(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510185
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】多段式自動変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/66 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
F16H3/66 Z
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-108763(P2014-108763)
(22)【出願日】2014年5月27日
(65)【公開番号】特開2014-238167(P2014-238167A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2017年5月2日
(31)【優先権主張番号】13/912,254
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス スティーブン バーノン
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン カール シュニードウィンド
(72)【発明者】
【氏名】サム デイビッド コック
(72)【発明者】
【氏名】ベンカット アール.デシュパンド
【審査官】
高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2004−529297(JP,A)
【文献】
特開平09−264387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段式自動変速機であって、
入力シャフトと、
第1のサンギヤ、第1のピニオンギヤ組、該第1のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第1のキャリア、及び、第1のリングギヤ、を有する第1の遊星歯車組であって、前記第1のサンギヤが、前記第1のピニオンギヤ組と噛み合い、該第1のピニオンギヤ組が、前記第1のサンギヤ及び前記第1のリングギヤと噛み合っている、第1の遊星歯車組と、
第2のサンギヤ、第2のピニオンギヤ組、該第2のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第2のキャリア、及び、第2のリングギヤを含む、第2の遊星歯車組であって、前記第2のサンギヤが、前記第2のピニオンギヤ組と噛み合い、該第2のピニオンギヤ組が、前記第2のサンギヤ及び前記第2のリングギヤと噛み合う、第2の遊星歯車組と、
第3のサンギヤ、第3のピニオンギヤ組、該第3のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第3のキャリア、及び、第3のリングギヤ、を有する第3の遊星歯車組であって、該第3のサンギヤが、該第3のピニオンギヤ組と噛み合い、該第3のピニオンギヤ組が、該第3のサンギヤ及び該第3のリングギヤと噛み合う、第3の遊星歯車組と、
第4のサンギヤ、第4のピニオンギヤ組、該第4のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第4のキャリア、及び、第4のリングギヤ、を有する第4の遊星歯車組であって、前記第4のサンギヤが、前記第4のピニオンギヤ組と噛み合い、該第4のピニオンギヤ組が、前記第4のサンギヤ及び前記第4のリングギヤと噛み合う、第4の遊星歯車組と、
を具備し、
前記第1のキャリアが、前記第2のリングギヤに連結され、前記第2のキャリアが、前記第1のリングギヤに連結され、前記第1の遊星歯車組及び前記第2の遊星歯車組が、共通平面において同心円状に配置され、
前記第3のキャリアが、前記第4のリングギヤに連結され、前記第4のキャリアが、前記第3のリングギヤに連結され、前記第4のサンギヤが、前記第2のキャリアに連結され、
前記第1のサンギヤ、前記第2のサンギヤ、及び、前記第3のリングギヤのそれぞれが、前記入力シャフトに独立してかつ解放可能に連結されており、
前記第4の遊星歯車組が軸線方向に関し、前記第3の遊星歯車組と、同心円状に配置された前記第1の遊星歯車組及び前記第2の遊星歯車組との間に配置されている、
多段式自動変速機。
【請求項2】
係合されたときに前記第1のサンギヤを前記入力シャフトに回転可能に連結する第1のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第2のサンギヤを前記入力シャフトに回転可能に連結する第2のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第3のリングギヤを前記入力シャフトに回転可能に連結する第3のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第1のサンギヤを当該多段式自動変速機の変速機ケースに固定して連結する第4のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第1のキャリアを前記変速機ケースに固定して連結する第5のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第3のサンギヤを前記変速機ケースに固定して連結する第6のシフト制御要素と、を更に備える請求項1に記載の多段式自動変速機。
【請求項3】
前記第2のシフト制御要素、前記第5のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第1のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第2のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第2のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第3のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第4のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第2のシフト制御要素及び前記第3のシフト制御要素が、第5のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第4のシフト制御要素が、第6のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、第7のフォワードギヤ比で係合され、
前記第3のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、第8のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、第9のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第5のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、リバースギヤ比で係合された、請求項2に記載の多段式自動変速機。
【請求項4】
前記第1のフォワードギヤ比が、当該多段式自動変速機の最高フォワードギヤ比であり、前記第9のフォワードギヤ比が、当該多段式自動変速機の最低フォワードギヤ比である、請求項3に記載の多段式自動変速機。
【請求項5】
前記最高フォワードギヤ比と前記最低フォワードギヤ比との間の比の広がりが、10.5未満であり、且つ、7.5より大きく、任意の2つの隣接するフォワードギヤ比間の比のステップが、2.0未満であり、且つ、1.1より大きい、請求項4に記載の多段式自動変速機。
【請求項6】
前記第2の遊星歯車組が前記第1の遊星歯車組の径方向外側となるように、該第1の遊星歯車組及び前記第2の遊星歯車組が径方向に積み重ねられた、請求項1に記載の多段式自動変速機。
【請求項7】
出力シャフトが、前記第3のキャリアに直接的に連結されている、請求項1に記載の多段式自動変速機。
【請求項8】
前記第2のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素の少なくとも1つが、ドッグクラッチである、請求項2に記載の多段式自動変速機。
【請求項9】
前記第1のシフト制御要素、前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素、前記第5のシフト制御要素、及び、前記第6のシフト制御要素のうち少なくとも3つのシフト制御要素が、9つの前記フォワードギヤ比及び1つの前記リバースギヤ比のうちのいずれか1つを提供するように係合された、請求項3に記載の多段式自動変速機。
【請求項10】
前記第1のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、1つの平面において同心円状に配置された、請求項2に記載の多段式自動変速機。
【請求項11】
前記第1のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、前記第1の遊星歯車組、前記第2の遊星歯車組、前記第3の遊星歯車組及び前記第4の遊星歯車組によって形成された歯車列の外側において覆われた、請求項2に記載の多段式自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、複数の速度比によって、車両のドライブトレインに原動機からトルクを伝達するための自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
より大きなギヤ比を有する自動変速機が提案されている。かかる自動変速機を備えた車両では、頻繁にシフトアップ又はシフトダウンがなされ、燃費及び走行性が向上する。一方、より軽量でよりコンパクトな自動変速機の設計も必要とされ、これによって、自動車生産は、製造コストを下げ、燃費の向上を達成できるように、ドライブトレインのレイアウトを最適化することができる。
【0003】
しかしながら、より大きなギヤ比、例えば6速以上を有する自動変速機は、部品数の増加に伴って、より複雑な設計となる傾向があり、この部品数の増加によって、変速機の容積及び重量が増加し、車両の製造コスト及び燃費に好ましくない影響を与える。さらに、車両への変速機の組立てを妨げる、変速機内部の実装部品についての問題が生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、車両の燃費及び走行性を向上させつつ、多段式自動変速機の実装困難性を緩和することは、特に有益である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、実装サイズを小さくした構造を有する多段式自動変速機を提供する。自動変速機は、広いギヤ比幅(wide ratio spread)及び隣接したギヤ比間の小さな比のステップ(close ratio step)を提供することによって、或いは、頻繁なシフトアップ又はシフトダウンを実行することによって、エンジンを効率的な速度範囲内で走行させ続けながら、車両の燃費を向上させる。さらに、自動変速機は、小さなギヤ比のステップを利用する種々の運転状態におけるトルク要求に迅速に応答することにより、車両の走行性又は性能を向上させる。
【0006】
本開示の態様において、多段式自動変速機は、第1のサンギヤ、第1のピニオンギヤ組、第1のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第1のキャリア、及び、第1のリングギヤを備える第1の遊星歯車組であって、第1のサンギヤが第1のピニオンギヤ組と噛み合い、第1のピニオンギヤ組が第1のサンギヤ及び第1のリングギヤと噛み合う第1の遊星歯車組を有する。変速機は、第2のサンギヤ、第2のピニオンギヤ組、第2のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第2のキャリア、及び、第2のリングギヤを備える第2の遊星歯車組であって、第2のサンギヤが第2のピニオンギヤ組と噛み合い、第2のピニオンギヤ組が第2のサンギヤ及び第2のリングギヤと噛み合う第2の遊星歯車組を有する。第1のキャリアは、第2のリングギヤに連結され、第2のキャリアは、第1のリングギヤに連結されている。第1の遊星歯車組及び第2の遊星歯車組は、共通平面において同心円状に配置されてもよい。
【0007】
自動変速機は、第3のサンギヤ、第3のピニオンギヤ組、第3のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第3のキャリア、及び、第3のリングギヤを備える第3の遊星歯車組であって、第3のサンギヤが第3のピニオンギヤ組と噛み合い、第3のピニオンギヤ組が第3のサンギヤ及び第3のリングギヤと噛み合う第3の遊星歯車組を更に有する。 変速機は、第4のサンギヤ、第4のピニオンギヤ組、第4のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第4のキャリア、及び、第4のリングギヤを備える第4の遊星歯車組であって、第4のサンギヤが第4のピニオンギヤ組と噛み合い、第4のピニオンギヤ組が第4のサンギヤ及び第4のリングギヤと噛み合う第4の遊星歯車組を有する。第3のキャリアは、第4のリングギヤに連結され、第4のキャリアは、第3のリングギヤに連結され、第4のサンギヤは、第2のキャリアに連結されている。
【0008】
本発明のより完全な認識とその付随する利点の多くが容易に得られ、同様に、添付の図面に関して考慮される場合、次に示す詳細な説明を参照することによって更に理解されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の例示的な態様による自動変速機の例の概略図である。
【
図2】本開示の例示的態様による例示的変速機の2対の遊星歯車のCR−CR連結を示す例示的変速機の断面図である。
【
図3】本開示の例示的な態様による変速機の例の4つの遊星歯車組のそれぞれにおけるサンギヤ、リングギヤ及びピニオンギヤのギヤ歯の数を示す表である。
【
図4】本開示の例示的態様による例示的変速機の9つのフォワードギヤ及び1つのリバースギヤそれぞれの、係合されたシフト制御要素、ギヤ比、及び、ギヤ比のステップを示す表である。
【
図5】本開示の例示的な態様による例示的な変速機の、第1の前進速度(forward speed)から第9の前進速度、及び、後退速度(reverse speed)の、シフト過程を示す手法概略図(lever diagram)である。
【
図6】本開示の例示的な態様による例示的な変速機の隣接するフォワードギヤ間のギヤ比のステップを示す図である。
【
図7】本開示の更なる態様による自動変速機の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、図面を参照すると、同様の参照符号は、複数の図面において同一であるか又は対応する部分を示す。さらに、概して、本明細書に使用する「a」、「an」などの語は、特に指定のない限り「1以上」の意味を有する。
【0011】
図1は、本開示の例示的な態様による多段式自動変速機10の概略図を示す。自動変速機10は、原動機、例えば内燃機関によって駆動されるトルクコンバーターからトルクを受ける入力シャフト11を有する。入力シャフト11によって自動変速機10に伝達されたトルクは、ギヤ比を乗じられ(multiplied)、出力シャフト12へと伝達される。自動変速機10は、4つの遊星歯車組P1〜P4を更に有し、それぞれ対応するキャリアX1〜X4を有し、複数のシフト制御要素が変速機ケース13内部に配置される。シフト制御要素には、第1のブレーキB1、第2のブレーキB2及び第3のブレーキB3とともに、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2及び第3のクラッチC3が含まれる。4つの遊星歯車組P1〜P4は、回転軸14に沿って回転可能に支持され、同心円状に配置されている。
【0012】
第1の遊星歯車組P1には、回転軸14に沿って回転可能に支持された第1のサンギヤS1と、第1のピニオンギヤ組N1と、第1のピニオンギヤ組N1を回転可能に支持する第1のキャリアX1と、第1のリングギヤR1とが含まれている。第1のサンギヤS1は、第1のピニオンギヤ組N1と噛み合い、第1のピニオンギヤ組N1は、第1のサンギヤS1及び第1のリングギヤR1と噛み合っている。
【0013】
第2の遊星歯車組P2には、回転軸14に沿って回転可能に支持された第2のサンギヤS2と、第2のピニオンギヤ組N2と、第2のピニオンギヤ組N2を回転可能に支持する第2のキャリアX2と、第2のリングギヤR2とが含まれている。第2のサンギヤS2は、第2のピニオンギヤ組N2と噛み合い、第2のピニオンギヤ組N2は、第2のサンギヤS2及び第2のリングギヤR2と噛み合っている。第2のリングギヤR2は、第1のキャリアX1を介して、第1のピニオンギヤ組N1に連結され、第1のリングギヤR1は、第2のキャリアX2を介して、第2のピニオンギヤ組N2に連結されている。第1のキャリアX1は、CR連結(キャリア−リング連結)で第2のリングギヤR2に連結され、第2のキャリアX2は、CR連結で第1のリングギヤR1に連結され、
図1に示すように、第1の遊星歯車組P1と第2の遊星歯車組P2との間に、第1のCR−CR連結を形成する。
【0014】
第1の遊星歯車組P1及び第2の遊星歯車組P2は、第2の遊星歯車組P2が第1の遊星歯車組P1の径方向外側となるように径方向に積み重ねられ(stacked)てもよく、これによって、2つの遊星歯車組P1、P2は、平面15が遊星歯車組P1、P2の全てのギヤを遊星歯車組P1、P2のギヤの回転軸に対して垂直に横断するような共通のギヤ平面15において構成され、従って、軸線方向空間のかなりの節約となる。
【0015】
図2は、自動変速機10の断面図を示す。共通のギヤ平面15に配置された、第1の遊星歯車組P1と第2の遊星歯車組P2との間の第1のCR−CR連結は、4つの遊星歯車組P1〜P4からなる歯車列の左側に示される。特に、第2の遊星歯車組P2は、共通のギヤ平面15において第1の遊星歯車組P1の径方向外側に配置されている。その結果、遊星歯車組の改良された実装が、例えば軸空間の節約によって実現される。
【0016】
第3の遊星歯車組P3には、回転軸14に沿って回転可能に支持された第3のサンギヤS3と、第3のピニオンギヤ組N3と、第3のピニオンギヤ組N3を回転可能に支持する第3のキャリアX3と、第3のリングギヤR3とが含まれている。第3のサンギヤS3は、第3のピニオンギヤ組N3と噛み合い、第3のピニオンギヤ組N3は、第3のサンギヤS3及び第3のリングギヤR3と噛み合っている。
【0017】
第4の遊星歯車組P4には、回転軸14に沿って回転可能に支持された第4のサンギヤS4と、第4のピニオンギヤ組N4と、第4のピニオンギヤ組N4を回転可能に支持する第4のキャリアX4と、第4のリングギヤR4とが含まれている。第4のサンギヤS4は、第4のピニオンギヤ組N4と噛み合い、第4のピニオンギヤ組N4は、第4のサンギヤS4及び第4のリングギヤR4と噛み合っている。第4のサンギヤS4は、第2のキャリアX2を介して、第2のピニオンギヤ組に連結されている。第4のリングギヤR4は、第3のキャリアX3を介して、第3のピニオンギヤ組N3に連結され、第3のリングギヤR3は、第4のキャリアX4を介して、第4のピニオンギヤ組N4に連結されている。第3のキャリアX3は、CR連結で第4のリングギヤR4に連結され、第4のキャリアX4は、CR連結で第3のリングギヤR3に連結され、
図1に示すように、第3の遊星歯車組P3と第4の遊星歯車組P4との間に、第2のCR−CR連結が形成される。さらに、第3の遊星歯車組P3及び第4の遊星歯車組P4はともに、相互に軸線方向に離れ、回転軸14の周囲に同心円状に配置されている。
【0018】
図1で理解されるように、本開示の例示的な態様によれば、第3の遊星歯車組P3と第4の遊星歯車組P4との間で形成された第2のCR−CR連結は、第1のCR−CR連結の軸線方向右側に位置している。第4の遊星歯車組は、第1のCR−CR連結と第3の遊星歯車組との間において軸線方向に位置している。
【0019】
図1に示すように、自動変速機10は、3つのクラッチC1からC3及び3つのブレーキB1からB3を備えた少なくとも6つのシフト制御要素を更に有する。クラッチが係合されたとき、一方の要素から他方の要素へと回転力又はトルクを伝達できるように、クラッチの両側の2つの要素は、クラッチによって連結される。一方、ブレーキが係合されたとき、ブレーキの一方の側面の要素は、ブレーキによって変速機ケース13に、又は/及び、他の接地した構成要素に、固定され連結される。
【0020】
第1の遊星歯車組P1において、第1のサンギヤS1は、第1のクラッチC1によって、入力シャフト11に選択的に連結されている。また、第1のサンギヤS1も、第1のブレーキB1によって、変速機ケース13に選択的に固定されている。第1のキャリアX1は、第2のブレーキB2によって、変速機ケース13に選択的に固定されている。
【0021】
第2の遊星歯車組P2において、第2のサンギヤS2は、第2のクラッチC2によって、入力シャフト11に選択的に連結されている。
【0022】
第3の遊星歯車組P3において、第3のサンギヤS3は、第3のブレーキB3によって変速機ケース13に、又は/及び、他の接地した構成要素に選択的に固定されている。第3のリングギヤR3は、第3のクラッチC3によって、入力シャフト11に選択的に連結されている。第3のキャリアX3は、出力シャフト12に直接連結されている。「直接連結されている」という用語は、2つの部材が、クラッチ又はブレーキなどの介在するシフト制御要素なしで、相互に連結されていることを示す。
【0023】
本開示の例示的な態様によれば、少なくとも3つのシフト制御要素は、自動変速機10のいずれかの速度において、3つのクラッチC1〜C3及び3つのブレーキB1〜B3のうちのいずれかに噛み合っている。通常、係合されていない摩擦クラッチ又はブレーキなどのシフト制御要素は、燃費に悪影響を及ぼす望ましくないドラグトルクを発生させる。しかしながら、少なくとも3つのシフト制御要素が、9つのフォワードギヤ及び1つのリバースギヤのそれぞれに係合されるので、ドラグトルクが最小化され、改善された燃費が実現される。
【0024】
本開示の例示的な態様によれば、自動変速機10は、改良された組み立て及び低減された実装サイズ(packing size)を提供する。自動変速機10は、組立ての利点を提供する。特に、第1のブレーキB1及び第2のブレーキB2、並びに第1のクラッチC1は、
図1に示すように、遊星歯車組P1〜P4によって形成された歯車列の外側にあり、これによって、歯車列の組立てが容易になる。また、歯車列外側のクラッチ及びブレーキの実装により、クラッチ及びブレーキに液圧を供給することも容易になる。さらに、好ましくは単一の共通する面、例えば面16において、シフト制御要素を入れ子にすることにより、変速機の軸線長さにおける実装サイズをより小さくするという利点が自動変速機10に更に提供される。したがって、自動変速機10は、車両本体内部の変速機の組立て及び統合を容易にする。
【0025】
図3は、本開示の例示的な態様による自動変速機10の4つの遊星歯車組P1〜P4のそれぞれにおけるサンギヤ、リングギヤ及びピニオンギヤのギヤ歯の数を示す表である。例えば、第1の遊星歯車組P1のサンギヤS1、リングギヤR1及びピニオンギヤN1はそれぞれ、28、63及び18のギヤ歯を有する。
図3の「Rho」とは、それぞれの遊星歯車組のサンギヤとリングギヤとの間のギヤ比を意味する。例えば、第1の遊星歯車組のRhoは、第1のサンギヤと第1のリングギヤとの間のギヤ比(すなわち、第1のサンギヤS1のギヤ歯の数を第1のリングギヤR1のギヤ歯の数で割った値、28/63=0.444)である。
【0026】
図4は、本開示の例示的な態様による、それぞれのギヤ速度と、クラッチC1〜C3及びブレーキB1〜B3の動作状態との関係の概略である。丸「○」は、「係合された」状態を意味し、ブランク「 」は「
係合解除された」状態を意味する。
図5は、本開示の例示的な態様による、第1の前進速度から第9の速度へのシフト過程、並びに第9の後退速度へのシフト過程を示す。より詳細には、
図4及び5に示すように、第2のクラッチC2、第2のブレーキB2及び第3のブレーキB3が、トルクを伝達するように係合されたとき、自動変速機10の第1のフォワードギヤが形成される一方で、第1のクラッチC1、第3のクラッチC3及び第1のブレーキB1は係合解除される。第2のクラッチC2、第1のブレーキB1及び第3のブレーキB3が、トルクを伝達するように係合されたとき、第2のフォワードギヤが形成される一方で、第1のクラッチC1、第3のクラッチC3及び第2のブレーキB2が係合解除される。第1のクラッチC1、第2のクラッチC2及び第3のブレーキB3が、トルクを伝達するように係合されたとき、第3のフォワードギヤが形成される一方で、第3のクラッチC3、第1のブレーキB1及び第2のブレーキB2が係合解除される。第2のクラッチC2、第3のクラッチC3及び第3のブレーキB3が、トルクを伝達するように係合されたとき、第4のフォワードギヤが形成される一方で、第1のクラッチC1、第1のブレーキB1及び第2のブレーキB2が係合解除される。
【0027】
さらに、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2及び第3のクラッチC3が、トルクを伝達するように係合されたとき、第5のフォワードギヤが形成される一方で、第1のブレーキB1、第2のブレーキB2及び第3のブレーキB3が係合解除される。第2のクラッチC2、第3のクラッチC3及び第1のブレーキB1が、トルクを伝達するように係合されたとき、第6のフォワードギヤが形成される一方で、第1のクラッチC1、第2のブレーキB2及び第3のブレーキB3が係合解除される。第2のクラッチC2、第3のクラッチC3及び第2のブレーキB2が、トルクを伝達するように係合されたとき、第7のフォワードギヤが形成される一方で、第1のクラッチC1、第1のブレーキB1及び第3のブレーキB3が係合解除される。第3のクラッチC3、第1のブレーキB1及び第2のブレーキB2が、トルクを伝達するように係合されたとき、第8のフォワードギヤが形成される一方で、第1のクラッチC1、第2のクラッチC2及び第3のブレーキB3が係合解除される。第1のクラッチC1、第3のクラッチC3及び第2のブレーキB2が、トルクを伝達するように係合されたとき、第9のフォワードギヤが形成される一方で、第2のクラッチC2、第1のブレーキB1及び第3のブレーキB3が係合解除放される。さらに、第1のクラッチC1、第2のブレーキB2及び第3のブレーキB3が、トルクを伝達するように係合されたとき、自動変速機10のリバースギヤが形成される一方で、第2のクラッチC2、第3のクラッチC3及び第1のブレーキB1が係合解除される。
【0028】
図4に示すギヤ比は、4つの遊星歯車組P1〜P4の定常伝達比(stationary transmission ratio)から決定される。
図4のシフトパターンによれば、ダブルシフト又はレンジシフトは、2つの隣接するギヤが、噛み合った2つのシフト制御要素を共有する(share)ので、連続シフトによって回避することができる。例えば、第1のギヤから第2のギヤにシフトアップする場合、第1のブレーキB1が係合され、第2のクラッチC2及び第3のブレーキB3を係合させたまま、第2のブレーキB2を係合解除するだけでよい。別の例において、第9のギヤから第8のギヤにシフトダウンする場合、第1のブレーキB1が係合され、第3のクラッチC3及び第2のブレーキB2を
係合させたまま、第1のクラッチC1を係合解除するだけでよい。
【0029】
本開示の例示的な態様による自動変速機10において、第1のフォワードギヤは、自動変速機の最高フォワードギヤ比を有する一方で、第9のフォワードギヤは、自動変速機の最低フォワードギヤ比を有する。特に、最高フォワードギヤ比と最低フォワードギヤ比との間の比の分布(ratio spread)は、10.5より小さく、且つ、7.5より大きいと好適である。
図4に示す例において、最高フォワードギヤ比と最低フォワードギヤ比との間の比の分布は、8.977である。また、自動変速機10のいずれかの2つの隣接する(immediately adjacent)フォワードギヤ比間の比のステップは、2.00より小さく、且つ、1.10より大きいと好適である。その結果、自動変速機10は、エンジンなどの原動機を効果的な運転状態で維持し、車両の燃費を向上させる。隣接するギヤ比のステップは、更により応答性の良好なトルク要求ロジックを可能とし、且つ、車両の走行性を向上させる。有益なことに、自動変速機10のシフト制御要素は、トルク要求が低く、その結果、これらの要素のサイズが小さくなり、これらの要素は小さな摩擦を受ける。
【0030】
図7に、本開示の更なる態様による自動変速機20の例を示す。
図7の自動変速機20は、
図1の自動変速機10の全ての特徴を有しており、第2のクラッチC2’がロッククラッチとして実現され、且つ/又は、第3のブレーキB3’がロッククラッチとして実現されている。本変形例において、ロッククラッチは、高摩擦の湿式多板クラッチの代わりに、ドッグクラッチであってもよい。それぞれのドッグクラッチは、自動変速機20内部の摩擦損失を更に小さくし、シフト性能も維持する、低摩擦の構成要素である。さらに、1つの湿式摩擦クラッチのみが、第8のギヤ及び第9のギヤにおいて解放されている(open)ので、本変形例は、第8のギヤ及び第9のギヤの燃費を更に向上させる。
【0031】
前述の開示は、本発明の例示的な実施形態を説明するにすぎない。当業者によって理解されるように、本発明は、その趣旨又は本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化されてもよい。したがって、本開示は、本発明を例示するものとし、本発明の範囲並びに次に示す特許請求の範囲を限定するものではない。本開示及び本明細書の教示のいずれかの認識可能な変形例は、進歩性のない主題が公衆に供されないように、少なくとも部分的に特許請求の範囲の用語の範囲を規定する。
本開示は以下を含む。
[構成1]
多段式自動変速機であって、
第1のサンギヤ、第1のピニオンギヤ組、該第1のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第1のキャリア、及び、第1のリングギヤ、を有する第1の遊星歯車組であって、前記第1のサンギヤが、前記第1のピニオンギヤ組と噛み合い、該第1のピニオンギヤ組が、前記第1のサンギヤ及び前記第1のリングギヤと噛み合っている、第1の遊星歯車組と、
第2のサンギヤ、第2のピニオンギヤ組、該第2のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第2のキャリア及び第2のリングギヤを含む、第2の遊星歯車組であって、前記第2のサンギヤが、前記第2のピニオンギヤ組と噛み合い、該第2のピニオンギヤ組が、前記第2のサンギヤ及び前記第2のリングギヤと噛み合う、第2の遊星歯車組と、を具備し、
前記第1のキャリアが、前記第2のリングギヤに連結され、前記第2のキャリアが、前記第1のリングギヤに連結され、前記第1の遊星歯車組及び前記第2の遊星歯車組が、共通平面において同心円状に配置された、多段式自動変速機。
[構成2]
第3のサンギヤ、第3のピニオンギヤ組、該第3のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第3のキャリア、及び、第3のリングギヤ、を有する第3の遊星歯車組であって、該第3のサンギヤが、該第3のピニオンギヤ組と噛み合い、該第3のピニオンギヤ組が、該第3のサンギヤ及び該第3のリングギヤと噛み合う、第3の遊星歯車組と、
第4のサンギヤ、第4のピニオンギヤ組、該第4のピニオンギヤ組を回転可能に支持する第4のキャリア、及び、第4のリングギヤ、を有する第4の遊星歯車組であって、前記第4のサンギヤが、前記第4のピニオンギヤ組と噛み合い、該第4のピニオンギヤ組が、前記第4のサンギヤ及び前記第4のリングギヤと噛み合う、第4の遊星歯車組と、を更に具備し、
前記第3のキャリアが、前記第4のリングギヤに連結され、前記第4のキャリアが、前記第3のリングギヤに連結され、前記第4のサンギヤが、前記第2のキャリアに連結された、構成1に記載の多段式自動変速機。
[構成3]
係合されたときに前記第1のサンギヤを当該多段式自動変速機の入力シャフトに回転可能に連結する第1のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第2のサンギヤを前記入力シャフトに回転可能に連結する第2のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第3のリングギヤを前記入力シャフトに回転可能に連結する第3のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第1のサンギヤを当該多段式自動変速機の変速機ケースに固定して連結する第4のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第1のキャリアを前記変速機ケースに固定して連結する第5のシフト制御要素と、
係合されたときに前記第3のサンギヤを前記変速機ケースに固定して連結する第6のシフト制御要素と、を更に備える構成2に記載の多段式自動変速機。
[構成4]
前記第2のシフト制御要素、前記第5のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第1のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第2のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第2のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第3のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、第4のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第2のシフト制御要素及び前記第3のシフト制御要素が、第5のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第4のシフト制御要素が、第6のフォワードギヤ比で係合され、
前記第2のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、第7のフォワードギヤ比で係合され、
前記第3のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、第8のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第3のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、第9のフォワードギヤ比で係合され、
前記第1のシフト制御要素、前記第5のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素が、リバースギヤ比で係合された、構成3に記載の多段式自動変速機。
[構成5]
前記第1のフォワードギヤ比が、当該多段式自動変速機の最高フォワードギヤ比であり、前記第9のフォワードギヤ比が、当該多段式自動変速機の最低フォワードギヤ比である、構成4に記載の多段式自動変速機。
[構成6]
前記最高フォワードギヤ比と前記最低フォワードギヤ比との間の比の広がりが、10.5未満であり、且つ、7.5より大きく、任意の2つの隣接するフォワードギヤ比間の比のステップが、2.0未満であり、且つ、1.1より大きい、構成5に記載の多段式自動変速機。
[構成7]
前記第2の遊星歯車組が前記第1の遊星歯車組の径方向外側となるように、該第1の遊星歯車組及び前記第2の遊星歯車組が径方向に積み重ねられた、構成2に記載の多段式自動変速機。
[構成8]
前記第4の遊星歯車組が、前記第3の遊星歯車組と、前記第1の遊星歯車組及び前記第2の遊星歯車組間で径方向に積み重ねられたギヤ群と、の間で、軸線方向に配置された、構成7に記載の多段式自動変速機。
[構成9]
出力シャフトが、前記第3のキャリアに直接的に連結されている、構成2に記載の多段式自動変速機。
[構成10]
前記第2のシフト制御要素及び前記第6のシフト制御要素の少なくとも1つが、ドッグクラッチである、構成3に記載の多段式自動変速機。
[構成11]
少なくとも3つのシフト制御要素が、9つの前記フォワードギヤ比及び1つの前記リバースギヤ比のうちのいずれか1つを提供するように係合された、構成3に記載の多段式自動変速機。
[構成12]
前記第1のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、1つの平面において同心円状に配置された、構成3に記載の多段式自動変速機。
[構成13]
前記第1のシフト制御要素、前記第4のシフト制御要素及び前記第5のシフト制御要素が、前記第1の遊星歯車組、前記第2の遊星歯車組、前記第3の遊星歯車組及び前記第4の遊星歯車組によって形成された歯車列の外側において覆われた、構成3に記載の多段式自動変速機。
【符号の説明】
【0032】
10 多段式自動変速機
11 入力シャフト
12 出力シャフト
13 変速機ケース
14 回転軸
15 ギヤ平面
16 面
B ブレーキ
P 遊星歯車組
R リングギヤ
S サンギヤ
X キャリア