(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話、モバイル機器等の各種の小型電気機器に用いられる電子回路基板(プリント回路基板)の電気回路ベース素材は、機体が軽薄短小であるので薄く高精度の長尺ワークが使用される。
【0003】
このような長尺ワークの素材は、その厚みが0.1mm程度から0.06mmと薄型化の傾向になっている。さらに、最近では、厚みが0.05mm以下で幅が550mm、そして長さが100mと薄く幅広な長尺ワーク状で非常に長い長尺ワークが用いられている。長尺ワークは通常はロール状に巻き取られて扱われている。
【0004】
このような長尺ワークに電子回路を形成する装置として、供給リールと、巻取リールと、この供給リールと巻取リールの間に位置する露光部とを備え、供給リールと巻取リールの間に架け渡された長尺ワークをその長手方向に搬送しながら、露光部によって長尺ワークの表面にパターンを露光する、いわゆるロールトゥロール方式のものが知られている。
【0005】
また、露光部にDMD(Digital Micro-mirror Device)などの光変調素子アレイを備えた、ロールトゥロール方式のマスクレス露光装置も知られている。マスクレス露光によって、長尺ワークの搬送に同期して光変調素子アレイの駆動データを逐次切り替えることで、例えば1mを超えるような長尺パターンを露光形成することができる。
【0006】
マスクレス露光装置の場合、一般的に露光光学系の焦点深度の関係で、露光ステージを用いてワークの平面を保った状態で露光する必要がある。特許文献1のロールトゥロール方式のマスクレス露光装置では、長尺ワークを露光ステージに吸着固定し露光部と長尺ワーク表面との光軸方向の距離を一定に保った状態で、光変調素子と長尺ワークとを相対移動させながら長尺ワーク表面に固着した感光剤層にパターン光を投影する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1のようなロールトゥロール方式のマスクレス露光装置では、長尺ワークの搬送方向に対する1回の露光距離は露光ステージのストロークによって制限される。制限を超えた長さのパターンを形成するためには、1回の露光工程を終えた後に、長尺ワークと露光ステージを、それぞれの露光開始位置に個別に移動させる必要がある。
【0009】
しかしながら、特許文献1のロールトゥロール方式のマスクレス露光装置では、長尺ワークの移動を露光ステージにて行うため、露光ステージを高速に露光の開始位置へ戻そうとすると、巻出し部及び巻取り部に設けられているダンサーローラが基板の戻り速度に追従できず滑りが生じ、長尺ワークに擦過疵が生じる。
【0010】
かといって、長尺ワークの戻り速度にダンサーローラが追従できるように露光ステージの加速度を下げる場合は、タクトタイムに大きな影響を与えることになり、生産性に悪影響を生じる。
【0011】
また、長尺ワークの戻り量と露光ステージの戻り量が異なる(露光ステージが、およそ露光ステージの搬送方向長さ分程度、多く戻る)ため、露光ステージが長尺ワークの吸着固定を解除し、露光ステージのみが移動する工程が存在するが、その際にダンサーローラの重みや、長尺ワークの自重が釣り合わず、長尺ワークが搬送方向に移動してしまう。このために、形成されたパターンの1回目の終了位置と、次回の開始位置とが合致しないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の露光装置は、供給リールから巻取りリールまで長尺で可塑性のある被露光体を搬送する搬送手段と、供給リールより下流側の被露光体上方に設けられ、複数の空間光変調手段を備える露光手段と、被露光体の一部分を保持する露光ステージと、露光ステージを搬送手段の被露光体の搬送方向に沿って往復移動させる移動手段とを備える。
【0013】
また、本発明の露光装置は、供給リールの下流側かつ露光手段の上流側に設けられ、被露光体を
制動する供給側
制動ローラと、露光手段の下流側かつ巻取りリールの上流側に設けられ、被露光体を
制動する巻取り側
制動ローラとを備え、供給側
制動ローラ
がローラ駆動手段を備える。
【0014】
供給側
制動ローラと巻取り側
制動ローラは、露光ステージが被露光体を保持している際には、被露光体の
制動を解除し、被露光体が露光ステージの移動にともなって自由に移動することを妨げない。
【0015】
また、本発明の露光装置は、露光ステージが搬送開始位置から搬送終了位置まで被露光体を保持した状態で移動する間に露光手段が被露光体にパターンを露光し、露光手段の露光終了後、露光ステージが搬送終了位置から搬送開始位置まで被露光体を保持せずに移動する。同時に、供給側
制動ローラが被露光体を供給側に移動させる。
【0016】
露光ステージは、被露光体の幅方向の端面(搬送方向に沿う端面)を露光ステージに押圧するクランプ機構を備える。クランプ機構と露光ステージとの間に被露光体の幅方向の両端面が挟持されることで、被露光体の露光面が平面となるように保持される。
【0017】
また、本発明の露光装置は、撮像手段と、撮像手段が撮像した画像を表示可能な表示手段とを備え、撮像手段は、位置決めステップにて被露光体に設けられた位置決めマークの撮像に用いられるとともに、露光されたパターンを確認するステップにおけるパターンの観察にも用いられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長尺ワークに疵をつけることなくタクトタイムを短縮することができ、また形成されたパターンの繋ぎ精度が良好なロールトゥロール方式の露光装置を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
≪第1実施形態≫
図1〜
図2を参照して、本発明の第1実施形態に係る露光装置1について説明する。露光装置1は、いわゆるロールトゥロール方式の露光装置であり、長尺ワークWの搬送方向の上流側から下流側に向かって順に、長尺ワークWを供給する供給部10と、長尺ワークWの表面にパターンを露光して電子回路を形成する露光部30と、露光済みの長尺ワークWを回収する巻取り部20とを備えている。
【0021】
<長尺ワークWの構成>
長尺ワークWは、例えば、携帯電話やモバイル機器等に用いられる電子回路基板(プリント回路基板)のベース素材となる感光性長尺フィルム(表面に感光体を塗布した合成樹脂製柔軟フィルム)をロール状にしたものである。フォトレジストなどの感光材料が塗布された長尺ワークWは、銅張積層板などによるシート状に形成され、数十〜数百メートルの長さを有する。以下では、長尺ワークWの表裏面のうち、図中の上方を向く面を「表面」と呼び、図中の下方を向く面を「裏面」と呼ぶ。
【0022】
以下では、搬送方向Mに沿った方向を“X”、搬送方向Mに垂直な長尺ワークWの幅方向を“Y”、XとYの双方と垂直な方向(鉛直方向)を“Z”で表す。また、露光装置1における要素の位置関係を表す際に、供給リールに近い側を上流側、巻取りリールに近い側を下流側と呼称する。
【0023】
<供給部10および巻取り部20の構成>
供給部10は、長尺ワークWの搬送方向の上流側から下流側に向かって順に、供給リール11、ガイドローラ12、供給側ダンサーローラ13、ガイドローラ14、供給側制動ローラ15、及び端面位置センサ16を備え、長尺ワークWを露光部30に供給するためのワーク供給系を構成する。巻取り部20は、長尺ワークWの搬送方向の上流側から下流側に向かって順に、巻取り側制動ローラ25、ガイドローラ24、巻取り側ダンサーローラ23、ガイドローラ22、及び巻取リール21を備え、露光部30で露光された長尺ワークWを巻き取るためのワーク巻取系を構成する。
【0024】
供給リール11は、ロール状に巻回された長尺ワークWを保持しており、自身の回転軸を中心にして回転することで、長尺ワークWを下流側に向けて供給する(繰り出す)ものである。巻取リール21は、自身の回転軸を中心にして回転することで、上流側から供給されてきた長尺ワークWをロール状に巻き取ってこれを保持するものである。供給リール11と巻取リール21は、該供給リール11と巻取リール21を間欠的に回転駆動する回転駆動手段(図示せず)を備えている。供給リール11と巻取リール21は、長尺ワークWの搬送に伴って該長尺ワークWの供給量と巻取量が変化することにより、その外径が変化する。
【0025】
ガイドローラ12、14、22,24、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は、供給リール11と巻取リール21の間に長尺ワークWを架け渡しており、自身の回転軸を中心にして回転することで、供給リール11からの長尺ワークWを巻取リール21に向けて搬送するものである。
【0026】
供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は、それぞれの回転軸が水平方向に略一直線に並ぶように配置されている。供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は、長尺ワークWを挟み対向して配置された2つのローラからなるニップローラにて構成される。この2つのローラは長尺ワークWを挟持、又は解放する様に、不図示の機構にて上下方向(Z方向)にそれぞれ移動可能となっている。
【0027】
供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は、ニップローラが長尺ワークWを挟持し、かつニップローラが回転しないようにブレーキを掛けることで、長尺ワークWに制動を掛けることができる。一方、長尺ワークWを開放した状態では、長尺ワークWの移動を阻害しないようにニップローラを長尺ワークWの表裏面から離間させる。
【0028】
また、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は、ローラを回転駆動する回転駆動手段(図示せず)をそれぞれ備えている。長尺ワークWを挟持した状態で、回転駆動手段が供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25を間欠的に且つ略同一の回転駆動量で回転駆動することにより、供給リール11と巻取リール21の間に架け渡された長尺ワークWを所定長ずつ搬送(コマ送り)することができる。回転駆動手段は例えばステッピングモータが用いられ、長尺ワークWの送り量や加速度等が精度よくコントロールされるものとする。
【0029】
なお、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は、長尺ワークWを挟持するニップローラに代わって長尺ワークWの裏面を吸着する吸着手段を備えた吸着ローラを用いてもよい。供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWの裏面を吸着した状態で回転駆動手段が回転駆動することにより、長尺ワークWを搬送することができる。
【0030】
また、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25の双方に回転駆動手段がある場合を例示したが、制動ローラが一方向にのみ長尺ワークWを搬送する場合は、引込み側(供給側)の制動ローラのみに回転駆動手段を持たせ、他方の制動ローラにはブレーキだけを持たせるようにしてもよい。その場合、引込み側の制動ローラが回転駆動する時には、他方の制動ローラは長尺ワークWを挟持したままブレーキを解除し、長尺ワークWの移動に合わせてニップローラが連れ回るようにするとよい。
【0031】
ガイドローラ12、14、22、24は、供給リール11から供給された(繰り出された)長尺ワークWを下流側に案内する補助ローラである。ガイドローラの内、少なくともガイドローラ14及び24は、それぞれの回転軸が水平方向に略一直線に並ぶように配置されている。供給ガイドローラ12、14、22,24は、長尺ワークWが幅方向(
図1、
図3中の紙面垂直方向、
図2中の左右方向)にずれるのを防止するフランジ(図示せず)を有していてもよい。
【0032】
供給側ダンサーローラ13及び巻取り側ダンサーローラ23は、長尺ワークWの搬送に従って昇降し、長尺ワークWに対して張力を掛けることで長尺ワークWに弛みやしわが生じるのを防止しするとともに、後述する露光部での走査露光のために、長尺ワークWを露光部30にて移動させるためのバッファとしての機能を有している。
【0033】
供給部10は、長尺ワークWの端面位置を検知するための端面位置センサ16を備えている。端面位置センサ16の出力に従って、供給部10は不図示の機構により、長尺ワークWの蛇行を補正する端面位置制御を行う。端面位置制御は例えば供給リール11から供給側制動ローラ15までを一体として支持するフレーム(不図示)を設け、そのフレームを長尺ワークWの幅方向(Y方向)に移動させることによって行う。端面位置制御は既知の技術であり、一般に公知のコントローラを用いて実現可能である。
【0034】
<露光部30の構成>
露光部30は、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25の間に配置されている。露光部30は、露光ステージ31、アライメントカメラ41及び露光ユニット51を備えている。
【0035】
露光ユニット51は、複数の露光ヘッド(不図示)を備え、長尺ワークWから所定距離だけ鉛直上方に離れた場所に規則的に配置されている。各露光ヘッドに対し、光源および照明光学系(図示せず)が配置されており、光源から放射された光は、それぞれ対応する照明光学系を介して対応する露光ヘッドに導かれる。各露光ヘッドは、複数のマイクロミラーを2次元配列させたDMD(Digital Micro-mirror Device)と、DMDの像を長尺ワーク上に結像する結像光学系をと備える。
【0036】
DMDのマイクロミラーは、光を長尺ワークW上へ導く第1の姿勢と長尺ワークW外へ導く第2の姿勢のいずれかに選択的に位置決めされ、各マイクロミラーは独立して制御される。
【0037】
各露光ヘッドには、長尺ワークWを搬送方向Mに沿って分割することにより規定される露光領域がそれぞれ割り当てられ、各露光ヘッドに対して走査バンドが規定される。各露光ヘッドからの光の照射領域である露光エリアは、それぞれ走査バンドの幅に従って形成され、露光エリアによって長尺ワークWへ光が照射される。
【0038】
露光ステージ31は、長尺ワークWの裏面を吸着しつつこれを平坦に保持する。露光ステージ31は、昇降駆動手段34によって、露光ステージ31が長尺ワークWの裏面に接触する上端位置と、露光ステージ31が長尺ワークWの裏面と離間する下端位置との間で昇降可能になっている。また、露光ステージ31が走査またはステップ・アンド・リピートするためのステージ移動部32を備える。
【0039】
図2にあるように、露光ステージ31は、長尺ワークWの搬送方向(X方向)に沿った端面を挟持するワーククランプ機構35を備える。ワーククランプ機構35は長尺ワークWの搬送方向(X方向)の端面をステージとの間で挟持するクランプ35aとクランプ35bとから構成される。クランプ35aとクランプ35bは、図示しないY方向移動機構に取り付けられており、長尺ワークWの幅に応じて挟持位置を調整することが可能となっている。
【0040】
長尺ワークWは薄いフィルム状であるため、幅方向(Y方向)に反りが発生する。ワーククランプ機構35が、露光ステージに長尺ワークWを押しつけるように挟持することによって、長尺ワークWの露光される領域を平坦に矯正して保持することができる。
【0041】
アライメントカメラ41は、露光ユニット51より上流側に設置され、長尺ワークWに設けられたアライメントマークを撮像することにより、長尺ワークWの位置情報を取得する。アライメントマークの撮像は、長尺ワークWをX方向に移動させながら行う。
【0042】
<露光装置1による露光搬送動作>
図3a〜
図3jの工程図を参照して、露光装置1による露光搬送動作について詳細に説明する。なお、図中における長尺ワークW近傍の矢印は長尺ワークWの移動を表す。また、長尺ワークW上の点Aは第1回目の露光の際の先頭位置を示し、点Bは第1回目の露光の際の終端位置かつ、第2回目の露光の際の先頭位置を示すものである。
【0043】
ステップS1:加工前の新しい素材であるロール状の長尺ワークWを供給リール11にセットし、長尺ワークWの先端部を繰り出してガイドローラ12、供給側ダンサーローラ13、ガイドローラ13、供給側制動ローラ15、巻取り側制動ローラ25、ガイドローラ24、巻取り側ダンサーローラ23、ガイドローラ22、に架け渡していき、巻取リール21に固定する。この初期セット状態において、供給側ダンサーローラ13及び巻取り側ダンサーローラ23では、長尺ワークWはバッファされていない。(
図3a)
【0044】
ステップS2:露光装置の自動運転モードを開始する。アライメント開始位置にて待機していた露光ステージ31が上端位置まで上昇し、1コマ分の長尺ワークWの裏面を吸着しつつこれを平坦に保持する。また、露光ステージ31のワーククランプ機構35が長尺ワークWをステージとの間で挟持する。(
図3b)
【0045】
ステップS3:供給リール11の回転駆動手段(図示せず)が所定の回転駆動量だけ回転することにより、供給リール11が長尺ワークWを露光ステージ1ストローク分(約2コマ)だけ繰り出す。繰り出された長尺ワークWは、供給ガイドローラ12を経由して供給側ダンサーローラ13に入る。ここで、長尺ワークWは下流側において露光ステージ31で吸着されているため、長尺ワークWは適度な張力を保ちながらダンサーローラ13にバッファされる。(
図3c)
【0046】
ステップS4:露光ステージ31がX方向に駆動され、長尺ワークWを吸着保持したままアライメントカメラ41の下方を通過する。その際に、露光ステージ31の移動につれ、供給側ダンサーローラ13にバッファされていた長尺ワークWが引き出され、同時に巻取り側ダンサーローラ23部で長尺ワークWのU字形状が深くなっていき、長尺ワークWがバッファされる。(
図3c→
図3d)
【0047】
長尺ワークWに内層パターンが存在する場合(ビルドアップ基板のセカンドレイヤー以降等)露光するパターンと内層パターンとの位置合わせのためのアライメントマークが長尺ワークWに設けられている。露光ステージ31の移動に合わせて、長尺ワークWに形成されたアライメントマークをアライメントカメラ41で撮像する。なお、長尺ワークWに内層パターンが無い場合(ビルドアップ基板のファーストレイヤー等)はアライメントマークが設けられていない場合があるが、その場合は露光装置1がアライメント(露光データによる露光位置補正)を行わないのでアライメントマークの撮像は行われない。
【0048】
ステップS5:アライメントマークの撮像により得た長尺ワークWの位置情報に基づいて、長尺ワークと露光されるパターンとのアライメントが行われる。具体的には、長尺ワークWの位置情報が露光ユニット51の露光制御部(不図示)に送信され、露光ユニット51が長尺ワークWにパターンを露光するための露光データの座標に対し補正処理が行われる。露光データの補正処理が行われている間、露光ステージ31は長尺ワークWを保持したまま、露光開始位置で一時停止する。(
図3d)
【0049】
ステップS6:露光ステージ31が下流方向に移動を開始し、露光部30では、既知の多重露光技術によって露光ユニット75が、露光ステージ31が吸着保持する長尺ワークWの表面の感光材料層に電子回路パターンを走査露光する(
図3d→
図3e)。点Aから点Bまでの1コマ分の長尺ワークWの露光が完了すると、露光ステージ31は下流方向への移動を終了し、露光終了位置で停止する。(
図3e)
【0050】
ステップS7:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWを挟持し、長尺ワークWを固定する(
図3f)。その後、露光ステージ31による長尺ワークWの吸着を解除するとともに、ワーククランプ機構35が長尺ワークWの固定を解除し、昇降駆動手段34が露光ステージ31を下端位置に下降させる(
図3g)。長尺ワークWはローラ15および25により挟持されるので、ステージ31が長尺ワークWから離間する時に長尺ワークWがX方向やY方向に移動することなく制動され、所定の位置を保つことができる。
【0051】
ステップS8:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25の回転駆動手段(図示せず)が所定の回転駆動量だけ回転することにより、給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWを所定量巻き戻し、長尺ワークWの露光完了した1コマの次の1コマ分がアライメント開始位置に来るように(すなわち点BがステップS2での点Aの位置に来るように)、長尺ワークWを移動させる。その際には、端面位置センサ16の出力を用いて長尺ワークWの蛇行を補正しつつ長尺ワークWの移動を行う(
図3g→
図3h)。
【0052】
供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWを戻り方向に移動させると、長尺ワークWは供給側ダンサーローラ13においてU字形状が深くなっていく同時に、巻取り側ダンサーローラ23においてU字形状が浅くなっていく。その際に、長尺ワークWを駆動する加速度が急峻である場合、ダンサーローラが長尺ワーク上でスリップし、長尺ワークWに疵を付け不良品となる恐れがあるので、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25は適切な加減速を行うように回転駆動される。
【0053】
また、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25による長尺ワークWの巻き戻しと同時に、露光ステージ31が露光終了位置からアライメント開始位置まで移動する。(
図3g→
図3h)なお長尺ワークWの露光完了した1コマ分の戻量とステージ31の戻量は異なり、後者のほうがその量が大であることに注意されたい。長尺ワークWの移動が緩やかな加減速にて行われるのに対し、戻量が大である露光ステージ31の移動は高加速かつ高速に行う。このため、両者はほぼ同時に戻移動を終了する。
【0054】
ステップS9:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25による長尺ワークWの移動と、露光ステージ31の移動とが終了した後、露光ステージ31が上端位置まで上昇し、先ほど露光した1コマの次に位置する1コマ分の長尺ワークWの裏面を吸着しつつこれを平坦に保持する(
図3i)。また、露光ステージ31のワーククランプ機構35が長尺ワークWをステージとの間で挟持する。この時、
図3iに示されるように、点BがステップS2での点Aの位置に来ていることが分かる。
【0055】
ステップS10:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWの挟持を解除する。供給リール11及び巻取リール21の回転駆動手段(図示せず)が所定の回転駆動量だけ回転することにより、供給リール11がダンサーローラ13に長尺ワークWを1コマ分だけ繰り出すとともに、巻取リール21がダンサーローラ23から1コマ分の長尺ワークWを巻き取る。(
図3i→
図3j)
【0056】
以降は、生産終了までステップS4〜ステップS10を順次繰り返し実行する。長尺ワークWの最終コマの露光が終了したら、巻取リール21にロール状に巻き取られた長尺ワークWが回収される。
【0057】
このように本実施形態の露光装置1は、常に供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25による挟持、あるいは露光ステージ31による保持にて、長尺ワークWを制動した状態を維持したまま複数のコマ数の露光を行う。これにより、前後のコマを精度よく繋いで露光することが可能となり、特にアライメントマークがない長尺ワークWにおいて好適な効果を発揮する。
【0058】
また、1コマ露光した後の露光ステージ31と長尺ワークWの戻し移動の際に、露光ステージ31と長尺ワークWを分離し別々に移動させるので、移動距離の長い露光ステージ31を高加速度にて高速で移動させることが可能となり、一方で移動距離の短い長尺ワークWはダンサーローラによる擦過が発生しないように、加速度を抑えて移動させることが可能となる。これにより、露光装置1の生産性が向上する。
【0059】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、露光装置1の構成については第1実施形態と同じである。本実施形態では、露光装置1による動作のステップS6終了後に、以下のステップに分岐する。
【0060】
ステップS11:露光ステージ31が長尺ワークWを吸着保持したままアライメントカメラ41の下方まで移動する。この際、露光ステージ31の移動は、予め定められた位置まで自動で移動してもよいし、オペレーターが手動で任意の位置に移動しても良い。
【0061】
ステップS12:露光装置1のオペレーターが、ステップS6の露光によって長尺ワークWの感光材料に形成された潜像を、アライメントカメラ41と、アライメントカメラ41に接続されたモニター42とを用いて観察する。観察の結果、露光位置や露光量等の補正の必要が認められた場合は、露光装置1のオペレーターが、観察結果に従ってそれらのパラメータを補正する。
【0062】
ステップS13:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWを挟持し、長尺ワークWを固定する。その後、露光ステージ31による長尺ワークWの吸着を解除するとともに、ワーククランプ機構35が長尺ワークWの固定を解除し、昇降駆動手段34が露光ステージ31を下端位置に下降させる。
【0063】
ステップS14:ステップ11での露光ステージの移動量から求まる長尺ワークWの現在位置に基づき、給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が、長尺ワークWの露光完了した1コマの次の1コマ分がアライメント開始位置に来るように(すなわち点BがステップS2での点Aの位置に来るように)、長尺ワークWを下流側に移動させる。
【0064】
また、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25による長尺ワークWの移動と同時に、露光ステージ31が上流方向に駆動され、アライメント開始位置に移動する。このように、長尺ワークWを供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25にて移動させると、長尺ワークWと露光ステージ31が別方向に移動させることが容易となる。
【0065】
ステップS15:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25による長尺ワークWの移動と、ステージ移動部32による露光ステージ31の移動とが終了した後、露光ステージ31が上端位置まで上昇し、先ほど露光した1コマの次に位置する1コマ分の長尺ワークWの裏面を吸着しつつこれを平坦に保持する。また、露光ステージ31のワーククランプ機構35が長尺ワークWの搬送方向(X方向)の端面をステージとの間で挟持する。
【0066】
ステップS16:供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25が長尺ワークWの挟持を解除する。供給リール11及び巻取リール21の回転駆動手段(図示せず)が所定の回転駆動量だけ回転することにより、供給リール11がダンサーローラ13に長尺ワークWを1コマ分だけ繰り出すとともに、巻取リール21がダンサーローラ23から1コマ分の長尺ワークWを巻き取る。
【0067】
以降は、実施形態1と同様にステップS4以降を順次繰り返し実行する。なお、ステップS11への動作の分岐は、長尺ワークWの最初の1コマの露光後だけでなく、任意のタイミングで実行してもよい。
【0068】
このように本実施形態の露光装置1は、連続運転を実行する際に露光結果を観察する工程(ステップS12)を備える。長尺ワークWの最初の露光結果を観察し、露光パラメータを調整することで長尺ワークWの多数のコマのパターンの形成不良を防止できるので、露光装置1の生産性が向上する。なお、露光結果の観察工程は長尺ワークWの最初の露光時だけでなく、任意のタイミングで(例えば所定時間が経過する毎に)実行してよい。
【0069】
また、露光結果を観察する工程が連続運転中に実施される際においても、長尺ワークWは、供給側制動ローラ15及び巻取り側制動ローラ25による挟持、あるいは露光ステージ31による保持により制動される。これにより、前後のコマを精度よく繋いで露光することが可能となり、特にアライメントマークがない長尺ワークWにおいて好適な効果を発揮する。
【0070】
なお、露光結果の観察と露光パラメータの設定は、アライメントカメラ41に接続されたモニター42によってオペレーターが手動で行うと説明したが、アライメントカメラ41に図示しない画像処理装置を接続することで、露光装置1が自動的に実施することにしてもよい。