特許第6510769号(P6510769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510769
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】車々間通信システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20190422BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20190422BHJP
   H04W 4/46 20180101ALI20190422BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20190422BHJP
   H04B 10/114 20130101ALI20190422BHJP
【FI】
   G08G1/09 H
   G08G1/16 A
   H04W4/46
   H04W84/10
   H04B10/114
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-110737(P2014-110737)
(22)【出願日】2014年5月29日
(65)【公開番号】特開2015-225558(P2015-225558A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 修
【審査官】 鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−131065(JP,A)
【文献】 特開2003−341452(JP,A)
【文献】 特開2008−123288(JP,A)
【文献】 特開平09−098125(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0158015(US,A1)
【文献】 特開2013−023077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
H04B 7/24− 7/26
H04B 10/00−10/90
H04J 14/00−14/08
H04W 4/00−99/00
B60Q 1/00− 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DSRCを利用して複数の車両間において信号を送受して通信を行う車々間通信システムであって、前記車両は送信する情報に車両の識別符号を含ませてDSRCで送信するように構成され、さらに前記車両は個々の車両間で通信を行って車両の識別符号を送受する個別通信手段と、DSRC及び個別通信手段で受信した識別符号に基づいてDSRCで受信した情報に含まれる自車両に必要な情報を検出する情報検出手段を備え、前記個別通信手段は他車両に向けて光信号を送信する光送信部と、他車両から出力された光信号を受信する光受信部を備え、これら光送信部と光受信部がランプユニットを備えるランプのランプハウジング内に配設されていることを特徴とする車々間通信システム。
【請求項2】
前記車両は自車両の識別符号を含ませて個別通信手段及びDSRCで送信を行い、前記情報検出手段は、前記個別通信手段で受信した識別符号と、前記DSRCで受信した情報に含まれる識別符号とを照合し、識別符号が一致する情報を検出することを特徴とする請求項1に記載の車々間通信システム。
【請求項3】
前記車両は個別通信手段で通信相手車両の識別符号を取得し、取得した通信相手車両の識別符号を含ませてDSRCで情報の送信を行い、前記情報検出手段は、自車両の識別符号と、前記DSRCで受信した情報に含まれる識別符号とを照合し、識別符号が一致する情報を検出することを特徴とする請求項1または2に記載の車々間通信システム。
【請求項4】
前記DSRCで送信する情報は、少なくとも自車両における走行情報や道路情報を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の車々間通信システム。
【請求項5】
前記DSRCで受信した情報を参照して自動運転制御を行う自動運転システムを備えた車両に適用されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車々間通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はDSRC(Dedicated Short Range Communication:専用狭域通信)を用いて車両相互の通信を行う車々間通信システムに関し、特に自車両の近傍に存在する車両との間でDSRCを行うのに適した車々間通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には自動車の相互間においてDSRCを用いて車々間通信を行うようにした技術が提案されている。このような車々間通信を利用すれば、例えば、後続車両を先行車両に追従させた自動運転システムを構築したときに、当該後続車両と先行車両との間で車々間通信を行うことにより、先行車両の車速、操舵角、加減速度等の走行情報を後続車両に伝達することが可能になり、後続車両における適切な自動運転制御が実現できることになる。また、DSRCは路車間通信も可能であるので、この路車間通信で得られる情報と車々間通信で得られる情報を併せることで、より有効な自動運転制御が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−98931号公報
【特許文献2】特開2008−172496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
提案されているDSRCを用いた車々間通信では、車両から送信する信号に、走行情報と共に送信元の車両を識別するためのID(識別符号)を付加することが可能である。したがって、信号を受信した車両ではその信号に付加されているIDを認識することで通信相手車両を識別することが可能になる。前記した例の場合には、先行車両から走行情報を送信する際に、当該走行情報に自車両のIDを付加して送信する。後続車両はこの信号を受信したときに、受信信号中のIDを識別することで先行車両から送信した信号であることが確認でき、当該信号中の走行情報を取得することにより自車両の自動運転制御を行うことになる。
【0005】
しかし、各車両のIDはそれぞれ固有の符号であるので、自車両が道路を走行しているときにたまたま出くわした見ず知らずの他車両のIDを知る由がない。そのため、自車両の近傍に複数の車両が存在しているような状況のとき、例えば、自車両の前に先行車両が、後に後続車両が、側方に並走車両や対向車両が存在しているような状況のときには、自車両において信号を受信し、その受信信号中のIDを認識しても、当該信号を送信した通信相手車両を確認することは殆ど不可能である。
【0006】
また、各車両においてDSRCにより複数の信号を受信したときに、通信相手車両以外の車両からの信号を受信することがある。この場合、仮に通信相手車両のIDを認識していても、受信した全ての受信信号中のIDを認識して必要な信号のみを抽出するのに時間がかかり、自車両に必要とされる情報を迅速に取得することは難しい。このことから、前記したようなDSRCによる車々間通信を利用した自動運転システムを構築する際の障害になっている。
【0007】
本発明の目的は、DSRCにおける通信相手車両を検出し、当該通信相手車両からの情報を受信することを可能とし、これにより例えば適切な自動運転システムの構築を実現することを可能にした車々間通信システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、DSRCを利用して複数の車両間において通信を行う車々間通信システムであって、各車両はそれぞれ送信する情報に車両のID(識別符号)を含ませてDSRCで送信するように構成されており、さらに各車両は個々の車両間で通信を行って車両のIDを送受する個別通信手段と、DSRCで受信した情報に含まれるIDに基づいて自車両に必要な情報を検出する手段を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明において、各車両は自車両IDを含む信号を送信し、情報検出手段は、個別通信手段で受信した車両IDと、DSRCで受信した情報に含まれる車両IDとを照合し、車両IDが一致する情報を検出する。あるいは、各車両は相手車両IDを含む信号を送信し、情報検出手段は、自車両IDと、DSRCで受信した情報に含まれる相手車両IDとを照合し、車両IDが一致する情報を検出する。
【0010】
本発明において、個別通信手段は光通信手段であり、車両から発した光信号を投射した車両との間でIDを送受するように構成されることが好ましい。また、この場合において、個別通信手段は少なくとも光送信部と光受信部がランプユニットを備えるランプハウジングに内装される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、自車両の周囲に存在する複数の他車両からの情報をDSRCで受信したときに、個別通信手段で通信した信号から検出したIDや、自車両のIDをDSRCで受信した情報に含まれるIDと照合することにより、DSRC通信で受信した複数の情報から自車両に必要とされる情報を検出することが可能になる。これにより、自車両に必要とされる他車両の情報を正確に認識することができ、自車両の走行における制御、例えば自動運転制御を適切に行うことが可能になる。
【0012】
個別通信手段を光通信手段として構成したときには、当該光通信手段を車両のランプハウジングに内装することにより、車両への個別通信手段の適用が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の車々間通信システムの概念構成図。
図2】自動車の車々間通信システムの概略構成図。
図3】車々間通信システムの各部の詳細を示すブロック図。
図4】車々間通信の流れを示すフロー図。
図5】通信するデータのフレーム構成図。
図6】他車両情報を取得する手法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の車々間通信システムを備えた複数台、ここでは先頭の第1車両CAR1から後尾の第3車両CAR3までの計3台の自動車が同じ道路を縦列状態で走行している状況を例示した車々間通信システムの概念図である。これら自動車CAR1〜CAR3は本発明にかかる車々間通信システムによって相互に通信することが可能である。また、各自動車CAR1〜CAR3には後述するように自動運転システムも装備されており、本発明の車々間通信システムはこの自動運転システムとも関連付けて構成されている。
【0015】
図2は自動車CARで代表して示す車々間通信システムの構成図であり、それぞれの自動車CARは本発明の車々間通信システムを構築するために、DSRC通信部2と、光通信部3を備えている。DSRC通信部2は、5.8GHz周波数帯での狭域無線通信を行う通信機で構成されており、近傍に存在する車々間で無線通信を行い、相互に所要の情報を送受することが可能である。また、路車間での無線通信を行うことができることも勿論である。このDSRC通信部2は自動車CARの車体内部の所要箇所に搭載されており、車体の一部に配設したアンテナANTを介して無線信号を送受することにより、近傍に存在する複数の自動車、例えば図1に示した3台の自動車CAR1〜CAR3の間で相互に通信を行うことが可能とされている。
【0016】
前記光通信部3は、他車両との間で個別にかつ相互に光通信が可能な構成であり、各自動車の前部と後部、特に自動車CARの前部に設けたヘッドランプHLと後部に設けたリアランプRLのそれぞれに組み込んでいる。ここでは自動車CARの右側のヘッドランプHLとリアランプRLに光通信部3を設けている。ヘッドランプHLでは、所要の配光で光を照射するランプユニットを内装しているランプハウジング(いずれも図示を省略)内に前側光通信部3Fが内装されており、この前側光通信部3Fは、自車両の前方に存在する他車両との間で光通信が可能に構成されている。リアランプRLでは、テールランプユニットやバックアップランプユニットを一体に構成したランプハウジング(いずれも図示を省略)内に後側光通信部3Rが内装されており、この後側光通信部3Rは、自車両の後方に存在する他車両との間で光通信が可能に構成されている。
【0017】
また、自動車CARには、前記DSRC通信部2と光通信部3に加えて、自動運転システム部4が装備されており、この自動運転システム部4と前記DSRC通信部2と光通信部3は自動車CARのECU(電子制御ユニット)1に接続されている。このECU1は、自身で取得した自車両の情報と、前記DSRC通信部2および光通信部3により取得した他車両の情報に基づいて自動運転システム部4を制御し、適切な自動運転を行うように構成されている。
【0018】
図3は本発明の車々間通信システムを構築している前記ECU1、DSRC通信部2、光通信部3のブロック構成図である。ECU1には後述する自車両の走行情報や自車両が走行する道路の道路情報を検出する各種センサーや監視カメラ等が接続されている。ここでは、一例として自車両の車速、操舵角、加速度を検出するための車速センサーS1、操舵角センサーS2、加速度センサーS3が接続され、さらに自車両の周囲領域を撮像して自車両が走行する道路の状態等の道路情報を検出する監視カメラS4が接続されているものとする。
【0019】
前記ECU1は前記各センサーS1〜S3や監視カメラS4の出力に基づいて自車両の車速、操舵方向、加減速等の走行情報や、直線路、曲路、交差点等の道路情報(以下、これら走行情報と道路情報を自車両情報と称する)を検出する自車両情報検出部11と、検出した自車両情報を記録する自車両情報RAM14を備えている。また、ECU1は、DSRC通信部2により他車両の走行情報と道路情報(以下、他車両情報と称する)を検出する他車両情報検出部12と、検出した他車両情報を記録する他車両情報RAM15を備えている。さらに、前記光通信部3により他車両のID(識別符号)を検出するID検出部13と、検出した他車両IDを記録する他車両IDRAM16を備えている。また、自車両を識別するための自車両のIDが設定されているROM17を備えている。
【0020】
前記DSRC通信部2は、前記ECU1で検出しかつ自車両RAM部14に記録された自車両情報でキャリア信号(搬送波)を変調する変調部22と、変調した信号をアンテナANTを介して送信する送信部21を備えている。また、他車両から送信されてくる信号をアンテナANTを介して受信する受信部23と、受信した信号を復調して当該復調信号に含まれる他車両情報を取得する復調部24を備えている。復調部24で復調した他車両情報は前記ECU1の他車両情報検出部12に出力され、ここで後述するように対象とする他車両の検出が行われる。なお、このDSRC通信部2の構成は、既存のITSシステムやETCシステムに採用されているものをそのまま利用することが可能である。
【0021】
前記光通信部3は、前記したように前側光通信部3Fと後側光通信部3Rで構成されており、これらの通信部は図3に前側通信部3Fを示すように、前記ECU1のROM17に設定されている自車両のIDを変調信号として光変調する光変調部32と、光変調された光信号を出力する光送信部としての発光部31を備えている。また、他車両から出力されてくる光信号を受信する光受信部としての受光部33と、受光した光信号から他車両のIDを復調する光復調部34を備えている。そして、復調した他車両のIDはECU1のID検出部13に出力され、他車両IDRAM16に記録される。
【0022】
前記光通信部3における発光部31は、例えばLD(レーザーダイオード)やLED(発光ダイオード)等の発光素子で構成される。光変調部32は入力される電気信号に基づいて発光部31における光信号の振幅変調(光強度変調)、パルス幅変調、パルスコード変調等、種々の形態での変調を行う構成である。これにより、発光部31を構成するLDやLEDの発光が制御され、前記したようにヘッドランプHLやリアランプRLから自車両の前方ないし後方の周囲に向けて光出力する。一方、受光部33は例えばフォトダイオードで構成し、他車両から出力された光信号を受光し、光復調部34に光電変換した電気信号を出力する。なお、ここでは前記発光部31と受光部33はランプハウジング内に配設し、その他の部位はランプハウジングの外部に配設した構成を採用している。後側通信部3Rも同じ構成である。
【0023】
前記自動運転システム部4について、本発明は車々間通信システムにかかるものであるので、ここでは自動運転システム部4の詳細についての説明は省略するが、前記ECU1は自車両両情報RAM14に記録した自車両情報を自動運転システム部4に向けて出力する。また、これと同時に、前記DSRC通信部2で受信して他車両情報RAM15に記録した他車両情報を前記自動運転シスム部4に向けて出力する。これにより、自動運転システム部4は自車両情報に基づいて自動運転の制御を実行するとともに、その際に他車両情報を参照することにより、より適切な自動運転の制御が実現できる。
【0024】
(実施形態1)
以上説明した自動運転システムと車々間通信システムを備えた自動車における自動運転制御の実施形態1を説明する。図4は自動運転制御の概略フローを示すフローチャートである。自動車は、図4(a)に示すように、先ず光通信部3により自車両IDを送信し(S11)、次いでDSRC通信部2により自車両情報を送信する(S12)。
【0025】
例えば、図1に示したように第1ないし第3の車両CAR1〜CAR3が接近した状態で走行している場合に、各車両は光通信部3により自車両のIDを光信号として出力する。すなわち、前側光通信部3Fと後側光通信部3Rのそれぞれにおいて、ECU1のROM17に設定されている自車両のIDに基づいて光変調部32で光変調を行い、光変調した光信号を発光部31から出射する。図1の例では、各車両CAR1〜CAR3は、ヘッドランプHLに配設した前側光通信部3FとリアランプRLに配設した後側光通信部3Rからそれぞれ自車両の前方および後方に向けて光信号を送信する。
【0026】
また、各車両では、自車両のECU1において、各センサーS1〜S3や監視カメラS4の出力に基づいて自車両情報検出部11で自車両情報を検出し、検出した自車両情報を自車両情報RAM14に記録している。そして、前記した光通信部3による自車両IDを送信した後に、自車両情報RAM14に記録してある自車両情報をDSRC通信部2に出力する。DSRC通信部2は、ECU1のROM17に記録されている自車両IDと、入力されてきた当該自車両情報とでデータフレームを構成する。図5(a)は前記した光通信部3での自車両IDを含むデータフレームDF1と、DSRC通信部2での自車両IDおよび自車両情報で構成されたデータフレームDF2を示している。そして、DSRC通信部2はこのデータフレームDF2に基づいて変調部22でキャリア信号を変調し、送信部21から変調した信号を送信する(S12)。
【0027】
一方で各車両は、図4(b)に示すように、光通信部3において他車から送信された光信号を受信する(S21)。この光通信部3での光通信により前走車と後続車との間で個別にIDを含むデータフレームDF1を送受する光通信が行われる。図1の場合には、第2車両CAR2の前側光通信部3Fから前方に光信号を送信したときには、前側に存在する第1車両CAR1が当該光信号を後側光通信部3Rで受信する。これにより、第1車両CAR1と第2車両CAR2は個別に通信を行うことになる。これは、第2車両CAR2と第3車両CAR3についても同じである。
【0028】
光信号を受信した車両は、受光部33で受信した光信号(データフレームDF1)を光復調部34において復調し、ECU1のID検出部13において通信相手のIDを取得し、他車IDRAM16に記録する(S22)。図1の例では第2車両CAR2は第1車両CAR1のIDと第3車両CAR3のIDを取得する。第1車両CAR1と第3車両CAR3においても同様であり、第1車両CAR1と第3車両CAR3はそれぞれ第2車両CAR2のIDを取得し、他車両IDRAM16に記録する。
【0029】
次いで、各車両は、DSRC通信部2の受信部23において他車両から送信されてくる信号(データフレームDF2)を受信し(S23)、復調部24において当該受信した信号を復調する。そして、復調したデータフレームDF2に含まれる他車両IDと他車両情報を含むフレーム単位でECU1の他車両情報検出部12に出力する(S24)。例えば、第2車両CAR2においては、第1車両から送信された第1車両IDと第1車両情報と、第3車両CAR3から送信された第3車両IDと第3車両情報をそれぞれ1つのフレームとして他車両情報検出部12に出力する。
【0030】
しかる上で、他車両情報検出部12では、受信した1つ又は複数のフレームからそれぞれのIDを検出し、検出したIDを他車両IDRAM16に記録しているIDと照合する(S25)。そして、他車両IDRAM16に記録されている他車両IDと一致するIDを含むフレームを抽出し、当該フレームに含まれている他車両情報を検出する。検出したフレーム中の他車両情報はECU1の他車両情報RAM15に記録する(S26)。この記録に際しては、自車両の前後に存在する他車両と、当該他車両の車両情報とが対応する形式で記録する。
【0031】
例えば、図6に模式的に示すように、第2車両CAR2では光通信部3によって取得した第1車両CAR1と第3車両CAR3の各IDを他車両IDRAM16に記録している。また、DSRC通信部2では、DSRC通信の特性により、実施形態の前後の第1車両CAR1や第3車両CAR3に限らず、それ以外の複数の他車両、すなわち図1には図示していないが第2車両CAR2の近傍に存在する第4車両や第5車両からの信号をも受信している。ECU1の他車両情報検出部12では、第1車両および第3車両の各IDと、複数の他車両信号に含まれるIDを照合することによって、IDが一致する第1車両の車両情報と第3車両の車両情報を識別して検出することができる。そして、第2車両CAR2では先行する第1車両CAR1の車両情報と、後続する第3車両CAR3の車両情報を識別して他車両情報RAM15に記録する。
【0032】
自車両において自動運転システムによる自動運転制御を実行する際には、ECU1は自車両情報RAM14に記録された自車両情報を自動運転システム部4に出力するとともに、他車両情報RAM15に記録された他車両情報も自動運転システム部4に出力する。自動運転システム部4は、自車両情報に基づいて自車両の車速や操舵方向を制御するが、同時に他車両情報を参照して当該車速や操舵方向を補正しながら自動運転を実行する。このとき、他車両情報については、自車両の前を先行する他車両情報を主として参照することで、当該先行車両に追従した適切な自動運転が可能になる。例えば、この実施形態では第2車両CAR2において自動運転制御を行う際には、先行する第1車両CAR1の車両情報を参照することで適切な自動運転が可能になる。
【0033】
このように、DSRC通信により得られる他車両情報を参照して自動運転制御を行う際に、自車両の周囲に複数の他車両が存在していると、自車両においてDSRCで受信した他車両情報がいずれの他車両の情報であるかを識別することが難しいが、本発明のように光通信により他車両IDを取得することにより、DSRC通信で得られた他車両情報がいずれの車両の車両情報であるかを識別することが可能になる。特に、光通信では、光の直進性を利用することによって光通信対象となる他車両を特定することが容易であるので、特定した他車両のIDを正確に検出することができる。したがって、自動運転に影響をおよぼす他車両の車両情報を正確に検出し、適切な自動運転制御が実現できる。
【0034】
(実施形態2)
ここで、本発明においては、次のような実施形態2を採用することもできる。すなわち、図4のステップS11において光通信部3により自車両IDを送信した後、ステップS12のDSRCでの送信を行う前に、先に図4のステップS21,S22を実行し、通信相手車両のIDを取得し、ECU1の他車両IDRAM16に記録する。しかる上で、図4のステップS12を実行するが、その際にDSRC通信部2は、光通信部3で取得した他車両IDを相手車両IDとし、これと送信しようとする自車両情報とでデータフレームを構成する。図5(b)はこの通信相手車両の相手車両IDと、送信しようとする自車両情報で構成されたデータフレームDF3を示している。そして、DSRC通信部2はこのデータフレームDF3に基づいて変調部22でキャリア信号を変調し、送信部21から変調した信号を送信する。
【0035】
図4のステップS23においてこの信号を受信した通信相手車両は、DSRC通信部2の受信部23において他車両から送信されてくる信号(データフレームDF3)を受信し、復調部24において当該信号を復調する。そして、ステップS24,S25においては、この場合には復調したデータフレームDF3に含まれる相手車両IDとECU1のROM17に記録されている自車両IDとを照合する。そして、複数の受信した信号から、自車両IDと一致する相手車両IDを含むデータフレームを抽出し、当該フレームに含まれている他車両情報を検出する。検出したフレーム中の他車両情報はECU1の他車両情報RAM15に記録する(S26)。この他車両情報RAM15に記録された他車両情報に基づいて自車両の自動運転制御を行うことにより、適正な自動運転制御が実現できることは実施形態1と同じである。
【0036】
ただし、この実施形態2においては、光通信部3において図4のステップS11,S21,S22を行った相手車両が1台の車両に特定できる場合に有効である。例えば、前側光通信部3Fまたは後側光通信部3Rのいずれかで光通信を行うことにより、この光通信の相手車両が、先行する第1車両CAR1または後続の第3車両CAR3のいずれであるかを特定する。このように特定した他車両とのみ光通信を行って他車両IDを取得することは、換言すれば光通信の通信相手の他車両のみが自車両IDを取得することになる。したがって、受信した信号に含まれる相手車両IDが自車両IDと一致する場合には、当該信号を送信した相手車両は光通信を行って得られた他車両IDの車両であると特定でき、当該通信相手車両の他車両情報を検出することができる。
【0037】
したがって、この実施形態2では、自車両がDSRCで受信した複数の信号から、データフレームDF3に含まれる相手車両IDと自車両IDが一致する信号のみを抽出すれば、当該信号は特定した他車両から送信されたものであることが瞬時に検出でき、当該特定した車両の車両情報が検出できる。例えば、図1の第2車両CAR2において前側光通信部3Fにより第1車両CAR1とのみ光通信を行って他車両IDを取得すれば、同時に第1車両CAR1においても第2車両CAR2の車両IDを取得することができる。そのため、第2車両CARにおいて自車両の車両IDが含まれる信号を受信したときには、通信相手の車両は自車両のIDを取得している第1車両CAR1であると検出することが可能となる。これにより、応答性の高い自動運転制御が実現できる。
【0038】
(実施形態3)
さらに実施形態3では、実施形態2と同様に図4のステップS11およびステップS21,S22の光通信を行って他車両IDを検出した後、図4のステップS12を実行するに際し、図5(c)のように、DSRC通信部2は、光通信部3で取得してECU1の他車両IDRAM16に記録した他車両IDを相手車両IDとし、これとROM17に記録している自車両IDと、送信しようとする自車両情報とでデータフレームを構成する。図5(c)はこの通信相手車両の相手車両IDと、自車両IDと、送信しようとする自車両情報とで構成されるデータフレームDF4を示している。そして、DSRC通信部2はこのデータフレームDF4に基づいて変調部22でキャリア信号を変調し、送信部21から変調した信号を送信する。
【0039】
この形態では、図4のステップS23,24,S25においては、先ず受信したDSRCの信号を復調したデータフレームDF4に含まれる相手車両IDとECU1のROM17に記録されている自車両IDとを照合する。そして、複数の受信した信号から、自車両IDと一致する相手車両IDを含むデータフレームDF4を抽出する。次いで、この抽出したデータフレームDF4に含まれる自車両IDとECU1の他車両IDRAM16に記録された他車両IDとを照合し、一致するデータフレームDF4のみを抽出する。以降はこれまでの形態と同じである。
【0040】
この形態によれば、実施形態2と同様にして受信したDSRCの信号のうち、相手車両IDが自車両IDと一致する信号、すなわち自車両に向けて送信された信号のみを抽出することができ、迅速な検出が可能になる。しかる上で、実施形態1と同様にして抽出した信号に含まれる自車両IDを他車両IDRAM16に記録されている他車両IDと照合することで当該信号を送信した車両が検出でき、当該他車両の車両情報が取得できる。この実施形態3では、実施形態2のように先立って光通信により他車両を特定しておく必要がないので、より迅速な他車両の検出とその車両情報が取得でき、応答性の高い適正な自動運転制御が実現できる。
【0041】
以上のように、本発明においては、車両間で車両情報を送受する際にはDSRCを利用することで、データ量の多い情報を迅速に送受できる。また、DSRCの路車間通信を利用することもでき、路車間通信から得られる道路情報を車両情報として利用することもできる。これにより、より適切な自動運転制御が可能になる。
【0042】
一方、車両間でIDを送受する際には光通信を利用するので、光信号の直進性によって対象となる車両との間で光通信を行い、当該車両のIDを正確に検出することができる。特に、互いに走行している車両では、車両間の相対位置が頻繁にかつ多様に変化するので、光信号による送受を継続して行うことにより、確実に車々間での個別通信が確保できる。また、光信号はDSRCの信号とは干渉しないので、既存のDSRCシステムに影響を与えることはない。
【0043】
前記実施形態では、図1に示したように、第2車両を自車両としたときに、自車両の前後に存在する他車両間での他車両情報の検出について説明したが、図1には示していない自車両と並走する他車両についても同様にして当該車両のIDを検出することは可能である。例えば、自動車のサイドマーカランプやサイドターンシグナルランプ等に光通信部の発光部と受光部を組み込んでおき、自車両の左側あるいは右側に向けて光信号を送信しかつ受信できるように構成することにより、自車両の左側あるいは右側を並走する他車両のIDを検出することができる。
【0044】
したがって、自車両の周囲に多数の他車両が存在し、これらの他車両との間でDSRC通信を行って各他車両の他車両情報を取得することが可能な状況においても、自動運転制御に必要とされる他車両のIDを検出することにより、受信した多数の他車両情報から当該必要とされる他車両の情報のみを検出することが可能である。DSRC通信については、自車両の前後、左右を問わず、近傍に存在する他車両との間で通信が可能であることは言うまでもない。
【0045】
本発明における他車両のIDを検出するための通信部は、通信対象となる他車両と受信したIDとの対応が判別できる通信方式であればよいので、実施形態に記載した光通信方式に限られるものではなく、指向性の高い無線通信方式を採用してもよい。
【0046】
前記実施形態では、本発明の車々間通信システムを自動運転システムに利用する例について説明したが、複数の車両相互間においてDSRCを利用して相互に情報を送受し、かつその際に情報の送信元の車両を正確に検出することが要求されるシステムであれば本発明を適用することは可能である。
【0047】
前記実施形態では、自動車の走行情報として車速、操舵角、加速度を例示しているが、車体のピッチ角やヨー角、減速度等の情報や、乗員数や全重量等の情報を含むようにしてもよい。一方、道路情報として、監視カメラで撮像した画像から得られる道幅や路面状況、あるいはナビゲーション装置から得られる道路情報を含むようにしてもよい。さらには、前記したようにDSRCを利用した路車間通信から得られる道路情報を含むようにしてもよい。
【0048】
前記実施形態では、光通信部の発光部と受光部を自動車のランプに一体的に組み込んだ構成としているが、光通信部の全体をランプに一体的に組み込んだ構成としてもよい。ランプが小型の場合には前者の構成にすることが好ましく、ランプが大型の場合には後者の構成を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明はDSRCを利用した車々間通信システムに採用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ECU
2 DSRC部
3(3F,3R) 光通信部(個別通信手段)
4 自動運転システム部
11 自車両情報検出部
12 他車両情報検出部
13 ID検出部
14 自車両情報RAM
15 他車両情報RAM
16 他車両IDRAM
17 ROM
21 送信部
22 変調部
23 受信部
24 復調部
31 発光部
32 光変調部
33 受光部
34 光復調部
S1〜S3 センサー
S4 監視カメラ
CAR1〜CAR3 自動車(車両)
ANT アンテナ

図1
図2
図3
図4
図5
図6