特許第6511022号(P6511022)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6511022
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】バーハンドル車両用ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B62L 3/08 20060101AFI20190422BHJP
   B62L 3/00 20060101ALI20190422BHJP
   B60T 11/24 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   B62L3/08
   B62L3/00 A
   B60T11/24
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-155252(P2016-155252)
(22)【出願日】2016年8月8日
(65)【公開番号】特開2018-24266(P2018-24266A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226677
【氏名又は名称】日信工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】川田 和人
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−030476(JP,A)
【文献】 特開2015−096358(JP,A)
【文献】 特許第4533307(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62L 3/00 − 3/08
B60T 11/00 − 11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のブレーキ操作子の操作によって、第1液圧マスタシリンダを介して第1ブレーキを単独で作動させ、他方のブレーキ操作子の操作によって、第2ブレーキを作動させるとともに、第2液圧マスタシリンダで作動液を昇圧させ、昇圧した液圧を前記第1液圧マスタシリンダに供給して前記第1ブレーキを連動して作動させ、前記第1液圧マスタシリンダは、ピストンを内挿した有底のシリンダ孔と、該シリンダ孔の底部側に設けられた第1液圧室と、前記シリンダ孔の開口側に設けられた連動用液圧室と、該連動用液圧室に連通する連動用連通孔とを備え、該連動用連通孔と、前記第2液圧マスタシリンダに設けられた第2液圧室とを連動用液圧配管で連結したバーハンドル車両用ブレーキ装置において、
前記第1液圧マスタシリンダは、前記シリンダ孔の開口側に該シリンダ孔よりも大径に形成された大径孔が連続して設けられ、該大径孔と前記シリンダ孔との間に段部が形成され、
前記大径孔には、前記ピストンを内挿したカラー部材が配設され、該カラー部材の段部側端面とシリンダ孔開口側との間に前記連動用液圧室が画成されるとともに、前記カラー部材の大径孔開口側に、前記カラー部材の大径孔開口側への移動を規制する規制手段が、前記連動用液圧室に、前記カラー部材を大径孔開口側に付勢する付勢手段がそれぞれ設けられ、前記カラー部材は、前記規制手段と前記付勢手段とによって位置決めされていることを特徴とするバーハンドル車両用ブレーキ装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、一端が前記カラー部材の段部側端面に、他端が前記段部にそれぞれ当接する皿ばねであることを特徴とする請求項1記載のバーハンドル車両用ブレーキ装置。
【請求項3】
前記ピストンには、前記第1液圧室を画成する第1シール部材を嵌着する底部側周溝と、前記連動用液圧室を画成する第2シール部材を嵌着する先端側周溝とが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のバーハンドル車両用ブレーキ装置。
【請求項4】
前記連動用連通孔は、前記シリンダ孔の軸線に対して斜めに形成され、前記段部に開口していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のバーハンドル車両用ブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーハンドル車両用ブレーキ装置に関し、詳しくは、一方のブレーキ操作子の操作によって、第1ブレーキを単独で作動させ、他方のブレーキ操作子の操作によって、第2ブレーキを作動させると共に第1ブレーキを連動して作動させるバーハンドル用ブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バーハンドル車両用ブレーキ装置として、一方のブレーキ操作子(例えばブレーキレバー)の操作に応じて第1液圧マスタシリンダを介して前記ブレーキを単独で作動させ、さらに、他方のブレーキ操作子(例えばブレーキペダル)の操作に応じて第2液圧マスタシリンダを介して後輪ブレーキに液圧を供給すると共に、ブレーキペダルの操作に応じて液圧作動する連動用スレーブシリンダを介して前記第1液圧マスタシリンダを作動させて前輪ブレーキを連動して作動させるものがあった。
【0003】
また、この第1液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダとをシリンダ基体に並列に配置し、該シリンダ基体に、第1液圧マスタシリンダのピストンと連動用スレーブシリンダのピストンとに当接する連動部材と、操作レバーとが回動可能に設けられ、連動用スレーブシリンダに液圧が供給されると、連動部材が回動して、第1液圧マスタシリンダのピストンを押動し、前輪ブレーキを連動して作動させるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4533307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1のものでは、シリンダ基体に第1液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダとを並列させて形成していることから、ブレーキレバーの周囲に配置されるシリンダ基体が大型化していた。また、第1液圧マスタシリンダと連動用スレーブシリンダとのそれぞれに内挿されたピストンを、シリンダ基体に回動可能に設けた連動部材を介して作動させるようにしていることから、部品点数が多くなりコストが嵩むとともに、操作フィーリングが低下する虞があった。
【0006】
そこで本発明は、ブレーキ操作子の周囲の機構のコンパクト化とコストの削減化とを図るとともに、操作フィーリングの向上を図ることができるバーハンドル車両用ブレーキ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ装置は、一方のブレーキ操作子の操作によって、第1液圧マスタシリンダを介して第1ブレーキを単独で作動させ、他方のブレーキ操作子の操作によって、第2ブレーキを作動させるとともに、第2液圧マスタシリンダで作動液を昇圧させ、昇圧した液圧を前記第1液圧マスタシリンダに供給して前記第1ブレーキを連動して作動させ、前記第1液圧マスタシリンダは、ピストンを内挿した有底のシリンダ孔と、該シリンダ孔の底部側に設けられた第1液圧室と、前記シリンダ孔の開口側に設けられた連動用液圧室と、該連動用液圧室に連通する連動用連通孔とを備え、該連動用連通孔と、前記第2液圧マスタシリンダに設けられた第2液圧室とを連動用液圧配管で連結したバーハンドル車両用ブレーキ装置において、前記第1液圧マスタシリンダは、前記シリンダ孔の開口側に該シリンダ孔よりも大径に形成された大径孔が連続して設けられ、該大径孔と前記シリンダ孔との間に段部が形成され、前記大径孔には、前記ピストンを内挿したカラー部材が配設され、該カラー部材の段部側端面とシリンダ孔開口側との間に前記連動用液圧室が画成されるとともに、前記カラー部材の大径孔開口側に、前記カラー部材の大径孔開口側への移動を規制する規制手段が、前記連動用液圧室に、前記カラー部材を大径孔開口側に付勢する付勢手段がそれぞれ設けられ、前記カラー部材は、前記規制手段と前記付勢手段とによって位置決めされていることを特徴としている。
【0008】
また、前記付勢手段は、一端が前記カラー部材の段部側端面に、他端が前記段部にそれぞれ当接する皿ばねであると好ましい。さらに、前記ピストンには、前記第1液圧室を画成する第1シール部材を嵌着する底部側周溝と、前記連動用液圧室を画成する第2シール部材を嵌着する先端側周溝とが形成されていると好適である。また、前記連動用連通孔は、前記シリンダ孔の軸線に対して斜めに形成され、前記段部に開口していると好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のバーハンドル車両用ブレーキ装置によれば、1つのシリンダ孔及びピストンを備えたブレーキ装置で、第1ブレーキを単独で作動させるとともに、第2ブレーキと共に第1ブレーキを連動して作動させることができ、さらに、従来のように、ピストンを押動する連動部材をシリンダ基体に回動可能に設ける必要がないことから、ブレーキ操作子の周囲の機構の小型化と部品点数の削減とを図ることができる。また、カラー部材は規制手段と付勢手段とによって、大径孔内に確実に位置決めされた状態で配置されることから、簡単な構成でカラー部材の移動を抑制して良好な操作フィーリングを得ることができる。また、メンテナンス時にカラー部材を大径孔から取り外すことができることから、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0010】
さらに、付勢手段を皿ばねとしたことにより、連動用液圧室内の限られたスペースに付勢手段を容易に設けることができる。また、皿ばねは、一端をカラー部材の段部側端面に、他端を段部にそれぞれ当接させることから、シリンダ孔や大径孔に特別な加工を施す必要がなく、コストが嵩む虞がない。
【0011】
さらに、ピストンに、第1液圧室を画成する第1シール部材を嵌着する底部側周溝と、連動用液圧室を画成する第2シール部材を嵌着する先端側周溝とを形成し、シリンダ孔側にはシール溝を設けないことから、周溝と連動用連通孔とが干渉する虞がなく、第1液圧マスタシリンダの小型化を図ることができると共にレイアウトの自由度が向上される。
【0012】
また、連動用連通孔をシリンダ孔の軸線に対して斜めに形成し、段部に開口させたことにより、第1液圧マスタシリンダの小型化を図りつつ、連動用連通孔を連動用液圧室に好適に連通させることができ、レイアウト性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1形態例を示す液圧マスタシリンダ装置の一部断面平面図である。
図2】同じくマスタシリンダユニットの断面図である。
図3】同じくバーハンドル車両用ブレーキ装置の説明図である。
図4】同じく液圧マスタシリンダ装置の平面図である。
図5】同じく液圧マスタシリンダ装置の底面図である。
図6】同じく液圧マスタシリンダ装置の一方の側面図である。
図7】同じく液圧マスタシリンダ装置の要部拡大断面図である。
図8】同じくブレーキレバーを操作して前輪ブレーキを単独で作動させる際の液圧マスタシリンダ装置の説明図である。
図9】同じくブレーキペダルを操作して前輪ブレーキを後輪ブレーキと連動して作動させる際の液圧マスタシリンダ装置の説明図である。
図10】同じくブレーキペダルを操作して前輪ブレーキを後輪ブレーキと連動して作動させる際のマスタシリンダユニットの説明図である。
図11】同じくピストン押動腕の回動が規制された状態のマスタシリンダユニットの説明図である。
図12】本発明の第2形態例を示すバーハンドル車両用ブレーキ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至図11は、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ装置の第1形態例を示す図である。図3に示されるように、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ装置1は、液圧式の前輪ブレーキ2(本発明の第1ブレーキ)及び機械式の後輪ブレーキ3(本発明の第2ブレーキ)と、ブレーキレバー4(本発明の一方のブレーキ操作子)を備えた液圧マスタシリンダ装置5と、ブレーキペダル6(本発明の他方のブレーキ操作子)と、ブレーキペダル6と液圧マスタシリンダ装置5との間に配置されたマスタシリンダユニット7とを備えている。
【0015】
前輪ブレーキ2には、ディスクロータ2aとキャリパボディ2bとを備えたディスクブレーキが適用され、キャリパボディ2bには前輪用液圧配管8が接続されている。後輪ブレーキ3には、バックプレート3a内に一対のブレーキシュー3b,3bを対向配置し、両ブレーキシュー3b,3bをカム軸3cの回動によってアンカーピン3dを支点に拡開する内拡型のドラムブレーキが適用されており、カム軸3cに一端を固着したカムレバー3eには、後輪用ブレーキロッド9が接続されている。
【0016】
液圧マスタシリンダ装置5は、前輪を操向するハンドルバー10に取り付けられる第1液圧マスタシリンダ11と、該第1液圧マスタシリンダ11に付設される前記ブレーキレバー4と、リザーバ5aとを備えている。第1液圧マスタシリンダ11は、第1シリンダボディ11aに一体に形成されたブラケット11bとホルダ12とでハンドルバー10を包持し、これらをボルト13で締結してハンドルバー10の車体前部側に配置される。
【0017】
第1シリンダボディ11aは、車体外側部に開口する有底の第1シリンダ孔11cと、該第1シリンダ孔11cに連続する大径孔11dとが同軸に設けられ、第1シリンダ孔11cと大径孔11dとの間には段部11fが形成されている。第1シリンダ孔11cには、第1ピストン14が移動可能に内挿され、第1シリンダボディ11aの上部には、作動液を貯留するリザーバ5aが一体に設けられている。また、第1シリンダボディ11aの第1シリンダ孔11cよりも車体前部側には、連動用連通孔15が形成されている。連動用連通孔15は、第1シリンダ孔11cの軸線に対して斜めに形成され、連動用連通孔15の一部は段部11fに開口している。第1シリンダボディ11aの大径孔11dの外周部には、車体前部側に突出する二股状のレバー取付ブラケット11eが形成され、該レバー取付ブラケット11eにブレーキレバー4が第1ピボット16を用いて枢支されている。また、第1シリンダボディ11aの車体下側のレバー取付ブラケット11e側には、ブレーキランプスイッチ17がビスで固定されている。
【0018】
第1ピストン14は、第1シリンダ孔11cの開口部から大径孔11d内に突出する小径軸部14aと、第1シリンダ孔11cを摺動する大径軸部14bとを備えている。大径軸部14bは、シリンダ孔底部側とシリンダ孔先端側にカップシール18(本発明の第1シール部材),19(本発明の第2シール部材)を嵌着する底部側周溝14cと先端側周溝14dとを備え、底部側周溝14cに嵌着されるカップシール18と第1シリンダ孔11cの底壁との間には第1液圧室20が画成されている。第1シリンダ孔11cの底壁には、ユニオン孔14eが形成され、該ユニオン孔14eには、第1液圧室20に連通する第1ユニオンボルト21が取り付けられ、また、第1液圧室20には、リザーバ5aと連通するポート(図示せず)が開口している。第1ユニオンボルト21には、前記前輪用液圧配管8が連結され、第1ユニオンボルト21と前輪用液圧配管8とを介して、前記キャリパボディ2bに形成された液圧室(図示せず)に液圧が供給される。さらに、第1液圧室20と第1シリンダ孔11cの底壁との間には、非作動状態の第1ピストン14を予め設定された初期位置に復帰させる第1リターンスプリング22が配置されている。
【0019】
第1ピストン14の小径軸部14aの外周と大径孔11dの内周面との間には、シール材となる内周側カップシール23aと外周側Oリング23bとを介して、環状のカラー部材23が配置され、カラー部材23は、大径孔11dの内周部に取り付けられたサークリップ24(本発明の規制手段)によって、大径孔開口側への移動が規制されて位置決めされるとともに、内周側カップシール23aはリング部材25によって抜止めされている。カラー部材23は、外周側に配置された外周側Oリング23bによって、大径孔11dに対して液密に配置されると共に、内周側に設けられた内周側カップシール23aによって、第1ピストン14の小径軸部14aを、カラー部材23に対して、液密、且つ、移動可能に内挿している。
【0020】
第1ピストン14は、第1リターンスプリング22の弾発力で、小径軸部14aの先端がブレーキレバー4の作用腕4aに当接することにより初期位置が設定され、カップシール19とカラー部材23の段部側端面23cとの間に連動用液圧室26が画成されている。また、連動用液圧室26には、一端がリング部材25を介してカラー部材23の段部側端面23cに、他端が前記段部11fにそれぞれ当接する皿ばね27(本発明の付勢手段)が設けられ、カラー部材23は、サークリップ24と皿ばね27とによって位置決めされている。
【0021】
連動用連通孔15は、一端が第1シリンダボディ11aの外面に、他端が連動用液圧室26にそれぞれ開口し、一端には、連動用ユニオンボルト28が設けられ、該連動用ユニオンボルト28に、前記マスタシリンダユニット7に連通する連動用液圧配管29が連結されている。
【0022】
ブレーキレバー4は、作用腕4aと、回動基部4bと、グリップ部4cと、スイッチ作動片4dとを備えている。回動基部4bは、二股状のレバー取付ブラケット11eの間に挿入され、回動基部4bとレバー取付ブラケット11eとに形成された同軸の挿通孔に第1ピボット16を挿通することにより、レバー取付ブラケット11eに回動可能に枢支される。また、第1ピボット16のレバー取付ブラケット11eから車体上部側に突出する頭部には、リターンスプリング30が取り付けられている。リターンスプリング30は、第1ピボット16の外周に配置されるコイル部30aと、コイル部30aの一端から突出して第1シリンダボディ11aに当接するシリンダボディ当接片30bと、コイル部30aの他端から突出してブレーキレバー4のスイッチ作動片4dに当接するブレーキレバー当接片30cとを備え、ブレーキレバー4は、リターンスプリング30の弾発力によって、反作動方向に付勢されている。
【0023】
ブレーキペダル6は、固定軸31を介して車体に回動可能に設けられ、このブレーキペダル6を操作することにより、牽引ロッド32が牽引され、マスタシリンダユニット7のイコライザレバー7aを介して、後輪ブレーキ3を作動させる後輪用ブレーキロッド9を牽引し、後輪ブレーキ3を作動させると共に、マスタシリンダユニット7の第2液圧マスタシリンダ33を作動させて、連動用液圧配管29と第1液圧マスタシリンダ11と前輪用液圧配管8とを介して前輪ブレーキ2に液圧を供給して、前輪ブレーキ2を連動して作動させる。
【0024】
マスタシリンダユニット7は、第1液圧マスタシリンダ11に液圧を供給する前記第2液圧マスタシリンダ33と、第2液圧マスタシリンダ33の第2ピストン34を押動させるピストン押動腕7bと、イコライザレバー7aとを備えている。第2液圧マスタシリンダ33は、第2シリンダボディ33aに第2シリンダ孔33bが形成され、該第2シリンダ孔33bには、該第2シリンダ孔33bの内周に設けた第1カップシール35と第2カップシール36とを介して、第2ピストン34が内挿されている。第2ピストン34は、第2シリンダ孔33bの開口部から突出した状態で内挿され、第2シリンダボディ33aのシリンダ孔開口側には、前記ピストン押動腕7bを回動可能に取り付ける押動腕取付ブラケット33cが突設されている。第2シリンダ孔33bの第1カップシール35と第2カップシール36との間には、液補給室37が形成され、該液補給室37には、リザーバ38に連結される作動液供給管38aが連結されている。また、第2シリンダボディ33aの第2シリンダ孔底部側で、且つ、反作動液供給孔側には、ストッパボルト39を装着するボルト装着ブラケット33dが突設されている。
【0025】
第2ピストン34は、第2シリンダ孔33bの開口部から突出する小径軸部34aと、第2シリンダ孔33bの底部側に開口する凹部34bを有する大径軸部34cとを備え、第2シリンダ孔33bの底部と第1カップシール35との間に第2液圧室40が画成されている。第2シリンダ孔33bの底部には、第2液圧室40に連通するユニオン孔33eと該ユニオン孔33eに取り付けられる第2ユニオンボルト41が設けられ、第2ユニオンボルト41には、前記連動用液圧配管29が接続されている。また、第2ピストン34の凹部34bの底面と第2シリンダ孔33bの底面との間には、非作動状態の第2ピストン34を予め設定された初期位置に復帰させる第2リターンスプリング42が配置されている。第2ピストン34の凹部34bの周壁には、該周壁の内外を貫通する小径の連通ポート34dが周方向に複数形成され、第2液圧室40は、連通ポート34dと液補給室37と作動液供給管38aとを介してリザーバ38と連通している。
【0026】
ピストン押動腕7bは、円弧状に形成され、押動腕取付ブラケット33cに第2ピボット43により回動可能に取り付けられる回動基部7cと、該回動基部7cから第2シリンダボディ33aの反ボルト装着ブラケット側の外面33f側に延出して、先端が外面33fに当接する位置決め腕7dと、前記回動基部7cから第2シリンダ孔33b側に延出し、第2ピストン34に当接して該第2ピストン34を押動するピストン押動腕7eと、該ピストン押動腕7eからストッパボルト39側に延出し、先端がストッパボルト39に当接してピストン押動腕7bの回動を規制する回動規制腕7fとを備えている。また、回動規制腕7fとボルト装着ブラケット33dとの間には、スプリング部材44が縮設され、該スプリング部材44の弾発力によってピストン押動腕7bは反作動方向に付勢され、位置決め腕7dが第2シリンダボディ33aの外面33fに当接することにより初期位置が決定される。
【0027】
イコライザレバー7aは、一端部がピストン押動腕7bの回動規制腕7fに第1回動軸45を介して回動可能に連結され、他端部が後輪用ブレーキロッド9に第2回動軸46を介して回動可能に連結されると共に、他端部寄りの中間位置に、牽引ロッド32が第3回動軸47によって回動可能に連結されている。
【0028】
上述のように形成された本形態例のバーハンドル車両用ブレーキ装置1は、ブレーキレバー4が操作されると、図8に示されるように、ブレーキレバー4の回動基部4bが第1ピボット16を中心に回動し、作用腕4aが第1液圧マスタシリンダ11の第1ピストン14を押動する。第1ピストン14が第1シリンダ孔11cの底部側に移動し、第1液圧室20に液圧が発生すると、昇圧された作動液が、第1ユニオンボルト21及び前輪用液圧配管8を介して前輪ブレーキ2に供給され、前輪ブレーキ2を単独で作動させる。また、この時、第1ピストン14の移動に伴って、連動用液圧室26の容積が大きくなるが、連動用連通孔15,連動用ユニオンボルト28,連動用液圧配管29,第2液圧マスタシリンダ33を介して、リザーバ38から作動液が連動用液圧室26に補充される。
【0029】
また、ブレーキペダル6が操作されると牽引ロッド32が牽引され、イコライザレバー7aの一端側は、スプリング部材44の弾発力により初期位置を維持した状態であることから第1回動軸45の位置が固定され、イコライザレバー7aが第1回動軸45を中心に回動し、後輪用ブレーキロッド9が牽引され、後輪ブレーキ3が作動する。
【0030】
ブレーキペダル6をさらに操作すると、図9及び図10に示されるように、イコライザレバー7aが更に牽引され、イコライザレバー7aの一端側がスプリング部材44の弾発力に抗して牽引される。これにより、ピストン押動腕7bが第2ピボット43を中心に回動し、位置決め腕7dが第2シリンダボディ33aの外面33fから離間すると共に、ピストン押動腕7eが第2ピストン34を押圧する。これに伴って、第2ピストン34が第2シリンダ孔33bの底部側に移動し、連通ポート34dが第1カップシール35を通過すると、第2液圧室40に液圧が発生し、昇圧された作動液が、ユニオン孔33e,第2ユニオンボルト41,連動用液圧配管29,連動用ユニオンボルト28,連動用連通孔15を介して第1液圧マスタシリンダ11に画成された連動用液圧室26に供給される。これにより、第1ピストン14がシリンダ孔底部側に移動し、第1液圧室20に液圧が発生し、第1液圧室20で昇圧された作動液が、第1ユニオンボルト21,前輪用液圧配管8を介して前輪ブレーキ2に供給され、前輪ブレーキ2を連動して作動させる。このとき、ブレーキレバー4は、リターンスプリング30の弾発力によって、反作動方向に付勢されていることから、初期位置を維持した状態となっている。
【0031】
この状態から、ブレーキペダル6をさらに操作すると、図11に示されるように、ピストン押動腕7bの回動規制腕7fがストッパボルト39に当接することにより、ピストン押動腕7bの回動が規制され、第1回動軸45の位置が固定された状態でイコライザレバー7aが第1回動軸45を中心に回動し、後輪用ブレーキロッド9がさらに牽引されることにより、後輪ブレーキ3のみがさらに作動する。
【0032】
本形態例のバーハンドル車両用ブレーキ装置は、従来のように、液圧マスタシリンダとは別に、連動用スレーブシリンダを設けることなく、第1液圧マスタシリンダ11のみで、前輪ブレーキ2を単独で作動させたり、後輪ブレーキ3と連動して作動させたりすることができ、ブレーキレバー4の周囲の機構を小型化することができると共に、部品点数を減少させることができ、コストの削減化を図ることができる。また、カラー部材23はサークリップ24(規制手段)と皿ばね27(付勢手段)とによって、大径孔11d内に確実に位置決めされた状態で配置されることから、簡単な構成でカラー部材23の移動を抑制して良好な操作フィーリングを得ることができる。また、メンテナンス時にサークリップ24を外すことで、カラー部材23を大径孔11dから取り外すことができることから、メンテナンス性の向上を図ることができる。
【0033】
さらに、付勢手段として皿ばね27を用いたことにより、連動用液圧室内の限られたスペースに付勢手段を容易に設けることができる。また、皿ばね27は、一端をカラー部材23の段部側端面23cに、他端を段部11fにそれぞれ当接させることから、第1シリンダ孔11cや大径孔11dに特別な加工を施す必要がなく、コストが嵩む虞がない。また、第1ピストン14に、第1液圧室20を画成するカップシール18を嵌着する底部側周溝14cと、連動用液圧室26を画成するカップシール19を嵌着する先端側周溝14dとを形成し、第1シリンダ孔11c側にはシール溝を設けないことから、第1シリンダボディ11aにおいてシール溝と連動用連通孔とが干渉する虞がなく、第1液圧マスタシリンダの小型化を図ることができると共にレイアウトの自由度が向上される。さらに、連動用連通孔15を第シリンダ孔11cの軸線に対して斜めに形成するとともに段部11fに開口させたことにより、第1液圧マスタシリンダ11の小型化を図りつつ、連動用連通孔15を連動用液圧室26に好適に連通させることができ、レイアウト性の向上を図ることができる。
【0034】
図12は、本発明の第2形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0035】
本形態例のバーハンドル車両用ブレーキ装置51は、液圧式の前輪ブレーキ2(本発明の第1ブレーキ)と、液圧式の後輪ブレーキ52(本発明の第2ブレーキ)と、ブレーキレバー4(本発明の一方のブレーキ操作子)を備えた液圧マスタシリンダ装置5と、ブレーキペダル6(本発明の他方のブレーキ操作子)と、ブレーキペダル6の操作により作動液を昇圧させる第2液圧マスタシリンダ53とを備えている。
【0036】
後輪ブレーキ52は、前輪ブレーキ2と同様に、ディスクロータ52aとキャリパボディ52bとを備えたディスクブレーキが適用され、キャリパボディ52bには後輪用液圧配管54が接続されている。
【0037】
本形態例では、ブレーキペダル6を操作すると、第2液圧マスタシリンダ53の作動液が昇圧し、昇圧した作動液が後輪用液圧配管54を介して、後輪ブレーキ52のキャリパボディ52bに供給され、後輪ブレーキ52を作動させると共に、昇圧した作動液が連動用液圧配管29を介して、第1液圧マスタシリンダ11に供給され、第1形態例と同様に、昇圧した作動液が前輪ブレーキ2のキャリパボディ2bに供給され、前輪ブレーキ2を連動して作動させる。
【0038】
尚、本発明は、上述の形態例に限るものではなく、マスタシリンダユニットの構造は任意である。また、本発明の付勢手段は、皿ばねに限るものではなく、板ばねやウエーブワッシャ等でも差し支えない。さらに、前輪ブレーキや後輪ブレーキの構造も任意である。また、第1液圧マスタシリンダは、プランジャタイプの液圧マスタシリンダであってもよい。さらに、連動用連通孔をシリンダ孔の軸線に対して斜め以外の向きに形成することもできる。また、本発明は、双方のブレーキ操作子をブレーキレバーとしたスクーター型車両にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…バーハンドル車両用ブレーキ装置、2…前輪ブレーキ、2a…ディスクロータ、2b…キャリパボディ、3…後輪ブレーキ、3a…バックプレート、3b…ブレーキシュー、3c…カム軸、3d…アンカーピン、3e…カムレバー、4…ブレーキレバー、4a…作用腕、4b…回動基部、4c…グリップ部、4d…スイッチ作動片、5…液圧マスタシリンダ装置、5a…リザーバ、6…ブレーキペダル、7…マスタシリンダユニット、7a…イコライザレバー、7b…ピストン押動腕、7c…回動基部、7d…位置決め腕、7e…ピストン押動腕、7f…回動規制腕、8…前輪用液圧配管、9…後輪用ブレーキロッド、10…ハンドルバー、11…第1液圧マスタシリンダ、11a…第1シリンダボディ、11b…ブラケット、11c…第1シリンダ孔、11d…大径孔、11e…レバー取付ブラケット、11f…段部、12…ホルダ、13…ボルト、14…第1ピストン、14a…小径軸部、14b…大径軸部、14c…底部側周溝、14d…先端側周溝、14e…ユニオン孔、15…連動用連通孔、16…第1ピボット、17…ブレーキランプスイッチ、18,19…カップシール、20…第1液圧室、21…第1ユニオンボルト、22…第1リターンスプリング、23…カラー部材、23a…内周側カップシール、23b…外周側Oリング、24…サークリップ、25…リング部材、26…連動用液圧室、27…皿ばね、28…連動用ユニオンボルト、29…連動用液圧配管、30…リターンスプリング、30a…コイル部、30b…シリンダボディ当接片、30c…ブレーキレバー当接片、31…固定軸、32…牽引ロッド、33…第2液圧マスタシリンダ、33a…第2シリンダボディ、33b…第2シリンダ孔、33c…押動腕取付ブラケット、33d…ボルト装着ブラケット、33e…ユニオン孔、33f…外面、34…第2ピストン、34a…小径軸部、34b…凹部、34c…大径軸部、34d…連通ポート、35…第1カップシール、36…第2カップシール、37…液補給室、38…リザーバ、38a…作動液供給管、39…ストッパボルト、40…第2液圧室、41…第2ユニオンボルト、42…第2リターンスプリング、43…第2ピボット、44…スプリング部材、45…第1回動軸、46…第2回動軸、47…第3回動軸、51…バーハンドル車両用ブレーキ装置、52…後輪ブレーキ、52a…ディスクロータ、52b…キャリパボディ、53…第2液圧マスタシリンダ、54…後輪用液圧配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12