(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周方向に隣り合う2つの前記従動爪の間で、かつ前記偏心部の偏心方向とは反対側に、前記バランスウェイトが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の減速機付モータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、減速機付モータとして、減速機構の他にクラッチ機構を設ける場合がある。クラッチ機構は、モータ部の回転出力の減速機構への伝達、遮断を行うものであるので、負荷が大きく、高剛性であることが望まれる。所望の剛性を確保できるようにクラッチ機構を設けると大型化しやすく、この結果、減速機付モータが大型化してしまうという課題があった。
【0007】
また、上述の従来技術のように、モータ部内の有効スペースを活用できる点では優れているが、偏心部とバランスウェイトとが軸方向にずれた位置に配置されていると、静バランス(スタティックバランス)は改善できるものの、動バランス(ダイナミックバランス)が悪化する可能性があった。
さらに、偏心部とバランスウェイトとを別々に設けると、これら偏心部とバランスウェイトとの相対位置を高精度に決めにくく、荷重バランスを改善しにくいという課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、小型化を図りつつクラッチ機構の剛性を高めることができると共に、容易に荷重バランスを改善できる減速機付モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明に係る減速機付モータは、モータ部と、前記モータ部の回転出力がクラッチ機構を介して伝達される減速機構と、を備え、前記減速機構は、ギヤケーシングと、回転軸線に対して偏心した位置を中心とする偏心部と、前記偏心部に相対回転可能に嵌合され、外歯と内歯を有する揺動歯車と、前記揺動歯車の前記外歯に噛合され、前記ギヤケーシングに固定されるリングギヤと、前記揺動歯車の前記内歯に噛合され、前記回転軸線回りに回転する出力部と、を備え、前記クラッチ機構は、前記モータ部側に設けられる駆動部と、前記減速機構側に設けられる従動部と、前記従動部から前記駆動部への動力の伝達を阻止可能なブレーキ部と、を備え、前記従動部に、前記偏心部が一体的に設けられていると共に、前記偏心部の偏心した質量
及び前記減速機構の荷重バランスを調整するためのバランスウェイトが一体的に設けられていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、バランスウェイトを一体的に設ける分、従動部の剛性を高めることができる。このため、小型ながらクラッチ機構の剛性を確保でき、減速機付モータの大型化を防止できる。
また、従動部に、偏心部とバランスウェイトとが一体的に設けられているので、これら偏心部とバランスウェイトとを近接配置できると共に、これら偏心部とバランスウェイトとの相対位置を高精度に決めることができる。このため、容易に荷重バランスを改善できる。
【0011】
本発明に係る減速機付モータにおいて、前記クラッチ機構は、前記回転軸線上に設けられた係止シャフトと、前記係止シャフトの周囲に設けられた複数のコロと、をさらに備え、前記駆動部および前記従動部は、前記回転軸線回りに回転可能に設けられていると共に、前記駆動部は、前記複数のコロの間に配置される複数の駆動爪を有している一方、前記従動部は、前記複数のコロの前記回転軸線と直交する径方向外側に配置され、前記駆動爪と係脱可能、かつ前記複数のコロを前記係止シャフトに向かって押圧可能な従動爪を有し、前記係止シャフト、前記複数のコロ、および前記従動爪が、前記ブレーキ部として機能することを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、クラッチ機構を小型化できる。
【0013】
本発明に係る減速機付モータは、周方向に隣り合う2つの前記従動爪の間で、かつ前記偏心部の偏心方向とは反対側に、前記バランスウェイトが設けられていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、バランスウェイトによって従動爪の剛性を高め易くすることができる。
【0015】
本発明に係る減速機付モータは、前記従動爪は、周方向に等間隔で3つ設けられており、3つの前記従動爪のうち、第1の前記従動爪は、前記偏心部の偏心方向に配置され、前記第1の前記従動爪以外の第2の前記従動爪と第3の前記従動爪とに跨るように、前記バランスウェイトが設けられていることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、偏心部によって第1の従動爪の剛性を高めることができると共に、バランスウェイトによって第2の従動爪と第3の従動爪との両者の剛性を高めることができる。このため、小型ながら効果的に従動部の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バランスウェイトを一体的に設ける分、従動部の剛性を高めることができる。このため、小型ながらクラッチ機構の剛性を確保でき、減速機付モータの大型化を防止できる。
また、従動部に、偏心部とバランスウェイトとが一体的に設けられているので、これら偏心部とバランスウェイトとを近接配置できると共に、これら偏心部とバランスウェイトとの相対位置を高精度に決めることができる。このため、容易に荷重バランスを改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態における減速機付モータを、図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
(減速機付モータ)
図1は、減速機付モータ1の斜視図、
図2は、減速機付モータ1の断面図、
図3は、減速機付モータ1の分解斜視図である。
図1〜
図3に示すように、減速機付モータ1は、DCブラシ付きモータとして構成された偏平形状のモータ部10と、モータ部10の回転出力がクラッチ機構60を介して伝達される減速機構100と、を備えている。
【0021】
モータ部10の回転中心であるモータ軸線(回転軸線)L1は、出力部110の出力軸111の回転中心(軸線)と一致している。
なお、以下の説明において、説明を分かり易くするために、出力軸111から出力を取り出す側を上側(
図1〜
図3における上側)と称し、その反対側を下側(
図1〜
図3における下側)と称する。また、モータ軸線L1に沿う方向を単に軸方向、モータ軸線L1回りの方向を単に周方向、モータ軸線L1に直交する方向を径方向と称して説明する場合がある。
【0022】
減速機付モータ1は、外殻体として、底壁11aおよび周壁11bを有するモータハウジング11と、このモータハウジング11に結合されたギヤケーシング101と、を有している。そして、モータハウジング11とギヤケーシング101とにより囲まれた空間内部に、減速機付モータ1のほぼ全ての機構要素が収容されている。
【0023】
モータハウジング11の周壁11bには、開口縁側に複数のボルト座12が径方向外側に向かって突出形成されている。各ボルト座12は、モータハウジング11とギヤケーシング101とを不図示にボルトによって締結固定するためのものであって、雌ネジ部12aが刻設されている。また、各ボルト座12は、周方向にほぼ等間隔に配置されている。
さらに、モータハウジング11の周壁11bには、内周面に複数(例えば、この実施形態では6つ)のモータマグネット(永久磁石)13が配置されている。モータマグネット13は、断面円弧状に形成されており、N極とS極とが周方向に交互に配置されている。なお、モータマグネット13をリング状に形成し、このモータマグネット13に複数の磁極を形成してもよい。
【0024】
モータマグネット13の内周側には、モータ軸線L1回りに回転自在のアーマチュア20(ロータ)が配置されている。また、アーマチュア20の上側には、アーマチュア20に給電するための一対のブラシ45を備えた給電装置40が配置されている。
モータハウジング11の底壁11aの径方向中心には、主軸部材2が立設されている。主軸部材2は、基端2aが底壁11aの中央支持部11cに固定されている。主軸部材2は、アーマチュア20の径方向中心部を貫通して、ギヤケーシング101の中央開口から先端2bが突き出している。そして、主軸部材2の中心線が、モータ軸線L1と同軸に設定されている。
【0025】
(アーマチュア)
モータ部10の主要素であるアーマチュア20は、主軸部材2と同軸に配置されており、主軸部材2を囲んだ状態でモータハウジング11内に配置されている。アーマチュア20は、アーマチュアコイル24が形成されているアーマチュアコア21と、このアーマチュアコア21の上下方向から装着される下側のインシュレータ22および上側のインシュレータ23と、アーマチュアコア21の径方向中央に配置されているコンミテータ30と、を備えている。
【0026】
アーマチュアコア21は、例えば、同一形状にプレス成形された複数の電磁鋼板を軸方向に積層することで構成されている。アーマチュアコア21は、略円環状のコア本体21aを有している。コア本体21aの径方向外側には、軸方向平面視略T字状のティース21bが周方向に等間隔で放射状に形成されている。
【0027】
また、周方向に隣接するティース21b間には、スロット21sがティース21bと同数個設けられている。本実施形態では、ティース21bおよびスロット21sの数は9個である。そして、スロット21sにエナメル被覆の巻線Wが通され、ティース21bに装着された各インシュレータ22,23の上から巻線Wがティース21bに集中巻きで巻回されている。これにより、アーマチュアコア21に複数のアーマチュアコイル24が形成される。
【0028】
(コンミテータ)
図4は、コンミテータ30の斜視図である。
同図に示すように、コンミテータ30は、絶縁樹脂で構成された略円筒状の樹脂ボス部31と、樹脂ボス部31に装着された複数(例えば、本実施形態では9枚)のセグメント金属片32と、により構成されている。
【0029】
樹脂ボス部31の下半部(基部)は、アーマチュアコア21の内周面に圧入嵌合される圧入嵌合部33として構成されており、その上側に円筒壁35が設けられている。円筒壁35の上端には、クラッチ機構60の後述する嵌合凸部65が嵌る3つの嵌合凹部36が周方向に等間隔で形成されている。
【0030】
圧入嵌合部33の外径は、円筒壁35の外径よりも倍程度に大きく設定されている。圧入嵌合部33と円筒壁35との境界には、圧入嵌合部33の外径よりも大きなフランジ34が設けられている。フランジ34は、アーマチュアコア21のコア本体21a上に収まる大きさに形成されている。
【0031】
なお、
図2詳示するように、軸方向における外径に変化はあるものの、樹脂ボス部31の円筒壁35の内周面35aから圧入嵌合部33の内周面31aまでの間は、同径でストレートな円筒面として連続している。
そして、圧入嵌合部33の内周面31aにすべり軸受3が設けられていると共に、円筒壁35の内周面35aにすべり軸受4が設けられている。これらすべり軸受3,4を介し、主軸部材2にコンミテータ30が回転自在に支持される。
【0032】
また、各セグメント金属片32は、円筒壁35の外周面に配置されるセグメント32aと、セグメント32aから略L字状に径方向外側に向かって曲折延出され、フランジ34上に配置されるライザ32bと、を有している。そして、各セグメント32aに、一対のブラシ45が摺接される。一方、ライザ32bは、アーマチュアコイル24の引出線(巻線W)を接続するフッキング部分であって、その先端は、U字状に上側に折り返されている。これにより、アーマチュアコイル24の端部(巻線Wの端部)が接続しやすくなる。
このように構成されたコンミテータ30に、クラッチ機構60が連結される。
【0033】
(クラッチ機構)
図5は、クラッチ機構60の詳細を示す分解斜視図である。
同図に示すように、クラッチ機構60は、モータ部10の回転出力を減速機構100に伝達すると共に、減速機構100からモータ部10へ動力が伝達されることを阻止するためのものである。クラッチ機構60は、コンミテータ30に連結される駆動部61と、駆動部61の上側に設けられる従動部62と、駆動部61と従動部62との間に設けられるブレーキ部63と、により構成されている。
【0034】
図6は、駆動部61の斜視図である。
図5、
図6に示すように、駆動部61は、略円板状の駆動部本体64を有している。駆動部本体64の外径は、コンミテータ30の円筒壁35の外径よりも大きく設定されている。駆動部本体64の径方向中央には、貫通孔64aが形成されている。貫通孔64aの内径は、コンミテータ30の円筒壁35の内周面35aの内径とほぼ同一に設定されている。そして、円筒壁35の内周面35aに設けられたすべり軸受4の上端が、貫通孔64aに臨まされている。すなわち、駆動部61もコンミテータ30と同様に、すべり軸受3を介して主軸部材2に回転自在に支持される。
【0035】
駆動部本体64の下面64bには、コンミテータ30の円筒壁35に形成されている嵌合凹部36に対応する位置に、この嵌合凹部36に嵌る3つの嵌合凸部65が突出形成されている。これにより、コンミテータ30(アーマチュア20)と駆動部61とがモータ軸線L1回りに一体となって回転する。また、駆動部本体64の上面64cには、外周部に、3つの駆動爪66が周方向に等間隔で突出形成されている。駆動爪66は、それぞれ駆動部本体64を挟んで嵌合凸部65と対向する位置に配置されている。また、駆動爪66は、平面視略扇状に形成されており、その内周側の周方向略中央に、ブレーキ部63の後述する係合突起73cを受け入れ可能な係合溝66aが形成されている。
【0036】
図7は、従動部62の斜視図、
図8は、従動部62を下からみた平面図である。
図5、
図7、
図8に示すように、従動部62は、略円筒状の偏心部67を有している。この偏心部67は、減速機構100の一部も構成している。
偏心部67の軸方向に貫通する中心孔の内周面67aは、モータ軸線L1を中心とした円筒面で形成されている。内周面67aには、すべり軸受50が圧入されている。これにより、偏心部67は、主軸部材2に回転自在に支持される。
一方、偏心部67の外周面67bは、モータ軸線L1と同心の中心O1に対して偏心した位置を中心O2とする円筒面で形成されている。
【0037】
また、偏心部67の外周面67bには、従動部62の周方向に隣り合う駆動爪66の間に介在するように、3つの従動爪68が一体成形されている。従動爪68は、断面略L字状に形成されており、偏心部67の外周面67bから径方向外側に向かって突出する水平壁68aと、水平壁68aの先端から駆動部61側(下側)に向かって屈曲延出する縦壁68bと、により構成されている。そして、縦壁68bが、従動部62の周方向に隣り合う駆動爪66の間に介在される。
【0038】
縦壁68bは、周方向に沿うように断面円弧状に形成されている。ここで、縦壁68bの内周面68cは、周方向中央に向かうに従って窪むように形成されている。したがって、縦壁68bは、周方向中央の肉厚T1が最も薄く、周方向端部68dの肉厚T2が最も厚くなるように形成されている。
また、3つの従動爪68のうちの1つ(以下、第1の従動爪68という場合がある)は、偏心部67の中心O1と中心O2とを結ぶ直線L2上で、かつ偏心部67の偏心方向H側に配置されている。さらに、第1の従動爪68は、縦壁68bの周方向中央が直線L2上に位置するように配置されている。
【0039】
そして、3つの従動爪68のうち、第1の従動爪68以外の2つの従動爪68(以下、第2の従動爪68、第3の従動爪68という場合がある)の間には、これら第2の従動爪68と第3の従動爪68とに跨るように、バランスウェイト69が一体成形されている。このバランスウェイト69は、減速機構100の荷重バランスを調整するため(偏心部67の偏心した質量とバランスをとるため)のものであって、軸方向平面視で略扇状に形成されている。
【0040】
ここで、3つの従動爪68は駆動爪66の間に介在されているので、周方向に等間隔で配置される。しかも、第1の従動爪68は、偏心部67の中心O1と中心O2とを結ぶ直線L2上で、かつ偏心部67の偏心方向H側に配置されている。このため、第2の従動爪68と第3の従動爪68は、第1の従動爪68(偏心方向H)とは中心O1,O2を挟んで反対側に配置され、かつ直線L2を中心にして両側に等間隔で配置される。したがって、バランスウェイト69の周方向中央は、偏心方向Hとは中心O1,O2を挟んで反対側の直線L2上に位置することになる。
【0041】
図9は、従動部62とブレーキ部63との組付け関係を示す平面図である。
図5、
図9に示すように、ブレーキ部63は、従動部62から駆動部61への動力の伝達を阻止するためのものであって、3つの略円板状のコロ71と、これらコロ71を保持するコロホルダ72と、を備えている。3つのコロ71は、それぞれ従動爪68の内周面68c側に配置されている。
【0042】
一方、コロホルダ72は、略円板状のホルダ本体73を有している。ホルダ本体73は、その外周部が従動爪68の内周面68cよりも径方向内側に位置するように形成されている。また、ホルダ本体73の径方向中央には、主軸部材2を挿通可能な貫通孔73aが形成されている。さらに、ホルダ本体73の下面には、3つのコロ71に対応する位置に、これらコロ71を収納する収納凹部73bが形成されている。収納凹部73bは、径方向外側が大きく開口するように、かつ径方向内側が小さく開口するように略半円状に形成されている。
【0043】
このように形成された収納凹部73に、コロ71がそれぞれ約半分程度収納されている。また、ホルダ本体73の外周部に、コロ71の残り約半分が露出している。そして、クラッチ機構60を組み付けた状態では、コロ71は、主軸部材2の外周面と従動爪68の縦壁68bとの間に介在した状態になる。
ここで、収納凹部73bの半円形状は、コロ71の半径よりも若干大きな曲率半径で形成されている。このため、収納凹部73b内において、コロ71は、多少ガタツキを持って収納される。
【0044】
また、ホルダ本体73の外周部には、駆動部61の係合溝66aに対応する位置に、係合突起73cが径方向外側に向かって突出形成されている。係合突起73cは、駆動部61の係合溝66aに遊嵌される。
ここで、従動部62の偏心部67は、減速機構100の一部を構成している。
【0045】
(減速機構部)
図10は、減速機構100を上側からみた平面図である。
図2、
図3、
図10に示すように、減速機構100は、給電装置40の上側にスペーサ80を介して配置され、上からギヤケーシング101によって覆われている。ギヤケーシング101の開口縁には、モータハウジング11の複数のボルト座12に対応する位置に、それぞれボルト座105が径方向外側に向かって突出形成されている。各ボルト座105には、それぞれ不図示のボルトを挿通可能な貫通孔105aが形成されている。そして、モータハウジング11のボルト座12と、ギヤケーシング101のボルト座105と、を軸方向に重ね合わせ、不図示のボルトによって両者12,105を締結固定することにより、モータハウジング11とギヤケーシング101とが一体化される。
【0046】
減速機構100が載置されるスペーサ80は、ギヤケーシング101の内周面に沿うように円筒状に形成されている。スペーサ80上に配置された減速機構100は、主軸部材2の先端2b(偏心部67の上端部)に対応する位置を囲んだ状態になっている。
減速機構100は、ハイポサイクロイド減速機構として構成されており、偏心部67の他に、ギヤケーシング101の内周面に固定されたリングギヤ102と、偏心部67に転がり軸受81を介して回転自在に取り付けられた揺動歯車103と、揺動歯車103に噛合される出力部110と、を備えている。
【0047】
リングギヤ102は、モータ軸線L1と同心の内歯102aを有している。また、リングギヤ102の下端には、内フランジ部102bが一体成形されており、この内フランジ部102bが、スペーサ80上に載置された形になっている。
【0048】
揺動歯車103は、略円板状の歯車本体103aを有しており、リングギヤ102の内フランジ部102b上に載置されている。そして、歯車本体103aの径方向中央に、転がり軸受81が設けられている。
歯車本体103aの外周部には、リングギヤ102の内歯102aと噛合される外歯103bが形成されている。また、歯車本体103a上には、内歯リング103cが立設されている。内歯リング103cの外径は、歯車本体103aよりも小さく設定されている。内歯リング103cの内周面には、内歯103dが形成されている。
【0049】
出力部110は、主軸部材2を囲んでモータ軸線L1と同軸の略円筒状に形成された出力軸111と、この出力軸111の下端に一体成形された出力歯車104と、により構成されている。出力軸111は、内周側のすべり軸受5と外周側のすべり軸受7を介して、主軸部材2とギヤケーシング101とに回転自在に支持されている。一方、出力歯車104の外周部には、モータ軸線L1と同心の外歯104aが形成されている。この外歯104aが、揺動歯車103の内歯103dに噛合される。
【0050】
(給電装置)
次に、
図3に基づいて、給電装置40について説明する。
同図に示すように、給電装置40は、略円板状に形成された絶縁樹脂製の給電ハウジング41に、ブラシホルダ42を介して、ブラシ45を支持させたものである。ブラシ45は、不図示のバネによって径方向中央(コンミテータ30のセグメント32a)に向かって付勢されている。また、一対のブラシ45は、コンミテータ30の樹脂ボス部31の円筒壁35の外周側で、アーマチュアコア21の軸方向に隣接した上側の位置に配置されている。これにより、一対のブラシ45は、先端がコンミテータ30のセグメント32aに摺接する。また、一対のブラシ45は、給電ハウジング41の一側に一体成形されているコネクタ48の端子48a(
図2参照)に電気接続されている。
【0051】
以上の説明のように、本実施形態のモータ部10は、モータマグネット13の磁極数が6個、アーマチュア20のスロット21sが9個、コンミテータ30のセグメント32aが9個のいわゆる6極9スロット9セグメントの集中巻き直流モータとして構成されている。
【0052】
(減速機付モータの動作)
次に、減速機付モータ1の動作について説明する。
【0053】
(モータ部の動作)
まず、モータ部10の動作について説明する。
不図示の外部電源(外部制御機器)にコネクタ48を電気的に接続すると、このコネクタ48、ブラシ45、およびセグメント32aを介してアーマチュアコイル24に給電が行われる。すると、アーマチュアコア21に所定の磁界が発生する。そして、この磁界と、モータマグネット13との間に磁気的な吸引力や反発力が作用し、アーマチュア20が回転する。この回転によって、ブラシ45が摺接するセグメント32aが順次変更され、アーマチュアコイル24に流れる電流の向きが切替えられる、いわゆる整流が行われる。これにより、アーマチュア20が継続的に回転する。アーマチュア20が継続的に回転すると、コンミテータ30と連結されているクラッチ機構60が作動する。
【0054】
(クラッチ機構の動作)
次に、
図11に基づいて、クラッチ機構60の動作について説明する。
図11は、クラッチ機構60の動作説明図であって、(a)〜(d)は、駆動条件ごとのクラッチ機構60の挙動を示す。
まず、
図11(a)に示すように、駆動部61と従動部62とが中立位置(ニュートラル位置)にあるときは、駆動爪66と従動爪68とが接触していない。また、従動爪68の内周面68cにおける周方向中央に、コロ71が位置している(以下、このコロ71の位置を、コロ71の中立位置という)。従動爪68の内周面68cは、周方向中央に向かうに従って窪むように形成されているので、コロホルダ72の径方向において、コロ71にガタツキがある。このため、コロ71は回転可能な状態になっている。
【0055】
このような状態で、モータ部10を回転駆動させると、コンミテータ30と一体化されている駆動部61がモータ軸線L1回りに回転する(例えば、
図11(a)における反時計回り、矢印Y1参照)。駆動部61が回転すると、駆動爪66の係合溝66aに係合突起73cが遊嵌されているコロホルダ72が連れ回る(
図11(a)における矢印Y2参照)。続いて、駆動爪66の周方向端部66bが従動爪68の縦壁68bにおける周方向端部68dに当接する。
【0056】
ここで、駆動爪66の係合溝66aとコロホルダ72の係合突起73cとのガタツキ(クリアランス)、およびコロホルダ72の収納凹部73bとコロ71とのガタツキ(クリアランス)は、駆動爪66の周方向端部66bが従動爪68の縦壁68bにおける周方向端部68dに当接した時点(以下、単に従動爪68に駆動爪66が当接した時点という)で、コロ71が中立位置から殆どずれないように設定されている。このため、従動爪68に駆動爪66が当接した時点では、コロ71は自由に回転できる状態になる。この結果、駆動爪66に従動爪68が押圧され、駆動爪66と従動爪68とが一体となって回転する。すなわち、駆動部61と従動部62とが一体となって回転する。
【0057】
これに対し、
図11(b)に示すように、駆動部61よりも従動部62が先に回転すると(例えば、
図11(b)における反時計回り、矢印Y3参照)、駆動爪66に従動爪68が当接した時点で、従動爪68の縦壁68bにおける周方向端部68d側にコロ71が位置した状態になる。ここで、従動爪68の縦壁68bは、周方向中央に向かうに従って窪むように形成されており、周方向端部68dの肉厚T2が最も厚くなるように形成されている。
このため、従動爪68の縦壁68bにおける周方向端部68d側にコロ71が位置すると、従動爪68によってコロ71が径方向内側に押圧される(
図11(b)における矢印F1参照)。そして、コロ71が径方向内側に変位する(
図11(b)における矢印Y4参照)。これにより、主軸部材2と駆動爪66とによりコロ71を挟持した状態になり、コロホルダ72の回転が阻止される。この結果、駆動部61の回転が阻止される(ブレーキ状態)。すなわち、コロ71やコロホルダ72に加え、主軸部材2、および従動爪68もブレーキ部63として機能している。
【0058】
次に、
図11(b)に示すように、駆動部61のブレーキ状態からブレーキを解除する動作について説明する。
まず、
図11(c)に基づいて、
図11(b)の状態から駆動部61を時計回り(
図11(c)における矢印Y5参照)に駆動させた場合について説明する。
図11(c)に示すように、駆動部61を時計回りに回転させると、駆動爪66と係合突起73c(コロホルダ72)と従動爪68とが一体となって回転しようとする。このとき、駆動爪66の係合溝66aとコロホルダ72の係合突起73cとのガタツキ(クリアランス)、およびコロホルダ72の収納凹部73bとコロ71とのガタツキ(クリアランス)によって、従動爪68の縦壁68bにおける周方向中央側にコロ71が位置するように、従動爪68がずれる。これにより、主軸部材2と駆動爪66とによるコロ71の挟持(ブレーキ状態)が解除される。このため、コロ71が自由に回転できる状態になり、駆動部61と従動部62とが一体となって回転する。
【0059】
続いて、
図11(d)に基づいて、
図11(b)の状態から駆動部61を反時計回り(
図11(d)における矢印Y6参照)に駆動させた場合について説明する。
図11(d)に示すように、駆動部61を反時計回りに回転させると、駆動爪66と係合突起73c(コロホルダ72)とが一体となって回転する。このとき、駆動爪66は、従動爪68から離間する方向に回転移動することになるので、従動爪68には回転力が作用せず、その場に止まる。この状態で、コロホルダ72が回転し続けるので、コロ71が中立位置に移動する。この結果、主軸部材2と駆動爪66とによるコロ71の挟持(ブレーキ状態)が解除される。そして、このまま、駆動部61が回転し続けると、
図11(a)に基づいて上記で説明したように、駆動部61と従動部62とが一体となって回転する。
【0060】
(減速機構の動作)
次に、減速機構100の動作について説明する。
アーマチュア20の回転により、クラッチ機構60を介して偏心部67が回転すると、その回転を受けて揺動歯車103が回転する。ここで、揺動歯車103は、偏心部67に対して転がり軸受81を介して回転自在に設けられていると共に、外歯103bがリングギヤ102の内歯102aに噛合されている。このため、揺動歯車103は、モータ軸線L1回りに公転し、かつ偏心部67の中心O2(
図8参照)回りに回転する。この揺動歯車103の揺動回転により、揺動歯車103の内歯103dに噛合される出力部110が減速回転を出力する。
このとき、偏心部67の偏心した質量のアンバランス、および揺動歯車103の揺動回転の際の荷重のアンバランスは、偏心部67と一体化されている従動部62(クラッチ機構60)に設けられたバランスウェイト69によって調整される。
【0061】
このように、上述の実施形態では、クラッチ機構60を構成する従動部62(偏心部67)に、バランスウェイト69が一体的に設けられている。このため、偏心部67とバランスウェイト69とを近接配置できる。よって、静バランス(スタティックバランス)と動バランス(ダイナミックバランス)との両者を改善できる。
また、偏心部67とバランスウェイト69とを一体化させることで、バランスウェイト69を、所望の位置に正確に設けることができる。すなわち、バランスウェイト69の周方向中央を、偏心方向H(
図8参照)とは中心O1,O2を挟んで反対側の直線L2上に正確に位置させることができる。このため、減速機付モータ1の荷重バランスを容易に改善できる。
【0062】
また、3つの従動爪68のうち、第2の従動爪68と第3の従動爪68とに跨るように、バランスウェイト69を設けている。第2の従動爪68と第3の従動爪68は、偏心方向Hとは反対側に配置されているので、偏心部67に肉厚も偏心方向H側と比較して薄くなる。ここに、バランスウェイト69を配置することになるので、偏心部67の剛性を高めることができると共に、第2の従動爪68、および第3の従動爪68の剛性も高めることができる。剛性を高めることができる分、クラッチ機構60を小型化でき、さらに減速機付モータ1の小型化もできる。
一方、第1の従動爪68は、偏心部67の偏心方向H側に設けられているので、取付け剛性を確保し易い。
【0063】
また、クラッチ機構60は、コンミテータ30に連結される駆動部61と、駆動部61の上側に設けられる従動部62と、駆動部61と従動部62との間に設けられるブレーキ部63と、により構成されている。また、ブレーキ部63を、3つの略円板状のコロ71と、これらコロ71を保持するコロホルダ72と、により構成している。そして、コロ71、コロホルダ72、主軸部材2、および従動爪68を利用し、従動部62から駆動部61への動力の伝達を阻止するブレーキ部として機能させている。このように、クラッチ機構60を簡素な構造とすることができ、さらにクラッチ機構60を小型化できる。
【0064】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1を構成するモータ部10は、モータマグネット13の磁極数が6個、アーマチュア20のスロット21sが9個、コンミテータ30のセグメント32aが9個のいわゆる6極9スロット9セグメントの集中巻き直流モータとして構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータマグネット13の磁極数、スロット数、およびセグメント数は、任意に設定することが可能である。
【0065】
また、上述の実施形態では、アーマチュアコア21は、複数の鋼板を軸方向に積層することで構成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、軟磁性粉を加圧成形することにより、アーマチュアコア21を形成してもよい。
さらに、上述の実施形態では、コンミテータ30、540は、アーマチュアコア21から軸方向に突出した樹脂ボス部31、331、531の円筒壁35、535の外周面に、セグメント32aが配置されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、円板状のコンミテータの一面にセグメントが放射状に配置される、いわゆるディスク型コンミテータにも、上述の実施形態を適用することが可能である。
【0066】
そして、上述の実施形態では、従動部62は、偏心部67と、従動爪68と、バランスウェイト69と、が一体成形されたものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、それぞれが別体になっていてもよく、それぞれを組付けることにより、一体化されていればよい。
また、上述の実施形態では、クラッチ機構60は、3つの駆動爪66と3つの従動爪68とにより、駆動部61と従動部62とを係合させる場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、駆動爪66や従動爪68の個数を任意に設定することが可能である。
【0067】
さらに、クラッチ機構60のブレーキ部63は、複数のコロ71と、これらコロ71を保持するコロホルダ72とを備え、主軸部材2と協働して従動部62から駆動部61への動力の伝達を阻止するように構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ブレーキ部63の構成は、様々な構成を適用することが可能である。