(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
屈折素子を有する第1の光学系と、この第1の光学系から出射する投射光を投射面に向けて反射する反射素子を有する第2の光学系とを備える投射光学系に前記反射素子として備えられ、反射面が回転曲面である曲面ミラーと、
前記曲面ミラーを保持するミラー保持部材と、
前記ミラー保持部材が可動に取り付けられる第1保持部材と、
前記第1保持部材が可動に取り付けられる第2保持部材と、
前記第2保持部材が可動に取り付けられると共に、前記第1の光学系に対して固定される固定部材と、
を有し、
前記第1保持部材に対する前記ミラー保持部材の移動と、前記第2保持部材に対する前記第1保持部材の移動と、前記固定部材に対する前記第2保持部材の移動とは相互に独立である、
ことを特徴とする曲面ミラーの調整装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のフローティング機構の場合、三点のうち一点を調整すると、結果的に残りの二点により調整した曲面ミラーの姿勢に影響を与えてしまうため、精密な調整を行うには各点を何度も調製し直すことが必要である。また、フローティング支持では反射面の角度の調整のみしかできず、反射面の平行移動ができないため、完全に調整し切れない場合があった。
【0006】
また、特許文献2の構成では、曲面ミラーの角度の調整(チルト調整)はできるが、結像光学系に対する曲面ミラーの位置の調整(シフト調整)が行えないため、角度ではなく位置のずれによる光学性能の劣化を補正することができなかった。
【0007】
さらに、近年より巨大な投射面への投射が求められ、かつ鮮明な画像を投射するために、より高いルーメン数を有する光源(高輝度光源)を使用することが求められている。
しかし、高輝度光源では、光の吸収等による発熱や、光源自体の熱による光学素子の形状や性能の変動が無視できなくなり、特に上記の曲面鏡では反射面の形状が歪むと性能の劣化が著しくなる傾向を持つ。
【0008】
このような問題を解決するためには、曲面ミラーの材質に熱線膨張係数の小さい物を使用すればよいが、プラスチックと比較して加工が容易ではなく、曲面ミラー自体に突起や溝等の係合部を形成して投射光学系への取り付け等を行うことが難しく、特許文献1及び特許文献2でも硝材にはプラスチックを使用している。
また、投射光学系に組み込んだ曲面ミラーにガラス基盤を用いた際、実使用に耐え得るほど微妙な位置や角度の調整を可能とする調整機構や調整方法の開示が過去にない。
【0009】
本発明の課題は、曲面ミラーの調整装置において、曲面ミラーの基盤に熱線膨張係数の小さいガラス等を使用した場合においても反射面の角度及び位置をそれぞれ独自に調整可能として、より高精度の調整を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
屈折素子を有する第1の光学系と、この第1の光学系から出射する投射光を投射面に向けて反射する反射素子を有する第2の光学系とを備える投射光学系に前記反射素子として備えられ、反射面α2が回転曲面である曲面ミラーαと、
前記曲面ミラーαを保持するミラー保持部材1と、
前記ミラー保持部材1が可動に取り付けられる第1保持部材11と、
前記第1保持部材1が可動に取り付けられる第2保持部材12と、
前記第2保持部材12が可動に取り付けられると共に、前記第1の光学系に対して固定される固定部材21と、
を有し、
前記第1保持部材11に対する前記ミラー保持部材1の移動と、前記第2保持部材12に対する前記第1保持部材11の移動と、前記固定部材21に対する前記第2保持部材12の移動とは相互に独立である、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の曲面ミラーの調整装置において、
前記ミラー保持部材1は、前記曲面ミラーαの外形に沿った内周を有し、前記曲面ミラーαは、その外形を前記ミラー保持部材1の内周に沿わせた状態で保持されている、
ことを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、
請求項1又は2に記載の曲面ミラーの調整装置において、
前記曲面ミラーαの外周面α3,α4は、回転曲面である前記反射面α2の軸心の周りの円弧に沿う曲面を有する側面α4と、前記軸心の直交方向と交差する平面を有する平坦部α3と有し、
前記ミラー保持部材1は、前記曲面ミラーαを内部に嵌め込み可能な枠形状であり、
前記ミラー保持部材1は、枠形状の内周側に前記側面α4に沿う曲面の内周面を有し、
前記ミラー保持部材1は、枠の内側に向けて突出し、前記曲面ミラーαの前記軸心から離れた位置で前記曲面ミラーαの前記平坦部α3に当接する突起部1eを有し、
前記平坦部α3の前記突起部1eが当接する位置に対して前記軸心を挟んだ反対側の前記平坦部α3を付勢する付勢手段(ねじ穴部1dに挿入される不図示の曲面ミラー調整ビス)と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載の曲面ミラーの調整装置において、
前記平坦部α3の平坦面は、前記軸心に平行である、
ことを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、
請求項1から4のいずれか一項に記載の曲面ミラーの調整装置において、
前記ミラー保持部材1の光軸Zに対する位置および角度の調整を行うことにより、前記曲面ミラーαの前記反射面α2の前記光軸Zに対する位置および角度の調整を行う姿勢調整機構は、前記第1保持部材11と、前記第2保持部材12と、前記固定部材21とを有し、
前記固定部材21は、前記投射光学系のうち前記第1の光学系に対して固定され、
前記第1保持部材11および前記第2保持部材12は、前記固定部材21に対して可動に取り付けられる、
ことを特徴とする
請求項6に記載の発明は、
請求項5に記載の曲面ミラーの調整装置において、
前記第1保持部材11、前記第2保持部材12および前記固定部材21は、前記曲面ミラーαの前記光軸Zに対する角度および位置をそれぞれ独立に調整可能な角度調整機構および位置調整機構を備える、
ことを特徴とする。
【0013】
また、他の第1の発明は、
投射光学系を構成する光学素子の少なくとも一つに曲面反射面を有する曲面ミラーと、
前記曲面ミラーを保持するミラー保持部材と、
前記ミラー保持部材に対し前記曲面ミラーを前記曲面反射面の位置及び角度を微調整可能にする姿勢調整機構と、を備える曲面ミラーの調整装置であって、
前記曲面ミラーを、ガラス、金属、またはセラミックのいずれかの材質で形成したことを特徴とする。
他の第2の発明は、
他の第1の発明の曲面ミラーの調整装置であって、
前記曲面ミラーを嵌め込んで回転可能に保持するミラー固定部を備え、
前記曲面ミラーを回転させて前記ミラー固定部との位置及び角度を調整し、
前記ミラー固定部に弾性部材を嵌め込んで、
前記曲面ミラーを前記弾性部材により弾圧付勢した状態で前記ミラー固定部に固定することを特徴とする。
他の第3の発明は、
他の第2の発明の曲面ミラーの調整装置であって、
前記ミラー固定部は、前記ミラー保持部材に対し角度及び位置の微調整が可能なように組み込まれ、
前記ミラー保持部材に対して前記ミラー固定部を回転させて前記曲面ミラーの前記曲面反射面の角度を調整し、
その角度調整の際の前記ミラー固定部の回転軸を、前記曲面反射面の面上で、前記投射光学系の光軸と交わらせたことを特徴とする。
他の第4の発明は、
他の第2または第3の発明の曲面ミラーの調整装置であって、
前記曲面ミラーの前記曲面反射面の位置及び角度の調整は、直交する二方向で互いに独立する第1の軸と第2の軸をそれぞれ回転軸として行われ、
前記第1の軸と第2の軸を、前記投射光学系の光軸とも直交させて、
前記第1の軸と第2の軸との交点を、前記曲面反射面の面上に位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、反射面を形成する基盤に熱線膨張係数の小さいガラス、金属、またはセラミックを用いた曲面ミラーを使用しても角度及び位置をそれぞれ独自に調整可能となり、より高精度の調整が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0017】
(概要)
光源光に画像情報を与え画像光を形成する画像調整素子と、画像調整素子からの画像光が入射される投射光学系と、投射光学系から出射する拡大された画像光を投射される投射面とを有する投射装置に関する。
投射光学系は、画像調整素子側から全ての素子の光軸が一致した共軸な屈折素子からなる第1の光学系と、反射素子からなる第2の光学系とを少なくとも有している。第1の光学系と第2の光学系との間には、第1光学系からの出射光が入射され、内部において少なくとも一回以上内部全反射により光路を偏向するプリズムが配置され、プリズムからの出射光が第2の光学系へ入射される。
第1の光学系の内部には、第1の光学系のうち、画像調整素子側の少なくとも一つ以上の光学素子の屈折作用により形成される第1の中間像を有している。第1の光学系と第2光学系との間には、第1の光学系のうち、投射面側の少なくとも一つ以上の光学素子の屈折作用により形成される第2の中間像を有している。
第2の光学系は、一枚の凹面鏡に形成された凹面反射面からなり、入射光を投射面側へ偏向して反射する。
【0018】
(解決策)
使用する曲面ミラーを熱線膨張係数の小さいガラス、金属、またはセラミックのいずれかの材質で形成する。
その曲面ミラーの外周側をミラー固定枠により保持する。
そして、曲面ミラーとミラー固定枠との光軸を回転軸として角度調整を行った後に固定し、ミラー固定枠をミラー保持部材へ組み込んで、ミラー固定枠の位置及び角度を調整することにより、内包される反射面の位置及び角度を調整後に固定する。
【0019】
(実施形態)
図1及び
図2は本発明を適用した曲面ミラーの調整装置の一実施形態の構成として曲面ミラーαとミラー固定部1とミラー保持部材の第1保持部材11と第2保持部材12と固定部材21の関係を示す分解図で、
図3及び
図4は
図1及び
図2の結合状態を示す結合図で、
図5はさらに冶具部材31との関係を示している。
【0020】
そして、
図5は曲面ミラーの調整装置の正面図及び側面図で、
図6及び
図7は断面図及び拡大図であり、
図8はミラー固定部1と第1保持部材11の関係を模式的に示すもので、
図9は固定部材21に対する第2保持部材12の関係を示している。
【0021】
「前提」
始めに、画像調整素子からの画像光を屈折光学素子から構成される結像光学系へ入射し、結像光学系から出射した光線を曲面ミラーαの反射面で反射することにより被投射面へ画像光を拡大投射する投射光学系において、
図1に示すように、結像光学系の光線をZ軸、画像調整素子の画像中心から出射した光線の軌跡の存在する平面内におけるZ軸と直交する軸をY軸、Z軸及びY軸とそれぞれ直交する軸をX軸と規定し、各軸と平行な方向をそれぞれZ軸方向、Y軸方向、X軸方向と規定する。
【0022】
また、投射光学系を光軸が地面と平行となるように地面に設置した場合において、第1の光学系の光軸に沿ったZ軸方向において、画像調整素子側を前側、被投射面側を後側と規定し、X軸方向において、前側から後側を見た場合の左右をそれぞれ左側、右側と規定して、Y軸方向において、前側から後側を見た場合の上下をそれぞれ上側、下側と規定し、左右方向はX軸方向、上下方向はY軸方向、前後方向はZ軸方向とそれぞれ対応する。
【0023】
以下、第2の光学系の保持機構について説明する。
【0024】
「曲面ミラー」
図1及び
図2に示すように、曲面ミラーαは、非円形の曲線を回転軸にZ軸を用いて回転させた際に形成される非球面のうち、鏡軸であるZ軸上の面を含まない一部の面を用いた形状を有しており、結像光学系の光軸及び曲面ミラーαの鏡軸は共軸である。
【0025】
そして、曲面ミラーαは、熱線膨張係数の小さいガラスを材質に形成された基盤α1と、基盤α1の前側の面に形成された曲面反射面α2からなる。
曲面ミラーαの基盤α1上側の面には、上下方向と直交する平面部α3が形成される。
上側以外の側方の面(下側、左側、右側)は、正面から見た際に円形となるような一繋がりの円柱側面形状α4が形成される。
後側の面の外周縁部には、側面側が解放された平面部α5が形成される。
また、中央上端部には、光軸と直交する平面部α6が形成されている。
【0026】
「ミラー固定部」
図1及び
図2に示すように、ミラー固定枠1は、曲面ミラーαの外形に沿った略半円形状を有しており、枠の内部は空洞となっている。
ミラー固定枠1の外周面のX軸と平行で、かつX軸と略一致する第1軸線上に、左右一箇所ずつ穴状の係合部1aが形成されている。
【0027】
ミラー固定枠1の下端部側には、軸心がY軸方向に向き、かつZ軸と直交する突起部1bが形成されている。この突起部1bは、前後方向に貫通した穴部1cを有している。
また、ミラー固定枠1の上端部側で、かつX方向の一端に偏った位置には、軸心がY軸方向に向うねじ穴部1dが形成されている。
【0028】
また、ミラー固定枠1の上端部側の内周面側のX方向一端及び他端に偏ったそれぞれの位置には、軸心がY軸方向に向う調整用突起部1eが形成されている。
また、ミラー固定枠1の内周面は、曲面ミラーαの外周面に沿った形状であり、内周面の後側端部には、内周側へ形成されたリブ1fにより開口部の内径が絞られ、曲面ミラーαの裏面において、平面部α5よりも内側の直径より大きく、かつ曲面ミラー外径よりも小さく形成されている。
また、内周面の前側端部には、内周側から外周側へ向かって形成された断面形状が略三角形の溝部1gが形成されている。
【0029】
よって、曲面ミラーαの後側をミラー固定枠1の内周部へ前側から嵌め込み、曲面ミラーα後側の平面部α5とミラー固定枠1の内周側のリブ1fとを係合させる。
また、ねじ穴部1dへ曲面ミラー調整ビス(不図示)を挿入し、その曲面ミラー調整ビスの先端部により曲面ミラー上部の平面部α3を付勢し、その平面部α3がミラー固定枠1の調整用突起部1eと接触するまで曲面ミラー調整ビスを回して曲面ミラーαとミラー固定枠1との位置関係を調整する。
そして、調整が完了したら、ミラー固定枠1の内周側の前側に形成した溝部1gに、弾性を持つ金属製のCリングβを嵌め込み、Cリングβが曲面ミラーαを前側から後側へ弾発付勢することにより、曲面ミラーαをミラー固定枠1に固定する。
【0030】
「ミラー保持部材」
ミラー保持部材は、第1保持部材11と第2保持部材12、固定部材21の三部材からなり、ミラー固定枠1と第1保持部材11とで第1の角度調整を行い、第1保持部材11と第2保持部材12の間で第2の角度調整と、第1の位置調整を行い、第2保持部材12と固定部材21の間で第2の位置調整を行う。
【0031】
「第1保持部材」
曲面ミラーαの外周側には、
図1及び
図2に示すように、第1保持部材11が配置されている。この第1保持部材11は、内周側にミラー固定枠1を保持可能に形成されている。
【0032】
図5及び
図6に示すように、第1保持部材11には、ミラー固定枠1の係合部1aに対応する位置に、左右方向に貫通した貫通孔11aが形成されている。この左右の貫通孔11aには、軸心が各々X軸と平行な第1軸線上にある軸状部材の被係合部材2がそれぞれ嵌め込まれて、取付用ねじγにより被係合部材2が第1保持部材11に固定される。係合部1aは被係合部材2と係合することにより、第1保持部材11に第1軸線を回動軸として回動可能に保持されている。
【0033】
また、一方の取付用ねじγと第1保持部材11との間には、スプリングワッシャ3が挿入されている。このスプリングワッシャ3により、ミラー固定枠1は一方の被係合部材2と共に第1保持部材11の他方に押し付けられている。
【0034】
図7に示すように、第1保持部材11には、ミラー固定枠1の突起部1bに対応する位置に前側の開口が狭くねじ穴状である座ぐり形状の穴部11cが形成されている。そして、ミラー固定枠1の穴部1cと第1保持部材11の穴部11cには、後側から調整用ねじ4が挿入されて、穴部11cのねじ穴部と螺合している。また、穴部11cの内部には、圧縮バネ5が後側から挿入されている。
【0035】
よって、ミラー固定枠1を第1保持部材11に対して被係合部材2を介して保持した状態で調整ねじ4を調整することにより、ミラー固定枠1を第1保持部材11に対して第1軸線(X)を回転軸として回動可能とした第1角度調整機構A1を構成している。この第1角度調整機構A1により、ミラー固定枠1を介して曲面ミラーαの反射面の角度調整及び固定が可能となっている。
【0036】
また、スプリングワッシャ3によりX軸方向のガタツキを抑制した第1姿勢保持機構B1を構成している。
【0037】
さらに、第1保持部材11の左右方向の外周側の両側面には、延設部11eが一つずつ形成されている。この延設部11eには、上下方向に貫通し、左右方向に比べて前後方向に口径が大きくなった長穴状の穴部11fが形成されている。
そして、2つの延設部11eの後端部には、下方向に延設された延設部11gがそれぞれ一つずつ形成されている。この延設部11gには、Z軸方向に貫通した穴部11hが形成されている。
【0038】
また、第1保持部材11の上端部には、調整用穴部11iが形成されている。この調整用穴部11iの中心軸は、Z軸と直交するY軸方向にあり、中心軸とZ軸の交点は曲面ミラーαの前側の表面付近で結ばれている。
【0039】
「第2保持部材」
第1保持部材11の背面側には、
図1及び
図2に示すように、第2保持部材12が配置されている。
この第2保持部材12は、内周側にミラー固定部1を介して曲面ミラーαを保持した第1保持部材11を保持可能に形成されている。
【0040】
第2保持部材12には、第1保持部材11の穴部11fに対応する位置に、左右一つずつの固定用ねじ穴部12fが形成されている。この固定用ねじ穴部12fは、第2保持部材12の端部上に突出した突出部12eのY軸方向に向いた軸心に形成されている。
固定用ねじ13を穴部11fに挿入して固定用ねじ穴部12fに螺合することにより、第2保持部材12に対して第1保持部材11の移動を制限している。
【0041】
なお、固定用ねじ13で結合する際には、スプリングワッシャ14と平ワッシャ15を先に固定用ねじ13に嵌め込み、第1保持部材11と第2保持部材12の間に平ワッシャ16を挟んでから、固定用ねじ13を固定用ねじ穴12fに螺合する。
【0042】
そして、第2保持部材12には、第1保持部材11の穴部11hに対応する位置に、左右一つずつの平面部12hが形成されている。
【0043】
図4に示すように、後側から調整用ねじ17を穴部11hに挿入し、平面部12hを調整用ねじ17の先端により付勢する。
【0044】
また、第2保持部材12の後端部には、平面部12hよりも曲面ミラーαの光軸に近づいた位置に、二つの調整用治具固定部12jが形成されている。
【0045】
よって、
図4に示すように、調整用治具固定部12jに背面から治具部材31を一対の冶具固定用ねじ32により固定し、治具部材31に形成された突起部31iを第1保持部材11に形成された調整用穴部11iに係合することにより、第1保持部材11は調整用穴部11iのY軸と平行な中心軸を回動軸として回動可能でかつ平行移動が規制される。
【0046】
このため、調整用ねじ17により第1保持部材11を第2保持部材12に対して第2軸線(Y)を回転中心とした角度調整を行う第2角度調整機構A2を構成している。
【0047】
また、曲面ミラーαの反射面の角度を調整してから固定用ねじ13を締めることにより、調整後の姿勢を保持することが可能となる第2姿勢保持機構B2を構成している。
【0048】
ここで、治具部材31及び調整用ねじ17は第1保持部材11を第2保持部材12に対して調整を完了した後に外しても良いし、そのまま補強部材として残しておいてもよい。
【0049】
さらに、第2保持部材12には、
図1及び
図2に示すように、前後方向において、突出部12eと同軸上にあり、かつ突出部12eよりも前側に離間した位置に、左右1つずつの穴部12kが形成されている。この穴部12kは、上下方向に貫通し、かつ前後方向に比べて左右方向の口径が大きくなった長穴状になっている。
【0050】
また、第2保持部材12の穴部12kの形成されている平面部12mは、その左右方向に光軸から離間した辺縁部に垂直で下方向に延びた平面部12nを有している。この平面部12nには、左右方向において、穴部12kと同軸上にあり、かつ左右方向に貫通した調整用ねじ穴部12pが形成されている。
【0051】
こうして、反射面の角度及び位置を調整後に固定可能に保持している曲面ミラーα及びミラー固定枠1及び第1保持部材11、第2保持部材12を組み合わせて反射面保持機構とする。
【0052】
「固定部材」
以上の反射面保持機構の下面側には、
図1及び
図2に示すように、固定部材21が配置されている。
この固定部材21は、内周側に反射面保持機構を保持可能に形成されている。反射面保持機構は、固定部材21の後側端部に配置されている。
【0053】
固定部材21は、前側端部に、屈折光学素子による結像光学系を内包する図示しないレンズ鏡筒に固定するための固定用係合部21aを有している。
固定部材21は、内側にプリズムが配置されており、前端側に配置されるレンズ鏡筒から出射される出射光が入射される第1の開口部を有し、後端側に配置されるプリズムから出射される出射光を通過するための第2の開口を有する。
【0054】
固定部材21には、第2保持部材12の穴部12kに対応する位置に、左右1つずつの固定用ねじ穴部21kが形成されている。この固定用ねじ穴部21kは、固定部材21の端部上に突出した突出部21bの軸心に形成されている。
固定用ねじ22を穴部12kに挿入して固定用ねじ穴部21kと螺合することにより、固定部材21に対して第2保持部材12の移動を制限している。
【0055】
なお、固定用ねじ22で結合する際には、スプリングワッシャ23と平ワッシャ24を先に固定用ねじ22に嵌め込み、第2保持部材12と固定部材21の間に平ワッシャ25を挟んでから固定用ねじ22を固定用ねじ穴部21kと螺合する。
【0056】
そして、固定部材21には、第2保持部材12の調整用ねじ穴部12pに対応する位置に、穴部は無く壁面である壁部21pが存在している。この調整用ねじ穴部21pに調整用ねじ26が螺合されると、調整用ねじ26が調整用ねじ穴部12pを貫通して、その先端部が固定部材21の壁部21pを押す。
【0057】
よって、
図4に示すように、調整用ねじ26により第2保持部材12を固定部材21に対してX軸方向へ平行移動させることにより、反射面の位置の調整を行う第1位置調整機構C1を構成している。
ここで、調整用ねじ26は第2保持部材12を固定部材21に対して調整を完了した後に外しても良いし、そのまま補強部材として残しておいてもよい。
【0058】
また、
図9に示すように、反射面の位置が決定してから固定用ねじ22を締めることにより、調整後の姿勢を保持することが可能となる第3姿勢保持機構B3を構成している。
【0059】
以上のように、実施形態において、曲面ミラーαの調整装置は、第1軸線(X)を回転中心とする第1角度調整機構A1、第2軸線(Y)を回転中心とする第2角度調整機構A2、第1姿勢保持機構B1、第2姿勢保持機構B2、第3姿勢保持機構B3、第1軸線(X)方向への第1位置調整機構C1を備えている。
【0060】
以上、実施形態の曲面ミラーαの調整装置によれば、第1角度調整機構A1、第2角度調整機構A2、第1姿勢保持機構B1、第2姿勢保持機構B2、第3姿勢保持機構B3、及び第1位置調整機構C1を互いに独立して備えることで、反射面の角度、姿勢及び位置をそれぞれ独自に調整でき、より高精度で容易に調整することができる。
【0061】
しかも、反射面を形成する基盤α1に熱線膨張係数の小さいガラスを用いた曲面ミラーαを使用しても、角度及び位置をそれぞれ独自に調整可能となり、より高精度の調整が容易になる。
【0062】
(曲面ミラーの製造法)
回転対称非球面形状の面を持つガラス成型品をモールド加工により形成し、
回転対称非球面の対称軸と平行で、かつ対称軸上を通る面でガラス成型品を切断し、
二つの半球状のガラス成型品からそれぞれ一つづつ切断面よりも周辺側の回転対称非球面の領域を切り取って曲面による凹面反射面α2とし、
その曲面による凹面反射面α2を有するガラス成型品の一部分を曲面ミラーαとする。
以上により、一つのモールド成型品から二つの曲面ミラーαを作成することが可能である。
【0063】
(変形例)
実施形態では、曲面ミラーαの基盤α1の材質をガラスとしたが、これに限らず、熱線膨張係数の小さい金属、またはセラミックのいずれかであってもよい。
【0064】
また、第1保持部材11と第2保持部材12の間にあるワッシャ16及び/または第2保持部材12と固定部材21との間にある平ワッシャ25は、そのワッシャの厚さや挟む枚数を変えることにより、反射面の上下方向の位置の調整を行うことが可能な第2位置調整機構としての機能を持たせることも可能である。
【0065】
その際に、高さ調整機構は、X軸方向において、同軸上で、かつ左右方向に離間して二箇所あるため、一方に挟むワッシャの数や厚みを他方に対して異ならせることにより、鏡軸を回転軸として反射面を回動させることも可能である。
【0066】
また、冶具固定用ねじ32を介して第2保持部材12と冶具部材31の間にワッシャを挿入し、その状態で冶具部材31に形成された突起部31iを第1保持部材11に形成された調整用穴部11iに係合する際に、前記ワッシャの厚みの分だけ第1保持部材11を第2保持部材12に対して背面側へ移動させることにより、反射面の前後方向の位置の調整を行うことが可能な第3位置調整機構として機能を持たせることも可能である。
【0067】
(他の変形例)
以上の実施形態においては、光軸と直交する軸線を第1軸線、光軸と直交して、かつ第1軸線と直交する軸線を第2軸線としたが、これに限らず、光軸と直交する軸線と平行な軸線を第1軸線、光軸と直交して、かつ第1軸線と直交する軸線と平行な軸線を第2軸線としてもよい。
さらに、その他、具体的な細部構造等について適宜に変更可能であることは勿論である。