(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510934
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】温風暖房装置
(51)【国際特許分類】
F24H 3/04 20060101AFI20190422BHJP
F24H 9/02 20060101ALI20190422BHJP
F23N 5/24 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
F24H3/04 305D
F24H9/02 302B
F23N5/24 104
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-164612(P2015-164612)
(22)【出願日】2015年8月24日
(65)【公開番号】特開2017-44360(P2017-44360A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕悦
【審査官】
柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−090899(JP,A)
【文献】
特開2001−330322(JP,A)
【文献】
特開2002−364930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/04
F24C 5/16
F24D 15/02
F23N 5/24
F24H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具本体と、該器具本体内に設置され燃油を燃焼する燃焼部と、該燃焼部の燃焼熱で加熱された空気を温風として送風する対流ファンと、該対流ファンで送風された温風が前記器具本体の前面へ送風されるよう前記器具本体の前面に向けて開口した温風吹き出し口と、該温風吹き出し口に設置され前記温風吹き出し口の少なくとも上面を閉塞するよう形成した枠状の吹き出し口枠と、前記器具本体の正面視一側に配置され前記温風吹き出し口と接続し前記燃焼部で加熱され前記対流ファンにより送風された温風が通過する送風ボックスと、前記器具本体の正面視他側で前記送風ボックスと隣り合うように配置され前記燃焼部へ供給する燃油が溜められた給油タンクを収納する収納部と、前記器具本体内に設置され前記器具本体内の温度を検知する器具内温度センサと、運転開始指示がされたと判断したら前記燃焼部での燃焼を開始させ前記対流ファンを駆動させる暖房運転を開始し、該器具内温度センサでの検知温度が所定値以上であると判断したら暖房運転を停止させる制御部とを備え、
前記吹き出し口枠の上面にスリットを形成し、前記収納部に前記器具内温度センサを設置したことを特徴とする温風暖房装置。
【請求項2】
前記器具内温度センサは、前記収納部を構成する仕切り板に設置された前記制御を構成する基盤上に設置されたことを特徴とする請求項1記載の温風暖房装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃焼部の燃焼により発生した温風を対流ファンで送風することで室内の温度を上昇させる温風暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の温風暖房装置においては、
図9で示すように、器具本体101と、該器具本体101内に設置され燃油を燃焼する燃焼部102と、該燃焼部102で加熱されることで発生した温風を送風する暖房運転を実施する対流ファン103と、前記器具本体101の前面に形成され室内へ向けて開口した温風吹き出し口104と、該温風吹き出し口104内から前記器具本体101の前面に連通するよう前記温風吹き出し口104の左右に形成されたダクト部105と、該ダクト部105内に設置され周囲の温度を検知する器具内温度センサ106とを備え、温風吹き出し口104の前方に障害物107が置かれた時、障害物107に衝突して器具本体101側へ反射した温風がダクト部105内へ流入し、器具内温度センサ106での検知温度が所定温度以上の状態が所定時間継続したら、高温異常エラーが発生したとして燃焼部102での燃焼を停止させることで、器具本体101を構成する部材が高温に晒され続けて破損するのを防止する温風暖房装置があった。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−330322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この従来のものでは、器具本体の前面に形成されたダクト部の開口面積が温風吹き出し口と比較して小さく、また、温風吹き出し口の左右にダクト部が形成されていることから、障害物によって反射した温風のダクト部への流入量が少ないため、ダクト部内の温度上昇速度が遅く器具内温度センサによって温風吹き出し口の前方に障害物の存在有無を判断するまで時間がかかる虞があり、また、温風吹き出し口とは別にダクト部を器具本体内に形成し、各ダクト部に対して器具内温度センサを設置しているため、製品の製造時間とコストが増大することから、改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1では、器具本体と、該器具本体内に設置され燃油を燃焼する燃焼部と、該燃焼部の燃焼熱で加熱された空気を温風として送風する対流ファンと、該対流ファンで送風された温風が前記器具本体の前面へ送風されるよう前記器具本体の前面に向けて開口した温風吹き出し口と、該温風吹き出し口に設置され前記温風吹き出し口の少なくとも上面を閉塞するよう形成した枠状の吹き出し口枠と、
前記器具本体の正面視一側に配置され前記温風吹き出し口と接続し前記燃焼部で加熱され前記対流ファンにより送風された温風が通過する送風ボックスと、前記器具本体の正面視他側で前記送風ボックスと隣り合うように配置され前記燃焼部へ供給する燃油が溜められた給油タンクを収納する収納部と、前記器具本体内に設置され前記器具本体内の温度を検知する器具内温度センサと、運転開始指示がされたと判断したら前記燃焼部での燃焼を開始させ前記対流ファンを駆動させる暖房運転を開始し、該器具内温度センサでの検知温度が所定値以上であると判断したら暖房運転を停止させる制御部とを備え、
前記吹き出し口枠の上面にスリットを形成し、
前記収納部に前記器具内温度センサを設置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、吹き出し口枠の上面にスリットを形成し、該スリットの上方に器具内温度センサを設置したので、温風吹き出し口の前方に障害物が存在する時、温風が温風吹き出し口の水平方向以外にも流動し、吹き出し口枠の上面に形成されたスリットを通過して器具内温度センサまで温風が達し、器具内温度センサの検知温度が上昇するため、温風吹き出し口の前方に障害物が存在する時、器具内温度センサの検知温度が早期に上昇して高温異常エラーを判断し暖房運転を停止させることができ、また、温風吹き出し口付近に器具内温度センサを設置したダクト部を形成する必要がないため、製品の製造時間とコストの増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】この発明の一実施形態を示す温風暖房装置の斜視図
【
図3】同実施形態の前面パネルを取り外した状態の正面図
【
図8】同実施形態の障害物が器具本体の前方に存在する時の温風の流れを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、この発明の一実施形態における温風暖房装置を図に基づいて説明する。
1は器具本体、2は器具本体1の前面を覆う前面パネル、3は各種スイッチで操作を行う操作部、4は操作部3で行った操作内容等を液晶画面に表示する液晶パネル、5は器具本体1の前面へ温風が送風されるよう前記器具本体1の前面に向けて開口した温風吹き出し口、6は該温風吹き出し口5を囲うように設置され開口面以外の上下面と側面とが閉塞された枠状の吹き出し口枠、7は該吹き出し口枠6の側面に2枚設置され温風の吹き出し方向を変化させるルーバー、8は器具本体1の両側面に形成され器具本体1を持ち上げるための取っ手である。
【0009】
9は背面の温風取入口にファンガード10を介して取り付けられた対流ファン、11は前記器具本体1の正面視左側に形成され前記対流ファン9により送風された温風が室内へ送風されるよう温風吹き出し口5と接続した送風ボックス、12は前記送風ボックス11内にバーナヘッド13を突出して設けられた燃焼部としてのバーナ、14は前記バーナヘッド13を囲堯して燃焼空間を形成する燃焼筒、15は前記送風ボックス11内で燃焼筒14の真上に配設された遮熱板である。
【0010】
16は前記温風吹き出し口5の下部に設置され前記ルーバー7をアーム17によって開閉動作させるルーバーモータ、18は吹き出し口枠6の上部を構成する壁面に複数形成され温風吹き出し口5と器具本体1内の上部とを連通させるスリット、19は器具本体1内の温度を検知する器具内温度センサである。
【0011】
20は前記器具本体1の正面視右側に設置され給油カバー2を開放して取り出しや設置が可能な灯油などの燃油を供給する給油タンク、21は該給油タンク20から供給された燃油を所定量溜める固定タンク、22は該固定タンク21内の燃油量をフロートで測定する油量センサ、23は前記固定タンク21内の燃油を送油管24及び送油ノズル25を介してバーナ12へ圧送する電磁ポンプ、26は燃焼用空気を送風管27を介して送風する燃焼ファンである。
【0012】
28は燃油を気化する気化器、29は該気化器28を燃油が気化可能な温度まで加熱する気化ヒータ、30は前記気化器28の温度を検出する気化温度センサ、31は前記バーナヘッド13の外周に設けられた炎孔網、32は燃焼熱を前記気化器28へ回収する熱回収リング、33は気化ガスにスパーク放電して点火する点火器、34は炎の状態を監視するフレームロッドである。
【0013】
操作部3には、暖房運転の開始と停止を指示する運転スイッチ35と、所定の暖房運転時間が経過した後も続けて暖房運転を実行する延長スイッチ36と、気化器28を保温して運転スイッチ35操作後から数秒で暖房運転を開始する秒速点火スイッチ37と、現在時刻や所定の時刻になると暖房運転を開始するタイマー運転の設定を可能とする時刻設定スイッチ38と、暖房運転での設定温度や現在時刻を調節する数値調節スイッチ39と、子どものいたずら防止のため運転スイッチ35の停止指示以外の操作を無効にするチャイルドロックスイッチ40と、前記時刻設定スイッチ38で暖房運転の開始時刻を二通り設定可能なタイマー運転スイッチ41と、最大火力を40%抑え設定温度が21℃以上の際、強制的に20℃まで下げて消費電力を低下させたエコ運転を実行するエコスイッチ42とが備えられており、各種スイッチを操作して暖房運転の制御を変更する。
【0014】
更に、運転スイッチ35が操作され暖房運転の開始が指示されると点灯する運転ランプ43と、自動消火する15分前になると点滅する延長ランプ44と、秒速点火スイッチ37が操作されると点灯する秒速点火ランプ45と、二通りの中で操作したタイマー運転スイッチ41が点灯するタイマー運転ランプ46と、エコスイッチ42が操作されエコ運転が開始されると点灯するエコランプ47とが操作部3に備わっており、各種スイッチ操作の有無を視覚で簡単に確認できるものである。
【0015】
48は吹き出し口5の上方で給油タンク20が収納された収納部の前方を構成する仕切り板49に設置され器具本体1の制御をおこなうマイコンを有して構成された制御部であり、前記器具内温度センサ19での検知温度と所定値である59℃とを比較し、59℃を超えたら高温異常エラーだと判断して暖房運転を停止させる比較手段50が備わっている。
【0016】
また、前記制御部48を構成する基盤上には、送風ボックス11が形成された器具本体1の正面視左側面側の近傍に器具内温度センサ19が設置されており、温風吹き出し口5の前方に障害物が存在する状態であれば、前記障害物が通風抵抗となって温風吹き出し口5に対して水平方向以外に流動する温風量が増加し、スリット18を通過して器具内温度センサ19まで達する温風量が増加することで検知温度が上昇するため、早期に高温異常エラーの発生を判断することができる。
【0017】
51は運転スイッチ35や延長スイッチ36が操作された際にメロディや効果音で報知するスピーカである。
【0018】
次に、本実施形態における暖房運転について説明する。
まず、制御部48は、操作部3上の運転スイッチ35で運転開始を指示する操作がされたか、時刻設定スイッチ38で設定された運転開始時刻になり暖房運転の開始指示があったか判断し、暖房運転の開始指示があったと判断したら、気化ヒータ29に通電して気化器28の温度を上昇させると共にルーバーモータ16を駆動させてルーバー7を動作させ温風吹き出し口5を開口し、気化温度センサ30での検知温度が所定の気化温度以上になったと判断したら、電磁ポンプ12を駆動させて気化器28内に燃油を噴射すると共に、燃焼ファン26を駆動させて送風管27を介して気化器28内に燃焼用空気を送風する。
【0019】
そして、気化器28内で気化した燃油と燃焼用空気とが混合して気化ガスが生成されたら、制御部48は、点火器33に通電してスパーク放電することで気化ガスに着火して高温の燃焼ガスが生成され、対流ファン9を駆動開始することで、対流ファン9で送風された空気が高温の燃焼ガスと混合して送風ボックス11内を流動して温風吹き出し口5へ向かい、送風ボックス11と連通する温風吹き出し口5の正面視左側から器具本体1の前方へ向けて温風が吹き出すことで、暖房運転が開始される。
【0020】
なお、温風吹き出し口5の前方に障害物が存在しない時は、温風吹き出し口5の前方に向けて温風が流動方向に乱れを生じることなく吹き出されることから、吹き出し口枠6の上部に形成されたスリット18から器具本体1内の上部方向へ流動する温風量が少ないため、器具内温度センサ19での検知温度が所定値である59℃まで上昇せず、暖房運転が誤って停止されることがない。
【0021】
その後、運転スイッチ35で暖房運転の停止を指示する操作がされたか、フレームロッド34で炎検知がされない等のエラーが発生したと判断したら、制御部48は、電磁ポンプ12と燃焼ファン26の駆動を停止させてバーナ12での燃焼を停止させ、所定時間だけ対流ファン9を駆動して気化器28を冷却し、所定時間が経過したら対流ファン9の駆動を停止させると共にルーバーモータ16を駆動させ、温風吹き出し口5を閉止することで暖房運転を終了させる。
【0022】
次に、本実施形態の温風吹き出し口5の前方に障害物が存在する場合の温風の流れを
図8に基づいて説明する。
まず、暖房運転中において温風吹き出し口5の前方に箱等の障害物が存在したり、器具本体1にタオル等が掛けられ温風吹き出し口5が閉塞した状態になった時、対流ファン9によって送風された温風に対する通風抵抗が増加することで、温風吹き出し口5から器具本体1の前方へ流動する温風量が減少するため、スリット18から器具本体1内の上方へ流動する温風量が増加する。
【0023】
これにより、スリット18の上方かつ近傍に器具内温度センサ19が設置されていることで、スリット18を通過した温風によって器具内温度センサ19での検知温度が上昇し、制御部48は、器具内温度センサ19での検知温度が所定値である59℃以上か比較手段49で判断し、検知温度が59℃以上であれば高温異常エラーだとして暖房運転を停止するため、器具本体1内を構成する部材が高温の温風に晒され続けて破損する事態が防止される。
【0024】
以上のように、吹き出し口枠6の上部に複数のスリット18を形成したことで、箱やタオル等の障害物が温風吹き出し口5の前方に存在する時、スリット18方向へ流動する温風量が増加して器具内温度センサ19での検知温度が上昇し、所定値である59℃以上を検知すると高温異常エラーが発生していると判断して暖房運転を停止させるため、温風吹き出し口5が障害物によって閉塞することで器具本体1内部が長時間高温状態に晒される事態を防止し、器具本体1を構成する部材の破損を未然に防ぐことができる。
【0025】
また、スリット18は仕切り板49が設置され送風ボックス11から送風される温風の流動量が少ない正面視右側ではなく、バーナ12によって加熱され対流ファン9により前記送風ボックス11内を送風する温風の流動量が多い正面視左側に吹き出し口枠6の上部を構成する壁面に形成されたことで、温風吹き出し口5の前方に障害物が存在する時、スリット18から器具内温度センサ19方向へ流動する温風量が増加するため、高温異常エラーを確実に判断して暖房運転を停止させることができる。
【0026】
なお、本実施形態では吹き出し口枠6の上面に複数のスリット18のみを形成した内容で説明したが、これに限らず、通常運転時において器具本体1の前方へ流動する温風量を確保し、温風吹き出し口5の前方に障害物が存在する時のみ器具本体1内の上方へ流動する温風量が増加するよう、吹き出し口枠6と送風ボックス11との間に隙間を形成したものであってもよく、これにより、暖房運転時に温風吹き出し口5の前方に障害物が存在すると、通風抵抗により器具本体1の前方へ流動する温風量が減少し、器具本体1内の上方へ流動する温風量が増加した時、吹き出し口枠6の上面に形成されたスリット18と相俟って器具本体1の上方へ流動する温風量が増加するため、器具内温度センサ19での検知温度が早期に上昇して高温異常エラーの発生による暖房運転停止を確実に実行することができる。
【0027】
また、本実施形態における構成や制御内容は一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1 器具本体
5 温風吹き出し口
6 吹き出し口枠
9 対流ファン
12 バーナ(燃焼部)
18 スリット
19 器具内温度センサ
48 制御部