特許第6510324号(P6510324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6510324-建築構造物の既存設備補強構造 図000002
  • 特許6510324-建築構造物の既存設備補強構造 図000003
  • 特許6510324-建築構造物の既存設備補強構造 図000004
  • 特許6510324-建築構造物の既存設備補強構造 図000005
  • 特許6510324-建築構造物の既存設備補強構造 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510324
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】建築構造物の既存設備補強構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/06 20060101AFI20190422BHJP
   F16B 2/06 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   F16B7/06 Z
   F16B2/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-106114(P2015-106114)
(22)【出願日】2015年5月26日
(65)【公開番号】特開2016-217516(P2016-217516A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】久保田 祥彰
(72)【発明者】
【氏名】森田 仁彦
(72)【発明者】
【氏名】村田 圭介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大貫 亮三
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−132122(JP,A)
【文献】 特開2012−026187(JP,A)
【文献】 特開2014−009450(JP,A)
【文献】 特開2015−090199(JP,A)
【文献】 特開2016−023505(JP,A)
【文献】 特開2013−050025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 1/00
F16B 2/00− 2/26
F16B 7/00− 7/22
F16L 3/00− 3/26
E04B 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の躯体下方に吊下させた複数の吊ボルトによって、建築構造内設置物を支持する既存設備を対象として、前記吊ボルトを補強する建築構造物の既存設備補強構造であって、
前記吊ボルトに沿って補強鋼材を配し、
前記吊ボルト及び前記補強鋼材の上端部、及び下端部を、外方から挟んで固定する固定具により、それぞれ固定し
1本の前記吊ボルトに対して1本のL型鋼が前記補強鋼材として設けられ、該L型鋼は、その内側両側面に前記吊ボルトが接するように配置され、
前記固定具は、蝶番によって開閉可能に接続された第1及び第2の部材を備え、
開かれた該第1及び第2の部材間に前記吊ボルト及び前記補強鋼材を配した後、前記第1及び第2の部材を閉じることで、前記吊ボルト及び前記補強鋼材が固定される、建築構造物の既存設備補強構造。
【請求項2】
前記第1の部材は、前記L型鋼の外側両側面の各々に接するように前記L型鋼に対して設けられる、2つの板部を備え、
前記第2の部材は、前記L型鋼の内側両側面の各々に接するように前記L型鋼に対して設けられる、2つの板部を備え、
前記第2の部材は、当該第2の部材の2つの板部の間に設けられてこれらを接続する湾曲部を備え、前記第2の部材が前記L型鋼の内側両側面に接するように設けられた際に、前記湾曲部は前記L型鋼とは反対側に湾曲するように形成され、前記L型鋼と前記湾曲部の間に前記吊ボルトが格納される、請求項1に記載の建築構造物の既存設備補強構造。
【請求項3】
前記複数の吊ボルトのうちの2本の吊ボルトの各々に固定された前記固定具間が、水平部材により接続されている、請求項1または2に記載の建築構造物の既存設備補強構造。
【請求項4】
前記複数の吊ボルトのうち一の吊ボルトの上端に固定された前記固定具に、斜め部材の一端が接続され、
前記複数の吊ボルトのうち二の吊ボルトの下端に固定された前記固定具に、別の斜め部材の一端が接続され、
これら各斜め部材の他端間がターンバックルで接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の建築構造物の既存設備補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の既存設備補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の天井裏には、配管、ダクト、照明器具や、天井カセット型の空調機などの、様々な建築構造内設置物が、天井スラブから吊下される吊ボルトなどにより、支持されている。
【0003】
このような建築構造内設置物の支持を補強するにあたり、天井が補強作業の邪魔となるため、天井を一旦解体し、建築構造内設置物の支持構造を補強し、天井を再構築するという手順が、一般には必要であった。
【0004】
しかし、天井の解体と構築には工数がかかり、施工コストが嵩む。このため、天井を解体しなくとも建築構造内設置物の支持を補強できるような、建築構造物の既存設備補強構造が、提案されている。
【0005】
特許文献1には、図3に示されるような、既設の吊ボルト32の外周側面に挟着固定する固定金具31が開示されている。固定金具31は、拡開部33を有し、拡開部33のそれぞれにブレース34を接続することにより、既設の吊ボルト32を補強する。吊ボルト32によって、既設の構造物が支持されている。
【0006】
また、特許文献2には、図4に示されるような、上端に長孔42を有する金具本体41と、支持ボルト43を備える金具40が開示されている。支持ボルト43は金具本体41の長孔42に挿通され、支持ボルト43の下端に形成された回転支持部44によって金具本体41が搖動、回転可能に支持されている。天井スラブに設置した吊支持用のナットに、支持ボルト43を螺合固定し、金具本体41の下端に設置されたナット45に吊ボルトを螺合し、更にこの吊ボルトの先を、既設の吊ボルトに吊下された既設の構造物に固定することで、構造物の振止め支持を行っている。
【0007】
また、特許文献3には、図5に示されるような、2つのコの字形状の部材52が、互いの開口部が向い合せになるように連結された金具51が開示されている。天井スラブの下面に露出した床盤用プレートの、断面I型の補強部53の両側面が、部材52によって挟みつけて固定される。金具51に接続された吊ボルト54によって、構造物が支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−125812号公報
【特許文献2】特開2009−287615号公報
【特許文献3】実開平06−012616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、吊ボルトは、引張力には強いが、圧縮力には弱く、地震力などの外的な力が働いた場合、座屈する場合がある。特許文献1に記載の固定金具31を用いた構造においては、既設の吊ボルト32に圧縮力が働いた場合、吊ボルト32が十分に圧縮力に対抗しうる構成とはなっておらず、吊ボルト32が座屈する危険がある。
【0010】
特許文献2に記載の固定金具40を用いた構造においても、引用文献1と同様に、ナット45に螺合された吊ボルトが座屈する危険がある。また、固定金具40の設置の際に、支持ボルト43を固定するための吊支持用のナットを、天井スラブに形成する必要があり、施工に手間がかかる。
【0011】
特許文献3に記載の金具を用いた構造においても、引用文献1と同様に、吊ボルト54が座屈する危険がある。また、金具の設置には、天井スラブ下面に露出した床盤用プレートの補強部53が存在することが前提となっており、汎用性に欠ける。
【0012】
本発明の課題は、既設の吊ボルトの座屈を防止する、施工の工数が少ない、建築構造物の既存設備補強構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、建築構造物の躯体下方に吊下させた複数の吊ボルトによって、建築構造内設置物を支持する既存設備を対象として、前記吊ボルトを補強する既築構造物の既存設備補強構造であって、前記吊ボルトに沿って補強鋼材を配し、前記吊ボルト及び前記補強鋼材の上端部、及び下端部を、外方から挟んで固定する固定具により、それぞれ固定した、建築構造物の既存設備補強構造を提供する。
上記のような構成によれば、吊ボルトに沿って補強鋼材が配されているため、吊ボルトの座屈を防止できる。
また、既設の吊ボルトに補強鋼材を沿わせ、固定具で固定するだけで、吊ボルトの補強ができるため、施工に手間がかからず、容易であり、また、点検口などの狭い空間からでも施工が可能である。
また、天井スラブ下面に露出した床盤用プレートの補強部などの、特殊な既設物を必要としないため、どのような構造においても、吊ボルトの補強が可能であり、施工に汎用性がある。
【0014】
前記補強鋼材はL型鋼であり、該L型鋼は、その内側両側面に前記吊ボルトが接するように配置されてもよい。
このような構成によれば、補強鋼材として一般的な鋼材を使用するため、補強のための費用を低減することが可能である。
また、L型鋼の内側両側面に吊ボルトが接するように配置すると、吊ボルトとL型鋼を固定する前に、吊ボルトとL型鋼の相対的な移動を防止することが可能であり、施工が容易となる。
【0015】
前記固定具は、蝶番によって開閉可能に接続された第1及び第2の部材を備え、開かれた該第1及び第2の部材間に前記吊ボルト及び前記補強鋼材を配した後、前記第1及び第2の部材を閉じることで、前記吊ボルト及び前記補強鋼材が固定されてもよい。
このような構成によれば、吊ボルトと補強鋼材の固定を、第1及び第2の部材を開閉する動作で行うことが可能であるので、施工が容易となる。
【0016】
前記複数の吊ボルトのうち一の吊ボルトの上端に固定された前記固定具に、斜め部材の一端が接続され、前記複数の吊ボルトのうち二の吊ボルトの下端に固定された前記固定具に、別の斜め部材の一端が接続され、これら各斜め部材の他端間がターンバックルで接続されていてもよい。
このような構成によれば、既設の吊ボルト間を斜め部材、例えば鋼棒などの鋼材で締結することが可能となるため、吊ボルトの搖動を防ぐことが可能となり、建築構造物の既存設備補強構造をさらに強固にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吊ボルトの座屈を防止できる、建築構造物の既存設備補強構造を、提供することが可能となる。
【0018】
好ましい様態では、施工を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態として示した建築構造物の既存設備補強構造の側面図である。
図2】本発明の実施形態として示した建築構造物の既存設備補強構造において使用される固定具の設置状況を示した、一部断面視した(a)平面図と(b)斜視図である。
図3】従来の固定金具の斜視図である。
図4】従来の金具の斜視図である。
図5】従来の金具を用いた既存設備吊下構造の、一部断面視した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態として示した建築構造物の既存設備補強構造1の側面図である。
【0022】
建築構造物の天井スラブ2の下面には、天井4が、吊ボルト3などによって吊下されている。天井スラブ2と天井4との間の空間には、既存設備が設置されている。
【0023】
既存設備は、配管、ダクト、照明器具や、天井カセット型の空調機などの、様々な建築構造内設置物8が、吊ボルト5によって支持されている構造体である。具体的には、建築構造内設置物8は、天井スラブ2から吊下された複数の吊ボルト5の下端部間に架設された支持鋼材6上に、設置されている。支持鋼材6は、例えばL型鋼であり、L型鋼の側面に開設された図示しない孔に吊ボルト5の下端部が挿通され、吊ボルト5の下端部にナット7が螺合されて、吊ボルト5に固定されている。
【0024】
本発明の実施形態として示した補強構造1は、補強鋼材9と、固定具10を備え、これらによって、既存設備の吊ボルト5が補強されている。
【0025】
補強鋼材9は、既存設備の吊ボルト5に沿うように、配置される。補強鋼材9としては、例えば、L型鋼が使用される。すなわち、補強鋼材9は、図2に示されるように、同じ長さを有する第1板部9aと第2板部9bを備え、第1及び第2板部9a、9bが互いの側辺において垂直に接合されて形成されている。L型鋼は、その内側両側面に吊ボルト5が接するように、吊ボルト5の上端近傍から下端近傍まで、吊ボルト5の略全長にわたって、沿うように配置されている。
【0026】
固定具10は、図1に示されるように、吊ボルト5及び補強鋼材9の上端部近傍に配置され、吊ボルト5及び補強鋼材9の上端部が、固定具10によって、外方から挟まれて、固定されている。固定具10はまた、吊ボルト5及び補強鋼材9の下端部近傍にも配置され、吊ボルト5及び補強鋼材9の下端部が、固定具10によって、外方から挟まれて、固定されている。
【0027】
図2は、吊ボルト5及び補強鋼材9の上端部近傍に配置された固定具10の設置状況を示す図である。吊ボルト5及び補強鋼材9の下端部近傍に配置された場合、固定具10は上下逆に設置される。固定具10は、第1の部材15と、第2の部材16を備えている。
【0028】
第1の部材15は、同じ長さを有する第1板部15aと第2板部15bを備え、第1及び第2板部15a、15bが互いの側辺において垂直に接合された、断面形状が略L字型の部材である。第1板部15aと第2板部15bの内側両側面に、補強鋼材9の第1及び第2板部9a、9bの各外側両側面が接するように、補強鋼材9を配置した場合に、第1の部材15の幅方向の端辺15cは、補強鋼材9の幅方向の端辺9cの外側に位置するように、第1の部材15は形成されている。
【0029】
第1板部15aの、図2(b)における上側の幅方向端部には、後述する第2の部材16を開閉可能に接続する蝶番17が設けられている。第2板部15bの上側の端部には、図2(a)に図示される孔19が開設されている。孔19は、第1及び第2の部材15、16が閉じられたときに、第2の部材16の後述する孔21と貫通するように、図2(b)においては、孔21の裏側に位置している。第1及び第2板部15a、15bの下側の各端部には、孔20が開設されている。
【0030】
第2の部材16は、蝶番17とほぼ同じ長さを有する第1板部16aと第2板部16bを備え、第1及び第2板部16a、16bが互いの側辺において、湾曲部16dを介して垂直に接合された、断面形状が略L字型の部材である。第1板部16aと第2板部16bの外側両側面に、補強鋼材9の第1及び第2板部9a、9bの各内側両側面が接するように、補強鋼材9を配置した場合に、第2の部材16の幅方向の端辺16cは、補強鋼材9の幅方向の端辺9cの外側に位置するように、第2の部材16は形成されている。
【0031】
第1板部16aの幅方向端部は、蝶番17に接続されている。第2板部16bの端部には、孔21が開設されている。孔21は、第1及び第2の部材15、16が閉じられたときに、第1の部材15の孔19と貫通するように、位置づけられている。
【0032】
第2の部材16の湾曲部16dは、第1板部16aと第2板部16bの接続部が内側に凹むように形成されている。この湾曲部16dは、その凹みの内部に吊ボルト5を格納することができる程度の断面寸法を有する。また、第1及び第2の部材15、16は、これらの部材が閉じられたときに、第1の部材15の内側側面と第2の部材16の外側側面との間に、補強鋼材9の厚さ相当の間隔が空くように、互いの位置が調整されて、蝶番17により開閉可能に接続されている。
【0033】
この湾曲部16d、及び、第1及び第2の部材15、16間の間隔により、第1及び第2の部材15、16間に、補強鋼材9と吊ボルト5を設置した状態で、第1及び第2の部材15、16を蝶番17により閉じることが可能となっている。図2の各図は、補強鋼材9が第1の部材15の内側両側面に密接するように、かつ、吊ボルト5が補強鋼材9の内側両側面に密接するように、補強鋼材9と固定具10を配置した後に、蝶番17によって第2の部材16を閉じた様子を示している。本図において、吊ボルト5は、第2の部材16の湾曲部16dの中に位置している。
【0034】
第1及び第2の部材15、16は、蝶番17によって閉じられた後に、図2(a)に示されるように、第1の部材15の孔19と、第2の部材16の孔21を挿通するように、ボルト・ナット18によって固定されている。これにより、第1及び第2の部材15、16、補強鋼材9及び吊ボルト5は、互いに圧接固定される。
【0035】
図1に示される補強構造1においては、左右の吊ボルト5のそれぞれ上下に、固定具10が設置されている。各々の固定具10の第1の部材15の、一方の孔20には、斜め部材(鋼棒)11の一端が接続されている。左の吊ボルト5の上の固定具10に接続された斜め部材11の他端と、右の吊ボルト5の下の固定具10に接続された斜め部材11の他端には、雄ネジ部が形成され、これらの両他端は互いに向かい合うように位置されて、内部に雌ネジ部を有するターンバックル12により螺合、固定されている。左の吊ボルト5の下の固定具10に接続された斜め部材11の他端と、右の吊ボルト5の上の固定具10に接続された斜め部材11の他端も、同様に、ターンバックル12により固定されている。
【0036】
固定具10は、鉄に、クロムなどをメッキした部材により作製されるのが好適であるが、これに限られない。
【0037】
次に、既存設備の吊ボルト5を、補強鋼材9と固定具10によって補強する方法を説明する。
【0038】
まず、既存設備を支持する吊ボルト5の、吊長さを測定する。次に、既存設備の重量を基に、想定する地震力に対する圧縮荷重、曲げ荷重を計算し、この圧縮荷重、曲げ荷重に耐えられる鋼材断面を算定する。更に、算定された断面仕様を満たす鋼材を、測定された吊長さに切断加工して、補強鋼材9を作製する。
【0039】
次に、補強鋼材9を吊ボルト5に沿わせる。その後、斜め部材11が接続された、第1及び第2の部材15、16が開いた状態の固定具10を、補強鋼材9と吊ボルト5を挟み込むように配置した後、第1及び第2の部材15、16を閉じて、第1の部材15の孔19と、第2の部材16の孔21を挿通するように、ボルト・ナット18によって固定する。
【0040】
最後に、左の吊ボルト5の上の固定具10に接続された斜め部材11の他端と、右の吊ボルト5の下の固定具10に接続された斜め部材11の他端とを、また、左の吊ボルト5の下の固定具10に接続された斜め部材11の他端と、右の吊ボルト5の上の固定具10に接続された斜め部材11の他端とを、ターンバックル12により接続し、固定する。
【0041】
次に、上記のような、補強構造1の作用について説明する。
【0042】
上記補強構造1においては、地震などにより吊ボルト5に圧縮力が働いたとしても、吊ボルト5に沿うように固定されている補強鋼材9が圧縮力を負担する。
【0043】
このように、本補強構造1においては、吊ボルト5の座屈を、効果的に防止できる。
【0044】
また、既設の吊ボルト5に補強鋼材9を沿わせ、固定具10で固定するだけで、吊ボルト5の補強ができる。また、吊ボルト5の上方と下方に同じ固定具10を使用しており、現場での誤った設置がなくなる。これにより、施工が容易であり、手間がかからない。また、天井点検口などの狭い空間からでも施工が可能である。
【0045】
また、天井スラブ2下面に露出した床盤用プレートの補強部などの、特殊な既設物を必要としないため、どのような構造においても、吊ボルト5の補強が可能であり、施工に汎用性がある。
【0046】
また、補強鋼材9として一般的な鋼材を使用するため、補強のための費用を低減することが可能である。
【0047】
また、補強鋼材9であるL型鋼の内側両側面に吊ボルト5が接するように配置すると、吊ボルトとL型鋼を固定する前に、吊ボルト5とL型鋼の、相対的な移動を防止することが可能であり、施工が容易となる。
【0048】
また、吊ボルト5と補強鋼材9の固定を、第1及び第2の部材15、16を開閉する動作で行うことが可能であるので、柔軟な施工が容易となる。
【0049】
また、既設の吊ボルト5間を斜め部材11で締結することが可能となるため、吊ボルト5の搖動を防ぐことが可能となり、補強構造1をさらに強固にすることができる。
【0050】
なお、第1の部材15と補強鋼材9、補強鋼材9と吊ボルト5、吊ボルト5と第2の部材16の間、あるいは、これらのいずれかに、ゴムなどを介在させて、固定具10による固定後の、互いの密着性を高めるようにしてもよい。
【0051】
建築構造内設置物8の大きさや形状によっては、固定具10間の斜め部材11による接続が、建築構造内設置物8が干渉するために、難しいことがある。このような場合において、固定具10間(吊ボルト5間)に力の伝達がなされる処置を施す場合には、水平部材等で、斜め部材11の代替処置とすることがあってもよい。
【0052】
図1に示される補強構造1に加えて、図1に記載される吊ボルト5と、紙面の手前あるいは奥行方向に位置する図示しない吊ボルトとの間にも、斜め部材11とターンバックル12による接続を行ってもよい。
【0053】
上記の実施形態においては、既存設備は、建築構造内設置物8が吊ボルト5の下端部間に架設された支持鋼材6上に設置されている構造を有していたが、例えば建築構造内設置物8が天井カセット型の空調機である場合などにおいては、建築構造内設置物8が、支持鋼材6を介さずに、吊ボルト5が直接接続することによって、支持されている構造であってもよい。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明したが、当該技術分野における通常の知識を有する者であればこれから様々な変形及び均等な実施の形態が可能であることが理解できるであろう。
【0055】
よって、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載される本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形や改良形態も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 建築構造物の既存設備補強構造
2 天井スラブ
3、5 吊ボルト
4 天井
6 支持鋼材
7 ナット
8 建築構造内設置物
9 補強鋼材
10 固定具
11 斜め部材
12 ターンバックル
15 第1の部材
16 第2の部材
17 蝶番
18 ボルト・ナット
図1
図2
図3
図4
図5