(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510074
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】NADPHの精製プロセス
(51)【国際特許分類】
C07H 21/02 20060101AFI20190422BHJP
C12P 19/36 20060101ALI20190422BHJP
B01J 41/14 20060101ALI20190422BHJP
B01J 41/05 20170101ALI20190422BHJP
B01J 49/07 20170101ALI20190422BHJP
B01J 49/57 20170101ALI20190422BHJP
B01J 49/60 20170101ALI20190422BHJP
B01D 61/02 20060101ALI20190422BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20190422BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20190422BHJP
B01D 63/10 20060101ALI20190422BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20190422BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20190422BHJP
C12P 1/00 20060101ALN20190422BHJP
C07H 1/06 20060101ALN20190422BHJP
【FI】
C07H21/02
C12P19/36
B01J41/14
B01J41/05
B01J49/07
B01J49/57
B01J49/60
B01D61/02 500
B01D61/14 500
B01D63/02
B01D63/10
B01D69/00
B01D61/58
!C12P1/00 A
!C07H1/06
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-559118(P2017-559118)
(86)(22)【出願日】2016年12月14日
(65)【公表番号】特表2019-503334(P2019-503334A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】CN2016109849
(87)【国際公開番号】WO2018107377
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2017年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】516184986
【氏名又は名称】邦泰生物工程(深▲セン▼)有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】517389159
【氏名又は名称】江西邦泰緑色生物合成生態産業園発展有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】張▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】張冬民
(72)【発明者】
【氏名】傅栄昭
【審査官】
三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第105463043(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104892710(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104876993(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104876994(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第103233051(CN,A)
【文献】
米国特許第03749709(US,A)
【文献】
Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic,2003年,Vol.24-25,p.39-52
【文献】
Current Analytical Chemistry,2006年,Vol.2(4),p.379-388
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NADPを基質とし、デヒドロゲナーゼで触媒して製造されたNADPH粗生成物を、孔径0.1〜0.5μmの中空糸膜である精密ろ過膜を通過させる、前処理工程Aと、
工程Aで精密ろ過されたNADPH粗生成物を陰イオン交換樹脂カラムに通液する、イオンカラム通液工程Bと、
通液終了後、溶出液に陽イオンが含まれなくなるまでイオンカラムを純水でリンスする、陽イオン溶出工程Cと、
溶出液に波長260nmにおいて紫外吸収がある物質が含まれなくなるまでイオンカラムを0.07〜0.5mol/L塩化ナトリウム溶液でリンスする、不純物溶出工程Dと、
0.5mol/L塩化ナトリウムと、7%(V/V%)エタノールとを含有する水溶液でイオンカラムをリンスし、波長340nmにおいて紫外吸収がある溶出液を収集する、製品溶出工程Eと、
工程Eで得られた溶出液を濃縮し、乾燥させた後、精製されたNADPH完成品が得られる工程Fと、
を順に含むことを特徴とする、NADPHの精製プロセス。
【請求項2】
前記陰イオン交換樹脂が、マクロポア型スチレン系第四級アミンI型強アルカリ性陰イオン交換樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項3】
前記NADPH粗生成物の通液量は、NADPHで陰イオン交換樹脂1gあたり9〜15gであることを特徴とする、請求項2に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項4】
前記NADPH粗生成物のpHが低い場合に、工程Aの前に前記NADPH粗生成物のpHを8.0〜11.0に調整することをさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項5】
前記NADPH粗生成物のpHが低い場合に、工程Aの前に前記NADPH粗生成物のpHを9.0〜10.0に調整することをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項6】
水酸化ナトリウム溶液に前記陰イオン交換樹脂を浸漬させ、その後、純水で中性に近くまでリンスする、という前記陰イオン交換樹脂に対する前処理工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項7】
前記陰イオン交換樹脂を再生する工程をさらに含み、再生過程で使用される再生液が1.0mol/L塩化ナトリウムと、0.1mol/L塩酸を含有する水溶液であり、リンス速度が0.8〜1.5BV/Hであり、再生液の用量が2.0BVであり、再生後、純水で樹脂を中性に近くまでリンスすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項8】
工程C及び工程Dは全過程で紫外可視分光光度計により検出を行い、前記溶出液の収集方式は、前記紫外可視分光光度計の示した値が上がり始める時に収集を開始し、示した値が下がり始める時に収集を停止することを特徴とする、請求項1又は2に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項9】
前記濃縮処理は、精密ろ過と、限外ろ過と、ナノろ過とを順に含み、前記精密ろ過処理には孔径0.1〜0.5μmの中空糸膜を使用し、前記限外ろ過処理には分画分子量が10Kの限外ろ過膜を使用し、前記ナノろ過処理には分画分子量が100〜400のスパイラル膜を使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載のNADPHの精製プロセス。
【請求項10】
前記乾燥処理が真空凍結乾燥であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のNADPHの精製プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヌクレオチド系補酵素の精製プロセスの技術分野に関し、特にバイオ触媒法で製造されたNADPH粗生成物を精製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
NADPHは、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(Nicotinamide Adenine Dinucleotide Phosphate)の英語略語で、ヒト細胞を含むあらゆる活細胞に存在する非常に重要な生理物質であり、酸化−還元反応を触媒できる数多くの酵素の補助因子であり、還元型補酵素IIと呼ばれる。
【0003】
NADPHは、生体細胞内で様々な合成代謝反応、例えば脂類、脂肪酸及びヌクレオチドの合成に関与し、これらの反応において、NADPHは還元剤、水素負イオン供与体として必要なものである。また、NADPHは、生体内で水素移動の担体として働くほか、リン酸移動の媒介として各種の合成反応に関与している。
【0004】
現在、NADPHは、各種の医薬生化学企業の製品の製造に広く適用されている。また、NADPHによる疾患の治療と予防についての研究が進むにつれて、NADPHの医薬保健品としての重要性が益々目立ってきており、市場ニーズが年々増えている。
【0005】
これまで、NADPHの製造方法は主に、1、サッカロマイセス発酵法、2、化学的合成法、3、バイオ触媒法の三つを含む。そのうち、化学的合成法にはコストが高くてキラル化合物を生成するという欠点があり、サッカロマイセス発酵法で生産されたNADPHには一定の有機溶剤が残っている。これに対して、バイオ触媒法は、有機溶剤の残留もなく、キラルの問題もなく、かつ製造されたNADPHが生体内のものと相同であるため、今まで環境に最も優しくて公害がないNADPHの製造方法となる。
【0006】
従来のNADPHを製造するためのバイオ触媒法では、一般的にNADPを基質とし、デヒドロゲナーゼの触媒作用で製造する。この方法で製造されたNADPH粗生成物に対して、比較的純粋なNADPH完成品を得るために、更なる精製処理が必要である。現在、通常適用される精製処理方法は、液体クロマトグラフィー及びイオン交換樹脂法を含む。液体クロマトグラフィーには、精製生成物の純度が高く、収率が高い利点があるが、NADPH自身が有する官能基が極めて強い極性及び親水性を有するため、液体クロマトグラフィーによる精製処理中にイオン対試薬及び緩衝塩が導入されてしまい、イオン対試薬の分離が困難であり、かつ、精製過程で有機試薬の使用が必要である。したがって、液体クロマトグラフィーは、新たな不純物を導入し、またコストが高いので、工業的生産に適さない。そして、現在当業界で通常採用されているイオン交換樹脂法によるNADPHの純度は95%程度が限界であり、収率は60%程度が限界であり、生産能力が大きく制限され、市場ニーズを満たせない。
【発明の概要】
【0007】
従来技術の上記欠点に鑑みて、従来のイオン交換樹脂法に存在する収率が低くて精製生成物の純度が低いという技術問題を解決するために、本発明は、収率が高く、生成物の純度が高く、バイオ触媒法で製造されたNADPH粗生成物を精製処理するための新規なイオン交換樹脂法を提供することを目的とする。
【0008】
前記目的を実現するために、本発明は、以下の工程を順に含むことを特徴とするNADPHの精製プロセスを提供する。
【0009】
バイオ触媒法で製造されたNADPH粗生成物を、孔径0.1〜0.5μmの中空糸膜である精密ろ過膜を通過させる、前処理工程A。
【0010】
本発明で提供するNADPHの精製プロセスの適用処理対象は、バイオ触媒法でNADPHを製造して得られたNADPH粗生成物である。当該バイオ触媒法とは、具体的に、生体酵素で基質を触媒してNADPHに変換させる方法をいう。その中で、生体酵素としては、デヒドロゲナーゼ、又はデヒドロゲナーゼと一種類以上の他の酵素とを併用し、基質としては、NADPであっても、NADPに変換可能な前駆体であってもよい。NADPH粗生成物とは、酵素により基質を触媒して完全に反応させた後に得られた、いかなる処理も行っていない酵素反応液のことをいう。反応過程における微生物及び固体触媒が精製の純度及び収率に影響を及ぼすため、反応過程における固体顆粒及び微生物を除去するように、精密ろ過膜によりNADPHを初歩的に精製する。選択される膜の孔径が大きすぎると、一部の固体や微生物がきれいに除去されないことがあり、膜の孔径が小さすぎると、NADPHが通過できない。
【0011】
工程Aで精密ろ過されたNADPH粗生成物を陰イオン交換樹脂カラムに通液する、イオンカラム通液工程B。
【0012】
NADPH粗生成物を陰イオン交換樹脂カラムに通液するとは、主にNADPHをイオン結合としてイオン交換樹脂に吸着させ、そして異なる溶出条件で不純物とNADPHとをそれぞれ溶出させ、比較的純粋な製品を得ることである。
【0013】
通液終了後、溶出液に陽イオンが含まれなくなるまでイオンカラムを純水でリンスする、陽イオン溶出工程C。
【0014】
NADPH粗生成物には、金属イオン及び有機陽イオンが含まれる。陽イオン自身が陰イオン交換樹脂に吸着されにくいが、NADPHを吸着した陰イオン交換樹脂が陽イオンと親吸着しやすいので、陽イオンを溶出させないと、製品の含有量と純度が低くなる。
【0015】
溶出液に波長260nmにおいて紫外吸収がある物質が含まれなくなるまでイオンカラムを0.07〜0.5mol/L塩化ナトリウム溶液でリンスする、不純物溶出工程D。
【0016】
NADPH粗生成物には、原料と若干の反応副生成物を含む不純物が含まれており、これらの不純物は点電荷が異なる。点電荷の差異によって、濃度の低い塩化ナトリウム溶液によりイオン結合が弱い不純物を溶出させることができる。使用中、塩化ナトリウム溶液の濃度が高すぎると、NADPHを溶出させてしまい、収率が低下するので、好ましくない。また、塩化ナトリウム溶液の濃度が低すぎると、イオン結合が弱い不純物を溶出させることができず、その結果、NADPHの純度が低く要求を満たせなくなるので、好ましくない。NADPHも不純物も波長260nmにおいて紫外吸収があるため、260nmの波長を検出波長として選択する。
【0017】
0.5mol/L塩化ナトリウムと、7%(V/V%)エタノールとを含有する水溶液でイオンカラムをリンスし、波長340nmにおいて紫外吸収がある溶出液を収集する、製品溶出工程E。
【0018】
製品の溶出濃度は、0.5mol/L塩化ナトリウム、7%(V/V%)エタノールの水溶液を選択する。溶出条件を低下させると、製品のテーリング又は溶出不完全となり、製品の収率が低く過ぎる。また、塩化ナトリウムの濃度又はエタノールの濃度をさらに増大させると、若干のイオン結合が強い不純物を製品に溶出させて純度を低下させる。波長340nmにおいて製品は紫外吸収があるが、不純物は紫外吸収がないため、340nmの波長で製品を収集することにする。
【0019】
工程Eで得られた溶出液を濃縮し、乾燥させた後、精製されたNADPH完成品が得られる工程F。
【0020】
好ましくは、前記陰イオン交換樹脂が、マクロポア型スチレン系第四級アミンI型強アルカリ性陰イオン交換樹脂である。本発明者は、大量の陰イオン交換樹脂に対して実験を行い、スクリーニングした後、マクロポア型スチレン系第四級アミンI型強アルカリ性陰イオン交換樹脂がNADPHに対して担持容量が非常に高く、それに当該精製プロセスに応用されて得られたNADPH完成品の収率が高く、純度が98%以上となり、実際のプロセス操作及び樹脂の再生処理も簡単であることを見出した。
【0021】
より好ましくは、前記NADPH粗生成物の通液量は、NADPHでマクロポア型スチレン系第四級アミンI型強アルカリ性陰イオン交換樹脂1gあたり、9〜15gである。
【0022】
前記NADPH粗生成物のpHが低い場合に、前記プロセスは、生成物の安定性を保持するように、工程Aの前に前記NADPH粗生成物のpHを8.0〜11.0に調整することをさらに含むことが好ましい。より好ましくは、前記NADPH粗生成物のpHを9.0〜10.0に調整する。
【0023】
NADPHは、アルカリ環境で安定であるため、前記プロセスは、水酸化ナトリウム溶液に前記陰イオン交換樹脂を浸漬させることにより、樹脂をCl−からOH−に転化させ、その後、純水で中性に近くまでリンスする、という前記陰イオン交換樹脂に対する前処理工程をさらに含むことが好ましい。その中で、水酸化ナトリウム溶液の濃度は、0.1〜0.5mol/Lであることが好ましい。
【0024】
生産のコストを低下させるように陰イオン交換樹脂をリサイクルするために、好ましくは、前記プロセスは、前記陰イオン交換樹脂を再生する工程をさらに含み、再生過程で使用される再生液が1.0mol/L塩化ナトリウムと、0.1mol/L塩酸を含有する水溶液であり、リンス速度が0.8〜1.5BV/Hであり、再生液の用量が2.0BVであり、再生後、純水で樹脂を中性に近くまでリンスする。
【0025】
好ましくは、前記精製プロセス中の工程C及び工程Dは全過程で紫外可視分光光度計により検出を行い、前記溶出液の収集方式は、前記紫外可視分光光度計の示した値が上がり始める時に収集を開始し、示した値が下がり始める時に収集を停止する。
【0026】
前記精製プロセスにおいて、工程Fにおける濃縮処理には、本分野において既知の適用できる任意の濃縮方式を採用してよい。好ましくは、前記濃縮処理は、精密ろ過、限外ろ過及びナノろ過を順に含む。製品精製後に得られた収集液は含有量が低く、大量の水、塩、エタノールが含まれており、ナノろ過により塩及びエタノールを除去する、並びに濃縮効果を達成する。その中で、前記精密ろ過処理には孔径0.1〜0.5μmの中空糸膜を使用し、固体顆粒及び若干の微生物を除去することを目的とする。前記限外ろ過処理には分画分子量が10Kの限外ろ過膜を使用し、エンドトキシン及び微生物を除去することを目的とする。前記ナノろ過処理には分画分子量が100〜400のスパイラル膜を使用し、小分子の不純物を除去することを目的とする。
【0027】
前記精製プロセスにおいて、工程Fにおける乾燥処理には、本分野において既知の適用できる任意の乾燥方式を採用してよい。好ましくは、前記乾燥処理が真空凍結乾燥である。
【発明の効果】
【0028】
従来技術に比べ、本発明で提供するNADPHの精製プロセスは、収率が高く、精製生成物の純度が高いという利点を有する。工業的実施より、当該精製プロセスの収率は85%以上に達せ、精製されたNADPHの純度は98%以上と高いと証明された。また、当該プロセスは、有毒有害の有機溶剤を使用せず、環境に優しく、プロセスが簡単で操作しやすく、生産のコストが低いので、精製された製品は非常に市場競争力がある。当該プロセスは、バイオ触媒法でNADPHを製造して得られたNADPH粗生成物の精製に対して一般的適用性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、具体的な実施例を参照して本発明をさらに詳しく説明するが、以下の実施例は本発明に対する解釈であり、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例1
処理対象はBontac Bio−Engineering(深セン)株式会社が生体酵素触媒法(NADPを基質とし、デヒドロゲナーゼで触媒してNADPHを製造する)で製造された4種類のNADPH粗生成物溶液であり、これらの4種類のNADPH粗生成物溶液中のNADPHの含有量の測定結果を表1に示す。
【0031】
前記4種類のNADPH粗生成物溶液の精製過程は以下のとおりである。
1、樹脂前処理:マクロポア型スチレン系第四級アミンI型強アルカリ性陰イオン交換樹脂をイオンカラムに充填し、0.1〜0.5mol/L水酸化ナトリウム溶液を加えて浸漬を行い、その後、純水で中性に近くまでリンスした。
2、NADPH粗生成物前処理:バイオ触媒法で製造されたNADPH粗生成物のpHを9.0〜10.0に調整し、そしてpHが調整されたNADPH粗生成物を孔径0.45μmの中空糸膜を通過させて精密ろ過処理を行った。
3、イオンカラム通液:工程2で精密ろ過を行ったNADPH粗生成物を、工程1で前処理されたイオンカラムに通液し、通液速度が0.8〜1.5BV/Hであり、通液量が陰イオン交換樹脂1gあたり9〜15gであった。
4、陽イオン溶出:通液終了後、純水でイオンカラムをリンスし、リンス速度が0.5〜2.0BV/Hであり、全過程で硬水指示薬を用いて溶出液をオンラインで検出し、硬水指示薬が変色しなくなるまでリンスし続けた(硬水指示薬が青色から赤色に変化したことは、陽イオンがきれいに除去されたことを示し、青色が変化しないことは、多価陽イオンがないことを示す)。
5、不純物溶出:0.3mol/L塩化ナトリウム溶液でイオンカラムをリンスし、全過程で紫外可視分光光度計を用いて溶出液をオンラインで検出し、検出波長は260nmとし、紫外可視分光光度計の示した値の変化を観察し、示した値が上がってから下がり、示した値が変化しなくなるときにリンスを停止した。
6、製品溶出:0.5mol/L塩化ナトリウムと、7%(V/V%)エタノールとを含有する水溶液でイオンカラムをリンスし、全過程で紫外可視分光光度計を用いて溶出液をオンラインで検出し、検出波長は340nmとし、紫外可視分光光度計の示した値の変化を観察し、示した値が上がり始める時に溶出液を収集し、示した値が下がり始める時に収集を停止し、溶出液の収集が完成した後イオンカラムに対して再生処理を施した。
7、後処理:工程6で収集された溶出液を順に精密ろ過、限外ろ過及びナノろ過処理により、100〜150g/Lまで濃縮させた後、真空凍結乾燥機で乾燥させてNADPH完成品を得た。その中で、精密ろ過過程に孔径0.45μmの中空糸膜を使用し、限外ろ過過程に分画分子量が10Kの限外ろ過膜を使用し、ナノろ過過程に分画分子量が100〜400のスパイラル膜を使用した。
【0032】
高速液体クロマトグラフィーにより、これらの4種類の精製されたNADPH完成品の含有量及び純度を測定し、収率を計算した。その結果を表1に示す。
表1
NADPH粗生成物溶液 精製されたNADPH完成品
種類 通液体積/L NADPH含有量/g NADPH含有量/g 酵素活性/% 純度/% 収率/%
1 13000 10289 8879.4 98.3 98.7 86.3
2 15000 12006 10469.2 98.1 98.5 87.2
3 36000 23069 20000.8 98.2 98.4 86.7
4 38000 25736 22081.5 98.5 99.1 85.8
【0033】
実施例2
イオンカラムの再生過程は以下のとおりである。
1、リンス:紫外可視分光光度計の示した値が0.5以下に下がるまで、大量の純水で樹脂に残存した副生成物を流した。
2、再生:1.0mol/L塩化ナトリウムと、0.1mol/L塩酸を含有する水溶液を再生液として調製し、再生弁を開け、再生ポンプを開け、再生液でイオンカラムをリンスした。リンス速度が0.8〜1.5BV/Hであり、再生液の用量が2.0BVであった。
3、水洗:再生液による再生が完成した後、カラム容量の2〜3倍の純水でイオンカラムを中性に近くまでリンスした後、当該イオンカラムが次の精製処理に用いられることができ、吸着性が良好である。