBM)および織機(WM)の回転速度の3つの例示的な進行すなわち曲線が、図2に示されている。開口装置は時点t0で始動され、時点t1までに、所定の、特に計算された過速度ωU,FBM(上記参照)まで駆動されすなわち運転される。時点t2では、織機が始動され、時点t2から時点t3までの始動段階では、それは動作回転速度ωarbにまで上昇される。この始動段階の間に、エネルギーは、画定された方法で開口装置から織機に供給され、これに関連する可能な計算方法が上記に示されている。
【0049】
本発明に重要なのは、開口装置の回転速度曲線の勾配が、織機の始動段階(時点t2とt3との間にある)のうちの後の区間において、前の区間よりも小さいことである。これに関して、後の区間は必ずしも時点t3を境界とする必要はなく、および/または前の区間は必ずしも時点t2を境界とする必要はない(t1がt2より後にある場合にはt1、図4参照)が、時点t2(t1がt2より後にある場合にはt1)とt3との間の周期内の勾配進行を互いに比較することができる。
【0050】
図2から、この例示的な実施形態では、実線(ここではFBM’として参照される)で示されている開口装置の回転速度曲線の勾配は、始動段階の全時間スパンを基準とした始動段階の終わりに向かって最も小さくなり、すなわち、曲線は、t2とt3の間の範囲内の時点t3で最も小さい勾配を含む。好ましくは、図2に例としてマークされた時点t2と時点t’との間の開口装置の回転速度曲線の勾配は、時点t’と時点t3との間の時間的平均における勾配よりも小さくない。
【0051】
また、一時的に、時点t2とt3との間の開口装置の回転速度進行が、勾配が再び小さくなる前に、始動段階のより早いステージで立ち上がり勾配、すなわち立ち上がりスロープを有することも可能である。
【0052】
実線で示された織機の回転速度進行(ここではWM’として参照される)は、上記の計算方法で仮定されたように、図2に傾斜路形状に直線的に上昇するように示されている。織機の別の回転速度進行(ここではWM’’として参照される)は破線で示され、時点t2とt3との間の運転中の回転速度は減少する立ち上がり勾配を含む。このような進行では、織機始動の終わりに向かう電力ピークがそれほど顕著ではないので、電力テークアップは直線的な運転よりも一様である。開口装置の例示的な対応する回転速度曲線(ここではFBM’’として参照される)は、同様に破線で示されている。特に織機の始動段階の終わりに向かう、すなわち時点t3で、織機の始動段階の終わりに向かうエネルギーフィードバックが、織機の回転速度WM’が傾斜路形状に上昇する前述の場合よりも小さいために、回転速度曲線FBM’と比較してより平坦な曲線は、そこでより平坦な織機の曲線WM’’に対応している。
【0053】
さらに、第3の変形例が、図2に一点鎖線で示されている。織機の回転速度曲線(ここではWM’’’として参照される)はS字形状を含み、これは、開口装置の回転速度曲線(ここではFBM’’’として参照される)でも繰り返される。開口装置から織機へのエネルギーフィードバックは、時点t2に隣接するより平坦な各回転速度曲線の後で、特に、織機の回転速度の最も強いすなわち最も鋭い立ち上がりの間に大きくなる。織機の始動段階の終わりに向かって、回転速度進行すなわち曲線FBM’’’およびWM’’’の両方が再び平坦になる。
【0054】
図3には、上述した開口装置の回転速度の極大値が存在する場合が示されている。これが、開口装置の許容最大回転速度を上回っているかどうかをそれぞれ検査しなければならない。
【0055】
時点t1が時点t2の後にある場合を図4に示す。最初に説明したように、需要または要求の観点からは、織機は、始動段階のはじめに開口装置の部分に対する支援から利益を得ないので、したがって、織機は、時点t1において開口装置がその計算された過速度に達する前に、(時点t2で)すでに始動され得る。その後、t1からt3の時間間隔で織機にエネルギーを伝達する準備ができていることが重要である。
【0056】
織機の主駆動装置および開口装置の電子補助駆動装置の起動は、従来技術のコントローラによって引き継がれ、したがって、ここではさらに詳細には説明しない。上記の計算は、記載されたコントローラに接続された計算装置を使用して実行される。
【0057】
本発明は図示され説明された例示的な実施形態に限定されない。特許請求の範囲の範囲内の変更は、これらが異なる例示的な実施形態で図示され説明されていても、特徴の組み合わせとして可能である。
図1
図2
図3
図4