(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エチレンコポリマー樹脂が、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコール、エチレンと酢酸ビニルとのコポリマー、エチレンとアルキルアクリレートとのコポリマー、およびそれらの組合せのうち少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のアロイ。
熱可塑性樹脂が、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホネート、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、スチレン無水マレイン酸樹脂、芳香族ポリケトン、エチレンアセテートコポリマー樹脂、およびそれらの混合物のうち少なくとも1つから選択される、請求項1に記載のアロイ。
【発明を実施するための形態】
【0006】
請求項に係る発明を理解する目的のために採用される例示的な実施形態および定義を含む、様々な特定の実施形態、変形例、および例が本明細書に記載される。以下の詳細な説明は特定の好ましい実施形態を示すが、当業者はこれらの実施形態が単に例示的なものであること、および本発明を他の方法で実施できることを認識するであろう。侵害を決定する目的のために、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のうち任意の1つまたは複数を指すことになり、それらの均等物、および列挙されるものと均等である要素または限定が含まれる。「本発明」への言及はいずれも、特許請求の範囲によって定義される本発明の1つまたは複数を指すが、必ずしもすべてを指さなくてもよい。
ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、インターポリマー、ターポリマーなどを指すために使用できる。さらに、コポリマーは、少なくとも2種のモノマーを含み、他のモノマーも共に含んでいてもよいポリマーを指すことができる。ポリマーがモノマーを含むと言う場合、モノマーはモノマーの重合した形態でまたはモノマーの誘導体(すなわちモノマー単位)の重合した形態でポリマー中に存在する。しかし、参照の便宜上、(それぞれの)モノマーなどを含む表現は省略表現として使用される。
【0007】
エラストマーは、ASTM D1566の定義:「大きい変形から回復することが可能であり、加硫された場合に溶媒中で本質的に不溶性である(しかし膨潤できる)状態に改質することができる、またはすでにその状態に改質されている材料」と一致する任意のポリマーまたはポリマーの組成物を指す。本発明において、エラストマーはポリマー、エラストマー性ポリマー、またはゴムと呼ぶことができ、エラストマーという用語は本明細書においてゴムまたはポリマーという用語と互換的に使用できる。
「phr」という用語は100部のゴムに対する質量部または「部」であり、当技術分野において一般的な尺度であり、ここで、組成物の成分がすべてのエラストマー成分の合計に対して測定される。すべてのゴム成分の全phrまたは部は、1つ、2つ、3つ、またはそれを超える異なるゴム成分が所定の処方中に存在するかを問わず、通常は100部のゴムに対する部またはphrとして定義される。すべての他の非ゴム成分はゴム100部に対する比とし、phrで表される。このようにして、1つのみのまたは1つを超える成分(複数可)のレベルを調整した後にすべての成分のパーセンテージについて再計算する必要性なく、ゴムの同じ相対比率に基づいて、異なる組成物間で、例えば硬化剤の量またはフィラー添加量を容易に比較することができる。
「加硫(した)」または「硬化(した)」という用語は、エラストマーのポリマー鎖間に化学結合または架橋を形成する化学反応を指す。
【0008】
「動的加硫」という用語は、本明細書において、熱可塑性樹脂と共に存在する加硫可能なエラストマーが高剪断の条件下で加硫される加硫プロセスを暗に意味するように使用される。剪断混合の結果として、加硫可能なエラストマーは熱可塑性樹脂内の「ミクロゲル」の微粒子として同時に架橋および分散され、動的加硫アロイ(「DVA」)が作られる。DVAの独自の特徴は、エラストマー成分を完全にまたは部分的を硬化させることができるという事実にもかかわらず、DVAは従来のゴム加工技術、例えば押出成形、射出成形、圧縮成形などによって加工および再加工できるということである。作業くずまたはバリは回収および再加工できる。
【0009】
プロセスまたは押出機について述べる場合の「下流」および「上流」という用語は、当技術分野における所定の従来の用語である。何かがプロセスまたは押出機において「下流」であると言う場合、基準点の後である、プロセスまたは押出機の時点または位置を意味する。何かがプロセスまたは押出機において「上流」であるという場合、基準点の前である、プロセスまたは押出機の時点または位置を意味する。例えば、BがAの下流で導入される場合、BはAの後にプロセスまたは押出機へ導入され、逆にBがAの上流で導入される場合、BはAの前に導入される。
DVAは、エラストマーが熱可塑性樹脂内の微粒子として均一に分散している、望ましいモルフォロジーを有する。ゴム対熱可塑性樹脂の比が1.0以上であっても、熱可塑性樹脂成分は連続相を形成し、エラストマーは分散相である。エラストマーの分散した粒子の径および樹脂相の構造は、DVAの耐久性、特に低温での耐久性を改善するように制御される。
【0010】
エラストマー
DVAのエラストマー性成分は、熱硬化性のエラストマー性材料の各種取り合わせから選択してもよい。製造しようとする最終物品の不透過性が望まれる場合の使用としては、少なくとも1つの低透過性エラストマーの使用が望ましい。
本発明で有用であるのは、混合物が少なくとも以下のモノマー:C
4−C
7イソオレフィンモノマーおよび重合性モノマーを有する、モノマーの混合物から誘導されたエラストマーである。そのような混合物において、イソオレフィンは任意の実施形態において全モノマーの70〜99.5質量%、または任意の実施形態において85〜99.5質量%の範囲で存在する。重合性モノマーは任意の実施形態において30〜約0.5質量%、または任意の実施形態において15〜0.5質量%、または任意の実施形態において8〜0.5質量%の範囲の量で存在する。エラストマーは、同じ質量パーセントを有するモノマーから誘導された単位量を含有することになる。
イソオレフィンはC
4−C
7化合物であり、その非限定的な例は、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキセン、および4−メチル−1−ペンテンなどの化合物である。重合性モノマーは、イソプレン、ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6−ジメチルフルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、およびピペリレンなどのC
4−C
14マルチオレフィンであってもよい。スチレン、アルキルスチレン、例えばp−メチルスチレン、およびジクロロスチレンなどの他の重合性モノマーも有用なエラストマーを調製するのに適している。
【0011】
本発明の実施において有用な好ましいエラストマーとしては、イソブチレン系コポリマーが挙げられる。イソブチレン系エラストマーまたはポリマーとは、イソブチレンに由来の少なくとも70mol%の繰り返し単位および少なくとも1つの他の重合性単位を含むエラストマーまたはポリマーを指す。イソブチレン系コポリマーは、ハロゲン化されていてもよくまたはハロゲン化されていなくてもよい。一実施形態において、これらのポリイソブチレンポリマーのイオノマーの変形例も、本発明のエラストマー性成分として使用してもよい。
【0012】
本発明の任意の実施形態において、エラストマーは、ブチル型ゴムまたは分岐ブチル型ゴム、特にこれらのエラストマーのハロゲン化された変形例であってもよい。有用なエラストマーは、オレフィンまたはイソオレフィンとマルチオレフィンとのコポリマーなどの、不飽和ブチルゴムである。本発明の方法および組成物で有用な不飽和エラストマーの非限定的な例は、ポリ(イソブチレン−co−イソプレン)、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリ(スチレン−co−ブタジエン)、天然ゴム、星型分岐ブチルゴム、およびそれらの混合物である。本発明における有用なエラストマーは、当技術分野において既知の任意の適切な手段によって作製することができ、本発明は本明細書においてエラストマーを製造する方法によって限定されない。ブチルゴムは、イソブチレンを0.5〜8質量%のイソプレンと反応させるか、またはイソブチレンを0.5質量%〜5.0質量%のイソプレンと反応させることによって得られ、ポリマーの残りの質量パーセントはイソブチレンから誘導されており;ブチルゴムは同じ質量パーセントを有するモノマーから誘導された単位量を含有する。
【0013】
本発明のエラストマー性組成物は、C
4−C
7イソオレフィンおよびアルキルスチレンコモノマーを含む少なくとも1つのランダムコポリマーも含んでいてもよい。イソオレフィンは上記のC
4−C
7イソオレフィンモノマーのいずれかから選択してもよく、好ましくはイソモノオレフィンであり、任意の実施形態においてイソブチレンであってもよい。アルキルスチレンは、少なくとも80質量%、より選択的には、少なくとも90質量%のパラ異性体を含有するパラメチルスチレンであってもよい。ランダムコポリマーは官能化インターポリマーを含んでいてもよい。官能化インターポリマーはスチレンモノマー単位中に存在する少なくとも1つ以上のアルキル置換基を有し;置換基はベンジリックハロゲンまたは何らかの他の官能基であってもよい。任意の実施形態において、ポリマーはC
4−C
7α−オレフィンとアルキルスチレンコモノマーとのエラストマー性ランダムコポリマーであってもよい。アルキルスチレンコモノマーは、少なくとも80質量%、あるいは少なくとも90質量%のパラ異性体を含有するパラメチルスチレンであってもよい。ランダムコモノマーは、スチレンモノマー単位中に存在するアルキル置換基のうち少なくとも1つまたは複数がハロゲンまたは何らかの他の官能基を含有する、官能化インターポリマーを含んでいてもよく;ランダムポリマー構造中に存在するパラ置換スチレンの最大60mol%が官能化されていてもよい。あるいは、任意の実施形態において、存在するパラ置換スチレンの0.1〜5mol%または0.2〜3mol%が官能化されていてもよい。
官能基はハロゲンであってもよく、または他の基、例えばカルボン酸;カルボキシ塩;カルボキシエステル、アミドおよびイミド;ヒドロキシ;アルコキシド;フェノキシド;チオレート;チオエーテル;キサンテート;シアニド;シアネート;アミノ、ならびにそれらの混合物による、任意のベンジリックハロゲンの求核置換によって組み込むことができる何らかの他の官能基であってもよい。任意の実施形態において、エラストマーは、ベンジル環上に存在するメチル置換基の最大で60mol%が臭素もしくは塩素などのハロゲン、酸、またはエステルで官能化されている、イソブチレンおよび0.5〜20mol%のパラメチルスチレンのランダムポリマーを含む。
任意の実施形態において、エラストマー上の官能基は、DVA成分を反応可能な温度で混合する場合に、熱可塑性樹脂中に存在する官能基、例えば、酸、アミノ、またはヒドロキシル官能基と共に反応できるまたは極性結合を形成できるように選択される。
【0014】
本発明において有用な臭素化ポリ(イソブチレン−co−p−メチルスチレン)「BIMSM」ポリマーは一般に、コポリマー中のモノマーから誘導された単位の全量に対して0.1〜5mol%のブロモメチルスチレン基を含有する。BIMSMを使用する本発明の任意の実施形態において、ブロモメチル基の量は0.5〜3.0mol%、または0.3〜2.8mol%、または0.4〜2.5mol%、または0.5〜2.0mol%であり、本発明の望ましい範囲は任意の上限と任意の下限との任意の組合せであってもよい。また本発明によれば、BIMSMポリマーは1.0〜2.0mol%のブロモメチル基、または1.0〜1.5mol%のブロモメチル基のいずれかを有する。別の表現をすると、本発明において有用な例示的なBIMSMポリマーは、ポリマーの質量を基準として0.2〜10質量%の臭素、または0.4〜6質量%の臭素、または0.6〜5.6質量%の臭素を含有する。有用なBIMSMポリマーは環ハロゲンまたはポリマー骨格鎖中のハロゲンを実質的に含まないものであってもよい。任意の実施形態において、ランダムポリマーは、C
4−C
7イソオレフィンから誘導された単位(またはイソモノオレフィン)、パラメチルスチレンから誘導された単位、およびパラ−(ハロメチルスチレン)から誘導された単位のポリマーであり、パラ−(ハロメチルスチレン)単位はパラ−メチルスチレンの全数を基準として0.5〜2.0mol%でポリマー中に存在し、パラ−メチルスチレンから誘導された単位はポリマーの総質量を基準として5〜15質量%、または7〜12質量%で存在する。任意の実施形態において、パラ−(ハロメチルスチレン)はパラ−(ブロモメチルスチレン)である。
【0015】
他の適切な低透過性エラストマーは、イソブチレン含有エラストマー、例えばイソブチレン−イソプレン−アルキルスチレンターポリマー、またはハロゲン化イソブチレン−イソプレン−アルキルスチレンターポリマーであり、これらのターポリマーの各々に対して、ターポリマー中のイソブチレンから誘導された成分はポリマー中のモノマー単位の70〜99質量%であり、イソプレンから誘導された成分はポリマー中のモノマー単位の29〜0.5質量%であり、アルキルスチレンから誘導された成分はポリマー中のモノマー単位の29〜0.5質量%である。
【0016】
適切なC
4−C
7イソオレフィンから誘導されたエラストマー(臭素化イソブチレン−パラメチルスチレンコポリマーを含む)の数平均分子量Mnは、少なくとも約25,000、好ましくは少なくとも約50,000、好ましくは少なくとも約75,000、好ましくは少なくとも約100,000、好ましくは少なくとも約150,000である。ポリマーの質量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)の比、すなわち、Mw/Mnはまた、約6未満、好ましくは約4未満、より好ましくは約2.5未満、最も好ましくは約2.0未満であってもよい。別の実施形態において、適切なハロゲン化イソブチレンエラストマー成分としては、125℃でのムーニー粘度ML(1+4)(ASTM D 1646−99により測定される)が30以上、またはより好ましくは40以上であるコポリマー(臭素化イソブチレン−パラメチルスチレンコポリマーなど)が挙げられる。
好ましいエラストマーとしては、イソブチレンとパラアルキルスチレンとのコポリマーが挙げられ、これらはハロゲン化されていてもよくまたはハロゲン化されていなくてもよい。好ましくはイソブチレンとパラアルキルスチレンとのコポリマーはハロゲン化されている。そのようなエラストマーは欧州特許第0344021号に記載されている。コポリマーは好ましくは実質的に均質な組成分布を有する。パラアルキルスチレン部分の好ましいアルキル基としては、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、1〜5個の炭素原子を有する第1ハロアルキル、第2ハロアルキル、およびそれらの混合物が挙げられる。好ましいコポリマーはイソブチレンおよびパラメチルスチレンを含む。任意の実施形態において、イソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化コポリマーとしては、5〜12質量%のパラメチルスチレン、0.3〜1.8mol%の臭素化パラメチルスチレンを有し、125℃でのムーニー粘度ML(1+4)が30〜65である(ASTM D 1646−99により測定される)ものが挙げられる。任意の実施形態において、イソブチレンとパラメチルスチレンとの臭素化コポリマーとしては、7〜12質量%のパラメチルスチレン、0.75〜1.5mol%の臭素化パラメチルスチレンを有し、125℃でのムーニー粘度(1+4)が30〜45である(ASTM D 1646−99により測定される)ものが挙げられる。
【0017】
熱可塑性樹脂
本発明の目的として、熱可塑性物質(または熱可塑性樹脂と呼ばれる)は、融点が約170℃〜約260℃、好ましくは260未満℃、最も好ましくは約240℃未満である、熱可塑性ポリマー、コポリマー、またはそれらの混合物である。好ましい実施形態において、熱可塑性樹脂は、13,000〜50,000の範囲の分子量および/または23℃で200MPaを超えるヤング率を有するべきである。従来の定義により、熱可塑性物質は熱を加えられると軟化し冷却すると元の特性を取り戻す合成樹脂である。
そのような熱可塑性樹脂は単独でまたは組合せで使用してもよく、一般には窒素、酸素、ハロゲン、硫黄、または芳香族官能基と相互作用が可能である他の基、例えばハロゲンもしくは酸性基を含有する。適切な熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリラクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン無水マレイン酸樹脂(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK、PED、およびPEKK)、エチレンアセテートコポリマー樹脂(EVA)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
適切なポリアミド(ナイロン)は、ポリマー鎖内に繰り返しのアミド単位を有するホモポリマー、コポリマー、およびターポリマーを含む、結晶性または樹脂性の、高分子量固体ポリマーを含む。ポリアミドは、1つまたは複数のイプシロンラクタム、例えばカプロラクタム、ピロリジオン(pyrrolidione)、ラウリルラクタム、およびアミノウンデカン酸ラクタム、もしくはアミノ酸の重合によって、または二塩基酸とジアミンとの縮合によって調製してもよい。繊維形成グレードおよび成形グレードの両方のナイロンが適している。ポリアミドの例としては、ポリカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6) ポリヘキサメチレンアゼラミド(polyhexamethyleneazelamide)(ナイロン−6,9)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,10)、ポリ(ヘキサメチレンドデカンジアミド(ナイロン−6,12)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン−6、IP)、および11−アミノ−ウンデカン酸の縮合生成物(ナイロン−11)が挙げられる。市販のポリアミドは、本発明の実施において有利に使用でき、軟化点または融点が170〜260℃である直鎖結晶性ポリアミドが好ましい。
【0019】
使用できる適切なポリエステルとしては、無水物の脂肪族または芳香族ポリカルボン酸エステルの1つまたは混合物とジオールの1つまたは混合物とのポリマー反応生成物が挙げられる。良好なポリエステルの例としては、ポリ(trans−1,4−シクロヘキシレンC
2−
6アルカンジカルボキシレート)、例えばポリ(trans−1,4−シクロヘキシレンスクシネート)およびポリ(trans−1,4−シクロヘキシレンアジペート)など;ポリ(cisまたはtrans−1,4−シクロヘキサンジメチレン)アルカンジカルボキシレート、例えばポリ(cis−1,4−シクロヘキサンジメチレン)オキシレートおよびポリ(cis−1,4−シクロヘキサンジメチレン)スクシネート、ポリ(C
2−
4アルキレンテレフタレート)、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ(C
2−
4アルキレンイソフタレート)、例えばポリエチレンイソフタレートおよびポリテトラメチレン−イソフタレートなど、および同様の材料が挙げられる。好ましいポリエステルはナフタレン(naphthalenic)酸またはフタル酸などの芳香族ジカルボン酸およびC
2−C
4ジオールから誘導され、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートなどである。好ましいポリエステルは160℃〜260℃の範囲の融点を有することになる。
【0020】
本発明に従って使用できるポリ(フェニレンエーテル)(PPE)樹脂は、アルキル置換フェノールの酸化カップリング重合によって製造される、良く知られた市販の材料である。それらは一般に190℃〜235℃の範囲のガラス転移温度を有する直鎖のアモルファスポリマーである。
動的加硫アロイ中に、熱可塑性樹脂はアロイブレンドを基準として約10〜98質量%、別の実施形態では約20〜95質量%の範囲の量で存在する。さらに別の実施形態において、熱可塑性樹脂は35〜90質量%の範囲の量で存在する。DVA中のエラストマーの量は、アロイブレンドを基準として約2〜90質量%、別の実施形態では約5〜80質量%の範囲の量である。本発明の任意の実施形態において、エラストマーは10〜65質量%の範囲の量で存在する。本発明において、熱可塑性樹脂はエラストマーの量に対して40〜90phrの範囲の量でアロイ中に存在する。
【0021】
エチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)
本発明によれば、DVAにおいて改善されたガスバリア特性を与えるために、DVAは低レベルのエチレンコポリマー樹脂を組み込む。そのようなエチレンコポリマー樹脂の例としては、エチレン酢酸ビニル、エチレンビニルアルコールが挙げられ、ならびにエチレンと酢酸ビニルまたはアルキルアクリレート、例えばメチルアクリレートおよびエチルアクリレートとのコポリマーを使用できる。好ましい実施形態において、エチレンコポリマー樹脂はエチレンビニルアルコール(EVOH)である。
一実施形態におけるEVOHは、重合エチレン成分の割合が20mol%から50mol%以下であり、90%以上の加水分解度を有する。異なる実施形態において、EVOHは30mol%〜50mol%のエチレン含量、30mol%〜40mol%のエチレン含量、30mol%〜34mol%のエチレン含量、34mol%〜36mol%のエチレン含量、36mol%〜40mol%のエチレン含量、40mol%〜46mol%のエチレン含量、46mol%〜50mol%のエチレン含量、またはそれらの混合物などを有する。
一般に、エチレン含量が高いとより高い可撓性、より良好な加工性、およびゴム成分とのより良好な相溶性が得られるが、一方で低いエチレン含量および/または高い加水分解度またはけん化度は空気バリア特性の改善に有益である。一実施形態において、EVOHは半結晶性であり;EVOHの結晶化度が高いと一般に空気バリア特性が改善される、すなわち、空気透過率が低下する。一実施形態において、結晶化度を増加させ空気バリア特性を改善するためにTPEまたはDVAではEVOHに熱処理を施す。一実施形態において、EVOHポリマー単独では、試験法ISO 14663−2付録Cによる相対湿度65%および20℃での空気透過率が5cc.20μm/m
2.日.atm未満、好ましくは3cc.20μm/m
2.日.atm未満、より好ましくは2cc.20μm/m
2.日.atm未満である。
【0022】
EVOHは例えば、例えばエチレンおよび酢酸ビニルのラジカル重合により得られるエチレン−酢酸ビニルコポリマー(EVA)をけん化することによって製造できる。一実施形態において、例えば米国のEVAL社から市販されている製品、例えばEVAL E105A(エチレン含量44mol%)、EVAL H171B(エチレン成分比率38mol%)、またはEVAL L171B(エチレン成分比率26mol%)などを、単独でまたは任意の組合せで使用してもよい。
エチレンコポリマー樹脂はDVAの空気バリア特性を改善するのに効果的な量で存在する。任意の実施形態において、エチレンコポリマー樹脂は約2phr超、または5phr超、または7phr超から約10phr未満まで、好ましくは約2〜約10phrの範囲の量で存在する。
任意の実施形態において、上記のEVOHなどのエチレンコポリマー樹脂の量は、DVA中の連続的なマトリックスを形成する第1の熱可塑性樹脂よりも少ない量で存在する。第1のエラストマーのphrの単位で表される、エチレンコポリマー樹脂対第1の熱可塑性樹脂の比は、約0.0625超から約0.375、または0.5、または0.75未満までの範囲である。
【0023】
グラフェン
所望のエラストマー性ナノコンポジットを形成するために、グラフェンをエラストマー性ポリマー中に組み込む。グラフェンはハニカム格子状に配列された炭素原子の層で構成される有機材料である。組成物のバリア特性の問題に対処するためにグラフェンを添加剤として使用することは、B.M.Yoo, et al., Graphene and Graphene Oxide and Their Uses in Barrier Polymers, Journal of Applied Polymer Science (2013)において一般に記載され、これは参照により本明細書に組み込まれる。グラフェンは単層シート構造、または小片へと物理的に改質してもよい。一実施形態において、グラフェンは厚さが約50〜約100nmの範囲であるナノプレートレットからなる。グラフェンは強い材料であることが知られており、ヤング率が約1TPaである。一実施形態において、グラフェンの炭素含量は約99質量%の量であり、酸素含量は約1.4%の量である。
【0024】
本発明で使用されるグラフェンは、グラファイトの機械的へき開から、および/またはグラフェン酸化物の熱的および化学的還元により、これらに限定はされないが、金属基材上の化学気相蒸着、SiCまたは金属基材上で成長させるエピタキシャルを含む業界で知られている方法によって製造することができる。
本発明の実施形態において、グラフェンはエラストマーと熱可塑性樹脂の間の界面で分離して空気バリア特性が改善されたDVA組成物を作製すると考えられている。
DVA中に組み込まれるグラフェンの量は一般に、1phrまたは2phrまたは3phrまたは4phrまたは5phrから6または7または8または10または15phrまでの範囲となる。
【0025】
第2のエラストマー
いくつかの実施形態において、DVAは第2のエラストマーをさらに含んでいてもよい。第2のエラストマーは任意のエラストマーであってもよいが、好ましくは第2のエラストマーは非イソブチレン含有エラストマーである。好ましい第2のエラストマーの例は無水マレイン酸で修飾されたコポリマーである。好ましくは、第2のエラストマーは無水マレイン酸およびエステル官能基を含むコポリマー、例えば無水マレイン酸で修飾されたエチレン−エチルアクリレートである。
DVA中の第2のエラストマーの量は約2質量%〜約45質量%の範囲であってもよい。DVAが少なくとも1つのエラストマーおよび第2のエラストマーを含む場合、エラストマーおよび第2のエラストマーの両方の総量は好ましくは約2質量%〜約90質量%の範囲である。
この第2のエラストマーは第1のイソオレフィン系エラストマーと共に硬化されてもよく、またはこれは以下で説明するように未硬化のまま残り相溶化剤として作用するように選択されてもよい。
他のDVA成分
DVAの調製を助けるためまたは所望の物理特性をDVAに与えるために他の材料をDVA中にブレンドしてもよい。そのようなさらなる材料としては、限定はされないが、米国特許第8,021,730号に記載のような、硬化剤、安定化剤、相溶化剤、反応性可塑剤、非反応性可塑剤、増量剤、およびポリアミドオリゴマーまたは低分子量ポリアミドが挙げられる。
【0026】
第1のエラストマーの硬化は一般に硬化剤および任意選択の促進剤を組み込むことによって実現され、そのような任意の成分の混合物全体は硬化系または硬化パッケージと呼ばれる。適切な硬化成分としては、硫黄、金属酸化物、有機金属化合物、ラジカル開始剤が挙げられる。一般的な硬化剤としては、ZnO、CaO、MgO、Al
2O
3、CrO
3、FeO、Fe
2O
3、およびNiOが挙げられる。これらの金属酸化物は、単独で、またはステアリン酸金属複合体(例えば、Zn、Ca、Mg、およびAlのステアリン酸塩)と併せて、またはステアリン酸もしくは他の有機酸、および硫黄化合物もしくはアルキルもしくはアリール過酸化物化合物もしくはジアゾフリーラジカル開始剤のいずれかと併せて使用できる。過酸化物を使用する場合、当技術分野において一般的に使用される過酸化物助剤を使用してもよい。熱可塑性樹脂が、過酸化物の存在によって熱可塑性樹脂の架橋が引き起こされることになるようなものである場合、過酸化物硬化剤の使用を避けてもよい。
【0027】
上記のように、促進剤(促進物質としても知られる)を硬化剤と共に加えて硬化パッケージを形成してもよい。適切な硬化促進剤としては、アミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、スルフェンイミド、チオカルバメート、キサンテートなどが挙げられる。多くの促進物質が当技術分野において知られており、限定はされないが、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4,4’−ジチオジモルホリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、2,2’−ベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオスルフェート二ナトリウム塩二水和物、2−(モルホリノチオ)ベンゾチアゾール(MBSまたはMOR)、90%のMORおよび10%のMBTSの組成物(MOR90)、N−tertブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド(TBBS)、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン(6PPD)、およびN−オキシジエチレンチオカルバミル−N−オキシジエチレンスルホンアミド(OTOS)、2−エチルヘキサン酸亜鉛(ZEH)、N,N’−ジエチルチオ尿素が挙げられる。
本発明の任意の実施形態において、少なくとも1つの硬化剤は典型的には約0.1〜約15phrで;あるいは約1.0〜約10phrで、または約1.0〜6.0phrで、または約1.0〜4.0phrで、または約1.0〜3.0phrで、または約1.0〜2.5phrで、または約2.0〜5.0phrで存在する。単一の硬化剤のみを使用する場合、硬化剤は好ましくは酸化亜鉛などの金属酸化物である。
混合および/または加工中のエラストマーと熱可塑性樹脂成分の間の粘度差を最小化すると、望ましい透過性だけでなく良好なブレンドの機械特性を大幅に向上させる、均一な混合および微細なブレンドモルフォロジーが向上する。しかし、エラストマー性ポリマーに固有の流動活性化およびせん断減粘性特性の結果として、混合中に直面する、高温および高せん断速度におけるエラストマー性ポリマーの粘度値の低下は、エラストマーが共にブレンドされる熱可塑性成分の粘度の低下よりもはるかに顕著である。許容可能なエラストマーの分散サイズを有するDVAを得るために、材料間のこの粘度差を減少させることが望ましい。
【0028】
エラストマーと熱可塑性成分の間の粘度を適合させるのに過去に使用された成分としては、低分子量ポリアミド、分子量がおよそ10,000以上である無水マレイン酸グラフトポリマー、メタクリレートコポリマー、第3級アミン、および第2級ジアミンが挙げられる。相溶化剤の1つの一般的なグループは、無水マレイン酸グラフト化エチレン−エチルアクリレートコポリマー(JIS K6710により測定されるメルトフローレートが7g/10分である、Mitsui−DuPont社からAR−201として入手可能な固体ゴム性材料)、ならびにブチルベンジルスルホンアミドおよびポリイソブチレン無水コハク酸であり;そのような添加剤の使用は2009年8月29日出願の係属中の米国特許出願第12/548,797号にさらに記載されている。これらの化合物はエラストマー性/熱可塑性化合物中の熱可塑性材料の「有効」量を増加させるように作用することができる。添加剤の量はDVAの特徴に悪影響を与えずに所望の粘度の比較を実現するように選択される。多すぎる添加剤が存在する場合、不透過性が低下することがあり、過剰分を後処理の間に除去しなければならないことがある。不十分な相溶化剤が存在する場合、エラストマーは熱可塑性樹脂マトリックス中の分散相となるように相を反転させることができない。
【0029】
反応性および非反応性可塑剤はいずれも、可塑剤の性質に起因して相溶化剤として機能できる。熱可塑性物質のための可塑剤は一般に、可撓性、伸び性、および加工性を改善するためにポリマー材料へ加えられる化合物と定義される。既知である従来の熱可塑剤は低粘度から高粘度の液体の形態で供給され、官能化されていてもよい。可塑剤は各々のタイプの熱可塑性樹脂と様々な相溶性を有し、熱可塑性樹脂の特性に対して様々な効果があるので、多くの様々な可塑剤が熱可塑性樹脂の技術分野で知られている。既知の熱可塑剤としては、様々な種類のエステル、炭化水素(脂肪族、ナフテン系、および芳香族)、ポリエステル、および重縮合物が挙げられる。Handbook of Thermoplastic Elastomers, Jiri George Drobny, p.23 (William Andrew Publishing, 2007)を参照のこと。ポリアミドに関して、既知の非反応性可塑剤としては、第3級アミン、第2級ジアミン、またはスルホンアミドで官能化された炭化水素が挙げられる。1つの特に良く知られている化合物はブチルベンジルスルホンアミド(BBSA)である。
【0030】
無水マレイン酸官能化および無水コハク酸官能化オリゴマーはいずれも、反応性可塑剤または反応性粘度調整剤として有用である。無水物官能化オリゴマー(AFO)は、アルキル、アリール、またはオレフィンオリゴマーを無水物、好ましくは無水マレイン酸と反応させる、当技術分野において既知の熱的方法またはクロロ法により調製してもよい。低級オレフィンのコポリマーを含むオリゴマーは、無水物と反応させる前では、分子量が約500〜5000、または500〜2500、または750〜2500、または500〜1500の範囲である。オリゴマーの分子量はまた、1000〜5000、800〜2500、または750〜1250の範囲であってもよい。無水コハク酸の具体例としては、ポリイソブチレン無水コハク酸、ポリブテン無水コハク酸、n−オクテニル無水コハク酸、n−ヘキセニル無水コハク酸、およびドデセニル(dodocenyl)無水コハク酸が挙げられる。最も好ましい無水物官能化オリゴマーは、ポリイソブテンから誘導されたものであり、ポリイソブチレン無水コハク酸またはポリイソブテン無水コハク酸(PIBSA)として一般に知られている。PIBSAは、イソブテンを触媒としての三フッ化ホウ素によりカチオン重合させることによって作製することができる。重合の過程において、連鎖移動反応の間に高濃度のα−オレフィンが形成され、結果として重合生成物は末端二重結合(α−オレフィン)の割合が高い。それらは通常は透明から琥珀色の粘性液体であり、重合後マレイン化反応の間に特に最適化されてビスマレイン化の度合いが低くなる。
AFOの無水物レベルは様々であってもよく、好ましい範囲は約1%〜約30質量%、好ましい範囲は5〜25質量%、より好ましい範囲は7〜17質量%、最も好ましい範囲は9〜15質量%である。
【0031】
DVA調製
一実施形態において、DVAの調製前に、グラフェンまたは酸化グラフェンを最初に第1のエラストマー中に組み込んでもよい。これは、溶融ブレンド、溶液ブレンド、またはエマルションブレンドなどの任意の従来より既知の方法によって行うことができる。グラフェンを混合する当技術分野において既知の適切な分散剤を加えて、グラフェンの分散を促進させてもよい。
【0032】
グラフェンおよびエラストマーの溶融ブレンドは、任意の適切な混合デバイス、例えばBanbury(商標)ミキサー、Brabender(商標)ミキサー、または好ましくはミキサー/押出機でポリマー成分およびグラフェンを合わせ、120℃から300℃までの範囲の温度において、グラフェンがポリマー中に均一に分散してナノコンポジットを形成するのを可能にするのに十分なせん断の条件下で混合することによって行われる。
溶液ブレンドでは、炭化水素溶媒、任意選択の分散剤、およびその中でスラリー化された少なくとも1つのグラフェンを含む溶液Aを、溶媒および少なくとも1つのエラストマーを含む溶液B(エラストマーを溶媒中に溶解させることに起因して、溶液Bは一般にセメントと呼ばれる)と接触させ、溶液Aおよび溶液Bの接触生成物から溶媒を除去してナノコンポジットを形成させることによって、グラフェンをエラストマー中にブレンドする。適切な溶媒としては、C
4−C
22直鎖、環状、分岐アルカンを含むアルカン、アルケン、芳香族、およびそれらの混合物などの、炭化水素が挙げられる。溶媒混合の間、溶液Aおよび溶液Bを合わせることによって作られる溶液は40〜99質量%の溶媒を含有し、残りは溶解したエラストマーおよびスラリー状グラフェンである。
【0033】
エマルションブレンドでは、グラフェンの水性スラリーを、溶媒中に溶解させたポリマー(すなわちポリマーセメント)と混合する。混合は、エマルションまたはマイクロエマルションを形成させ層状フィラーの剥離を可能にするのに十分な強さであるべきである。いくつかの実施形態において、エマルションは水溶液または有機溶液中の懸濁液として形成させることができる。溶媒および水を除去してナノコンポジットを回収する。
所望のエマルションを得るために、典型的には界面活性剤を使用する。界面活性剤濃度は比較的安定なエマルションの形成を可能にするのに十分である。好ましくは、使用される界面活性剤の量は全エマルションの少なくとも0.001質量%である。本発明における界面活性剤の選択は、界面活性剤が(a)DVAの形成の間に、第1のエラストマーおよび熱可塑性樹脂のその後のグラフト化を妨げない、または(b)DVAの形成の間に、ナノコンポジットおよび熱可塑性樹脂の相対粘度を不適当に変化させないように、行われる必要がある。
溶液ブレンドとエマルションブレンドの違いは、エマルションブレンドでは水が含まれ、逆に溶液ブレンドでは水が含まれないことである。グラフェンをエラストマー中に取り込む、これらの溶媒ベースの方法のいずれかを使用する場合、DVAの調製の間に残留溶媒がエラストマーおよび熱可塑性樹脂の相対粘度に影響を与えないように、得られるナノコンポジットを乾燥させて可能な限り多くの溶媒を除去するべきである。
エラストマー性ナノコンポジットが調製された後、DVAを調製する。タイヤ用インナーライナーの調製に使用しようとする種類の薄膜では、所望の特性を得る上でDVAのモルフォロジーが重要である。連続的な熱可塑性マトリックス中のサブミクロンまたはナノメートルサイズのエラストマー粒子の均一な分布が、最適な特性を実現するのに重要である。ゴム粒子内の熱可塑性物質の下位包含(sub−inclusion)も存在するが、エラストマー中の任意の下位包含に対して、熱可塑性樹脂は好ましくはDVA中で不連続とならない。DVAのモルフォロジーは温度、導入する成分の順序、滞留時間、およびせん断速度を含む、混合条件によって決まる。任意のランダムに選択されたまたは手元にある種類のミキサーおよび押出機を使用することによって、必要なDVAモルフォロジーを実現できないことが分かった。
【0034】
一実施形態において、押出機の最初の供給口にエラストマー性ナノコンポジットおよび第1の熱可塑性樹脂のすべてまたは一部を一緒に供給して、エラストマー性ナノコンポジットおよび熱可塑性樹脂の混合およびせん断を開始することにより、DVAが調製される。材料が押出機を通って移動するので、最初の供給口から遠く離れた供給口にある場合はエチレンコポリマー樹脂を加えてもよい。2つの樹脂が溶融されエラストマー性ナノコンポジットが柔軟になり、エラストマー性ナノコンポジットのエラストマー成分および第1の熱可塑性樹脂が互いにグラフト化を開始するような条件下で、これらの成分を混合する。しかし、条件はエラストマーの硬化または加硫を開始させるのに不十分である。必要に応じて、グラフト化が開始した後に残留する任意の第1の熱可塑性樹脂を加える。好ましい実施形態において、第1の熱可塑性樹脂およびエラストマーのグラフト化が進行した後で初めて、硬化剤または硬化パッケージが下流の位置で押出機へ供給される。エラストマー性ナノコンポジットが個々の粒子として熱可塑性樹脂連続的ドメインの中に完全に分散するまで、押出機の内容物の混合は継続する。この混合法のさらなる詳細、ならびにせん断速度、混合条件、および押出口の位置は、2012年12月20日出願の米国特許仮出願第61/740,114号の優先権を主張する、2013年10月15日出願の譲受人の国際特許出願PCT/US2013/065001において開示されている。
【実施例】
【0035】
以下の非限定的な例を参照してここで本発明のDVAをさらに説明することにする。可能な場合、標準ASTM試験を使用してDVAの物理特性を決定した。
【0036】
本明細書において「透過性」とも呼ばれる空気透過性、「Mocon」、または「Mocon透過性」は、薄膜を通した空気移動の動的測定の原理のもとで動作するMOCON OxTran Model 2/61を使用して測定された。測定の単位はcc−mm/m
2−日−mmHgである。一般に、この方法は以下の通りである:平坦なフィルムまたはゴム試料を150℃で2時間乾燥させ、次いで酸素を含まないキャリアガスを使用して残留酸素を追い出した拡散セル内に固定する。安定なゼロ値が定着するまでキャリアガスをセンサーへ送る。次いで純粋な酸素または空気を60℃の温度で拡散セルのチャンバーの外側へ導入する。フィルムを通してチャンバーの内部へ拡散する空気は、空気拡散速度を測定するセンサーへ運ばれる。透過性は60℃においてcc−mm/m
2−日−mmHgで測定される。DVA試料で使用される様々な成分のリストを表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
エチレンコポリマー樹脂およびグラフェンの両方とも含まない場合のDVAの特性を示すために、DVA試料A、B、およびCを調製した。試料の組成を以下の表2に示し、各成分の量は100部のゴムに対する部に関して表される。これらの試料では、DVAの質量%に関して、BIMSMエラストマーは52.7質量%で存在し、第1の熱可塑性樹脂であるポリアミドコポリマーは36.9質量%の量で存在する。
【0039】
【表2】
DVA A〜Cの酸素透過性を試験し、
図1に報告する。グラフェンをDVA組成物へ添加する効果を試験するため、BIMSMおよびグラフェンの合計が100phrであるように10phrのグラフェンを表2のDVAの各々に加えた。3つの組成物すべてが示すように、グラフェンを添加するとMocon空気透過性が好ましく低下し、1つの試料はMocon空気透過性の値でおよそ40%の改善を示す。
図1は、エラストマー中のグラフェンの導入が得られる組成物のバリア特性の改善につながることを示す。
【0040】
図2は、グラフェンおよび/またはEVOHを有するDVA Bの空気透過性を示す。EVOHおよび/またはグラフェンを有さないDVAと比較して、10phrのグラフェンおよび/または7.9phrのEVOHを添加するとMocon空気透過性が好ましく低下する。グラフェンのみを有するDVA Bと比較して、DVA Bは、グラフェンをEVOHと組み合わせて添加すると予想外に組成物のMocon透過性が低下することを示す。
図2は、EVOHおよびグラフェンの組合せを添加することによって空気不透過性が改善された組成物を得ることができることを示す。
【0041】
上記の明細書および実施例は主要な/第1のエラストマーとしての低透過性エラストマーに特有なものあるが、記載されるプロセスは、界面のグラフト化が生じる、反応性混合物のDVAを作るための溶液を対象とするので、他の種類のエラストマーおよび熱可塑性物質(および第2の材料)と共にプロセスを使用してもよく、ここで混合物は反応性混合物である(添加した硬化剤によるすべての架橋反応を除く)。