特許第6510915号(P6510915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510915
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】ラビリンスシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/447 20060101AFI20190422BHJP
   F04D 29/10 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   F16J15/447
   F04D29/10 A
   F04D29/10 Z
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-134119(P2015-134119)
(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公開番号】特開2017-15208(P2017-15208A)
(43)【公開日】2017年1月19日
【審査請求日】2018年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森中 俊輔
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−096729(JP,A)
【文献】 特開2002−228014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/447
F04D 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転する回転体の外周面と、前記回転体の外側に設けられる静止体の内周面との間の隙間を通って、流体が軸方向に沿って高圧側から低圧側に漏れることを抑制するラビリンスシールであって、
前記回転体の外周面に高圧側よりも低圧側が小径となる段差部が形成されるとともに、前記静止体の内周面から径方向内側に向かって延びるフィンが、前記段差部の高圧側と
低圧側に設けられており、
前記回転体の外周面のうち、前記段差部と当該段差部よりも低圧側に設けられた前記フィンとの間の領域の少なくとも一部に、周方向に沿って環状溝が形成されていることを特徴とするラビリンスシール。
【請求項2】
前記段差部よりも低圧側に設けられた前記フィンの先端部が、当該フィンの基端部よりも高圧側に位置する請求項1に記載のラビリンスシール。
【請求項3】
前記回転軸を含む断面において、前記環状溝の輪郭が円弧状となっている請求項1または2に記載のラビリンスシール。
【請求項4】
前記回転軸を含む断面において、前記環状溝の低圧側の側面は、径方向内側の端部が径方向外側の端部よりも高圧側に位置する形状となっている請求項1または2に記載のラビリンスシール。
【請求項5】
前記環状溝は、軸方向において前記段差部の位置から低圧側へと形成されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載のラビリンスシール。
【請求項6】
前記段差部と当該段差部よりも低圧側に設けられた前記フィンの低圧側の面の先端部との間の軸方向における距離をG、前記環状溝の軸方向における開口幅をWとするとき、
0.78<G/W<1.22
を満たす請求項5に記載のラビリンスシール。
【請求項7】
回転軸周りに回転する回転体の外周面と、前記回転体の外側に設けられる静止体の内周面との間の隙間を通って、流体が軸方向に沿って高圧側から低圧側に漏れることを抑制するラビリンスシールであって、
前記回転体の外周面に、高圧側よりも低圧側が小径となる段差部が、高圧側から低圧側に向かって順次径が小さくなるように複数形成されており、
前記静止体の内周面から径方向内側に向かって延びるフィンが、前記各段差部の少なくとも低圧側に設けられており、
前記回転体の外周面のうち、前記各段差部と当該各段差部よりも低圧側に設けられた前記フィンとの間の領域の少なくとも一部に、周方向に沿って環状溝が形成されていることを特徴とするラビリンスシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に設けられるラビリンスシールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、回転機械を構成する回転体と静止体との間の隙間を通って、流体が高圧側から低圧側に漏れることを抑制するためのラビリンスシールが開示されている。このラビリンスシールは、主に、回転体の外周面に形成された階段構造と、静止体の内周面に設けられたフィンとから構成されている。
【0003】
図7は、従来のラビリンスシールを示す模式断面図である。特許文献1のラビリンスシールによれば、図7に示すように、高圧側から低圧側へと、回転体101の外周面と静止体102の内周面に設けられたフィン103、104との間の隙間を通過する流体の流れPが生ずる。このとき、高圧側のフィン103と低圧側のフィン104との間に大きな渦V1が形成されるとともに、段差部101aの側方に小さな渦V2が形成される。そして、渦V1、V2において流体間摩擦が発生し、エネルギー損失が生じることによって、流体の漏れを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−72736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、従来のラビリンスシールでは、渦V1に加えて渦V2が形成されることによって、流体の漏れ量を低減することができるようになっている。しかしながら、図7に示すように、渦V2の形状は扁平状となっており、流れPを積極的に取り込んで渦V2の流速を増大させる構成とはなっていない。このため、渦V2による流体のエネルギー損失には限界があり、この点において改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、渦による流体のエネルギー損失を増大させることによって、流体の漏れ抑制効果を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、回転軸周りに回転する回転体の外周面と、前記回転体の外側に設けられる静止体の内周面との間の隙間を通って、流体が軸方向に沿って高圧側から低圧側に漏れることを抑制するラビリンスシールであって、前記回転体の外周面に高圧側よりも低圧側が小径となる段差部が形成されるとともに、前記静止体の内周面から径方向内側に向かって延びるフィンが、前記段差部の少なくとも低圧側に設けられており、前記回転体の外周面のうち、前記段差部と当該段差部よりも低圧側に設けられた前記フィンとの間の領域の少なくとも一部に、周方向に沿って環状溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、後で詳細に説明するように、高圧側から低圧側へと向かう流体の流れを環状溝内に引き込むことができ、環状溝内における渦の流速を速くすることができる。その結果、環状溝内の渦による流体のエネルギー損失を増大させることができ、流体の漏れ抑制効果を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。
図2】G/Wによる漏れ量の変化を示すグラフである。
図3】第2実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。
図4】第3実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。
図5】第4実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。
図6】複数の段差部を有するラビリンスシールを示す模式断面図である。
図7】従来のラビリンスシールを示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
本発明にかかるラビリンスシールの第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図であり、より詳細には回転体の回転軸を含む断面を示したものである。第1実施形態のラビリンスシール10が設けられる回転機械1は、回転体11および静止体12が不図示のケーシング内に配置されて構成されており、例えばターボ圧縮機として機能する。
【0011】
回転体11は、不図示の軸受を介してケーシングに取り付けられており、回転軸周りに回転自在に構成されている。一方、静止体12は、回転体11の径方向外側に間隔を空けて配置された状態でケーシングに固定されている。ラビリンスシール10は、主に、回転体11の外周面に形成された段差部11aからなる階段構造と、静止体12の内周面に設けられたフィン13、14とから構成されるものである。ラビリンスシール10は、回転体11の外周面と静止体12の内周面との間の隙間を通って、流体が軸方向に沿って高圧側(図1において左側)から低圧側(図1において右側)に漏れることを抑制する。
【0012】
回転体11の外周面には、高圧側のほうが低圧側よりも大径となるように、径方向に沿って段差部11aが形成されている。これにより、回転体11のうち、段差部11aよりも高圧側が大径部11b、段差部11aよりも低圧側が小径部11cとなっている。
【0013】
静止体12には、静止体12の内周面から径方向内側に向かって回転体11の外周面近傍まで延びるリング状のフィン13、14が設けられている。フィン13は、段差部11aよりも軸方向において高圧側、すなわち、大径部11bに対向する領域に配置されている。一方、フィン14は、段差部11aよりも軸方向において低圧側、すなわち、小径部11cに対向する領域に配置されている。
【0014】
回転体11の小径部11cの外周面には、周方向に沿って環状溝15が形成されている。環状溝15は、径方向に略平行な高圧側の側面15a、径方向に略平行な低圧側の側面15b、および軸方向に略平行な底面15cを有して構成されており、回転体11の回転軸を含む断面(図1に示す断面)において、環状溝15の輪郭は矩形状となっている。高圧側の側面15aは、段差部11aと面一となっており、軸方向において段差部11aと同位置にある。一方、低圧側の側面15bは、高圧側の側面15aから低圧側へ環状溝15の開口幅Wだけ離れた箇所に位置する。
【0015】
ここで、フィン14は、大径部11bの外周面よりも径方向内側まで延びている。このため、フィン13の先端部と回転体11の外周面との間の隙間を通過した流体は、軸方向に沿って直線状に流れるのではなく、図1に示すように、フィン14の手前で径方向内側へ屈曲する主流Pを形成する。詳細には、主流Pは、高圧側のフィン13と大径部11bとの間を通過したあと、高圧側から低圧側へと概ね軸方向に沿って流れ、低圧側のフィン14の手前で径方向内側へ向かい、その後、フィン14と小径部11cとの間の隙間を通過しつつ、再び概ね軸方向に沿う流れとなる。
【0016】
主流Pが形成されるのに伴い、高圧側のフィン13と低圧側のフィン14との間には、図中反時計回りに比較的大きな渦V1が形成され、段差部11aと低圧側のフィン14との間(環状溝15を含む領域)には、図中時計回りに比較的小さな渦V2が形成される。これら渦V1、V2において流体間摩擦が発生し、エネルギー損失が生じることによって、流体の漏れを抑制することができる。
【0017】
(効果)
第1実施形態にかかるラビリンスシール10では、回転体11の外周面のうち、段差部11aと段差部11aよりも低圧側に設けられたフィン14との間の領域の少なくとも一部に、周方向に沿って環状の環状溝15が形成されている。このため、高圧側から低圧側へと向かう主流Pが低圧側のフィン14に当たると、その際に径方向内側に環状溝15へと向かう分岐流Paが生じ、環状溝15に形成される渦V2の流速を速くすることができる。また、環状溝15が設けられていることで、渦V2の形状が概ね円形となり、従来の扁平状の渦V2(図7参照)と比べて、渦V2を大きくすることができる。このように、渦V2の流速が速くなるとともに、渦V2が大きくなることによって、渦V2における流体間摩擦が増大する。その結果、渦V2による流体のエネルギー損失を増大させることができ、流体の漏れ抑制効果を向上させることが可能となる。
【0018】
なお、上述の効果を得るためには、環状溝15が、軸方向において段差部11aと低圧側のフィン14との間の領域の少なくとも一部に形成されていればよいが、第1実施形態のように、環状溝15が軸方向において段差部11aの位置から低圧側へと形成されている、換言すると、環状溝15が高圧側に段差部11aの位置まで延びているとより好ましい。このように、環状溝15が高圧側に限界まで広く形成されていることで、環状溝15の容積を広くすることができる。その結果、渦V2をより大きくすることができるので、渦V2における流体のエネルギー損失をより増大させることができる。
【0019】
さらに、本発明者は、上述のように環状溝15が段差部11aの位置から低圧側へと形成されている場合に、環状溝15が低圧側にどこまで延びているのが好ましいか鋭意検討した。その結果、環状溝15の開口幅をW、段差部11aと低圧側のフィン14の低圧側の面14aとの間の軸方向における距離をGとした場合に、図2に示すように、G/Wによって漏れ流れの量が変化するとの知見を得た。なお、図2においては、縦軸の漏れ量の単位を無次元化している。
【0020】
環状溝15の開口幅Wが距離Gよりも小さすぎると、すなわち、環状溝15の低圧側の側面15bがフィン14から遠ざかりすぎると、分岐流Paが環状溝15に入りにくくなり、渦V2の流速を速めにくくなるので、漏れ抑制効果が小さくなると考えられる。一方、環状溝15の開口幅Wが距離Gよりも大きすぎると、すなわち、環状溝15がフィン14を超えて低圧側まで延びすぎていると、フィン14の先端部と小径部11cとの間の隙間が広くなり、漏れが促進されやすくなると考えられる。
【0021】
そこで、図2から明らかなように、0.78<G/W<1.22とすることで、環状溝の設けられていない従来技術と比較して、顕著に漏れ量を減少させることができた。さらに好ましくは、G/Wが約1.0、すなわち、フィン14の低圧側の面14aと環状溝15の低圧側の側面15bとを軸方向において略同位置とすることで、漏れ抑制効果を最大にすることができた。
【0022】
[第2実施形態]
本発明にかかるラビリンスシールの第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。第2実施形態のラビリンスシール20は、フィン23、24が径方向に対して傾斜角θをもって傾斜している点が第1実施形態と異なるが、他の点は基本的に第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と共通する構成(図1と同じ符号を付してある)およびそれによって奏される効果については、適宜説明を省略する。
【0023】
第2実施形態では、高圧側のフィン23および低圧側のフィン24ともに、先端部(径方向内側の端部)が基端部(径方向外側の端部)よりも高圧側に位置するように、径方向から高圧側に向かって傾斜角θだけ傾斜している。なお、高圧側のフィン23と低圧側のフィン24とで、傾斜角を同じにすることは必須ではなく、両者の傾斜角が異なっていてもよい。また、高圧側のフィン23は傾斜させずに、低圧側のフィン24のみを傾斜させるようにしてもよい。
【0024】
(効果)
第2実施形態のラビリンスシール20のように、段差部11aよりも低圧側に設けられれたフィン24の先端部が、フィン24の基端部よりも高圧側に位置する場合、主流Pがフィン24に当たった際に、径方向外側へと向かう分岐流Pbが発生しやすくなり、渦V1の流速を速くすることができる。その結果、渦V1における流体のエネルギー損失を増大させることができ、流体の漏れ抑制効果をさらに向上させることができる。
【0025】
なお、上述のような効果を得るための構成は、低圧側のフィン24を傾斜させることに限定されない。例えば、フィン24の先端部が基端部よりも高圧側に位置するように、フィン24を湾曲形状としてもよいし、L字形状等の屈曲形状としてもよい。
【0026】
ところで、図2に示した結果は第2実施形態でも同様に当てはまるが、第2実施形態のようにフィン24が傾斜している場合には、図3に示すよう、距離Gは、フィン24の低圧側の面24aの先端部と段差部11aとの間の軸方向における距離と定義する。
【0027】
[第3実施形態]
本発明にかかるラビリンスシールの第3実施形態について説明する。図4は、第3実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。第3実施形態のラビリンスシール30は、環状溝35の断面形状が円弧状となっている点が第1実施形態と異なるが、他の点は基本的に第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と共通する構成(図1と同じ符号を付してある)およびそれによって奏される効果については、適宜説明を省略する。
【0028】
第3実施形態では、回転体11の回転軸を含む断面(図4に示す断面)において、環状溝35の輪郭が円弧状となっている。より詳細には、環状溝35の断面形状が、環状溝35の開口幅Wを直径とする半円状とされている。このため、環状溝35の開口周縁における接線は径方向と一致しており、環状溝35内に円滑に流体を導くことができる。
【0029】
(効果)
第3実施形態のラビリンスシール30のように、回転軸を含む断面において、環状溝35の輪郭が円弧状となっている場合、渦V2の流れが環状溝35に沿うことで、渦V2と円弧状の底面との摩擦が増大し、渦V2における流体のエネルギー損失を増大させることができる。したがって、流体の漏れ抑制効果をさらに向上させることができる。
【0030】
[第4実施形態]
本発明にかかるラビリンスシールの第4実施形態について説明する。図5は、第4実施形態にかかるラビリンスシールを示す模式断面図である。第4実施形態のラビリンスシール40は、環状溝45の低圧側の側面45bが傾斜面となっている点が第1実施形態と異なるが、他の点は基本的に第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態と共通する構成(図1と同じ符号を付してある)およびそれによって奏される効果については、適宜説明を省略する。
【0031】
第4実施形態では、回転体11の回転軸を含む断面(図5に示す断面)において、環状溝45の輪郭が台形状となっている。より詳細には、環状溝45は、高圧側の側面45a、低圧側の側面45bおよび底面45cを有して構成されているが、低圧側の側面45bが、底面45c側に向かうにつれて高圧側に位置する傾斜面となっている。つまり、側面45bは、径方向内側(底面側)の端部が、径方向外側(開口側)の端部よりも高圧側に位置する形状を有している。なお、高圧側の側面45aは、第1実施形態と同様に、段差部11aと面一になっている。
【0032】
(効果)
第4実施形態のラビリンスシール40のように、回転軸を含む断面において、環状溝45の低圧側の側面45bが、径方向内側の端部が径方向外側の端部よりも高圧側に位置する形状となっていれば、主流Pが低圧側のフィン14に当たった際に生じる径方向内側向きの分岐流Paをより多く環状溝45内に流入させることができる。このため、渦V2の流速を速めることができ、渦V2における流体のエネルギー損失を増大させることによって、流体の漏れ抑制効果をさらに向上させることができる。
【0033】
なお、上述のような効果を得るための構成は、環状溝45の低圧側の側面45bを傾斜させることに限定されない。例えば、側面45bが、底面45c側に向かうにつれて高圧側に位置する湾曲面であってもよい。
【0034】
[その他の実施形態]
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記各実施形態の要素を適宜組み合わせまたは種々の変更を加えることが可能である。
【0035】
例えば、上記各実施形態において、段差部11aよりも高圧側に設けたフィン13、23を省略することも可能である。
【0036】
また、上記各実施形態では、環状溝15、35、45の高圧側の端部が、軸方向において段差部11aと同位置であるとしたが、段差部11aよりも低圧側に位置させてもよい。
【0037】
また、上記各実施形態では、フィン13、14、23、24を静止体12とは別の部材として説明したが、フィン13、14、23、24が静止体12と一体的に構成されていてもよい。
【0038】
また、上記各実施形態においては、本発明のラビリンスシールを構成する回転体11の階段構造が、段差部11aが1つだけ設けられた2段構造の場合について説明したが、図6に示すように、回転体51が3段以上の階段構造を有する場合に本発明を適用することも可能である。
【0039】
図6に示すラビリンスシール50は、主に、回転体51の外周面に形成された4つの段差部53A〜53Dと、静止体52の内周面に形成された4つのフィン54A〜54Dとを有して構成される。各フィン54A〜54Dは、各段差部53A〜53Dの低圧側(小径側)に設けられている。回転体51の外周面には、各段差部53A〜53Dと各フィン54A〜54Dとの間の少なくとも一部の領域に、環状溝55A〜55Dがそれぞれ形成されている。なお、フィン54A〜54Dや環状溝55A〜55Dは、例えば上記各実施形態に示した形態をとり得る。
【0040】
このように、高圧側から低圧側に向かって順次径が小さくなるように回転体51の外周面に設けられた複数の段差部53A〜53Dと、各段差部53A〜53Dの少なくとも低圧側に設けられた複数のフィン54A〜54Dと、各段差部53A〜53Dと各フィン54A〜54Dとの間に設けられた複数の環状溝55A〜55Dとを備えるラビリンスシール50によれば、流体の漏れ低減効果を一層向上させることができる。
【符号の説明】
【0041】
10、20、30、40、50:ラビリンスシール
11、51:回転体
11a、53A〜53D:段差部
12、52:静止体
13、14、23、24、54A〜54D:フィン
15、35、45、55A〜55D:環状溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7