(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記交点部を挟んで隣り合う2つの前記セルの間の距離が、0.03〜1.2mmである請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0025】
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一実施形態は、
図1に示すハニカム構造体100である。ハニカム構造体100は、一方の端面である流入端面11から他方の端面である流出端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する隔壁1とこの隔壁1の交点に位置する交点部5とを有するハニカム構造部10を備えている。複数のセル2は、セル2の延びる方向に直交する断面において、複数の角が凸状または凹状に湾曲した多角形であり、少なくとも1つの角が凹状に湾曲し
且つ複数の角の全てが凸状または凹状に湾曲したセル2である特定セル2aを含む。そして、特定セル2aにおける凹状に湾曲した角は、ハニカム構造部10における全てのセル2の角の1.5
〜50%存在している。そして、ハニカム構造体100における全てのセル2は、その全ての角が凸状または凹状に湾曲しており、少なくとも1つの角が凹状に湾曲している場合、そのセルは、特定セルである。
【0026】
このようなハニカム構造体100は、燃焼操作によってもクラックが生じ難く、また、クラックが生じたとしてもクラックが進展することが抑制される。即ち、ハニカム構造体100は、クラックが発生したとしても、発生するクラックは微小である。更に、ハニカム構造体100は、圧力損失の増大が抑制されている。
【0027】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1に示すハニカム構造体の一方の端面のセルを拡大して模式的に示す平面図である。
【0028】
[1−1]特定セル:
特定セルは、セルの延びる方向に直交する断面において、少なくとも1つの角が凹状に湾曲したセルである。そして、凹状に湾曲した角以外の角が存在する場合、その角は、凸状に湾曲した角である。このようなセルを所定割合で含むことにより、燃焼操作によってもクラックが生じ難くなる。また、本発明のハニカム構造体は、セルの角が凹状に湾曲するという条件を満たせばよいため、構造が簡単であり、圧力損失が増大するという問題が生じ難い。なお、「角が凹状に湾曲した」とは、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの角が、このセルの中央側に突出しているということもできる。凹状に湾曲した角は、
図2において符号「41」で示している。凹状に湾曲した角41は、
図2に示すように、セル2の中央側に向かって突出している角である。また、「角が凸状に湾曲した」とは、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの角が、曲線を描くように面取りされているということもできる。凸状に湾曲した角は、
図2において符号「42」で示している。凸状に湾曲した角42は、
図2に示すように、曲線を描くようにセル2を面取りして形成される角である。
【0029】
特定セルは、凹状に湾曲した角の曲率半径が、0.02〜1.0mmであることが好ましく、0.02〜0.7mmであることが更に好ましく、0.02〜0.2mmであることが特に好ましい。このような曲率半径を満たすことにより、燃焼操作によってもクラックがより生じ難くなる。更に、このような曲率半径を満たすことにより、圧力損失の増大をより抑制することができる。上記曲率半径が下限値未満であると、クラックが発生した際に進展し易くなるおそれがある。上限値超であると、圧力損失が上昇するおそれがある。
【0030】
本発明のハニカム構造体は、各辺が直線からなる多角形のセルを通常セルとしたとき、セルの延びる方向に直交する断面において、特定セルの外周長さ比率は、通常セルの外周長さの86〜100%であることが好ましく、93〜99%であることが更に好ましく、95〜99%であることが特に好ましい。特定セルの外周長さを上記範囲とすることにより、圧力損失の増大をより抑制することができる。特定セルの外周長さが下限値未満であると、圧力損失が上昇するおそれがある。上限値超であると、クラックが発生した際に進展し易くなるおそれがある。
【0031】
「通常セル」は、各辺が直線からなる多角形のセルのことである。別言すれば、「通常セル」は、複数の角が凸状または凹状に湾曲していない多角形を想定した場合における当該多角形のことである。更に言えば、「通常セル」は、凸状または凹状に湾曲した多角形において、各辺を延長して得られる仮想線により形成される多角形のことである。
【0032】
なお、通常セルの外周長さに対する特定セルの外周長さの割合(特定セルの外周長さ/通常セルの外周長さ×100)は、複数の特定セルを任意に選択したときに、各特定セルにおいて算出される上記割合の平均値である。
【0033】
[1−2]ハニカム構造部:
ハニカム構造部には、特定セルにおける凹状に湾曲した角が、全てのセルの角に対し1.5%以上の割合存在する。そして、凹状に湾曲した角は、全てのセルの角の1.5〜100%の割合で存在することが好ましく、全てのセルの角の2.8〜100%の割合で存在することが更に好ましく、3.0〜50%の割合で存在することが特に好ましい。上記範囲を満たすことにより、本発明のハニカム構造体は、燃焼操作によってもクラックが生じ難くなる。なお、上記凹状に湾曲した角の割合は、セルの角の総数(即ち、ハニカム構造部に存在するセルの角の全て)に対する「凹状に湾曲した角の総数」により算出される値である。
【0034】
ハニカム構造部において、1つの交点部を囲む複数のセルを1つのセル群とし、セル群を構成するセルに囲まれた交点部を中心交点部とする。このとき、セル群を構成するセルの全部は、中心交点部側の角である交点部形成角が凹状に湾曲していることが好ましい。このような構成を採用することにより、燃焼操作によってもクラックがより生じ難くなる。
【0035】
図1、
図2では、セル群15を構成するセル2の全部が、中心交点部25側の角である交点部形成角30が凹状に湾曲している例を示している。ここで、1つの交点部5を囲む複数のセル2を1つのセル群15とし、セル群15を構成するセル2に囲まれた交点部5を中心交点部25としている。
【0036】
更に、本発明のハニカム構造体は、セル群を構成するセルの全部が、交点部形成角以外の角の全部が凸状に湾曲している態様も好ましい。このような構成を採用することにより、燃焼操作によってもクラックが更に生じ難くなる。
【0037】
図1、
図2では、セル群15を構成するセル2の全部が、交点部形成角30以外の角の全部において凸状に湾曲している例を示している。
【0038】
また、本発明のハニカム構造体は、セル群を構成するセルの全部が、交点部形成角以外の角の全部においても凹状に湾曲していることが好ましい。このような構成を採用することにより、燃焼操作によってもクラックが更に生じ難くなる。
【0039】
図3では、セル群15を構成するセル2の全部が、交点部形成角30以外の角の全部においても凹状に湾曲している例を示している。
【0040】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部において
図4〜
図7に示すような断面形状が四角形のセルが形成されていてもよい。
図4〜
図7は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の一方の端面のセルを拡大して模式的に示す、
図2に対応する平面図である。
【0041】
図4は、ハニカム構造部のセルが複数のセル群15から構成されているハニカム構造体の1つのセル群15を示している。
図4に示すセル群15は、上段2つ、下段2つの4つのセル2(特定セル2a)から構成されている。そして、上段の2つのセル2においては右上及び右下の角が凹状に湾曲し、左上及び左下の角が凸状に湾曲している。そして、下段の2つのセル2においては右上及び右下の角が凸状に湾曲し、左上及び左下の角が凹状に湾曲している。
【0042】
図5は、右上及び左下の角が凸状に湾曲し、左上及び右下の角が凹状に湾曲しているセル2(特定セル2a)を示している。そして、
図5は、このようなセル2が縦横に配列されている例である。
【0043】
図6は、右上及び左上の角が凸状に湾曲し、右下及び左下の角が凹状に湾曲しているセル2(特定セル2a)を示している。そして、
図6は、このようなセル2が縦横に配列されている例である。
【0044】
図7は、左上の角が凸状に湾曲し、その他の角が凹状に湾曲しているセル2(特定セル2a)を示している。そして、
図7は、このようなセル2が縦横に配列されている例である。
【0045】
ハニカム構造部においてセル群が形成されている場合、
図1に示すように、ハニカム構造部10には、複数のセル群15が縦横に配列されていることが好ましい。このような構成を採用することにより、燃焼操作によってもクラックが更に生じ難くなる。
【0046】
ハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面において、交点部5を挟んで隣り合う2つのセル2の間の距離L(
図2参照)が、0.03〜1.2mmであることが好ましい。そして、ハニカム構造体100は、上記距離Lが、0.05〜0.9mmであることが更に好ましく、0.08〜0.8mmであることが特に好ましい。上記2つのセルの間の距離Lを上記範囲とすることにより、燃焼操作によってもクラックが更に生じ難くなる。上記2つのセルの間の距離Lが下限値未満であると、クラックが進展し易くなるおそれがある。上限値超であると、圧力損失が上昇するおそれがある。
【0047】
上記2つのセルの間の距離は、以下のようにして測定される値である。即ち、まず、セル2の延びる方向に直交する断面において、交点部5を挟んで隣り合う2つのセル2の中心O1,O2を結ぶ直線Tを引く(
図2参照)。その後、上記2つのセル2の間にある直線Tの長さを測定する。その後、直線Tの長さから、中心O1と隔壁1との間の距離t1及び中心O2と隔壁1との間の距離t2の合計の値を差し引く。このようにして算出される値を、上記2つのセルの間の距離Lとする。
【0048】
隔壁の厚さは、0.02〜0.34mmであ
り、0.05〜0.31mmであること
が好ましく、0.1〜0.31mmであることが
更に好ましい。隔壁の厚さが下限値未満であると、クラックが進展し易くなるおそれがある。上限値超であると、圧力損失が上昇するおそれがある。
【0049】
ハニカム構造部のセル密度は、15.5〜186個/cm
2であることが好ましく、31〜62個/cm
2であることが更に好ましい。上限値超であると、圧力損失が上昇するおそれがある。
【0050】
隔壁の気孔率は、35〜68%であることが好ましい。気孔率の下限値未満であると、圧力損失が上昇するおそれがある。上限値超であると、クラックが進展し易くなるおそれがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0051】
隔壁の材料としては、セラミックが好ましく、強度及び耐熱性に優れることより、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、アルミナ、チタン酸アルミニウム、窒化珪素、及び炭化珪素−コージェライト系複合材料からなる群から選択される少なくとも1種が更に好ましい。これらの中でも、コージェライトが特に好ましい。
【0052】
ハニカム構造部は、複数のハニカムセグメントからなる接合体であってもよい。即ち、ハニカム本体は、複数のハニカムセグメントの集合体と、これらのハニカムセグメントを互いに接合する接合材からなる接合部とを備えるものであってもよい。
【0053】
ハニカム構造体のセルの延びる方向の長さは、76.2〜355.6mmとすることができる。
【0054】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部の側面に外周壁20(
図1参照)を更に備えていてもよい。
【0055】
本発明のハニカム構造体は、ハニカム構造部の流入端面における所定のセルの開口部、及び流出端面における残余のセルの開口部に目封止部を備えていてもよい。
【0056】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
本実施形態のハニカム構造体の製造方法について説明する。まず、ハニカム構造体を作製するための坏土を調整し、この坏土を成形して、ハニカム成形体を作製する(成形工程)。この成形時において、凹状に湾曲した角(凹状の角)が全てのセルの角の1.5%以上存在するように口金から押出成形することができる。その後、得られたハニカム成形体(或いは、必要に応じて行われた乾燥後のハニカム乾燥体)を焼成してハニカム構造体を作製することができる(ハニカム構造体作製工程)。
【0057】
なお、必要に応じて、ハニカム成形体の流入端面における所定のセルの開口部、及び流出端面における残余のセルの開口部に目封止を施して、流入側目封止部及び流出側目封止部を形成することができる。
【0058】
以下、各製造工程について更に詳細に説明する。
【0059】
[2−1]成形工程:
まず、成形工程においては、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成するハニカム成形体を形成する。
【0060】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、ムライト、アルミナ、チタニア、炭化珪素、及びチタン酸アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種を含むものであることが好ましい。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料であって、焼成されてコージェライトになるものである。
【0061】
このセラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0062】
セラミック成形原料を成形する際には、まず成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。
【0063】
成形時において、凹状の角が全てのセルの角の1.5%以上存在するように口金から押出成形する場合、口金としては、以下のものを用いることができる。即ち、口金としては、例えば、得られるハニカム構造体のセルが形成される交点における複数の角部が凹状または凸状の曲線状に面取りされ且つ少なくとも1つの角部が凹状となるように形成されたものを用いることができる。
【0064】
ハニカム成形体の形状は、特に限定されず、円柱状、中心軸に直交する断面が楕円形、レーストラック形状、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形の柱状等を挙げることができる。
【0065】
得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、なかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0066】
[2−2]ハニカム構造体作製工程:
次に、得られたハニカム成形体を焼成してハニカム構造体を得ることが好ましい。なお、ハニカム成形体の焼成は、ハニカム成形体に目封止部を配設する場合、目封止部を配設した後に行ってもよい。
【0067】
また、ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前には、そのハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものであり、その方法は、特に限定されるものではなく、中の有機物(有機バインダ、分散剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度であるので、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0068】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜6時間が好ましい。
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0070】
(
参考例1)
セラミック原料として、アルミナ、タルク、及びカオリンからなるコージェライト化原料を用いた。アルミナ、タルク、カオリンの質量比は、焼成後、コージェライトが得られる質量比とした。セラミック原料に、バインダ(メチルセルロース)、水を混合してセラミック成形原料を得た。得られたセラミック成形原料を、ニーダーを用いて混練して、坏土を得た。
【0071】
次に、得られた坏土を、真空押出成形機を用いて成形し、ハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体は、円柱形(端面の直径が143.8mm、セルの延びる方向における長さが152.4mm)であった。
【0072】
また、このハニカム成形体は、成形時において、凹状に湾曲した角(凹状の角)が全てのセルの角の3.0%存在するように口金から押出成形した。セルの断面形状は、略四角形(角が面取りされた四角形)であった。
【0073】
次に、得られたハニカム成形体を乾燥させてハニカム乾燥体を得た後、このハニカム乾燥体に目封止部を形成した。具体的には、まず、ハニカム乾燥体の一方の端面(流入端面)に、流入セルが覆われ且つ流出セルが覆われないようにマスクを施した。流入セルは、排ガスが流入することとなるセル(流路)のことである。流出セルは、流入セルに流入した排ガスが隔壁を透過した後、外部に流出するためのセル(流路)である。その後、マスクが施された側の端部を目封止スラリーに浸漬した。このようにして、マスクが施されていないセル(流出セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。その後、ハニカム乾燥体の他方の端面(流出端面)に流入セルが覆われず且つ流出セルが覆われるようにマスクを施した。その後、マスクが施された側の端部を目封止スラリーに浸漬した。このようにして、マスクが施されていないセル(流入セル)の開口部に目封止スラリーを充填した。このようにして、所定のセルの一方の端部及び残余のセルの他方の端部に目封止部を形成し、流入セルと流出セルとが交互に配置された目封止ハニカム乾燥体を得た。
【0074】
次に、目封止ハニカム乾燥体について、450℃で5時間加熱することにより脱脂を行い、更に、1425℃で7時間加熱することにより焼成を行い、ハニカム構造体を得た。
【0075】
このハニカム構造体は、「セル開口率(OFA)(%))」が51.30%であった。また、最短対角距離が1.00mmであった。なお、最短対角距離は、セルの延びる方向に直交する断面において、交点部を挟んで隣り合う2つのセルの間の距離のことである。また、このハニカム構造体は、外周長さ比率が89.20%であった。なお、各辺が直線からなる四角形のセルを通常セルとしたとき、「外周長さ比率」は、セルの延びる方向に直交する断面における、通常セルの外周長さに対する特定セルの外周長さ(特定セルの外周長さ/通常セルの外周長さ)である。また、このハニカム構造体は、特定セルの凹状に湾曲した角の曲率半径が0.3mmであり、隔壁の厚さが0.31mmであり、セル密度が46.5個/cm
2であった。なお、表1中の「セル形状」の欄は、セルの断面形状を示すものである。例えば、「
図3」は、
図3に示すようなセルの断面形状を有していることを意味する。
【0076】
得られたハニカム構造体について、以下に示す方法で、「クラックの有無」、「圧力損失」、及び「総合判断」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
[クラックの有無]
クラックの有無を確認するため、耐熱衝撃性試験を行った。この耐熱衝撃性試験は、(JASO)M505−87に基づく耐熱衝撃性試験に準拠して行った。具体的には、得られたハニカム構造体を、雰囲気温度を850℃にした電気炉内に設置した。ハニカム構造体が均一に加熱されるまで十分時間を置いた。その後、熱したハニカム構造体を電気炉から取り出して大気中で放冷(大気温度25℃)し、ハニカム構造体のクラックの有無を目視にて確認した。結果を表1に示す。
【0078】
[クラックの進展の有無]
クラックが生じたとしてもクラックの進展が有るかまたは無いか(即ち、クラックの進展の有無)について以下のように評価を行った。つまり、クラックが生じたとしてもクラックの進展が無い場合とは、クラックの進展が抑制されているともいえる。本評価においては、まず、上記「耐熱衝撃性試験」を行うことでクラックが生じたハニカム構造体を対象として、更に、上記[クラックの有無]の評価と同じ条件で耐熱衝撃性試験を5回繰り返し行った。その後、クラックの進展の有無を目視にて確認した。
【0079】
クラックの進展が確認されなかった場合(即ち、上記試験前後でクラックの長さが変化しなかった場合)を「無」とした。クラックの進展が確認された場合(即ち、上記試験後において、試験前に比べてクラックが長くなった場合)を「有」とした。
【0080】
[捕集性能]
捕集性能は、以下のように評価を行った。まず、上記「クラックの有無」、及び、「クラックの進展の有無」の評価を行った後のハニカム構造体に、軽油バーナーから空気流量2.4Nm
3/分で排ガスを流した。このとき、排ガス中のススがハニカム構造体に堆積する前の初期状態において、ハニカム構造体に流入するススの粒子数とハニカム構造体から流出するススの粒子数を、SMPSを用いて計測し、捕集効率を算出した。なお、SMPSは、Scanning Mobility Particle Sizerの略称である。SMPSとしては、TIS社製のものを用いた。捕集効率の算出は、以下のようにして行った。まず、ハニカム構造体に流入するススの粒子数をNinとし、ハニカム構造体から流出するススの粒子数をNoutとした。次に、捕集効率を、式:(Nin−Nout)/Ninにより求めた。なお、使用したハニカム構造体は、「クラックの有無」及び「クラックの進展の有無」の評価によってクラックが生じた場合にもクラックが生じた状態のものである。
【0081】
捕集性能は、捕集効率が85%超であった場合を「A」とする。捕集効率が85%未満で80%以上であった場合を「B」とする。捕集効率が80%未満であった場合を「C」とした。なお、捕集効率が80%以上であれば、捕集性能としては合格である。
【0082】
[圧力損失(kPa)]
圧力損失の測定に際しては、まず、作製したハニカム構造体を収納缶内に収納して排ガス浄化システムを得た。次に、この排ガス浄化システムに、25℃のススを含まないガス(空気)を17Nm
3/分の流量で供給した。この場合における圧力損失を測定した。
【0083】
測定した圧力損失について、以下の基準で評価を行った。作製したハニカム構造体の圧力損失と、特定セルを含まないハニカム構造体の圧力損失との差が5%以内であった場合を「A」とする。作製したハニカム構造体の圧力損失と、特定セルを含まないハニカム構造体の圧力損失との差が5%超で10%以内であった場合を「B」とする。作製したハニカム構造体の圧力損失と、特定セルを含まないハニカム構造体の圧力損失との差が10%超で15%以内あった場合を「C」とした。なお、「特定セルを含まないハニカム構造体」は、各実施例において、それぞれ、特定セルを含まないこと以外は同じ構造であるハニカム構造体をいう。
【0084】
[評価結果]
圧力損失の評価が「A」または「B」であり且つ捕集性能の評価が「A」の場合を「A」とする。圧力損失の評価が「C」であり且つ捕集性能の評価が「A」であるか、或いは、圧力損失の結果が「A」であり且つ捕集性能の評価が「B」の場合を「B」とする。圧力損失の評価が「A」であり且つ捕集性能の評価が「C」の場合を「C」とした。
【0085】
[総合判断]
作製したハニカム構造体の評価結果が「A」または「B」であった場合を「OK」とした。作製したハニカム構造体の評価結果が「C」であった場合を「NG」とした。
【0086】
【表1】
【0087】
(実施例2〜
15、
参考例16、比較例1〜3)
表1に示すように変更したこと以外は、
参考例1と同様にして、「クラックの有無」、「クラックの進展の有無」、「捕集性能」、「圧力損失」、「評価結果」及び「総合判断」の評価を行った。結果を表1に示す。
【0088】
なお、
参考例1
、16、
実施例12、14〜
15、比較例3のハニカム構造体は、
図3に示すセル群が縦横に配列して形成されているものであった。実施例2〜6、11のハニカム構造体は、
図2に示すセル群が縦横に配列して形成されているものであった。実施例7、13のハニカム構造体は、
図4に示すセル群が縦横に配列して形成されているものであった。実施例8のハニカム構造体は、
図5に示すセル群が縦横に配列して形成されているものであった。実施例9のハニカム構造体は、
図6に示すセル群が縦横に配列して形成されているものであった。実施例10のハニカム構造体は、
図7に示すセル群が縦横に配列して形成されているものであった。
【0089】
また、比較例1のハニカム構造体は、
図8に示すように、ハニカム構造部のセルが複数のセル群15から構成されていた。そして、セル群を構成する四角形のセル2の全部は、中心交点部側の角である交点部形成角が凹状に湾曲していた。しかし、四角形のセル2の全部は、交点部形成角以外の角の全部が湾曲していなかった。比較例2のハニカム構造体は、
図9に示すように、対向する1対の角のみが凹状に湾曲し且つ他の1対の角が湾曲していないセル2が縦横に配列されたものであった。
【0090】
表1から、実施例
2〜
15、
参考例1、16のハニカム構造体は、比較例1〜3のハニカム構造体に比べて、燃焼操作によってもクラックが生じ難いことが分かる。また、実施例11,13、比較例1〜3によれば、本発明のハニカム構造体は、クラックの進展が確認されず、クラックが進展することが抑制されていることが分かる。また、実施例
2〜
15、
参考例1、16のハニカム構造体は、比較例1〜3のハニカム構造体に比べて、捕集性能が良好であることが分かる。また、実施例
2〜
15、
参考例1、16のハニカム構造体は、圧力損失の増大が抑制されていることが分かる。なお、実施例12は、圧力損失の評価が「C」であるが、捕集効率の評価が「A」である。つまり、ディーゼルパティキュレーター(フィルタ)として最重要となる微粒子の捕集性能を良好に維持する。そのため、このハニカム構造体を用いる場合、排ガスから排出される微粒子の排出規制を満たすことが可能になる。このようなことから、圧力損失の評価が「C」であっても、「評価結果」としては「B」である。