特許第6510910号(P6510910)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510910
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】油圧駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20190422BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   F15B11/00 Q
   E02F9/22 L
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-127522(P2015-127522)
(22)【出願日】2015年6月25日
(65)【公開番号】特開2017-9087(P2017-9087A)
(43)【公開日】2017年1月12日
【審査請求日】2018年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(72)【発明者】
【氏名】小林 正幸
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/123047(WO,A1)
【文献】 実開昭62−028903(JP,U)
【文献】 特開2004−316839(JP,A)
【文献】 特開平09−072302(JP,A)
【文献】 特開平09−257001(JP,A)
【文献】 実開平06−028305(JP,U)
【文献】 特開2016−014451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22;21/14
E02F 3/42− 3/43; 3/84− 3/85; 9/20−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吐出ポートを有する可変容量ポンプと、
前記可変容量ポンプの前記複数の吐出ポートから独立して吐出される圧油を、別々に導く複数の通路と、
前記複数の通路に別々に設けられ、オリフィス開度が可変可能なネガティブコントロール圧検出用の複数のオリフィスと、
前記複数のオリフィスにかかる前記圧油の圧力のうち、最も低い前記圧力を選択し、この選択結果を、信号ラインを介して前記可変容量ポンプに出力する低圧選択機構と、
を備え、
前記複数のオリフィスにおける前記オリフィス開度を増大させる側の増大側ポートは、対応する前記オリフィスの上流側の前記通路に連結されており、
前記複数のオリフィスにおける前記オリフィス開度を減少させる側の減少側ポートは、前記低圧選択機構に連結されている油圧駆動装置。
【請求項2】
前記可変容量ポンプは、前記吐出ポートを2つ有するスプリットフロー型のポンプであり、
2つの前記通路に、前記オリフィスが設けられている請求項1に記載の油圧駆動装置。
【請求項3】
前記通路にオープンセンタ型切換弁が連結されている請求項1または請求項2に記載の油圧駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の油圧アクチュエータを駆動させるための油圧駆動装置は、圧油を吐出する油圧ポンプと、圧油を油圧アクチュエータに導く通路と、を備えている。通路は、複数の油圧アクチュエータに対応できるように、複数設けられている。そして、各通路に、所望の油圧アクチュエータが連結できるようになっている。
ここで、油圧ポンプとして、2つの吐出ポートを有するスプリットフロー型のポンプがある。スプリットフロー型のポンプを採用することにより、1つの油圧ポンプから2つの通路に圧油を供給できるので、油圧駆動装置を小型化できる。このようなスプリットフロー型のポンプは、特に小型の建設機械に好適である。
【0003】
ところで、スプリットフロー型のポンプは、2つの吐出ポートから吐出される圧力を、別々に制御することが困難である。このため、小型の建設機械では、最大流量での固定容量とし、吐出圧を検出して圧力に応じて2つの通路の圧油の流量を同時に制御する場合が多い。
【0004】
しかしながら近年、小型の建設機械においても省エネルギ化が強く望まれている。このため、常に最大流量で油圧ポンプを駆動させていると、切換弁、油圧アクチュエータ等での圧力損失が高くなり、省エネルギ化が難しい可能性があった。
また、油圧アクチュエータの作動時の圧力が高くなり、油圧アクチュエータの操作性が悪化する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−316839号公報
【特許文献2】特開2012−233551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、省エネルギ化を図り、油圧アクチュエータの操作性を向上させることができる小型な油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の油圧駆動装置は、可変容量ポンプと、複数の通路と、ネガティブコントロール圧検出用の複数のオリフィスと、低圧選択機構と、を持つ。可変容量ポンプは、複数の吐出ポートを有する。複数の通路は、可変容量ポンプの複数の吐出ポートから独立して吐出される圧油を、別々に導く。複数のオリフィスは、複数の通路に別々に設けられ、オリフィス開度が可変可能である。低圧選択機構は、複数のオリフィスにかかる圧油の圧力のうち、最も低い圧力を選択し、この選択結果を、信号ラインを介して可変容量ポンプに出力する。そして、複数のオリフィスにおけるオリフィス開度を増大させる側の増大側ポートは、対応するオリフィスの上流側の通路に連結されており、複数のオリフィスにおけるオリフィス開度を減少させる側の減少側ポートは、低圧選択機構に連結されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の油圧駆動装置を示す概略構成図。
図2】実施形態の油圧ポンプの吐出流量の変化を示すグラフ。
図3】第1の実施形態のバケット駆動用の油圧シリンダを作動させた場合を示す油圧駆動装置の概略構成図。
図4】第1の実施形態のブーム駆動用の油圧シリンダを作動させる場合を示す油圧駆動装置の概略構成図。
図5】第2の実施形態の油圧駆動装置を示す概略構成図。
図6】第2の実施形態のバケット駆動用の油圧シリンダを作動させた場合を示す油圧駆動装置の概略構成図。
図7】第2の実施形態のブーム駆動用の油圧シリンダを作動させる場合を示す油圧駆動装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の油圧駆動装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、油圧駆動装置1の概略構成図である。
同図に示すように、油圧駆動装置1は、例えば小型の油圧ショベルに搭載されるものであって、複数の油圧アクチュエータ2を備えている。また、各油圧アクチュエータ2に所望の圧油を供給する油圧ポンプ4を備えている。さらに、油圧アクチュエータ2と油圧ポンプ4との間に設けられ、油圧アクチュエータ2に供給される圧油の流量を制御する油圧制御弁5を備えている。
【0011】
この他に、油圧駆動装置1は、操作部、ポンプ制御部(何れも不図示)等を備えている。操作部は、各油圧アクチュエータ2の操作信号を出力するものであり、この出力信号が油圧制御弁5やポンプ制御部に入力される。油圧制御弁5は、後述するオープンセンタ型切換弁(スプール)7に操作信号が入力され、この操作信号に基づいて切換弁7が駆動する。ポンプ制御部は、操作信号に基づいて油圧ポンプ4の駆動制御を行う。
【0012】
油圧ポンプ4としては、可変容量可能なスプリットフロー型のポンプが採用されており、不図示の原動機によって駆動する。油圧ポンプ4は、2つの吐出ポート4a,4b(第1吐出ポート4a、第2吐出ポート4b)を有しており、それぞれ油圧制御弁5に連結されている。また、油圧ポンプ4は可変容量型とされ、吐出される圧油の流量(以下、吐出流量という)を制御できるようになっている。
【0013】
油圧制御弁5は、第1タンデム通路8aおよび第2タンデム通路8bの2つのタンデム通路8a,8bと、第1タンデム通路8aから分岐した第1パラレル通路9a、および第2タンデム通路8bから分岐した第2パラレル通路9bの2つのパラレル通路9a,9bと、を備えている。
【0014】
そして、第1タンデム通路8aの上流側が、第1ポンプ通路10aを介して油圧ポンプ4の第1吐出ポート4aに連結されている。また、第2タンデム通路8bの上流側が、第2ポンプ通路10bを介して油圧ポンプ4の第2吐出ポート4bに連結されている。すなわち、第1タンデム通路8aの上流側と第2タンデム通路8bの上流側は、各ポンプ通路10a,10bを介して油圧ポンプ4の2つの吐出ポート4a,4bに別々に連結されている。
【0015】
一方、各タンデム通路8a,8bの下流側には、タンク通路11が接続されている。タンク通路11はタンク50と連通しており、油圧ポンプ4から吐出された圧油は、最終的にタンク通路11を介してタンク50に戻される。
【0016】
また、油圧制御弁5は、各油圧アクチュエータ2への圧油の流量を調整するための複数のオープンセンタ型切換弁(スプール、以下、単に切換弁という)7を有している。切換弁7は、各タンデム通路8a,8bおよび各パラレル通路9a,9bを介して連結されている。切換弁7は、中立位置にあるときに油圧ポンプ4からタンク通路11への油通路(各タンデム通路8a,8b)が開となるように構成されている。なお、図1は、全ての切換弁7が中立位置にある状態を示している。
【0017】
さらに、各切換弁7は、それぞれ油圧制御弁5に設けられたシリンダポート14に連結されている。このシリンダポート14には、種々の油圧アクチュエータ2が連結されるようになっており、切換弁7の開度に応じた圧油の流量が油圧アクチュエータ2に供給される。
【0018】
また、各パラレル通路9a,9bには、各切換弁7に対応するようにチェック弁12が設けられており、切換弁7に供給された圧油が逆流しないようになっている。
一方、各タンデム通路8a,8bの最下流側には、それぞれネガティブコントロールオリフィス(以下、ネガコンオリフィスという)16a,16bが設けられている。各ネガコンオリフィス16a,16bは、対応するタンデム通路8a,8b上の油圧(ネガティブコントロール用の油圧)を検出するためのものである。
また、各ネガコンオリフィス16a,16bはオリフィス開度が可変可能とされており、オリフィス開度を増大させる側に作用する増大側ポート36aと、オリフィス開度を減少させる側に作用する減少側ポート36bおよびスプリング36cと、を備えている。
【0019】
各ネガコンオリフィス16a,16bの増大側ポート36aは、対応する直近上流側のタンデム通路8a,8bに連結されている。
また、各タンデム通路8a,8bにおける各ネガコンオリフィス16a,16bの直近上流側には、これら直近上流側に跨るように低圧選択機構40が設けられている。より具体的には、低圧選択機構40は、第1圧力ライン41aを介して第1タンデム通路8aにおけるネガコンオリフィス16aの直近下流側に連結されている。また、低圧選択機構40は、第2圧力ライン41bを介して第2タンデム通路8bにおけるネガコンオリフィス16bの直近下流側に連結されている。
【0020】
低圧選択機構40は、第1圧力ライン41a(第1タンデム通路8aにおける第1ネガコンオリフィス16aの直近上流側)の油圧と、第2圧力ライン41b(第2タンデム通路8bにおける第2ネガコンオリフィス16bの直近上流側)の油圧と、を比較し、低圧側の圧力を選択するように構成されている。この選択結果は低圧側の圧力信号として、ポンプ信号ライン17を介して油圧ポンプ4に出力される。
また、各ネガコンオリフィス16a,16bの減少側ポート36bは、それぞれ低圧選択機構40の圧力信号を出力する側に連結されている。
【0021】
このように構成された油圧制御弁5に連結されている油圧アクチュエータ2は、アーム駆動用の油圧シリンダ2a、キャブ(旋回体)旋回用の油圧モータ2b、バケット駆動用の油圧シリンダ2c、ブーム駆動用の油圧シリンダ2d等で構成されている。
【0022】
本第1の実施形態では、油圧制御弁5の第1タンデム通路8a側(図1における左側)に、アーム駆動用の油圧シリンダ2a、およびキャブ(旋回体)旋回用の油圧モータ2bが連結されている。アーム駆動用の油圧シリンダ2aは、油圧制御弁5のシリンダポート14を介し、第1タンデム通路8aに連結されている切換弁7、および第2タンデム通路8bに連結されている切換弁7に連結されている。また、キャブ旋回用の油圧モータ2bは、油圧制御弁5のシリンダポート14を介し、第1タンデム通路8aに連結されている切換弁7に連結されている。
【0023】
一方、油圧制御弁5の第2タンデム通路8b側(図1における右側)には、バケット駆動用の油圧シリンダ2c、およびブーム駆動用の油圧シリンダ2dが連結されている。バケット駆動用の油圧シリンダ2cは、油圧制御弁5のシリンダポート14を介し、第2タンデム通路8bに連結されている切換弁7に連結されている。また、ブーム駆動用の油圧シリンダ2dは、油圧制御弁5のシリンダポート14を介し、第2タンデム通路8bに連結されている切換弁7、および第1タンデム通路8aに連結されている切換弁7に連結されている。
【0024】
このように構成された油圧駆動装置1の油圧ポンプ4は、ネガティブコントロール方式の流量制御によりその吐出流量が制御されている。この油圧駆動装置1におけるネガティブコントロール制御は、低圧選択機構40から出力された圧力信号(以下、ポンプ信号ライン圧力という)に基づいて、各ネガコンオリフィス16a,16bの圧油の漏れ量が一定となるように制御する。
【0025】
図2は、縦軸を油圧ポンプ4の吐出流量とし、横軸をポンプ信号ライン圧力としたときの油圧ポンプ4の吐出流量の変化を示すグラフである。
同図に示すように、油圧ポンプ4の吐出流量は、ポンプ信号ライン圧力が大きくなるにしたがい、減少することが確認できる。
【0026】
次に、図1図3図4に基づいて、油圧駆動装置1の動作を、より詳細に説明する。
まず、図1に基づいて、油圧アクチュエータ2を作動させず、各切換弁7が中立位置にある場合について説明する。
油圧ポンプ4から吐出された圧油は、各ポンプ通路10a,10bおよび各タンデム通路8a,8bを介し、タンク50へと通油される。このとき、ネガコンオリフィス16a,16bの圧油の通過流量に応じて、第1圧力ライン41aおよび第2圧力ライン41bの油圧が高くなる。また、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度が同一になっており、これらネガコンオリフィス16a,16bの圧油の通過流量も同一になる。したがって、第1圧力ライン41aおよび第2圧力ライン41bの油圧も同一になる。
【0027】
ここで、低圧選択機構40は、第1圧力ライン41aの油圧と第2圧力ライン41bの油圧とを比較し、低圧側の圧力を選択するように構成されているが、第1圧力ライン41aの油圧と第2圧力ライン41bの油圧がほぼ同一であるので、各圧力ライン41a,41b(各タンデム通路8a,8bにおける各ネガコンオリフィス16a,16bの直近上流側)の圧力と同一の圧力信号を出力する。
【0028】
このため、各ネガコンオリフィス16a,16bの増大側ポート36aと減少側ポート36bには、ほぼ同一の圧力がかかる。さらに、各ネガコンオリフィス16a,16bは、オリフィス開度を減少させる側に作用するスプリング36cを備えている。よって、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度は、小さいまま維持される。
一方、ポンプ信号ライン圧力が高いので、油圧ポンプ4の吐出流量は、最小流量を維持する(図2参照)。
【0029】
次に、図3に基づいて、キャブ旋回用の油圧モータ2bやバケット駆動用の油圧シリンダ2cを作動させる場合について説明する。このような場合、第1タンデム通路8aに連結されている切換弁7、または第2タンデム通路8bに連結されている切換弁7の何れか一方が作動することになる。
【0030】
図3は、バケット駆動用の油圧シリンダ2cを作動させた場合の油圧駆動装置1の概略構成図である。
同図に示すように、油圧ポンプ4の第1吐出ポート4aから吐出された圧油は、第1ポンプ通路10aおよび第1タンデム通路8aを介し、タンク50へと通油される。一方、油圧ポンプ4の第2吐出ポート4bから吐出された圧油は、第2ポンプ通路10bおよび第2タンデム通路8bを介し、バケット駆動用の油圧シリンダ2cへと通油される。
【0031】
このため、第1タンデム通路8a側の第1ネガコンオリフィス16aには圧油が通流され、第1圧力ライン41aの油圧が高くなる。これに対し、第2タンデム通路8b側の第2ネガコンオリフィス16bには圧油が通流されないので、第2圧力ライン41bの油圧が低くなる。したがって、低圧選択機構40は、第2圧力ライン41bの圧力を選択し、この第2圧力ライン41bの圧力に基づくポンプ信号ライン圧力を、油圧ポンプ4に出力する。この結果、油圧ポンプ4の吐出流量は、最大流量を維持する(図2参照)。
【0032】
ここで、各ネガコンオリフィス16a,16bの作動について説明する。
低圧選択機構40のポンプ信号ライン圧力が第2圧力ライン41bの圧力であるため、第2ネガコンオリフィス16bには、増大側ポート36aと減少側ポート36bとに第2圧力ライン41bの圧力(低圧)がかかる。このため、第2ネガコンオリフィス16bのオリフィス開度は、小さいまま維持される。
【0033】
これに対し、第1ネガコンオリフィス16aは、増大側ポート36aに第1圧力ライン41aの圧力(高圧)がかかる一方、減少側ポート36bに第2圧力ライン41bの圧力(低圧)がかかる。このため、第1ネガコンオリフィス16aのオリフィス開度は、スプリング36cのばね力に抗して増大側に変位する。
ここで、従来であれば、第1ネガコンオリフィス16aのオリフィス開度に対する圧油の通過流量分油圧が増大してしまうところだが、第1タンデム通路8a側の油圧は、オリフィス開度が増大することにより第1タンデム通路8a側の油圧が低減される。
【0034】
なお、キャブ旋回用の油圧モータ2bを作動させた場合は、上記作動に対し、第1ネガコンオリフィス16aと第2ネガコンオリフィス16bとの作動が逆になるだけであり、結果的にはバケット駆動用の油圧シリンダ2cを作動させた場合と同様の作用を奏するので、説明を割愛する。
【0035】
次に、図4に基づいて、アーム駆動用の油圧シリンダ2aやブーム駆動用の油圧シリンダ2dを作動させる場合について説明する。このような場合、第1タンデム通路8aに連結されている切換弁7、および第2タンデム通路8bに連結されている切換弁7の何れも作動することになる。
【0036】
図4は、ブーム駆動用の油圧シリンダ2dを作動させる場合の油圧駆動装置1の概略構成図である。
同図に示すように、油圧ポンプ4から吐出された圧油は、各ポンプ通路10a,10bおよび各タンデム通路8a,8bを介し、ブーム駆動用の油圧シリンダ2dへと通油される。このとき、各ネガコンオリフィス16a,16bには圧油が通流されないので、第1圧力ライン41aおよび第2圧力ライン41bの油圧が低くなる。また、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度が同一になっており、これらネガコンオリフィス16a,16bの圧油の通過流量も同一になる。このため、第1圧力ライン41aおよび第2圧力ライン41bの油圧も同一になる。
【0037】
したがって、低圧選択機構40は、各圧力ライン41a,41b(各タンデム通路8a,8bにおける各ネガコンオリフィス16a,16bの直近上流側)の圧力と同一のポンプ信号ライン圧力を出力する。この結果、各ネガコンオリフィス16a,16bの増大側ポート36aと減少側ポート36bには、ほぼ同一の圧力がかかる。さらに、各ネガコンオリフィス16a,16bのスプリング36cによって、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度は、小さいまま維持される。
また、ポンプ信号ライン圧力も低いので、油圧ポンプ4の吐出流量は、最大流量を維持する(図2参照)。
【0038】
このように、上述の第1の実施形態では、油圧ポンプ4として、可変容量可能なポンプが採用されている。また、各タンデム通路8a,8bの最下流側に、それぞれオリフィス開度が可変可能なネガコンオリフィス16a,16bを設けている。さらに、各タンデム通路8a,8bにおける各ネガコンオリフィス16a,16bの直近上流側に、これら直近上流側に跨るように低圧選択機構40を設けている。そして、各ネガコンオリフィス16a,16bの増大側ポート36aを、対応する直近上流側のタンデム通路8a,8bに連結すると共に、各ネガコンオリフィス16a,16bの減少側ポート36bを、それぞれ低圧選択機構40のポンプ信号ライン圧力を出力する側に連結している。
【0039】
このため、各油圧アクチュエータ2の作動状況に応じて油圧ポンプ4の吐出流量を変化させるだけでなく、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度を変化させることにより、切換弁7や油圧アクチュエータ2等での圧力損失を低減できる。
よって、油圧駆動装置1の省エネルギ化を図ることができる。さらに、油圧アクチュエータ2の作動時の圧力が高くなりすぎてしまうことを防止でき、油圧アクチュエータ2の操作性を向上できる。
【0040】
また、油圧ポンプ4として、2つの吐出ポート4a,4b(第1吐出ポート4a、第2吐出ポート4b)を有するスプリットフロー型のポンプを採用することにより、油圧ポンプ4の配置スペースを省スペース化したり、付属部品の点数を減少したりできる。このため、油圧駆動装置1を小型化でき、とりわけ、小型の建設機器(油圧ショベル等)に好適な油圧駆動装置1を提供できる。
【0041】
さらに、切換弁7として、オープンセンタ型切換弁を採用し、いわゆるネガティブコントロール方式の流量制御とした。このため、油圧回路を簡素化でき、高効率で小型な油圧駆動装置1を提供できる。
【0042】
なお、上述の第1の実施形態では、油圧制御弁5は、第1タンデム通路8aおよび第2タンデム通路8bの2つのタンデム通路8a,8bを有している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、2つ以上の複数のタンデム通路を有するように構成してもよい。
この場合、油圧ポンプは、タンデム通路の個数に応じて複数の吐出ポートを有するものとすることが望ましい。また、各タンデム通路に、それぞれネガコンオリフィスを設ける。また、低圧選択機構40は、各タンデム通路のそれぞれの圧力を比較、選択できるように構成する。
【0043】
さらに、上述の第1の実施形態では、油圧制御弁5の第1タンデム通路8a側に、アーム駆動用の油圧シリンダ2a、およびキャブ旋回用の油圧モータ2bが連結されている場合について説明した。また、油圧制御弁5の第2タンデム通路8b側に、バケット駆動用の油圧シリンダ2c、およびブーム駆動用の油圧シリンダ2dが連結されている場合について説明した。しかしながら、これらに限られるものではなく、油圧制御弁5の任意の箇所にさまざまな油圧アクチュエータ2を接続することが可能である。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、図5図7に基づいて、第2の実施形態について説明する。
図5は、油圧駆動装置201の概略構成図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同一態様には、同一符号を付して説明を省略する。
同図に示すように、第2の実施形態における油圧駆動装置201は、クローズドセンタ型切換弁(スプール、以下、単に切換弁という)207を用いた、いわゆるロードセンシング方式で流量制御されている。この点、前述の第1の実施形態と異なる。
【0045】
より詳しくは、油圧駆動装置201の油圧制御弁205は、第1ポンプ通路10aに連結された第1油通路208a、および第2ポンプ通路10bに連結された第2油通路208bと、第1油通路208aから分岐した第1パラレル通路209a、および第2油通路208bから分岐した第2パラレル通路209bと、を備えている。そして、第1パラレル通路209aおよび第2パラレル通路209bに、複数の切換弁207がパラレルに連結されている。切換弁207はクローズドセンタ型であるので、切換弁207が中立位置にあるときに、各パラレル通路209a,209bが閉となる。
【0046】
また、第1油通路208aと第2油通路208bとに跨るように、合流弁60が連結されている。合流弁60は、第1油通路208aと第2油通路208bとを連通させたり遮断させたりするためのものである。具体的には、合流弁60は、アーム駆動用の油圧シリンダ2aやブーム駆動用の油圧シリンダ2d等、油圧ポンプ4の2つの吐出ポート4a,4bの両方を用いて油圧アクチュエータ2を作動させる場合に、第1油通路208aと第2油通路208bとを連通させる。
【0047】
また、第1油通路208aの下流側には、第1アンロード弁61aが設けられていると共に、第2油通路208bの下流側には、第2アンロード弁61bが設けられている。各アンロード弁61a,61bは、切換弁207が作動していない(中立位置にある)ときに、各油通路208a,208bの圧油を不図示のタンクに戻すように構成されている。
【0048】
すなわち、各アンロード弁61a,61bには、ロードセンシング(LS、最高負荷圧)圧、およびスプリング61cのばね力が閉弁方向に作用し、油圧ポンプ4の吐出圧(各油通路208a,208bの油圧)が開弁方向に作用する。これにより、アンロード弁61a,61bは、油圧ポンプ4の吐出圧が最高負荷圧よりも規定圧(すなわち、スプリング61cの設定圧)分だけ高くなるように制御する。そして、両者の差圧が規定圧を越えるとアンロード弁61a,61bが開弁され、圧油が不図示のタンクに戻る。
【0049】
さらに、各油通路208a,208bには、アンロード弁61a,61bの下流側に、ネガコンオリフィス16a,16bが設けられている。そして、各ネガコンオリフィス16a,16bの増大側ポート36aは、それぞれ対応するアンロード弁61a,61bの直近下流側に連結されている。
【0050】
また、各アンロード弁61a,61bの下流側には、各油通路208a,208bに跨るように低圧選択機構40が設けられている。より具体的には、低圧選択機構40は、第1圧力ライン41aを介して第1油通路208aにおける第1アンロード弁61aの直近下流側に連結されている。また、低圧選択機構40は、第2圧力ライン41bを介して第2油通路208bにおける第2アンロード弁61bの直近下流側に連結されている。
さらに、各ネガコンオリフィス16a,16bの減少側ポート36bは、それぞれ低圧選択機構40の圧力信号を出力する側に連結されている。
【0051】
次に、図5図7に基づいて、油圧駆動装置201の動作を、より詳細に説明する。
まず、図5に基づいて、油圧アクチュエータ2を作動させず、各切換弁7が中立位置にある場合について説明する。
油圧ポンプ4から吐出された圧油は、各ポンプ通路10a,10b、および各油通路208a,208bを通流した後、各アンロード弁61a,61bによって、不図示のタンクへと通流される。このとき、ネガコンオリフィス16a,16bの圧油の通過流量に応じて、第1圧力ライン41aおよび第2圧力ライン41bの油圧が高くなる。また、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度が同一になっており、これらネガコンオリフィス16a,16bの圧油の通過流量も同一になる。
【0052】
したがって、第1圧力ライン41aおよび第2圧力ライン41bの油圧も同一になる。また、低圧選択機構40のポンプ信号ライン圧力も各圧力ライン41a,41bの圧力と同一になる。このため、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度は、小さいまま維持される。
一方、ポンプ信号ライン圧力が高いので、油圧ポンプ4の吐出流量は、最小流量を維持する(図2参照)。
【0053】
次に、図6に基づいて、キャブ旋回用の油圧モータ2bやバケット駆動用の油圧シリンダ2cを作動させる場合、つまり、第1油通路208aに連結されている切換弁207、または第2油通路208bに連結されている切換弁207の何れか一方を作動させる場合について説明する。
【0054】
図6は、バケット駆動用の油圧シリンダ2cを作動させた場合の油圧駆動装置1の概略構成図である。
同図に示すように、油圧ポンプ4の第1吐出ポート4aから吐出された圧油は、第1ポンプ通路10aおよび第1油通路208aを通流した後、第1アンロード弁61aによって、不図示のタンクへと通流される。このため、第1圧力ライン41aの油圧が高くなる。
これに対し、第2ポンプ通路10bの第2アンロード弁61bには、ロードセンシング(LS)圧がかかる。このため、第2アンロード弁61bが中間位置に移動し、第2圧力ライン41bの油圧が低くなる。したがって、低圧選択機構40は、第2圧力ライン41bの圧力を選択し、この第2圧力ライン41bの圧力に基づくポンプ信号ライン圧力を油圧ポンプ4に出力する。そして、油圧ポンプ4の吐出流量は、最大流量を維持する(図2参照)。
【0055】
なお、このような場合の各ネガコンオリフィス16a,16bの作動は、前述の第1の実施形態と同様であるので、説明を割愛する。
また、キャブ旋回用の油圧モータ2bを作動させた場合は、上記作動に対し、第1ネガコンオリフィス16aと第2ネガコンオリフィス16bとの作動が逆になるだけであり、結果的にはバケット駆動用の油圧シリンダ2cを作動させた場合と同様の作用を奏するので、説明を割愛する。
【0056】
次に、図7に基づいて、アーム駆動用の油圧シリンダ2aやブーム駆動用の油圧シリンダ2dを作動させる場合、つまり、第1油通路208aに連結されている切換弁7、および第2油通路208bに連結されている切換弁7の何れも作動させる場合について説明する。
【0057】
図7は、ブーム駆動用の油圧シリンダ2dを作動させる場合の油圧駆動装置1の概略構成図である。
同図に示すように、ブーム駆動用の油圧シリンダ2dを作動させる場合、合流弁60によって第1油通路208aと第2油通路208bとが連通される。これにより、各アンロード弁61a,61bには、ロードセンシング(LS)圧がかかる。そして、各アンロード弁61a,61bが中間位置に移動する。
【0058】
また、各ネガコンオリフィス16a,16bの増大側ポート36aと減少側ポート36bには、それぞれ同じ低圧がかかるので、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度は、小さいまま維持される。
また、ポンプ信号ライン圧力も低いので、油圧ポンプ4の吐出流量は最大流量を維持する(図2参照)。
このように、上述の第2の実施形態も、前述の第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0059】
なお、上述の第2の実施形態では、油圧制御弁5は、第1油通路208aおよび第2油通路208bの2つの油通路208a,208bを有している場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、2つ以上の複数の油通路を有するように構成してもよい。
この場合、油圧ポンプは、油通路の個数に応じて複数の吐出ポートを有するものとすることが望ましい。また、各油通路に、それぞれネガコンオリフィスを設けると共に、アンロード弁を設ける。また、低圧選択機構40は、各油通路のそれぞれの圧力を比較、選択できるように構成する。
【0060】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、油圧ポンプ4として、可変容量可能なポンプが採用されている。また、各タンデム通路8a,8bの最下流側、または各油通路208a,208bに、オリフィス開度が可変可能なネガコンオリフィス16a,16bを設けている。さらに、低圧選択機構40を設けて第1圧力ライン41aの圧力と第2圧力ライン41bの圧力とを比較し、ポンプ信号ライン圧力を油圧ポンプ4に出力するように構成している。
【0061】
このため、各油圧アクチュエータ2の作動状況に応じて油圧ポンプ4の吐出流量を変化させるだけでなく、各ネガコンオリフィス16a,16bのオリフィス開度を変化させることにより、切換弁7や油圧アクチュエータ2等での圧力損失を低減できる。
よって、油圧駆動装置1,201の省エネルギ化を図ることができる。さらに、油圧アクチュエータ2の作動時の圧力が高くなりすぎてしまうことを防止でき、油圧アクチュエータ2の操作性を向上できる。
【0062】
また、油圧ポンプ4として、2つの吐出ポート4a,4b(第1吐出ポート4a、第2吐出ポート4b)を有するスプリットフロー型のポンプを採用することにより、油圧ポンプ4の配置スペースを省スペース化したり、付属部品の点数を減少したりできる。このため、油圧駆動装置1,201を小型化でき、とりわけ、小型の建設機器(油圧ショベル等)に好適な油圧駆動装置1,201を提供できる。
【0063】
さらに、切換弁7として、オープンセンタ型切換弁を採用し、いわゆるネガティブコントロール方式の流量制御とした。このため、油圧回路を簡素化でき、高効率で小型な油圧駆動装置1,201を提供できる。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0065】
1,201…油圧駆動装置、4…油圧ポンプ(可変容量ポンプ)、7…オープンセンタ型切換弁、8a…第1タンデム通路(通路)、8b…第2タンデム通路(通路)、9a,209a…第1パラレル通路(通路)、9b,209b…第2パラレル通路(通路)、10a…第1ポンプ通路(通路)、10b…第2ポンプ通路(通路)、16a,16b…ネガティブコントロールオリフィス(オリフィス)、17…ポンプ信号ライン(信号ライン)、36a…増大側ポート、36b…減少側ポート、40…低圧選択機構、208a…第1油通路(通路)、208b…第2油通路(通路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7